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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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背後で先生と律君がなにやら喋っているのを聞きつつ、隣の部屋に敷布団を敷いた。
その上に防水シートを敷き、バスタオルやタオルを置く。
かなり大きめなのでシートの外にこぼす事だけはない。
湯を貰って来てオイルを温める。
その間に吸水シートを乗せ、固定した。
そろそろ良かろう。
「先生、これますか?」
首を振る。
「先、トイレ済ませましょう。失礼」
抱えあげて連れて行く事に律君はもう見慣れたようだ。
戻ってきて浴衣を脱がせ、湯文字も取らせた。
紙パンツは穿かせたが恥ずかしそうにしている。
伏せさせて温めたオイルをたっぷりと掛け、ゆっくりとほぐして行く。
触れていない場所にバスタオルを掛け、冷えないようにしつつ。
最初はくすぐったそうに、それからだんだんと気持ちよさそうな顔になってきた。
お尻を揉むのにパンツをずらすのはさすがに恥ずかしそうだったけど。
律君は途中で目のやり場がないのか部屋に逃げてしまった。
仰向けになってもらって丹念に解す。
乳首や、股間は触らないように。
とはいえ鼠蹊部はリンパがあるのでどうしても手が当たるのだが。
少し色気のある顔でこちらを見るのは欲情してしまったのだろうな。
「あら、あんたたちさっきお風呂入ってなかったっけ?」
「八重子先生。ええ、うっかりしてました。夜にもう一度と思ってます」
「あっそういえばそうよね。せっかく入ったのに」
会話をしつつ丁寧に。
足の指の間まで。くすぐったそうだ。
最後に全体的に流して終わり。
「あぁ気持ちよかった」
ある程度ホットタオルを使って拭き取り、持って来た服を着せた。
浴衣着ると洗うのが大変だからね。
靴下を履かせると何か微妙という顔をした。
居間に追いやって後始末をする。
オイルのついたものは基本廃棄、さっさと仕分けして片付けた。
「あんた眠いなら部屋で寝なさい」
振り返れば先生が舟を漕いでいる。
使っていないバスタオルをもって先生のお部屋へ行く。
敷いてある布団にバスタオルをさらに敷いた。枕の上も覆うように。
ふらっと先生が来て布団にもぐり込む。
「おやすみなさい」
「うん」
すぐに寝息になった。
かわいいなぁ。
しばし見とれてから部屋を出た。
戻って片付けて、それから八重子先生に引き止められるまま夕食をいただいた。
やっと先生が起きて来て、風呂に入れるとの約束通り洗うことに。
膝をまたがらせて座らせた。
「お昼みたいなこと、しないでちょうだいね。律もいるんだから」
「わかってるよ」
今回は軽くオイルを取る程度にする。
冬なら洗う必要はないけれど、これから夏へ向かうだけに洗わねばならん。
汗をかくことが多い先生はあまり残すのは好ましくないようだ。
キスをしたくなって唇を合わせる。
「こら、だめよ」
「連れて帰りたくなっちゃうな」
「明日もお稽古なんだからだめよ」
「じゃあ明日の晩を楽しみに。ねぇ、気づいてますか、俺の膝に押し当ててるの」
「言わないでちょうだい、恥ずかしくなるじゃないの」
恥ずかしがって下を向いちゃった。
「可愛いと思ってるよ。少しヌルついてるのは」
「オイルよ、オイル」
「ってことにしてあげましょう」
俺の膝から降りて自分で股間を洗い出した。
やることがかわいい。
背中を拭いたらタオルは奪われた。
「もう自分で出来るから」
「はいはい」
自分を拭いて風呂を上がり、俺は外着。先生は寝巻。
「帰るの?」
「仕事ですよ?」
「そうだったわね」
「お稽古休んでとは言いませんからね、絶対に」
「たまには言ったらいいのに」
小さい声でそう言った。
「律君が就職して独り立ちしたらね、京都に住みませんか」
はっと顔上げた。
「もちろん、心配事がなくなったらの話ですが」
「…その頃にはきっと私、おばあさんだわ」
「それでもいいです」
「期待しちゃうわよ?」
「その頃になってもお茶を続けるつもりなら、家を選ぶでしょうけど」
「だったら貯金しなくちゃね。あんまり外食はよくないわねぇ」
「たまにホテル行くくらいはいいでしょう?」
「そうねぇ。来年、用がなければあちらの部屋は空けたほうが…」
「あー今年あんまり使ってませんね」
などと細々話しつつ居間へ。
八重子先生が羊羹を食べている。
「あんたらもいる?」
「俺はいいです」
「おいしそうねえ。冷蔵庫?」
うん、と八重子先生がうなづいて先生が台所へ。
暫くして戻ってきた。
お盆に自分の分と、俺へはコーヒー、バームクーヘン。
「おお、うまそう」
「おいしそう、でしょ」
「すみません」
「あげないわよ? 言葉づかい直すようにしないと」
「気をつけます。ですから下さい」
「どうしようかしら~うふふ」
「遊んでないで下さいよー」
「はい、じゃちゃんと座って」
足を伸ばしてたのを正座して食卓に向かう。
「良い子ね、じゃ食べていいわよ」
「いただきます」
八重子先生がずっとくすくす笑ってる。
「あれ? これうま…おいしいですね」
「いただきものなのよ。クラブハリエって書いてあったわ」
「あー、滋賀にあるやつ。今度最中買ってきてあげます」
「バームクーヘンのお店で最中?」
「三越にたねやってあるじゃないですか」
「そういえばあるわねぇ。あっそうそう、忘れちゃうところだったわ」
「どうしました?」
「今度でいいからタバコ買ってきてちょうだい」
「吸うんですか?」
「刻みを買ってきて欲しいのよ。ほら、茶事の稽古するから」
「なんだ、吸うのかと」
「むせちゃうわよ」
「八重子先生は吸えるんですか?」
「お稽古で吸ったことはあるよ」
「あぁ、そうですよね」
「姉さんは吸うわよ」
「女だてらにって言ったんだけど」
「まぁ男と対等に仕事してると飲みたくなるものですよ」
「そういえばあなた吸ってたものねえ」
「ヤニ臭いの嫌いでしょう?」
時計が10時を知らせる。
「もうそんな時間?」
「ああ、では俺はこれで」
「おやすみ」
「おやすみなさい。気をつけて」
送らなくていい、と居間で別れた。
 
ある日の夕方、他出より戻れば電気がついている。
消し忘れたかと戸を開けると草履が揃えて脱いであった。
どうやら先生が来ているらしい。
だが気配がない。
不審に思って寝室に入れば寝息をたてていた。
待つのが暇で寝てしまったと見える。
着物がその辺りに脱ぎ散らしてあるのはどうしたのだろう。
とりあえず和室のハンガーにかけに行き、落ちていた紐なども片付けた。
よく寝ている。
俺は腹が減ったんだが、一人食うわけにもいかない。
何か作ろうという気分ではなかったのだが仕方がない。
まずは買い物、と家を出た。
スーパーで何を作ろうかと品物を見ていると電話があった。
「久さん、どこ?」
「あ、起きましたか。何か作ろうと思って買い物へ」
「どこか食べにつれてって欲しいわ」
「はいはい、じゃ帰ります」
甘いものだけ買って戻ると先生はすでに着替えていた。
「おかえりなさい」
「ただいま、どうしたんです。お稽古は。今日お花の日でしょう?」
「私はあれよ、出稽古」
「あぁたまに行ってる支部とか本部の?」
「そう、それでこっちに来たんだけど疲れちゃって」
なるほどね、それで俺と飯を食いにいこうってことか。
「なに食べたいんですか?」
「ステーキか天ぷら」
「了解」
いつものホテルに電話をする。
天ぷらは満席。ステーキなら空いている。
30分後にということで着替えて支度する。先生は化粧を直し、トイレに行った。
連れだって食いに行く。
鉄板焼のコース料理は旨く、先生は軽く飲んでいる。
ほのかに頬が染まるのがなんとも良い。
「あぁおなかいっぱい」
といいつつデザートを食べて、連れ帰る。
部屋に入って先生が脱ぎ始める。
「なんで脱ぐんだ。帰るんだろう?」
「あら、泊めてくれないの?」
「明日お稽古でしょう」
「言わなかったかしら、明日おやすみよ」
「聞いてない」
「お母さんにもこっち寄るの言ってあるから問題ないわ」
「今晩も明日の夜もしちゃいますよ」
「疲れないくらいがいいわ」
「一月くらい立てないようなのしちゃおうか」
「そんなの困るわよ」
リビングでじゃれながら、先生がみたいというテレビを見る。
ゆっくりと胸を揉んだりして先生が濡れた頃、道具を取り出す。
そろりと陰部に当てがう。
「きゃっ、なに、なによ」
「気持ち良い?」
ローターで狙い撃ちである。
すぐに先生は逝った。
「ば、か…何するのよ…」
「たまには違った道具も良いかと思ってね」
「そんなのいらない…」
「これをね、テープで固定して。外を歩こうか」
あ、耳まで赤くなった。想像したらしい。
「やだ、そんなの無理よ…」
「歩けるかな、あなた」
首を振る。
「ディルドも入れて固定しようね。着物だと見えないから大丈夫」
「何を…言ってるの…そんな。できるわけないでしょ」
ディルドを押し当てる。
細身のそれがぬるりと入る感覚に先生は身をよじった。
俺の下帯を使って固定する。
「ほら、立って」
肩の下に手を入れて無理矢理立たせた。
浴衣を整えてやる。
「鏡、見てごらん」
特に凹凸が見えるわけでもなく、収まっている。
顔が赤い以外は常のように。
手を拭いて用意してあった俺の着物を着せる。
嫌々をするが身じろぐと異物感があるらしく呻き声をあげた。
帯は矢の字に。
手を引いて部屋を歩かせる。
玄関に近づくとへたりこんだ。
「あ、うっ、外は勘弁して、お願い、お願いよ」
俺は楽しげに笑い、また立たせた。
たぶん座り込んだときに押し込むことになったのだろう。
「わかってるよ、さすがにこのまま出たりしない」
そうだな、するなら先生の家の裏山が良いだろう。人目につかない。
「どうしてこんな、酷いことするのよ」
「わからない?」
こくり、とうなづく。
「わかるまで今日は抱いてあげる」
ひっと軽く息を飲んでいる。
玄関先ですべて脱がせた。
下帯は先生のもので汚れている。
「足を開きなさい」
それを外してゆっくりディルドを抜くと白く汚れている。
先生に見せつけ、舐めさせた。
「細いだろう。もっと太いのがあなたは良いよね」
おいで、と納戸に連れて入る。
「どれを入れたい?」
先生は首を振って見ようともしない。
「言わないならこれだよ?」
先生のあそこには大きすぎるブツを示すと渋々ながら指をさした。
その指し示すのは、いつも使ってるペニバン。
ふふ、と笑って装着しその場で犯した。
手の届くところに、目に触れるものすべてがその手の道具。
そんな場所で犯されるのは先生には辛かったようだ。
ずいぶん泣かせた後、抱えあげてベッドに入れるとほっとした表情になった。
「なに落ち着いてるんだ? 次はこっちだ」
尻の穴にペニバンの先を押し付ける。
かちかちと先生の歯が鳴った。
ぐりぐりとやると本当に押し込まれるのだと思って悲鳴をあげた。
それから何やら言葉にならないなにかを言って泣き出した。
泣かれるのは面白くない。
口を塞ぐことにした。
ペニバンを外してからキスをする。
落ち着かせるべくゆっくり頭を撫でて。
恐慌状態の先生はしばらくは抵抗していたけれど半時ほどで落ち着いた。
それからは恋人同士のセックスと言おうか、ゆったりとした愛撫。
気持ち良く逝かせるとすぐに先生は寝てしまった。
俺は後片付け。
脱ぎ捨てた着物や使ったディルド、ペニバン。
仕舞い終えてから身支度を整え、出勤した。
久しぶりの完徹につかれつつも仕事に勤しみ帰宅した。
先生はまだ寝ている。
俺もその横に入って寝た。
昼をすんだ頃先生に揺り起こされる。
トイレへ行きたいそうだ。
連れていき用を足すのを眺める。
ぼんやりした頭で先生の恥じらう顔を見ているうち、臭いで気づいた。
「あ、すまん」
トイレを出てやる。大きい方だったようだ。
しばらくして先生が呼ぶ。
ベッドへ戻した。
腹が減る。
寿司で良いというので寿司を頼んでぼんやりと先生の腹に頭をおいて待った。
先生の腹も鳴っている。
届くまでに気がつく。何か着せないといけない。
昨日の寝巻きは汚したから別の寝巻きを先生にまとわせる。
白い乳房にいくつもキスマークがあることに気づく。
先生が慌てて胸をしまった。
かわいい。
座椅子を出してこよう。
段々と目が覚めてきて昼を食う用意をする。
先生を座椅子に座らせて膝掛けを渡すとチャイムがなった。
寿司桶を受けとり、机に置く。
いただきます。
おいしい、と先生が嬉しそうに食べている。
そして食べ終わったら先生とまたベッドへ戻った。
食後の眠気にまどろむ。
夕方まで寝てさすがに目が覚めた。
寝ている先生のあそこをいじる。
徐々に滑りを増す中に侵入させるとさすがに目が覚めたようだ。
止めたところで止まらないことは知ってる先生はそのまま最後までさせてくれた。
終わった後窓を開ける。
匂いと熱気がこもっているから。
暫くして落ち着いた先生は風呂に入ると部屋を出た。
先生と交代に俺も入り一服する。
腹がへった。
スパゲティを希望する先生と食いに出る。
先生はほうれん草のクリームパスタ、俺は白味噌のハンバーグパスタ。
食後、先生が帰るというので駅まで送った。
このまま夜もうちというのは疲れすぎて無理なようだ。
帰りたくはないけれど、といいつつ稽古に支障が出るからと帰っていった。
 
