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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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居間でゆったりと時を過ごす。
先生がさっきから俺の膝に手を置いたままだけど。
寂しかったのだろうか。
そんなわけないか、一週間じゃ。
「あ。久さん、買物行かない?」
「いいですよ」
家を出ると買物じゃない方向へ行こうとする。
「ん?」
「あっちの家、ちょっとだけ…」
珍しいこともあるもんだな。少し驚きつつ新鮮だ。
部屋は寒くて慌てて暖房を入れる。
ストーブの傍に座らせると俺にくっついてきた。
「あの、したいんじゃないの。こうしててくれる?」
「なんだ、したいのかと思った」
「違うわよ。ちょっと恋しくなっただけ…」
可愛いとこあるなぁ。
「お母さんの前でこんなこと出来ないでしょ、だから」
ほんの30分ほどで良いらしい。
ゆったりと撫でられるがままになっている。
暫くして落ち着いたらしい。
「いい加減買物行かなくちゃ怪しまれるわね」
「その前に髪を整えたほうが良い。乱れてるよ」
「あら? あらら、やだわ」
パタパタと洗面台の前に行って直している。
ストーブを切って玄関の草履を整えておいた。
珍しく脱ぎ散らしてあったから。
先生が俺の着付けを直してくれて、それから買物へ。
「何する予定ですか?」
「筑前煮をメインにするつもりよ」
菊菜のおひたし、あとは肉を焼いて白ネギを付け合せに。
「あなたいると高いお肉沢山買えて良いわ」
「いつもはそんなに買わない?」
「律はそんなに食べないからちょっとだけって買いにくいのよ」
「あぁ。確かに少しだけってなるとスーパーでついでに買っちゃいますね」
「そうなのよね」
あれやこれやを買って重いものは俺が持つ。
「っと危ない」
先生の横を自転車がすり抜けた。
あー、スマホしながら乗ってやがる。事故起こすぞ、あれ。
「吃驚したわ…」
「大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫よ。帰りましょ」
俺の腕握ったままなの自分で気づいてなさそう。
信号待ちをしているときに荷物を持ち替えようとしたとき、やっと気づいたようだ。
慌てて離して荷物落としそうになって。
笑ってたら怒られた。
「両方持ちますよ。ほら」
太腿をちょっとつねられたが両手に荷物で帰宅した。
「おかえり」
「ただいま」
「戻りましたー。もう支度しちゃいます?」
「そうしてくれる?」
先に台所へ行ってごぼうとレンコンの下拵えをする。
こんにゃくもちぎって塩で揉み、水が出てくるのを待つ間に湯を沸かし里芋を剥いた。
里芋をゆで、別の鍋でこんにゃくを湯がくその間に椎茸を戻す。
後は細々と切っていると先生がやってきた。
「どう?」
「そろそろ里芋、良いかも」
「じゃ炒めましょ」
切ったものから順次先生が炒めて、俺は菊菜を洗うことにした。
段々おいしい匂いがしてくる。
洗い終えるとあたり鉢とゴマを渡された。
二人いると手際がよくなるな。
律君のお嫁さんが来たら三人に。捗りそうだ。
それとも日々交代か。
後は肉を焼くだけになって先生は一旦台所から去っていった。
明日の用意を確認してくるらしい。
ネギを切って肉を焼く。
ん、うまそうな匂い。
「ただいまー」
律君も帰ってきた。
「手を洗ってらっしゃいよ、もうご飯だから」
先生の声が聞こえる。
ご飯が炊けた音がして先生が戻ってきた。
交代し、お櫃に入れて出す。
台所と往復し、先生が盛り付けたものを食卓に並べた。
「おいしそうだねえ」
「ですよねー」
「めし」
「もうちょっと待ってくださいね」
並べ終えて先生が戻ってきて。
いただきます!
肉うめー。筑前煮うめー。菊菜もうまい。
やっぱり味付けは俺より先生のほうがうまいなぁ。
おいしく頂いてごちそうさま。
洗い物を終り今へ戻ると先生がいない、
風呂に入ったそうだ。
「一緒に入ってきたら?」
「あ、そうします」
いそいそと風呂に向かいぱぱっと脱いで戸をあけた。
「きゃっ」
「…ん? どうしました?」
「あ、久さん。…吃驚させないでよ」
中に入って閉め、軽くキス。
「ん……だめ…」
「後で少ししましょうね」
「はい…」
先生の体を優しく洗ってやると気持ち良さそうにしている。
少し欲情もしているようだ。
「お風呂、あがったら先に布団敷いて待ってて。戸締りするから」
「わかったわ」
お湯に浸からせてその間に俺もざっと洗う。
濯ぎ終えて先生の入ってる所へお邪魔するとペタペタと手を這わせてくる。
「くすぐったいなぁ。どうしたのさ」
「もうちょっとだけ」
「でもそろそろ出ないとのぼせるよ?」
ふぅ、と息をついて先にあがるわ、と出て行った。
もう暫く浸かって俺も上がる。
ざっと拭いて寝巻きを羽織り、居間に声を掛けると八重子先生が続きに入る。
「あ、先に寝かせてもらって良いですか? 戸締りはしておきます」
「いいよいいよ。じゃおやすみ」
「おやすみなさい。お先です」
その足で玄関やお勝手の鍵を確かめ、居間以外の火の始末をした。
律君に声掛けをする。
年をとると風呂は怖いからね。
それから部屋に入ると明かりを落としてランプのみ点けて先生が待っていた。
「お待たせ。寒くない? 布団入ってたらよかったのに」
「一人で寝たくないもの…」
そういいつつ伊達締めをほどいて俺を誘う。
明日のことを考えると軽くにしておかねばならん。
布団に入れて電気をすべて消した。
求められるままに唇に、乳首にキスを落として行く。
股間に手を差し入れると随分と濡れていて指が中へ吸い込まれる感覚だ。
声が出そうなのはキスで防ぎ微かなうめき声を楽しむ。
シーツを掴んで耐えてるのが愛しい。
「孕ませたくなる…」
ついこぼした声に反応したようで俺の背に腕を回してきた。
「…ほ、しい」
微かに聞こえ、足が絡みつく。
背中を引っ掻き傷を作りつつ二度三度と逝かせると眠たげだ。
「そろそろ寝るかい?」
軽く頷く。
股間を綺麗にしてやって寝巻きを整えて寝かしつけた。
明日のために軽く済ませたから何とかなるだろう。
幸せそうな寝顔を見ているうち、眠くなった。
俺も寝よう。
朝起きて普段のように支度をして先生を起こす。
今日はお寝坊はしてもらっちゃ困るんだよ。
ぼんやりしている先生を着替えさせて食事を取らせ、髪結いさんに送り込んだ。
八重子先生と着物の用意を点検してバッグの中身の点検。
暫くして先生が帰ってきた。
「さてと。着替えてくださいねー。あ、綺麗」
「ありがと。お母さん、着物どうかしら」
「出してあるわよ」
「じゃ久さん手伝って頂戴」
「はい」
一旦脱いで長襦袢から着直す手伝いをする。
次は八重子先生をお手伝い。
流石に二人掛り、綺麗に納まった。
トイレに行ってから三人で連れ立つ。
先生方を道場で下ろして俺は帰宅の予定だ。
「シートベルトちゃんとしてくださいね」
「はいはい」
二人ともちゃんとつけたのを確認してから安全運転で送り届ける。
夕飯はどこかで食べてから帰ると言うのでそのつもりで。
帰宅後、暇なので縄を3本煮る事にした。
たっぷりの湯を二つ沸かし、煮て行く。
薄い飴色になっては捨て、沸いたほうに縄を移し、新たに湯を沸かす。
繰り返して色が出なくなったら今度は干す作業。
ベランダに日よけを出し端から端へ渡しかけて干す。
これでよし。
鍋の始末をして、寝た。
夕方、携帯の音に目が覚めた。
先生からだ。
夕飯のお誘い。
了解して先生方に格を合わせたものに着替え、指定された場所へお迎えに上がる。
喫茶店の中を見回す。いた。
「お待たせしました」
「早かったねえ」
「お疲れ様です。どうでした?」
「緊張したわ~」
車に回収して先生の食べたいものを伺った。
天麩羅、ということでホテルへ予約を入れる。
信号待ち、バックミラーを見る。先生、綺麗だなぁ。
「ねぇ明日あなた来るの?」
「伺います。お昼からになりますけど」
「そう、ならいいわ」
席に着いて少しお酒も頼んで。
俺は飲めないけれど楽しく食事を頂いた。
先生のお宅まで送り、すぐに引き返す。
泊まって行きたいのは山々だが明日も仕事だからね。
来週一杯ずっと初釜みたいなもんだから、先生は暫く俺の相手も出来かねるし。
あれ? ん、もしかして。
再来週って先生は生理か?
