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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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三日ほど迷って。
覚兄さんと斐姉さんが様子を見に来てくれた。
「絹、お前、痩せたな」
「ちゃんと食べて寝てるの?」
二人にも心配を掛けてしまって。
「やっぱりしばらくこっちにいようかしら」
「お前だって家のことがあるだろう」
意を決して相談。
「兄さん、あのね。山沢さんから提案があって」
かくかくしかじかと二人に説明、うまく言えたかどうか。
「あら、いい話じゃない。山沢さんは絹ちゃんのこと、よく見てるのねえ」
「うーん。いやいい話とは思うよ。山沢さんの利点がない気がするが、それは本人がそれでいいならいい。それより山沢さんの親御さんやそのほかのことがだな」
「まあそのあたりは今度山沢さんを呼んで話しないといけないわね」
兄さんも姉さんも三人がそれでいいなら、と言ってくれたわ。
少しホッとして。そうね。そうだわ。
あちらのお母様にご挨拶をしなきゃいけないのよね?
「兄さん、ならあちらへのご挨拶はどうしましょう」
「そうだな、本当は長男の俺が行くべきなんだが。お前が行ったら良いんじゃないかと思うんだよな。ずっとお前と暮らしてたようなもんだろう」
まあ、そうなのだけど。私でいいのかしら。
「こんな時にお母さんがいてくれたら聞けたのに」
「まあ、でもこんなときだから山沢さんが結婚する気になったんじゃないのかしらね」
「お前を見るに見かねたんだろうな」
「環には私から言っておくわ」
「じゃあ洸へは俺から言っておくから。山沢さんは次はいつ来るんだ?」
土曜の昼からか火曜の昼から、と答えて気がついた。
「あっそろそろお昼過ぎちゃうわね。だからもうすぐ来るわ」
「今日か。わかった」
「ご飯、まだ用意してないのだけど」
「そこの喫茶店でも行こう。山沢さんには連絡しておきなさい」
「はぁい」
久さんに、喫茶店へ行くと連絡して三人で久しぶりの喫茶店。
なんだか久しぶりにお腹が空いた気がした。
といってもモーニングセットでおなかいっぱいなのだけど。

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二人とも話し合ったり、喧嘩をしたりの5年が経ち。
めっきり私がガチで切れることも先生の嫉妬も最近は少なくなり。
私は京都の拠点を引き払うことにした。
そろそろ東京に定着したといっても良いだろう。
大半が捨てても良い物でトラック1台、集積場を往復するだけで済んだのは幸いだった。
ここを借りて25年、か。
悪友くらいしか泊めたことはなかったな。
半ば物置にしていた自室を引き払った。
しかし築地の自室とて市場の引っ越しで通勤には不便を感じるようになったので、
よくよく相談して豊洲に住み替えることにした。
3LDK+納戸で実質の居住性は変わらず、防音もしっかりしている。
ガレージも近い。良い物件を紹介してもらえた。
月に25万ほど浮くようになり、今後を見越して貯蓄することにした。
いつか先生と二人暮らしするかもしれず、また振られて一人の老後もありうるからね。
先生宅へは電車は乗り換えが増えたのでもっぱら車で通うようになり、
会社にも公認、休出は基本なくなった。
ただ結婚は親からも社長からもせっつかれている。頭が痛い。いい加減諦めて欲しい。
もう50が近いこんな年だぞ。
時折先生と小さな見解の相違があったりもしつつ過ごしているうちに、律君が結婚した。
お弟子さんのお孫さん。
私の立場の説明はほぼ不要、と皆が思ってたのだが実際はお稽古が終われば家族のように扱われている私を見てずいぶんと驚かせることになった。
あと風呂から出たときに三度見くらいされた。
多分、普段の格好からつい男と思ってしまうからだろうが。
そんなこんなで先生には孫が出来て。
青嵐の使っていた体の消費期限が来た。
具体的には腐り始めたというわけだ。
先生にはそろそろ諦めて土に返そうと言ったのだが中々思い切られずに半月。
冬で良かったとは思うがやっと葬儀をした。
八重子先生は孝弘さんという相手がいなくなり少しずつ床に伏せることが増えた。
その頃からしばしば絹さんの兄姉たちが来て八重子先生と話し合っていた。
どうやら先生や開さんの老後を頼んでいるようだ。
律君達もいるとはいえ、母親としては娘の今後が心配なのだろう。
訪問介護が入ってはいるが家事は手伝えない決まりらしく、
先生の手の回らないところを補助することも増えた。
お稽古日も通院のため午前の日を一日減らすことになったがお弟子さんたちは皆さん、ご納得。
じわじわと起き上がれない日が増えて。
ある朝には事切れていた。
苦悶の表情もなかったそうで老衰として医師の死亡診断書も降り、
通夜、葬儀と私も手伝いに入った。
二、三日は覚さんたちが先生についてはくださるし、
夜も泊まられるとのことだがその後が心配になった。
やはりその心配が当たり先生は顔色悪く日に日に痩せて、クマが酷い。
少し迷いはしたが開さんを呼び出した。