帰りの電車の中、どうしてこうなったのかしら、と悩んで。
何がそんなに久さんを苛立たせたのだろう。
思い起こしていく内に、買い物から呼び戻した時には目が笑ってなかった。
そんなことに気づいた。
何か食べたいものがあったのかしら。
そんなことくらいでは怒らないわよね。
悩んでいるうちに駅についてバスに乗り替えて帰宅した。
「ただいまぁ」
「あら早かったね、泊まらなかったの?」
「ちょっと久さんの機嫌が悪くて」
「あらあらあら。またなんかあんたしたのかい?」
それが良くわからなくて困ってるのよね。
とりあえずは着替えて、着物の汚れを確かめる。
軽く手入れをして居間に戻った。
「あら? 律は?」
「友達のうちに泊まってくるって言ってたよ」
「そう…」
落ち着いたら眠くなって、早い時間だけど寝てしまうことにした。
久さんのことは明日、考える事にしましょ。
何か思い出すかも。
布団を敷いてひやりとした中に身を横たえる。
休みの前に久さんがいないのは珍しく、何か寂しい。
眠いのになかなか眠れず、それでもいつしか寝たようで朝が来た。
ぼんやりした頭のまま朝食の支度をする。
三人で食べて片付けて。
郵便物を見て思い出した。一昨日何か渡されたんだったわ。
あれどこやったかしら。
バスの時間が来てたから胸元に入れてそのあと…あ。
久さんのうちで脱ぎ捨てたから…。
一応昨日の鞄の中を探ってみると入っていた。
中を読む。
段々と頭が冴えてくる。
久さんが中を見たのだとしたら怒るわよね。これは。
「どうしたの、あんた。顔色悪いよ」
「あ、お母さん。あのね。これ。もしかしたら久さんが読んだかもしれなくて」
「どれどれ」
老眼鏡を取り出してざっくりと読む。
「こりゃあ怒るだろうね。読んだか聞いてみたら?」
「薮蛇だったらどうするのよ」
「お断りするんだから堂々と言えばいいんだよ」
まさかこんなのだったなんて。わかってたらその場でお断りしたのに。
ちょっと悩んで携帯を手にした。
電話、あ、まだ仕事中ね。
メールを打つ。
暫くして返事が帰ってきた。
あとであちらの部屋で話をしたいと。
少し怖くなったけれどあの部屋は道具はないから…。
お昼御飯はどうするのかしら。
食べてからいくと返事があった。
それまで落ち着かない気分のまま、庭掃除や洗濯物などをして過ごした。
お昼を食べてしばらくした頃、電話が鳴る。
久さんから。そろそろつくからと。
お母さんに言ってあちらへ移動した。
すでに鍵があいている。ためらってドアを開けた。
「いらっしゃい」
「あの、久さん。メールのこと…」
「とりあえず中にどうぞ。座って」
恐る恐る従う。
ん、とお茶を入れてくれた。
「あの。手紙のこと。読んじゃった?」
「読んだ。どうする気でいるのかな。後妻におさまる?」
「そんなわけないわ」
「その場で突っ返せよそんなもん」
「違うの、聞いて」
「何をさ」
「今朝になって中を読んだのよ」
「開封してあった」
「それはバスの時間が来て」
「バスん中で読んだんだろ」
「読んでないのよ、さっきなの。ほんとよ」
「どうせ俺は資産家でも男でもない。そいつの方がいいんだろ」
「あなたの方がいいのに決まってるじゃない。なんでそんなこと言うのよ」
ぷいっと背中を向けてしまった。
後ろから抱き締める。
「手紙、今日お断りの返事を書いて速達にするわ。私はあなたが好きなの」
本当に? と久さんが念を押してくる。
「あんなことをするのにそれでもか?」
「…してくれないのが一番なのだけど。好きよ」
じゃなかったらとっくに、そうね、紹介状でも書いてよその先生に渡してるわね。
現金収入が減るのは痛手だけどもきっとそうしてる。
「わかった。でもな」
「なぁに?」
「来る前は電話入れてくれ。それとハンガー使え」
あっ。勝手に行ったことと脱ぎ散らしてたのもいけなかったみたい。
「ご、ごめんなさい。つい」
「いや。おれも口で言えばよかったな。すまない」
ついつい最近は気を抜いていて何をしてもいい、そんな風に思っていたみたい。
親しき仲にも礼儀あり、だったわ。
久さんはあまり内心を言わないからやりすぎるのよね。
そっとキスをして。
気が緩んだとたん眠くなってきた。
「眠いのか?」
「昨日眠れなかったの」
「昼寝すればいい。俺も今日はこの後行くところがあるから」
「どこ行くの?」
「作業着屋。仕事着の補充にね」
じゃついていっても仕方ないわね。
「夕方、拾いに来るから飯食いにいこう」
「いいの?」
「このへんのうまい店、連れてってくれよ」
「わかったわ、待ってる」
「待たなくていいよ、寝てろ」
「はい」
頭を撫でられて、それじゃまた後でと久さんが出ていった。
お母さんに電話をして昼寝して夕飯を食べにいくと告げ、着物を脱いだ。
寝巻きに着替えてベッドへ潜る。
ここへ一人で寝るのは珍しいこと。
と思いながらもあっという間に睡魔に飲み込まれた。
 
暫く平穏な日々が続いたある日の午後。
お宅を訪ねると八重子先生がお稽古をつけていた。
「あら、いらっしゃい」
「こんにちは。絹先生は今日はいらっしゃらないんですか?」
「支部のお稽古よ。あらあんた聞いてなかったの?」
また言い忘れてたようだ。
まぁどうせいてもいなくても手伝うことには変わりないのだが。
手を洗って支度をする。
八重子先生がお昼を食べている間に水屋の用意。
立ち座りはさすがに大変らしく八重子先生がしたにしてはそう整っていなかった。
少し時間があるので自習する。
カタン、と音がした。
「わぁ山沢さんのお稽古してるところ初めて見た。格好良い…」
「それはありがとう。今日は大学はどうしたの?」
「休み。うちだと潮がうるさいからこっちでレポートしようと思って」
「晶ちゃんもお稽古したら良いのに」
「うーん…」
自習を終える頃生徒さんが来はじめ、晶ちゃんは退散した。
八重子先生も席についてお稽古が始まる。
俺が来る日は皆さん初心者に毛の生えたもの、だそうで。
朗らかに和やかにお稽古がすすむ。
少し井戸端会議のようになることすらある。
俺は苦手だが。
先生方は教室運営上避けては通れない。
うんざりしていても笑顔。先生は俺と二人の時に愚痴を言う。
 
生徒さん達が帰ったら最後に俺のお稽古。
「絹がもうすぐ帰るからそれまでしようかね」
そんなことを言っていたが七時になっても帰らない。
電話が鳴った。
誰かが出てくれたようですぐに鳴りやむ。
茶杓を清めていると律君がやってきた。
「おばあちゃん。お母さんから電話。遅くなるから先に食べててって」
「あらあら。まぁ。何時くらいになるって?」
「十時過ぎるかもって言ってたけど」
「随分遅いな」
「どうしたんだろうねえ」
「カラオケみたいだったよ」
「あー…たまにはしょうがないですよね」
八重子先生に同意を求める。
うんうん、と頷いてお稽古を終え、道具をお片付け。
「夕食どうします?」
「出前でも取ろうと思ってたんだけどどうかねえ」
「そうしますか」
律君と晶ちゃんにも要望を聞いて注文した。
水屋もしまい終えた頃、出前が届いて食事をとる。
風呂に入ったり繕い物をしたり。
晶ちゃんは帰り、八重子先生は疲れからか早々に寝た。
孝弘さんは離れで夜食を食べている。
律君はまだ起きているようだ。勉強だ、きっと。
先生はきっと帰ってきたらすぐ寝るだろうと思い、部屋に布団を敷いておいた。
茶道具の本が棚に有ったので眺めつつ待つ。
時計が十時を知らせた。
そろそろ帰ってくるだろうか。
水屋の本や花月の本を読んで気がつくと十一時前。遅いな。
だが機嫌よく飲んでるときに帰りを待つメールは気を削がれるか。
もう少し待とう。
 
結局先生は十二時前に帰ってきた。
酒の臭いが濃い。
着替えさせて後始末を引き受け、布団にさっさと寝かせた。
「悪いわねぇ~」
髪のピンを外してやる。
着物を片付け鞄の物を整理し、化粧をとってやった。
気持ち良さげに寝息をたてている。
俺も横に潜り込む。
寝ているのにするりと俺にくっついてきた。
可愛いな。
そのまま寝ていると夜半、股間を触られている気がして目を覚ました。
寝息は聞こえるままだ。
また先生が無意識に触っているらしい。
残念ながら今晩は抱いてないからパッサパサなのである。
擦られると少し痛いんだよなぁ。
手をどけて寝直した。
が、再三、四起こされてしまったのであった。
翌朝は三人して寝過ごし律君を慌てて送り出した。
やれやれとばかり掃除や洗濯をする。
先生は全く使い物にならない。
俺もやることやったら昼寝していいとのことだ。
昼寝するためにまずは買い出しや晩飯の下ごしらえ等を済ます。
それから先生の横に潜り込んだ。願わくば昨晩と同じ理由で起こされないことを。
たっぷりとよく寝て良い匂いに目を覚ます。
先生は布団にいない。
晩飯のようだ。
台所へ向かうと先生に謝られた。
「昨日はごめんなさい、待っててくれたんでしょ」
「構いませんよ、楽しかったですか?」
うん、と嬉しそうにしている。
「あのね、来週の連休。土曜日の昼からあなたの家にいくわ。いい?」
「いいんですか? お稽古は」
「普通のお家は三連休でしょ、生徒さんお休みなのよ」
なるほど。
あれ、でもそのあたりって先生は生理じゃないだろうか。
出来ないことは念頭に置いておかねばならんなぁ。
 
それから夕飯を食って風呂を使ってから帰宅した。
 
「そうだ、ちょっといいですか?」
お稽古のあと、久さんに呼び止められた。
どうしたのかしら。
 
「わかめ酒して欲しいな」
人の来ない部屋でささやかれた。
「お酒にわかめを入れるの?」
 
久さんがおなかを抱えて笑いだした。
「どうしたの? 何か変なこと言ったかしら」
 
突然抱き締められて頭を撫でられた。
「なぁに? ねぇどうしたのよ」
「うん、うん、そうだよな。わかんないよな」
一人納得していて私はちょっと不機嫌になった。
それを見て久さんは嬉しそうにキスをする。
 
「わかめ酒ってのは下の毛をわかめに見立てて股間に酒を注ぐことですよ」
理解ができると急に恥ずかしくなった。
「お酒の中に毛が揺らぐのがね、わかめみたいでしょう」
「…ばか、そんなのしないわ」
「してほしいなぁ。美味しくいただくからさ」
照れているうちに玄関から訪う声。
久さんが身を離して対応に出てくれた。
どうしよう。
してあげる? やっぱり断る?

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緑の綺麗な人通りのない道だ。
涼しい。
伏拝所がある。昔は女人禁制だったから女はここから奥社を望んで拝んだそうだ。
暫く歩くと分かれ道。
火之御子社へは徒歩3分。
それを見た先生に手を引かれて行く。
注連縄をくぐり標識に従うも微妙な道だ。あまり使う人がいないのだろう。
少しすべるので先生は俺の肘を掴んでいる。足元が悪い。
着物だから先生は少し困っている。
「洗える着物にして良かったですね」
「本当、こんな道だとは思わなかったわ」
舗装とは行かないまでも整備されてると思ったんだけど。
とはいえ先生自らこっちを選んだのもあってかそんなに愚痴はおっしゃらない。
ついた。ここのご祭神は天鈿女命。
先生には関係ない。
軽くお参りを済ませもとの道へ戻る。
先生は不安げだ。
それでも俺を杖代わりに歩いていくと舗装路に出た。
歩き易さからか手を離されてしまった。
まぁいいけど。
やっと観光センターについて先生は安堵の息を落とす。
少し整えてもう一息。
階段にうんざりしつつも上りきっての参拝。
ご祭神はオモイカネ…メガテンを思い出してしまった。
違う違う、と思いつつよく読むと常世の神か。
長寿を祈ればいいのかな。
もっと下調べをしてから来るべきだった。
下りてきてバスの時間を見ようとしたときバスが来た。
あわてて飛び乗る。
先生はどこかそのあたりで時間を潰す、と言ってくれた。
バスに数分揺られて戻った。車に乗り換える。
すぐに戻ったが先生はどこにいるのだろう。
携帯を鳴らすと場所を教えてくれた。
駐車場に車を置いてその店へ向かってみれば竹細工の店。
ざるやらかごやら。
家で使っているざるが傷んできた、と先生は買い換えたいようだ。
花籠も。
いくつか買って車に積み込む。
奥社は健脚で徒歩30分と聞き、先生はどうしよう? という顔でこちらを見る。
「明日筋肉痛になってもよければ」
うーむ、と悩んでいる先生に着物ではちょっとやめておいたほうが、と声が掛かった。
それに足元がねぇ、と。
とはいえ先生はなかなかに健脚で雑木林に囲まれている所為か足元が悪くても平気である。
結局、先生は行きたい! と言うので諦めた。
とりあえず奥社近くの駐車場へと走らせる。
見上げて先生は気合を入れた。
「その前にトイレ行っておきましょうね」
「あ、そうね」
意外と綺麗なトイレで小用を済ませ、水のペットボトルを補充。
たぶん上には自販機はない。
戻ってきた先生が足元を確かめ、それから歩き出した。
最初は平坦に近い、楽な道で先生も物見遊山といったところ。
着物姿が珍しいのか少し注目はされた。
門を越えて歩くと杉並木。太い。
建材にしたら良いのが取れるだろう、なんて罰当たりなことを考える。
途中から階段のある山道に変わった。
先生は俺を杖にしたり、もたれて休憩したり。
さすがに先にほかの宮を歩いて回ったのが足に来てるようだ。
先生に水を飲ませたり塩をなめさせたり。
何とか登りきる。下を見れば絶景。
先生の息が整うのを待つ。
少し汗も引いて落ち着いて、手水を使いそれからお参りをした。
ほかの社に比べると…だが、このあたりは雪がすごい。
ということで仕方ないのかもしれない。
と言っていたら横にいた方がこのあたりの方で、木造は雪崩で流されるとの事。
よく雪崩があるらしい。冬はやめとこう。
どうやら屋根の高さ近くまで積もるらしい。
九頭龍社にも参ってそれから下りだ。
これは楽。先生は滑らないよう気をつけて歩く歩く。
やっと下り終えて。
「おなかすいてる?」
「すいてる、わね」
「並んでるみたいだけど」
「いいわよ」
並んでいるとソフトクリームならすぐ食べれることに気づいた。
「あれ食べたいわ」
熊笹ソフトか…。面白そうだ。
保険にバニラソフトも買って食う。あ、意外といける。
食べ終わった頃呼ばれた。
席につくとお通しに漬物と水が出る。
両方うまい。
これは期待できそうだ。
とりあえずは一人前。先生が鴨ざる、俺は天ざる。
食べてみるとやはりうまい。観光地なのに意外。
先生に天麩羅を少しあげて俺はそばを半分追加した。
天麩羅はさくっとうまく揚がっているので先生も胃もたれしないだろう。
おいしい、おいしいと食べて満腹になった。
「さてと。そろそろ行きますか、本当の目的地」
「そうね」
先生も笑っている。
駐車場へ戻り車に乗る前に再度トイレを済ませた。
「あら、ここにもお蕎麦屋さんあったのね」
「ほんとだ、見落としてたな」
帰りに気が向いたら木いちごソフトを買おう。
駐車場からはすぐそこの美術館へ行った。
徒歩5分と聞いていたが車で。
戻るのが面倒だったからだ。
開放感のある場所に美術館はなかなかいい。
先生は草履や足袋を履き替え、裾を点検してから降りてきた。
「塵除け着て来て良かったわ」
「まさに。あんな道とは、でしたよね。着物はどうですか」
「そう汚れてないわ、大丈夫」
先生は塵除けを脱いで薄手の羽織を着た。
「これでいいかしら」
「うん、行こう」
中に入ってすぐの建物はエントランス。
ラウンジや立礼の席があるようだ。
展示棟を見て歩く。柱がない。
横山大観、下山観山、酒井抱一…。先生が説明してくれたがよくわからん。
しかし10点ほどである。
これは戸隠へ行って正解かな。
ゆっくりと先生に従って見て歩き、エントランスにあるラウンジへ入った。
飯がうまそうだ。
でもまだ食う時間には早い。
どうも長野駅にもあるらしいので帰りはそれにしよう。
信州りんごのテリーヌを頼む。
ハーブティと紅茶をひとつずつ頼もうか、と聞いた。
先生はビールを見て飲みたそうにしている。
「良いですけど飲みすぎないでくださいよ」
 志賀高原IPAを注文した。
しかしテリーヌとビールって合うのかな。
食べたいもの食べたらいいけどさ。
ビールが来て先生はおいしそうに飲む。
「うー俺も飲みたくなった」
「駄目よぉ? 飲酒運転になっちゃう」
テリーヌもハーブティもうまい。
後から来た客は弁当を頼んでいるようで運ばれているものを見ると欲しくなる。
ローストビーフの弁当と白ワインで煮た鳥の弁当だな。
車じゃなければその辺のものを頼んでビールを飲んでいただろうなぁ。
その客も着物を着ている。
意外と着物人口は多いのだろうか。
先生はぺろりと瓶を空けてテリーヌもすべて食べた。
昼の蕎麦、少なめだったのが良かったのだろう。
それから車に乗り込む。
走行中も気持ちの良い森の空気が入ってくる。
先生は途中から反応がなくなった。
うつらうつらとしているようだ。
疲れと満腹と酔いと。
乗り心地のよさがあいまっているようだ。
俺の車よりもいいからなあ。
とはいえ魚の積みやすさと言う利点からああいう車しかない。
まさか二台持ちは無理があるからな。
先生がかすかに立てる寝息を聞きつつ市街地へ戻る。
まずは宅急便を送ろう。
先生が寝ているのをそのままにある程度の荷物をその場で梱包して先生の家へ送る。
それからレンタカーを返しに行った。
「起きてください、先生。つきましたよ」
「ん、うぅん…どこ?」
「車借りたところ」
「あら? もうそんなところなの?」
「良く寝てましたね」
先生は苦笑して身支度を整えている。よだれはたらしてない、大丈夫だ。
荷物をすべて手に持ち、返却の手続きをした。
駅へ向かう。
ほんの少し歩いたら駅だから楽だ。
駅の中で先生はさらに土産を選んでいる。
ビール自体は東京でも買えるよ、と言ったらそれならとほかのものを沢山買い込んだ。
あ、宅急便、駅の中にもあったのか。
土産物もひとつにまとめ、送った。
 