…適当な日に軽くでもさせてもらわなきゃ持たないかも。
俺は別に最中でも良いけどさ。
嫌がるからなぁ。
帰宅して縄の具合を見る。順調。
疲れた、眠い。今日は寝よう。明日も忙しい。
おやすみなさい。
そして朝になり仕事へ。
それなりの忙しさで帰宅してすぐに着替えて電車に乗った。
先生のお宅に着くと古株のお弟子さんが水屋をしておられる。
昨年のように指示通り水屋を回して。
なんとか間違いもなく終りそうだ。
生徒さん方が帰って行かれると先生が水屋の皆を呼んだ。
先生のお手前でお菓子と濃茶を頂き、散会。
美味しかった。
水屋の皆さんも帰られて後は先生とお片付け、の前に。
先生に頼まれてお薄を点てた。
八重子先生にも一服。
「美味し…。そろそろ片付けましょ」
とっとと片付けてしまわねば、晩飯の支度もある。
手早く始末をして居間で一服していると先生のあくび。
「飯、作りましょうか?」
「んー、お願いー」
そのまま座布団を枕にして寝転んでいる。
まぁ、良いか。
「私は部屋で寝てくるよ。あと頼んだよ」
「はーい」
その前にと先生の帯を解き毛布をかけてあげた。
帯枕が当たって結構寝にくいんだよね。
台所に言って冷蔵庫の中を確認する。うーん。買物ちょっと行ってくるか。
一応先生の耳にその旨囁き戸締りをして移動。
肉や野菜などを買って帰った。
あれ? 開いてる。
あ、この靴。律君が帰ったのか。
居間を覗くと先生はまだ良く寝ている。
よし、作るか。
手早く食事を作ってご飯が炊けたら孝弘さんと律君を呼ぶ。
先生は後回しでいい。
腹が減れば起きる。
「お母さん起こさなくて良いの?」
「ちゃんとおかずもご飯も除けてあるから大丈夫だよ」
だったらいいか、と食べ始めた。
二人がご馳走様をしたので洗い物をしていると上っ張りを引っ掛けて先生が起きてきた。
「おなかすいたわ…」
「はいはい、待ってて」
味噌汁とおかずを温めなおし、ご飯をよそって俺の分と出した。
ちょっとぼんやりしたまま先生は食事を取っている。
疲れたんだろう。
転寝の間に頬に皺がついている。
時間をかけて食べ終わり、まだ眠そうなので着替えさせて布団に入れた。
八重子先生の分は冷蔵庫にある旨書き置いて俺は帰宅。
明日は久々のお稽古だ。
うちへ帰ると良い感じで眠くて布団に潜り込む。
アラームに起こされる朝。
もう少し寝ていたいが仕方ない。
着替えて出勤するもやはり今日からは暇で早めに帰宅できた。
飯を食ってゆっくり風呂に入りそれから先生のお宅へ。
「こんにちは」
「あ、いらっしゃい。早く用意して」
「はい」
昨日の初釜に来られなかった方の為に茶事形式で、ということだった。そうだった。
すっかり忘れてゆっくり来てしまった。
去年やったように支度をして、生徒さんを待つ。
つんつん、と背をつつかれて振り返ると先生が俺の口になんか入れた。
あ、お干菓子。
うまい。
頭をなでて茶室に戻って行かれた。暫くして生徒さんがいらっしゃってお稽古開始。
お菓子を出したり濃茶を点て出したりと先生の指示に従う。
炭の手前を拝見するのも楽しい。
今日はこれで、と声がかかったのは4時ごろ。
皆さんが帰られてから俺へのお稽古。
忘れているところが沢山あり、手厳しく直された。
「あさっても今日と同じだから忘れないで頂戴、水屋。もう指示しなくても動けるでしょ」
「う、はい…」
「わからなきゃ教えてはあげるけど」
「お願いします」
「さ、仕舞って頂戴。ご飯の支度手伝ってくるわ」
「はい。お稽古ありがとうございました」
先生と挨拶を交わして仕舞いに掛かる。
「あ、そうだ、久さん。今度の日曜なんだけど」
「はい?」
「お芝居行く約束しちゃったのよ~ごめんなさい」
「あ、お友達ですか?」
「そうなの。だからその、土曜日も…ごめんね」
「あぁ。いいですよ、かまいません。今日少し長めに良いですか?」
「それでいいなら」
ほっとした表情でそそくさと台所へ行った。
ま、たまにはね。お友達とも遊びに行きたいだろうし。
しょうがない。
片付け終えて台所に顔を出せば孝弘さんを呼んできてと仰る。
はいはい、と離れに行くとメシか? と先に聞かれた。
「もうそろそろご飯が炊けるそうですよ」
「ん」
のそのそと後をついてくる。
今日のメシはなんだろう、楽しみだ。
「律ー、ご飯よー」
「はーい」
先生の声が聞こえる。
家でご飯を取りたがる男子大学生はやっぱり珍しい。
食卓の上はいつものように和食だ。
一汁三菜以上かならず作るのは仕事を持つ女性としてはすばらしい。
美味い。
飯を食ったら後は半衿をつけたり足袋をつくろったり。
夜が更けて風呂に入り共に布団に潜り込む。
気恥ずかしそうなのはいつまでたっても変わらない。
ゆっくりと楽しみ気持ちよくさせて。あくびが聞こえる時間になった。
胸に手を這わせつつ寝かしつける。
「あなた、本当におっぱい好きよね…」
「やわらかくて好きなんだけど……腹のほうが良い?」
「お腹はやめて」
「じゃあここは?」
恥丘のふくらみや尻を触る。
「こら、もう。寝なさいよ」
「もうちょっと駄目? したくなった」
「ばか、もう、ん、こら」
「可愛いな。ね、好きだよ」
「やだ、恥ずかしい」
もう一度だけ、と抱いて。
し終わって眠たげなのをなでているうちに寝息。
今度は胸を触っていても眠気が勝ってしまったようだ。
気持ち良さそうな寝息に愛しくなる。
俺だけのものにしたくなっていつも困るんだよな。
キスマーク一つ、つけられないんだから。
溜息を落として寝ることにした。おやすみなさい。
翌朝、律君を送り出して掃除に掛かる。
俺は茶室から。先生は先ずは洗濯物。
昼を食べたら風呂の掃除。
トイレは流石に先生が掃除されるのを嫌がる。
終ったら庭お願い、の声に上着を着て庭箒を掴む。
箒目を付けつつ枯葉を集めた。
それが終ると八重子先生がお茶を入れてくれて少し休憩。
「ねぇ。この間あなた言ってたけど妊娠は無理だと思うの」
「へ? 何の話です?」
「覚えてないの?」
「そりゃあ無理だねえ」
「私を妊娠させたいって言ったじゃない」
「あぁ。そういえば言ったような。無理じゃないですけどね、今の科学じゃ」
「えぇっ!?」
「嘘だろ?」
「あ、ご存じない?」
