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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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朝、起きると先生と目が合った。
「おはよう…あの、昨日はごめんなさい、寝ちゃったのよね?」
「おはようございます。また次のときに沢山しますからいいですよ」
くすくす笑いながら背中をなでる。
「それとも今からしましょうか」
「したいの? 困ったわね…もうそろそろ起きないと朝御飯作る時間よ?」
はっと時計を見れば確かにそんな時間。
「うーん…」
もぞもぞと尻をなでる。
「ちょっと、もう。だめよ」
「だめ?」
「ダメよ。戻りましょ、ねぇ、ダメったらダメ!」
「…しょうがないなぁ」
そのかわり、としっかりキスして先生を解放した。
ぱさっと俺の寝巻を着せてトイレへ立たせる。
俺はひとつ伸びをして布団を畳んで洗面へ。
トイレから出てきた先生が歯を磨いてる俺の背中から手を回して胸を揉んできた。
「…ゔ?」
磨き終え口を漱ぐ。
「先生、指冷たい」
「あらそう?」
「顔洗ったら交代しますから手、どけて。水かかるから」
手が引っ込んだのでざぶざぶと洗って交代。
タオルで拭いてると先生は寝巻を着たまま器用に洗っている。
よく袖濡れないなぁ。
タオルを欲しそうに手が泳いでるので先生用のタオルを渡す。
俺のタオルは固め。先生のはふわふわ。
干し方が違うらしい。
うちでも先生用のタオルだけはふわふわだ。
先生はそのまま顔の手入れをしている。
俺は手櫛で髪を整えて、トイレへ。
出てくると先生は髪を整えてる。
ふむ。
そろりと後ろから胸を揉んだ。
「これ、ダメよ。早く服着なさい」
ピシャッと腕をはたかれてしまった。
俺の胸は揉んだくせに。
ちぇっ、と思いつつ着物を纏う。
先生も着替えに戻ってきた。
着替えてるのを眺めてると引き寄せたくなる。
くすっと先生が笑ってキスしてきた。
うーん、遊ばれてる。
先生は貝ノ口に帯を締めてショールを羽織った。
「さ、戻りましょ」
「はい」
音を立てないよう玄関を開けて台所へ。
「おはよう」
「おはようございます」
「絹は?」
「ショール置いてくるっておっしゃ…、あ、きた」
「お母さんお早う」
「はい、おはよう。酒臭いねぇあんた」
「半分くらい飲まれて即寝ですよ」
「あぁ、じゃ昨日はしてないのかい」
「ええ」
「お母さん、朝からそんな話しないで頂戴よ」
先生がちょっと拗ねてるようで可愛い。
お味噌汁を作って朝御飯の支度。
律君が大あくびで台所に来た。
「おはよ~今日は何ー」
「あんたスクランブルエッグとベーコンか目玉焼きとウインナーかどっちがいい?」
俺はベーコンがいいなー、なんて思いつつ律君の返答待ち。
「んー、スクランブルエッグ」
ちっ。
お味噌汁はサツマイモ。
付け合せは温野菜とトマト。
「中野さんがねぇトマトのお味噌汁美味しいって言うんだけど」
「トマトを味噌汁ですか? なんかやですね」
「温かいトマトってピザくらいしか思いつかないなぁ」
なんていいつつ朝御飯。
「お母さん昨日も飲んでたの?」
「あらやっぱり匂うかしら」
「やっぱりもうちょっと量は控えましょうよ」
「そうねぇ、ちょっと二日酔い気味よ」
「味噌汁沢山飲んでください」
「あなたも結構飲んでたのに二日酔いにならないのねえ」
「飲める体質飲めない体質ってやつでしょうね。今度しじみ見つけたら持ってきます」
「そうね、司ちゃんもよく二日酔いって言ってるから」
「二日酔いになるほど飲まなけりゃいい話なんですがねえ」
律君が笑ってる。
「ほんと二人、仲良いよね」
「律君と司ちゃんみたいなものさ」
うん、春野菜がうまい。
アスパラとか面倒で家じゃ絶対入れないからな。
あ、りんごも入ってた。マヨネーズかけちゃったよ。
まぁいいか。
トマトも食べて完食。ごちそうさま。
先生はやっぱりまだ眠いようであくびをかみ殺してる。
「寝てきたらどうですか」
「んー…」
「そうしなさいよ」
「じゃちょっと寝てくるわ。後よろしくね」
八重子先生とお茶を頂きつつまったり。
「お昼はなに作ろうかねぇ」
「本当、主婦は大変ですね。食べてもすぐ次の献立ですもん」
「あんた何食べたい?」
「う、食後に考えられないです。…カレー?」
「……いいけどね、買物行ってきてくれるかい」
「いっつも何入れてましたっけ?」
「肉と人参と………」
と列挙するのをメモに取りお買物へ。
どうせ先生寝ちゃってるし。
俺と八重子先生じゃ会話が変な方向に進みやすいし。
指定されたものを買い揃えて帰宅。
下拵えにかかる。
座り込んでジャガイモや人参の皮を剥いてると孝弘さん。
何かないかと聞くのでさっき買ってきたお饅頭を。
10個入の箱ごと持って離れに戻っていった。
ほんとによく食うな。食後なのに。
剥き終わったころ八重子先生が台所に来て仕込み開始。
先生はまだ寝てるかな。
「あんたも眠そうだねえ。お昼出来るまで一緒に寝ておいで」
「いいんですか?」
「Hはだめだよ」
「あ、はい」
いそいそと先生の元に行く。
俺の部屋にはいなくて先生の部屋かな。
良く寝てる。
そろり、と横にもぐりこんで先生を抱きしめて寝る。
あったかいなぁ。
良い匂いだし。
酒臭さは少しあるけれど。
うつらうつらと眠りに飲み込まれ、美味しそうなにおいで目が覚める。
先生は俺の胸に顔を埋めて寝ている。
「お母さ…えっ?」
ぱっと律君が襖を開けて呼びかけてきた。
「あー…ご飯できた?」
「えーと、はい」
後ろ向いて答えてるのはあれか。律君の位置から俺の胸が見えてるんだろう。
先生をそろりと胸の上から布団に下ろす。
「うぅん…」
起きる? いや寝息。
もう少し寝かせておこうか。
帯を解いて前を合わせ直して部屋から出て台所へ。
カレー皿を配膳する。
うーまーそー♪
「絹は?」
「まだおやすみです」
「じゃ先食べようかね」
ということでいただきます。
「あれ? おばあちゃん牛肉入れたの?」
「山沢さんが買ってきたのが牛肉だったからね」
「関西は牛肉なのでつい」
幸せだなぁ。おいしい。
カレーなんて一人だと作らんから。
ちゃんと買ってきた福神漬も乗せてある。
「おばあちゃんおかわりある?」
「まだ沢山あるよ」
俺が食べ終わった頃先生が起きてきた。
「起こしてくれたらよかったのに」
と言う先生にカレーを渡す。
「あらお肉が牛肉ね。これもおいしいわ」
先生が食べ終わって洗い物を片付ける。
残りのカレーはタッパーに入れて俺が持って帰ることに。
まぁ一人分ちょいではどうにもならんもんな。
スパゲティにして夜食おう。
先生方と団欒を楽しんで夕方帰宅。
スパゲティを湯がいてカレー粉で炒め、そこにカレーを乗せたら出来上がり。
うまい。
満腹になって睡眠。
今日は先生をたっぷり抱っこできたから腕に感触が残っている。
よく眠れそうだ。おやすみなさい。
翌朝出勤して仕事。
暇だ。こりゃ明日が思いやられる。
仕事を終え食事を取って帰宅。
雨気。
今日はそう暖かくもない。
寝てしまおうか。
いや、掃除してしまわないと。
窓を開けてそこらを片付け掃除機をかける。
トイレと風呂も掃除してさっぱり。
うし、風呂入ろう。
その頃には晴れてきて風呂上りにビール。
…ちょっと寒かった。
飲み干して暖かい布団の中へもぐりこんで昼寝。
夕飯何しようかな…。
などと考える暇もなく寝入って起きたら真っ暗だ。
はらへった。
何も考える気力なくスーパーに行くとわさび焼きそば?
ためしに買って帰るか。
作って食う。
……むせそう。ヤパい。ビールをもう一本出して流し込む。
目にも来た、ヤバい。
なんとか食べ終えた頃先生から今晩のご飯写真が届く。
くっそ、うまそう。
こっちは涙目で悶絶してるのに。
何度かメールを交わして布団にもぐりこむ。
夜が更けて再度眠りに落ちる。
…ヤりたい。
明日、夜出来るから我慢だ。
おやすみなさい。
さて火曜の朝が来てやっぱり仕事は暇で。そして冷えている。
お客さんもだらだらと時間を潰すような具合。
早仕舞い、といかないのは仕方ない。
それでもいつもよりは早く終って帰宅してお稽古へ。
いつものように水屋の用意、いつものように生徒さんのお稽古。
そして俺のお稽古。
厳しい稽古にも少しは慣れ、先生も手加減をしてくれるようになった。
夕飯をいただいてすぐ、八重子先生の指示もあり、あちらの家へ。
というのも先生が俺の手を触るから。
無意識みたいだが。
入ってすぐにキスされた。
あ、もしかして生理前だったりするだろうか。この大胆さは。
さっさと脱がせて一戦する。
もっと、とかいってるからやっぱりそうかも。
俺も抱きたいしで何度か楽しんで結構ぐったりするまで抱いた。
とはいえまだ日付が変わっていない。
「少し飲みます?」
酒がまだ残っているので乾物なつまみを展開してコップ酒。
先生は俺にもたれてないと起きていられないらしくて。
口移しに飲ませてみたり。
眠くなってきたようだ。
可愛いなぁ。
布団に抱えあげて一緒に寝ることにした。
酒・つまみは明日で良い。
おやすみなさい、とかすかに聞こえる。
おやすみ、と答えて背中をなでているとすぐに寝息。
軽くキスして俺も寝た。
朝、起きてもう一戦して先生は風呂。
俺は先に帰って朝飯の支度。
食卓に並ぶ頃ちゃんとした格好で先生が戻ってきてご飯をいただく。
律君は今日も1限目からあるらしい。
暖かい日差しにのんびりしていると先生。
「さ、用意するわよ~」
え?と首を捻る。
「何してるの? あなた。お台子出して頂戴。炭は用意したから」
「お稽古?」
「そうよ。早く覚えてくれないと。円真も申請してあるのよ」
「早くないですか?」
「早くないわよ、許状きたらすぐにするわよ?」
うわ、マジか。
頑張らねば。
茶室へ行って台子を出し、水屋の用意も整える。
釜にたっぷりの湯が沸いたところで手や口を漱いでお稽古開始だ。
お昼休憩を挟んでお稽古は続く。
玄関からただいまの声。
律君帰宅か、と思った瞬間に間違えて叱責を食らった。
その声に驚いたようだ。
「お母さんどうしたの?」
律君が入ってきた。
「あぁ、あんたもお客様しなさいよ。コート脱いで手を洗ってきて」
いい加減先生ももう飲めないようである。
「え、おばあちゃんは?」
「おばあちゃんはお夕飯の支度。あんたかわり出来ないでしょ」
しばらくしてやれやれ、と言う顔をしてお客様をしてくれた。
たっぷり濃いの、は辞めて出来るだけ薄茶にして出す。
律君がほっとした顔で飲んでいる。
先生を正客に見立て挨拶。
何度か叱られてお稽古が終る。
「他の生徒さんへのお稽古とは違うんだね」
「早く覚えてくれないと困るもの」
「どうして?」
「早く先生の資格とってもらって、お母さんとかおばあちゃんがお休みでも
 お教室できないといけないでしょ」
「え、でも」
「あんたがお茶とお花と出来るお嫁さん貰ってくれると話が早いけど」
「いや、それは…まだ彼女もいないし」
後始末しながらつい笑ってしまった。
「そうだなぁ、お花のセンスいい子がいいですよね」
「そうそう。山沢さん壊滅的だわよね」
「あっ、酷いなぁ。たしかに自覚はありますけど」
ほほほ、と先生が楽しげに笑っている。
「ごはんできたわよー」
八重子先生の声がかかり、急いで片付けた。
火の元は念入りに確かめる。
さてお夕飯はなんだろう。
……山菜。
「えーと急用を思い出したので帰り…」
「食べなさい。好き嫌いしないの!」
くっ、バレた。
律君が凄く笑っているのを横目でにらみつつ、
孝弘さんが横からお箸を出してくるのを先生が叱りつつ。
食べると食えるものがいくつか出てきた。
意外。
やっぱりダメだ、食べれないと言うものは流石に二度食わそうとはされず、
孝弘さんのお皿に収まった。
角煮などもいただいてごちそうさま。
さてさてそろそろ帰らないと。
先生が何か食べ物を持たせてくれた。
寝るまでにお腹すくでしょ?と。
帰宅して開けてみたら木の芽和えで凄くうまい。
うれしいなぁ。
そして何より太らないような食い物だ。
感想をメールして風呂に入り寝る。
おやすみなさい。
さて、今日も仕事を適当にこなしてお稽古へ。
台所に魚をいくつか入れて水屋の支度。
待っていると生徒さんより先に先生が来た。
「まだ早いですよ」
「うん、あのね。今週の土日なんだけど…」
所用で先生は居られないらしい。
「お稽古は八重子先生ですか」
「お休みにしようと思ってるのよ」
「おやどうしてですか?」
「どうせ炉灰も上げなきゃいけないし。
 でね、あなたは土日来てお母さんを手伝って欲しいのよ」
「ああ、はい、いいですよ」
「あなた先生になるならどうせやらなきゃいけない事だし今からね。覚えて頂戴」
「お稽古ですね?」
そう、と先生が笑ってる。
まぁ確かに覚えておくべきことか。
生徒さんが来てお稽古開始。
いつもの生徒さんは楽だ、縁談持ってこないからなー。
本当に名目だけ開さんと結婚してもいいかもしれん。
なんて思うくらいくどい人もいる。
お稽古が終わり夕飯。
鱧の湯引きに甘鯛の酒蒸し、天然鯛のお造り。
なんとなく魚尽くしをしたい気になって持ってきた。
お稽古の後にするのは正直疲れるんだけど、先生が嬉しそうだから。
「冬と春と夏だねえ」
「そうですねぇ」
疲れて言葉少なになりつつ俺は野菜炒めを食べる。
八重子先生の炊いた蕪も美味しい。
ご飯を食べた後、帰る用意。
玄関まで見送ってくれた先生に連れ帰りたい、と手を引いてボソッと言ったが…。
明日も教室はあるから、と却下された。
残念だ。
頭をくしゃりとなでられてあきらめて手を離し、帰る。
家に帰宅してすぐに寝た。
仕事頑張る気になれないなぁ。
今週仕事頑張っても先生に会えない訳で。
なんてぐだぐだしつつの金曜日。
手を抜いて帰宅し転寝してたら家に先生が来た。
朝のお稽古終わり次第すぐにこちらへ来たらしい。
明日の御用事はうちからの方が行き易いとか。
なるほ。
中継地点ね。
「食事は取ってきてます?」
「まだなの。あなたは?」
「俺もまだって言えばまだですね。何食いたいですか」
あくび一つして着替えた。
「喫茶店のピラフ。ダメかしら」
「そんなのでいいんですか」
髪を撫で付けて一緒に近所の喫茶店へ。
俺はカレー。
「この間食べたのにまたなの?」
「オムライスかピラフかカレーだったらカレーですよ」
「どうして?」
「カレー好きなんですよね」
「ハンバーグも好きよね。お子様?」
ふふっと笑ってそんなことを言う。
「どうせお子様ですよー」
「お子様ランチとか今度頼んであげようかしら。旗がついてるようなの」
「それは流石にやめてください」
くすくすと俺をからかいつつ食べてる。
食べ終わって先生はレモンソーダを頼み俺は紅茶を。
俺のところにレモンソーダが運ばれた。
カレーに紅茶じゃないんだろうな。
先生にレモンソーダを滑らせてすぐに紅茶が来た。
ここの紅茶結構うまいんだよね。
先生も飲み終わったので支払って帰宅する。
天気が良いからゆっくり歩いて。
手が触れる。
「……今日乾燥してますね、空気」
「そうねえ」
先生の手がかさついてる。家帰ったら化粧水とワセリン塗るかな。
のんびりと帰ってきて手を洗う。
先生が手を洗った後俺の化粧水をたっぷり先生の手になじませてみた。
凄く吸うんだけど。どれだけ乾いてたんだろう。
ついでに手をマッサージ。
こんなものかなー。
さっきよりはしっとりとした手になった。
お礼はキス。
「カレーの味がするわね」
「ああ、歯を磨いてきます」
でないとあそこ舐めたらひりひりしそうだしな。
きっちり漱いで戻る。
先生がお湯を沸かしていた。
「あーお茶切らしてますよ?」
「えっそうなの?」
「お抹茶なら冷凍庫にありますが。それともコーヒーがいい?」
「お茶碗どこかしら」
「薄ですか?」
「濃、あなたも飲む?」
「じゃこれで」
黒楽を出して水につける。
その間に冷蔵庫から上等の濃茶を出した。
先生が点てて飲むんだったらやっぱり上等がいい。
茶筌も通して茶碗も温めて缶から直接投入だ。
うちの台所で先生が点てるのはなんとも言えず…似合わない。
やっぱり先生は茶室で点ててるか台所で料理してるのが合う気がする。
お茶をいただいてお茶碗を漱いで乾かす。
先に先生がお座布に腰を落ち着けた。
うん、やっぱりこの方がいい。
後ろから抱きつく。
「どうしたの?」
「ん、暫くこうしてて」
「いいわよ」
しばらくしてもぞりと手を動かした。
つい胸を揉んでしまう。
「したくなったの?」
「うん」
先生をお座布から俺の膝の上に移動させた。
「脱いで」
しゅるり、と帯を解いて行く。
「ね、離して。脱ぎにくいわ」
そう言われ開放。
脱いだと思ったら着物を持って和室へ行き、浴衣を羽織って戻ってきた。
俺の膝へくるかと思ったら寝室へ行こうとする。
「どこ行くんですか」
「ベッドに決まってるでしょ。そんなとこいやよ」
「じゃいいや。やらない」
「何拗ねてるのよ」
「拗ねてないよ。明日泊まりなんだから痕残せないの思い出しただけ」
「あら。そんな理由? 違うでしょ?」
「違うけど違わない」
先生が困った顔でこっちを見てる。
「じゃ膝枕…してあげるわ。それでどう?」
あ、それはいいな。
ベッドへ行って先生の膝枕。
転寝途中で起こされたこともあり、先生の膝にいるうちに寝てしまった。
暗くなった頃、起きたら俺の胸を枕に先生が寝てた。
時計を見ると6時。飯を食わなきゃな。腹減った。
ほんと言うと飯より抱きたいんだが。
明日は温泉らしいから本当に痕は残せない。
してはならないといわれるとしたくなる。
そうこうしてるうちに先生も起きた。
寝ぼけ眼でこちらを見るのが可愛くてついキスをしてしまう。
とまらなくなった。
噛まないよう、吸わないよう、強く抑えないように気をつけてむさぼる。
寝起きの先生を抱くと色々混乱してるのがよくわかる。
俺じゃなく孝弘さんの名前が出てくることも有る。
ちゃんと起きてる時はそういうの無いんだけどなぁ。
先生にとっての一番は孝弘さんだから仕方ないが。
俺の性欲が収まった頃、先生は息切れしていた。
あー…腹減った。
すし出前してもらおう、うん。
部屋を出て鮨屋に電話して頼んだ。
それから浴衣を纏い先生のそばへ戻る。
「先生、すし頼みましたけど食いますか」
返事は出来ないようで、軽くうなづいてる。
咳。
背中をなでて落ち着かせた。
汗だくだ。
飯食ったら風呂に入ろうかな。
それとももう一度抱いてからにしようか。
考えてると先生の手が俺の懐に。
乳首をつねる。
腫れるからやめろというのに。
「痕つけますよ」
そういうと離してくれた。
先生にも浴衣を着せた頃すしが来た。
取りに出て戻る。
おいで、と手招いたら首を振るのでどうしたのかと思ったら立てなかったらしい。
先にお手水、と言うのでトイレに抱きかかえて行ってそれからお座布の上へ。
後ろから抱えてもたれさせ、食べさせる。
おいしそうに食べてるのを見てると俺の腹がなった。
先生が笑って俺の口に胡瓜巻を入れてくれる。
「いいから」
そういって先に食べさせて先生をベッドに戻した。
それから自分の分を食べる。
ご馳走様をして桶を洗い、表に出して先生のそばへ行く。
「久しぶりだな、あなたが立てないって言うなんて」
「あなたがしたからでしょ、もう」
「はは、おいしそうだったからね、ついつい」
喋ってると先生は段々眠くなってきたようだ。
「もう寝ましょうか」
「うん」
「ね、明日どこ行くんでしたっけ」
「白子温泉よ」
「九十九里浜ですか、いいですねえ」
「美肌の湯らしいわよ~」
先生の肌がますます綺麗になるのか、そりゃいいなぁ。
もぞもぞと先生の手が俺の胸をまさぐる。
何か触ってると落ち着くらしい。
背中をなでているうちに先生の寝息。
ふと思い出したのだが先生ってそろそろ生理じゃなかっただろうか。
温泉大丈夫なのかなぁ。
入れなかったら可哀想だよな。
先生に聞こうにももう寝てしまっているから旅行から帰ってからだな。
次に会えるのは火曜日か。
そう思えば寝るのが勿体無い気がする。
けれど明日は仕事だからと仕方なく寝た。
翌朝寝ている先生を置いて出る辛さ。
帰ったら居ないんだよなー…。
くちづけを落とし、渋々出勤する。
ぱたぱたと仕事をこなす間は忘れていられるが。
手が空くと今頃先生は、と考えてしまう。
それでも女友達と、と言うからいいか。
まさか俺以外とそういうことはしないだろうし。
仕事が終ってお稽古場へ移動。
いつもよりは少し遅めだ。
ついたら丁度八重子先生は食事を終えたところで一緒にお茶をいただいた。
今日はお稽古なしだから気が楽だ。
炉の灰を上げて炉壇を抜ききれいにした後は畳替え。
なるほどこれは八重子先生だけでは大変かな。
それから風炉に灰を入れて八重子先生がササッと灰を形作って行かれる。
手早い。綺麗。
俺がやるとどうにも時間はかかるし形は悪いし。
やっぱり長年のお稽古かな。
「灰の教室行ったら?」
そう仰るが中々スケジュールが。
「ま、普段うちのお稽古でしてもいいけどねえ、他の生徒さんがお休みのときとか」
「それいいですね、お願いします」
丸半日が風炉への支度で潰れた。
汗を沢山かいたので八重子先生と風呂。
気持ちいいなー。
先生も今頃は温泉を楽しんでいるのかな。
新しい傷が増えてるが最近は八重子先生もあまり言わない。
たまに手当てをしてくれることはある。
背中は見えないので化膿しかけててもわからない。
だから気づいたときに抗生物質を塗ってくれたりする。
さて、夕飯を作って食べてゆったりした夜。
「あんた今日絹居ないけど一人で寝るのかい?」
「律君と寝ましょうか」
「えっいやそれは駄目だって!」
律君が慌ててて面白い。
「冗談だよ。たまには一人で寝ましょうか」
「私と寝るかい?」
う、なんとなく怖い気がする。
でも最近はないし。
「じゃそのように」
孝弘さんがにやっと笑った。
しばらくして戸締りし、寝ることに。
八重子先生の部屋にもう一組布団を敷く。
別の布団なら問題あるまい。
布団に入ってすぐ。
隣で八重子先生の寝息が聞こえた。
疲れたから寝てしまったようだ。
ふっと笑えてそのまま寝た。
翌朝目が覚めて八重子先生と朝食を作る。
何事も無く先生の居ない日曜日。
ふとついた溜息に八重子先生が頭をなでてくださる。
お昼過ぎ、家路につくことにした。
帰宅してトイレに入ればなるほど今日からのようで、道理でだるい。
転寝しようと思っていると電話。
先生からだ。どうした。
先生もなっちゃってだるくて直帰はしんどいからうちに寄りたいらしい。
珍しく同じ時期になるとはね。
うちにもう帰ってるというとちょっと驚いてる。
迎えに行きましょうか?と聞くとそうして欲しいとのこと。
現在ランチ前らしい。
待ってるというので車を走らせる。いいドライブ日和だ。
駅についてメールを入れた。
現在地を教えてもらって迎えに行く。
先生がご友人方と話しこんでるのを見ると楽しそうだ。
「お迎えに参りました」
そう声を掛けると先生がご友人方に迎えが来たから帰るわ、と仰る。
「あら彼氏?」
「絹ちゃんやるわねー」
「お茶の内弟子よ。ここから近いからお願いしたの」
「そんな便利使いしちゃっていいの?」
「通いのお弟子さんに使いっ走りさせるって先生もいらっしゃるわよ」
「先生、車で待ってます。先に荷物積みますから」
「じゃこれお願いね」
はい、と答えてボストンバッグを預かる。
暫くして先生が皆さんに別れを言ってこちらへ来られた。
後部座席に、と言ったけど助手席がいいらしい。
しっかりシートベルトをさせて運転席に乗り込む。
見えなくなったころ、一つ息を落とされて。
やっぱり少しは緊張してたらしい。
「寝てるとき、他の人に抱きついたりしませんでした?」
「え?」
「よく俺の胸弄ってたりするでしょう。寝てるとき」
「あぁ。大丈夫よ、ベッドだったから」
ほっとしてるのを見て笑われた。
「そんなこと心配してたの?」
信号で止まったときに撫でられてしまった。
「あんまりそのー近寄られると抱きたくなるんですが」
「あら」
「ほら、そこのホテルとか。入りたくなりますから」
「あらあら、ダメよ」
「アレだから?」
「それにお昼間よ。人に見られても困るわ…」
「まぁね、わかってますけど。あ、今度SMホテル連れて行きたいな」
「SMホテル?」
「普通のラブホとは違って面白いですよ。誰かに見られたら社会見学ってことで」
「見られるの前提なの?」
「前提で言い訳を作っとくとばれたときに慌てなくていいからね」
「…私にも何か嘘ついてそうねえ」
「今のところはありません」
「あらこれからつく予定あるの?」
「ないですよ」
あちらもこちらも生理中だからどうしても絡み絡まれになる。
うちについて先生がトイレに行く。
手を洗ってると背中に重みと温かみ。
「眠い?」
「うん」
「おうち、電話するから少し寝ましょうか」
「そうしてくれる?」
「ええ。着替えてらっしゃい」
背中が軽くなって温かみが離れていく。
追いたくなるが電話が先。
八重子先生は2コールで出てくれた。
事情をお話しする。
明日はお稽古もないから泊まりたいというなら泊めても良いと仰る。
ありがたく受けて、でも実際どうするかは先生次第かな。
電話を切って俺も寝巻に着替えトイレへ。
ベッドに先生ともぐりこむ。
温かくて重い先生の身体が心地よい。
俺も先生もすぐ眠りに引き込まれて行く。
ふと目がさめると美味しそうな匂い。
先に先生が起きたようだ。
時計を見れば七時半。
もしかしたらもっと早く起きてて焦れて自分のだけ作って食ってる?