それから駅弁。
先生はまだおなかがすかないというが俺はすでに空腹。
少し迷ったが先程の美術館にあったローストビーフの弁当を買った。
それとお茶を2本。
乗車券を買い、乗り込む。
行きと同じグリーン車。
先生はあきれた顔で俺の食うのを見ている。
「おいしい?」
「ん、いけますね」
一口食べさせた。
「おいしいわね、これはいいわ」
「半分食べますか?」
「それはいいわよ、まだおなかすいてないもの」
お茶を飲んで暫くするとまだ眠かったようだ。
俺の肩にもたれてきた。
少し、食いにくい。
けど重さが心地よくもある。
食べ終わって片付けた後、先生を眺めているとキスしたくなった。
だがこんなところでするのは宜しくない。
大人としての良識である、が。我慢は辛い。
そのうち食後の俺もだんだんに眠くなってきた。
終点で降りる、財布は先生は帯の中、俺は尻のポケット…。
よし、熟睡はしないよう気をつければ。
いやまて、最近置き引きがいると聞くからには起きているべきか。
手荷物は先生のバッグと俺のワンショルダー、大した物は入れてないとはいえ。
しかし段々と瞼が落ちていく。
せめて先生のバッグを守ろうと俺と先生の間に差し込んだ。
先生の袖でカモフラージュする。
さすがにこれを触ればどちらかが気づくだろう。
安心して眠りに落ちる。
次に目が覚めたのは大宮へのアナウンスで、小一時間眠れたようだ。
カバンを確認する。
俺のバッグは置いたときと変わらない状態、先生のバッグも先程と変わらない。
ほっとした。
財布もケツの座りの状態からして何も問題はない。
先生はまだ気持ちよさそうに寝ていて、俺の肩によだれをつけている。
上野を過ぎたので先生を起こす。
「そろそろ降りますよ。起きて」
「んー」
「家で何時間でも寝ていいからさ」
俺にもたれたまま小さくあくびをして、よだれに気づいた。
ハンカチでぬぐい、もう一度あくび。
「眠い…」
「俺もです。帰ったら飯食って寝ましょう」
「ごはんいらない…」
「はいはい」
甘えた声が耳に心地よく、可愛い。
駅につき、何とか先生らしく気を入れて。
俺の家へ向かう。
家にたどり着いたとたん和室で全部脱ぎ、寝巻きになって布団に潜り込んだ。
相当眠かったようだ。
着物を片付け、それから先生の化粧を落としてやる。
すべて始末がついてから、先生の朝食べるものを買いに行った。
ディニッシュとスープ。
部屋に戻り、俺も寝る支度をした。
まだ日が落ちきってはいないがよく眠れそうだ。おやすみなさい。
 
いつもの時間に目が覚める。
さすがに習慣だ。まだ疲れは抜けてない。
行きたくないなぁ。こんな日は。好きな女も横に寝ていて。
それでも支度をする。
整えて出勤したが暇で早く帰りたい気分だ。
缶コーヒーを消費しつつ昼近くになりやっと帰れた。
「ただいま」
あ、草履がない。
帰っちゃったのか。
寂しいな、と思いつつ風呂を浴び、着替えた。
和室には昨日の着物がまだある。
持って帰らなかったのか。
居間に入る。あれ、昨日の荷物そのまま?
もしかして、と寝室のドアを開けると先生が寝息を立てていた。
「先生? 起きて」
「うぅん? ん? あらお帰りなさい」
大あくびと伸び。
「ただいま。帰る支度しないともう11時ですよ」
「あら、そんな時間?」
先生は風呂へ飛んで行った。
シャワーでざっと流して戻ってきた先生は髪が乾かない、と慌てている。
とりあえず着替えをそろえて出してあげた。
「落ち着いて。車の中でお昼を食べたら間に合いますよ」
「あ、うん、そうよね」
それでも気が急くようで却って着物の着付けがうまくいかないようだ。
「ほら、焦らない。手伝いますから」
何とか着替えて化粧も済ませ、トイレに行かせた。
俺は荷物を用意して先生の草履を出す。
着物に合ってないけど仕方ない。
先生が出てきたので戸締りを確かめ、乗車した。
途中、軽いお弁当を買って先生に食べさせる。
「ゆっくり食べたらいいですよ」
「ごめんね、私だけ悪いわ」
「ついたら俺も食います」
少しスピードを出して先生のおうちに到着。
ちょうど朝のお稽古が終わった後らしい。
「あぁ、お帰り」
「ただいま、遅くなっちゃってごめんなさい」
「楽しかったかい?」
「戸隠、すごかったわよ」
「で、山沢さんは?」
「まだ車なの。荷物があるから」
「ああ、そうそう。何か届いてたけど」
「たぶん旅行中のだわ。久さんが送ってたもの」
「じゃ後で開けたら良いかねぇ」
「そうしましょ。お母さんご飯は?」
「食べたよ、あんたは?」
「車の中でいただいたの。時間がなかったから」
「山沢さんは食べたの?」
「まだなのよ。だからお稽古、支度終わったら食べてって言ってあるわ」
「そう?」
しゃべっている間に山沢さんが来た。
「こんにちは、八重子先生」
「はい、こんにちは」
「先生、トイレ行きましたか?」
「あ、まだ。行ってくるわ」
先生がトイレに行って、俺は持ってきたお土産の一つを八重子先生へ。
「美術館、良いところでしたよ。涼しくて広くて、景色も良くて」
「へぇ、そう? 今度一度行ってみようかねえ」
「そうですねー、出来たら次の善光寺の御開帳がいいでしょうね」
「あんた何年後だい、それ」
「七年に一度だそうです」
「その頃まで元気でいられるかねぇ」
「いてくださいよ」
さてそろそろ支度をば。
水屋に入って帳面を繰り、今日のメンバーを確認して用意。
駄目だ、炭する人はいない。
久しぶりに炭をついで、各々の道具をそろえた。
暫くして先生が茶室に入って炭の様子を見る。
「久さん」
「はい」
「下手ねえ」
「…すいません」
先生が手直しをしてくれた。
「お湯、沸いてるの?」
「はい今入れます」
先生が動線を避けて定位置につかれる。
半分を切っている釜にやかんから湯を足す。
「それくらいでいいわ」
「はい」
くぅ、と腹が鳴った。
先生は笑って食べてきたら? と仰るがもう少しで終わるからと支度を済ませた。
それから先生が一服点ててくださった。
うまい。
「あ、ごめんなさい、お菓子出してなかったわね」
「いえ、どうせご飯食べますから良いです」
やっぱねぇ、自分で点てるより先生のはおいしいんだよ。
なんでだろうなぁ。
「もう一服どう?」
「いただきます」
流れるようにお茶をたてる。美しい。
「ねぇ、実は…」
何か言い出そうとしたとき、生徒さんがいらっしゃった。
「また後で…聞いてちょうだい」
「はい」
「こんにちは、飯島先生、山沢さん」
「はい、こんにちは」
「あ、山沢さんいいなぁ」
「ははは。こんにちは」
飲みきって器を返す。
「じゃ、ちょっと」
「行ってらっしゃい」
「あれ? お稽古一緒にされないんですかぁ?」
「お昼まだなんですよ」
「あー」
納得したようだ。
台所に行ってさっきのお弁当を温める。
俺にはちょっと少ない。
「あんたそんなんじゃ足りないだろ」
八重子先生がそう言いつつ台所に来て、冷蔵庫から2品出してくれた。
助かる。さすがに勝手にあさるのはどうかと思っていたから。
食べ終わって居間で旅行の話を問われるがまま話す。
戸隠の奥社は八重子先生は無理だろうという話になった。
「そういえばあの子、草履で上ったの?」
「いや、地下足袋ですよ。草履に見せかけた」
「そんなのあるの?」
「地下足袋に鼻緒つけるだけなんですけどね。私が使おうと思って」
それを山道は想定外という先生に貸したわけだ。
白でも紺でもなく柄つきなのを見て女心を刺激されたらしい。
さて、食後の一服もすみトイレに行ってから茶室に戻る。
三人目の生徒さんが稽古している。
茶碗や茶巾を清め、水指に水を足した。
先生はにこにことお稽古をつけていらっしゃる。機嫌は良いようだ。
そのままいつものようにお稽古が終了。
見送りに立つのに先生が俺を呼び、杖にした
「今頃筋肉痛きちゃった、いたた…」
「あら先生、大丈夫ですか?」
「ええ、多分…」
「じゃあ、ありがとうございました、また来週お願いします」
見送って戸が閉まったのを見て抱き上げた。
「あ、ちょっと」
「歩くの辛いんでしょう?」
「そうだけど、やだ、ねぇおろしてちょうだい、恥ずかしいわ」
「転んだりされちゃ困りますから。暴れないで」
トイレに行きたいそうなので連れて行って、着物をたくし上げた。
しているところを見ているとすごく顔が赤くて恥ずかしそうで良い。
おならも。
「聞かなかったことにして…」
「寝てるときにしてるの聞いてるから」
「やだ、してる? 本当?」
「みんなしてますよ、普通です」
始末をして、立たせて着物を下ろす。整えるところまでして。
居間へ抱き上げて連れて行く途中、律君が帰ってきた。
「ただいま…ってお母さん? 何!?」
「お、お帰りなさい、あのね、これは違うの」
「違うって何が?」
「おかえり。君のお母さん、今酷い筋肉痛で立てないって」
「あっ、あぁそうなんだ。でもなんで山沢さん?」
「トイレ行きたいっておっしゃったからね、ふふふ」
そのまま居間へ入る。
「なんだねぇ、騒がしいと思ったよ」
下ろして座らせた。
「昨日の今日で来るなんてまだまだ若いですよね」
「本当にねえ」
「じゃ、後始末してきますね」
先生はほっとした顔で汗をぬぐっている。
今晩は先生を抱けないのは残念だけど明後日は抱けるだろう。
その時にいじめてやろう。
不埒なことを考えつつ後始末を終わり、おいしそうな匂いに引き寄せられた。
「山沢さん、あんた絹の横。食べさせてやっとくれ」
「ちょっとお母さん、自分で食べるわよ」
「お茶も飲めないくらいなのに無理してどうするんだい」
「おお、腕まで来ちゃいましたか。そりゃ大変だ。今日はお風呂も入れて差し上げます」
「ちょっ、もう。久さんも悪乗りしないで」
「まぁでも寝るまではいますよ」
「そうしてやって」
先生を食べさせつつ、自分も食べる。
照れくさげなのが可愛い。
いつもより少なめでもういらないという。
夜食を用意しておこう。
食事の後は旅行の土産を開封。
あれやこれやを出して土産話もともに。
暫くして先生がもじもじとしだした。
「トイレ?」
うん、とうなづく。
抱き上げて連れて行く。すごく恥ずかしそうだ。
二人きりの時よりも親や息子の前ではやっぱり恥ずかしいんだろう。
拭くのも体制が辛いようなので拭いてあげた。
ついでに軽くなぞる。
「ひっ…だめ」
「そうだね、こんなところじゃね」
キスをして舌を絡める。
「ばか…」
それから着物を整えて居間へ連れて戻した。
風呂が沸いたので先生はどうするか?と聞いた。
「来る前に入ったから一日くらいいいわ」
「そうですか? 丁寧に洗って差し上げますよ?」
「すぐそうやってからかうんだから」
みんながお風呂に入った頃先生があくびをした
「もう眠い?」
「やっぱり疲れたのかしら」
「じゃ寝ますか。部屋行きましょう」
抱き上げて俺の部屋ではなく先生の部屋へ。
「どうして?」
「俺、今日は帰らなきゃいけないから。抱きたいけど…」
「そう、そうよね、明日平日だったわね」
「明日も来ますよ。きっと動けないでしょうから」
「ありがとう、そうしてくれると助かるわ」
座らせて布団を敷き、先生を脱がせる。
「何か変な気分ね」
「そうですね」
笑いあって寝巻きを着せて、先生を布団に入れた。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
口付けを落として、少し撫でているとすぐに寝息になった。
暫く寝顔を楽しんで、居間に戻る。
「じゃ八重子先生、私もこれで失礼します」
「ん、そうかい。ご苦労さん。明日は来るの?」
「来ます。お昼は先生と食べます」
「はいはい、用意しとこうかね」
「あればうれしいです。お願いします」
「じゃまた明日。お休み」
「おやすみなさい」
別れて車に乗り込み、走らせる。
帰宅して布団に潜ればすぐに睡魔がやってきた。俺も疲れていたようだ。
 