「どうやってするのよ、ないのに」
「皮膚から作れるんだそうですよ。精子」
「えっ皮膚ってこの皮膚?」
「そう、それで卵子と受精させて体内に戻す」
「へぇー、今の医学って凄いもんだねぇ」
「ま、でも先生だと高齢出産にもなりますし世間体も有りますし。無理ですね」
「そうよ、無理よ。諦めて頂戴」
「はい」
「やっぱり欲しくなるものかねぇ」
「八重子先生だって覚えありませんか」
「それはまぁ、ねぇ。…あ、あんたが産んだら良いじゃないの」
「いやいやいや、それは誰の子だって話になりますでしょう」
「うーん、開とか」
「律君だと思われたら困ると思いませんか」
「困るね、それは」
「それに久さん子供苦手よね」
「とっても苦手です」
「なのに子供欲しいの?」
「あなたのなら」
あ、先生の耳が赤い。
「掃除、しましょ」
照れくさかったのか慌てて立って箒を取りに行ってしまった。
可愛いなぁ、とニヤついてると八重子先生に髪をまぜっかえされた。
「さてと。雑巾とって来ます。廊下やりますんで」
「はいはい」
とぎ汁の桶と雑巾で廊下を拭き清める。
素足で歩くの二人しかいないのに結構汚れるもんだね。
玄関の上がり口を拭いてるときに来客。
「ごめんくださ、あらまぁ山沢さん」
「あ、こんにちは、先生ですか?」
「えぇ、いらっしゃるかしら」
「ちょっとお待ちください」
広間を掃除中の先生に来客を告げる。
お通しするよう言いつかって先生は手を清めてから、と洗面所へ。
小間へ案内して先生とすれ違いに手を洗いに行き、お茶を煎れて出した。
それから掃除の続き。
板のところはすべて拭き終えた。
残りのとぎ汁は植木にやろう。
庭に出て撒いてると先生が呼んでいる。
「はい?」
「悪いけど広間もお願い。ちょっと出てくるから」
「あ、はい」
「早めに帰ってくるわね」
くしゃっと頭を撫でて外出されてしまった。
やれやれ、張り合いがないことだ。
撒き終えて中へ上がる。やっぱり多少は暖かい。
さてどこまでやってたのかな。
はたきはもうかけてあるようだ。箒が途中か。掃き清めて雑巾で畳を拭く。
八重子先生は花を活けているようだ。
茶花とは違い、鮮やかに派手に。
「広間終りましたー」
「ありがと」
「お茶かコーヒーいります?」
「うーん、コーヒー頼むわ」
「はい」
台所でコーヒーを二つ。俺はエスプレッソをダブルで。
「どうぞ」
テーブルの上にお砂糖も出して。
玄関の開く音、ただいまの声。
「お帰りなさい、コーヒーいります?」
「作ってー、ああ寒かった」
一散にストーブの前で手をあぶっている。
先生の分も作ってお砂糖も入れて混ぜて渡した。
「あぁ、おいしいわぁ。表寒いわよ~」
「でしょうね」
ふぅふぅ言いながらコーヒーを飲む姿は可愛くて。
半分ほど飲んでやっと落ち着いたようでコートを脱いだ。
おこたへ座って俺の手を掴む。
「あったかい手してるわよねぇ」
「手が温かい人は心が冷たいんだそうですよ」
「あら。そうかも?」
「同意しますかー、そこ」
八重子先生がウケている。
先生もクスクス笑いながら晩御飯の献立を相談し始めた。
すぐに決まったが先生が少し嫌そうな顔をした。
「寒いから行きたくないんでしょう?」
「あら、わかっちゃう?」
「俺行って来るから書いてください。上着取ってきます」
「お願いするわ」
廊下に出ると先生が八重子先生にちょっと叱られてるようだ。
ジャケットを取って戻るしょんぼりとして私も行く、と言い出した。
「いいからメモ書いて。俺は防寒万全だから大丈夫」
「でも…」
「八重子先生、先生は置いて行きます。外寒いですから」
「まったくあんたは過保護なんだから」
「メモ書かないんだったら後で電話します」
「あ、ちょっと待って、書くわよ。待って頂戴よ」
慌てて書いたメモを貰い買いに出る。
八百屋の近くでメモを見ると本当に慌ててたようで中々読みにくい。
それでも悪筆に慣れてるからまぁ読める。
指定されたものと別にプリンやチョコを買って帰宅した。
「戻りましたー」
「お帰りなさい…あの、読めた?」
「メモ? これでよかったかな」
買物袋の中身を点検して先生が微笑む。
「またプリン買ってきたの?」
「あなたも好きでしょう?」
嬉しそうな顔してるね。こんなことでも。
軽くキスしてみたらダメと言われた。
「ごはん、しないと…」
「はいはい、脱いできますね」
少し顔が赤いまま先生はお米を洗い始めた。
俺は部屋に戻って着替えたらお台所のお手伝いだ。
支度をしていると俺が少々ちょっかい出しても軽くいなされる。
お稽古中でもそうだが、切り替えが上手だ。
「そろそろお父さん呼んできて」
「あ、はい」
呼びに行って戻ると丁度律君が帰宅した。
八重子先生がお膳を拭いている。
配膳して夕飯を頂く。うまい。幸せ。
食後、洗い物を片付けてから帰ることにした。
先生が引きとめようとするが、諦めもまたいつもながらに早い。
「また明日、お会いしましょう」
そう言うと少し俺の袖を握り帰したくなさそうにしてるが、了見して離す。
そんな先生が可愛くて攫って行きたくなった。
苦笑して別れて帰宅。
翌日仕事が終わり次第すぐに先生のお宅へ。
火曜日にやったことと同じなのでさすがに手際よく動けたが、お稽古は散々で。
先生にやっぱり叱られて悄然と帰宅した。
土曜の仕事は忙しく、少し遅れて先生のお宅に着いた。
先生は今日はやや開放感からか朗らかで、お稽古もそんなには叱られなかった。
飯を食って風呂に入って部屋に入ってからも楽しげに俺にくっついてくる。
今日はしないで欲しい、と言われてたから我慢する気なのだが。
自分から俺の手を胸にやったりするのは何だ、からかっているのだろうか。
「して良いんですか?」
「え? しないの?」
「…明日お芝居見に行くからしないでって言ったじゃないですか」
「あら? そうだった…、きゃー、明日の用意してないっ」
慌てて俺の懐から飛び出て箪笥から着物を選びに行ってしまった。
「いや、待って。こら、上着!」
寝巻きのままじゃ風邪引くっての。
綿入れを着せて着物選びに付き合ってると律君が覗きに来た。
「こんな時間にどうしたの、お母さん」
「明日ほら、お芝居行くっていってたでしょ。それ忘れてたのよ」