のっそりと部屋から出る。まぶしい。
「うるさかったかしら」
「いや…俺の分もあるんですか」
「あるわよ。起きなかったら冷蔵庫入れようと思ってたけど。今食べる?」
「あなたは食べたんですか」
「うん、さっきご馳走さましたところよ」
「俺、起きませんでした?」
くすくす笑ってる。
「しがみついてるの剥がしたのに起きなかったわよ、起きててわざとか疑ったわ~」
ありゃ。
座るように言われて座ってるとご飯とおかずが出てきた。お味噌汁も。
「帰ろうかしらと思ったんだけどお腹すいちゃったのよね」
「あ。八重子先生が明日お稽古ないから泊まってもいいって仰ってましたよ」
「あら、どうしよう…」
「お好きなように」
飯がうまい。
ちょっと迷っているようだ。
「泊まりますか?」
「そうするわ。でも…」
「しませんよ」
ほっとした顔をする。
「されたいって言うなら別ですが」
ニヤッと笑うと顔を赤くしてる。
「もうっ。そんなわけないじゃない!」
「おやそうですか」
「すぐからかうんだから」
きゅっと鼻をつままれた。
じゃれあいもそれなりに楽しい。
はは、と笑ってごちそうさまをする。
食器を洗ってお片付け。
先生はテレビを見はじめた。
「ねぇ、コーヒー入れて頂戴」
「こんな時間から飲んだら眠れなくなりますよ」
「だってお茶っ葉切らしてるんでしょ」
「買ってきます」
「いいわよ」
「俺も飲みたいから」
「そう? どこ行くの?」
「とりあえずコンビニへ行こうかと」
「じゃプリンもお願い」
「はい」
着替えてちょっと買物へ。
緑茶緑茶、と。
あった。
あんまり見ないメーカーだ。おいしいのかなぁ。
静岡茶らしい。
プリンと共に買って帰る。
先生にお渡しすると既にお湯を沸かしていたようで急須にとって入れている。
着替えて戻れば既に湯飲みに。
プリンは冷凍庫に入れたらしい。凍らせたのを食べるのも好きなようだ。
少しぬるくなったのを見計らい飲む。
あ、それなりにうまい。
ほぅっ、と落ち着いていると先生がもたれかかってくる。
ゆったりとした時間が流れる。
「あなた明日お仕事?」
「ええ」
「じゃ、そろそろ寝る?」
「ドラマ終ってからでもいいですよ」
「先に寝てもいいわよ?」
「なんであなたがいるのに一人寝ですか」
「あらあら」
くすくす笑ってる。
後30分くらいでドラマは終るらしい。
俺の手を触りつつ集中して見ている。
しばらくして番組が終った。
「お待たせ。じゃ寝ましょ」
「はい」
歯を磨いたり化粧を落としたりトイレへ行ったり。
先生と布団にもぐる。
寒いようで俺に冷えた手先や足先をつけてきた。
苦笑してしまってあった毛布を足した。
夜半には多分暑くなるはず。
その頃には俺が居なくなるからきっと丁度いいだろう。
背中をなでつつ寝かしつける。
暫くして寝息に変わった。
俺もそのまま寝て夜中起床する。
出勤の用意をして良く寝ている先生の唇に口付けを落として出ていった。
仕事は休み明けの休み前と言うこともあり結構に荷物も動き忙しく終った。
やれやれ、と帰宅すると先生がお昼を作ってくれている。
「お帰りなさい、お仕事お疲れ様」
「ただいま帰りました。
 美味しそうな匂いですね。だるいなら作らなくてもよかったんですよ?」
「あら、そんなに外食ばかりダメよ。もう出来てるから食べるでしょ」
部屋着に着替えて戻る。
先生の手を取ると冷えていて顔色も少し悪い。
「無理しちゃダメですよ。外食でも出前でもあなたの体調が悪くなるよりいいです」
座ってて、と食卓の前に座らせて盛り付けや配膳をした。
これだけでもしないとね。
しっかり食べたあと先生を脱がせ寝巻を着せて布団に放り込む。
食器を片付けて俺も布団へ。
「お昼間から寝るなんて…」
「具合が悪いんだからいいんですよ」
「でも」
「ちゃんと俺に飯作ってくれて。ありがとう」
だきしめるとほんのりと頬が赤らむ。
冷えた身体を俺の体温で温めるように抱き締めて撫でる。
上半身はそれなりだが足がまだ冷えてるかな。
足元にもぐりこんで懐に足を入れた。
「あったかいわ…」
そのうちに寝息が聞こえる。
ちょっと抱きたくなったけど具合も悪いしなぁ、仕方ない。
一緒に寝るとするか。
夕方になったらおうちまで送ろう。
足を懐から出して、先生の横に戻って寝た。
薄暗くなった頃目が覚めて先生を見るがまだ良く寝ている。
顔色は少し良い。
眺めているとうっすらと目を開けた。
もぞもぞと先生の手が俺の胸を這いまわる。
寝ぼけてるなぁ。
俺の乳首を弄ってるうちに目が覚めてきたようだ。
軽くキスして起きる。
身づくろいを整えてコーヒーを淹れた。
「ねぇ私にも頂戴」
「トイレいってらっしゃい。その間に淹れますから」
「うん」
先生はどれが好みだっただろうか。
少し酸味のあるコーヒーにしてみた。
お座布に座った先生に渡す。
「おいし…」
「飲み終わったら着替えて。おうちまで送りますよ」
「あら。明日までいるつもりしてるのに」
「いいんですか?」
「だってあなたも顔色悪いもの」
おや気づかなかった。
「それにお夕飯の分も買物しちゃったし」
「何作るんですか?」
「あなたの好きな味噌炒めよ」
嬉しくなってキスしてしまった勢いで押し倒した。
「ちょっと、もう。ダメよ」
ついつい胸を揉んでしまって叱られた。
胸元を直して先生は起き上がり、台所へ立つ。
もう作ってくれるようだ。
昼前に下拵えは済んでいたらしく、手早く炒めている。
作り起きの副菜を出してご飯をよそえば夕飯の完成。
先生は食欲は沸かないらしい。
だるいそうだ。
「前からそうでした?」
「ううん、最近。更年期かしら」
「まだ早いですよ。一応婦人科行ってみたらどうでしょう。筋腫とかかも」
「痛くはないのよ」
「じゃ貧血かなぁ…疲れてるとか」
「疲れてるというのはあるかもしれないわねぇ。あなたとしすぎて」
「…そんなに疲れますか」
「疲れるわよ」
「来月生理前の週はしないで寝ましょうか」
「それで持つの?」
「難しいけど…具合の悪いあなたを見ているよりは俺が我慢すべきでしょ」
「終った後が怖いわねぇ」
ころころと笑っている。
お風呂は明日はいることにして早々に布団にもぐることにした。
「今日一日ずっと寝てる気がするわ」
「ちゃんと飯作ってくれてたじゃないですか。お買物も行って」
「明日はどうしようかしら」
「体調よければ朝はモーニング食べに行って散歩してもいいですね」
「あら、いいわね、お散歩」
布団の中でおしゃべりしているうちに寝て、朝6時過ぎ。
「流石に寝足りたわ~」
「ですねぇ」
「あ、お風呂借りるわね」
「どうぞ」
先生が出た後俺も入ってすっきり。
風呂から出ると先生が洗面所でドライヤーを使っている。
「体調どうですか」
「いいわよ。って何か着なさいよ」
「じゃモーニングいけそう?」
「行くから早く着なさい」
「はーい」
身支度を整えていると先生に頭を拭かれた。
「ドライヤー空いたわよ」
「別にいいんだけどな」
「風邪引いたら困るわ、ほら」
はいはい、とドライヤーを使って乾かす。
先生はその間に化粧を軽くして紫外線対策をしている。
「あなたも対策しないとしみになるわよ」
「うーん、面倒で」
「ほんと面倒くさがりよね。いいわ、行きましょ」
近所の喫茶店のモーニングセットを食べる。
俺はちょっと足りないから更にトーストを頼んで。
ここは色々選べる。トーストorピザトーストorフレンチトースト。
サラダにオムレツ、ベーコンorソーセージとスープ。
そしてコーヒーか紅茶。
先生はフレンチトーストを頼んでいる。
オムレツがちょっと多く感じたのか半分食べてと仰って俺の胃袋に。
ご馳走様をしてお散歩に。
「少し曇ってるわねえ」
「これから雨かな。早めにお帰ししたほうがいいかもしれませんね」
「そうねえ、雨の中運転するのって大変そうだもの」
「お昼前にしましょうか」
「そうね」
流石に先生も帰りたくないとはごねないな。
うちへ戻って先生は帰る用意をしている。
と言っても洗濯物を持って帰るだけらしいが。
「じゃそろそろ帰るわ」
「はい。荷物積みましょう」
「ん、お願いね」
トランクにボストンと洗濯物をつんで先生のお宅へ。
「ただいまぁ」
「あら、お帰り」
「あーお母さん。お帰りなさい」
「こんにちは」
「あぁこんにちは。どうしたの」
「荷物ありますから電車より車が楽なので送ってきました」
「洗濯するから洗濯籠のところ置いてきてくれる?」
「はい」
「あんた調子はどうなの」
「まーまーってとこですねー。だから今日は帰りますよ」
「あら泊まってかないの?」
「明日仕事ですから」
「あらあら、そうだったのね」
「そうそう、あんたらお昼ご飯は食べたの?」
「いやまだです」
「んじゃ用意するよ。山沢さんも食べて行きなさい」
「ありがたく」
お昼をいただいて一服して帰宅した。
さて明日は暇なのか忙しいのか…。
とりあえず早めに寝よう。
朝方雨が落ちてきて、やっぱり雨降りかと嫌気が差す。
雨だとどうしても客足が鈍る。
客の方でも明日買えばいいなんて雰囲気だ。
暇なまま仕事が終わり雨の中帰宅した。
明日…もできない。
明後日も出来ない。
つまらないなぁ。
逢えるだけマシなんだろうけれど。
あれ? 明日お稽古あるのかな。
もしかして、ない?
となると土曜まで会えないのか。
いや土曜も休みだからお稽古はないはず。
来週火曜日も、ない。
会うの、来週の木曜?
出来るの、来週の土曜?
うわ、きついな。
頭を抱えていたら先生から電話がかかってきた。
先生もこの事実に気づいたようで、どうする?と仰る。
どうするってどうしよう。
「お母さんがね、金曜日お稽古にいらっしゃいって。風炉のお稽古するから」
「あ、来週の木曜までお稽古ないかと思って今」
「大丈夫よ」
「その時にしていいですか? ダメかな」
暫く無言。
「それはその時に。じゃ、またね」
すぐに電話を切られてしまった。
今のはどっちだ。呆れられたか? それても照れくさかったのか。
まあとりあえず明日さえ過ごせば明後日には会える。
だったら俺が今やるべきことは…復習か。
イメトレしておこう。
先に昼飯を食ってきっちりイメトレして、夜になった。
さてと。寝るか。
木曜も何のことはない、暇だ。
なんせ明日あるからなぁ。
ぼんやりと仕事をしてぼんやりと帰る。
うーん、張りがない。
急に暇になるとすることが…あ、着物縫いかけて放置していたっけ。
縫うことに集中していると、ふと気づけば薄暗い。
もう夕方か。
伸びをして夕飯を取りに出る。
親子丼でも食おう。
そう思ったところで気づく。雨だ。
ピザ、取るか。
Sサイズとサラダと何かサイドメニューかな。
……わびしい。
先生から美味しそうな夕飯のメールが来る。
いいなぁ。
うらやましい。
そうメールしたら明日お昼を食べずに来るようにメールがあった。
一緒に食べましょ、と。嬉しくなってしまった。
よし、明日仕事頑張ろう。
そんで先生方とお昼を食べてお稽古しよう。
そのためにも早く寝よう。
おやすみなさい。

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一服をしてから掃除。平日だからね、先生も主婦業をしないといけない。
俺も指示を貰いつつお手伝い。
廊下を拭いたり、庭の雑草を取ったり。
3時になっておやつをいただいたらお買物。
トイレットペーパーなどかさばるものも買って、焼酎も買う。
司ちゃん用のを切らしてたらしい。
「ほんと助かるわぁ…律もほら、大学あるから遅いでしょ」
「お夕飯の買物には間に合いませんよね」
「あなた力持ちだし」
「ま、仕事が仕事ですからね」
帰宅して先生の決めたメニューに従って下拵え。
今日はメイン肉じゃが。
と言うことでジャガイモの皮を剥く。
…肉じゃがなのに豚肉なのはいまだに違和感があるが仕方ない。
後は色々副菜を用意してお夕飯をいただいた。
食後お茶をいただいたら日のあるうちに帰宅の途へ。
ま、明日も会えるから。
しかしお稽古、明日からは真の行か。大変そうだなぁ。
頑張るしかないな。
帰宅して、布団に入って寝る。
朝、起床して出勤し仕事をして帰宅。
すぐに先生のお宅へお稽古に。
「いらっしゃい。今日からあなた真の行よ」
「はい、お願いします。他の方はどうなさいます?」
「平点前にしようと思ってるの。今月で炉も終りだもの」
「じゃ用意してきます」
教えてもらったように真の台子を組み立てて端に置いて、あとは普段の用意を。
生徒さんが来られてお稽古スタート。
平点前のお稽古に皆さん慌てておられる。
意外と普段やらない上に少し上の点前をすると混ざるからわからなくも無い。
先生はそれでも優しく指摘されたりしていて、焦れた風を見せない。
人に教えるにはこうでなきゃいけないのか…俺できるかなぁ。
今日は俺がいてもいなくても大して意味はないな。
ゆったりとお稽古時間が過ぎて、ずっと次客。
皆さんが帰られるころ、着替えて口を清めるよう言われた。
昨日教えていただいた真の行のお稽古だ。
最初だからと先生もやさしく次はこう、それをこうしてと教えてくださる。
2回やってみて覚えられそうにない、と言えば半年はかかるわね、と仰った。
半年で覚えられるかなぁ。
「月曜日もいらっしゃいよ、見てあげるわよ」
「うーん来たいんですが流石に時間が…」
「そうよねえ…遠いものね」
「こういうときは普通の仕事がうらやましいとは思いますけど。
 だけど普通の時間の仕事じゃ昼からここに、なんて真似できませんからねー」
片付けつつ、おしゃべりを楽しむ。
普通のサラリーマンならやっと仕事が終る時間だろう。残業なしで。
「時間の都合つくときにはいらっしゃい」
「はい」
「さ、もうそろそろお夕飯できたかしらね」
と台所へ。
今日はメインは炒め物。と、カツだ。
「あれ? 揚げ鍋ありましたっけ?」
「ああ、揚げ物は買ってくるんだよ。危ないからねぇ」
「確かに天麩羅火災多いですしね」
配膳して夕飯をいただいて、帰宅。
職場が先生のお宅に近ければなぁ、って無理だけど。
先生も職場が家だからこればかりはどうにもならない。
いつか定年退職したら先生の近くのあの家に住みたいな。
そう思って就寝。
翌朝出勤すると結構に忙しい。
桜終ったんじゃないのかよ。
ばたばたと仕事をして、少し終るのが遅くなった。
だけど本日はお稽古はないからいい。
帰宅後いい天気なので散歩することにした。
ゆったりと散歩を終え、掃除し洗濯物を取り入れる。
いい感じにパリッとした。
やっぱり乾燥機にかけるより日干しが良い。
面倒くさいから滅多にしないけれど。
お昼寝をして、夕飯。何食おうかなー…。
あ、春キャベツとじゃこと桜海老のパスタが食べたい。
どこで見たっけ。
思い出して調べる。夜もやってた。
よし行こう。
軽めの夕食を食べて帰宅。
もうちょっとにんにく利かせて家でつくってもいいな。
お稽古の前は絶対出来ないけれど。
先生から夕飯のメール。
じゃこと春キャベツの卵チャーハンだった。
俺の食ったものをメールするとすぐに返事が返ってきた。
何たる同調か。
明日は蛍烏賊を持っていこうかな。時期だから。
酢味噌だから味噌を買っていかねば。
とメールに買いたら酢もないから買ってきて欲しいそうだ。
千鳥酢にしようかな。
チロリアンではない。
いやチロリアン買って行ってもいいけどさ。
そろそろあくびも出てきて寝る時間だ。
おやすみなさいのメールをしてベッドにもぐった。
寝酒にウイスキーを煽っておやすみなさい。
翌朝、腹が減って目が覚めた。
苦笑して出勤、朝飯を食いつつ仕事をこなして仕事終了。
面白い土産とともに先生のお宅へ。
「こんにちは」
「あら、なぁに沢山」
「天ハマチと蛍烏賊、それとこれ!」
とロマネスコを見せたら先生が後ずさりした。
「なんなのこれ…」
「それと酢と味噌とおやつ。それはロマネスコといいまして。
 ブロッコリーとカリフラワーの合の子みたいなもんです。両方の食感と味ですよ」
「そ、そうなの?」
「使い方もブロッコリーと同じで湯がいてもいいですし炒めてもいいですし」
「……どうしようかしら」
「とりあえずお台所置いてきますね」
台所にアレやこれやを仕舞って手を洗って水屋の用意を整える。
お台子も出してと。
生徒さん達が来てお稽古開始。
土曜の生徒さんは若い方でも割りと気がゆっくりされてる方が多い。
それはまあ、明日が休みの日だからと言う気楽さからくるのかもしれないけれど。
点前中にお喋りする方がいらっしゃる。
まぁ所詮趣味だから仕方ないかな。
先生も優しくお相手されてることだし。
「優しい先生が教えてくれるお教室」が人気の秘訣かな。
にこにことみなさんを見送られて、さて俺のお稽古。
…既に厳しいじゃないか。
「一昨日言ったでしょ。考えて」
しばし悩んでこうか、とやってみると正解だった。
ほっとしつつ流れだけは教えていただけて進んで行く。
だが詰まっても中々教えてはいただけない。
上級に進んだ人は皆こうなのだろうか。
「お稽古に真剣さが足りないから忘れるのよ」
それはその通りです…。
とりあえず最後まで通したら、もう一度、と言われた。
茶碗を仕込みなおして建水を清めて再度点前に立つ。
「さっき言ったのができてないわよ」
ぴしゃり、と叱られた。
慌ててやり直す。
「落ち着いてもう一度やりなさい」
「はい」
きちり、きちりと真剣にお稽古をして、やっと水屋へ下がった。
「今日はこれくらいで」
と先生から声が掛かり、ほっとした。
やれやれ、と片付けに入る。
頭を撫でられた。突然。
「お稽古厳しくて驚いちゃったかしら」
「あ、はい」
「早く覚えて欲しいの。だから暫く厳しいと思うわよ。ついて来れる?」
「頑張ります」
「普段はそんなに畏まらなくていいわよ。これのお稽古のときだけ」
ほっとしてしまった。
普段のお稽古もこの調子だと流石にきつい。
台子を仕舞って釜なども片付けて着替えてお台所へ。
「ああ、終った? じゃお刺身してくれる?」
「はいはい」
「酢味噌もよろしく」
「はい」
はまちをさばいてお造りにして、わさびを練る。
八重子先生が微妙な顔で見ているのはロマネスコだな。湯がいたらしい。
酢味噌を作って味見をしてもらう。
「あら? あまりツンとしないのね」
「酢が違いますからね。もう少し甘いほうがお好きですか?」
「んー、こんなものだと思うわよ」
「じゃそろそろ孝弘さんたちお呼びしましょうか」
「そうしてくれる?」
はい、と答えて律君を呼びに行き、孝弘さんを離れから拾ってくる。
「うわ、なにこれ」
どん引きの律君に先生が苦笑する。
「山沢さんのお土産よ」
「なんでフラクタル? うーん…」
「…おいしいのかしらねえ」
「ま、食ってみて下さい」
八重子先生が好奇心に負け手を伸ばした。
結構新しいもの好きだよね。
俺は普通にマヨネーズでぱくつく。見た目が駄目なだけで美味しいから。
「なんだカリフラワーじゃないの」
「でしょう?」
律君が動揺のあまり蛍烏賊にマヨネーズつけた。
美味しいような気もしなくもない。
アタリメにマヨネーズつけるし。
一度食べたら別に変なものではないとわかったようで律君も食べだした。
孝弘さんは最初から何も気にしてない。
ハマチは今日は天然が安かったので、と言うと先生は嬉しそうだ。
俺の為にちゃんと肉のたたきを買ってきてくれてあって美味しくいただく。
満腹。ご馳走様。
ロマネスコも全部売り切れた。
よしよし。
洗い物を片付けて戻ると八重子先生はお風呂に。
律君は勉強かな。レポートだそうだ。
「ね、先生。あっちの家行きませんか」
「えっ…」
「だって多分今晩は律君夜更かしですよ」
「あ、そう、そ。そうよね。でもお母さんに言うの恥ずかしいわ…」
「風呂入ったら先行ってますか? 俺から言います」
「そうしてくれる?」
頬染めてて可愛い。
はい、とチロリアンを渡して二人で食べる。
「あら、おいしいわね」
「千鳥酢を見た瞬間にチロリアンが浮かんだものですから買ってきちゃいました」
「どうして?」
「チロリアンは千鳥屋」
「あら、やだ。ほんとね」
などとなごんでいると八重子先生が風呂から出てきた。
代わりに先生が風呂に立つ。