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家を広く感じる

そんな冗談を言ったり言われたり、喧嘩をしては仲直りしているうちに律にお嫁さんが来て。
子供も生まれた。
その頃には夫は腐り始めていて律や久さんからそろそろ還した方が良いといわれたのだけど
迷い続けて半月、指が落ちたので葬儀を出すことにしたの。
母も葬儀の後は気落ちしたのか寝付くことが増えて……。

昨日、母の葬儀が終わった。

兄姉達が殆どしてくれて泊まってもくれてるけど明後日からは律と二人。
お嫁さんと子供は居るけど離れだもの。

皆が普段の生活に戻る中、私と律はおばぁちゃんとつい声を掛けたりしてしまう。
この家、こんなに広かったかしら。

久さんが来てくれる日は少し心強くて。

泊まってくれる日は少し眠れる。

昼間は孫を見たりして慰めになるけど夜は一人、この広い家にたった一人。

久さんがしばらくうちへ来ないかとは言うけれど。
母の物を片付けたりもあるから。

中々片付けられなくて、何かひとつ見るたびに泣けてしまうのよね。

数日後、久さんが開兄さんと一緒に話があるって、何かしら。

「先生、開さんと話したのですが私と開さんの籍を入れたらどうかと思うのですが、いかがでしょうか」

そんな、あなたも私を置いていくの……?

「メリットを言いますね。まずは私が四六時中この家に居ても問題化されません。
 常にあなたの補佐をしても誰も文句が言えません。
 あなたのために会社を休んでも家の問題として休めます。」
「僕にとっては信用だね、この年で独身は部屋も借りれないんだ。
 山沢さんと籍が入っていれば部屋を借りられる」

困惑していると、全てはあなたがうまく動くために考えたいんです、と久さんが言った。

「これはまだ開さんとあなただけにしか話してません。
 宜しければ先生のお兄さんやお姉さん方とよくよく相談してみてください」

「うん、今日のところは僕たちは帰るから覚兄さんとか律とか、相談したら良いよ」

今日は違う意味で寝られ無くなっちゃったじゃないの……。

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「そうだ、ちょっといいですか?」
お稽古のあと、久さんに呼び止められた。
どうしたのかしら。

「わかめ酒して欲しいな」
人の来ない部屋でささやかれた。
「お酒にわかめを入れるの?」

久さんがおなかを抱えて笑いだした。
「どうしたの? 何か変なこと言ったかしら」

突然抱き締められて頭を撫でられた。
「なぁに? ねぇどうしたのよ」
「うん、うん、そうだよな。わかんないよな」
一人納得していて私はちょっと不機嫌になった。
それを見て久さんは嬉しそうにキスをする。

「わかめ酒ってのは下の毛をわかめに見立てて股間に酒を注ぐことですよ」
理解ができると急に恥ずかしくなった。
「お酒の中に毛が揺らぐのがね、わかめみたいでしょう」
「…ばか、そんなのしないわ」
「してほしいなぁ。美味しくいただくからさ」
照れているうちに玄関から訪う声。
久さんが身を離して対応に出てくれた。
どうしよう。
してあげる? やっぱり断る?