さて翌日。
仕事を終えて先生のお宅へ。
奥にいるはずの先生の様子を見に行くとちょうど柱にすがって出てくるところだった。
「あ、久さん。いらっしゃい。お願い」
「ただいま。トイレ?」
「うん」
ひょいっと抱き上げて連れて行く。
「出て待っててくれる?」
「いいよ、終わったら教えて」
きっと大きいほうだ。
うちでなら別だがこの家では意地悪は出来ない。
暫く待っているとノックの音。
入って先生を回収する。
洗面がまだと言うのでどうせだからと風呂へ入れることにした。
丁寧に洗ってやると先生は気持ちよさそうな顔をする。
抱いている時より。
少し意地悪をしたくなって乳首をつねる。
「きゃっ、やだ、痛い」
そのまま股間をまさぐる。
「こら、駄目。こんな時間に。お母さんもいるのよ」
そういいつつも濡れてきた。
水音はシャワーが床を叩く音に紛れ、外へは漏れない。
先生は声を出さぬよう、俺の腕に爪を立てて我慢している。
可愛い。
「くぅ…うぅ、ひっ、ん…」
突起をしごくとそれでも漏れ出る声。
ふるふるっと身が震え、脱力。逝ったようだ。
「はっはっ、あぁ…、ばか…、もうっ」
先生の手がぴしゃっと俺の太ももを打つ。
「かわいいね、良い子だ」
「あ、ぅ…」
中をまさぐる。
突起と同時にやってやるとすぐに逝く。
「も、だめ…、苦し…」
「このままあちらの部屋に連れて行こうかな」
首を弱々しく横に振る。
「だめ、むり、辛いの…、ね。お願い」
「しょうがないな。可愛いあなたの言うことだ、今は取敢えずここまでにしましょう」
中がきゅうきゅうと締め付けていて、もう一度だけ逝かせたくなった。
「んっ、んぅ…くぅ…、ひぃあぅ、っ…」
それでも必死に声を抑えている先生がいとしい。
俺の太ももを引っかく。
腰が浮き上がって、ふっと落ちた。
少し足が痙攣している。
息が荒い。
ゆっくりと汗を流してやって落ち着くのを待つ。
軽くキスをして風呂から出た。
部屋に連れて戻る。
「そういえば昼は食いました?」
「あ、まだ」
「何か食べたいものあるなら」
「あ、私あれ食べたいわ」
「うん?」
「ほら、あれ。最近CMしているカレーの」
「ハンバーガー?」
「そうそれ。買ってきて欲しいわ」
「了解。他には?」
「サラダもお願いね」
はいはい、と部屋を出て居間の八重子先生に声をかける。
食事も済んでいたのでいらないそうだ。
車に乗って近くの店舗へ買いに行く。
ついでに俺もポテト食べよう。
そんなに待つこともなく出来たのですぐに取って返す。
八重子先生は茶室でなにやらしておられるようだ。
ただいま、と声をかけ先生を起こすと食卓で食べると主張する。
仕方なく担いで連れて行き、座らせた。
買ってきたものを広げる前に手拭で胸元を守る。
「そんなのいらないわよ」
「や、ここのは絶対落とすと思いますよ」
そう言ってさすがに今日は自力で口に運んでいるが、思ったとおりソースが落ちた。
むっとした顔をしている。
「食べにくいのねぇ」
「でしょ、でもうまい」
「それはそうだけど…外では食べたくないわね」
「ただいまー、あれ?」
律君が帰ってきた。
先生はかぶりついたハンバーグを咀嚼してから、お帰りと言う。
「珍しいもん食べてるんだね」
「最近広告よくしてるから食べたくなっちゃったのよね。台所にあんたのご飯あるわよ」
「あ、そうなんだ?」
「たまに食うとうまいだろ、こういうの」
ぺしっと先生が額を叩く。
「言葉遣い。悪くなってるわよ」
「すいません、つい」
サラダも食べ終えた先生の手を拭いてる間に律君が自分の分を持ってきた。
「筋肉痛どう? まだ痛い?」
「そうねぇ、昨日よりはましよ」
「後でマッサージしましょう。オイルも持ってきてるから」
「あら頼める?」
「どうせ肩も凝ってますでしょう?」
「そうなのよー」
「山沢さんって何でも出来るんだね、すごいなぁ」
「マッサージは覚えるといいよ、女の子が群がるよ?」
「あら。そういうことで覚えたのねえ」
「いやいやいや、誤解です」
失言だ。
「用意してきます」
そそくさと席を立つ。

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h48

翌朝は二人ともすっきり早朝に目が覚め、先生は上機嫌で風呂に入っている。
鼻歌まで聞こえ出した。
その間に朝飯を作って昨日の洗濯物をたたむ。
風呂から出てきた先生に皺酷いわね、と指摘された。
「ま、こんなもんですよ。どうせ仕事で着るもんですし」
気にしない。
「もうちょっと気にしなさいよ」
そういいつつ、ベッドからシーツをはいで洗濯をし始めた。
「良い天気ねぇ、これならお昼までに乾くかしら」
「かもしれませんね。さ、メシにしますか」
「そうね、いただくわ」
ゆっくり朝食をとった後、先生がシーツを干し掃除機をかけて俺は風呂とトイレの掃除。
久々に納戸に入り込んだ先生が溜息をついている。
「相変わらず変なもの集めてるのねぇ…」
この間買ったガラスのディルドと見た。
「使ってほしいですか?」
「いらないわよ」
ぺしっと俺の額を叩いた。
「あらいけない、手が汚れてたわ。頭洗ってらっしゃい」
「はいはい」
洗面所で洗うと叱られた。
面倒くさいじゃないか。
タオルドライして生乾きのまま昼飯に誘ったら今度は呆れられてしまった。
「風邪引くわ、だめよ」
連れ戻されてブローされてしまった。何かくすぐったい。
ふと気づくといつもと違う髪形になっている。
「遊んだな?」
うふふ、と楽しそうにしている。
「そろそろ髪切りに行きなさいよ、伸びてるじゃないの」
「ああ、そういえば最近行ってなかった」
「忙しくさせちゃったものねえ」
「まぁそれも八重子先生帰ってきたら気分的に楽でしょう?」
「そうね」
身支度を整え、持ち帰る荷物を積んで途中で昼を食って先生のお宅へ行くことにした。
先生のご希望により昼飯はサブウェイ。
一度買ってみたかったそうだ。
車で食いに来るような物ではないとは思うのだが…。
絶対こぼすだろうと思っていたが意外と先生はこぼさなかった。
上手に食うもんだなぁ。
感心してたらたまねぎが落ちた。
ついニヤッと笑ってしまう。
まぁ俺は俺でかなりこぼしているわけで。
先生のこぼしたのも一緒に始末した。
「おいしかったわ、そろそろ帰りましょ」
「はい」
帰宅して落ち着いたら休み明けの稽古の準備。
風炉になるからね。
でもこの間八重子先生と二人で出すものは出したんだ。
だから先生のしなきゃならない事はほんの少し。
茶室の支度をした先生が稽古をすると言う。
「あなたもお客様のお稽古と、それからそうね、何かお点前しましょ」
「あ、はい、お願いします」
まずは一度平点前を、それから先生は茶筅荘の点前をされた。
「あなた茶碗荘ね」
茶碗荘はあまり好きじゃないんだよなぁ。
それ知ってるからだろうけど。
やってみるとやはりスムーズには行かなくて、先生は無言。
「一応覚えてはいるのねぇ。でももっとお稽古しないと」
「はい」
玄関から律君のただいまが聞こえる。
「あれ、お母さん達帰ってたの?」
「おかえりなさい」
「そうよ~、手を洗ってらっしゃい。お菓子あるわよ」
「うん、わかった」
そういえばさっき何かいろいろ買ってたな。
玄関からごめんくださいの声も聞こえた。
先生がさっと立って行く。
「あ、後始末お願いね」
「はい」
手早く片付けて様子を伺うとおしゃべりに花が咲いてるようだ。
お茶が出てない。
先生が目配せするので支度して出し、買い物へ。
晩飯の用意しないとね。
お昼があれだったから和食が良いかな。
いくつか献立を考えつつ八百屋を見ていたらキャベツがおいしそう。
蒸しキャベツ、しようかな。
だったら人参とシメジと肉で良いだろう。メインは。
あ、しし唐。いためるか。
しかしジャコ高いんだよなぁ、その辺で買うと。まぁでもカルシウムは大事だ。
後はなに作ろうか。
うーむ、思いつかない。
先生にメールしたところ、小松菜の煮浸しが食べたいそうだ。
ちょっと野菜率が高いけどいいだろう。
買って帰って台所へ入る。
下ごしらえを済ましたころ、来客がやっと帰った。
先生が参戦してくれて効率が良くなる。
「あ、お父さん食べるのかしら」
「一応炊いてますよ」
「あらそう、ちょっと聞いてくるわ」
あ、木ベラ持って行っちゃったよ…。
仕方なく菜箸で豚肉を炒める。
菜箸は結構苦手なんだよな、刺さっちゃって。
「お父さん食べるって言ってるけど足りるかしら」
戻ってきておかずを見て考えている。
「常備菜ないんですか? ないなら俺、どっかで食って帰るから良いですよ」
「それはだめよ」
そういって冷蔵庫を覗き込んでいるが明日の朝の分しかない。
「ほら、できましたよ。俺は帰るから後はよろしく」
割烹着を脱いで先生に軽くキスした。
「こら、もう」
「じゃあまた明日」
「ありがと、ごめんね」
ばいばい、と手を振って帰宅する。
途中、居酒屋に入って酒を飲めないのを残念に思いつつがっつり食った。
 
ゴールデンウィークが終わり、平常どおりのお稽古が始まって暫く経った頃。
母が退院してきた。
山沢さんはこれまでのように毎日来てくれる。
様子見、と言ってもう少ししたらまた二日に一度にすると言う。
ずっと毎日いてくれたら私はうれしいのだけど…。
 
この間、兄さん達や姉さん達が集まってお祝いをしたときは遠慮して来なかったけど。
遠慮なんてしなくていいのに。
 
そうこうしている間に梅雨に入り、久さんが買ってくれた乾燥機が役に立っている。
久さんはそろそろ、とたまに来ない日が出てきて少し寂しい。
 
それでも泊まってくれる夜は寝過ごさない程度に、と愛してくれるけれど。
何か心が離れているのじゃないかと不安になってしまう。
母はそんなはずはないと言うけれど。
 
 
梅雨に入り仕事が少し忙しくなってきて、先生のお宅に行く気力がない日が出てきた。
幸い八重子先生も復調し、ご飯の支度くらいは、と言っていただいている。
これから夏に向けて暫く毎日は通えない日が続くだろう。
しかし先日の地震には驚いた。
先生は意外と怖がらなかったけれど。
抱きついてくれるかと期待したんだがなあ。
何より先に火の始末に走って行かれるとは思わなかった。
しかし、暑い。
夏になったらまたあっちの部屋で抱くことにしよう。
 
 
梅雨に入っていつもならシトシトと鬱陶しい天気のはずなのだが。
今年は暑かったりゲリラ豪雨だったり寒かったりで先生が外出を嫌がる。
たまにはデートしたいんだけどな。
天候不安定だと疲れちまうんだろう。そう納得させて日をすごす。
何か先生は屈託のある様子で心が晴れない。
言いたいことがあるなら言ってくれれば良いんだが。
 
そんな微妙な雰囲気に焦れたのか八重子先生が長野へ行くようにとおっしゃった。
なにやら新設の美術館ができたらしい。
しかしながら会社は休めない。
となると一泊ということになる。少し渋ってたら先生が機嫌を悪くした。
「ですけど先生が大変でしょう? 4時間くらい電車ですよ、帰りは」
「久さんのうちに泊まって次の日帰るわよ」
「なに言ってるんですか、お稽古どうするんですよ」
「う…」
「いいよ、朝くらい。もう出来るよ」
「お母さん、良いの?」
「なんだったら律に手伝わせるよ、行っといで」
本当に甘いんだから。病み上がりなのに。
と、苦笑いしていると先生に足をつねられた。
「嬉しくないの? 嫌なの?」
「嫌じゃありませんよ」
「もうっ」
あ、席立って行っちゃった。
参ったな。
「取り合えずまぁ来週の火曜にでも、と思いますが」
最近火曜は人が少ないのでお稽古日ではない。
「そうだね、それでいいよ」
「その美術館どういうところなんですか?」
「よく知らないんだけどね…」
と話してくれた。
なんでも以前から上村松園やルノワールなどの絵画がメインの美術館の分館らしい。
そして今回開館に当たって屏風展をしているとか。
屏風かぁ…。
2時間半もかけてみるべきものが屏風。
「あ。戸隠ですよね、ここ。戸隠神社近いんじゃないですか?」
「どうだったかねえ」
さっと地図を調べる。近い。行き道だ。善光寺もあるが。
「先生ー! ちょっと来てください」
暫くしてどうしたの、と戻ってきた。
「善光寺も行きません?」
「近いの?」
「長野駅からすぐだということに気づきました。当日中にいけます」
「それだったら」
「美術館は戸隠なんで、戸隠神社も行きましょう。宿は長野駅近くで取りましょうか」
「近くにないの?」
「ほとんど宿坊なんですよね」
「だったらええ、それでいいわ」
調べる調べる。
あ。JR系列ホテルあるじゃないか。
平日だから予約は簡単に取れた。
「当日に宿に荷物を置いたら善光寺に行きます。で、翌日戸隠行きましょう」
「そうね」
決まった決まった。
先生がうきうきしている。
八重子先生も微笑んでいる。
後は俺の段取り次第だな。如何に仕事を早く終えるか。
ん? 焦げ臭い。
「先生、魚焼いてます?」
「あっいけないっ!」
あわてて台所へ。追いかけるとセーフの合図。
良かった良かった。
「あ、小芋洗ってくれる?」
「はいはい」
料理の支度を手伝ってるうちに律君も帰ってきた。
「ただいまー。あーおなかすいた」
「もうちょっとでできるわよ。そうそう。お母さん、来週火曜から木曜まで旅行だから」
「どこ行くの」
「長野よ。だからあんたおばあちゃんの事頼むわよ」
「うん、わかったよ」
夕飯を食べて風呂に入り、先生と旅行の話をつめる。
「山沢さんと行くんだ?」
「そう、善光寺と戸隠神社と、美術館。冬ならスキーなんだけどね」
「滑れないくせに」
ほほほ、と笑っている。
「雨降らないと良いな」
「そうねえ、週間天気予報はどうなの?」
「一応予定はないようだけど…雨具はもって行きましょう」
「山は天気が代わりやすいって言うものねぇ」
「レンタカーで移動ですし多目に積んでも問題ないですから」
なに着て行こう、と楽しそうにしている先生を律君は微妙な顔して見ている。
ちょっと位は気づいているのかもしれないな。
ふぁぁ、とあくびが出た。
「もう眠いの? 寝る?」
「そうですね、先布団入ってきていいですか」
「私もそれじゃ寝ようかしら」
「んじゃあ律君、悪いけど火の始末と戸締り頼むよ」
「はーい、おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
先生の寝る支度を尻目に布団を敷き、もぐりこむ。
うー、眠い。
すぐに先生も俺の懐へ。
夜はまだひんやりしているから丁度良い。
もう少ししたらきっと暑くて蹴っ飛ばされるな。
去年はそうだった。
「おやすみなさい」
先生が俺の髪をなぶっている。
「おやすみ」
すぐに寝入ってしまった。
 
