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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

312

台子を仕舞って釜なども片付けて着替えてお台所へ。
「ああ、終った? じゃお刺身してくれる?」
「はいはい」
「酢味噌もよろしく」
「はい」
はまちをさばいてお造りにして、わさびを練る。
八重子先生が微妙な顔で見ているのはロマネスコだな。湯がいたらしい。
酢味噌を作って味見をしてもらう。
「あら? あまりツンとしないのね」
「酢が違いますからね。もう少し甘いほうがお好きですか?」
「んー、こんなものだと思うわよ」
「じゃそろそろ孝弘さんたちお呼びしましょうか」
「そうしてくれる?」
はい、と答えて律君を呼びに行き、孝弘さんを離れから拾ってくる。
「うわ、なにこれ」
どん引きの律君に先生が苦笑する。
「山沢さんのお土産よ」
「なんでフラクタル? うーん…」
「…おいしいのかしらねえ」
「ま、食ってみて下さい」
八重子先生が好奇心に負け手を伸ばした。
結構新しいもの好きだよね。
俺は普通にマヨネーズでぱくつく。見た目が駄目なだけで美味しいから。
「なんだカリフラワーじゃないの」
「でしょう?」
律君が動揺のあまり蛍烏賊にマヨネーズつけた。
美味しいような気もしなくもない。
アタリメにマヨネーズつけるし。
一度食べたら別に変なものではないとわかったようで律君も食べだした。
孝弘さんは最初から何も気にしてない。
ハマチは今日は天然が安かったので、と言うと先生は嬉しそうだ。
俺の為にちゃんと肉のたたきを買ってきてくれてあって美味しくいただく。
満腹。ご馳走様。
ロマネスコも全部売り切れた。
よしよし。
洗い物を片付けて戻ると八重子先生はお風呂に。
律君は勉強かな。レポートだそうだ。
「ね、先生。あっちの家行きませんか」
「えっ…」
「だって多分今晩は律君夜更かしですよ」
「あ、そう、そ。そうよね。でもお母さんに言うの恥ずかしいわ…」
「風呂入ったら先行ってますか? 俺から言います」
「そうしてくれる?」
頬染めてて可愛い。
はい、とチロリアンを渡して二人で食べる。
「あら、おいしいわね」
「千鳥酢を見た瞬間にチロリアンが浮かんだものですから買ってきちゃいました」
「どうして?」
「チロリアンは千鳥屋」
「あら、やだ。ほんとね」
などとなごんでいると八重子先生が風呂から出てきた。
代わりに先生が風呂に立つ。
八重子先生にも差し上げてお願いした。
「あー…いいけどね。ちゃんと明日のうちに帰してやっとくれよ」
「いや築地のじゃなくてですね、近くの部屋のほうです」
「それならいいよ。じゃあんたも一緒に入ってきたらどうだい」
「来る前に入ってますからいいですよ」
「そうかい?」
お茶いれて、ゆったりとした時間。
暫く喋ってたら先生が風呂から上がってきたので支度してつれて出る。
冬に比べれば暖かいから湯冷めの心配がそんなにない。
先生はちょっと恥ずかしそうだ。