これどうかしら? と聞きつつ決めて、後はバッグの中身の点検をしている。
律君は納得したらしく部屋に帰っていった。
「あ、お金出してないわ…久さん、どれくらい持ってる?」
「ひゃく」
「ええ、と。5万円くらい貸してくれるかしら」
「10持って行ってください、一応ね」
「悪いわ、そんなの」
「足りないの、恥ずかしいでしょう?」
「あんまり持ってるのもおかしいわよ…」
「じゃ間を取ったらどうですか」
「そぅ、ね、そうするわ」
部屋に戻って引き出しから金を出して渡すと財布に入れてバッグに仕舞った。
ちゃんとお出かけ用財布があるんだよな、先生。
家計用とは別に。
あとお茶のお稽古のときに違う財布を持ってることもあるけどあれはなんでだろう。
用意を済ませた先生に聞くと、あれはあれでお金を別にしているらしい。
経費の問題だそうだ。
部屋に連れ帰って布団の中に入れる。
冷たくなった手を俺の懐に。足も絡ませて。
「ふふ、温かいわ」
「風邪引かないうちに早く寝ないとね」
「そうね」
俺にしがみついていたのに温まると眠気に飲み込まれたようだ。
腕を掴む手の力も緩まって寝息が聞こえてくる。
肩が少し寒そうなので布団を直して共に寝た。
朝、早めの朝食の後。
先生は電車の時間など確かめつつ出かけて行く。
「さて、と。明日からは普通のお稽古だから用意しないとね」
八重子先生の指示で茶道具を出して確認。
なんだかんだお昼までかかり、昼飯を食べて退出した。
自宅の整頓をしていると夜に先生から無事帰ったのメール。
俺が心配するからとお出かけの時はちゃんと連絡くれるんだよね。
心配される年じゃないと言うけどさ。
恋人を心配して何が悪いのか。
それから今週は早めに来て助けて欲しいとの事、生理だからかな。
返事をして飯を食って寝る。
今週の稽古日は仕事の後はすぐに行って。
出来るだけ先生じゃなくても良い人は引き受けた。
先生は監査である。
上の方のお点前になると流石に無理で八重子先生と先生が交代勤務。
夜は抱かれないのが当然、と思っているわけでは無い様で気を使ってくれる。
ま、別に今は飢えてないから来週で良いんだよね。
ただ困るのが夜中に胸をまさぐられることだ。
冷たくて目が覚めるんだよね。
それとたまに噛まれる。
朝になって噛み跡を見て謝られる事があるがわざとじゃないし仕方ない。
諦めている。
そんな日が続き月末となった。
もう殆ど終りではあるがもう一日だけ、とお願いされて我慢する。
節分の夜、久々にした。
昼に神社へ行って疲れていたのもあり早々に終了だったけれど。
尻穴に豆を入れてあげるといったら切々とやめるよう訴えかけられた。
その必死さがたまらない。
まぁどうせ明日は消化不良だろう。
キスをして寝かしつけた。
朝、やっぱり先生はトイレから中々出てこなかった。
八重子先生が苦笑している。
「ついつい食べ過ぎるのはわかるんですけどね」
「私も何度か経験あるよ」
皆一度はやるよね、豆の食いすぎ。
食欲もなさそうなのでお味噌汁だけ。
「しかし年の数って無理ありますよねぇ」
「だっておいしいんだもの」
アイタタ、と何度かトイレに通っている。かわいそうだ。
流石に夕方には治っていたが機嫌は良くないようだ。
夕飯の後帰ろうとしたら何か言いたげにしている。
明日もまた会えるのに、帰したくないと言う。
少し考えて、じゃ、あなたが寝るまでなら、と譲歩した。
幸い車で来ているから寝かしつけてから走ればなんとかなる。
少し機嫌が直った。
風呂に入れて髪を洗ってあげるとすっかり気分が変わったようだ。
「ね、ちょっと寝たら?」
「寝過ごしそう」
「起こしてあげるわよ」
「そう? それじゃ悪いですけどお先に」
3時間ほど寝て、先生に起こされた。
「そろそろ起きないといけないんじゃない?」
「うぅー…行きたくない…」
「会社、休んじゃダメよ」
起こされて洗面所に連れて行かれた。
「ほら、顔洗って」
眠くてもたもたしていたらちょっと叱られた。
「もうちょっと甘えさせてくれても…」
「ダメよ、お仕事でしょ」
発破を掛けられて出勤する。
眠気も運転しているうちに取れて会社に着く。
一仕事終えて先生に作ってもらった弁当を食ってるとうらやましがられた。
朝からしっかり煮炊きしたものを食ってるのがうらやましいようだ。
まぁ昨日の残り物だけどね。
しかも半分は俺の作ったものだし。
朝からパンよりは体に良いらしいけど。
しっかり食って仕事仕事。
暇な半日の後帰宅して弁当箱を洗って先生のお宅へ。
「こんにちは」
「お帰りなさい」
「あ、ただいまです」
なんか照れくさいぞ。
「眠くない? 大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
お稽古の用意をして生徒さんを待つ。
先に先生が来た。
覆いかぶさってきてキスされて驚く俺に目が覚めた? と聞く。
「覚めました、吃驚した…大胆ですね」
ふふっと笑って俺の頭を撫でている。
「こんにちは、お邪魔します」
玄関から生徒さんの声だ。
すっと離れて定位置につかれた。
お稽古が開始され指示が入るまでもなく動く。
締めに俺のお稽古。
「はい、いいでしょう。お疲れ様」
「ありがとうございました」
「さ、片付けましょ」
「はい」
お夕飯を楽しみにしつつ片付けた。
「今日はご飯食べたら早く帰りなさいよ」
「なんで?」
「寝不足でしょ。ちゃんと寝て」
「あぁ。わかった、帰ります」
片付け終えて食卓へ。
あ、うまそう。
おいしいご飯をたっぷり食ったら眠気が。
「泊まるの? 帰るならコーヒー入れてあげるけど」
「うぅ、帰ります。泊まりたいけど。朝、眠いですし」
ふふっと笑って一番苦い銘柄を選んで淹れた。
「うまいけど苦い…」
飲んでる間に部屋からコートと鞄を持ってきてくれていて。
律君が笑ってる。
飲み終えてコートを着た。
玄関で先生に乗り過ごしたりしないように、と注意を受けて帰宅。
電車の中が暖かくて危なく本気で寝入ってしまうところだった。
うちに帰って脱ぎ散らかして布団にもぐりこんだ。
朝になって着物を片付けたけど。
少し忙しい金・土曜の仕事をこなしてお稽古。
終った後、明日百貨店行くので一緒に、と言われた。