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暫く平穏な日々が続いたある日の午後。
お宅を訪ねると八重子先生がお稽古をつけていた。
「あら、いらっしゃい」
「こんにちは。絹先生は今日はいらっしゃらないんですか?」
「支部のお稽古よ。あらあんた聞いてなかったの?」
また言い忘れてたようだ。
まぁどうせいてもいなくても手伝うことには変わりないのだが。
手を洗って支度をする。
八重子先生がお昼を食べている間に水屋の用意。
立ち座りはさすがに大変らしく八重子先生がしたにしてはそう整っていなかった。
少し時間があるので自習する。
カタン、と音がした。
「わぁ山沢さんのお稽古してるところ初めて見た。格好良い…」
「それはありがとう。今日は大学はどうしたの?」
「休み。うちだと潮がうるさいからこっちでレポートしようと思って」
「晶ちゃんもお稽古したら良いのに」
「うーん…」
自習を終える頃生徒さんが来はじめ、晶ちゃんは退散した。
八重子先生も席についてお稽古が始まる。
俺が来る日は皆さん初心者に毛の生えたもの、だそうで。
朗らかに和やかにお稽古がすすむ。
少し井戸端会議のようになることすらある。
俺は苦手だが。
先生方は教室運営上避けては通れない。
うんざりしていても笑顔。先生は俺と二人の時に愚痴を言う。

生徒さん達が帰ったら最後に俺のお稽古。
「絹がもうすぐ帰るからそれまでしようかね」
そんなことを言っていたが七時になっても帰らない。
電話が鳴った。
誰かが出てくれたようですぐに鳴りやむ。
茶杓を清めていると律君がやってきた。
「おばあちゃん。お母さんから電話。遅くなるから先に食べててって」
「あらあら。まぁ。何時くらいになるって?」
「十時過ぎるかもって言ってたけど」
「随分遅いな」
「どうしたんだろうねえ」
「カラオケみたいだったよ」
「あー…たまにはしょうがないですよね」
八重子先生に同意を求める。
うんうん、と頷いてお稽古を終え、道具をお片付け。
「夕食どうします?」
「出前でも取ろうと思ってたんだけどどうかねえ」
「そうしますか」
律君と晶ちゃんにも要望を聞いて注文した。
水屋もしまい終えた頃、出前が届いて食事をとる。
風呂に入ったり繕い物をしたり。
晶ちゃんは帰り、八重子先生は疲れからか早々に寝た。
孝弘さんは離れで夜食を食べている。
律君はまだ起きているようだ。勉強だ、きっと。
先生はきっと帰ってきたらすぐ寝るだろうと思い、部屋に布団を敷いておいた。
茶道具の本が棚に有ったので眺めつつ待つ。
時計が十時を知らせた。
そろそろ帰ってくるだろうか。
水屋の本や花月の本を読んで気がつくと十一時前。遅いな。
だが機嫌よく飲んでるときに帰りを待つメールは気を削がれるか。
もう少し待とう。

結局先生は十二時前に帰ってきた。
酒の臭いが濃い。
着替えさせて後始末を引き受け、布団にさっさと寝かせた。
「悪いわねぇ~」
髪のピンを外してやる。
着物を片付け鞄の物を整理し、化粧をとってやった。
気持ち良さげに寝息をたてている。
俺も横に潜り込む。
寝ているのにするりと俺にくっついてきた。
可愛いな。
そのまま寝ていると夜半、股間を触られている気がして目を覚ました。
寝息は聞こえるままだ。
また先生が無意識に触っているらしい。
残念ながら今晩は抱いてないからパッサパサなのである。
擦られると少し痛いんだよなぁ。
手をどけて寝直した。
が、再三、四起こされてしまったのであった。
翌朝は三人して寝過ごし律君を慌てて送り出した。
やれやれとばかり掃除や洗濯をする。
先生は全く使い物にならない。
俺もやることやったら昼寝していいとのことだ。
昼寝するためにまずは買い出しや晩飯の下ごしらえ等を済ます。
それから先生の横に潜り込んだ。願わくば昨晩と同じ理由で起こされないことを。
たっぷりとよく寝て良い匂いに目を覚ます。
先生は布団にいない。
晩飯のようだ。
台所へ向かうと先生に謝られた。
「昨日はごめんなさい、待っててくれたんでしょ」
「構いませんよ、楽しかったですか?」
うん、と嬉しそうにしている。
「あのね、来週の連休。土曜日の昼からあなたの家にいくわ。いい?」
「いいんですか? お稽古は」
「普通のお家は三連休でしょ、生徒さんお休みなのよ」
なるほど。
あれ、でもそのあたりって先生は生理じゃないだろうか。
出来ないことは念頭に置いておかねばならんなぁ。

それから夕飯を食って風呂を使ってから帰宅した。

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