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311

そう思って就寝。
翌朝出勤すると結構に忙しい。
桜終ったんじゃないのかよ。
ばたばたと仕事をして、少し終るのが遅くなった。
だけど本日はお稽古はないからいい。
帰宅後いい天気なので散歩することにした。
ゆったりと散歩を終え、掃除し洗濯物を取り入れる。
いい感じにパリッとした。
やっぱり乾燥機にかけるより日干しが良い。
面倒くさいから滅多にしないけれど。
お昼寝をして、夕飯。何食おうかなー…。
あ、春キャベツとじゃこと桜海老のパスタが食べたい。
どこで見たっけ。
思い出して調べる。夜もやってた。
よし行こう。
軽めの夕食を食べて帰宅。
もうちょっとにんにく利かせて家でつくってもいいな。
お稽古の前は絶対出来ないけれど。
先生から夕飯のメール。
じゃこと春キャベツの卵チャーハンだった。
俺の食ったものをメールするとすぐに返事が返ってきた。
何たる同調か。
明日は蛍烏賊を持っていこうかな。時期だから。
酢味噌だから味噌を買っていかねば。
とメールに買いたら酢もないから買ってきて欲しいそうだ。
千鳥酢にしようかな。
チロリアンではない。
いやチロリアン買って行ってもいいけどさ。
そろそろあくびも出てきて寝る時間だ。
おやすみなさいのメールをしてベッドにもぐった。
寝酒にウイスキーを煽っておやすみなさい。
翌朝、腹が減って目が覚めた。
苦笑して出勤、朝飯を食いつつ仕事をこなして仕事終了。
面白い土産とともに先生のお宅へ。
「こんにちは」
「あら、なぁに沢山」
「天ハマチと蛍烏賊、それとこれ!」
とロマネスコを見せたら先生が後ずさりした。
「なんなのこれ…」
「それと酢と味噌とおやつ。それはロマネスコといいまして。
 ブロッコリーとカリフラワーの合の子みたいなもんです。両方の食感と味ですよ」
「そ、そうなの?」
「使い方もブロッコリーと同じで湯がいてもいいですし炒めてもいいですし」
「……どうしようかしら」
「とりあえずお台所置いてきますね」
台所にアレやこれやを仕舞って手を洗って水屋の用意を整える。
お台子も出してと。
生徒さん達が来てお稽古開始。
土曜の生徒さんは若い方でも割りと気がゆっくりされてる方が多い。
それはまあ、明日が休みの日だからと言う気楽さからくるのかもしれないけれど。
点前中にお喋りする方がいらっしゃる。
まぁ所詮趣味だから仕方ないかな。
先生も優しくお相手されてることだし。
「優しい先生が教えてくれるお教室」が人気の秘訣かな。
にこにことみなさんを見送られて、さて俺のお稽古。
…既に厳しいじゃないか。
「一昨日言ったでしょ。考えて」
しばし悩んでこうか、とやってみると正解だった。
ほっとしつつ流れだけは教えていただけて進んで行く。
だが詰まっても中々教えてはいただけない。
上級に進んだ人は皆こうなのだろうか。
「お稽古に真剣さが足りないから忘れるのよ」
それはその通りです…。
とりあえず最後まで通したら、もう一度、と言われた。
茶碗を仕込みなおして建水を清めて再度点前に立つ。
「さっき言ったのができてないわよ」
ぴしゃり、と叱られた。
慌ててやり直す。
「落ち着いてもう一度やりなさい」
「はい」
きちり、きちりと真剣にお稽古をして、やっと水屋へ下がった。
「今日はこれくらいで」
と先生から声が掛かり、ほっとした。
やれやれ、と片付けに入る。
頭を撫でられた。突然。
「お稽古厳しくて驚いちゃったかしら」
「あ、はい」
「早く覚えて欲しいの。だから暫く厳しいと思うわよ。ついて来れる?」
「頑張ります」
「普段はそんなに畏まらなくていいわよ。これのお稽古のときだけ」
ほっとしてしまった。
普段のお稽古もこの調子だと流石にきつい。
台子を仕舞って釜なども片付けて着替えてお台所へ。