お夕飯を食べて風呂に入って、明日の半衿をつけたら寝間へ。
「明日、百貨店行った後うちに来ませんか」
「え、でも」
「今日はしないから、ダメかな」
先生は何も言わず耳まで赤くなってる。
「連れ帰ってくれたら良いのに…言われたら恥ずかしくなっちゃうじゃないのよ」
「可愛いなぁ」
後ろから抱き締めた。
「暖かい…」
「布団、入ろうか」
ひんやりした布団も二人で入れば温まる。
しかし数分は頬染めていたくせにすぐに寝息を立ててしまう先生である。
相変わらず寝つきが良い。
したいときには結構困るんだけど、今日はね。
んー、良い匂いだ。
お腹を触ったりして楽しんでいるうちに俺も寝ていた。
翌朝は食事の後、着替えて銀座へ出る。
楽しそうだ。
百貨店に着いたら先ずは特設会場。
俺には呉服エリアで待っているように言残して一人で入っていった。
あー、チョコね。
渡す前から何渡すか知られるのはいやと言うところか。
ま、楽しみに取っておくか。
呉服売り場をうろついていると作り帯の面白いのがあった。
切らずにできると言うもの。
まぁ先生には必要はないだろうが俺には必要だ。
袋帯、苦手なんだよね。
説明を受けてチラシを貰っている所へ先生がきた。
「あらあ、なぁに?」
「作り帯ですね」
「着付けてあげるわよ? それくらい」
「それはありがたいんですが一人で他所の土地に行くことだってありますしね」
「あ、そうね」
納得しつつどうなっているのか確かめている。
「うーん、良く考えてあるわねぇ」
「ですよね、今度作ろうかな。見立ててください」
「そうね、一つあったら便利よね」
その後、帯や着物を見て、でもぴんと来るのがなくて。
アウトドア衣料の所で先生に仕事着を見繕ってもらった。
シャツの首が伸びてたりして見苦しいって。
どうしても仕事だと見えないところはどうでもよくなるからそのままにしていた。
いくつか買ってそれからお昼を食べにレストランエリア。
ごった返していて先生が嫌な顔をした。
「お弁当買わない?」
「そうしますか。いや混んでますねえ」
「平日よねぇ」
「みんな同じ考えでしょう。チョコ買ってお昼に良いもの食べて帰る」
「そうなるわよねぇ」
地下へ降りてお弁当やお惣菜を見て回る。
「これがいいわ。あんたは?」
「俺はこっちが…」
「……サラダか何か買いなさいよ」
「うぃっす」
ローストビーフのサラダを買おうとしてると背後から怖い声。
「こら、ダメ。そこのほうれん草と小松菜とチーズとトマトの温サラダの方がいいわ」
「…うぅ、はい」
「お肉にお肉なんてダメでしょ」
「生ハムのサラダは」
「だめよ。体冷えるわ」
苦笑して先生の言うサラダを200g頼んだ。
持って帰って手を洗い着替えて食卓に着く。
先生は俺が着物をつるしている間に冷蔵庫にチョコを仕舞った。
部屋暖かくなるからね、解けちゃう。
「先生、食べましょう」
「ん、ちょっと待ってね」
ガサゴソと紙袋を片しているのを尻目に弁当を広げる。
お皿を出した。
サラダは先生も食べるだろ。
「お待たせ。いただきましょ」
いただきます、と手をつけ始めた。
と思ったら箸を置いた。
「ねぇ、おつゆ何かあったわよね」
「ありますよ」
「何か貰っていい? ちょっと温かいものほしいわ」
「ああ、ちょっと待って」
台所で湯を沸かしつついくつか持って出す。
「どれがいいですか?」
「そうねぇ、この鯛のお吸い物がいいわ」
一人分の味噌汁なんて作らないから買ってあるんだが、こういうとき都合がいい。
俺は試食用で貰った湯葉と海苔の吸い物。
味噌汁碗で出して食事再開。
「意外とおいしいわね」
「こっちも中々」
「こら、サラダから食べなさい。お肉からはダメよ」
「はい」
あ、意外とうまい。
見た目が微妙だったんだけど。
「おいしいわねえ」
「ですねぇ」
お弁当もおいしくて先生も俺もすべて食べてしまった。
片付けて少し一服。
先生から俺の膝に手を突いてもたれかかってきた。
キスをして胸に手を這わすと身を震わせ俺の手首を掴んだ。
「もうちょっと食休み、させてちょうだい。ねぇ」
「したくなった」
「まだ時間あるじゃないの」
「しょうがないなぁ」
後ろに手を突いて好きなようにさせる。
ま、家じゃこんなこと出来ないからいいけどね。
暫くして先生が立ち上がり、ストーブの設定を下げた。
「暑くなっちゃったわ」
そのままトイレへ行き、シャワーを使う音がした。
汗ばんでるほうが好きなのになぁ。
と思ったらすぐに浴衣を羽織って戻ってきた。
「早いな」
「だって、あなた舐めるでしょ、だから」
顔を赤らめている。
なるほど、股間だけ洗ってきたか。
「どれどれ?」
ぴらっと裾をまくってやったら慌てて隠そうとする。
「隠すなよ、どうせ裸になるんだから」
「いやよ、恥ずかしいわよ」
「じゃそのままここでしよう」
壁に押し詰めて弄ってやるとぎゅっと俺の肩を掴んで声を出すのを耐えているようだ。
乳首を捻り上げるようにすると声が出た。
「あっ、うぅ、痛、ん…」
中もほぐして結構いい感じになってきたところでペニバンをつける。
さっき先生がチョコを仕舞っている間に出してきておいた訳だ。
座り込んでしまってる先生に舐めさせようとするといやいやをした。
「舐めなきゃ痛い思いをするよ? いいんだね?」
「ぁ、う……」
唇に押し付けると諦めたようで舐め始めた。
「ん…ぐ、うぅ…はっ」
おっと奥へ入れ過ぎたようだ。抜いてやると咳をしている。
それでも健気に治まったらまた舐めて。
「よし、後ろを向いてお尻をこっちに突き出して」
「あ、お願い。ここじゃいや…」
「ベッドでもいいけどそれなら自分で入れてもらうよ」
「えっ」
「自分から俺の上に乗って。おまんこ広げてこいつを中にぶち込むの、自分でやるんだ」
「そ、んなの、むりよ…」
結局その場で挿入した。
とはいうものの膝も痛いし先生も辛そうで抱え上げてベッドに下ろした。
乳首を責めつつ中を抉る。
突いてるうちに先生が潰れてきた。
腰を抱え後背位のままあぐらの上に座らせる。
足を開かせて三点責め。
まだ始めて1時間も経ってないのにもう辛そうだ。
手があと二本あれば両乳首と尻の穴も追加で弄れるのにな。
そこまでしたら狂っちゃうか?