八重子先生にも差し上げてお願いした。
「あー…いいけどね。ちゃんと明日のうちに帰してやっとくれよ」
「いや築地のじゃなくてですね、近くの部屋のほうです」
「それならいいよ。じゃあんたも一緒に入ってきたらどうだい」
「来る前に入ってますからいいですよ」
「そうかい?」
お茶いれて、ゆったりとした時間。
暫く喋ってたら先生が風呂から上がってきたので支度してつれて出る。
冬に比べれば暖かいから湯冷めの心配がそんなにない。
先生はちょっと恥ずかしそうだ。
鍵を開けて暖房をつける。
火の気がないから中は冷え込んでいた。
ストーブの前で先生を膝に乗せて座り込み、キスした。
暫くキスしてると暑くなってきて、先生もそう思ったようで膝から降りた。
ベッドを見るとオレンジのシーツに変わっている。
「また変えたんですか?」
「だって寒色はやっぱり寒々しいもの。夏はいいけど」
「抱かれるときは暗くするからわからないでしょうに…それとも電気つけてしたい?」
「いやよ…」
「そういわれるとしたくなるな。脱いで」
「やだわ」
「そのまま抱かれたい?」
うっ、という顔をしてあきらめて帯を解いた。
貝ノ口に〆ていた半幅をほどいて、しゅるり、しゅっ、と紐を抜いていく。
鎖骨が見えて、そっと指でなぞるとびくっとして可愛い。
「ほら、手が止まってる」
「だって…」
「なに? 早くしないとそのまま抱いちゃうよ?」
「やだ…」
顎に手を当ててキス。
そのまま抱かれると思ったようで焦って脱ごうとしている。
くくっと笑ってしまった。
脱ぎ終えて、裸身をさらす。
恥ずかしげで美しい。
俺が触れる指、一手一手に反応が返る。
「ベッド…お願い…床じゃいや」
はいはい。
ベッドに手を引いて連れて行くと自分で布団めくって入った。
照明を半分くらいに暗くして俺も入る。
「あ、カーテン」
「開けたままでいい」
「でも…」
「月、綺麗ですよ。ほら」
「本当…あっ」
乳首を舐めつつ股間をまさぐる。
暫く弄ってると喘ぎ声が結構出ていて楽しい。
丁度月明かりと照明で表情もよく見える。
我を忘れて喘いで呻く姿も綺麗で、もっと腰が抜けるほどしたくなる。
何度か逝かせ、うつ伏せにして腰を持ち上げて舐める。
「こんな格好いや…」
なんていいつつも気持ち良さそうで。楽しい。
息が切れ始めたのを見て逝かせて一旦終了。
苦しそうで可哀想にも思うけど。
暫くなでていると息が整って落ち着き始めた。
ベッドの上に座り、膝の上に抱き上げ窓を向かせる。
「えっ…」
足を開かせて外を股間を見せ付ける格好でまさぐっていく。
「やだやだいやよ…お願い」
「だーめ」
ちゃんと感じてるしね。
きっちり逝かせてから布団の中に戻した。
少し涙目になっていて可愛くて目尻に舌を這わせる。
「いじめるなんてひどいわ」
「嬉しいの間違いでしょ? 気持ち良さそうでしたよ」
「…ばか」
可愛いなー可愛いよー。
キスをせがまれてたっぷりキスして。
背中をなでていると徐々に寝息に変わっていく。
お疲れ様でした。
寝てるところも可愛いんだよなー、とにんまりして眺める。
こんないい女を自分の恋人にしているなんて去年の俺には想像できなかっただろう。
そうなりたいとは思っていたけど。
たたまあ性癖からするともうちょっとM寄りだったら助かるが。
それはしょうがない。
普段の先生では考えられないようなことをさせてるだけで満足とすべきだ。
寝ている先生に軽くキスして、俺も寝ることにした。
お休みなさい。
翌朝目覚めると先生がシャワーを使っているようで湯音がする。
時計を見れば6時半。
意外と早く目覚めたらしい。
風呂場を覗くと身体を洗っているようだ。
昨日舐めまくったからな、うん。
洗顔して着替えていると風呂から出てきた。
まじまじと見ると恥ずかしがる。
「そんなに見ないで頂戴」
「いやキスマークとか残ってないかと」
「ないわよ」
そういって着替えだした。
「早くしなさい。戻るわよ。まだ律起きてないでしょ」
ああ、そういうことね。
「はいはい、昼寝したらいいですもんね」
「そういうこと」
着替えてベッドを直し、ストーブを消した。
「忘れ物、ないわね」
「はい」
「じゃ戻りましょ」
早朝の綺麗な空気に晒され静かに帰宅して、台所へ。
八重子先生が支度している。
「あらおはよう。早かったね」
「律君が起きない内に、と仰ったので」
先生が昨日着てた着物などを起きに行って戻ってきた。
俺は冷蔵庫から日本酒をちょっと取って先生に渡す。
「なぁに?」
「昨晩飲んで騒ぐかも、とあちらに行ったんですから。
 ちょっとくらい酒の匂いがありませんとね」
「あぁ、そういうこと。じゃ頂きます」
とクイッと飲んで杯を返して、それから食卓を整えに居間に行かれた。
なんだかんだ酒つよいよね。
お味噌汁の味見をさせてもらって今日は麩の味噌汁だ。
おいしい。
ごはんにお味噌汁。お漬物、焼き魚、納豆。
日本の朝飯だね。
おいしいなぁ、お味噌汁。
お漬物は昨日八重子先生がキャベツを塩漬けしてたもの。
「お母さんお酒臭い」
「あらそう? そんなに匂うかしら」
「レポートできたのかな、律君。遅くまで頑張ってたみたいだけど」
「ええ、なんとか目処がつきそうです」
「この後も書くのかな」
「うーん、今日中に書き上げたいんで」
「じゃ煩くしないよう気をつけるよ」
魚の半分を孝弘さんのお皿にこっそり移動させつつ食事。
ごはんがうまい。幸せだ。
食べ終わって洗い物を片付けて居間に戻れば早くも先生が眠そうだ。
「布団敷きますから部屋で寝てたらどうですか?」
「そういってるんだけどねぇ」
横に座ったら膝を枕にされてしまった。
「それじゃ山沢さんがお手洗いにいけなくなるだろ」
と言うのも聞こえてないらしく早くも寝息だ。
「いいですよ、寝入ったら座布団とチェンジしますから」
寝息が気持ち良さそうでいいなぁ。
八重子先生が溜息ついてお茶を入れている。
「はい、お茶」
「あ、有難うございます」
「昼から私ちょっとお茶仲間の家に行ってくるから。
 あんたらで適当にお昼作って食べなさい」
「はい。あ、ランチされるんですか」
「そうなんだよ、古い馴染みでね。たまにはお昼でも一緒にってね」
「そりゃいいですねぇ」
「あんた、昔の友達と呑みに行ったりするの?」
「ここ半年はないですが前はたまに休みに戻ってましたから。
 居酒屋で出くわしたりしてましたね。そのあと飲みに行ったり」
「帰らなくてもいいのかい?」
「たまには空気入れ替えては貰ってますから、家は」
このまま10年とかだと引き上げてきてもいいな。
「今は…この生活が楽しいですね」
「そう。ならいいんだけど」
テレビを見て八重子先生とお喋りしてゆったりとした日曜の朝。
10時半ごろそろそろ用意を、と八重子先生は部屋に着替えに行った。
先生はまだすやすやとおやすみだ。
髪が唇にかかっているのをちょいと除ける。
ふと人の気配に後ろを見たら晶ちゃんがいた。
「こんにちは、晶さん」
「あ、こんにちは。え、と律は…」
「部屋でレポート書いてるようだよ」
そうですかとそそくさと行ってしまった。
ぼんやりと先生のお顔を見ていると…耳掻きないかな。
朝あわてて出てきたからチェック忘れたんだろう。
きょろっとしたらピンセットを見つけた。
そぅっと掴んで取る。
見えてるところにはもうないね。
ルーテェ型のピンセットなら奥のほうまでやれるが。
ピンセットを片付け、紙に包んで懐へ。後で捨てよう。
「さて、行ってくるよ」
「いま晶さんいらっしゃいましたよ」
「晶が? ん、じゃ悪いけどお昼あの子の分も頼むよ」
「はい。行ってらっしゃい。お気をつけて」
お早うお帰り、とは流石にこちらの人には通じないのは慣れている。
八重子先生が外出した気配…車、ではないな、良かった。
やはり車を使われるのは不安だからね。
小一時間ほどそのまま膝に乗せて寝かしていたが流石に起きてきた。
「ん…何時?」
「そろそろ11時半ですかね」
「あぁ…お昼の用意しないと…」
「何食べたいですか、俺作りますよ」
気だるげな先生もいいなぁ、うん。
「ピラフ食べたいわ」
「具は何がいいですか」
「カレーピラフ食べたい…」
「あ、やっぱり。においに釣られましたね」
ご近所がカレーを仕込んでいるようでカレーの匂いがさっきからしている。
「カレー粉あるから。よろしくね」
「はいはい、じゃ付け合せはサラダとスープかな」
頭を軽くなでて台所へ。
ピラフと言うかチャーハンと言うかどっちでもいいんだけどカレー粉を捜索しよう。
見つからん。もしかしてルーか。ルーはあるな。
細かく具材を刻んで炒める。
同じく微塵にしたルーを入れて香ばしくなってきたらご飯投入。
炒める。やっぱりガスは良いなぁ。
というかこういう大きいフライパンをちゃんと手入れしてあるのが不思議だ。
八重子先生が振ってたのか? この重いフライパンを。
まずは4人前、横でコンソメでスープを。
冷蔵庫に4半玉残ってたキャベツを具にした。
春キャベツは美味しいし、色が綺麗だ。
芯に近い方は刻んでサラダに。
人参とピーマンも。
「何かお手伝いすることあります?」
晶ちゃんが台所に来た。
「あ、じゃあピラフお皿に取り分けてもらえるかな。孝弘さんの分作るから」
「おじさんさっきお昼要らないってどこか行かれましたよ」
えー…。みじん切りした具をどうしよう。
卵あったっけ?
3つ。オムレツ作ろう。うん。
鮭フレークもあったはず、冷凍庫を探して発見。
炒めて混ぜてオムレツにしてしまった。
サラダの1人前残ってるのは俺が食うか…。
とりあえず配膳するために居間に行くとまた寝息立ててる。
「先生、カレーピラフできましたよ。起きてください」
「んー…」
律君が部屋から出てきた。
「あれ、お母さんまた寝てるの?」
「昨日遅くまで飲ませてたから眠いんだよ」
ピラフもスープも配膳して整ったころやっと目が覚めたようだ。
「あぁよく寝た。あら晶ちゃん。いつきたの?」
「おばあちゃんが出て行く前だから10時半ごろじゃない?」
「あら、そうなの。いらっしゃい」
「あはは、お邪魔してます」
「律、お父さんは?」
「お昼要らないってどっかいった」
「ということでオムレツに化けました。サラダ食っちゃっていいですか?」
「それは食べなさい」
「あ、結構美味しい。ドライカレー?」
「うーん、どうなんだろ。チャーハンとピラフの違いがよくわからないから」
そんな会話をしつつ食べ終わって洗い物に立つ。
台所から戻ればまだ先生はあくびをしてる。
「お母さん、布団で寝なよ」
「本格的に寝ちゃうもの、いいわよ」
「おこたじゃ風邪引きますよ」
「あなた眠くないの?」
「私こそ今寝たら夜中に起きてそのまま出勤ですよ…」
「いいじゃない、そうしなさいよ」
ちょっと迷ったがそういうのも一度くらいはいいか。
「じゃ布団敷きますから。律君、夕方起こしてくれるかな」
「あ、はい」
「晶ちゃん、悪いけどおばさんちょっと寝ちゃうから」
「おやすみなさい」
微妙な顔してるなぁ…。
だけどこうでもしなきゃ布団で寝てくれそうにない。
布団を敷いて着替えて、昼の暖かい日差しの中先生を懐に昼寝。
うん、これも中々にいいな。
気持ち良さそうな寝息。
先生の甘い匂い。カレー臭…は邪魔だけれど。
あ、ダメだ、俺も寝ちゃうなこれは。
ふっと意識が落ちて次に気づけば夜で。先生は懐にいない。
居間に出て行けば先生方がお茶を飲んでた。
「あぁ起きたの? お腹すいてないかい?」
「すいません、夕飯作るつもりだったんですけど」
「いいわよ、お昼作ってもらったもの」
「よく寝てたねぇ。律が呼んでも起きなかったって言ってたよ」
「晶さんは」
「お夕飯食べて帰ったわよ。はい、こんなものしかないけど」
「あ、いただきます」
軽く食事をいただいて食器を洗いに立ち、片付けて戻る。
「ねぇ、もう帰るの? 夜中?」
「どちらでも」
「明日きてくれる?」
ふっと笑ってしまった。なんか可愛い。
「これそうなら」
「来てね」
ふふっと先生も笑って。
「しごいてあげる」
うっ…。
「…来れないかも」
くすくすと先生が笑う。
遊ばれてるなぁ。
八重子先生は微笑んでこちらを見守っている。
先生に頭を撫でられた。
「月曜、来るならあなたのお稽古の時間だけでもいいわ。水屋しなくていいから」
「わかりました」
キスしたいな。無理だけど。
だから、帰ることにした。
「じゃそろそろ帰ります」
「どうして?」
八重子先生がいるのに言える訳がない。
苦笑しつつ玄関まで送っていただく。
八重子先生はついてこない。
「このままいたらあなたを抱きたくなるから」
耳元に囁いて掠めるようなキスをした。
ぽっと頬染めて可愛らしい。
「じゃ、また来ます」
「待ってるわ…」
別れて車を運転して帰宅。
結構しっかり寝たから食後でもそう眠気は来ない。
急ぐこともなし、ゆっくりと注意して運転して帰宅する。
さてと。
束の間だけれど寝るとしよう。
おやすみなさい。
翌日は月曜とはいえど暇で。
これはお稽古行ってもよさそうな気がする。
やはり早い目に仕事が終わり帰宅できた。
風呂に入って着替え、移動する。
「こんにちは」
勝手知ったる、で部屋に鞄を置き支度して茶室へ行く。
「あらいらっしゃい。とりあえずお客さましてて頂戴」
4客で真の行を見せていただく。
優しく八重子先生がお稽古されていてうらやましいの半分。
「じゃ山沢さん。支度して。次あんただよ」
「あっはい」
水屋で息を整えて返ってきた道具を整え、さあ行くぞ。
何度も詰る毎に叱責を受けつつ厳しいお稽古を先生から受ける。
「次の方まだいらっしゃってないから…もう一度やりなさい」
「はい」
水屋に戻ると姉弟子さん方に心配された。
絹先生のあんなに厳しいのは初めて見たとか。
だろうなぁ。
でも何かお考えのあってのことだろうから、と再度点前へ立つ。
やはり何度か叱られて終了。
水屋へ戻って次の方のために調えて客の席に戻る。
正客に座らされ拝見の稽古。
間違って叱られた。
他の生徒さんがそわそわしてる。
点前の方が水屋に戻られたのでこの辺で失礼します、と挨拶した。
「はい、また明日ね」
茶室から出て部屋に戻り鞄に道具をしまい、帰宅した。
夕方前に帰宅するのは久しぶりだ。
部屋着に着替えて途中で購入した弁当を食べる。
おいしくないなぁ。
少し気落ちしたまま食べ終わり、寝る用意をした。
ベッドに入って暫くすると先生からメールだ。
美味しそうな夕飯。
食べ物もメールで転送できたらいいのに。
いやこの場合ほしいのはどこでもドアだな。
返事を半分ほど書いているうちに寝てしまったようだ。
夜中だが続きを打って送った。
きっと朝に見るだろう。
もう少し寝て出勤。
…暇だ。
火曜日は仕方ないなぁ。
仕事を終えて帰宅。シャワーを浴び着替えて先生のお宅へ。
少し早いから寄り道して羊羹買って行こうかな。
ああ暖かいなぁ乗り過ごしそうだ。
ゆったりした気分で先生のお宅に着いた。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
「これお土産です、羊羹」
「あらありがと。後でいただくわね」
「いい匂いですね、何食べてるんですか?」
「焼きそばよ~」
「お稽古前にしっかり歯を磨かないといけませんね。青海苔」
「そうなのよねぇ、お好み焼きも焼きそばもついちゃうのよね」
軽く歯磨きするだけじゃたまに残ってるんだよな。
ま、とりあえず水屋の準備をしてこようか。
今日は天気も上々で暖かくゆったりと楽しげに皆さんお稽古されている。
ほほえましい。
俺も自分の稽古がなければそういう気分だ。
皆さん帰られたので手・口を清めて俺のお稽古。
先生が怖い…。厳しいし。
涙目になる程度にきつくお稽古されて八重子先生が見かねてストップかけてくれた。
先日いじめたから仕返しかな…。
「半年で仕上げたいのよ? 今厳しくしないとだめよ」
「そんなこと言ったってあんまりにもかわいそうだろ。手加減してやんなさいよ」
「仕方ないわねぇ…その代わり明日もお稽古しますからね!」
「うぅ…はい」
まったりした春の日差しの中でゆったり二人で、とか思ってたのになぁ。
台子などを片付けて、水屋をしまう。
八重子先生が入ってくれた。
頭をなでられて、悪気はないんだよとなぐさめてくれた。
悪気があるんなら夜に声ださせてしまいそうだ。
夕飯をいただく。
既にお稽古モードから切り替えできている先生が優しい。
ほっとして、ご飯の後の食器を洗う。
居間で先生と八重子先生が何か話しているのがかすかに聞こえる。
片付け終わって戻る。
「ね、山沢さん。明日もお稽古するけど…今日ほどは厳しくしないから」
「お稽古するの嫌になるだろ、流石にあれじゃ」
「えぇと、あー…はい」
昨日とかその前くらいのなら耐えれる、かな。
その後は普通に会話して、今日は早めに寝ようということになった。
先生と布団に入る。
するりと俺の懐に先生がきたが…なんとなく気が乗らない。
先生からキスされて、胸に手を持っていかれた。
「どうしたの?」
なんとなく先生の乳首を弄って立たせてみる。
…気が乗らない。
先生の寝巻をひんむいて伏せさせた。
「え、ちょっと…」
マッサージに変更しよう。
黙々と先生の背中を揉み解す。
結構凝ってるなぁ…。
少し声が出てるが構わずに揉んでいると部屋の外に人の気配。
…律君かな。
背中から尻へと揉み進めて太股はリンパを流すように。
足首まで終えて先生に仰向けになるように言う。
少し恥ずかしそうに寝返りを打ったところで部屋の外の人影に気づいたようだ。
焦った顔でこれまでに変な事言ってないか考え出してる先生を楽しむ。
さっと立ち、障子を開けた。
「律君、どうしたのかな? 眠れない? 寝かしつけてあげようか?」
「い、いや結構です。って何してたんですか?」
「マッサージ。結構肩こり酷いね。君は…凝ってなさそうだけど」
「あぁ気持ちよかった。律、あんたもしてもらう?」
あ、先生が復活した。
「いいよ凝ってないし!」
反応がうぶで可愛いね。
「あらそう?」
「じゃ続きしましょうかね。おやすみ、律君」
にっこり笑って追い払って横に戻る。
先生と顔見合わせて笑った。
「あぁ吃驚したわぁ…いつからかしら」
「腰の辺りかな。くすぐったがってた頃」
そのまま胸に手を這わせる。
「こうしてる時じゃなくてよかったですね」
「ばか…」
「もう少し、マッサージしましょうね」
愛撫込みのマッサージをして行く。
足の指の先までして、あとは中のマッサージ。
つぷり、と中指を入れてゆっくりほぐして行く。
気持ちよさげだ。
先生を楽しませて俺も楽しんで夜が更けた。
翌朝食事を取り、律君を送り出してからのことだ。
昨日は危ないところだったのよ、と八重子先生に話を先生が振った。
「やっぱり家でするのはよした方がいいんでしょうけど、その、つい」
あんまり八重子先生にこういうこと言わないでほしいなぁ…。
「あんたら夜はあっちの家行ったらいいじゃないか」
「毎回ってわけには…どうかと思いますし…」
それに歯止めが利かなくなるから壊しちゃいそうで。
「ま、その辺は適当にしなさいよ」
「はあ…」
「さてと、そろそろお稽古の準備するよ」
炭の用意や釜のかけ方なども一緒に教えていただきながらの準備。
これもいい勉強だ。
八重子先生は俺のギリギリを見ているようで、嫌にならないところまで詰めて下さる。
先生は多少俺に対する甘えも有るとかでギリギリアウトまで責めてこられる。
俺がMならば先生のやり方でも嬉しいんだろうけれど。
一旦お昼ご飯の休憩を挟み、午後もお稽古。
おおよその流れはつかめそうだ。
3時半過ぎ、大学から律君が帰ってきた。早いな。
「じゃそろそろ終ろうかね」
と八重子先生が仰って片付けへ。
「あんたも羊羹食べる? 山沢さんにいただいたんだけど」
「うん、あ、お父さんの分もある?」
「あるわよー」
律君と先生の会話がほほえましい。
俺も心を切り替えないといけないなぁ。
すっかり落ち込んでいるから。
ん?甘い匂い。
水屋を片付け終えて居間へ行くと台所から先生に呼び止められた。
「これ、あなたの分」
ホットケーキだ。なんでだ?