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310

一服をしてから掃除。平日だからね、先生も主婦業をしないといけない。
俺も指示を貰いつつお手伝い。
廊下を拭いたり、庭の雑草を取ったり。
3時になっておやつをいただいたらお買物。
トイレットペーパーなどかさばるものも買って、焼酎も買う。
司ちゃん用のを切らしてたらしい。
「ほんと助かるわぁ…律もほら、大学あるから遅いでしょ」
「お夕飯の買物には間に合いませんよね」
「あなた力持ちだし」
「ま、仕事が仕事ですからね」
帰宅して先生の決めたメニューに従って下拵え。
今日はメイン肉じゃが。
と言うことでジャガイモの皮を剥く。
…肉じゃがなのに豚肉なのはいまだに違和感があるが仕方ない。
後は色々副菜を用意してお夕飯をいただいた。
食後お茶をいただいたら日のあるうちに帰宅の途へ。
ま、明日も会えるから。
しかしお稽古、明日からは真の行か。大変そうだなぁ。
頑張るしかないな。
帰宅して、布団に入って寝る。
朝、起床して出勤し仕事をして帰宅。
すぐに先生のお宅へお稽古に。
「いらっしゃい。今日からあなた真の行よ」
「はい、お願いします。他の方はどうなさいます?」
「平点前にしようと思ってるの。今月で炉も終りだもの」
「じゃ用意してきます」
教えてもらったように真の台子を組み立てて端に置いて、あとは普段の用意を。
生徒さんが来られてお稽古スタート。
平点前のお稽古に皆さん慌てておられる。
意外と普段やらない上に少し上の点前をすると混ざるからわからなくも無い。
先生はそれでも優しく指摘されたりしていて、焦れた風を見せない。
人に教えるにはこうでなきゃいけないのか…俺できるかなぁ。
今日は俺がいてもいなくても大して意味はないな。
ゆったりとお稽古時間が過ぎて、ずっと次客。
皆さんが帰られるころ、着替えて口を清めるよう言われた。
昨日教えていただいた真の行のお稽古だ。
最初だからと先生もやさしく次はこう、それをこうしてと教えてくださる。
2回やってみて覚えられそうにない、と言えば半年はかかるわね、と仰った。
半年で覚えられるかなぁ。
「月曜日もいらっしゃいよ、見てあげるわよ」
「うーん来たいんですが流石に時間が…」
「そうよねえ…遠いものね」
「こういうときは普通の仕事がうらやましいとは思いますけど。
 だけど普通の時間の仕事じゃ昼からここに、なんて真似できませんからねー」
片付けつつ、おしゃべりを楽しむ。
普通のサラリーマンならやっと仕事が終る時間だろう。残業なしで。
「時間の都合つくときにはいらっしゃい」
「はい」
「さ、もうそろそろお夕飯できたかしらね」
と台所へ。
今日はメインは炒め物。と、カツだ。
「あれ? 揚げ鍋ありましたっけ?」
「ああ、揚げ物は買ってくるんだよ。危ないからねぇ」
「確かに天麩羅火災多いですしね」
配膳して夕飯をいただいて、帰宅。
職場が先生のお宅に近ければなぁ、って無理だけど。
先生も職場が家だからこればかりはどうにもならない。
いつか定年退職したら先生の近くのあの家に住みたいな。
そう思って就寝。

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309

まだ夜も明けないころ目が覚める。
先生の寝顔が可愛らしい。
抱きたいな、と思うが…今日はダメだったと思い出す。
トイレに立って手を洗って布団へと戻る。
「うぅん…」
おっと起こしてしまうか?
いや、寝息。
気持ち良さそうに寝ている。
