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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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暫く平穏な日々が続いたある日の午後。
お宅を訪ねると八重子先生がお稽古をつけていた。
「あら、いらっしゃい」
「こんにちは。絹先生は今日はいらっしゃらないんですか?」
「支部のお稽古よ。あらあんた聞いてなかったの?」
また言い忘れてたようだ。
まぁどうせいてもいなくても手伝うことには変わりないのだが。
手を洗って支度をする。
八重子先生がお昼を食べている間に水屋の用意。
立ち座りはさすがに大変らしく八重子先生がしたにしてはそう整っていなかった。
少し時間があるので自習する。
カタン、と音がした。
「わぁ山沢さんのお稽古してるところ初めて見た。格好良い…」
「それはありがとう。今日は大学はどうしたの?」
「休み。うちだと潮がうるさいからこっちでレポートしようと思って」
「晶ちゃんもお稽古したら良いのに」
「うーん…」
自習を終える頃生徒さんが来はじめ、晶ちゃんは退散した。
八重子先生も席についてお稽古が始まる。
俺が来る日は皆さん初心者に毛の生えたもの、だそうで。
朗らかに和やかにお稽古がすすむ。
少し井戸端会議のようになることすらある。
俺は苦手だが。
先生方は教室運営上避けては通れない。
うんざりしていても笑顔。先生は俺と二人の時に愚痴を言う。

生徒さん達が帰ったら最後に俺のお稽古。
「絹がもうすぐ帰るからそれまでしようかね」
そんなことを言っていたが七時になっても帰らない。
電話が鳴った。
誰かが出てくれたようですぐに鳴りやむ。
茶杓を清めていると律君がやってきた。
「おばあちゃん。お母さんから電話。遅くなるから先に食べててって」
「あらあら。まぁ。何時くらいになるって?」
「十時過ぎるかもって言ってたけど」
「随分遅いな」
「どうしたんだろうねえ」
「カラオケみたいだったよ」
「あー…たまにはしょうがないですよね」
八重子先生に同意を求める。
うんうん、と頷いてお稽古を終え、道具をお片付け。
「夕食どうします?」
「出前でも取ろうと思ってたんだけどどうかねえ」
「そうしますか」
律君と晶ちゃんにも要望を聞いて注文した。
水屋もしまい終えた頃、出前が届いて食事をとる。
風呂に入ったり繕い物をしたり。
晶ちゃんは帰り、八重子先生は疲れからか早々に寝た。
孝弘さんは離れで夜食を食べている。
律君はまだ起きているようだ。勉強だ、きっと。
先生はきっと帰ってきたらすぐ寝るだろうと思い、部屋に布団を敷いておいた。
茶道具の本が棚に有ったので眺めつつ待つ。
時計が十時を知らせた。
そろそろ帰ってくるだろうか。
水屋の本や花月の本を読んで気がつくと十一時前。遅いな。
だが機嫌よく飲んでるときに帰りを待つメールは気を削がれるか。
もう少し待とう。

結局先生は十二時前に帰ってきた。
酒の臭いが濃い。
着替えさせて後始末を引き受け、布団にさっさと寝かせた。
「悪いわねぇ~」
髪のピンを外してやる。
着物を片付け鞄の物を整理し、化粧をとってやった。
気持ち良さげに寝息をたてている。
俺も横に潜り込む。
寝ているのにするりと俺にくっついてきた。
可愛いな。
そのまま寝ていると夜半、股間を触られている気がして目を覚ました。
寝息は聞こえるままだ。
また先生が無意識に触っているらしい。
残念ながら今晩は抱いてないからパッサパサなのである。
擦られると少し痛いんだよなぁ。
手をどけて寝直した。
が、再三、四起こされてしまったのであった。
翌朝は三人して寝過ごし律君を慌てて送り出した。
やれやれとばかり掃除や洗濯をする。
先生は全く使い物にならない。
俺もやることやったら昼寝していいとのことだ。
昼寝するためにまずは買い出しや晩飯の下ごしらえ等を済ます。
それから先生の横に潜り込んだ。願わくば昨晩と同じ理由で起こされないことを。
たっぷりとよく寝て良い匂いに目を覚ます。
先生は布団にいない。
晩飯のようだ。
台所へ向かうと先生に謝られた。
「昨日はごめんなさい、待っててくれたんでしょ」
「構いませんよ、楽しかったですか?」
うん、と嬉しそうにしている。
「あのね、来週の連休。土曜日の昼からあなたの家にいくわ。いい?」
「いいんですか? お稽古は」
「普通のお家は三連休でしょ、生徒さんお休みなのよ」
なるほど。
あれ、でもそのあたりって先生は生理じゃないだろうか。
出来ないことは念頭に置いておかねばならんなぁ。

それから夕飯を食って風呂を使ってから帰宅した。

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