首を捻ってると頭を撫でられた。
「羊羹食べないんでしょ? 甘いものこれしかないのよね、今」
「食べた後のあなたの口は甘いんじゃないですかね」
ついニヤッと笑って言ってしまったらつねられた。
「さっきまで涙目になってたくせに…そういうこと言うのね。
 明日もっと厳しくしちゃおうかしら」
「勘弁してくださいよ」
ホットケーキと切り分けられた羊羹を持って居間に行く。
八重子先生がお茶を入れてくれていて、俺はぬるいお茶にありつけた。
メープルシロップは切らしていて蜂蜜とバターでいただく。
コーヒーや紅茶ではなく緑茶なのが難だがおいしい。
「ん? この渋味は?」
「あぁ蜂蜜、こしあぶらなのよ」
「それでですか。道理で」
あ、孝弘さんに狙われてる。
それに気づいた先生が笑って更にもう2枚焼きに立った。
が、焼いてる間に1枚は孝弘さんのお腹に納まってしまった。
「あらあら、お父さん、山沢さんの食べちゃったんですか?」
じゃあ、と一枚ずつ配分してくださった。
んーうまい。
孝弘さんもおいしそうに食べていて、それも見ている先生も幸せそう。
律君だけが微妙な顔をしている。
昨日のマッサージ、と言うのが納得いかないのかなあ。
虫やしないに美味しく食べ終わって少しゆったり。
「そろそろお買物行きましょ」
「あ、はい」
「律ー、あんた何か食べたいものある?」
「…冷しゃぶかな。この間テレビでしてた奴」
「春キャベツのかしら、わかったわ」
キャベツうまいよな、この時期。
お買い物についていって先生の荷物もち。
豚のスライスとキャベツを2玉と卵を買った。
それ以外に人参葉、かぶ、ウインナー。
何作るんだろう。
台所に入り指示通り下拵え。
人参葉はおひたしに。
かぶとウインナーでスープ。
それから湯通ししたキャベツのざく切りを下にして上に冷しゃぶを乗せ、
更に温泉卵のようにしたものを乗せてある。
うーん、うまそう。
そしてやっぱりセンスがいい。
盛り付けで結構変わるよな。
お夕飯をしっかりいただいて明日の仕事、頑張って来てね、と見送られて帰る。
帰宅したらすぐに寝て明日に備えた。
木曜日。やはり仕事は暇だ。
桜も終った。
暇していると社長からお話が。
来月営業強化で木曜の昼2時まで営業かけろと。
こりゃ水屋が出来ないな。先生に言わなきゃいかん。
変わりにやっぱり月曜行こうかな。
でもそうすると木金と逢えなくなる。悩ましい。
仕事が終って帰宅し、身を清めてお稽古へ。
いつものように生徒さん達のお稽古を見守り、帰られてからが俺のお稽古。
涙目直前程度が先生もわかってきたようだ。
少しの手加減を加えてもらえてる。
お稽古が終わり、夕飯をいただいた。
その後先生方にご相談。
来月までに対応策を考えてくださるそうだ。
とりあえず今日のところは帰宅して、土日かな。
本日は雨。
花粉があまり飛んでないから会社の人もくしゃみをしていない。
仕事もやっぱり雨だから暇で。
バカ話をしつつ仕事の時間は過ぎて行く。
今日の昼は何を食べようかなぁ。
チャーハンと餃子でいいや。
帰り道で食べて帰宅。
少し昼寝をしよう、とベッドにもぐりこんでいると先生からメール。
お昼ごはんの写真。
すっかり使いこなしているようだ。
食後なのに美味しそうに感じる。
食べたい、とメールして昼寝。
ふと物音で目が覚めた。
ベッドから這い出してみると居間で先生が新聞読んでた。
「あら起きたの?」
「なんで?」
「食べたいってメールしたじゃない。持ってきたわよ。今食べるわよね」
マジか。
ちょっと待ってて、と鍋を温めて食卓に並べてくれた。
ちょうどお八つ時でおいしくいただいて。
汁まで飲んだら笑われた。
「他所ではしませんよ? でもあなたの味付け美味しいから」
「あらあら」
にこにこと笑っている先生は綺麗で可愛い。
「それよりこれ食べさせるためだけにうちに来たんですか?」
「そうよ?」
「俺はあなたも食べたいな」
「えっ…そんなつもりで来てないわよ、ちょっとストップ、だめ!」
抱きしめてキスしたら抵抗された。どうしたんだろう。
「お風呂入ってきてないのよ。昨日も入れてないし」
ぶふっと笑ってしまった。
「はいはい、俺がいいって言ってもイヤなんですね? 風呂入ってらっしゃいよ」
くっくっと笑ってると怒ったようなそぶりでお風呂に行った。
可愛いなー。
台所に行ってタッパーと鍋とお皿を洗ってしばし待つと先生が出てきた。
抱かれるために風呂に入る、と言うのはやっぱり恥ずかしいようだ。
ソファからおいでおいでと手招きして膝の上に横座りに乗せた。
浴衣の合わせから太腿がのぞいて、慌てて直している。
可愛いし色っぽいしで。
「向かい合わせのほうがいいのかな…足、開いて?」
頬染めてそのまま固まっている先生が本当に可愛くて手荒くしたくなって困る。
「別にひどいことはしないよ? キスしにくいでしょう? この格好」
「あ、うん、そうね」
両腿をきっちりくっつけたまま俺の膝に座りなおした。
「がばっと開けて密着したらいいのに」
「恥ずかしいわよ」
「今さらでしょ? ほら」
手で割り開いて引き寄せた。
力をこめて抵抗していたが流石に俺の力にはかなわないようだ。
「もうっ、ばか、こんな格好させないで」
「もっとえっちな格好がいい? そうだな、ペニバン使って立ったままするとか」
赤くなったり青くなったり。
「ってのは冗談ですよ」
ぺちっと額を叩かれた。
キスして暫くゆっくりと腕を擦る。
徐々に肩の力が抜けていって俺にもたれかかってきた。
「ね、するならベッドでお願い…」
「ここじゃいや?」
「うん…」
言うことを聞く振りしてソファの上で組み敷く。
実際抱くとなると落ちるから戯れだ。
抵抗。
「可愛いなぁ」
笑って引き起こしてあげてベッドへ連れて行き、抱いた。
終った後少し愚痴を言われたが。
「で、晩飯どこか行きますか?」
「そうねぇ…お鮨食べたいわ」
「ああ、いいですね、久しぶりに。待っててください、席あいてるか聞きます」
「着替えてくるわ」
問い合わせればあいてるとのこと、カウンターをお願いして俺も着替え。
先生は少しけだるげで綺麗で。
ん、もう一度したくなる。
キスだけにしてお鮨屋さんへ行くことにした。
戸締り戸締り。
先生は家から出たらしゃっきりして、崩れた雰囲気など毛ほども出さない。
それに釣られて俺も背筋が伸びる。
でも、俺の手にそっと手を重ねてくるところは可愛い。
お鮨屋さんはおまかせで頼み、先生のおいしそうに食べてるのを楽しむ。
俺のはちゃんと白身の魚や胡瓜やおこうこや梅や卵など食えるものだけが出てくる。
先生のはイクラや中トロも出てきて美味いところを少しずつ沢山の種類出してくれた。
「幸せ~♪」
やっぱり年々量が食べられなくなってる、と言う。
まだそんな年じゃないでしょ、と答えた。
「あなたもこの年になったらわかる…その食欲じゃわからないかもしれないわねぇ」
「ははは、これでも懐石なら満腹になってますよ?」
一気食いはどうしても量食べるけど。
お茶をいただいてお会計。
先生は先に店から出て待っている。
「ご馳走様、美味しかったわぁ」
つれて歩く途中も先生はニコニコしている。
さて、車に乗せておうちまで行こうかな。
「電車で一人で帰るわよ」
「もうちょっと一緒に居たいんですけど」
「明日も来るでしょ?」
「行きますけど…べたべたできないし」
「ばかねぇ…あちらの部屋に行けばできるじゃないの」
「いいんですかね?」
「いいわよ、お母さんもそうしなさいって言ってたわよ~。
 律に気づかれるよりいいじゃないって」
「八重子先生、何でそうまでしてくださるのか…」
「聞いてみたら?」
「そうします」
駅について、お別れだ。
ちょっと切ない。
「じゃまた明日いらっしゃい」
「はい、参ります」
手を振ってくださって振り返す。
見えなくなるまで見送って、帰宅した。
着替えてベッドにもぐりこんですぐに寝る。
翌朝。
それなりに荷物も動いて疲れて帰宅。
ほんの少し一服してから移動する。
ちょっと電車の中で寝て、先生のお宅へ。
「こんにちはー」
「はい、いらっしゃい」
「これお土産。晩飯にどうぞ」
「あらっ なあに?」
「鯛の子の炊いたんと飯蛸の炊いたんです」
「あらーいいわねぇ、おいしそう」
「冷蔵庫入れときますから」
「うん、お願いね」
タッパーを冷蔵庫に入れて水屋の支度。
「あ、山沢さーん、今日は小習もちょっとするから。荘物の用意しといてくれる?」
「はい」
今日やったものを風炉一回目にもする、という中々生徒さんには大変な。
用意を済ませて茶室で待つ。
……先生も来たけど生徒さんが来ないぞ。
電話が鳴る。
八重子先生が受けているようだ。
「絹ー? 生徒さん電車乗り過ごしちゃって遅れるんだって」
「あらそうなんですか。どれくらい?」
「30分か1時間ってさ。山沢さんのお稽古しちゃったらどうだい」
「そうねえ、そうしましょうか。山沢さん、入って」
「はい」
真の行のお稽古を一度終って落ち込んでいると次の生徒さん。
「あら? 山沢さん、どうしたの? 何か落ち込んでるみたいだけど」
「いやぁ覚えが悪くて叱られてるだけです」
「やーねーそんなに簡単に覚えられたらお稽古する必要ないじゃないの~」
ばっしばっし背中を叩かれる。
おばちゃんは強い。
ほほほ、と先生も笑っているが、先生が怖いのはこの生徒さんは知らないからなぁ。
その後は遅れた生徒さんが来たりおやすみの生徒さんもいたり。
うまく時間を都合してお稽古が進む。
みなさん荘り物は苦手かな。
先生はうまく生徒さんを誘導したり世間話にも少しは付き合ったり。
上手だよなぁ人あしらい。
皆さん帰られて、更にもう一度俺へのお稽古。
先ほどまでの和やかムード一転、だ。
怖い。
やっぱり厳しい。
「今日はこれまで。片付けておいてね」
「…はい」
台子や釜、水屋をしまい、火の気を確認して戻る。
ん、いい匂い。なんだろう。
八重子先生がお大根を炊いたらしい。
今日は煮炊物だな。
俺の分に、とハムステーキ。
ソースは八重子先生が作っていてレモンバターにパセリかと思ったら大葉だった。
レモンが強めで美味しい。
苦味が出てないのは八重子先生の握力のなさだろう。
しかし律君。
大学生の男の子が土曜の夜に家で晩飯を食うんじゃない。
合コンとかデートとか友達と遊びに行くとかないのか。
先生たちは律君の一人暮らしは否定的だ。
男の子が外泊するのに家に電話している姿と言うのもなんだかなぁ、と思うんだが。
どうしても食事が心配、と仰る。
確かに毎日作る習慣がないから大変だろうが…開さんだってしてたし。
なんとかなんじゃないか?
「山沢さんの食事見てるとねぇ…」
「それを言われると。
 だけど家に女の子を連れ込んだりとか親のいる家にはしにくいでしょう?」
「連れ込むなんてそんなの許しません!」
「へ?」
「責任取れないでしょ!」
「あ、そっち? 責任って結婚すればいいと思いますけど」
「それにそんな…男の家に上がりこんで泊まるような子いやだわ」
「あ、たしかにそれはちょっと。結婚するつもりならわかりますが」
「でしょ?」
「できたらお茶お花、出来る方がお嫁さんだといいですね」
「そうねぇ。お教室続けやすくなるものね」
「でもお嫁さんに俺にしてるようなお稽古はやめたほうがいいですよ」
「どうして?」
「嫁いびりと間違えられますから」
「あらあら」
先生がぷっと笑って思わず俺も笑う。八重子先生も笑ってる。
「晶さんならそんなこと考えずに済みますけどね。
 おばあちゃんはおばあちゃんのままですし。おばさんがお義母さんになるだけで」
「あら。晶ちゃん?」
「晶さんにいい縁が来なければ考えてもいいんじゃないですか?」
「…そうだねえ」
などとしゃべっているうちに夜が更けて冷えてきた。
八重子先生が冷えてきたから寝る、と言い出し、じゃ私たちもと思ったが…。
「あんたらはあっちの家行っといで。律まだ起きてるから。お酒持っていきなさい」
「はい、そうさせていただきます」
「お母さん、もう…」
先生が恥ずかしがってて可愛い。
八重子先生が部屋に行ったので戸締りや火の元を確かめてお酒を持って外へ。
玄関の鍵を締めて先生と二人歩く。
先生の羽織っているショールはすべすべと月光をはじく。
「シルク?」
「ん? これ? そうよ」
「綺麗だな」
「これお気に入りなの」
「じゃなくて、あなたが」
頬を染めて黙ってしまった。
手を引いて部屋に入る。
「何黙ってるんですか? 怒った?」
「そうじゃないわ」
「じゃあどうしたんです?」
「なんでもないわよ、飲みましょ」
グラスを出してきて俺のに注いでくれた。
俺も先生のグラスに注ぐ。
くいっとグラスを開けてもう一杯注ぎ、半分ほど呷って先生にキス。
口移しに飲ませた。
そのままキスして胸をまさぐる。
息が荒くなって少し首筋もほの赤い。
「もうちょっと、飲んでから…ね、そうしましょ」
お願いする先生が可愛くてつい聞いてしまう。
最近甘いなー。
恋人だからしょうがない。
いける口だからとおいしそうに飲んでいる。
美味しいから沢山いただくのは好きだけど沢山飲んで酔うと正体をなくすから。
だから飲みたくないらしい。
「たしかにいつだったか間違って飲んで律君の前で俺にキスしちゃってましたね」
「それ、困るでしょ。だからあまり飲まないのよ」
おいしー♪とご機嫌さんだ。
つまみはさっきの夕飯の残った飯蛸や鯛の子。
「律君公認になれたらいいんですけどね、男の子は母親に幻想持つから無理かな」
「律には言わないで…」
「言いませんよ。ばれたときの話」
頭をなでる。
「あなたを律君の前で抱いたりとか…」
びくっとしてる。
「しませんから大丈夫」
「ばか、驚いちゃったわよ」
「そういうとこ可愛いなあって思ってるわけですが」
「もうっ」
ちょっと怒りつつお酒を飲んでる。
何杯か飲んでるうちに先生がうとうとしてきた。
ヤらせず寝る気か。
いいけどさ、たまには。
すっかり寝息に変わった。
脱がせてベッドに放り込み、食べたものを片付けた。
今度からあまり飲ませないようにしないとなぁ。
自分も着替えて先生の横にもぐりこむ。
先生のいい匂い。
抱き込んでおやすみなさい。

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h24

翌朝、今日は一日雨かーとブルーになりつつ、出勤した。
さすが雨、客の買う気のなさよ。
やる気が出ないなぁと思いつつ仕事をこなす。
ちゃんとしないと土曜日させてくれなくなりそうだからな。
帰宅して先生のお宅へ。
「こんにちは、雨ですねえ」
「はい、いらっしゃい」
玄関先で雨コートを脱いで掛け、居間へ行く。
窓も湿気で曇っている。
ぽつぽつと生徒さんが稽古に来られるのをさばき、俺の稽古をつけていただく。
今日は俺の機嫌を察してくださったようで若干優しい。
終って片付けも済んで台所に行けば俺のためにとホウレン草の胡麻和え。
他の献立も見るに鉄分多目メニューと見た。
「先にこれ食べて炬燵に入ってなさい」
と渡されたのはチーズ。カルシウムね。
手伝いもせずおこたにはいるのは心苦しいが正直助かる。
足が暖まって少し痛みが緩くなる。
先生が配膳して下さって食事。
うーん。うまい。
ちゃんとしたご飯で、多分俺のために献立考えていただいて。
美味しくいただいた食後、ぼんやりしているとなでられた。
ん?と先生を見ると少し心配そうな顔をしている。
「一人で帰れる?」
「あぁ、ぼけてるだけですから。車じゃないから大丈夫ですよ」
「明日お仕事じゃなかったらいいのにねぇ」
「ま、しょうがないです。これで稼いでるんですから」
「雨降ってるけど本当に大丈夫? 律に送らせる?」
「律君に負担ですよ、いくらなんでも。無理だと思えばタクシー拾いますから大丈夫」
「そう? 無理しないでね」
ぼんやりと引き寄せてキスしたら抵抗された。
あ、八重子先生の前だった。
先生が耳まで赤い。可愛いなー。と笑って。
そろそろ帰りましょう、と立ち上がる。
見送っていただいてそれなりの雨の中帰宅する。
少し貧血気味の自覚はある。
帰ったらすぐに寝るとしよう。
途中、そろそろ危険か、と駅からタクシーに乗り帰宅した。
すぐに着替えてトイレに行き布団へ入った。
翌朝、何とか布団から抜け出し出勤。
仕事を頑張ってこなし、帰宅して直ぐ就寝するなど。
外の大荒れの天候にも気づかず。
夕方にはなんとなく体調も落ち着いて夕飯を食べに出た。
先生から電話。
明日のお稽古はお休み?
どうやらこの天気の加減で休みたい方と、花見をするため欠席の人が重なったそうだ。
「じゃ明日うちにきますか?」
考えさせて、と言うので明日の午前中までによろしく、と電話を切った。
思い切りが悪いなぁ。
少し不機嫌になり飯を食って帰って風呂に入る。
ざっとタオルで拭いて着替え、ベッドに転がって寝た。
ふと何かの気配がして目を覚ますと抱きしめられて驚く。
「来ちゃった」
あ、先生か。
「時間遅いから寝てて…」
「いま何時ですか?」
「多分11時半くらい」
むくり、と起きると先生が慌てて謝ってきた。
「いやトイレ行くだけですよ」
どうも急に来たことに怒ったのか、と思ったらしい。
トイレから戻って先生のいる布団へもぐる。
「…先生、冷えてる」
「ごめんね、外寒かったの」
「温めてあげようか。中から」
「え、あ…あなた明日朝早いんだからダメよ」
慌ててて可愛い。
くすくす笑ってるとからかってるの、とケンのある声で聞かれた。
「からかってなんかいないよ。どうする? どうしてほしい?」
「…一緒に寝てくれるだけでいいんだけど…だめかしら」
「いいですよ、今日はね」
懐に抱いて冷えてる先生の身体をなでながらいつしか二人眠りに引き込まれた。
朝、起きて先生を置いて出勤する。
出勤して直ぐだが早く帰りたい。
寒いし。
客足も早く引けて帳面とあわせ早々に帰宅。
「ただいま」
「早かったわねぇ、お帰りなさい。お風呂はいる?」
「あー、はい」
「良かった、いま沸かしたところだったの」
「先入っていいですよ」
「お洗濯もうちょっとあるのよ」
「ああ、それなら先に入らせていただきましょう」
風呂に入って湯に浸かる。
温まるなぁ。
のんびりと伸びて、風呂から上がる。
タオル片手に上がってくると叱られた。
「裸で上がってきちゃだめっていったじゃない。見られちゃうわよ」
「この家で? あなたしかいないのに」
「カーテンあいてるもの」
「いまさらですよ、窓開いてても気にしてないですよ夏は」
「気にして頂戴よ…見せたくないわ」
「そういうあなたが可愛いな。ほら、風呂入って。メシ食いに行きましょ」
「もうっ」
ぶつくさ言いながら先生がお風呂に入って俺は暫く涼む。
落ち着いて着替えたころ先生が出てきた。
ん、湯上り美人。
綺麗だよなぁ。
「メシよりあなたを食いたくなったな…」
「とか言ってお腹なってるじゃないの」
まぁ、ねえ。
「お昼ごはん、何食べたいです?」
「和食がいいわー」
「んじゃ懐石でどうですかね」
「ん、それでいいわ」
「1時間後?」
「30分。お腹すいてるんでしょ」
「じゃ席とります」
連絡して出かける用意をする。
先生の着物を着るのはいつもながらに手早い。そして綺麗だ。
化粧も髪も整えて丁度20分。
「さ、行きましょ」
「はい」
連れ立って食べに行く。
んー、先生と歩くと視線が。
やっぱり美人さんだからなぁ。
見せびらかすじゃないがいい女を連れて歩くのは気分がいいものだ。
店に入って一番いいのを頼んでゆっくりとお昼をいただいた。
先生もおいしそうに食べていて、見ているこっちまで嬉しくなる。
快く食べ終わって帰宅する。
「んー、寒かったわねー外」
「お湯落としてないならもう一度入りますか」
「そうしましょ」
そうぬるくなってはいないが温めなおし、脱いで二人ではいる。
浴槽が大きいのは別に要らないと思ってたけどこうなるとやっぱり良いものだ。
炭酸タブを投入してみた。
股間に泡が直撃して慌てるのが可愛くて抱きしめちゃったり、そのままキスしたり。
「ねぇ久さん…好きって言って」
「どうしたの? 珍しいな」
「たまには言って欲しいのよ」
「可愛いな、女の人ってそういいますよね」
「ねえ」
「好きだよ、愛してる。あなただけをね」
「本当?」
「本当。どうしたの? 今日は」
「だって私…あなたがしたいこと出来ないから…」
「してるじゃないか。こうやってあなたを抱いたり泣かせたり」
「雑誌に載ってるようなこととか…。我慢してるんでしょ」
「…何読んでるんだか」
「ベッドの下にあった雑誌…ああいうの、したいのよね?」
「されたいんですか?」
慌てて首を振る。
「俺ね、確かにしたいことは沢山ありますよ。
 でもね、あなたがこうやって俺を愛してくれてるのに…、
 あなたの意に沿わない事したくないって大抵は思ってるんですよね」
「でも」
「今のところは大丈夫、しなくても」
「いつかはするの?」
「どれのことをいってるんですかね」
どの雑誌を見てそういってるのかがわからん。
アナルフィストとかの特集の雑誌だったらそれはかなり先生には怖いと思う。
「ま、とりあえずそろそろ風呂から出ないとのぼせそうです」
「うん…」
風呂から出て、暑くて裸でいたら浴衣を羽織らせられた。
「ね、どの雑誌見たんです?」
肘を取ってベッドに連れて行き、座らせてどの本のどのページか言わせた。
凄く恥ずかしそうで可愛くていい。
こういうのもありだな。
指定された雑誌の、このページ、と言うのを見た。
…なんだこりゃ。
うーん。これを俺がやりたがってるように思ったのか?
「さすがにこれはやれないな…というか俺、どっちですか。食う方か食わせる方か」
「あ、よかった…」
「良かったじゃないよ…あぁ、気抜けした。衛生的にありえん」
「だってあなた、この間アレ終ってないのに舐めたじゃないの…」
「アレは別に雑菌とか問題ないでしょ。これに比べりゃまだ小便飲む方が雑菌少ない…。
 あぁ、そっちならあなたできるかな?」
「え、ちょっと、いやよ、そんなの…」
「ってかね、Mさんでもないのにこんな雑誌読まないで下さいよ」
「だってあなた、どういうことしたいのか興味があって」
「好奇心、猫を殺す。知らないほうがいいですよ、あなたは」
「知らないことされるのは怖いわ」
「知ってるほうが怖いことだってありますよ」
だからたまにビデオを見せたりするんだが。
「怖いのはいやだわ…」
「気持ちよくしてあげますよ」
そっとキスをして。
ベッドに押し倒した。
「明日…展覧会か花見か行きませんか…それとも寒いだろうからずっとこうしてますか」
「好きにして…」
「そんなこと言ったらずっと抱いてたくなる」
「じゃお花見行きたいわ」
「はいはい。お花見ね。そんなに俺にずっと抱かれてるのは辛い?」
「年考えて頂戴よ…」
「そういう意味か。抱かれるのいやなのかと」
「違うわ…怖いのはいやだけど。優しい久さんは好きよ」
「じゃ特別に優しくしてあげましょう」
ゆったりと優しく抱いて少し声が上がる程度に。
何度か逝かせると満足げな顔で寝息を立て始めた。
たまにはこういうのもいい。
俺も噛まれないし引っかかれないし。
しかしなぁ、怖いのがいやなのにうちに来るのはなんでだろう。
小一時間ほどして起きた時に聞いてみれば、やはり家だと気を使うのが大きいようだ。
「たとえば…家に誰もいなければ家でも良いのかな?」
「ええ? ん、でも何かいやなのよ」
「旅行とかなら良い?」
「そうね」
「じゃ今度また旅行しましょう。5月は無理だけど」
「あら、嬉しいわ。どこがいいかしら」
「ま、気になるようでしたら展覧会を絡めていただければ」
「温泉もいいわねぇ」
「温かくなってから温泉ですか?」
「湯冷めしないもの」
「…俺と一緒だとのぼせるんじゃないですかね」
「やだ、もう」
ちゅっと音を立ててキスして布団から出る。
「さて、夕飯どうしましょうかね」
「久さんが作る開化丼がいいわ」
「いいけどそんなのでいいんですか?」
「食べたくなったんだもの」
「じゃ、付け合せの希望は?」
「お味噌汁。海苔の」
「野菜がないですよー」
「別にいいわよ」
「じゃお買物行きますがあなたどうします?もうちょっと寝てる?」
「一緒に行くわ。待ってて」
はいはい。
その間に米を炊く仕込をして振り返ると着替え終わっていた。
俺が着替えてる間に髪を整え軽く化粧をして、さてと買物へ。
冷え込んでいるので先生が俺にくっついてきてて嬉しい。
食材を買い込み、おやつにとプリンを買った。
「あなたといると太るのよね…」
「へえ、そんなこと言うならカロリー消費させますよ」
「えっやだ、そんなつもりじゃ」
「二人で散歩とかね」
「もうっ」
「で、太ったってどの辺かなぁ、この辺?」
と着物の上から胸を揉んだら怒られた。
「ご飯、作るんでしょ」
「はいはいはい作ります」
出汁を作って肉と玉葱を煮て、卵とあわせてさっさと作る。
アオサで味噌汁をして。
パパッと作ったものだけど、先生がおいしそうに食べてくれた。
「汗かいた後って山沢さんの作るの、美味しいのよねえ」
「あー…塩分だ、そりゃ。味付けじゃなくて」
「そうかしら?」
お茶を先生がいてくれてまったりとした土曜の夜。
不意に先生が俺を見た。
「ね、しなくていいの?」
「あぁ、つい見とれてた。ドラマ見たいんじゃないんですか?」
「見たいけど…」
「見ながらでもいいんですか? 集中できないでしょ?」
「うん…」
「なら後で。いいからいいから」
ごろり、と先生の横に転がって先生の足に顔を寄せて寝る。
そのままうつらうつらとまどろんで。
次に起きたときは先生が俺の髪を撫でていた。
「起こしちゃった?」
寝返りを打って先生の腿の間に顔を埋める。
んー、いい匂い。
くすくす笑い声が聞こえて。
そっとお尻をなでまわしてると吐息になってきた。
「ベッド、行きましょうか」
「うん、そうしましょ」
テレビを消して戸締りをして。
電気を消してベッドに入る。
昼よりはしっかり抱いて、泣かせて。
手加減はしているけれど息が荒くなるほどに。
逝き過ぎると涙目になっていて可愛くて綺麗で。
耳元で好き、と言ってくれるのが嬉しい。
さて、明日はどこへ花見に出ようか。
先生の胸をなでつつ考えてたら先生が俺の乳首を噛んだ。
「な、んで噛むんですか。しかも突然…うわっ、だからしちゃだめだってばっ」
ちょ、突然すぎる。先生の指が俺の股間に来襲した。
「なんとなく?」
うふふ、と先生が笑った。
「なんとなくじゃないでしょう。そんなことするならもう一戦しちゃいますよ。
 優しくなんてしてあげませんよ」
「あら、それは困るわねえ」
俺ので汚れた指を舐め取ってやって、布団に押し込む。
油断も隙もない。
「大人しく寝ないとお尻舐めますよ」
「いやよ」
「あした花見行くんでしょ?ちゃんと寝て。拗ねないで下さいよ」
俺の乳を摘んだり引っ張ったりしてぶつくさ言ってる。
「乳首が伸びるからやめなさい。遊ばない」
「立ってきてるのに?」
「そりゃ弄れば立つもんです」
「気持ちよくならないの?」
「あなたほどにはね」
「ちょっとくらいは?」
「まぁ…ってか俺をまた抱きたい気分なのかな」
「そこまでじゃないけど」
「…触ってると落ち着く?」
ぱっと顔を輝かせた。
そっちか!
諦めてもうやりたい放題触らせるか。
多分途中で寝るパターンだ。
と思って触らせてると中を弄ってみたり色々しつつやっぱり寝た。
指入れたままで。
腹を枕に。
そっと腕を掴んで抜いて、頭を枕に乗せてちゃんと寝る体制に持って行ってあげて。
手を拭き取って布団の中に入れて。
さて、俺は。
トイレ行って一発抜いて寝るか。中途半端は流石につらい。
かといって先生にやられるのは嫌なんだが、と自分で逝って。
シャワーを浴びて布団にもぐった。
ん、先生のにおい。
温かさ、肌触り。
幸せな気分で寝た。
翌朝、先生にとっては少し寝過ごした時間に目が覚める。
既に朝日が差し込んでいた。
ぼんやりとしてる先生もいいなぁ。
だけどそろそろ布団から出て朝飯の支度をしなきゃな。
昨日の味噌汁があるから麩を足して。
鯛を焼いて食っちまおう。
ホウレン草のバター炒めでいいや。
ぼんやりと作って用意したら起きてきた先生にセンスがない、と言われてしまった。
なんで鯛を焼いたのにバターなの?と。
味・匂いの強いものと一緒に出したらダメだと叱られた。
「勿体無いじゃないの」
「まぁそうですけど」
ちょっとしょんぼりしてたらキスされた。
「いいわ、食べましょ」
ご飯をよそって渡す。
いただきます。
ホウレン草をメインに食べてたら苦笑されて。
「ちょっと待ってなさい」
そういって冷蔵庫から何か取り出して焼いてる音?