寝返りを打って俺の腕を胸に引き入れた。
やわらかいなぁ、乳。
揉みたくなっちゃうじゃないか。酷いな。
まだ眠いから寝てしまえばいいが。
うつらうつらと先生の寝息にあわせて寝て、朝が来る。
起きたらしっかりと俺の手が先生の乳にフィットしていたらしく。
先に起きた先生が困っていた。
起こすに起こせず、だったらしい。
そういうところが可愛くてついキスしてしまった。
ぺち、と額を叩かれて朝飯の支度に台所へ行く。
朝ご飯を食べて一服したら炭や釜などの用意。
最初からの用意を手伝わせていただくのは久々で、指示を貰ってその通りにするばかり。
用意が整って、着替える。
流石に先生方はすばやく着替えられ、俺が帯を締めようというころには終えられていた。
先生が着付けをちょっと直して二重太鼓に締めて下さり、席入り。
お点前は八重子先生、半東と次客は先生が二役を。
黒塗りの台子。
初炭からだけど…いつもの初炭とは少し違う。
「真台子の初炭は違うのよ」
解説を一つずつしてくださりつつ、進む。
唐金の皆具の真台子は背が高いので八重子先生はちょっと大変そうだ。
「真はすべて省略せず、すべてこれまでにしてきたことだから覚えるのは簡単なの」
うーん、たしかに見ていてわからない、と思う点はない。
これまでにやってきたことを本式できっちりすればいいという感じではある。
「ただこれを覚えると他のお点前のときに混ざるんだよねぇ」
と八重子先生。
あ、たしかに省略していい行のときにやっちゃいそう。
「だから初級クラスの人は見ちゃいけないのよね。混乱しちゃうのよ」
続き薄にするわね、と仰って薄茶もいただいた。
お点前がすべて終って総礼。
「どうだった?」
「確かに見ているとこれまでのことで出来そうな気はしますけど…。
 点前するとなると違うんでしょうね」
「基本的にメモをとるのも写真もビデオも残しちゃいけないって言うけどね、
 覚えるまでは取ってもいいよ。覚えた頃にはいらなくなってるから捨てなさい」
「あ、はい」
「支部の講習会なんかはこういうのをやったりするから。
 あんたが先生になってからの話だけどね、わからなくなったら暫く封印して
 支部までお稽古お願いに行くんだよ」
「そうなんですか?」
「私らも曖昧になることがあるからね、たまにお稽古に行ってるだろ」
「そうだったんですか」
「七事式もここではそんなにはしないからね。支部ならあるから」
色々とお話をしていただいて、じゃ着替えて片付けようということになった。
普段着に着替えて茶室に戻り釜を下ろそうとしたら先生が濃茶を一服所望された。
先ほどの真の行でかと思ったが作法要らないからただ点ててと。
気が楽になりしっかりと練る。
こんなものだろうか。
八重子先生が正客として一服され、お服加減を問う。
惜しい、もうちょっと。と言われてしまった。
先生に茶碗が渡って、確かにもうちょっとねぇと言われて。
茶碗を漱いだらそのまま先生と点前座を交代して先生が点ててくださった。
やっぱり美味しい。
ほほほ、と先生が笑う。
「こうなるまでに私も山沢さんのようなお茶点ててたわよ」
「自分で飲みなってよく言ってたねえ」
さてさて片付けてる間に先生はお昼作ってくると台所へ。
八重子先生が真台子の組み立て方や片付け方、皆具の片付けなども教えてくださった。
引次を終えて片付けも終えてすっかりほっとした気分で許状をいただいた。
お昼ご飯を食べて縁側で先生と日向ぼっこ。
のんどりしていると八重子先生も縁側に。
お茶とおせんべい。
「お天気いいわねぇ」
「気持ちいいですねえ」