数日後、仕事を早めに切り上げて帰宅し、風呂に入る。
すっきりして風呂から上がると既に荷物を持って先生が来ていた。
「早いですね」
「だって遅れたら困るもの。あんたも早く支度しなさいよ」
「はいはい」
ざっと髪をタオルで拭いて着替えた。
「さて、じゃ行きますか」
「乾いてないじゃないの、もう」
なんだかんだいいつつ荷物を担いで駅へ。
グリーン車。なんたって指定席とちょっとしか変わらない料金。
グランクラスはさすがに取れなかった。
それでも新車はいいものだ。
「今度金沢まで乗りたいですね、グランクラスで」
「あら嬉しいわ」
「たしか金沢も茶道人口多いんでしょう?」
「そうよ、よく覚えてたわね」
さっそくながら駅弁を広げる。
「相変わらずお肉ばっかり」
「あなたはやっぱり野菜多いんですね」
「おいしいじゃない」
あ、と先生が手を止める。
「お茶買ってきてくれないかしら。温かいの」
席を立って自販機を探す。…ない。
自販機がない、というと困っている。
「一応、常温の水でよければ持って来てます。あと車内販売回ってくるかと」
渋々、という顔だ。
「すいません、サーチ不足でした」
「仕方ないわねぇ」
俺の水を一口飲んで、駅弁を食べ進める。
「ん、おいしいわぁ」
「こっちもうまいですよ」
食べ終えた頃車内販売が来た。
サンドイッチとお茶とコーヒーを頼む。
「まだ食べる気?」
「勿論」
「ほんと相変わらず良く食べるんだから」
先生のお茶を開封してあげてからサンドイッチに手をつける。うまい。
暫くして先生がトイレに行った。
一人は時間をもてあます。
すぐに戻ってきた先生は俺にトイレに行くように言う。
なんだ?
催してはいないが行って見ると…便座が自動開閉する上にウォッシュレットになっている。
なるほど驚く、これは。
戻って先生と凄いすごいと言っていると後ろの席の人も気になったようで見に行った。
「進化してるのねぇ」
「ですねぇ」
「でももうちょっと広いともっといいのに」
「あー…下手に広くするとそのー、しちゃうやつが」
「なぁに?」
「sex」
あ、黙った。
ベシッと俺の額を叩く。
「バカ、もう。そういう事いわないの」
「したいけどね」
目をそらして窓の外を眺めだした。
かわいいなぁ、こういうところ。
そのうち目をつぶって日差しを楽しんでいるようだ。
綺麗だな。
旅行、久しぶりだ。
ゆっくりと楽しみたくはあるが…。
強行軍かも知れず、また雨に降られれば面倒な事になる。
携帯で天気予報を確認しつつ。
先生のハンカチが手から滑り落ちた。キャッチ。
どうやら寝てしまったようだ。
疲れてるんだろう。
俺も眠いが時計を見るとあと40分ほど。
寝過ごさないかな。
しかし眠気に負けてうつらうつらとしていると揺り起こされた。
「次、降りる駅でしょ」
「んー…? え、もう?」
あわてて降りる支度をする。
駅に着いた。
とりあえず改札を出て時計を見た先生はまだ早くない?という。
「チェックインはあと1時間ありますよ。だから車借りて善光寺行きましょう」
「タクシーでいいじゃない」
まぁそういうなら、と荷物をホテルに預けてタクシーに乗る。
先生は帰りは歩こう、といっている。
みやげ物やらいろんな店が気になるようだ。
運ちゃんが色々と説明してくれる。
もうちょっと時期が早ければ御開帳だったとかで惜しいね、と。
「でも回向柱はあるからね、触っちゃうといいよ」
あ、終わったら護摩にするんだと思ってた。
違うのか。
どうやら歴代の回向柱もあるらしく、自然のまま朽ちさせているそうだ。
「次、御開帳の時に来たいですね」
「それじゃ元気でいなくちゃ」
「余裕でしょう? たかが7年じゃないですか」
「それもそうねー」
タクシーを降りて二人物珍しそうに巡る。
「一度来て見たかったのよねぇ」
「機会なかったんですか?」
「お教室してるでしょ、なかなか休めなくて」
「あー。一人旅は面白くない、と。お友達は?」
「お休みが合わないもの」
俺もあんまり休みはあってないんだが。
先生は何か長いこと願い事をしているようだ。
俺は極く簡単に幸せでいれますように、と願ったが。
「何をお願いしたんです?」
「色々とね。あなたのことも」
「聞きたいな」
「ナイショ」
「夜にね、聞いてあげる」
「ばか…」
照れててかわいい。
手を握ってぶらぶらと参道を歩く。
いろんなものに先生が目移りしてお土産を買っている。
早くもひと荷物になってしまった。
ホテルで発送掛けよう。
門前を外れさすがにお店は少なくなってきた。
「ねぇ、なにか甘いもの食べたいわ」
とはいえ見回しても何かありそうな気配はない。
地元っぽい人に聞いてみる。
左手へ行くとお茶屋さんがあり、そこの抹茶ソフトがお勧めとか。
5分ほど歩く。どこだろうかときょろきょろしつつ。
あ、本当にお茶屋さんだ。
たしかに張り紙もしてある。
先生は気負いもせずにごめんください、と入っていかれた。
抹茶ソフトを頼むとカップか聞かれ、二つ頼んだ。
出てきたのは茶碗?に盛られた抹茶ソフト。色が濃い。
一口食べた先生がおいしいとうれしそうだ。
俺も食べてみる。ん、甘い。
冷えた頃に温かいお茶がまたうまい。
小豆は先生に食べてもらって。
ふと売り場を見ると抹茶チョコなどが並んでいる。
それと東京ではあまり見ない茶園のお茶。
お勧めを聞いて買った。
帰ってから飲んでみよう。
先生は温かいお茶をおいしそうに飲んでいる。
「そろそろ行きましょうか」
「そうね。おいしかったですわ、ごちそうさまです」
お店の人にも先生は愛想を。
そういうところが好きだ。
 
さて、こっからだと…すぐそこの大通りを駅方向に向かえばホテルだ。
和洋室をとってある。
先生が着物だからだが。
そしてもちろんトイレと風呂は別だ。
「ねぇ、ダブルベッドじゃなくていいの?」
「ダブルの部屋、風呂と便所一緒ですよ」
「それは嫌ね」
「でしょう? ま、致す時ちょっと狭いし、寝る段になれば別の布団は正直嫌ですが」
「やっぱりするのね?」
「しないほうがいいならそれでも」
「そういうつもりで…いったんじゃないわよ…」
ふいっと横を向いた。
「どうしたんだ? 最近」
背中から抱きしめる。
「だって。あなたしたいって最近言わないから。したくないのかしらって…」
「明日の予定がないならば。足腰立たないほどに…したいよ。ああ、やりたい」
熱くなった手を絹の懐に差し込む。
「そんな、に?」
「したいともさ。犯しつくしたい」
耳元でささやくと少し震えている。
「怖いか?」
そっと俺の腕に手を添えて身を預けてきた。
「それでもいいわ…」
暫く胸をもてあそぶ。
「ね、離してちょうだい」
「うん」
おとなしく離してやるのはなぜか。先生が脱ぐからだ。
待っててやらないと着物がえらいことになる。
何度か襲って後で洗いに出す羽目になったのを覚えている。
腰のものひとつになって、それでもためらいがちに外す姿はいつ見ても良い。
うつむきつつも俺に裸体をさらす。
胸と股間に手を添えて。
いつまでたっても恥じらいを忘れないこの女を泣かせてねだらせる。
これほど楽しいことはない。
勿論痛みに泣かせたり、苦しませるのは好きだが。
それは他の女でも楽しめることだ。いつか、でいい。
「手を後ろで組んで。そうだ。良い子だね」
腿をきゅっと引き締めて隠そうとする。
「足も開きなさい」
おずおずと開き、閉じたそうにする。
股間に触れる。
「ぁ、ん…」
すでに濡れている。
後ろに組めといっていた手が俺にしがみついてくる。
暫くもてあそんでいると体重がどんどん掛かって来た。
「ね、もう、お願い…」
「立ってられない? 駄目だよ」
「そんなこといわないで、ねぇ、お願いよ」
「だーめ」
お願いが出来ないようにキスで口をふさぐ。
舌を絡めつつも呻いて、もてあそぶ指を締め付ける。
背がのけぞり少し舌を噛まれた。
逝ったようだ。
蕩けた様な顔で後ろのベッドに腰を下ろした。
「いけない子だ、座って良いとは言ってないだろう?」
「だって…」
「まぁいい。そのまま」
脱ごうとしたら脱がされた、
手が汚れているから、だそうだ。
暫くベッドの上で楽しんでいると携帯のアラーム。
あ、そろそろ飯の時間が近い。
「飯の時間だけどどうする? ここでやめるか?」
「やめないで…」
スピードを上げて逝かせ、先生をシャワーに連れ込んだ。
汗と股間の汚れをとりあえず落とし手早く水滴をふき取ってベッドへ。
「着れますか?」
「頑張るわ…」
手伝ってなんとか着てもらい俺も着る。
直された。
「余裕あるな? もうちょっとしてもよかったかな」
「ないわよ、だめよ」
頬が赤い。
汗で崩れた化粧を直させて少し遅れたが食事へ行くことにした。
 
少し気だるげだが食事処に入る頃にはしゃんとしてメニューを見てすぐ決めた。
一番高いやつは予約制だったので選ぶとはいっても知れているが。
俺はちょっとメニューをご相談、魚と肉をチェンジ。
先生は笑っている。
お酒は少し頂くことにした。
沢山に飲むと次の日に差し支える。
余裕のある日程ならいいが…。
飯はそれなりにおいしく、酒もうまい。
食べ終わって先生が満足そうな息をついた。
「さて、部屋に戻りますか」
「そうね」
戻って寝巻きに着替え、明日の用意を整える。
それからこちらをちらちらと見ては照れくさげな先生を懐に入れた。
「なーに今更照れてんです?」
「だって…」
「かーわいいなぁ~」
「もう、からかわないでちょうだいよ」
「からかってなんかいないよ、うん。可愛い」
「ねぇ、さっきみたく、して…」
「手荒く? 優しく?」
「優しいのがいいわ」
「OK」
ゆっくりと丁寧に心をほぐすように抱いて。
先生が満足したのを確かめて一緒に寝た。
翌朝、二人で風呂に入って着替える。
本当は朝からしたいけど、そうもいかない。
朝食を食べてすぐに出発の支度。
やっぱり午前中がいいからね。
まずは近くのレンタカーで車を借りた。
先生はパッソが良い! というが却下してカムリにした。
文句を言いつつも意外と車内は気に入ったようだ。
スムーズに戸隠へ。
まずは宝光社の前で車を止めた。
これは階段が続くような気がするんだが…。
俺はいいけど先生の足元が、と躊躇したが先生はまったく気にせず俺の腕を引く。
どんどん上ると途中で女坂と看板にある。
そちらを行けば階段は登らなくてよいらしい。
先生と二人そちらを選んだ。
「空気、いいわね」
「そうですね」
朝の気配のまだ残る道を行けば本殿に着いた。
祭神は婦女子・安産・技芸・学問・裁縫の神さんらしい。
先生はやはり念入りにお参りされている。
それから中社へ、となったが歩けば20分くらい、というが車だしと悩んでおられる。
横にいたおばさんがバスで運転手だけ中社から戻るんだよ、と教えてくれた。
どうやら1時間に1度位バスが来るらしい。
そして中社前はタクシー乗り場もあるようだ。
歩くことにした。

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h47

翌朝。
早くに目が覚め、一つのびをして八重子先生の部屋を伺う。
もう起きてらして着替えておられた。
「朝ご飯、作ろうかねえ」
「俺、作りますからいいですよ」
「じゃ見てるだけ」
先生も起き出してきて台所はいっぱいいっぱいだ。
「暑い…」
「二人とも居間に行っててくださいよ、暑い」
狭い台所に三人はさすがにきつい。
先生たちが居間に行って多少気分的にも涼しくなった。
朝飯をとった後、八重子先生がお稽古を、という。
電熱で、ということで用意して先生に俺のお稽古をつけてもらった。
八重子先生が入院してからあまり稽古ができてなかったからずいぶんと直される事に。
少しへこみはしたものの、仕方がない。
それに退院されたら多少先生にも余裕が出て、もっとお稽古つけてくださるはずだ。
何度もお稽古をつけてもらううちにおなかがすいてきた。
八重子先生が気づいたらいなくて台所からおいしそうなにおいがする。
「久さん、よそ見しない」
「はい、すいません」
「まぁでもお昼過ぎちゃったわね…」
気を取り直して点前を終えた。
八重子先生がお昼を食べなさいと呼びに来てお昼ご飯をいただく。
「あぁおいしいわぁ、久しぶりね、お母さんのご飯」
「うん、うまいですよねえ」
「久しぶりに台所に立ったけどやっぱり疲れるね」
「じゃ食べたら寝てください」
「そうさせてもらうよ」
食後、先生が八重子先生を寝かせに行って俺が茶室の片付けをした。
居間へ戻って買い物に行くことを告げる。
「んー、アイス買ってきてくれる?」
「辻利? バニラ?」
「バニラが良いわ」
「了解、行ってきます」
夕飯の献立に従い買い物をして、最後に近所のコンビニでアイスを買って戻った。
「ただいま」
「おかえり、アイスは?」
どうぞ、と渡して台所へ。
ゆったりと休みの開放感を楽しんだ後夕飯を作って八重子先生を呼んでもらい。食事。
それからお風呂。
八重子先生と入った。
できるだけ手は貸さず、見守る。
浴槽へは試行錯誤。
事故もなく風呂から出て居間でくつろぐ。
先生のあくびを契機に寝ることにした。
 
夜中、一度八重子先生がトイレに起きたのに付き添う。
翌朝からは無理をせず、ゆっくりと家になれることを重点においてくださった。
GWの三日を過ごして退院はできそうだ、と先生との意見は合致した。
明日、律君付き添いで病院に戻ってお医者様と退院日を決められるそうだ。
ひして先生のお稽古お休みの三日間は先生がうちへ来てくださる。
俺が帰って掃除をする暇はない。
というか掃除をするために来てくださるそうだ。申し訳ない。
翌朝、律君が二人を乗せて病院へ行った後、掃除をして、律君のお昼を用意して置いた。
先生達が戻ってきたのでその足で俺の車に乗せて帰宅する。
「何か久しぶりねぇ、あなたの家に行くのも」
「そうですねえ」
連れて帰って第一声は「汚なっ」だった。
本気で呆れられて、あきらめた顔で指示をくれる。
もうここまで放置してるとどう掃除して良いか自分ではよくわからんのだよね。
雑然とした部屋が先生の指示に従っているうちにだんだん綺麗になる。
不思議な気分。
整頓も先生が言うようにするとちゃんと収まる。
終わったころはもう日が落ちていて、先生はお疲れである。
「とりあえず銭湯行きましょうか」
「あぁお風呂、洗ってないわね、まだ」
着替えと風呂セットを持って先生と近所の風呂屋へ。
「銭湯って久しぶりねえ」
「久しぶり続きですね」
「あら」
もちろん女湯に入る。番台が一瞬変な顔をした。
俺はたまに仕事帰りに入るから気づいたようだが。
この時間帯、女湯はほぼ無人ゆえ気兼ねなく先生が脱いでいるのを眺めつつ。
汚れを落としてすっきりして、先生の髪を乾かし涼んでから着替えた。
それから飯を食いに出る。
先生のご希望でスパゲティ。
豆乳を使った和風のスープスパに先生は舌鼓を打ち、俺はカレーのスパを食う、
こっちをみてお子様ね、と笑った。
「お子様じゃない所、うち帰ったら見せてあげましょうね」
にやっと笑うと恥ずかしそうにしている。
可愛いね、簡単に墓穴掘っちゃう。
そんなつもりじゃなかったのに、という感がありありと出ている。
先生のスパは半分ほど食べた後ゆず皮のおろした物をかけるようだ。
多分うまいんだろうなぁと思う。
見ていたらスープをすくって俺にくれた。
「あ、うまいな、これ」
「でしょ? あなたもたまには頼んでみたら良いのに」
「でもカレー好きなんだよ」
くすくす笑ってるのも可愛いなぁ。
食べ終えてアイスレモンティと温かいほうじ茶。
「さてと、帰って寝ましょうか」
「あ…はい…」
会計を済ませて手をつないで帰宅した。
さて寝る前に布団を取り入れてシーツをかけねば。
先生がくつろいでる間にそれらを済ませた。
では、と。
「おなかこなれた?」
「ちょっと待って」
トイレに行った。我慢してたのか?
着替えてベッドで待ってると先生が鍵を確かめ、リビングの電気を消して戻ってきた。
そっと浴衣の帯を解く。
「待った、今日はやらないつもりだから」
「えっやだ、恥ずかしい…」
あわてて直して布団にもぐりこんできた。
「だってあなた今日は疲れているでしょう?」
「いいの?」
「良いんだよ、ほら、早いけど寝ましょう」
背中をなでているうちに先生の体が温かくなりあくびが出た。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
 
