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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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130 -絹-

「山沢さん、お仕事頑張ってるかしらね」
お母さんになんとなく言うと、ふふっと笑われた。
「今週一杯、来ないからさびしいのかい?」
「そりゃそうよ…週の半分はきてくれてたんだもの」
「きっと山沢さんもそう思ってるよ」
「そうかしら?」
晩御飯の支度をして、お父さんを呼んで律は今日も遅くて。
そろそろ大掃除を手伝ってもらいたいのに。
買出しもしなきゃいけないわね。
「あなた、おかわりは?」
「くれ」
この人は、山沢さんとのこと気づいているのかしら。
わからない振りをしてくれているのかしら。
「ただいまぁ」
律が帰ってきたわ。
「お帰り、ご飯できてるわよ、手を洗ってらっしゃい」
律にもご飯の用意をしてお母さんにお茶を入れる。
「ごちそうさま」
ご飯を4杯。お父さんはいつもどおりに食べて部屋に帰って、
入れ違いに律が食卓についた。
「あれ、今日は山沢さんは?」
「あらあんたに言ってなかったかしらね。今週はお仕事忙しいんですってよ」
「へー寂しい?」
どきっとした。
「寂しいねえ、いつもいるからねぇ」
お母さんが代わりに言ってくれた。助かったわ。
「山沢さんって格好いいよね。開さんとは違う意味で。でも女の人なんだよね」
「そういえばあんた、前に山沢さんの胸見ちゃったろ?」
「あぁー有ったよね、そういうこと。あの人気にしてなくて吃驚したよ」
「開に見られても気にしてなかったからねえ」
そういえば兄さんも山沢さんの胸を見たのよね…。
兄さん、山沢さんに手を出したりしないかしら。
私のってわかってて取ったりする様な人じゃないけど…心配だわ。
「お母さん、山沢さんっていくつなの?」
律に聞かれて驚く。
「あら?そうねえ、確か35歳だったかしら?」
「えっ40代じゃなかったの?」
「あの人若く見えないよねえ、でも実は子供っぽいというか」
「そうよね、甘えん坊なところもあって面白いわよねぇ」
「ええっ?そんな風には見えないな」
そういえば若い時は10歳年上の人が凄く大人に見えたわねえ。
自分がその年になるとそうじゃないのがわかるんだけど。
「母さん、なんか食べるものない?」
「あら。開、どうしたの?」
「財布落とした…いま探してるけど。環姉ちゃん今日は帰れないって言うから」
「開さん開さん、山沢さんっていくつくらいだと思います?」
「20代かな?どうして?」
「今ねえ、律は40代って言ったのよー」
はい、とお茶碗にご飯をついで兄さんに渡す。
「で、いくつなの?」
「多分35歳だったと思うわ」
「えっ意外だなあ」
「いやもうてっきり、お母さんと同じくらいの年だから僕に見られても
 大丈夫なんだと思ってたんだよねー」
「ああ、それはそうだな、僕も見たけど普通だったしね」
「よく考えたら開とも年は釣り合うよねえ」
「母さん?」
「おばあちゃん、駄目よ。それは」
「ちょっと年開きすぎてない?一回り違うんじゃないの?」
「あら、昔は一回りなんて普通だったんだから大丈夫だよ。
 山沢さんが開のお嫁さんだったらお教室も続けれるじゃないの」
「それは山沢さんが嫌がるんじゃないかな」
「なんだい?開、あんた山沢さん苦手かい?」
「いやそうじゃないけど…見た目がホモ?」
律が大笑いしてお母さんが考え込んで一旦この話は流れてほっとしたわ。
夜、戸締りをして寝る支度をすませて居間に行くとお母さんが繕い物をしていた。
「明日山沢さんの家に行ってて何かつまめるものを用意してあげたらどうだい?」
「どうせだから洗濯とお掃除もしてあげたほうがいいかしら?」
「そうだねえ、手が回らないだろうから。してあげるといい」
「じゃ、律が出たらうちのことをして、それから」
「ああ、うちのことはあたしがするからいいよ、行っといで。洗濯があるだろ」
「いいの?」
「洗濯物を取り入れて畳むまでやってあげないと取り入れる気力もないとは思うけどね」
「あら、そうねえ。帰るの遅くなっちゃうわ」
「構わないからちゃんとやっといで」

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