狂ったら俺がずっと面倒みればいい話だな。
おっと痙攣している。一旦休憩だ。
抜いて横臥させてやった。落ち着くまで様子を見る。
息が落ち着いてきたがまだぼんやりしている。
乳首をつねると焦点が合った。
「い、た……あっ、だめっ」
尻の穴を弄ったものだから抵抗している。
「ほら、力を抜いて息を吐いて」
「やだぁ」
「暴れたら痛いの知ってるだろう? それとも痛い事されたい?」
痛いのと秤にかけたような、微妙な顔をする。
「ど、どれくらい?」
「泣くまでかな」
「う……なに、するつもりなの…」
「鞭」
「ひっ」
「はまだ早いから手で叩いてあげましょう」
「あ…それなら」
膝に抱え込んで先ずは軽く。
眉間に皺をよせて痛みに耐えている。
まだまだ余裕はあるな、大丈夫。
少しずつ強く打っていくと耐えかねてか声が出た。
まだだ。
逃げようと暴れだす、それを押さえ込んで打ち続けるとついに泣き出した。
「いやよ、もういやぁっ、ぎゃっ」
暴れた拍子に膝から動いてしまい、股間を叩いてしまった。
「今のは痛かったね、でもおとなしくしないからだよ」
「もう勘弁してぇ…お願い」
「まぁいいよ、初めてにしては頑張ったね」
キスをするとちゃんと舌を絡めてきた。
痛い後は優しく抱いて。
すっかり疲れた先生は夕方には寝てしまった。
尻は結構赤くなっていて熱を持っている。
濡れタオルで冷やす。
その俺の手も結構腫れているので絞りにくい。
何度かタオルを替えて赤みが引いてきた。
ところどころ指の痕になっているのが嬉しくて。
楽しみつつもどうせ夜中まで起きはすまい、とある程度冷やしてから寝た。
やはり夜中に揺り起こされてトイレに。
だが痛くて座るのがつらいと言う。
「こういうときは和式のほうが楽ですね。ああ。風呂でする?」
「えっ、やだ、それはいやよ」
「だって痛いんでしょう? 座るの」
「痛いけど…恥ずかしいもの…」
「今更」
「お手洗いでいいわよ、ね、連れてって」
トイレでそろりと腰を下ろして、痛そうに顔をしかめる。
心なしか音も途切れ途切れで。
「あっやだ、なんでいるの?」
「なんでって…あ、止まっちゃった? ちゃんと出し切らないと膀胱炎になるよ」
「やだもぅっ、出ててっ」
腕をバシバシと叩かれて追い出された。
恥ずかしがってるのが可愛い。
まぁすぐに呼ばれて部屋に連れ戻したんだが。
ベッドの上で点検する。
そんなには腫れてないかな。
ついでにもう一戦、と思ったら先生のお腹がなった。
「ありゃ。なんか食いますか」
「でも冷蔵庫、何にもないわよ」
「食べには…むりですね、このお尻じゃ」
「無理ねえ…」
「何か買ってきましょう。何がいいですか」
「軽いものがいいわね。こんな時間だもの」
「スープご飯なんてどうです?」
「あ、それいいわね」
「トマト系? 塩系?」
「塩系でいいわ」
「OK」
ささっと会話しつつ着替えて買物に出た。
コンビニにあるものでスープの具材をそろえる。
袋野菜とサラダとウインナー。
帰宅して湯を沸かした鍋にあけ、味付けをして行く。
「いい匂い~おいしそうね」
炊けた頃ご飯をチンして丼へ。
その上にスープをかけ、具材もたっぷり載せる。
少しゴマをあたって散らした。
先生を食卓につかせ、食べさせた。
正座の方が楽らしいので卓袱台でだけれど。
「おいし♪ おつゆかけご飯なんて行儀が悪いって言われてたのよ」
「これはスープご飯ですから。別物別物」
おいしく食べ終えると先生が横たわった。
正座しててもやっぱり痛むようだ。
洗い物を終えてからベッドに連れて戻り、添い伏し。
お腹も膨れて先生はとっても眠そう。
キスをして撫でているうちに寝息に変わった。
可愛いなぁ。
明日もたっぷりしてあげよう。
おやすみなさい。
朝、先生を置いて出勤する。
帰る頃にはいないだろう。
そう思っていたのに帰宅するとお昼ご飯を作っていた。
「お稽古は?」
「あ、おかえりなさい。昨日のうちにお母さんにお願いしたの」
「ただいま。いつのまに?」
脱ぎつつ聞く。着替え着替え。
「朝あなたがご飯作ってくれてる間よ」
「へぇ、泊まるつもりだったんだ?」
「あら。家に来いってそういうつもりでしょ? 違ったの?」
「違わない」
後ろから抱きついて胸をまさぐると叱られた。
ご飯食べてからにしなさいって。
「お尻、調子どう?」
「まだ痛いわ…」
「後で見てあげようね」
「ばか、もうっ。服着なさいよ」
「はーい」
着替えて手を洗うと飯ができていた。
テーブルに並べようとすると卓袱台を指定される。
なるほど、確かにまだらしい。
先生は恐る恐る座って楽な体位を探している。
「これでお稽古に行けって言うなんて…」
ぶつぶつと文句を言われてしまった。
「あぁむしろ見たいですね。生徒さんの前でどうするか」
「階段から落ちたっていうわよ」
「……そういう回答は望んでなかった」
「あらそう。早く食べなさい」
軽くかわされて昼飯を食う。
「おいしいなぁ」
「ありがと」
食事中に少し愚痴を言われてしまったものの、メシは美味しかった。
片付けてから押し倒す。
「あ、こら、痛いわよ」
「ごめん、乗って」
うん、確かに床の上でごろ寝は後頭部が痛い。
先生はケツが痛かったんだろうけど。
割烹着を俺の太腿の上で解いて脱いで、畳んでる。何か面白い光景だ。
そういえば昨日散らかした色々なものが片付いてる気がする。
「せんせ。ペニバンとかどうしました?」
「あの、洗っておいてあるわ…。その…ベランダの縄って」
「あなた専用の縄。もうちょっと手を掛けますけどね」
「洗濯物かけようかと思っちゃったわよ」
「あれ作るの大変なんですよ、やめて下さい」
「そうなの?」
「教えますから手入れ、家でします? 俺より繊細だろうし」
「遠慮するわ、律にそれ何? なんて聞かれたら困るもの」
「八重子先生になら良いんですか?」
「ばか、しらない…」
横向いて耳を赤くしている。
「可愛いな、そろそろしましょうか」
上から退かせて先ずはお尻の点検。
トイレをする時のように着物をたくし上げた。
「壁に手を突いて前傾してー。はい、足を肩幅に開く」
「こんな格好させるなんて…酷い人よね」
お尻に触れて様子を見る。
「赤くはそうなってもいないし、蚯蚓腫れもない。腫れてもない感じだな」
「座ると痛いのに?」
「中のほうがまだなんでしょう。あそこは痛くなかった? 最後当たっちゃったけど」
「あ…、うん、大丈夫よ」
「一応確認ね」
「えっあっ、だめ」
割り開いて確認する。
「もう濡れてるねぇ」
「ぅ…、あっ待ってちょっと」
「どうした?」
「窓、開いてるの。閉めないとダメ」
「おっとと、それはいかん」
慌てて窓を締めている間に先生は寝室で脱いでいた。
こんにゃろう。
「なんで勝手に脱いでるのかなー? 脱いでいいって誰が言いました?」
「えっ、だってするんでしょ? 脱がないと…」
「脱がせる楽しみってものがあるんですよ?」
「え、じゃ着たほうがいいかしら」
「もういいですけどね、勝手に脱がないでくださいよ」
とりあえず脱いだものをハンガーにかけてやって、それからベッドイン。
今日は帰らなきゃいけないだろうからと軽くに止めた。
疲れて寝ているのを見るのが結構好きでついキスしたら起こしてしまった。
「ん、もう帰らないと……眠~い」
「もうちょっと寝てたら良いじゃないか」
「だめ、帰らないと。明日もお稽古だもの」