翌朝、出勤しようとしたら先生が目を覚ました。
「もうそんな時間?」
眠そうにしつつも見送ってくれた。
かなり久しぶりかもしれない、これは。レアだ。
ということでやる気が出て仕事も好調だ。
GW明けではあるのでそんなに売れないが。
先生にイセエビ食いたいかと聞く。それよりは白身の魚、というので目板鰈をチョイス。
お造りにして盛り付けて持って帰った。
「ただいま」
「おかえりなさい。何もって帰ってきたの?」
皿を渡して着替える。
「あらお刺身、おいしそうね。何のお魚?」
「メイタですよ、こっちでは煮付けにするんでしたっけ?」
「あれをお刺身にしたの? おいしい?」
「うまいですよ、保証します」
後は何かいろいろ作ってくれていた。
「買い物いったんだ?」
「だって冷蔵庫、何にも入ってないんだもの。ほら、座って? もうできるから」
「はーい」
食卓の上も片付いていて、洗ってある布巾が置いてある。
やっぱり先生は完璧だなぁ。
お味噌汁におひたし、お漬物、メイタ、それと俺には肉の味噌炒め。
「足りるかしら」
「少し多いかも知れないな、最近そんなに食べてなかったから」
「あら、そうだったの?」
「急ぐから適当に軽く食うようになっちゃって」
「だめよ、ちゃんと食べないと」
そうだよな、と返してご飯を食べる。
「うん、やっぱり先生の味付けはうまいなー」
「そうね、朝ごはんくらいしか作らなかったから」
うまくて飯がすすむ。
「ご飯とお味噌汁、おかわりいらない?」
「あ、欲しいな」
にこっと微笑みつつよそってくれた。
いちいち台所に立つの面倒だろうにそんなことは毛ほども見せない。
お変わりしたのも食べつくして、おかずもなくなった。ご馳走様。満腹満腹。
「お粗末さま」
洗い物は引き受けた。
先生は広告を見ている。何か良いもの載ってるのかな。
「ねぇ、久さん? 三越だめかしら」
「良いですよ、行きましょう」
水を切って手を拭いて、それじゃ着替えるか、と声をかけた。
俺も部屋着だが先生もだから銀座へ出るのにはちょっとそぐわない。
先生が着替えを済まして顔を直すのと、俺が着替えるのが同じくらいの時間。
着慣れてる差が出る。
トイレに行ったらお出かけだ。
久々に先生が綺麗に装っているのを見た。
普段は化粧も薄くしかしないし着物だってお稽古着か普段着だからね。
「なぁに?」
「綺麗だな、って思ったんだよ」
「あら嬉しいわ」
三越へ着いて先生は早速にも呉服売場へ。
単の着物、夏の着物。
その中の一反に目を止めた。
「これどうかな」
「あら、良いわね。涼しそう」
「惜しむらくは正絹だ。お稽古に使えないけど」
「うーん、でも良いわぁ
 帯をこういうのにしたらどうかしら、こういうときに着るのには良いんじゃない?」
「あ、そりゃいいですね」
店員さんが寄ってきたのでもう3本、帯を持ってきてもらった。
並べてためつすがめつ。
やはり最初のものがよさそうだ。
「仕立てはどうなさいます?」
「あ、そのままで結構です」
「すざきに頼むんですか?」
「そう。あそこもほら、大変だったでしょ、だからちょっとでもと思うのよね」
後は足袋を二足買い、それからミセスのファッションフロア。
めったに着なくても見るのは好き、というのはわからなくもない。
ストールの感じの良いのを見つけたようだが値札を見て戻した。
「買ってあげるから戻さなくて良いよ」
「だって悪いわ」
「俺の金で好きな女が綺麗に装う、そういうの良いじゃないですか」
あ、耳赤くなってる。
「さらっとそういうこと言うわよね、あなたって…」
ふふっと笑って買ってあげた。
ストールは着物でも洋服でも使えるからコスパ高いんだよね。
よく見ると米沢織。なるほど高いわけだ。
後は夕飯になりそうなものを地下で買って先生の明日の朝飯分も確保する。
帰宅。
お茶を先生が入れてくれてなんとなく落ち着いた。
「あぁ楽しかった。久しぶりだわ」
「心の余裕ですね」
まぁこの後その余裕はなくなるだろうけど。
くつろいでいる先生に着替えてくるように言い、支度をする。
久々でもあるし、そんなに飛ばしては大変だから今日の所は軽めに気持ちよくしてやろう。
ペニバンはどうするか。
とりあえず使えるようにだけしておくか。
無理そうなら入れなくても別に良いわけだし。
あ、シャワーの音。
別に入らなくても良いのに。
まぁいいか。俺も脱いで入ってやろう。
風呂場の戸を開けると先生が驚いている。
うーん、良い体だ。
背中から抱きしめる。
首筋にキスを落としてあちこちに手を這わせた。
「だめ、こんなとこで…」
「たまにはいいだろ?」
乳首をつまみ転がし、もう片方の手を股間に這わせる。
敏感なところに触れると身じろぎするがシャワーの音であえぎ声は聞こえない。
「声を出して」
「やだ、恥ずかしいもの…」
啼かせたくなり、少しきついが先生の片足をかかえた。
「あっ、こんな格好、だめ、ねぇっ」
浴室の鏡になぶられる股間が映って顔を背けている。
黒々とした毛の中に俺の指が埋まってうごめいて。なんとも淫靡だ。
先生は俺の腕をつかみ指が動くたび呻く。
俺が男ならこのまま突っ込んでしまうんだが。
そうも行かないので一度逝かせ、ぐったりした先生を風呂場から回収した。
「もうっだめって言ってるのに」
「だめ? 今日はだめは通用しないよ」
にっこり笑ってやる。
「絹、首輪。出来てるからね」
「えっちょっと、い、いらないわよ」
「ほら、これ」
渡してやると顔を赤らめて俺と首輪を何度か見る。
手から取り上げて環を外し、先生の首にあてがった。
パチン、と音を立てて首輪が締まる。
「サイズ、ちょうどだね」
「外して…、おねがい」
「鏡見てごらん、似合ってるよ」
鏡を見せると震えている。
ふと女のにおいがして先生の股間に手を這わした。
「随分濡れてるじゃないか。気に入った?」
首を横に振ってさらに外してと訴えてくる。
いやなら自分で外せばすむんだけどね。
俺は鏡越しのプレイが好きだからそのまま背後から弄ることにした。
さすがに首輪の視覚効果は抜群だ。
俺が興奮してしまい少し荒くなってしまったが先生とて被虐心を揺さぶられたようだ。
声も大きくなり、俺の荒さにもよく応えてくれている。
「もうだめ…」
かすかに聞こえた頃、手を止めた。
気づけば暗い。
電気をつけると先生のあちこちに擦れた痕が残る。
キスマークも。
首輪を外してやると首にもこすれた痕。
あわてて軟膏を塗りこむ。
先生はぼうっとしてされるがままだ。
うーん。
明日以降しばらくはコンシーラーか何かでごまかすか。
苦しくないよう少し余裕を持たせたのが仇になったかな。
ホットタオルを作って体を拭いてやると気持ちよさそうだ。
足の指の間まで拭いていると先生の腹が鳴った。
「おなかすいた…」
「飯にしますか」
「うん、でも起きれないわ」
布団の上で食べられるようセッティングをしてお盆に載せて出した。
一口ずつ口に運んでやる。
「おいし…」
今日は弁当ではなく惣菜を買ったので先生は俺の分を残そうとしている。
「好きなものは全部食べたら良いよ。俺は残ってるの食うから」
「でも…」
「品数多目に買ってるし、俺が嫌いなものは買ってないよ」
「そう? じゃ遠慮なく」
嬉しそうに食べてる姿を見るのも楽しい。
暫くしてもうおなかいっぱい、というので下げて寝かせる。
「太っちゃう…」
そう言いながら、うとうととしている。
気持ちよさそうな、幸せそうな顔して。
sex中の気持ちよさとは違った気持ちよさなのだろう。
先生が寝付いたのを確認した後、俺も食べて片付けた。
寝室のあれやこれやも片付けて先生の横に潜り込む。
規則正しい寝息に誘われてあっという間に寝た。
 
ふと目が覚めると久さんは隣にいなくて、もうお仕事行っちゃったのね、と寂しくなる。
気だるい。
昨日は久しぶりに久さんが本気で求めてきた。
もう無理、と何度繰り返したかわからない。
こほっ、と一つ咳。
枕元のお茶を飲んで寝返りを打つ。
私が起きるのはお昼になってもかまわない、あの人はそういう人。
安心して二度寝をする。
きっと起きたら久さんが横にいる。
首輪が目に入った。
手にとって眺めるとなかなか手の込んだものだった。
パチン、と音がしたのは磁石でくっつくのね。
縫い目は、これは手縫いね。端も綺麗に始末してある。
ちゃんとした職人さんに作ってもらったのかしら。
少し恥ずかしいけれど何かうれしい。
触っているうちにいつしか寝てしまって夢を見た。
久さんに職人さんのところへ連れて行ってもらう夢。
首にメジャーを当てられる。
布地を選ぶ。
そんな夢だった。
次に目が覚めると久さんは横に座って私の髪をなでている。
「おはよう。よく眠れた?」
手に首輪を握り締めたまま寝ていたことに気づく。
これじゃまるでして欲しいみたいであわてて隠した。
「トイレ連れて行こうか?」
そういわれると尿意を感じてうなづく。
軽々と久さんは私を抱き上げる。
あ、裸。
ちょっと恥ずかしい。
トイレの便座におろされて、久さんは楽しげに私がするのを見る。
これはちょっとじゃなく恥ずかしくて好きじゃないのに、久さんは好きみたい。
たまにしている最中にキスしてくるのはやめて欲しい。
大きいほうの時だけはがんばって追い出すのだけど。
始末をしたらまた抱き上げられて布団へ連れて行かれた。
寝巻を着せてもらってもう一度寝るか聞かれる。
まだ眠気はあるけれど空腹感が強い。
お鮨を取ってくれるという。
いつものところ。あそこはおいしくて好き。
届くまで、と久さんが言って私をなぶる。
せつなくて、気持ち良いけれど人が来る前にというのは恥ずかしくて落ち着かない。
でもきっと久さんはここしばらくずっとしてないから、私を欲しているのだと思うから。
快感だけを追いたくなってこのまま、と思いそうになる。
私のもので汚れた指をなめさせられて口の中もなぶられた。
久さんはひどい人…。
余韻に浸っているとピンポンがなり、久さんが出て行く。
きっとお鮨がきたのね。
 
先生をなぶって楽しんでいると寿司がきた。
さっと手をぬぐって取りに出て支払う。
テーブル、いや卓袱台が良いだろう。
納戸から座椅子を出した。
「先生、落ち着いた?」
かすれ声でののしられた。
ベッドに膝をついてキスをしてやると俺の腕をつねられた。
「かわいいなぁ、怒ってるのも良いね」
額を叩こうとしたようだけど鼻先を爪が掠めた。
「イテッ…」
「あ、ごめんなさい、あの、ひっかくつもりじゃ」
慌てているのも可愛いからいいや。
「大丈夫そうだね、じゃあ飯を食おうか」
抱え上げて座椅子へおろす。
「あら? いつ買ったの?」
「この間ね、ほらどうしてもこうなっちゃうだろ。食いにくいって言うし」
「ここまでしないでいてくれたら一番良いのだけど…」
「なにか言った?」
笑って聞くと困った顔をする。
お醤油とワサビを用意して、隣に座って食べる。
相変わらずうまい。
先生もうれしそうだ。
おいしく食べ終わって先生を布団に入れたら後片付けとお買い物。
晩飯は作ってやろう。
そのかわり、もう少し楽しませてもらわなくては。
先生に買い物と言い置いて何件か回る。
今日は鳥の甘酢だ。
まぁたぶん食えないだろうけど。
明日の朝食べれば良いからね。
帰宅すると先生は寝息を立てている。
下ごしらえを済ませ、俺も少し仮眠を取った。
すっかり寝過ごしてしまい、先生が飯を作っている。
鳥甘酢のつもりだったのに別のメニューになっていた。
「起きたの? ごはんにするわよ」
「意外と復活早いな…」
まぁ昨日はペニバンも使ってないし、そこまで辛くなかったのかもしれない。
起き出して食卓についた。
「いただきます」
「ねぇなに作ろうと思ってたの?」
「ん? 鳥甘酢の予定だったんだけどな」
「あ、そうだったの? まったく違うものにしちゃったわね」
「酢は疲労回復に良いからさ」
「だったら酢の物作ろうかしら」
「いいよ、作らなくても」
んー、やっぱり俺の作ったのより先生の作るほうがうまいなあ。
先生は俺より早く食べ終えた。
「食欲ないのか?」
「うぅん、その、…またするんでしょ?」
「するけど」
「沢山食べるとつらいのよ…」
そういえばいつも胃がこなれるまで待てって言うな。
なるほどなぁ。
食べ終わって片付け物をしてニュースを見る。
見終わると先生がトイレに立った。
さて、そろそろ。
 