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308

ご飯を食べ終わって一服し、風呂を沸かす。
沸かしてる間に…先生の股間を舐めようとする。
汗などで蒸れてるから凄く嫌がっていて、それでもと言うと諦めてくれた。
しょっぱい、と言うと…。
「だからいやっていったのに、ばか」
そういう会話もまた楽しく。
お湯が沸いたようなので脱がせて連れてはいる。
「昼みたいに洗ってあげましょうか?」
「だめよ…あなたも早く洗いなさい」
ふふっと笑いながらお尻を撫でて怒られたり。
「お風呂で遊んじゃダメよ」
といなされたり。
温まって風呂から出て、そのままベッドへ連れ込む。
「髪乾かしてないのに」
「ドライヤーで乾かすのって傷まないんですかね」
でもドライヤーじゃないと先生の髪は寝癖つくのかな。
髪にもキスして。いい匂いだなぁ。
先生を沢山気持ちよくして、明日も早いから、と早めに切り上げることにした。
加減はしたのだがやはり先生は疲れてしまったようだ。
「おやすみなさい」
「ん、おやすみ……」
寝てるし。半分寝言だろこれ。
背中に密着して先生の肌に触れながら寝た。
朝、置いて出勤するのが惜しい気もして。
出る前にしっかりとキスをして出勤。
仕事から帰ったらもう先生はいなくて、お昼ご飯の用意だけがされていた。
おいしいけれど…一人で食べるとおいしくない。
あ。写真。
そうだ、昨日印刷しようと思って忘れてたな。
写真専用機で出して、と。
うん、綺麗だなぁ。先生も桜も。
変なものは写りこんでないようだし、と。
封書に入れて鞄に仕舞う。
明日忘れないようにしよう。
さて、昼寝。
夕方起きて飯を食ってさらに寝る。
朝起きた。
今日はお稽古日。
仕事頑張って先生に逢いに行こう。
やはりまあ、火曜は暇で。
他の社員たちも今日は花見に行こうと早く帰る支度をしている。
さっさと帰宅して用意を整えて先生のお宅へ。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
あ、八重子先生だけだ。
「これ、写真です。花見の」
「どれどれ? へぇ、カメラ持っていったのかい?」
「携帯ですよ。結構綺麗に撮れてますでしょ?」
「あら、もう来てたの? いらっしゃい」
先生が台所からお昼を持って出てきた。
「今日は暇でしたから…ん? 甘茶?」
「潅仏会よ」
「あー…花祭りですか。忘れてました」
「あと今日もあなた円草ね」
「うっ」
「他の方は今週と来週は平点前するから」
「基礎大事にですか」
「来月は風炉だもの。確実にしないと」
「わかりました」
「ああ、そうだ。引次は茶事しようかと思ってたんだけど…。
 許状来てるのあんた以外いなくてねえ」
「三人でしようかって思ってるのよ」
「とするといつもとは違う曜日のほうが良いですよね」
「明日どうかしら」
「心の準備が」
「三人だし茶事でもないし大丈夫よ」
「そうそう、私か絹かが点前してあんたに教えるだけ」
「今日の夜でもいいけどお風呂にも入って着替えてって思うとねえ」
「だから今晩はなしね」
甘茶ふいた。
素で言われるのはどうかと思うんだ…。
八重子先生が溜息をついて先生はなんか変なこと言ったかしら?って顔をしている。
「…水屋の用意してきます」
そそくさと立ち退いて水屋へ行き、お稽古の用意をする。
しばらくして生徒さんが来て、先生がにこやかに現れてお稽古スタート。
和気藹々とお稽古が進む。
「絹先生、日曜に山沢さんとご一緒してらした?」
「え? ええ、一緒でしたけど」
「ああやっぱり! 皇居で母が先生と男の方がご一緒だったのを見たと申しましてね」
「乾通りの通り抜けに行ったんですよ。凄い人でした」
「あらー、いいですわねぇ」
「一時間半待ったんですよ、セキュリティチェックが時間かかるので」
「そんなに? 大変ねえ」
「それでも今年限りかもしれませんからね」
「ですから山沢さんお誘いしたんですの。ほほ」
「八重子先生はご一緒じゃ?」
うっ、と詰まった気配。
「なんせ1時間半待ちですしね」
あぁうんうん、と生徒さんも納得。
他の方々もお稽古が終わり後は俺を残すのみ。
俺へのお稽古は雑談もなく厳しく。
終って水屋を片付け。
「見られてたわねぇ…」
「やっぱり外出は気をつけないといけませんね」
「でも私と一緒にいる男性は山沢さんってみんな思ってくれてるのかもしれないわね」
「だといいですねぇ。それなら不倫の噂にはなりませんから」
「そうね。あ、そうそう。明日あなたの格好なんだけど」
「はい?」
「3つ紋か5つ紋かの色留持ってきてたでしょ? それ着て頂戴」
「え、あ。はい」
「袋帯は締めてあげるから」
「女装ですか…」
ちょっとげんなりしてたら笑われた。
「いいじゃないの、たまには」
片付け終えて台所へ。
もう食事は出来ていて、食卓へ配膳してお夕飯をいただいた。
律君が暫くして帰ってきた。
先生が味噌汁を温めなおしている。
八重子先生が律君に俺と先生の写真を見せてる。
「いまどきは携帯でこんなに綺麗に撮れるみたいだよ。いいねぇ」
「へぇ、すごいね。っていうか山沢さん、お母さんと花見行ってたんですね」
「朝ニュースで皇居の公開って言っててね、じゃ行きましょうってことで並んでね。
 でもこれはすぐ近くの靖国で撮ったんだよ」
「え、なのにこんなにクリアなんだ?」
「あらなぁに? 一昨日の写真?」
「うん、綺麗にとれてるなーと思って」
律君が頂きます、と言って食べ始めた。
先生はにこにこと孝弘さんや律君の世話を焼いてあげていてほほえましい。
「律君は誰かと花見行った?」
「うーん。うちにあるから」
「お友達といったらいいのに」
「近藤? 彼女いるからあいつ」
「あんたも彼女作れば?」
先生、そりゃ酷な。作ろうと思って作れるものじゃないし。
俺は先にご馳走様をしてくつろぐ。
「御免ください、宅配です」
玄関から声。
「あ、ちょっとお願い」
「はい」
パタパタと玄関へ行き受け取る。
サインをして荷物を持って台所へ。ビールらしい。
送り状をもって居間に戻り、お渡しする。
先生は引き出しから帳面を取ってなにやら書き付けて送り状を仕舞った。
お返しとかするんだろう。
律君も食事が終わり、残ったものを孝弘さんが平らげて片付ける。
洗い物を仕舞い終えれば風呂をすすめられ、いただいた。
さてと。今日はなしか。
抱っこだけか、ちょっと辛いな。
先生は気にしてなさそうだけれど。
おしゃべりをして夜が更けて布団へ。
懐に抱いてると、今日はダメよ、そういって腕を絡めてくる。
扇情的で手を出したくなるのにしてはいけない。
くすくす笑われて、寝なさい、と仰る。
ふっと息をついて先生の胸元に耳をくっつけてゆっくりと呼吸をしていると撫でられた。
先生の呼吸が寝息に変わり、俺も寝た。

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