ん?この匂いは。
「そっちの鯛頂戴、私が食べるから」
ベーコンエッグが出てきて、菜の花の漬物が先生の手に。
俺洋食、先生和食になってしまった。
「このほうがいいでしょ?」
「はい」
乾通りの公開がニュースで取り扱われている。
「あら、ね、今日のお花見。あそこ行かない?」
「いいですね」
「あ、でも着物、そういう着物じゃないわ」
「俺の、どれでも着れるでしょ? 一つ紋位でいいんじゃないですか?」
「じゃそうしましょ」
「でも随分並ばないといけないと思いますが」
「…でももしかしたら今回限りかもしれないじゃない」
あ、たしかに。
ごちそうさまをして、洗い物をする。
「お風呂に入ってくるわ、あなたは?」
「俺は昨日のうちに入りましたよ」
「あら。いつの間に」
先生が脱衣所で脱いで、風呂に入る気配。
覗きたくなって突撃した。
「お背中流しましょう♪」
「あっ、もう。だめよ」
泡をたっぷり付けて先生の胸を弄って。
そぉっと股間に指を伸ばせばそれなりに濡れている。
きっちり逝かせてくたり、と俺にもたれかかる先生を洗ってあげた。
髪も俺の膝の上でゆっくり洗って。
気持ち良さそうにしてる。
かわいいな。
「ハイ、終りましたよ」
「ん、顔洗うわ」
泡たっぷり立てて洗ってる。
さすがに洗顔中は手を出せない。
鼻の中に泡が入ると辛いからなぁ。
洗い終えたので全身にシャワーをかけて。
ん、綺麗な身体だなぁ。
「どうしたの?」
「綺麗だな、と思って」
「あら。たるんできてるわよ、こことか」
「じゃ若いころはもっといい身体だったんだ。見たかったなぁ」
「そりゃ17,8のころとは違うわよ。あなたも若い子がいいの?」
「若い身体もいいけど…いまのあなたの身体が好きですよ」
キスして。
あ、だめだ、またしたくなる。
「お花見行くんでしょ」
ちょっと叱られて風呂から出て着替える。
髪を乾かした先生が念入りに化粧をして着替えている。
つい笑顔になってしまう。綺麗で。美人さん。
俺を上から下までじっくり見て、少し手直しされた。
タクシーで近くまで行き列に並ぶ。1時間半ほどかかるとか。
「凄い人ですねぇ」
「そうね、やっぱり日曜だもの」
ゆっくり流れる人の波にそって進むとボディチェック。
時間かかってるのはこれか。
花を楽しみ、先生との会話を楽しむ。
「こういうものいいわねぇ」
「そうですねぇ。職場の花見はカラオケと仮装とドンチャン騒ぎなので」
「あら面白そう」
「遠くから眺める分には面白いですよ。中の人になるのは御免です」
人が一杯だなぁ。押されて先生が俺に寄りかかる。
写真は一枚撮ったら進んでくださーい、と警察の方の声。
「先生も写真撮りますか?」
「いいわよ別に」
「いいんですか?」
「だって私が撮るより綺麗な写真集、あるもの」
「じゃ俺が先生撮りたい」
くすくす笑っていいわよー、と仰るものの人の波。
撮れそうにない。
「後でどこか良い桜があったらそこで撮りましょ」
「はい」
中で30分ほどか。桜と皇居を楽しんで乾門を出た。
「さて、そろそろお昼ご飯の時間ではありますね」
「お弁当買って皇居東御苑で食べない?」
「いいですね。でもどこか売ってるのかな」
丁度いいところに警察官が通りがかったので聞いてみる。
残念ながら中で売っている弁当は売り切れの由。
靖国に流れて近くでランチを取る人も多いという。
どうします?と先生に聞けばそれでいいとのことでお礼を言って移動する。
笑顔で気持ちよく挨拶を返していただいた。
先生の残念そうな顔にほだされたのかもしれない。
そのまま靖国方面の人の流れに載ることにした。
ま、いい食事処がなければ三越とか。
先生を連れて歩くと視線がそれなりにある。
見せびらかしたいような、見せたくないような。
靖国の桜も増して見事で近くの方が桜をバックに写真を撮ってくださった。
先生が帰られるときに印刷して渡そう。
「夫婦…に見えてるんでしょうかねえ」
「多分そうよね」
「孝弘さんとも昔は行ったんですか」
「行ったわ…色々行ったわよ」
「今は花より団子ですからねぇ」
「そうなのよねー」
もうちょっと風流を解する男に育てられなかったんだろうかと思う。
無理か、環境からしたら一番いいもんなー。
ゆっくり桜を楽しんで、神社から出る。
まずは九段下付近にお店はいくつかあるだろう。
が、しかし…どこも1時間待ちとやら。
「三越行って見ます?」
「そうね、そうしましょ」
三越についてレストランエリアへ上がる。
「イタリアンがすいてるみたいですが」
「あら和食のお店は混んでるの?」
「8人待ちですね」
「じゃイタリアンでいいわ」
席へ案内してもらってメニューを選ぶ。
俺は一品多いプランを。
組み合わせを伝えて食前酒を頼む。
あ、そうだ。
「作陶展やってるみたいですが後で見ますか?」
「勿論よ」
食前酒の口当たりもよく先生も笑顔だ。
美味しい食事をいただいて、満腹になってデザート、コーヒー。
「あなたねぇ甘やかしすぎよ? こんなにおいしいものばかり食べさせて」
「太る?」
「そうじゃないわよ」
「好きな女と美味しいものを食べるのも幸せなんですよ。私を甘やかしてます」
「ばかねぇ、もう」
食後会計してそのまま美術フロアに流れる。
先生は茶碗など眺めてうっとりして。
そのまま晩のご飯も買って帰りましょ、と言われて地下へ。
サラダやメインになるものなど買って帰った。
「あぁ疲れちゃったわー」
「はいはい、鞄とコートもらいましょう。脱いできてください」
「ん、よろしく~」
ぽいぽいと脱いで浴衣を着て出てきた。
ベッドにごろり、と寝転んでる。
俺はその脱いだ着物を片付けて自分も着替えて先生のそばへ。
あれ、既に寝息だ。
結構疲れたらしい…。
ま、いいけどね。俺も少し横になろう。
夕方起きて二人でご飯を食べる。
自堕落な生活。
「今晩のうちに帰るんですよね?」
「ううん、明日の朝帰るわよ」
「いいんですか?」
「そういってあるもの」
「じゃ…後で抱かれてくれます?」
あ、頬染めてる。可愛い。
「いいわよ…」
ニッと笑って食事が進む。
「あ、でもその前にお風呂入りたいわ。結構汗かいちゃったもの」
「はいはい。一緒に?」
「入りたいの?」
「ええ」
「いいけどえっちなことはだめよ」
「そいつぁ残念」
ぺち、と額を叩かれた。
ご飯を食べ終わって一服し、風呂を沸かす。
沸かしてる間に…先生の股間を舐めようとする。
汗などで蒸れてるから凄く嫌がっていて、それでもと言うと諦めてくれた。
しょっぱい、と言うと…。
「だからいやっていったのに、ばか」
そういう会話もまた楽しく。
お湯が沸いたようなので脱がせて連れてはいる。
「昼みたいに洗ってあげましょうか?」
「だめよ…あなたも早く洗いなさい」
ふふっと笑いながらお尻を撫でて怒られたり。
「お風呂で遊んじゃダメよ」
といなされたり。
温まって風呂から出て、そのままベッドへ連れ込む。
「髪乾かしてないのに」
「ドライヤーで乾かすのって傷まないんですかね」
でもドライヤーじゃないと先生の髪は寝癖つくのかな。
髪にもキスして。いい匂いだなぁ。
先生を沢山気持ちよくして、明日も早いから、と早めに切り上げることにした。
加減はしたのだがやはり先生は疲れてしまったようだ。
「おやすみなさい」
「ん、おやすみ……」
寝てるし。半分寝言だろこれ。
背中に密着して先生の肌に触れながら寝た。
朝、置いて出勤するのが惜しい気もして。
出る前にしっかりとキスをして出勤。
仕事から帰ったらもう先生はいなくて、お昼ご飯の用意だけがされていた。
おいしいけれど…一人で食べるとおいしくない。
あ。写真。
そうだ、昨日印刷しようと思って忘れてたな。
写真専用機で出して、と。
うん、綺麗だなぁ。先生も桜も。
変なものは写りこんでないようだし、と。
封書に入れて鞄に仕舞う。
明日忘れないようにしよう。
さて、昼寝。
夕方起きて飯を食ってさらに寝る。
朝起きた。
今日はお稽古日。
仕事頑張って先生に逢いに行こう。
やはりまあ、火曜は暇で。
他の社員たちも今日は花見に行こうと早く帰る支度をしている。
さっさと帰宅して用意を整えて先生のお宅へ。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
あ、八重子先生だけだ。
「これ、写真です。花見の」
「どれどれ? へぇ、カメラ持っていったのかい?」
「携帯ですよ。結構綺麗に撮れてますでしょ?」
「あら、もう来てたの? いらっしゃい」
先生が台所からお昼を持って出てきた。
「今日は暇でしたから…ん? 甘茶?」
「潅仏会よ」
「あー…花祭りですか。忘れてました」
「あと今日もあなた円草ね」
「うっ」
「他の方は今週と来週は平点前するから」
「基礎大事にですか」
「来月は風炉だもの。確実にしないと」
「わかりました」
「ああ、そうだ。引次は茶事しようかと思ってたんだけど…。
 許状来てるのあんた以外いなくてねえ」
「三人でしようかって思ってるのよ」
「とするといつもとは違う曜日のほうが良いですよね」
「明日どうかしら」
「心の準備が」
「三人だし茶事でもないし大丈夫よ」
「そうそう、私か絹かが点前してあんたに教えるだけ」
「今日の夜でもいいけどお風呂にも入って着替えてって思うとねえ」
「だから今晩はなしね」
甘茶ふいた。
素で言われるのはどうかと思うんだ…。
八重子先生が溜息をついて先生はなんか変なこと言ったかしら?って顔をしている。
「…水屋の用意してきます」
そそくさと立ち退いて水屋へ行き、お稽古の用意をする。
しばらくして生徒さんが来て、先生がにこやかに現れてお稽古スタート。
和気藹々とお稽古が進む。
「絹先生、日曜に山沢さんとご一緒してらした?」
「え? ええ、一緒でしたけど」
「ああやっぱり! 皇居で母が先生と男の方がご一緒だったのを見たと申しましてね」
「乾通りの通り抜けに行ったんですよ。凄い人でした」
「あらー、いいですわねぇ」
「一時間半待ったんですよ、セキュリティチェックが時間かかるので」
「そんなに? 大変ねえ」
「それでも今年限りかもしれませんからね」
「ですから山沢さんお誘いしたんですの。ほほ」
「八重子先生はご一緒じゃ?」
うっ、と詰まった気配。
「なんせ1時間半待ちですしね」
あぁうんうん、と生徒さんも納得。
他の方々もお稽古が終わり後は俺を残すのみ。
俺へのお稽古は雑談もなく厳しく。
終って水屋を片付け。
「見られてたわねぇ…」
「やっぱり外出は気をつけないといけませんね」
「でも私と一緒にいる男性は山沢さんってみんな思ってくれてるのかもしれないわね」
「だといいですねぇ。それなら不倫の噂にはなりませんから」
「そうね。あ、そうそう。明日あなたの格好なんだけど」
「はい?」
「3つ紋か5つ紋かの色留持ってきてたでしょ? それ着て頂戴」
「え、あ。はい」
「袋帯は締めてあげるから」
「女装ですか…」
ちょっとげんなりしてたら笑われた。
「いいじゃないの、たまには」
片付け終えて台所へ。
もう食事は出来ていて、食卓へ配膳してお夕飯をいただいた。
律君が暫くして帰ってきた。
先生が味噌汁を温めなおしている。
八重子先生が律君に俺と先生の写真を見せてる。
「いまどきは携帯でこんなに綺麗に撮れるみたいだよ。いいねぇ」
「へぇ、すごいね。っていうか山沢さん、お母さんと花見行ってたんですね」
「朝ニュースで皇居の公開って言っててね、じゃ行きましょうってことで並んでね。
 でもこれはすぐ近くの靖国で撮ったんだよ」
「え、なのにこんなにクリアなんだ?」
「あらなぁに? 一昨日の写真?」
「うん、綺麗にとれてるなーと思って」
律君が頂きます、と言って食べ始めた。
先生はにこにこと孝弘さんや律君の世話を焼いてあげていてほほえましい。
「律君は誰かと花見行った?」
「うーん。うちにあるから」
「お友達といったらいいのに」
「近藤? 彼女いるからあいつ」
「あんたも彼女作れば?」
先生、そりゃ酷な。作ろうと思って作れるものじゃないし。
俺は先にご馳走様をしてくつろぐ。
「御免ください、宅配です」
玄関から声。
「あ、ちょっとお願い」
「はい」
パタパタと玄関へ行き受け取る。
サインをして荷物を持って台所へ。ビールらしい。
送り状をもって居間に戻り、お渡しする。
先生は引き出しから帳面を取ってなにやら書き付けて送り状を仕舞った。
お返しとかするんだろう。
律君も食事が終わり、残ったものを孝弘さんが平らげて片付ける。
洗い物を仕舞い終えれば風呂をすすめられ、いただいた。
さてと。今日はなしか。
抱っこだけか、ちょっと辛いな。
先生は気にしてなさそうだけれど。
おしゃべりをして夜が更けて布団へ。
懐に抱いてると、今日はダメよ、そういって腕を絡めてくる。
扇情的で手を出したくなるのにしてはいけない。
くすくす笑われて、寝なさい、と仰る。
ふっと息をついて先生の胸元に耳をくっつけてゆっくりと呼吸をしていると撫でられた。
先生の呼吸が寝息に変わり、俺も寝た。
まだ夜も明けないころ目が覚める。
先生の寝顔が可愛らしい。
抱きたいな、と思うが…今日はダメだったと思い出す。
トイレに立って手を洗って布団へと戻る。
「うぅん…」
おっと起こしてしまうか?
いや、寝息。
気持ち良さそうに寝ている。
寝返りを打って俺の腕を胸に引き入れた。
やわらかいなぁ、乳。
揉みたくなっちゃうじゃないか。酷いな。
まだ眠いから寝てしまえばいいが。
うつらうつらと先生の寝息にあわせて寝て、朝が来る。
起きたらしっかりと俺の手が先生の乳にフィットしていたらしく。
先に起きた先生が困っていた。
起こすに起こせず、だったらしい。
そういうところが可愛くてついキスしてしまった。
ぺち、と額を叩かれて朝飯の支度に台所へ行く。
朝ご飯を食べて一服したら炭や釜などの用意。
最初からの用意を手伝わせていただくのは久々で、指示を貰ってその通りにするばかり。
用意が整って、着替える。
流石に先生方はすばやく着替えられ、俺が帯を締めようというころには終えられていた。
先生が着付けをちょっと直して二重太鼓に締めて下さり、席入り。
お点前は八重子先生、半東と次客は先生が二役を。
黒塗りの台子。
初炭からだけど…いつもの初炭とは少し違う。
「真台子の初炭は違うのよ」
解説を一つずつしてくださりつつ、進む。
唐金の皆具の真台子は背が高いので八重子先生はちょっと大変そうだ。
「真はすべて省略せず、すべてこれまでにしてきたことだから覚えるのは簡単なの」
うーん、たしかに見ていてわからない、と思う点はない。
これまでにやってきたことを本式できっちりすればいいという感じではある。
「ただこれを覚えると他のお点前のときに混ざるんだよねぇ」
と八重子先生。
あ、たしかに省略していい行のときにやっちゃいそう。
「だから初級クラスの人は見ちゃいけないのよね。混乱しちゃうのよ」
続き薄にするわね、と仰って薄茶もいただいた。
お点前がすべて終って総礼。
「どうだった?」
「確かに見ているとこれまでのことで出来そうな気はしますけど…。
 点前するとなると違うんでしょうね」
「基本的にメモをとるのも写真もビデオも残しちゃいけないって言うけどね、
 覚えるまでは取ってもいいよ。覚えた頃にはいらなくなってるから捨てなさい」
「あ、はい」
「支部の講習会なんかはこういうのをやったりするから。
 あんたが先生になってからの話だけどね、わからなくなったら暫く封印して
 支部までお稽古お願いに行くんだよ」
「そうなんですか?」
「私らも曖昧になることがあるからね、たまにお稽古に行ってるだろ」
「そうだったんですか」
「七事式もここではそんなにはしないからね。支部ならあるから」
色々とお話をしていただいて、じゃ着替えて片付けようということになった。
普段着に着替えて茶室に戻り釜を下ろそうとしたら先生が濃茶を一服所望された。
先ほどの真の行でかと思ったが作法要らないからただ点ててと。
気が楽になりしっかりと練る。
こんなものだろうか。
八重子先生が正客として一服され、お服加減を問う。
惜しい、もうちょっと。と言われてしまった。
先生に茶碗が渡って、確かにもうちょっとねぇと言われて。
茶碗を漱いだらそのまま先生と点前座を交代して先生が点ててくださった。
やっぱり美味しい。
ほほほ、と先生が笑う。
「こうなるまでに私も山沢さんのようなお茶点ててたわよ」
「自分で飲みなってよく言ってたねえ」
さてさて片付けてる間に先生はお昼作ってくると台所へ。
八重子先生が真台子の組み立て方や片付け方、皆具の片付けなども教えてくださった。
引次を終えて片付けも終えてすっかりほっとした気分で許状をいただいた。
お昼ご飯を食べて縁側で先生と日向ぼっこ。
のんどりしていると八重子先生も縁側に。
お茶とおせんべい。
「お天気いいわねぇ」
「気持ちいいですねえ」
一服をしてから掃除。平日だからね、先生も主婦業をしないといけない。
俺も指示を貰いつつお手伝い。
廊下を拭いたり、庭の雑草を取ったり。
3時になっておやつをいただいたらお買物。
トイレットペーパーなどかさばるものも買って、焼酎も買う。
司ちゃん用のを切らしてたらしい。
「ほんと助かるわぁ…律もほら、大学あるから遅いでしょ」
「お夕飯の買物には間に合いませんよね」
「あなた力持ちだし」
「ま、仕事が仕事ですからね」
帰宅して先生の決めたメニューに従って下拵え。
今日はメイン肉じゃが。
と言うことでジャガイモの皮を剥く。
…肉じゃがなのに豚肉なのはいまだに違和感があるが仕方ない。

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h23

朝、気づくと先生が懐の中にいた。
ああ、またか。
しょうがないな、と寝てる唇にキスを落とし出勤した。
まぁいつもの暇な火曜日、と言ったところである。
仕事が終りそうなころ、先生からメール。
そろそろ終るから帰ると返事をする。
しかしピーマンを食べさせたがるのはなぜだろう。
別に苦手ではないんだが。偏食のイメージ=ピーマンなのか?
ゴーヤは遠慮するが。
帰宅すると先生が炒め煮をしていて、3色+ちくわだった。
待ちきれない、と言うとこれ食べる?とくれたのはピーマンのチーズ焼き。
「あ、冷蔵庫に佃煮もあるから明日食べるなら食べて」
「どんだけピーマンかったんですか」
「だって安くていいものだったからつい、買っちゃったの」
えへ、と笑ってるのはかわいいんだけどさ。
「明日半分持って帰るから、ね」
メインは生姜焼きだった。
飯がうまい。
お味噌汁は麩と人参少々。
佃煮に入りきらなかったようだ。
手は掛けてない、と言うがちゃんと美味しくて、その辺が長年の主婦と言うことか。
おいしくいただいてごちそうさまをする。
お茶を飲んでふうっと一息ついた。
「そろそろ着替えてお化粧直すわ。洗い物してくれる?」
「はい」
フライパンや鍋を洗い、味噌汁の残りは冷蔵庫へ。
夜うちで食べるのなら温めなおそう。
あ、佃煮。こんもりと鉢に入ってるな。
台所も食卓も片付いて、じゃ俺もそろそろ用意をしようか。
着替え終わったころ先生も化粧が終わり、トイレに行ったようだ。
一応袱紗なども用意しておく。
「さ、そろそろ行きましょうか」
「はい、そうしましょう。忘れ物ありませんか? 袱紗とか懐紙とか」
「あ、一応確認しなきゃね、うちなら予備有るけれど」
確認して二人連れ立つ。
まずは新宿アルタ前へ移動した。
暫くすると和服の奥さん二人が見える。あれがそうだろうか。
先生も気づかれて会釈を交わす。
それから近くまで寄ってご挨拶を。
弟子の山沢です、と挨拶し、男の方って珍しいわねーなどと話題にされる。
女の先生と男の弟子、と言うのが珍しいのである。
いや年寄りの女師匠に男弟子、というのは良くあるんだが。
その方々にご案内いただき連れて行ってもらった。
結構なお宅で、茶室もしっかりとしたものだ。
いらっしゃい、と迎えてくださったのは老齢の先生で、七事式がお好きな方だとか。
後お二方見えるから、と和室に通され、昆布茶をいただいた。
うーん、うまい、体が温まる。
ほどなくしてお二方が見えられた。少し先生より上くらいかな。
その方々も用意されて少しお茶を飲んで落ち着かれて茶室へ入る。
さぁ、見学だ。
大変にややこしい花月の一種をスムースにこなされるのを見るとやはり凄いと思う。
見とれているとあちらの先生からお茶を一服いただいた。
あ、濃茶。お一人でどうぞ、と仰っていただき一口。
お服加減は、と聞かれる。
大変に甘くて美味しい、と答えすべて飲み、どこのお茶か聞いた。
あぁ、お家元好みか。
器は黒楽。口当たりが良くて素敵だ。
お返ししてお礼を言えば、濃茶を美味しいといわれるのが嬉しいと仰る。
自分はまずい濃茶を練ってしまう確率は高いから…美味しいといわれるのは嬉しい。
だけどこの先生方だとそういうことじゃないのでは?
と思えば、最近の方は濃茶の美味しさを知らない、と仰った。
一番最初が安い薄茶だと、あれが濃くなったもの=苦そう、または本当に苦かった。
そうなっちゃうから仕方ない。それに…練るの下手なもの同士で飲むわけで。
先生方が練られたお茶を最初にいただければ、お茶の甘みがわかるのかもしれない。
お稽古は進み、〆に数茶、との事で先ほどの先生と私も席へ。
これは絵合わせの趣向で同じ絵柄を引いた人が飲める。
煙草もOK。
って煙草盆回ってきた。
スルーしようかと思ったら吸いなさい、と仰って一服いただく。
ちょっと辛いのは乾燥してるんだな。
ゆったりとしたお茶のお稽古が終わり、一旦和室へ。
そこで生姜湯が出されて、いただく。
「外は寒いから」
とのことだ。
亭主の気遣いとはこういうものか。
ではそろそろと皆さんで辞去し、各々別れた。
「先生、夜、どうなさいます? 食事にどこか、ってんならこのまま行きましょうか」
「んー…あなた何か作って頂戴よ」
「いいですけどなに作りましょうかね」
「お魚の焼いたのと、煮物とおひたしでいいわよ」
「煮物、うぅん、何作ろうかな。大根はどうです?あと南瓜とか」
大根と昼のちくわの残りを炊いてしまえ。
南瓜を炊いたら彩りもいい。
おひたしはホウレン草だ。
魚は昼に食おうと思って持って帰ってたメバルがある。
酢橘か何か買って帰ろう。
算段をして帰り道に買物をし、帰宅。
着替えて手を洗ったら調理開始。
先生は居間でテレビを見てる。
しばらくしてご飯も炊けて魚が焼けた。
先生が台所に来て盛り付けて配膳してくれる。
冷蔵庫から佃煮を出した。
食卓について、いただきます。
「味付けがうちとはやっぱり違うのねぇ。けどおいしいわ」
「あぁおいしいならよかった」
ぺろりと食べ切ったが佃煮は流石に残った。
冷蔵庫に戻してお茶を入れる。
先生にもお茶を渡して横に座ると頭をなでられた。
なんだ?