「だったら送るから車の中で寝る?」
「そうしてくれる? お風呂はいるわ…」
「洗ってあげるよ」
眠すぎて体に力が入ってない先生を抱きあげて風呂に連れて入る。
ゆったりと髪を洗い体も洗ってあげた。
このまま布団に戻して寝かせてやりたいほど眠そうだが帰る意志は強固だ。
体を拭いて髪をドライヤーで乾かし、着替えさせるにも立つと体が揺れるほど。
もうこれは寝巻きの上にロングコートが一番だ。
ということでネルの寝巻きを着せ、とりあえずベッドへ転がし、帰す用意をした。
着替えて車を玄関前につけ、先生の鞄や買物した物を載せる。
それから先生にダウンコートを着せ抱えあげて車へ。
後部座席から寝息が聞こえる中、安全運転でお宅まで走らせた。
玄関を開けて先生を運び込む。
八重子先生が驚いていたが、ただ寝てるだけと知って布団を敷いてくださった。
「あんたら夕飯食べたの?」
「まだです」
「何か作ろうか?」
「そんな、いいですよ。先生の夜食だけお願いします」
「そう? お腹すかない?」
「大丈夫です。お昼ちょっと多かったんで」
一旦車へ戻って鞄などを運び入れた。
チョコは冷蔵庫へ。
「すいません、袋忘れてきました。必要でしたら土曜に持ってきます」
「どうだろうね、連絡させるよ」
「あ。草履も。着物も土曜でいいですよね?」
「悪いねぇ」
「いや、私の所為ですから」
謝ってから帰宅した。
途中で買ってきた弁当を食って部屋を片付けた。
脱ぎ散らかした着物とか。
とりあえずで出てきたからなぁ。
なんだかんだで眠くなってベッドにもぐりこむとすぐに起きる時間だ。
疲れてたみたいでまだ眠いが仕事仕事。
それが終って帰宅すると不在票が入っていた。
風呂に入ってから連絡して持ってきてもらったのは、先生に渡すチョコ。
京都の今年は和菓子コラボ品。
明日渡そう。忘れないようにしなければ。
取敢えずは眠いので昼寝をして夕方起きて食事を取りまた寝た。
翌日、仕事の後。
先生の忘れ物とチョコを持ってお稽古に伺う。
「こんにちは、お邪魔します」
「あらいらっしゃい。この間はありがと」
「はい、これ。どうぞ」
「あらあら、なぁに? あら」
「今日バレンタインデーでしょう? だから」
先生の頬が赤くなった。
「こっちは八重子先生に。じゃ、用意してきますね」
「あ、はい、よろしくね」
そのままパタパタと居間へ入っていく先生を可愛いなぁと思いつつ。
茶室に入って昼からの支度をする。
のんどりと穏やかに待っていると生徒さんが来た。
「こんにちは」
「こんにちは、お願いしますー」
「先生はもうちょっとしたら来られますから」
「はぁい、用意してますねー」
しばらくして生徒さんの用意が整った頃、先生が戻ってきた。
「いらっしゃい」
「あ、こんにちはー。先生、今日もお願いしますぅ」
「はい、じゃお稽古始めましょうね。久さん、用意出来てるかしら」
「茶筌荘ですね」
「そう」
生徒さんに道具を説明して先生が指導なさる。
順々に次の生徒さんが来られてお客に入ってもらったりとやはり土曜は忙しい。

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h42

今日はラストスパート前の混雑。
これが終れば。
仕事中に花の手配もしたし餅の手配もした。
後は、後は?
あ、半襟…先生に頼むほうが早いか?
昼飯を流し込んで仕事に掛かる。
帰宅すると何も考えられず着替えて寝た。
朝になって思い出す。
そうだ、焼鯛だ。焼かなきゃ。
味噌漬けとか餅とか白味噌とかニシンとか手配しなければ。
慌てて仕事中暇を縫って手配をかけた。
そうこうしているうちに今年も後二日となった。
今日が終れば明日朝に鯛を焼くだけだ。
随分気が楽になって仕事が進む。
半衿は先生にお願いしたことだし、着物も何とか昨日寝る前に支度した。
多分忘れ物は、ない。要る物は全部車に積んだはずだ。
あ、お年賀。そうだ出金しなきゃ。
帰りに餅を取りに行き飾りつけ、門松も立てた。
今日飾らねば一夜飾りになってしまう。
ばたばたとあれやこれやとやることをやって寝る。
翌日、鯛を焼き、皆で軽く乾杯をして味噌漬けなどを車に積んだ。
やっと今年が終る。
一旦帰宅し風呂を浴び、先生のお宅に車を走らせた。
車に乗る予定だったからちゃんと乾杯はコーヒー。うまいけどね。
そっと勝手口から侵入して冷蔵庫や土間に荷物を置き、そっと先生の部屋に忍んだ。
寝てる寝てる。
さっと寝巻きに着替えて寝込みを襲った。
久々の触り心地、いいねぇこの肌。
一人楽しんでいたら目が覚めたようだ。
「ん、おはよう…。お疲れ様」
「ただいま」
キスをし先生を楽しませて、でも声は出させないように。
…先生の上で力尽きた。
「重~い」
「あ、悪い」
横に転がると先生が布団を掛けてくれる。
「もうっ、寝てなさい。朝ご飯してくるから」
そんなにはむさぼれなかったから先生は元気だ。
ぺしん、と額を叩かれて寝かしつけられてしまった。
ふと目が覚めるとうまそうな匂いがしている。
寝巻きのまま台所に顔を出すとどうやら御節の仕込だったようだ。
「あら、起きたの。おなかすいた?」
「うん」
「冷蔵庫にピザあるから食べて良いわよ」
どうやらスーパーで買って有ったらしい。
「足りそう?」
「全部食べて良いのかな」
「良いわよ」
「じゃ大丈夫」
「でも今おやつ時だから晩御飯食べられないようなことしないでね」
「あー…はい」
二つだけ貰ってチンして食べた。
「ああ、あんた起きたの。いやまだ眠そうだね。寝といで」
「はい」
八重子先生が戻ってきて台所から追い払われて布団に潜る。
腹がくちたからまた良く寝れた。
先生に夕飯と起こされてつい布団に引き込んだ。
「こら、だめ。ご飯よ。もう時間遅いんだから起きて頂戴」
起きると本当に遅い。
「先生方はもう?」
「まだなの。早くして」
「はーい」
もそもそと起きると寝巻の上に引っ張りを羽織らされて食卓へつく。
夕飯は軽いものだった。
年越しそばも有るからだろう。
「こんばんは」
「あ、律君。こんばんは」
「ずっと寝てらしたんですか?」
「うん、朝からね」
「よっぽど疲れてたんですね」
「去年もそうだったわよね、はい、ごはん」
「ありがとうございます」
「そうそう、半衿つけてあるから。バッグ勝手にあけたわよ」
「わ、ありがとうございます、助かります」
「半衿?」
「そうよ、お着物着るでしょ。この子はつけてる時間ないから」
「律君は今年着るの?」
「着せるわよー、さっきね、丁度仕立てあがってきたのよ」
「へぇ、おろしたて? いいねぇ」
「司にも振袖着せるよ」
「おお、やっぱお正月は良いですよねー振袖」
軽めの夕飯を食べた後先生と台所へ。
年越しそばの支度。
「えぇと。あなた天麩羅じゃないのよね」
「はい、ここにニシンあります」
「おばあちゃんと私とお父さんと律とあなたと…司ちゃんは起きてからの方が良いかしら」
「伸びますしね、そうしましょう」
5玉とだし、天麩羅などを準備しておく。
まだ食べるのは早いから。
年末の歌番を楽しんで各々風呂にはいる。
それからそばを出した。
除夜の鐘の聞こえる中すする。
んー、うまい。
「京都ってあまりお蕎麦のイメージないけど結構好きよね、山沢さん」
「うーん、そうですね、当初はだしの色と味がね。自分で作れば良いかとなりまして」