今夜はペニバンも使って責めるつもりでいる。
縄を出した。鞭は…まだ早いか。
トイレから出てきて先生がこっちを見た。
「あっ、駄目、明後日お稽古あるのよ、縄はやめて頂戴…」
あっそうだったそうだった。
そんじゃあどうしようか。蝋燭だって縛らないと身をよじられたときに危険だし。
「いまうんこした?」
「えっ、してないわよ」
「じゃ浣腸してあげよう」
「便秘じゃないしいらないわよ…やめて、お願い」
「おなか痛くならないようにしてあげるし、覗かない」
「でもいやっ、するなら帰るわ」
抱きすくめようとしたのに抵抗している。
「本当にいや? やってみたら気持ちいいかもしれないよ?」
「嫌だからしないで、ねぇ、お願いよ」
必死の抵抗が可愛らしい。
「しょうがないなー、でもペニバンは使うからね」
「あ、ぅ、はい…」
「いつかさぁ自分から入れてって言うようになれよ」
「そんなの…できないわ」
「先に部屋行ってな、俺も便所行ってくるから」
「は、はい」
解放するとそそくさと寝室に行った。
便所便所、と済ませ、俺も寝室へ。
先生は脱ごうかどうしようか迷っている様子。
そのまま抱きしめてキスをすると少しぎこちなく舌を絡ませてきた。
半日置いたら照れくさくなったようだ。
ゆっくりと指を這わせ、首筋、鎖骨、脇乳、腹や背に満遍なく触れて行く。
ベッドに寝かせて足の指から太ももの裏まで丹念に。
先生の息が荒い。
掠めるように乳首に触れる。
「あっ」
幾度も股間や乳首に軽く触れるだけにして楽しんでいると焦れて腰が動く。
押し付けようとする。
快感を知っているだけに追いたくなるものだ。
「久さん、ねぇっ」
「なにかな?」
「焦らさないで…」
顔を赤らめて消え入りそうな声だ。
「どうしてほしい?」
「あの、さわって…」
「ここを?」
ふっとお尻の穴めがけて息を吹きかける。
「いやっ、そこじゃない、違うの」
「じゃあここ?」
尿道口に指をあてがう。
「ここに入れてみようか」
「そんなところ入らないぃっ」
慌ててるの可愛い。
「冗談だよ、で、どこかな?」
そっと俺の手をつかんで持っていった。
言うのは無理だったようだ。
三点責めをすると大いに啼く。
逝きそうで逝けないように留めてやると涙ぐんでなじる。
「入れてくださいって言いな、逝かせてあげるからさ」
首を振って、でも辛そうにして、それからようやくおねだりした。
「入れてちょうだい…」
「自分で入れてみろよ、ほら」
仰向けになって寝てやるとペニバンは上を向いた。
「そんな…」
「ああ、忘れてた。これつけないとな」
ベッドサイドから首輪を取って付けてやる。
「あ…」
少し呆然としたような様子で俺が声をかけるとびくりとした。
「ほら乗れ」
またがせて腰を引き寄せる。
恐る恐る、という様子で先生は腰を下ろすが入らない。
困った顔で助けを求めてくる。
先生の手をペニバンに添えさせてあてがい、融通をしながら押し入った。
すべてを飲み込んだところで一仕事終わったような顔をしている。
腰をバウンドさせると慌て、はしたない声を上げだした。
乳房をもてあそびながら腰を使うとすぐに逝ったようだがそのまま続けた。
3回連続で逝かせると俺の胸に倒れこんで息が辛そうになってる。
「抜いて、お願い…」
「膝立ちになったら抜けるよ」
「無理…」
そりゃそうだ、力入らないよね。
そのまま横倒しにして抜く、それだけで声が出る。
少し落ち着かせてから伏せさせて後ろから貫く。
動くたびに漏れる声、のけぞる背。
もう駄目、と微かに聞こえて気をやるまで続けた。
「絹、好きだよ。愛してる」
だからもっとしたい。とは思うがさすがに先生の体力が限界だ。
暫くしてなかっただけに。
抜いて、首輪も外してやり、ホットタオルを作って体を拭いてあげた。
なされるがままにぼうっと私を見る。
乳房を拭いていると目が合って、そして逸らした。
股間を拭くと少し喘いで。
「拭いてもきりがないね」
そう言うと恥ずかしそうにしている。
足の指まで拭いているとあくび。眠くなったらしい。
「いいよ、寝て。おやすみ」
「ん、でも裸じゃ…」
「はいはい、ちょっと待ち、寝巻き着せてあげよう」
ベッドサイドに脱ぎ落としていた寝巻きを拾って着せ、布団にいれる。
お休み、と程なく寝息になった。
俺はいろいろ後始末をしてから就寝。
 
先生が寝ている間に出勤し、仕事を終えて帰ってきたら風呂から物音がする。
飯は作ってないようだ。
ということは今起きたところかな。
服を着替えて洗濯機を回し、台所の片づけを終えた頃先生が風呂から上がってきた。
「あら、お帰りなさい」
「ただいま」
「お風呂いただいたわ、あなたも入る?」
「そうしようかな。それから飯を食いに行こうか」
「どこ行こうかしら」
「考えといて」
さっき着た服を脱いでシャワーを浴びる。
やっぱりすっきりするね。
風呂から上がると先生がステーキ食べたい、と言うのでそのまま予約を入れた。
着替え、化粧の時間を考えて1時間後。ちょうどランチタイムだ。
さてなに着ていくか。
結局カッターとスラックス、ジャケットにしてしまったが先生には不評だ。
ステーキはうまかったし、ワインもうまかったのだが。
昼酒は楽しい。
機嫌の良くなった先生を連れて歩くのもまた楽しい。
またしばらくはこんなお出かけもできないだろうから先生も楽しんでいる。
夕方、そろそろ夕飯の買い物を、と言い出して百貨店の地下へ。
不断菜のカラフルなものがあった。おひたしにするようだ。
あれこれと買い物をして帰宅、先生が着替える間に下ごしらえをする。
割烹着を身に付けた先生が台所に入り手際よく料理をして行く。
おひたし、といっていたスイスチャードは炒め物になってしまった。
ま、いいんだけどね。
ご飯も炊けて味噌汁もできた。
夕飯をいただいた後はゆったりくつろぐ。
先生は俺にもたれかかってドラマを見ている。
あくび。
「寝ようか」
「もうちょっと待って、見終わったら寝るわ」
「手が暖かくなってるよ、眠いんだろう?」
「だって気になるじゃない」
「まあ、うん。そうだな、気にはなる」
犯人は誰なんだ。
CMの間にちょっかいを出したり、キスをしてみたり。
したくなってしまい膝の上に乗せて後半はドラマの筋が追える程度になぶる。
「ばか、もう。すぐしたがるんだから」
あえぎつつもドラマを見ている先生が可愛くて。
番組が終わった後、気持ちよくしてやった。
とはいえ明日は帰さなくてはいけないのでここで打ち止め。
お手洗いを済ませた先生とベッドにもぐった。
案の定すぐに寝息が聞こえる。
俺もつられてすぐに寝た。

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h46

そして月曜も引き止められては諦めさせて火曜日になった。
今日は泊まっていくのよね、と何度も念を押されてしまって少し困惑する。
こんなに依存心高かったかな。
いつものようにお稽古に家事や掃除などをこなして寝床へ。
「ねぇ久さん」
「なんです?」
何か言いにくそうにしている。
「あの…。ええと…」
手拭を押し付けられた。
なんだ?
どうやら猿轡をご希望のようだ。なんだそりゃ。
今日は強めにして欲しくて、でも声を立てるのはいやだし。
かといって余り噛みすぎると俺にあざを作るしと。
「ん? あぁ、そうか、生理前か。違います?」
そういうことなら仕方ない。
襖と障子の家では筒抜けだもんね、律君には聞かせたくないよな。
と言うことでここは一つ。
起こしてコートを着せ、律君にちょっと飲みに行く、と声掛けをして外へ出た。
先生はほっとした顔で俺に着いてきた。
あちらの部屋に入ると流石に少し篭った空気だ。
最近来る暇がなかったから仕方ない。
風通しをする間、少し酒を飲んだ。
先生はとっても恥ずかしそうにしている。
そりゃそうだろう、あんなお願いを自分からするのは先生には恥ずかしくて当然だ。
そんな先生が可愛くてキスをした。
そのまま押し倒してと思ったら流石に押しのけられた。
ああ、うん。窓閉めないとね。
窓を締めて先生が寝巻きを脱いでベッドに入る。準備完了。
さてと久々の本気の一戦…ん?
「ちょっと待った。あなた明日お稽古に行くって言ってなかった?」
「いいの、そんなの」
いいのかそうか。
そんじゃまぁ、いただきまーすっ。
とはいえ、俺の方には明日お稽古に行くといってた事実は残っており、
体力を奪いすぎないよう気をつける必要はあった。
多分こんな理由でお稽古休ませちゃったら八重子先生から鉄拳飛んでくるよ。
翌朝、寝ている先生を置いて戻り、朝食の支度など家事をする。
そして適当な時間に先生を起こして軽く食事、着替えさせた。
後は車に乗せて、れっつらごー。
先生は後ろで寝息を立てているようだがまあ大丈夫だろう。
目的地に程近いところで一旦車を止めて先生を起こした。
「ん、あら? もうこんなところ?」
「うん、後15分ほどで時間ですよ。しゃんとしてください」
あふ、とあくび一つ。
人目のないのを確認してキスを落とした。
「こら」
「ふふ、目が覚めましたか?」
「覚めたわよ。もうっ」
恥ずかしがってて可愛いなー。
そんなわけでお稽古に先生が行ってしまい俺は少々手持ち無沙汰。
と言うか眠い。
なんせ昨日は遅くまで色々してたわけで。
先生の携帯にとりあえず一旦帰宅する旨をメールし、少し寝た。
終ったらメールくれるから迎えに行けばいい。
と思ってたのだが熟睡してしまったようだ。
目が覚めたら先生が横で寝てた。
うーん、いい匂い。甘くて苦味…あれ? いつもと違う匂いだぞ。
ハッと目が覚めて先生を揺り起こす。
「ちょっと、絹、おい」
「ん…? どうしたの…」
「誰の匂いだ? これは」
「どうだっていいじゃないの…」
また寝息を立て始めた。
どういうことだってばよ。どうだってよくねえよ。
まさかと思って脱がせて見たがキスマークはないようだ。
だが俺と同じように念を入れている奴ならつけるまい。
膝を開かせようとしたら目が覚めたようだ。
「んー…、するの? いいけど眠いわ…」
「じゃなくて。この匂いは何なんだって言ってるんだが?」
俺の雰囲気が剣呑なのに気づいて先生がやっと目を覚ましたようだ。
「匂い? あ…、これね? 送ってもらったのよ。ここまで」
「誰にだ?」
「お稽古で一緒になる方よ。月島へ行くんですって」
「それだけでこんなに匂いつくのか?」
「車の中、凄い強く香ってたから匂い移りしたのねぇ。あらやだ、嫉妬したの?」
「男?」
「女の人よ、大丈夫。それにそんなことになってたらここに来ると思うの?」
「だったらいいけど」
そう言って足を開かせ、舐める。
「ダメよ、長襦袢が…」
「じゃ脱いで」
つーかすでに皺がひどいんだが。
汚れるのはいやなんだそうだ。
ベッドの横に脱ぎ落として先生は俺を受け入れる。
昨日よりも激しく。
先生が声を立てることも出来なくなったころ、やりすぎたことに気づいた。
外も暗い。いったい何時だ。
23時半…しまった。どうしよう、無断外泊じゃないか。
律君、起きているんだろうか。
慌てて電話するとまだ起きていたようで俺の言い訳を信じてくれた。
しかし…まいったな。
多分明日の昼過ぎて回復するかしないか、だぞ。
八重子先生がいれば夕飯に間に合えばいい程度だがいないしお稽古はあるし。
困惑しつつ考える。解決策は…。
よし! 社長に電話して今から先生のお宅へ行こう。
明日の朝の支度は俺がすればいい。
確か生徒さんもまだ初級、俺でいけるはず。
そう決断して社長に電話した。
社長は俺の状況を知っていてくれたので簡単に許可が出た。
考えなしすぎたよ…。
ちょっと反省しつつ、寝ている先生に寝巻きを着せて担いで車に乗せる。
死体運びをしているようで人に見られては困る状況だ。
ちゃんと先生は暖かいんだけどね。
先生を物のように運ぶのは何度目だろう。
お宅に着いて運び込んで、布団に寝かせる。
寝息を立てていることに安心して俺は添い寝をした。
 
朝になって色々と支度をして。
結構大変だ。流石に一人で全部することは滅多になかったから。
炭も今一だが仕方ない。
朝食時、律君が驚いていたので夜中に戻ってきたことを話す。
ちょっと不審そうだ。
しょうがないじゃないか、俺は連絡ついて休めたけど先生はかわりがいないんだから。
朝イチの生徒さんが来る前に様子を見に行って、それからお稽古に入る。
先生は疲労がたまってお休み、と言うことにした。
お昼前、生徒さん達が帰られてもう一度様子を見に行く。
障子を空けたら先生が這っていた。
「…どうしました」
「あ。いたの…お手洗い、お願い」
「なるほど」
ひょいっと担ぎ上げてトイレへ連れて行く。
さっき目が覚めて尿意を覚えたものの、立てなくて這っていこうとしていたらしい。
おまるでも用意しようかな。今度から。
流石にそれは怒られてしまった。
お腹はすいてない、と言うので空いた時に食べられるようパンを枕元に用意して。
俺は朝の味噌汁で汁掛け飯でかっ込み、昼からのお稽古へ。
途中一度見に行ってトイレに連れて行き、お稽古が終った夕方。
やっと先生が居間へ出てきた。
「大丈夫ですか?」
「ちょっとまだ力はいらないけど…あなたねえ…」
「すいません」
「まぁ、いいわ。それでお夕飯どうするの?」
「いまから買物行くつもりです」
「じゃあ…」
春キャベツにアスパラ、新玉葱等々時期の野菜を頼まれた。豚肉と。
炒め物かな。
買物して帰ってくると先生がなにを買ってきたか確認、やはり炒め物だ。
副菜を指示して先生は居間へ、俺は台所。
献立を考える能力はやはり先生に劣る。
先生は主婦している年月が違うというが…。
作り終えて食卓へ持って出た。
「律、まだかしら」
先生のお腹がなっている。
「先食べて良いですよ」
「もうちょっと待つわ…」
「食べなさい。昨日の晩も今朝も食ってないだろ」
「お昼食べたわよ」
「パンだけだろ? 食え。冷めたらまずくなる」
ご飯とお味噌汁を渡して食べさせる。
「なんだか変な気分だわ」
「ん?」
「先に食べることって普段ないじゃない?」
あぁそうか、確かにいつもなら八重子先生か孝弘さんか律君か、揃って食うよな。
ちょっと頭をなでてみた。
「食べにくいわよ…」
照れてる照れてる、可愛いな。
そっと頬に手をやってこっちに向けた。
先生が目を瞑る。
キスしようと顔を近づけた。
「ただいまー」
うぉっと!
慌てて先生が離れて、湯飲みをひっくり返した。
「あっ」
「うわっ」
慌てて手ぬぐいで拭いてそれから先生が台布巾で拭いて。
「どうしたの?」
「お、おかえり、ちょっとね」
「袖で湯のみひっくり返しちゃってね」
「珍しいねー」
「そうだね、手を洗ってらっしゃい。ご飯食べよう」
「はい」
「ほら、先生。布巾下さい。洗ってくるから」
はい、と渡されて台所へ。
ぬるくて助かったな。
俺と律君の味噌汁を温めて出す。
先生は食卓の上を整理してごはんをよそってくれている。
「さてと、いただこうか」
「いただきます」
少なめに作ったはずだけどやっぱり残ってしまった。
「お弁当にするわね」
「はい。あ、風呂洗ってない。洗ってきます」
「シャワーで良いわよ、暖かいし」
「律君はそれで良い?」
「あっはい」
先に勧めて俺は洗い物。先生は茶室へ行った。
一応のため確認しに行ったのだろう。
洗い物がすんでも戻ってこないので様子を見に行くとぼんやりと座って外を見ている。
「どうしたの?」
「ん、ちょっと…」
「春宵一刻値千金。いい夜だね」
「そうね…」
「飲む?」
「いただこうかしら」
台所から徳利と猪口を持ってきた。
一口、二口。
「ねぇ、あなた朝からすべて用意したの初めてだったわよね。どうだったかしら」
「大変でした」
「でしょ? わかったら次からあんなのダメよ」
「はい、すいません」
だけどなぁしたいときがあるんだよな。
「それと…お母さん退院したらお部屋掃除してあげるわね」
「あー。見ちゃったんですね」
「見ちゃったのよ」
くすくす笑っている。
「じゃあお願いします」
「お願いされました」
先生が俺にもたれて外を見ている。
暫くゆったりとしていると律君がお風呂出たよ、と声を掛けてきた。
危ねえ。胸を触ってなくて正解。
「あなた先入りなさい。明日お仕事でしょ」
「はい、じゃすみませんがお先に」
徳利は私が片付けるから、と追い払われた。
シャワーを浴びてすっきりして出ると先生はまだお猪口片手に茶室にいた。
「出ましたよ?」
「あら、もう出たの? ちゃんと洗った?」
俺の頭を掴んで匂いをかいでいる。
「匂がなくても」
「におがないってなぁに?」
「へ? におぐがわからない? 嗅ぐことですけど」
「初めて聞くわね」
「えっ、言わないんですか? マジで?」
「言わないし聞かないわよ」
「え~」
「方…なんでもないわ、お風呂入ってくるわね」
「はい、いってらっしゃい」
多分方言って言おうとしたんだな。そんで俺が気を悪くすると考えたんだろう。
そそくさと風呂へ逃げていった。
やれやれ、と徳利に残った酒を飲み干して台所へ。
洗って片付けて。
居間でテレビを見て先生が出るのを待つ。
暫くすると先生が戻ってきて俺の頭を一発叩いた。
「ちょ、なんですか」
赤面して顔を背けている。
「あと……」
微かな声でそう言った。
なるほどね、昨日強くしてたから噛んだ痕か吸った痕か掴んだ痕があったと。
思い出して恥ずかしくなっちゃってるのかね、これは。
「昨日は楽しかったなぁ。またしたいな」
更に一発どつかれてしまった。
「叩かんでくださいよ」
「だって…」
気配を探って律君が近くにいないことを確認する。
先生の頤に手を掛けてキスをし、にっと笑うと先生は下向いてしまった。
「かわいいね」
「もう…。帰りなさいよ。ばか…」
そっと胸に指を這わす。
「だめよ…、こら、こんなところで」
「静かに。聞こえますよ?」
「だったら止めてちょうだい、ね、お願い、よして」
湿った肌を堪能し、乳首を軽くしごいて立たせた。
「じゃ、そろそろ俺は帰りますね」
「えっ」
「また明日」
「そんな」
「続き、して欲しいのかな?」
「あっ、その、ううん、しないで、下さい」
胸元をぎゅっと押さえ堪えてる風情が凄く色っぽくて。
「あさって、またしましょうね」
先生は頬を染めたまま、こくりと頷いた。
玄関まで見送ってくれて別れて今日は電車で帰宅した。
明日は電車でこっちへ来なくては。
 