そのまま俺の頭を先生の膝へ持っていかれて、ああ、膝枕ね。
先生の手が頬をなでる。
唇を細い指がなぞる。
その指を少し舐めると手が止まった。
先生の膝頭をなでる。
びくっとしているが…着物じゃ何も出来ないんだよね。
寝巻きの浴衣なら割と簡単に突っ込めるんだが。
「ねぇ先生。お腹落ち着いたら抱かせてください」
「あ…」
何も言わずに俺の腕をなでている。
一時間ほどして足が痺れた、と膝から下ろされた。
その足をつついてみたりとじゃれて、立てるようになったころ。
「脱いで」
「あ、うん…」
肌襦袢一枚になって着物を片付けてる先生にむらむらとして襲い掛かりたくなった。
片付け終わってこっちへ向いた先生が後ずさりするほどに。
抱き上げてベッドへ。
今晩は割と普通に抱いて、でも少し羞恥を煽って。
先生も軽く煽るとますます濡れて、どこか被虐のケがあるようだ。
リバってやつか? 俺を弄って楽しむところもあるからな。
「自分でして見せて」
そういうと出来ない、したことがない、という。
「俺を泣かせたいなら稽古が足りないな。
 自分で稽古してどうすれば気持ち良いかしてみればいい」
そういって先生の手を掴んで先生の股間に持っていくものの、やっぱりできないようだ。
泣きそうになってて可愛くてたくさんキスをしてしまった。
そのままもう一戦して眠い、と言うので寝かした。
朝、やはり寝過ごして8時前。
はらへった。
パンを焼いて蜂蜜をたっぷり塗って食べる。
ぬるいエスプレッソ。
しばらくして先生も起きてきた。
頂戴、と言うので新たに焼いて蜂蜜かバターか、といえば蜂蜜。
コーヒーかエスプレッソ、と聞けばコーヒー。
ミルクはこの家に今日はない。
まだ眠そうだ。
「もうちょっと寝てたらどうですか?」
「あなたも一緒に寝ましょ」
「俺は別に眠くないですよ?」
「いいから」
「はいはい、甘えたいんですか?」
「悪い?」
「悪くない。良い気分ですよ」
ふふっと笑って抱きしめて、抱き上げる。
「でもえっちはだめよ? 眠いんだから」
「しょうがないなぁ」
ベッドに入り頬をなでる。
「キスくらいはいいわよ」
そう言われたから深くキスした。
「まだ眠い?」
「ばか。寝かせてっていったのに」
「一度したらまた眠くなるかもしれないね」
軽く乳首に触れるとビクッとして。可愛いなぁ。
「ちゃんとするか、直接こっちで軽くかどっちがいい?」
「…軽くでお願い」
「OK」
するりと股間にもぐりこみ、突起を舐めて逝かせた。
汁を舐め取り先生にキスすると叱られ。
怒るところも可愛くてつい懐に抱きしめてしまうと叱る声が止んだ。
「可愛いなぁ、愛してる。寝てもいいですよ」
ぐっ!乳首つねられた。
「だ・か・ら! なんでそこを抓る」
「痛がるからかしらね。じゃおやすみなさい」
はいはい。
汗が引いてきたころ布団をかける。
寝息。気持良さそうだな。
眠くはなかったのに誘われるように寝てしまう。
次に起きたら昼過ぎだった。
先生にお手水行きたいから手を離して、と起こされた。
一緒についてって抱きしめてトイレに入ろうとしたら脛を踵で蹴られた。
思わず放した隙にトイレに入られてしまった。失敗。
出てきた先生にランチの美味しいところ連れて行ってとねだられ、着替える。
和食、とのことで懐石系のお店へ。
外は雨だった。
入店し、コースを頼む。
先生が幸せそうに食べてて俺も幸せ。
食後、このまま帰るか聞いてみた。
雨の中また出てくるのがいやだというかもしれないし。
「そうねぇ…そうしようかしら。着物とか明日持ってきてくれるわよね」
「お持ちしますよ」
「だったら、うん、もう帰るわ」
「俺としちゃ、帰したくないんですけどね」
「あら」
頭を混ぜられ髪を崩される。
「可愛いわ、そういうところ。いつも可愛かったらいいのに」
「あなたを可愛がるほうが好きですから」
ぽっと頬を染めて、ん、可愛らしい。
電車の乗り場まで送って別れる。
さて、と。晩飯の惣菜は昨日のがあるし。
飯もまだ一膳分はある。
そのまま帰ろうか。
いやプリンだ、食われたプリンを買いなおそう。
コンビニへ寄って帰宅して。
後は縫い物を少しして夕飯を食べておやすみなさい。
翌日、思い出してメールする。
ピーマンのことを。
使っておくか持ってくるかどっちでもいいとのことで持っていくことにした。
仕事が終わり、シャワーを浴び着替えて先生の着物とピーマンを持ってお稽古場へ。
台所にピーマンを置き居間へ行って着物をお渡しする。
「あ、今日は濃茶で花月するからわかってるわよね」
「そうでしたね。うっかり折据回しそうです」
「ん、最初の正客は私がするから」
「お願いします」
ほっとして用意をする。
生徒さん達が来られて濃茶付花月をする。
4回して、やっと時間が来て終了。
やっぱり苦手だなぁ。
片付けてるとご飯食べて帰るでしょ?と言われたが…。
やっぱりピーマン。
肉詰めね。いいけどね。
野菜の炒め物と。
美味しくいただいて今日は帰る。
「じゃまた土曜日お邪魔します」
「またね」
と軽くキスされて。
いや律君に見られたらどうするんだよ。
最近大胆だなぁ、と思いつつゆっくりと帰宅した。
翌朝の支度をして就寝。
うちの布団にも先生の匂いがして、いないのにいるような気がする。
だからいないにもかかわらず幸せな気分で眠れた。
翌朝、金曜なのにそれなりに荷物は動き。
仕事が終って外に出れば天気もよく温かい。
こんな日は散歩しようか。
昼を食べた後、掃除を済ませ散歩へ。
汗ばむ程度の散歩だが清しい。
桜が咲きはじめていて思わず写真にとって先生へ送る。
久々に思い立ってトレーニングもしてしまった。
風呂に入ってのんびり。
浴衣をまとって出てみるとメールあり。
先生からお花が綺麗に活けれたから、と写真が来ていた。
うーん、春だなぁ。
2通目は、と見ると八重子先生の仕業だな、先生が花を抱えているところの写真。
ん、綺麗だ。
八重子先生もそう思ったのかな?
そうじゃなきゃ俺が見たがるだろうから送ってくれたのかな。
嬉しくなってパソコンにも転送した。
ゆったりと気分のよいまま夕方になって、何を食べようか。
まだピーマンの佃煮はある。
味噌汁は久々に作ることにして…あ、味噌がない。
ってことは味噌屋に寄って来ないといかんな。
塩鮭あるから納豆と卵。
ん、朝食になってしまうな。まぁいいか。
買い物へいこう。
夕方とはいえまだ温かい中買物を済ませ帰宅してシャケを焼いて味噌汁を作る。
ごはんはレンチンだが…久々に食べるとまずい。
炊き立てご飯にはかなうわけもないな。
なんて思いつつ平らげて、ごちそうさま。
歯を磨いたらおやすみなさい。
朝、気分よく起きて出勤。
その気分も束の間、温かさと土曜日と言うのもあり怒涛のように荷物が動く。
ぐったりして時計を見上げれば8時過ぎだ。
早いなぁ。
あ、メール入ってる。
先生からだ。
今朝から弄 …ああ、生理かな? 月のマークか。
ちょっと残念に思いつつも残りの仕事を片付けて帰宅し、お稽古の用意をした。
さて先生のお宅へつくと先生はちょっとぴりぴりしてらっしゃる。
ま、この時期は仕方ないね。
八つ当たりされるかもしれないなぁ、気をつけて振舞おう。
意外とそんなこともなく、生徒さんにも優しげにお稽古が進む。
凄いな、お稽古だと大丈夫なんだな。
生徒さん達が帰られて水屋を片付けてたら何か不機嫌そうだ。
手を掴まれた。
「どうしました?」
手が白くなるほどに俺の腕を掴んでるけどそれほどには痛くない。
握力20くらいかな、この感じは。
「早く片付けましょう、足冷えますよ? ここ板の間ですし」
「あ、ああそうね」
「じゃなきゃ居間に戻ってコタツにもぐっててください」
「そうさせてくれる? 悪いわね…」
もしかしたら不機嫌じゃなくて生理痛だったかな?
手早く片付け台所を覗く。
「ああ、もうできるから食卓片付けとくれ」
「はい」
食卓を片付けていると先生がする、と言い出したが、そのままそのまま、と。
台所からおかずや味噌汁などを運び出して展開し、孝弘さんたちを呼んだ。
今日はご飯をよそうのも私だ。
先生は気だるげに黙々と食べている。
律君はそんなお母さんの様子はスルーだ。
いつものこと、と言うところか?
孝弘さんは、あれ? ちょっと気にはしてるのか。
おかわり、と言いにくそうにしている。
気配を察知して聞いてあげたり、先生の取り皿におかずを乗せたり。
食後、先生はこたつに横になった。
「布団敷きましょうか?」
「ちょっとこうしてたいだけだから」
眠いのかな。
背中が冷えないようハーフケットを掛けて、片付けに立った。
洗い物を終えて戻ると八重子先生が痛み止めまだ持ってるかと聞く。
「あ、ありますよ、鞄に。どこか痛むんですか?」
「絹がねぇ…」
「ああ、生理痛ですか。それじゃあ先日の薬でいいですね、取ってきます」
「悪いわね」
渡すと八重子先生がお白湯を渡して飲ませている。
横に座ると先生が俺の手を握る。
痛いときって心細いのかもしれない。
そのうち薬が効いてきたのか、あふ、とあくび、そして寝息。
握る手から力が抜けて畳の上に落ちた。
可愛いなあ、とついニヤついてしまった。
「布団、敷いてきます」
「あ、お風呂どうする? 入る?」
「最後に浸からせて貰っていいですか?」
「ん、それならお湯は落としといてくれるかい」
「ついでに風呂洗っときましょう」
「そうしてくれると助かるよ」
寝間に布団を敷いて先生の寝巻きを出す。
さて、部屋につれてきて着替えさせるべきか。
あちらで着替えさせ布団に突っ込むべきか。
とりあえず居間にもって行くか。
戻ると八重子先生は既にお風呂に行った様だ。
先生の横に座って寝顔を眺めて。幸せ。
髪をほどいて帯を緩めて行く。
帯締めをほどいて、帯枕を抜いて。
さて、帯は流石にほどけないな、起こさないと。
髪を撫でて人の気配がないのを良いことに軽くキス。
ゆったりとお茶を飲んでいると八重子先生がお風呂から上がってきた。
交代で入る。
ぬるめの湯にしっかりと温まって、湯を落とし風呂を洗う。
先生は明日はいるだろう。
ん、ピカピカになったはずだ。
体を拭いて浴衣を羽織って出れば律君と行き会った。
律君は顔を赤くして立ち去る。
ん?と思ったら羽織ってるだけだから見えてたか、いろんなものが。
先生も裸でうろうろしないから見慣れないのだろうか。
苦笑し、居間に戻る。
まだ先生は寝ていて八重子先生にここで着替えさせていいか聞いてみた。
構わないというので上体を起こして抱きとめて帯を解く。
紐をすべて抜いてまとめて脱がせ、浴衣を着せる。
「相変わらず上手にするもんだねえ」
「着せるほうは無理ですけど脱がすんなら簡単ですよ」
「さて、寝ようかね。ああ、火の始末と戸締りはもう確かめてあるから」
「ありがとうございます、おやすみなさい」
コタツを切って先生を担いで寝間へ行こうとしたらさすがに目が覚めたようだ。
「お手水行ってくるわ…」
と、よろけて柱にぶつかった。
苦笑して手を引いてトイレにお連れする。
「中で寝ないで下さいよ、着物片付けてきますから」
「ん…」
片付けて寝間に戻ればまだいない。
一応トイレに声を掛けるとやっぱり寝てた。
ちょっと笑って出てくるのを待ってつれて帰る。
先生は布団に入ってすぐに寝てしまった。
俺も寝よう、おやすみなさい。
あけて翌日は曇り空。
降るって話だけど。
さて朝御飯をいただいて先生は昨日とは違って元気だ。
「掃除手伝ってくれるかしら」
「はいよ、どこしましょ?」
「お庭お願い。お風呂洗ってくるから」
「風呂は昨日洗いましたよ」
「あらそうだったの? 悪いわねえ。じゃ座敷掃除してるから」
「ういっす」
明らかに雑草、と言うものも片付けて焼き払うべく落ち葉の上へ。
火の番は律君と決まっている。
俺がやるんなら焼却炉置きたい。
どうせ今日は焼けない。湿度からすると雨だし、夜に少し降ったようだ。
明日は晴れるのかなぁと思いつつ落ち葉をはいて草をとって。
鳥に少しおやつをやる。
桜のつぼみがほころんできて美しい。
眺めていると花が一つ、二つ手に落ちてきた。
鳥のお礼か。
先生がお茶を入れてくれたのでそこに浮かべる。
「あら、風流ね」
「あの桜の、鳥のおすそわけですね」
「もう春ねえ」
「春ですねえ…お花見か。宴会はしないんですか?」
「晶ちゃんたちはするかもしれないわね」
「先生は混ざらないんですか?」
「親世代が混ざっても子供たちは面白くないでしょ?」
「先生が混ざるなら俺も混ぜてもらおうかと思ったんですけどね」
「晶ちゃんに手、出しちゃだめよ?」
「出しませんよ」
「だったらいいけど」
「たしかに晶ちゃんも司ちゃんも先生と似たところありますよね」
「まあねぇ姪だもの。だからって」
ついくすくすと笑ってしまう。
「なによぅ」
「可愛いな、と思っただけですよ」
少し膨れてるのも可愛い。
「お昼できたよ、孝弘さんに持ってとくれ」
「あー、はいはい、俺が行きます」
今日のお昼ご飯はオムレツか。色々入ってるなぁ。
それと肉の炒めたの。
スープがついてる。
これはうまそうだな。
「なんだ、お前か。あれは具合が悪いのか?」
「昨日はそうみたいでしたけど今日はそうでもないですね」
お櫃が空になるまで平らげてお膳を返してくれる。
お膳を引いて台所へ返し、戻ると俺の分が遺してあってそれをいただく。
スープはちゃんと温めなおしてくれた。
オムレツにはシャケのフレークとネギか。いやピーマンがまたいた。
昼はどうしても残品整理になるよね。
と思っていたら追加で先生が一品くれた。
「足りないでしょ?」
嬉しいなぁ。
「あんた山沢さんには優しいねえ」
「そうかしら」
「お稽古だと厳しいですよね」
「あらだって上級取るんでしょ?」
「助教授取れたら良いなぁとは思ってますが」
「厳しくしないと覚えられないわよ」
だよなぁ、先生が俺のためを思って厳しくしてくれてるのわかるから反発心がわかない。
お茶をいただいてゆっくりしているとかなり曇ってきた。
そろそろ降るのかな。
見ている間にぽつっと落ちてきた。
「ああ、降ってきましたね」
「明日は晴れるかしらね」
「晴れたら沢山洗濯物を干すんでしょう?」
「お布団もね」
八重子先生に頼まれて道具の目録作りを手伝っていると止んできた。
「あんた今日は早くお帰り」
「何かありましたか」
「今日は冷蔵庫の在庫整理だからね」
「ああ。じゃ、かえって何ぞ食べます」
「あんた…あんまり絹を甘やかすんじゃないよ」
「う、それは難しいです。甘えられると嬉しくて」
「わかるけどね」
「ただ私も生理前だと…ちょっとしたことでイラつくので。
 もしかしたらその時は喧嘩になる可能性はあるかとは思いますが…」
「あぁ人によっては苛々するって言うからねぇ、あんたはそういうタイプなんだね」
「ええ、妙にいらいらすると思ったら翌日とかあります」
なんか頭なでられてしまった。
キリのいいところで終了し、片付ける。
「さてと、それじゃ帰ります」
「あら、もう帰っちゃうの? もうちょっといたらいいのに」
「また火曜日来ますから。その時は、ね」
頬染めて可愛いなー。
見送られて帰途に着く。
帰り道に食料調達して帰ってすぐ手を洗って飯を食い、寝た。
さて本日は決算だ。
事務方が今日は早くから事務所に立てこもってピリピリしている。
大変そうだなぁとは思うものの、現場だと別にやることはない。
普通に買って普通に売るだけだから。
事務方が早く現場事務を終らせたいようでせっつく。
と言うことで早く仕事も終わり、ゆったりした気分で帰宅した。
良い天気だ。
せっかくだから散歩しようかな。
ぶらり、ぶらりと歩く。
帰って昼寝をして。
良い気持ちだ。
夕方一度起きて食事を取る。
ごはんと鯛のお造り、味噌汁。
さっと簡単に食べて。
布団にもぐった。
明日は…先生、もう生理終わってるのかな。
ちょっとメールしてみよう。
暫く待つと明日には終わりそうとのお返事だ。
うーん、微妙。
少々まだでも俺は構わないんだけどね。
それよりそろそろお花見したい、とメールに書いてある。
今週の土曜日かな…。
明日その話を詰めましょう、と送って俺は寝ることにした。
風呂は明日!
おやすみなさーい。
さて、本日エイプリルフール。
と言うか本日より消費税増税の話で持ちきりで、嘘をついて遊ばずに仕事が終りそうだ。
先生の教室では洒落っけのある人や余裕が有る人も多いからやってるかな?
シャワーを浴びて先生のお宅へ。
「こんにちはー」
「はい、こんにちは」
「あ、山沢さん、こんにちは。お久しぶりね~。丁度よかった~これ教えて~」
朝の生徒さんだが、どうやら最近スマホを入手したようだ。
「ああ、これはWiFiが飛んでないと…えぇと、WiFiがわからないですか。
 おうちに光回線とかネットとかされてます? ああ、で、それは無線でネットしてる。
 その無線をWiFiっていいます」
「あらじゃうちじゃないとだめなの?」
「駅とか、マックなんかは公衆無線回線ありますからそれに繋がると思いますよ」
「そうなのね~ありがと。じゃあ先生、失礼しますね。山沢さんもまたね」
ま、実はこの家にも無線は飛んでるわけだが。
じゃないとタブレット使ってられん。
「スマホって面白そうだねえ」
「あー…機能は多いですよ、でもあの小さい画面ですからね。
 指先が鈍くなってると使いにくいですよ。
 むしろ私の持ってるやつより少し小さめが使い勝手がいいと思います」
「山沢さんのそれ、電話できないだろ」
「出来ますよ」
「画面に向かって会話するの?」
「別にそれでもいいですし、イヤホンとマイクがセットになったのをつけて、
 それで会話してもいいですし…あ、それとこのタブとは無線で連携できますからね」
こんなの、と鞄からヘッドセットを出してみせる。
「既に連携されてるのでこれをつけて…画面から呼び出します」
先生の電話が鳴る。
「廊下のあちらまで行きますのでそれから出てみてください」
廊下の端から通話開始。
「聞こえますか?」
「聞こえるわ! 凄い。ほら、お母さん、これ出てみて」
「八重子先生聞こえます?」
「本当だねえ、へぇ~」
「じゃ切りますよ」
終了して横へ戻る。
「ただこれ、鞄に入れたままで通話できるんですけど…へんな人に見えるんですよ」
「…そうかも。独り言に見えるわよ」
「回避するのに携帯のモックといって模型みたいなものがありまして。
 それを手に持って耳に当てるというワザもありますが」
「まぁその話は後にして早くご飯食べないとお昼の生徒さん来ちゃうわね」
では俺は水屋を。
「あ、山沢さん、今週は荘り物中心にって決めたからよろしくね」
「茶筌荘りとかですか?」
「そう」
「わかりました、用意します」
水屋で状態の良い茶入と茶杓、茶筌と茶碗と水差しを用意した。
稽古が始まって今日は先生も気楽そうだ。
普段は上の方の手前に近づくに従い、やはり緊迫感が出てくる。
簡単なお点前でも生徒さんには優しいけれどきっちりお稽古されている。
楽しそうにお稽古されてるのを見ているのも幸せで。
皆さん帰られてから私のお稽古は厳しくて。
お稽古が終ってからその落差にちょっと拗ねたら笑われた。
苦笑してお夕飯をいただく。
先生がお風呂に消えて、八重子先生は町内会の会合へ。
しばらくして先生がお風呂から上がってきた。
「あら、おばあちゃんまだ帰ってないの?」
うわ、色っぽい。
するり、と私の横に座ってきて…ドキドキしてしまう。
「先にあなた、入ってきたら?」
「あ、いやしかし。それでは風呂掃除が」
「明日するわよ」
「だったら…一緒に入ればよかったですね」
「あら」
頬を染めてる。うー可愛い。
裸なんてそろそろ見られ慣れてるだろうに。
「じゃあ先にいただくことにします」
ふっと笑って湯に入りに行った。
しっかり温まって体を拭いて出ると律君。
なんでか風呂から出たときに会うのは通り道だからだろうか。
いい加減見慣れろ青少年(笑)
「お先、頂きました」
八重子先生が戻ってきてた。
「はいよ。じゃ入ってこようかねえ」
くしゃくしゃっと八重子先生に髪をなぶられた。
なんだろう。
まぁいい、と先生の横に座る。
すぐに先生がもたれてきた。
「そういえば。アレ、終ったんですか?」
「ん? ……あぁもうちょっとかしらね、明日くらい?」
あ、なんか耳赤くなってる。
「ふぅん…ところでですね」
「な、なに?」
「さっきから先生、俺の手敷いてるんですよね、結構痛いんです」
「あらっ」
慌てて膝を浮かせてくれて手を抜けた。
「ごめんね、凄く赤くなってるわね」
「ちょうど膝の下、って奴ですな」
「あ、ねぇ。律がこの間からあなた見ると横向いちゃうんだけど…何かあったの?」
「ああ、律君はなんというか間が悪いってのかな、あれは。
 丁度風呂上りの裸に近いときに出くわすんですよ。
 見慣れてないんでしょうね。先生も裸でうろつかないから」
「あらやだ、あなた裸見られたの? も~ダメよ、ちゃんと着なさいよ」
浴衣の合せをキリキリと〆られてしまった。
「暑いんですよね」
そのまま引き寄せる。
「すぐ冷えるくせに…ダメよ?」
「冷えたらあなたで温まろうかな」
「ばか」
きゅっ、と太腿をつねられて笑って手を離す。
「あとで、ね。今は律君もまだ起きてるからこんなところではダメでしょう?」
「そうよだめよ」
暫くおしゃべりを楽しんで、そろそろ戸締りと火の始末をしましょ、と立つ。
よし、玄関OK。
お勝手もOK、火の始末は先生がOKを出した。
居間へ戻ると八重子先生がおこたに。
「戸締り・火の始末大丈夫です」
「はいはい、じゃあんたらはもう寝ると良いよ。ここは私がするから」
「はい、お願いします。ではおやすみなさい」
「おやすみなさい、お母さん」
「はい、おやすみ」
八重子先生はどうやらテレビが見たかったようだ。
「昨日はお母さんずっとテレビ見てたわよ…歌番組で古い曲ばかりしてたの」
「上海帰りのリルとかですか?」
「私お風呂入ってて途中からだったから昭和44年あたりだったわよ、見たの」
「あ、その辺ですか。おひまなら来てね…あれは30年代だったかな」
「鼻歌で歌ってたわよ、朝」
「へぇ、一緒に見たかったなぁ」
「あなたそんな歌も歌えるのねえ…歌じゃないけど来て欲しいときもあるのよ」
「呼んでくださればすぐにでも」
話しつつ布団を敷いて寝床の用意を整えた。
少しおしゃべりをして、先生はトイレに立つ。
やはり少し冷えてきたな。
昼はあんなに暖かかったのに。
先生が戻ってきて、抱き寄せる。
そっと障子を閉めた。
「まだ、終ってないわ…だめ」
「どれどれ?」
布団の上に押し倒して股の間に頭を突っ込む。
「なんだ、本当にあと少しなんですね」
「わかったんならはなして、あ、ちょっと…ん…だめ、汚いわよ…」
懐から手拭を出して先生の尻の下に入れ、あそこを舐めて楽しむ。
なんだかんだ言ってそれなりに先生も気持ちよくなってくれて。
だけどキスしようとしたら本気で嫌がられた。
「口をすすいできて頂戴よ、お願いだから…」
仕方なく起きて洗面所へ。
口を漱いでから部屋に戻る。
先生は乱れた寝巻きを直していて、うん、それも綺麗だ。
後ろから抱きしめてうなじを舐める。
「もぅ、だめよ…土曜日ならあなたの家かあの部屋行ってあげるから。
 ね、今日はもういいでしょ」
「勿論土曜日もしますけど…もっとあなたを抱きたいな」
胸に手を差し入れて揉む。
上気して色っぽくて。
キス、それから徐々に手を下にやる。
お腹もすべすべして気持ちいいが浴衣が邪魔だ。
脱がせて裸にして。さっきの手拭は一応のためもう一度敷いておいた。
先生の反応を見つつ中に指は入れない。
別に入れなくても逝かせることは簡単だし。
生理中に入れると細菌感染したりするって聞く。
免疫が落ちてるらしいから。
中に入れたいけど我慢し、たっぷり先生の身体に触れていると先生も幸せそう。
嬉しくなる。
沢山キスもして、そろそろ、と逝かせて。
声を上げたそうで、せつない顔がまた愛しい。
後始末をしているとダメって言ったのに、となじられた。
「も一度しましょうか」
「えっ…」
身体をよじって逃げようとしてて、思わずくすっと笑ってしまった。
「しないから逃げないでいいよ」
「ほんとにしない?」
「そうだな、嫌がったらするかも?」
「いじわる…」
「おいで」
そろりと懐に身を寄せてきた。
きっとされるのかされないのかドキドキしているんだろう。
暫く抱き込んでゆっくり腕を撫でて。
先生が落ち着いたころ、寝巻きを着るように言い、俺は洗面所へ手拭の始末に立った。
大して汚れてはなくて少し石鹸で揉めば綺麗に落ちた。
部屋に戻るとやはり恥ずかしげにしてて、ほんっと良い。
劣情をそそるというか。
だけどこれ以上は我慢、土曜日まで待て!だ。
手拭を干してから布団にもぐれば、そっと横に入ってくる。
何かしようと思う暇もなく寝息が聞こえてきた。
相変わらず寝つきがいい。
でも俺もうちょっとしたいんだよなー…仕方ないか。
我慢して寝る努力をして、寝た。
朝、起きるとまだ先生は気持ちよさげに寝息を立てている。
とりあえずキスしたくなってキスをする。
あ、起きちゃった。
「もう起きる時間ー?」
「ええ、そんなような時間ですね」
「まだ眠~ぃ…」
「構いませんよ、メシできたら起こしに来ますから」
「ん、お願いねー」
手がひらひら振られて台所へ行く。
さてと今日は何を。
八重子先生が起きてきた。
「おはようございます。今朝は何しましょうかね」
「おはよう。絹は?」
「眠そうだったから置いてきました」
「あんた甘い。とりあえずそうだね、何か魚焼いてくれるかい」
冷凍庫を見て。ん、サワラでいいかな。
軽く味噌を洗ってからグリルへ。
八重子先生と朝御飯を用意して先生を起こしに行く。
「先生、ごはんできてますよ。そろそろ起きてください」
「んー…んん?もうそんな時間なの?」
「7時半前ですよ。味噌汁が冷めちゃいますから」
もぞもぞと布団から出て身支度を簡単に整えている。
「あなた食べたの?」
「先生と食べようと思ってるのでまだです。律君たちはもう食べ終わってるかと」
「あらそう? 待っててね、すぐ用意するから」
着替えを手伝って一緒に居間へ食卓に着く。
お味噌汁を温めご飯をよそい、先生の前へ出して一緒にいただく。
「行ってきます」
「あ、行ってらっしゃい、気をつけてね」
律君は1時限目から学校らしく慌てて出てった。
「ことしのお花見ねぇ、お茶会しようかって言ってたけどだめだねぇ、雨の予報だよ」
八重子先生がテレビの天気予報を見ながら。
「うーん、散りそうですか?」
「散っちゃうかしらねえ」
「じゃお昼に三人で花見したいです」
「しちゃう?」
「あったかいしね」
食後、そのために色々用意をする。
三人だけだから茶事じゃなく、普通にお茶を点てていただいた。
お昼に軽く食べて、濃茶。美味しい♪
「綺麗ねぇ…」
「ええ」
ひらり、と花びらが薄茶の上に。
緑のお茶に薄紅の花、風情を感じる。
サワサワと風、鳥の鳴き声。
春だなぁ…。
お客さんが来て八重子先生が相手をしている。
