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「あ、お帰りなさい。顔色少し良くなりましたね」
「待たせたかしら?」
さっき来たところ、と久さんが答えて兄さんと姉さんが戻ってきた。
「お邪魔してます」
「さっき絹から話を聞いたんだが」
「ああ、では居間でお話ししましょうか。私は手を洗ってきますね」
皆の分のお茶と久さんのアイスコーヒーを出して落ち着かない気持ちでいると久さんが戻ってきた。
「絹ちゃんに聞いたのだけど、あなた開と結婚するの?
絹ちゃんのために?」
「ええ。はい。私にとっても利点は多いですし」
久さんは先に考えてあったのか流暢に話し出した。
兄さんも姉さんも私も、確かに納得できることばかり。
来月にでもあちらのご実家へ挨拶という話になった。
おうちの方へは久さんが連絡してくれるそうで、本人は多分やっと身を固めたかくらいしか言われないと言っているけど心配だわ。
だって兄さんの経歴が問題だもの。
「うちの社長にも勧めて貰いますから大丈夫ですよ」
心配しないで、と言うけれど。
いくつか家のことや結婚した後のことについて話をまとめて兄さん達は帰っていった。
「さて。買い物行きますが何か買う物有りますか?
それとも一緒に行きますか?」
もうそんな時間だったのね。少し迷ったけど一緒に。
何を食べたいとかはまだ思いつかなくて久さんが隣で言う献立。
牛肉のオレンジソース、新タマネギとエリンギのソテー、サラダ水菜とチリメンと油揚げのサラダになった。
相変わらず健啖家でついつい釣られて私も食べてしまうのよね。
九時頃に眠くなって久さんに寝かしつけられてしまった。
翌朝は開兄さんと環姉さんが来て話し合い。
いくつか話を詰めないと、と久さんが中心で環姉さんは相続やお金のことも。私や久さんがどちらが先に死ぬかは分からないからとお墓や茶道教室、茶道具のことまで。久さんは考えてきたことと新たに出て来る様々なことを一つずつ相談しながら姉さんと根気よく怒らず話している。
まだ死んだときのことまで決めなくても、と私は思ったのだけど。
とりあえず私が先に死んだときは茶道教室は律のお嫁さんと二人三脚で、その後はお嫁さん次第にすることや、久さんはうちのお墓に入ること。
久さんは基本的には飯嶋を名乗らず山沢のままでいること、これはもう年が年なので今更ですと久さんが言ったからだけど。
途中から律が話に参加して、まあ良いんじゃないの。なんて。
お昼ご飯のあとからは律のお嫁さんも一緒に。
「この場では言いにくいだろうから何かあれば律君に」
と久さんが言い、要点をまとめて箇条書きにしてくれた。
話が付いたこと、私たちがこれからしなきゃいけないこと、久さんがこれからすること。結婚式はしないこと。うちの親戚との顔合わせと言っても数人だから、こちらはもういいこと。久さんのお身内とは私と兄さんが京都へ向かうときに。
結婚って大変よねえ。
律の時にもしたはずなのだけど。
あの時はまだおばあちゃん元気だったものね。
少し遠い目をしていたら久さんに背中を撫でられていた。
「あらもうこんな時間、そろそろ帰るわ」
「姉さん、今日はありがとう」
「あんたご飯もうちょっと食べなさい。山沢さん、絹のことよろしくね」
「はい。先生のことは出来るだけさせていただきます」
いつまでも先生呼びなのは直らないのよね。結婚したら変わるのかしら。
後で聞いたら絹さんと呼ぶことになるかもしれないと言っていたわ。
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