次の日、仕事が終わってから先生のお宅へ。
挨拶をすると少し照れくさい、と言った表情だ。
いつものように家事をして合間合間にお稽古の様子を伺う。
やはり稽古中は落ち着いて指導されているようだ。
買物へ行って夕飯の支度をする。
もうそろそろご飯が炊けるという頃生徒さん方が帰られた。
茶室へ入って片付けを手伝う。
「今日はなに作ってくれたの?」
「サワラの柚庵と菜の花のおひたしと、あとレンコンの金平。モズク好きですか?」
「もずく? 嫌いじゃないわ」
「それじゃそれもつけましょう。風呂は掃除しておきました」
「ありがと。お茶、飲みたい?」
「飲みたいです」
「薄?濃?」
「どちらでも」
黒楽を先生が取って点ててくれた。たっぷりと濃茶を練って。
「おいしいなぁ…」
俺がもうちょっと欲しい、と思ったのを先生が察してもう一服点ててくれた。
「眠れなくなっても知らないわよ?」
「あぁ、帰るときに安全運転できますね」
「……そうね」
「どうしました?」
「帰っちゃうんだったわね…」
「今日、平日なの忘れてましたか」
あ、顔が赤くなった。
うっかり屋さんめ。
「泊まるのは明日ですよ、明日。寂しい?」
「寂しいわよ。お父さんもいないもの」
「律君はいるでしょ」
「いるわ、でもねぇ…」
「ずっと4人だったから?」
「わかってるなら…ううん、だめね。お仕事だものね」
「俺も一緒に居たいんだけど」
「わがまま過ぎるわよね、ごめんなさい」
「いや、可愛いからいい。それよりGW、俺も3連休なんだけど」
「あ、お稽古は3日から10日までお休みよ」
「了解、じゃ週前半になるね、遊べるの」
「そうね」
暫くGWの予定など話して片づけを終わり、台所へ。
丁度炊けたところだ。
「ただいまー」
ナイスタイミングで律君も帰ってきた。
「手を洗ってらっしゃい、ご飯できてるわよ」
「はーい」
律君がいると一気にお母さんの顔になるな。
食卓に並べてご飯をよそいお味噌汁をつける。
「おいしそうだね、いただきます」
「いただきます」
「はい、どうぞ」
食べてる途中先生が俺のお茶を急いで飲んだ。
「どうしました?」
「鷹の爪噛んじゃったのよ」
「それは災難、熱いお茶じゃ辛いですよね」
空になった湯飲みに注いでまた冷めるのを待つ。
律君はそれを見て鷹の爪をよけて食べている。
「ねぇ、お父さんからいつ帰ってくるとか聞いてないの?」
「うーん。聞いてないけど大丈夫だと思うよ」
「そう…」
しょげているので可哀想になる。
どうしても空気が重くなってしまうなあ。
「きっと孝弘さんの事だからひょっこり何事もなかったかのように戻ってきますよ」
「うん、多分」
「喧嘩したわけじゃないんでしょう?」
「…んー、そうなんだけど。ちょっと怒っちゃったのよね、その前に」
「なにに?」
「ご飯前にお櫃の中身食べられちゃったのよ。時間がないのにって」
「あー…なるほど。でもそれが理由なら二日くらいで戻ってきてるんじゃないですかね」
「大丈夫だって、お母さんは心配しすぎだよ」
「そう?」
「疲れてるんですよ、ほら、さっさと飯食ってゆっくり寝ちゃいましょう」
「そうしたら?」
「なんだったらマッサージもしますよ?」
「今日はいいわよ」
あまり食欲のない先生もなんとか食べ終えて、風呂へ。
「洗ってあげますよ」
「山沢さんって本当にお母さんに甘いよね」
「そりゃあね」
にっと笑って先生を風呂に入れる。
肩が凝っているようだ。
洗うついでにゆっくりとほぐしすと先生はうっとりとしている。
「疲れが取れるわねえ」
「また温泉行きたいですね」
「そうね、お母さんが帰ってきてからね」
「沢山なかせてあげる」
「ば、ばか…」
「可愛いな、好きだよ」
「もぅ」
恥ずかしがっているが本当に可愛いんだから仕方ない。
のぼせないうちに風呂から出て律君が入った。
「アイス食べたいわ~」
「はいはい、バニラがいい?」
「買ってきてくれるの?」
「俺も食いたいから」
「じゃ律の分もお願いね」
近所のコンビニへちょいと行って、いくつか買って帰った。
「はい、どっちがいいですか?」
ソフトとカップアイスを出す。
先生はソフトを取った。律君はチョコ。
俺は抹茶。うまい。
「辻利?」
「いぇーす」
「明日買ってきて」
「なんだ、食います?」
「食べかけはいらないわよ」
「俺ちょっと先生のそれ食べたいなあ」
ひょいと一匙、俺の口へ入れてくれた。
「うん、あっさりしててうまい。あー、俺は明日はシャーベットにしよう」
くすくす笑っている。
「明日寒かったらどうするの」
「そりゃあ温かいココアでも作りますよ」
食べ終わって先生があくびをしている。
「もう寝ますか?」
「あなた帰るんだったわね。見送るわ」
「律君、先生の布団敷いといて」
「あ、はい。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
羽織を着て鞄を持って玄関へ。
「じゃあまた明日」
「待ってるわね」
「おやすみなさい」
「おやすみ。気をつけて」
別れて帰宅した。
 
最近久さんはうちで私を抱くとき、あまり声がでないように気を使ってくれる。
静かに、少し気持ちが良い程度で私は疲れたりせずにすむ。
だけど月に一度程度。
久さんは私を家につれて帰る。
いつものでは物足りないんだっていうの。
腰が立たないくらい責められる。
ペニバンとかいう道具を久さんは好んでいるけど私は好きじゃないのよね。
男の人のアレみたいな形の、でも少し変な形の物。
たまにそれを舐めさせたりする。
使われると気持ち良すぎてなにも考えられなくなる。
だから嫌い。
もっとゆったりと気持ちよくなりたいのに。
時おり、縄や蝋燭を持ち出してくる。
縛られて動けない私を見て久さんは楽しげにしている。
蝋燭は仏壇のよりは熱くはないけれど十分熱い。
肌の敏感なところに落とされると大きな声が出てしまう。
それも久さんは楽しいみたい。
私が切羽詰まって泣いたりするのが好きなんだそう。
ひどい人よね。
いつも次の日は動けなくて、お手洗いも久さんが抱き上げてつれていってくれる。
してるときは見ないでって言うんだけど見たがって困っちゃうのよね。
いくらお風呂も一緒に入ってるし、見られてない場所なんてないって言ってもねえ。
排泄を見られるのは嫌だわ。
でもあれかしら、年をとって介護が必要になったらそんなこと言ってられなくなるわよねぇ…。
おむつとか、久さんにさせることになるのかしら。
律のお嫁さんにして貰うのとどっちが、と言われれば久さんにしてもらう方が楽よね。
律にさせるわけにはいかないものね。
 
最近、お母さんが入院してからというもの、久さんがあまり求めてこない。
私が疲れて先に寝ちゃうのもあるんだろうけど。
いつもならとっくに久さんの借りてる部屋に連れ込まれてるはずなのに。
どうしたのかしら。
飽きちゃったのかしら。
少し心配…。
 
翌日。
仕事の後、先生のお宅で稽古が終わるまで家事をしていると斐さんが来た。
「おじゃまするわよ、あら、お稽古中?」
「こんにちは、どうされたんですか?」
「あぁ山沢さん。お母さんのことでね、一時退院」
「うーん、今日は私じゃお稽古変われないんで…お待ちいただけますか」
「夕飯は作ってきたから大丈夫よ」
「なんなら一緒に食べて行かれます?」
「あら、いいの?」
「先生も大勢がいいってよく言ってらっしゃいますし」
「じゃ遠慮なく」
「とりあえずお茶かコーヒーかどっちがいいですか?」
「コーヒーいただこうかしら」
「渋目かあっさり目かどちらがお好きでしたっけ」
「あっさりがいいかしらね」
「はーい」
戻ると斐さんがご自宅に電話されている。
軽いお菓子とコーヒーをお出しして、それから食事の支度を開始した。
しばらくして斐さんが覗きに来る。
「何作ってるの、手伝うわ」
「豚と水菜の炊いたのですよ。手伝ってくださるならちょっと鍋見ててください」
冷凍庫から味噌漬けを出す。
困ったときのストックだ。
それと万願寺を買ってあったのをじゃこと炊くことにした。
メインはそれで良いだろう。
先生もあまり好きじゃなかった銘柄の酒を沢山入れる。
「そんないいお酒、お料理に使うの?」
「いや私も先生もこの酒好きじゃないので…料理に使う方が良いじゃないですか」
「でもいっぱい入れるのねえ」
「あ、下がっててください、燃やしますから」
「えっ、きゃっ」
さっと青い火が上がり、すぐに赤い火になった。
日本酒はそこまでアルコールが高くない。
「乱暴ねえ、沸騰させるだけでいいのに」
「あれ、そうなんですか? 昔からずっと火を入れてました」
「危ないじゃない」
「まぁそうですけど」
苦笑しつつ料理を続ける。
「意外と手際いいわねえ」
「はは、八重子先生に仕込まれました」
もともと自炊できないわけでもなかったし。
そろそろ支度が終わりそうになったころ、玄関の音。
生徒さんが帰られたようだ。
ご飯が炊けて、食卓を拭いて用意をしていると先生が戻ってきた。
「あら、姉さん。いつの間に来たの」
「もうちょっと前よ、お稽古の邪魔になるから待ってたの」
食卓に配膳する。
「あ、おいしそう」
「山沢さんって結構上手ねえ」
「そうでしょ、おいしいのよ。助かってるわ」
「まぁとにかく食べましょうか、おなかすいてるでしょう?」
「わかっちゃう?」
「わかっちゃいました。どうぞ」
「いただきます」
食事を始めてから先生が斐さんに何で来たのか聞き始めた。
「あぁそうそう、お母さんね、外泊でGWの間どうかしらって先生がおっしゃってるの」
「良いですね、丁度練習になる」
「そうする?」
そうしよう、ということで食事が終わった後、斐さんが帰って行った。
「ごめんなさいね、GW遊ぶって言ってたのに」
「いやぁそんなことより戻ってきてもらうほうが良いでしょう、俺とはいつでも遊べる」
「うん、そうね。じゃあ明日、お母さんのところ行くわね」
「はい」
お風呂に入る前に今日は抱くことにして、先生は翌朝風呂に入られた。
「んー、気持ち良いわ」
「今日も暑くなりそうですね」
「じゃ早めに行こうかしら」
「そうしましょう、用意してきますね」
先生の身支度が整ってから八重子先生の下へ。
3日間の外泊、という形で帰宅してもらうことになった。
 
GWに入る前の夜。
律君が八重子先生を連れ帰ってきた。
普段通りの生活ができるか、試しにということだ。
それだからいつもの部屋に玄関から歩いて上がることになった。
少し大変そうではあるが危なげ、というほどでもない。
ゆっくりと杖を使って歩き、部屋に入られた。
「やっぱり落ち着くねえ」
「でしょうね、あ、今日は俺、隣の部屋で寝ますから」
「そうしてくれるかい?」
「もちろんです、たぶん大丈夫でしょうけど。見た感じ」
「そりゃあリハビリ頑張ったもの」
「長かったですよねえ」
「嫌になったこともあったけどお手水も自由にいけないのはごめんだからねぇ」
「男の人はそうじゃないらしいですけどね」
とりあえずはいったん居間に戻っていつもの場所へ。
やっぱり収まりが良い。
先生が水屋の片づけから戻ってきた。
「どう? 大丈夫そう?」
心配そうに覗き込んでいる。
「まぁなんとかなるだろ」
「とりあえず、ご飯にしましょうか」
夕飯を食べてゆっくりして。
「そろそろお風呂、どうする?」
「明日のお昼に入るよ」
じゃあと律君と先生が入った。
「あんたは?」
「俺は明日、八重子先生と入ります」
「そうしてくれるの?」
当然だろう。
退院後初めて一人で風呂に入るときは怖いもんだ。
いつものように火の元と施錠を確かめて、八重子先生の隣の部屋に布団を敷く。
先生は八重子先生の部屋に布団を敷いたり寝かせたりしているようだ。
寝る前にトイレに行こうと思うとちょうど先生も出てきたところだった。
「あ、お布団敷いた? じゃ寝ましょ」
俺の部屋に向かおうとするから止めて先生は自分の部屋で寝るよう伝える。
「どうして?」
「俺、横の部屋で寝てますから。ほら、なんとなく心細かったりしません?」
「あら、そうね。じゃそうしてくれる?」
「はいはい、じゃおやすみなさい」
「おやすみなさい」
っと寝る前のキスはしておきたい。
腕をつかんで振り向かせてキスをして、ちょっと胸を揉んだ。
「こら」
こつん、と額を叩かれて笑って離してあげて別れた。

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