先生をおいで、と招いて膝枕をしてみた。
しばらくしてあふ、と先生のあくびが聞こえる。
「まだ眠いですか」
「ゆったりしてるから、ついね」
ぼんやりと桜を見上げているうちに寝息が聞こえてきて。
寝顔が可愛いなぁと見とれているとそこにも花びらが落ちてきていて。
お客様が帰ったようで八重子先生が戻ってきた。
ハーフケットを持って先生にかけて。
「もう一服いる?」
「あ、ありがとうございます」
お茶を点てていただいて美味しいなぁと思ってると先生が膝でもぞもぞ動く。
うーん、早く飲まねば溢しそうで怖いな。
吸いきってお茶碗を返すと八重子先生が笑ってる。
俺も甘いけど八重子先生だって甘い。
先生が起きたのを切りに曇り空も広がってきたのもあるからと片付けた。
「お買物、行きましょ」
「ええ」
二人で買物に出て色々と買い込む。
「あら空が…」
「ああ、早く戻らないと降るかもしれませんね」
うちに戻って台所へ。
「どうする? 降る前に帰っちゃう?」
「んん、そうしましょうか。降られると厄介ですし」
「そうよね、じゃ気をつけてね」
「本当は帰りたくないな」
八重子先生が台所にいないのをいい事にキス。
「明日もお仕事でしょ…だめよ」
「あなたは俺を帰したくないとか思わないんですかね…」
ぷっ、と先生がふきだした。
「なぁに、拗ねてるの? やぁねぇ」
くすくすと笑ってバシバシと俺の背中を叩く。痛い。
「拗ねちゃいけませんか」
私の頬に手を添えて先生からキスしてきた。
「ばかね、明日も来てくれるんでしょ?」
「勿論です」
「だったらお仕事に影響が出ないようにするのは社会人なんだから」
「ええ、まあそうですけどね。引き止めて欲しかったな」
頭をなでられてしまった。
うーん。
「土曜日はあちらの部屋でもいいわよ」
「良いんですか?」
嬉しくなって見返すとそんな俺を見て先生がくすくすと笑ってて…後悔させたくなった。
「だから今日は早く帰ってちゃんとご飯食べて寝て、明日もお仕事ちゃんとしてね」
「ま、そういうことなら帰りましょう」
うふふ、と先生が笑って。可愛い。
「じゃ雨に降られないうちにね」
「はい。ではまた」
軽くキスして別れ、電車に乗って帰宅しても雨は降らずじまい。
メシ食ってから帰ればよかったと後悔しつつ、途中で買った弁当を食べた。
今日の夕飯、とメールが来て美味しそうでうらやましくなる。
食べたかった、残念!とメールを返して寝る準備。
寝る前にトイレに行けば、ああ、今日からか。道理で。
と始末をしてそれから布団へ。
明日は雨か…。

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h22

もう朝だ! 仕事だ…。
幸い今日は天気がよく、暖かい。
帰ったら布団を干したい。
仕事をしているとメールの着信音。
手が開いたときに見ると先生からで、昨日のちょっと痛いらしい。
気になるようなら病院行ってください、一人じゃちょっとと言うのなら一緒に行きます。
そう返事をして様子を見る。
9時半頃、メールが来た。一緒に行きたいと。
俺の行ってる病院が良いと言うことだ。
やっぱり自分のいく病院にそういう理由でいくのは気恥ずかしいのか。
俺の家に一旦寄って待っているとのことで仕事をさっさと片付けて特急で帰宅した。
「ただいま、どうですか具合。着替えるから待ってくださいね」
「おかえりなさい。うーん、ちょっと痛いのよ…」
「出血とかありませんか?」
「それはないんだけど」
手を洗ってさっと着替えて一緒に病院へ。
「どうします?カルテ残したくなければそのように出来ますが」
「えっそんなのできるの?」
「ええ、まぁ。そんなに通わなくてもいいとかなら」
「そうしてほしいわ、だってほら通知来るでしょ、保険証の。どこにかかったとか」
「ああ、来ます来ます。八重子先生に見られても問題はないでしょうけど」
「他の人はねぇ」
「ま、更年期でって人もいますけどね、早いと俺くらいの年からですし」
「でもねぇ」
「っとここです。便宜上…飯田春子でもしますか」
「なんでもいいわ」
受付に伝え問診票を貰う。
手が止まった。
痛みの場所とかは書けたがどうしてかが書けなかったようだ。
取り上げて書き込む。
受付に渡して暫くして呼ばれた。
一緒に入って問診を受けるのを横で。
「で、心当たりのところね。これ、んー」
頬を染めている。
「遊ばんで下さいよ。素人さんなんですよ、勘弁してくださいや」
「すまんすまん、じゃ内診しようか」
「ついでにがん検診もしといてください」
「勿論だ。こんなものは一度で済ますに限る」
手馴れた様子でさっさと終えて、ちょっとした打ち身のようなものと説明された。
「がんは問題ないね、検査には出しておくけど今見たところはね。だけど…」
乳がんの検診もそろそろ受けるように、と言う。
「うちは機械がないからね、かかりつけにマンモが有るならそこで受けると良い」
ふむふむ。
俺に上半身脱げという。
ぽいと脱ぐと乳がんの触診はこんな感じでやるから、と先生に見せる。
「ま、こんなカンジね。よし、どうせだからお前もマンモ受けとけ」
「あれ痛いって聞くから…やだなぁ」
「手術のほうが痛い。それに男が受けるのに比べればましらしいぞ」
ごそごそと服を着て先に会計へ。
支払いを終えしばらくしてから先生が出てきた。
少し恥ずかしげなのはどうしたことだ。
聞けば俺にへんなことをされてないか聞かれたらしい。
あ、DVね。
望まぬセックスとか。
医者には出来る相談ってのはあるもんなぁ。
部屋に戻って色々話していると、お尻を舐められるのが困る、と言ったとのこと。
うーん…。
次回の検査のときに何言われるか。
苦笑しつつ貰った抗炎剤を渡す。
痛むようだったら、とのこと。
「そういえばお昼食べました?」
「ううん、まだよ」
「じゃなんか食いにいきましょう。何か食いたいものあります?」
「……天麩羅たべたいわ」
「ああ、家だと揚げ物面倒ですもんね」
「油の匂いも凄いでしょ」
「ああ、そうか、結構匂うか。じゃ行きましょう行きましょう」
電話で席があいてるか確認して着替え、二人連れ立つ。
天麩羅久しぶりかも。
ほんの少しお酒を頼んでキスやあなご、メゴチ、エビ。
他色々、野菜も色々。結構しっかり食べて満腹に。
「あぁおいしかった!」
「うまかったですねー」
「でも胃もたれしないのよね」
「良い油使ってるんでしょうね。さてと、送りますよ」
「いいわよ、お昼間だしあなた明日もお仕事でしょ」
「あ、そうだ、思い出した。水曜日仕事あるんですよ、だから明日は帰りますから」
「あらそうなの? わかったわ」
なでなで、と俺の頭をなでてくる。
「なでるの、癖ですか?」
「つい撫でちゃうのよね、なんでかしらね」
「俺を下に扱いたい心の顕れ?」
「そうかも?」
「はいはい、いいですよ。夜以外は」
ぽっと頬を染めている。可愛い。
駅についてお見送り。
ばいばい、と車窓から手を振る先生。
さて。帰って寝るか。
帰宅してちょっとあれこれ家事をして、睡眠。
夕方腹が減って目覚める。
散歩がてらコンビニへ行き、帰って食べてまた寝る。
早朝出勤して仕事。
今日は暇そうだなぁ。
仕事中にメールを打つ。
春だから鯛を持っていこう。
あったかいなぁ。
途中で上着を一枚脱いで仕事する。
少し波が高いから入荷は少ないけれどどうせ火曜日だ。
そんなに買われないから良い。
ゆったりと仕事が終って帰宅する。
風呂に入り着替えて。さぁ稽古に行こうか。
電車に乗ってると先生からお電話。
見学者がくるの忘れて生菓子が足りない?
はいはい、と数を聞き途中下車して和菓子屋へ。
立ち寄った所は上生菓子が6種類。
足りないのは5個。
全種1個ずつお願いし、更にその他の菓子をいくつか買った。
ゆったり時間がある中到着して先生に菓子を渡す。
「あら、こんなに沢山?」
「孝弘さん、こういうのもお好きでしょ?」
「そうなのよねぇ」
水屋に入って支度をしよう。
あ。そうだ。
「先生、今日の見学の方はどうされます?」
「ああ別に用意は要らないわよ、椅子だけ出しといてくれるー?」
「ラジャー」
人数分椅子を出して置いた。
しばらくして生徒さんたち到着。
…たち?
「今日は花月よ。折据出して」
しまった、忘れてた。
俺を特訓するの先生も忘れてたよねっ。
まずは八畳平花月、とのことで。
正客と亭主を折据で決める。
折り紙の箱みたいなものの中に表側同じ模様で裏に数字札と月・花の札がある。
一番最初に月を引けば正客で花を引けば亭主だ。
ランダムに決まるため、引いた瞬間ゲッと思ったりもする。
やはり花を引いた人がげんなりした顔をした。
お菓子をいただいてからスタート。
先生にお願いします、と言ってからお正客がお先に、と席入りする。
そのまま続いて皆さん席入り。
八畳の席入りはまだいい。スムーズだ。
さて亭主はまずは迎えつけの挨拶で総礼。
客は全員袱紗をつける。
と言うのもこの後飲む人点てる人はまたもくじ引きだから。
4畳半の中へ移動したら亭主が折据を正客の前に。
一膝斜めに向いてから水屋へ戻り茶碗を持ち点前座へ。
茶碗を勝手側に1手で割付け棗を棚から下ろして茶碗を3手で置き合せる。
水屋に戻って建水を持ち出し踏み込み畳に置いて仮座へ。
正客から折据の中の札を取り伏せて置き、折据を回していく。
亭主も取ったら折据をおいて皆で開く。
花が名乗り、全員が札を折据に入れて返してゆくが、花は数字札と変えて戻し、
数字札を持って点前をしにゆく。
「今回は繰り上げなしで」
と声がかかり、空いた所に亭主が移動する。
茶杓を取れば折据を回し、お茶が点ち次第札を取る。
月・花・松!と札通りに言うが松は今点前した人が言うことになっている。
札を戻して月がお茶を飲み、茶碗を返したら移動。
花が点てに行き、さっき点ててた人が戻って空いた所に座る。
それを3服。
最後は斜めにして折据を回し、末客は茶碗が置かれる場所より下座に置く。
茶碗が出たら札を取り今度は月だけ名乗り取りに出る。
お点前して居る人は客の方を向き折据に札をしまって同じ場所に返す。
末客は折据を取りに行き、札を返してゆく。
お茶碗が帰ってきたら総礼してお点前して居る人は道具の片付け。
お客は元々いた場所に戻る。
その間に棚に柄杓と蓋置と棗を飾り、建水を持ってバックで戻り、
最初に建水を置いた位置に座って置く。
そして四畳半の元いた席へ戻り、亭主が建水を片付け、茶碗を下げる。
正客は折据を持って亭主の取るべき場所に置く。
亭主は水次を持ち出して置いたら客の方を向いて総礼をして折据を回収。
水指に水を足して水次を持って帰ると同時に全員席を立って八畳へ下がる。
亭主が戻ってきて斜めに座ったら総礼。
亭主が帰ったら皆で福佐を外して懐へ入れ、扇子を前に置いて次の人にお先に、と。
挨拶して順々に帰っていく。
皆で水屋で挨拶するところまでが花月である。
9割がた先生の指導が絶え間なく入る。
100回やっても何か良くわからないのがこれである。
なんでやるかって?
今どういう状況でなにをすべきか、というのがすぐにわかるようになるための稽古だ。
なれてきたらゲームではある。
飲む人が3回連続で当たったりする。
急に当たってお点前なんてのも良い鍛錬だとか。
俺は平花月は何とかなるけれどもっと上のほうになるとよくわからないものもある。
3回繰り返してなんとなく、という顔を皆さんしておられる。
最後の一回は見学の方が居られて、凄い凄いーなんて声が上がっていた。
一回目見せてたらダメだったかもしれない。
お稽古を終えて生徒さん方が帰られ、八重子先生と見学の方がお話されている。
今回は先生がお夕飯か。
水屋を片付けて台所の様子を伺う。
「あら終った?」
「はい、八重子先生はまだ話しておられますよ」
「あ、今日泊まらないのよね、ご飯どうするの。もう出来てるから食べて帰ったら?」
「いいんですか? じゃお相伴させていただきます」
「嬉しそうねえ」
「やー帰って作る気にはなれませんものですから」
お台所で一人分を分けてもらいそのまま食べる。
うまいなー。
「食卓で食べたらいいのに…」
「お客様いらっしゃるのではちょっと落ち着きませんし」
「おかわりあるわよ」
ほんの少しだけ貰って食べる。
「うーん帰りたくないなぁ」
「お仕事なんでしょ? だめよ」
先生は俺の頭をわしゃわしゃと混ぜて髪型を崩す。
「なにするんですか、もー」
ぺろりと食べ終えて洗い物を。
「いいわよ、置いといて。皆が食べたときに洗うから」
「すいません」
「じゃ気をつけて帰るのよ」
「はい、ではあさって…も花月ですか」
「そうよ、復習しておきなさいね」
「わかりました」
じゃ、と別れて帰宅して、そして寝ることにした。
花月は疲れる。
おやすみなさい。
翌朝出勤ってやっぱり水曜だなぁ。
お客さんが来ないし売れないし、本当に今日なんて休みにした方がいいね。
いつもなら先生といちゃいちゃ出来るのにな。
もっと忙しけりゃ仕方ない、と思うんだけれどこればっかりは。
稼がなきゃ会うこともできないからな。
仕事が終って、さぁ今日はどうしようか。
と、帰ったら先生が部屋にいた。
「…えーと、ただいま? なんでおられるんですか」
「おかえりなさい。さっきお友達と東京駅でお茶してきたのよ。
 ここまで出たついでだから、だめよ、お掃除ちゃんとしないと」
「う、一応先週掃除機はかけたんですが」
「戸棚の上とか拭いてないでしょ。あとお布団干しちゃったから後で取り込みなさいよ」
「はい。ありがとうございます」
「で。お昼は食べたの? まだなら何か作るわよ」
「あーまだです。何か食いに行きますか」
「ダメよ、お野菜食べないんだから。一緒にお買い物行きましょ」
「んー、いやメシ食いに行ってそのままホテルであなたを食べるほうが」
先生の拳骨が。
「せんせ、せめてパーでお願いします…痛いですってば」
そのままぐりぐりとこめかみを押されて諦めて買物に出ることにした。
「着替えるからちょっと待ってて下さい」
「あら、そのままでいいわよ。すぐそこでしょ」
「あーですがこの格好であなたと並ぶのは。匂い移りもしますし。すぐですから」
ささっとその辺にあったカーゴパンツとシャツを着て、パーカーを取る。
「そういう格好初めて見るわね」
「あなたに逢うときはいつもそれなりの格好してますからね」
お買物に一緒に出て、菜っ葉ものをメインに色々と先生が買う。
何を作る気だろう。
お肉は少し。
帰宅して手を洗って先生は割烹着をつける。
「お野菜洗って頂戴」
先生はフライパンを用意してごま油を落とし、どうやら野菜炒めを作るようだ。
同時進行で大根葉のお味噌汁。
人参葉の胡麻和え。
小松菜の煮浸し。
作ったものの半分は冷蔵庫へ。
「これはお夕飯に食べてね」
ご飯は買物前に先生が仕込んでいたので丁度炊けた。
いただきます。
あ、少し塩強めにしてくれてる。
たっぷりの野菜。少しの肉。
うまいなぁ。
「作るの面倒って思わないんですか?」
「思うときもあるわよー、でもおいしそうに食べてくれるから」
「あー孝弘さん、ほんとうまそうに食べますよね」
「あなたもね。ご飯粒ついてるわよ」
っと手を伸ばして唇の横についてるのを取られて、それを食べられてしまった。
そのしぐさにちょっとドキッとして。
「このまま泊まっていきませんか」
「明日も朝からお稽古よ。それに…明日うちに泊まるでしょ?」
「でもあなたのおうちではそんなに強いことは出来ないから」
「なにするつもりなのよ…」
にっこりと笑ってると怖がられた。なんでだ。
「ご飯食べたら帰るから。だめよ」
「仕方ないなぁ」
食べ終わって、ちょっとお腹が落ち着くまで抱っこして。
抱っこくらいさせろ、とごねたわけだけど。
懐に居るとやはり先生も少しはドキドキするらしくて肌がほんのり紅潮している。
それでも流石の精神力。
「もういいでしょ、帰るわ」
そういって帰っていってしまった。
残念。
やれなかった気持ちを落ち着けるためにと縫い物をする。
ちょっと疲れてきた頃、仕舞って布団を取り入れお昼寝を。
夜、目がさめて作り置きしてもらった野菜類で晩飯を済ませて寝なおした。
翌朝仕事をしてるとメール。
今朝からの雨で梅が散ってないか心配、と言う。
散ってたら散ってたでどこか食事でもしましょう、と返した。
一応休み前ってことでそれなりに荷物は動く。
仕事を終えて飯を食って帰宅。
ざっとシャワーを浴びて先生のお宅へ。
挨拶をして水屋へ。
湿度が高いなぁ、やっぱり。
玄関先の雑巾とタオルを取り替える。
「こんにちは、山沢さん。遅れたかしら」
「ああ、小野さん、こんにちは。まだ余裕ですよ。タオルどうぞ」
「ありがとう、酷い雨ねぇ」
雨ゴートを軽くはたいてハンガーに。
10分ほどの間に残りの4人が来た。
やった、俺抜きだ。
時間になり先生が来て先日の花月の復習。
水屋に篭っていたら引っ張り出された。くそう。
亭主を引いてしまった。
がっくりしつつ亭主を務める。
なんとか間違いもなく花月が終わった。
抜けて水屋にまた避難。
「次回のお稽古日は濃茶付をしますからね」
うーん、濃茶付は難しいんだよなぁ。
「じゃ今日はここまでにしましょう」
「ありがとうございました」
玄関先で皆さん雨ゴートをまとって足元をカバーし、雨の中帰って行かれる。
ん、台所からいい匂い。
「山沢さん、あなたこっちきて」
茶室に呼ばれた。
「二人だけど今から濃茶付花月するわよ。用意しなさい。あなた亭主ね」
うっ、と半歩引いたら睨まれた。
渋々座って挨拶をする。
月と花のみの札の折据を使って濃茶付の稽古。
札を引く意味はなく交互に花と月を繰り返して仕舞い花を先生がして、
そこから終るところまでを俺がした。
何度か叱られて。
「ダメよ、こんなので間違ってちゃ。あなた教える立場にこれからなるんだから」
「すいません」
「最低この二つは教えられるくらいちゃんと覚えなさい」
「はい」
人の気配。八重子先生が部屋に来ていた。
「絹も中々覚えれなかったものねえ、花月は。私だって且座なんかは悩むね」
「することが多くて。勉強会でお稽古するけど私もたまにわからなくなるわよ」
「基本だからね、八畳は。まずはこれちゃんとできるようにね」
「中々覚えられないです」
「花月百遍朧月ってね、5年10年かけてやっと身につくからね」
「聞香は茶碗と逆に回すくらいしか記憶にないです…且座は」
「あんまりやらないからねぇ、あんたが来る日は」
「今度上級の日に来なさい、混ぜてあげるわよ」
「い、いや他の方にご迷惑ですからっ」
「あら、他の生徒さんだって最初はそんなものよ」
「そうだね、来週の月曜、来なさい」
「うぅ…わかりました」
「見学だけにしてあげるから」
「あ、それなら」
ほっとして参加表明する。
「さてと、ご飯の支度、続きしてくるよ。山沢さんは水屋片付けとくれ」
「はい」
「絹は台所に来てくれるかねぇ」
「はいはい」
手早く水屋を片付けて茶室も片付けた。
「山沢さーん、そろそろご飯よー」
よし、こんなものかな。
今日は何だろう。
きっと美味しいものだろう。
食卓に着く。
生姜焼きと八宝菜、お味噌汁、ごはん。
付け合せはきのこのバター炒めか。
お味噌汁は大根だ。
きぬさやも入っている。
おいしいなぁ。
先生は俺の食べてるのをみてニコニコしている、が。あの笑い方は…。
「…先生何に何を入れました?」
「うふふ、わからないならそのまま食べちゃいなさいよ」
いいけどね、うまいし。
綺麗さっぱりすべて食べ終わる。
今日の隠してあるものは八宝菜にナスが入ってたらしい。
律君が首を捻る。
「紫色のものないよ?」
「皮剥いて入れたのよ。見えなきゃわかりにくいでしょ」
なるほどなぁ。
孝弘さんが食べ終わって台所へ食器を返し、洗い物を。
片付けて居ると先生が後ろに立つ。
「どうしたんですか?」
「さっきはごめんなさいね」
「なにがです?」
「お稽古。厳しくしちゃったから」
「普段がこうだから厳しくなるんでしょう。馴れ合っちゃいけない、と思って」
「わかってくれるの?」
そっと先生の手が背に触れる。
温かみを感じる。
「それくらいはわかってます。それに…。
 内弟子が花月で怒られてちゃ様になりませんもんね」
「そうよ、そうなのよ。だからつい」
洗い物が終って手を拭いて居間に戻る。先生も横に。
…お酒、持ってきてた。
「飲むでしょ?」
先生が八重子先生に、その瓶を引き取って俺が先生に注いでそのまま俺のぐい飲みにも。
一口いただく。
う、辛口かこれ。
「お酒、どうしたんです? これ300mlじゃないですか」
いつもこの家にあるのは一升瓶だ。
去年沢山買ったやつとか、料理用とか。
「昨日帰り道の酒屋さんでね、フェアしてたのよ。美味しかったから買っちゃったの」
「先生が飲むくらいならこっちのほうが味がへたれないんでいいんでしょうね」
先生の杯が空いたので注ぐ。
八重子先生も美味しそうに飲んでいる。
うん、やっぱり二人とも辛口がすきなんだよな、俺に比べりゃ。
「あぁ、おいしいわ」
「あんた飲まないのかい?」
「…取ってきていいですか、別の酒」
「あら、口に合わなかった?」
「辛くて。むせそうです」
律君が通りすがりに笑ってる。
しょうがないじゃないか。
台所から割りと甘口の酒をコップに注いで戻る。
「あら、コップ酒? 飲みすぎないでよ」
ゆっくり飲んでると八重子先生があくび。
「先に休ませてもらうよ」
そういってお部屋へ。
それじゃ俺らも呑み終わったら寝ようか、と話す。
ゆっくり飲みながらニュースを見る。
「あら、首都高で火事?怖いわねぇ…」
ゴツい火事だな、大丈夫だったのかな、あの辺の奴ら。
律君が顔を出して戸締りはしたから、と言う。
「そう、ありがと。おやすみなさい」
「おやすみ」
律君が部屋に戻るのを見て少し俺にもたれてきた。
「後二口ほどですね、飲んで寝ますか」
「そうね」
くいくいっとあけてしまわれて、先に洗顔してくるという。
火の始末をして俺も部屋へ入れば先生が着替えている。
化粧を落としてトイレも済ませたようだ。
俺も寝巻きに着替え、布団を敷いた。
上に座ればするり、と身を寄せてくる。
ふふ、可愛いな。
いい気分のまま抱いて寝入って朝が来る。
起き抜けにキスされて朝からしたくなって困らせ、一戦交わして起床する。
先生が朝風呂に入って俺が朝御飯の支度。
八重子先生も起きてきた。
「おはよう。絹は?」
「お風呂です、昨日入り損ねたからって」
「今日どうするんだい? 天候は回復したけど」
「散っちゃってませんかねえ…」
「あそこは期間長いから大丈夫だよ」
「じゃ行きましょう」
「それじゃお弁当の下拵えもするかね」
「はい、なに入れる予定ですか?」
「御節と似たようなもんだけどね、春らしくしようね」
ちらし寿司の稲荷とか桜でんぷで彩を添えていくようだ。
先生がお風呂から上がってきて、律君も起きてきた。
「おばあちゃん、ご飯できた?」
「はいはい、もうちょっとだよ。お父さん起こしといで」
下拵えをしてから朝御飯。
うん、おいしい。
「律、今日はどこ行くの?」
「晶ちゃんとフィールドワーク。三連休だから泊りがけ」
あ、そうか世間は三連休か。
「そう、私達は梅を見に行くからお昼間はいないから」
「結局行くんだ?」
「お天気よくなってるからね」
「お弁当作らなきゃね」
「もう下拵えはしてあるよ」
「あれ、お父さんも連れてくの?」
「どうして? 皆で行ったほうが楽しいじゃない」
食器を下げて洗い物をしたらお弁当の準備。
変な気分だ、食後に飯の支度。
雨が降ったらいけないから絹物はやめとこう、なんて話をされてる。
シルック小紋にしようと仰る。
「おばーちゃん、おかーさん、行ってくるから」
「ハイハイ、気をつけなさいよ」
「いってらっしゃい」
お弁当を作って、着替える。
さあ俺たちも行こうか。
現地へついてルートどおりに進む。
「綺麗ねえ」
「いいですねえ」
「あらこれまだつぼみだわ」
「遅咲きなんでしょうか」
「はらへった」
ハイ、とお饅頭を渡す。
ゆっくり観覧してそろそろお昼に、とござを敷いてお弁当を囲む。
自分も作ったとはいえ、やっぱり美味しい。
孝弘さんも美味しく食べてるので先生も嬉しげだ。
八重子先生がでんぷでピンクに色付けしたおにぎりをくれた。
甘い、うまい。
少しだけお酒もいただいてお重を空にする。
ゆったりと腹ごなしに歩いて残りの梅を観覧。
暖かくて雨も降らないうちに帰れた。
一度帰宅して先生とお買物に出る。
「明日もあなた来るんでしょ、お夕飯何が良いかしらね」
「あ、俺すき焼き食べたいです!」
「すき焼き?」
「鍋にしてもすき焼きにしても一人だとわびしいんでやらないんですよね」
「そうねぇ、そうかもしれないわね。でも律いないときにしたら恨まれるかしら」
「うーん、またしたらいいじゃないですか、居るときにも」
「じゃ明日、すき焼きにしましょ」
「それで今日は何作るんですか」
「今日はねぇ、なにしよう」
野菜の前で悩んでいる。
「あら先生、お夕飯の買物ですか?」
「吉崎さん。そうなのよ~何にしようかと思って」
「山沢さんもお買物?」
「先生の荷物もちで。その代わりお相伴させていただいてます」
「白菜なんか重いでしょ、助かるのよ」
「カサ高いものとかも一人じゃ大変ですしね」
「仲が良くてうらやましいですわ」
ホホホ、オホホと先生たちは会話をしている。
俺は青梗菜が食べたくなっていつ言い出そうかと思って悩む。
吉崎さんがそれでは、と言って肉屋の方へ行った。
「先生、俺、青梗菜の炒め物が食べたい」
「んー、そうねぇ。お肉が良い? 揚げが良い?」
「勿論肉です」
クスクス笑ってわかったわ、と仰って青梗菜を。
「後は何にしようかしら」
「治部煮」
「はいはい、決まりね」
お買物をして帰宅。
「お帰り、なに買って来たの?」
「治部煮と青梗菜の炒め物にするわ」
「あらそう、じゃ支度しようかね」
そしてご飯拵えにかかる。
八重子先生に指示を受けてかぶを適当に切り、椎茸等投入する。
青梗菜とホウレン草を洗って切った。
ホウレン草は湯がいておき、治部煮の皿に投入すべく置いておく。
青梗菜は先生の手により肉と炒めてあんかけに。
「あ。あんかけにしちゃった…」
「あんたばかだねぇ、治部煮をあんかけにしようと思ってたのに」
新たに片栗粉を八重子先生が溶いてるその横で伏見甘長をじゃこと炒めて。
丁度ご飯が炊けた頃全部が出来上がる。
食卓について食べ始めた。
「山沢さん、そんなに野菜嫌いじゃないわよねぇ。なのにどうして食べないの?」
「一人分、色々作るのが苦手なだけですよ」
「そうかねえ?」
「だってホウレン草1把で3食持ちますよ? 他の野菜も食べたいとかになると」
「あ、同じ食材暫く食べることになるのね」
孝弘さんが甘長のじゃこ炒めに手をつけない。
それは青唐辛子の辛くない奴、と言うと手をつけた。
「前に辛いの食べちゃって躊躇するようになっちゃったのよ」
「ししとうですか」
この間俺も当たったよな。
それでも好きなんだよなーじゃこ炒め。
うーん、全部美味しかった、満足満腹!
お夕飯の後お茶をいただいて。
「明日お仕事なかったらこのまま泊まりなさいって言うんだけどねぇ」
「ありますからねー…」
げんなりする
「でも市場の方がお仕事してくれるから私達は新鮮なもの食べれるのよね、仕方ないわ」
「ま、そう思わなきゃやってられませんね」
ふー、っと息をついて気合を入れて帰る用意。
「明日も花月だから。休んじゃダメよ」
「はい」
「休んだりしたら且座の亭主させるわよー」
げっ酷い脅し方だな。
孝弘さんも八重子先生もいないので軽くキスしてやった。
「そんな脅ししなくても…逢いたいから来ますよ」
一気に顔が赤くなった、可愛い、たまらん。
「じゃ、また明日」
「ばか、もうっ。また明日ね」
くすくす笑いながら別れて帰宅する。
すぐに寝ることにした。
朝起きて、また仕事か、と思う。
でもまぁ今日は。先生に逢いにいけるし。
忙しい思いをしつつも何とかこなしてると先生からメール。
いつもの肉屋が休みだからすき焼き食べたければ肉を買って来いとな?
了解していつも買ってる肉の量を聞き、自分の分も足して買って先生のお宅へ。
先にお勝手から入り冷蔵庫に入れて、居間へ。
「こんにちは。冷蔵庫に入れときましたんで、肉」
「あらありがと。今日も花月だけど人が足りないから。私も入るわよ」
「で、私が指導するからね」
「豪華ですね。今日の生徒さんはラッキーだ」
「用意してきて頂戴ね」
「はい」
茶室に行くと台子が出ている。
「先生、台子でされるんですか?」
「あ、仕舞っといて頂戴~、片付けるの忘れてただけよ」
「はーい」
「あ、ねぇねぇ山沢さん、勉強会一緒に行かない? 東貴人仙遊なんですって、次回」
「…絶対無理です」
「あら楽しいのにどうして?」
「短歌とか突発で詠めませんって。その上東が貴人なんて絶対無理」
「あら見学でもいいのよ、行きましょ、ね?」
「絶対に混ぜないと仰るならですよ! 混ざるのは無理ですから」
「うふふ、じゃ予約しておくから」
「っていつですか?」
「今度の火曜日のお昼からよ」
「ここのお稽古は?」
「お母さんが見てくれるわ」
「そうですか。場所はどちらで?」
「ええと、新宿のどこだったかしら。とりあえず駅で待ち合わせなのよ」
「新宿駅で待ち合わせというと。アルタ前?」
「そう、そこ」
八重子先生が戻ってきた。
「ああ、山沢さん来てたのかい」
「こんにちは、お邪魔してます」
「いま山沢さんに勉強会一緒にって言ってたのよ」
「濃茶付で大変なのに大丈夫かねえ」
「や、見学で」
「じゃないと無理だろ」
「だからお母さんお稽古お願いね」
「はいはい」
トイレを借りて、それから水屋に待機していると生徒さんが来始めた。
今日は3人しか集まらない。
やっぱり3連休だからね。
「八重子先生、絹先生、こんにちは」
と皆さんご挨拶。
「今日は他の方お休みだけど花月しますよ」
花月と聞いてみんな微妙な顔をする。
お菓子を運んで食べる。
「あれ、先生も?」
「そう、他の方お休みだから私も入るわよ」
「山沢さんは?」
「入りますよ」
食べ終わったのを見計らって折据をまわす。
月!花!一!二!三!と先生が次客、俺が四客。
八重子先生にお稽古お願いします、とご挨拶。
そして正客からお先にと挨拶を送って座に着く。
今回の亭主は中井さん。
迎えつけの挨拶。すんだら客は袱紗をつけ四畳半へ移動。
「今日は繰り上げするよ」
うっ、ややこしいな。
折据が正客に座った下西さんの前へ。
亭主が仮座に入ったので折据が回りだした。
さぁ初花は誰だ。
一斉に札を開ければ三客の堀田さん。
繰り上げて俺が三客の場所へ、四客の場所へ亭主が来る。
あとは普通に花月だ。
幸い私は何度かで平花月では怒られなくなっていたが、
後の3人は足がわからなくなったり、見とれて動きが遅くなったり。
優しく指導が入る。
俺以外にはすごく優しいよね…。
3回繰り返し、お稽古が終ってご挨拶。
生徒さん達が帰られてご飯の支度を。
「今日はすき焼きだからね、下拵え要らないから楽でいいよねぇ」
「お水屋よろしくね用意してくるから」
「はいっ」
すき焼き♪
にんまりして水屋を片付ける。
仕舞い終わったので食卓を片付けて拭く。
「できたわよ、これコンセント挿して頂戴」
IHのクッキングヒーターか。
1000Wか…ブレーカー大丈夫なのかな。
500Wに設定した上にすき焼きの鍋が載る。
「先生、一応お聞きしますがこの家のブレーカーはどこですか」
「大丈夫よ、この部屋は他よりかなり大きくしてもらったの」
「そうそう、前に何回か落ちちゃってね、それで変えてもらったんだよ」
「ならいいですけどメシ食ってる最中に落ちると大変ですから」
「なんだかんだこの部屋は結構電化製品あるからねえ」
はい、ごはん。と先生がお茶碗を渡してくれた。
「食べましょ」
先生も笑顔だ。
おにくおいしー。麩もよく味をすっている。
しいたけに人参、玉葱も入ってる。しらたきかな、これは。
春菊がうまい。
八重子先生はやっぱり肉少なめに野菜沢山食べている。
お豆腐♪
おいしーーく頂いて綺麗さっぱり。
「〆になにかいる?」
「いや、満腹です」
「お父さんだとこの後うどん入れるのよ」
「ああ、定番ですよね」
ご馳走様をして後片付けを手伝う。
「ご飯に卵とこの汁をかけて食べるのは好きですよ」
と言うと塩分取りすぎ、と背中をつねられた。
「イテテテ、ところで孝弘さんは?」
「律に呼ばれて開兄さんが送ってったのよ」
「あぁー…そうでしたか」
ヘルプだな、そして相変わらず電車に一人じゃ乗れないのな。
洗い物をしていると先生は俺の首を舐めてみたり胸をつついてみたりとじゃれてくる。
八重子先生に見られたら雷落ちるぞ。
「ダメですよ、俺がやったら怒るくせに」
「いいじゃない」
あれだな、律君も孝弘さんも居ないから気が緩んでるな。
「そんなことしてるとここで抱きますよ」
「いじわるねぇ」
きゅっと乳首に爪を立てられた。
地味に痛い。
片付け終わって居間に戻る。
温かいお茶を貰ってコタツで温まる。
ふー、と落ち着くと先生が俺の手を弄る。
それを八重子先生が見ていたようだ。
「さてと、私は寝るから。あんたらもさっさと寝なさいよ」
と席を立ってまだ早い時間なのに部屋へ帰っていかれた。
多分見てられないって奴だろう。
するっと先生が俺の懐に入ってくる。
うぅ、先生の匂い、体温。
「戸締り、しないと」
「あとでいいじゃない」
びくっとなった。先生の手が俺の股間に伸びている。
相変わらずぎこちなくて。
「ぐぅっ…」
そこに爪を立てるのはやめろ…。
「やっと声が出たわね」
「先生、それ、違う。メッチャ痛い…。痛めつけるの趣味ですか」
「あら?」
あいたたた、なんちゅうとこに爪を立てるんだ。
乳首ならまだしも。
「自分のそこ、同じ強さでやって御覧なさいよ。痛くてたまんないと思いますよ」
「そんなに痛かったの?」
「乳首噛まれたときくらいは痛かった」
「ふぅん…じゃ後で噛んであげるわ」
「勘弁してくださいよ…」
クスクス笑ってる。
「ほら、手を離して。部屋行きましょうよ」
カラカラカラ、と玄関の開く音に先生が慌てて飛びのいた。
「おーい、母さんいるかー?」
あの声は覚さんか。
先生をおいて玄関へ向かう。
「八重子先生ならお部屋ですよ、今晩は」
「ああ、こんばんは。もう寝てるのか」
「どうでしょうかねぇ」
そのまま覚さんが八重子先生の部屋に向かう。
居間に戻ると先生がコタツに入って頬を赤くしてる。
「あぁ驚いたわ~」
「こんなとこであんなことするからですよ。さてと」
「なぁに?」
「部屋に布団を敷いてきます。早いけど寝る用意しましょう」
「え、まだ兄さん居るからダメよ?」
「わかってますよ、用意だけ」
ついでに歯も磨いてこよう。
布団を敷いて寝間を整え、寝巻きに着替えて歯磨きし戻る。
居間では覚さんが先生と喋ってた。
先生がお茶を入れてくれる。
横に座ってコタツに足を入れる。温かい。
春とはいえ夜はまだ冷えるからなぁ。
会話を聞くのも楽しい。
先生の声をぼんやり聞いてるのがいい。
覚さんが煙草を吸ってるのを見て先生が一本頂戴、と言う。
「えっ吸うのか?」
「違うわよ、はい、どうぞ」
俺に渡してくれた。
「山沢さん煙草まだ買ってないでしょ?」
「良いんですか?」
「あ、ああ、どうぞ」
「じゃ失礼して」
と一服、久々の煙草がうまい。
しばらくして覚さんがそろそろ、と席を立った。
お見送りして戸締りをする、その玄関でキスした。
「だめよ…ほら、早く火の始末して部屋戻りましょ」
「さっき俺にあんなことした罰に…こういうところで抱かれる、とかどうですか」
「いや…勘弁して、ね、ほら、部屋…」
もう一度キスして引き寄せると先生は抵抗しつつあまり力が入ってない。
抱えあげて寝間へ。
「え?」
「火の始末してきます。今のうちに化粧も落としちゃっててくださいね」
「あ、うん」
お勝手へ行って火消壷とガスの元栓をチェック。
煙草の吸殻も湿してから始末する。
勝手口の鍵を確かめたら寝間へ。
寝巻きに着替えて化粧を落とした先生は…綺麗だ。
ちろり、と耳を舐めると少し声が出た。
「今日は声、出しちゃいますか?」
「いや、お母さんに聞こえちゃうのは」
「孝弘さんとしてたとき、声出してなかったのかな?」
「す、少しくらいは出てたかもしれないけど」
「だったら気にすることはない」
「いやよ…ゆるして、ね、いじめないで、お願い」
「可愛いな、本当に」
そのまま襲って声が出そうで出ない程度に抱いて。
疲れ果てた先生が眠りに落ちた。
可愛いなぁ。と撫でて。でもちょっとし足りなくって。
寝てるのに弄って起こしてしまって叱られた。
叱られてるのに手を動かしていたら反応してて。
「だめっていってるのに、もうっ…」
といいながら俺の腕を噛む。
「もう一度だけ、そうしたら終わりにするから」
最後は少し声が出てしまい、八重子先生に聞こえてないといいけど、と思う。
俺の気分も落ち着いて懐に抱いて寝かしつける。
荒い息が収まり、寝息。
おやすみなさい。
翌朝、中々起きない先生を置いて台所へ。
八重子先生が先に起きてきていて、昨日のことを揶揄された。
やっぱり聞こえてたようだ。
朝御飯はトーストとオレンジジュース、サラダにベーコンエッグ。
「珍しいですね」
「孝弘さんが居るとご飯炊かなきゃだけどね」
なるほどね、この家がパスタ・パン食じゃないのはそういうことか。
朝飯を食って一時間ほどして先生が起きてきた。
「あぁおなかすいた」
「はいはい」
台所に立ってトーストとベーコンエッグを用意する。
サラダとジュースは冷蔵庫から。
「旦那を尻に敷く妻、みたいだねえ」
先生がちょっとむせて、俺は笑ってしまった。
ゆったりとした休みの日を送り夕方、律君たちが帰ってきた。
「じゃ買物行って俺も帰るとしますかね」
「そう?食べて行ったら。お夕飯何にしようかしら」
「晶、何食べたい?」
「うーん、おばさんの肉じゃが好きだな。私」
「あんたは?」
「え、僕? 梅とシソがまいてある奴かな」
「中はささみが良い?お肉が良い?」
「私ささみがいいな」
「晶ちゃんがそれが良いなら僕もそれでいいよ」
「山沢さんは?」
「それでいいですがお野菜足りなくないですか?」
「そうねえ、胡麻和えでもしましょ」
お買物に二人で行って、戻って料理を手伝う。
「ゴマ当たってくれる?」
はいよ、と当たり鉢を取ってごりごりざりざりと。
お砂糖や醤油も入れて。
配膳して食べる。うまいなぁ。
ご馳走様をして食器を洗い、目を盗んで軽く先生にキス。
「さ、そろそろ失礼しますね」
居間へ戻って八重子先生にも挨拶をして、帰宅した。
さて明日は仕事か。
仕事はいいが帰って無人の家でただ寝るだけというのがつまらないじゃないか。
って着物縫わなきゃいけないな、途中にしていた。
あさってはお稽古はお稽古だが新宿か。
帰り、うちにつれて帰れるかな。
だったら明日は掃除もしよう。
布団へもぐり、そんなことを算段しつついつしか寝ていた。
翌朝仕事をこなして帰宅。
連休明けは暇だね。
さあ部屋の掃除と台所やトイレや風呂の掃除をしなければ。
昼を食べて汗だくになりつつ掃除を完了。
もう夕方か。
作業していると時間が経つのが早い。疲れた。
晩飯を買いに出てコンビニで真空の惣菜などを買い、帰宅。
ドアを開けると…先生がいた。
「お帰りなさい」
「……メシ食いました?」
「うぅん、まだよ」
「そうですか、じゃどこか行きましょうか」
「あのね、ここ行きたいの」
と冊子を見せられる。ステーキ特集?
「んー、いいですが予約とかしないと一杯のような気が」
「電話してくれる?」
「はいはい。第一候補はどこです?」
「ここ、赤坂のがいいわ」
電話を取って席があいてるか聞く。
OK、あいてた。
40分後、と予約を入れ電話を切る。
手を洗って着替えよう。
着替えつつ聞く。
「どうして急に?」
「明日、出稽古でしょ。こっちからが近いからいいかなって思ったのよ」
「それなら電話くださいよ。俺がメシ食っちゃってたらどうするんですか」
「あら、それなら何か買いに行って食べるわよ。その羽織よりこの羽織の方がいいわね」
「これのほうが合いますか。あなたは着替えなくても良さそうですね」
「明日着る物はそこに掛けてあるから。あなたはいつものお稽古のでいいわよ」
「はい、じゃトイレ行ったら行きましょうか」
「先に入るわ」
「鞄用意してきます」
玄関先に鞄を置いて先生と交代でトイレに。
「さてと。じゃ行きますか」
「うん」
先生から手を繋いできた。
タクシーに乗って赤坂へ移動。お店の前で降りた。
時計を見れば丁度かな。
入って予約した山沢、と告げると席に案内され、飲み物を聞かれる。
軽いものを選ばねば俺は明日仕事だし先生はお稽古だし。
お勧めのワインをハーフボトルにした。
先生が何を食べても美味しいというのが楽しい。
機嫌良いなぁ。
ご馳走様、と全部食べて幸せそうだ。
お会計をして出ると少し冷えてきている。
さっと羽織を着せると笑ってる。
「何度目かしら、ショールだけ持ってきちゃって寒くなるの」
「さぁ、3回目くらいですかね?」
車を拾って乗せ、家まで帰る。
「あぁおいしかった」
そう言って和室に入り着物を脱ぎ浴衣に着替える。
「あんたも着替えなさいよ」
はいはい。
「で、この後どうするんですか」
「んん? 寝るだけよ?」
「えっちは」
べしっと額を打たれた。
「明日お稽古よ」
「んじゃあ別に布団敷きます」
「どうして?」
「だって懐に居るのに抱けないのは切ない」
「そろそろ慣れて頂戴」
「無理。抱かせろー」
っと床に押し倒した。
「だめよー。あなたも明日お仕事でしょ。どいて頂戴よ」
ごろり、と先生を上にして転がる。
「しょうがないな。じゃ俺の腕から逃れられたら抱かないであげる」
「もうっ、そんなこと言って。あなたが本気出したらどうやっても逃げれないでしょ」
「あははは、確かにそうですね。逃がさないことは出来ますね」
「明日ならいいけど今日はダメよ」
「じゃ、キスして」
「しょうがないわねぇ」
深いキスをたっぷりとしてもらい、手を離す。
俺の胸に手をついて起きた。
「一緒の布団だと危ないから、お布団敷いて頂戴」
「はーい」
布団を敷いて枕を置く。
「お茶入れたけどいる?」
「あ、いただきます」
うーん、おいしい。
先に飲み終えた先生が俺の膝を枕にしてテレビを見ている。
30分ほど見ていまいち、と俺の股間を玩び始めた。
「明日仕事でしょとか断っといて人の、触るのかな?」
「あなたタフなんだからいいでしょ」
「それ以前の問題として触られても嬉しくないんですけどね」
「ふぅん」
そういってるのに触るのをやめない。
「そんなことしてると抱きますよ。それとも。お仕置きのほうがいいのかな」
あ、止まった。
「明日、立つのが辛いほどしちゃいましょうか?」
「…ずるいわ」
「ほら手を離して。シャワー浴びてきてくださいよ」
むくり、と起きて不機嫌そうに俺の手を引く。
「背中流して頂戴」
「はいはい、風呂行きましょ行きましょ」
苦笑して一緒に風呂場へ。
スポンジに泡を沢山作って背中をマッサージするかのように。
段々機嫌が良くなってきた。
そのまま泡を滑らせて胸もマッサージ。
「だめよ。前は自分で洗うから」
残念。
先生が洗い終えて濯ぐ。
髪はどうするかと聞けば明日朝洗うとのこと。
「先に出てるわよー」
と出られて俺はざっと頭も身体も洗う。短髪だからすぐ洗えてすぐ乾く。
浴衣を引っ掛けて居間へ行くと先生がプリン食べている。
「もらったわよ」
うーん、食われた。
いいけどさー。
「太りますよ?」
「やなこといわないでよ、折角美味しいのに」
「食べたら歯を磨いて寝ましょう。布団かベッドかどっちがいい?」
「どっちでもいいわ」
「じゃ客用布団でどうぞ、和室に敷いてありますから」
結局俺の胸にもたれて眠くなるまでテレビを見ていた。
あくびをして歯を磨きに立ち、それからおやすみなさい、と声を掛けられた。
「おやすみなさい」
俺も居間の電気を消して部屋に入り、ベッドへ。

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