「あ、だから山沢さんの、だしが違うんだ?」
「味見したけどおいしかったわー」
「へぇ」
「まだ残ってるわよ」
「じゃ後でちょっと味見させてもらおうかな」
汁を全部飲み干す。
うーん、うまかった。ごちそうさま。
そろそろ年が明けるようだ。
皆も食べ終わったので洗い物に立った。
「久さーん、司ちゃんの作ってくれるー?」
「あ、はーい」
洗い物の手を止めて湯を沸かし、だしも温める
ササッとゆでて温めただしに入れ、天麩羅を盛って居間へ戻る。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
「コーヒー欲しいわ」
「はいはい」
台所に戻って先生の分を淹れて戻る。
「ん。あんたいらないの?」
「洗い物終ってからいただきます」
「あら? いつもと味が違うわねぇ」
「寝る前ですからカフェインレスにしました」
ちょっとつまんなさそうな顔をしている。
台所に戻って洗い物を片付け、鍋も洗い終えると先生が丼を引いてきた。
「これも」
「はい」
そっと背中に手が置かれた。
「ん? 熱ありません?」
おでこをくっつけてみる。
「あ、大丈夫ですね、よかった」
顔を赤くしている。可愛いな。
洗い終えて手を拭いて、居間に戻ると司ちゃんも部屋に引いていた。
「寝ますか。部屋行っててください。戸締りしてきます」
「あ、うん…」
玄関と勝手口、あとは火の始末を確認して部屋へ戻る。
まだそんなに温まってなくて先生は少し羽織を脱ぐのに躊躇している。
そっと紐をほどき、伊達締めを解いた。
キスを求めてきてそれに応える。
冬なのに、しっとりとなめらかな肌が心地良く。
ぐりっと乳首をつねられた。
「…痛い。なんですか」
「なんとなく」
「されたくなかった? なら寝ましょう」
「あ、違うの、ごめんなさい。なんとなくなだけだから」
「そう?」
「うん」
「でもまぁ、いいや。三が日あけてからで」
「いいの?」
「どうしてもしたくなったらあっちの部屋つれていきますがそれはいいでしょう?」
ぱっと耳を染めて頷いてる。
布団に入って先生を抱き締めると温かく、先生も擦り寄ってくる。
シーツが冷たいんだよね。冬は。
そろそろ毛布入れようかなあ。
そういってると先生が明日は入れるという。
寒くなるらしい。
少し喋ってるうちに寝てしまった。
朝、着替える前に雑煮の支度をする。
支度が整い着替えてから茶室で新年の挨拶を交わす。師弟として。
それからお雑煮と御節を出した。
去年も見てるから律君はスルーしているが先生はほんのちょっとだけお相伴と飲んでいる。
俺は御餅三つ、先生方と司ちゃんは一つ、律君は二つ。
孝弘さんはおかわりしている。いくつかわからない。
お酒も順調に減っている。
先生も少し酔ってきているようだ。
もたれかかってきた。
年末はお疲れだったんだろう。
そういえば今年は何も言ってないのに膾が多めに入っていてそういう気遣いが嬉しい。
おいしく頂いて、司ちゃんと律君にはお年賀を渡す。
先生方には朝のご挨拶の時に渡した。
先生が寝てしまわないうちにと初詣に行くことに。
コートにショールをたっぷり着せて風邪を引かさないように気をつける。
外はすがすがしい正月の空気だ。
「寒~い」
「ですねぇ」
雑踏は手を掴み人波に揉まれ、律君達とははぐれ。
神前ではこの人とずっとこうしていられるようにお願いをした。
欲を言えば二人暮らしだけどそれは高望みと言うもの。
お守りを授与していただいて待ち合わせ場所で合流して甘味処へ流れる。
先生方はおぜんざい。
俺はみたらしを頂いて温まってから帰宅した。
やっぱり律君はすぐに脱いでしまったが司ちゃんは振袖のままだ。
去年は晶ちゃんとした坊主めくりを今年は司ちゃんとする。
三回戦して先生の負け。
長襦袢姿で終了。俺は帯だけで済んだ。
それから普段着に着替えて台所で燗をつけお酒を頂く。
「表、吹雪いてきたわ」
「おーすげー。雪見酒だ」
「温泉、行きたいわねぇ」
「あ、いいですねー。雪がたっぷり積もる中、露天風呂とか」
「良いわよねぇ。連れてって」
「仕事の休みと相談ですし、お稽古の日とかもありますからね?」
「わかってるわよ」
司ちゃんが笑ってる。
お酒を飲んでる間に先生が眠そうになって来た。
「寝てきますか?」
「ん、悪いけど後よろしく」
「私もちょっと寝てくるわ」
お、八重子先生もか。
二人とも部屋に寝に行った。
司ちゃんと律君と三人で御節をつつきつつお酒を飲む。
「山沢さんってお酒強いよね」
「そんなこともないかな。先生のほうが飲んでたよ」
「そうかなぁ」
「お母さんたちは御節作ったり今朝も朝からばたばたしてるからね、疲れてるんだよ」
「山沢さんも疲れてるんじゃ」
「私は昨日寝かせてもらったから大丈夫なのさ」
うーん、うまい。
お重の中身が減ってきたので台所に行って補充する。
去年の晩飯の時間には補充してたからそのように。
律君がお風呂を洗って司ちゃんを先に入れた。
孝弘さんと律君が入り先生はどうかと思ったがやっぱり入られず。
俺が入って風呂を洗って出た。
明日も沸かすしね。
今日は早めに戸締り、火の始末をして先生の横に潜り込む。
律君たちはまだ飲んでるようだ。
あくびひとつ。
俺もまだ眠いようだ。先生を抱っこして眠りに落ちた。
朝、俺より先に先生が起きていて着替えようとしている。
「おはよう。良い夢見れた?」
「…覚えてない」
「あら~。初夢見なかったの?」
「そのようですね。ってまだ早いじゃないか。もうちょっと寝ない?」
「しょうがないわねぇ、ちょっとだけよ」
布団にもぐりこんでくれた。
胸を触りつつ先生の初夢を聞き出す。
「小さかった頃の夢を見たの。お母さんに甘えてる夢」
「今も甘えてるところありますよね」
「そうねえ。ん、それ以上はダメよ。したくなっちゃうから」
「されちゃったら?」
「ダメよ。おなかすいたわ」
「残念」
「明後日ね」
軽くキスされて布団から出て着替え台所へ。
お雑煮と御節を詰めなおす。
甘口のお酒も持って出た。
二日目にもなると飽きてくるのでは有るが先生のお料理はうまくて俺は飽きない。
食べ終わったら身づくろいしてお年始回りだ。
去年行ったから大体わかる。
足元が悪いので先生の手を引いたり。
あちこち回って帰ると昼を過ぎている。
「おかえりー」
「ただいまぁ、外、寒いわよー」
「やぁ結構に冷えましたね」
「早く着替えてコタツ入りなさいな」
「そうするわ」
脱いで干して。
先生は裾に跳ねが上がってないか点検している。
「あぁ、だめだわ。出さなきゃ」
「どれ、あ、これはいけませんね」
襦袢姿で二人で覗き込んでたら後ろから声を掛けられた。
「あんたたち何してるのよ」
「あ、あぁ。環さん。あけましておめでとうございます」
「姉さん。あけましておめでとう。どうしたの?」
「おめでとう。あんたたちそんな格好でいるから何かと思ったのよ」
「外、雪だったでしょう。跳ねが上がってないか見てたの」
「なんだ、早く着替えなさいよ」
着替えた後お昼ごはんとして御節を環さんたちと頂いてそれから先生と書初め。
今年は「誠」と書き、先生は「精進」と書かれた。
八重子先生はやはり何か草書で書かれている。
「姉さんも書いたら?」
「え、私?」
「はい、筆」
「うーん…なに書こうかしら」
さらさらっと新春と書かれたが字のレベルは微妙。
先生方と比べちゃうとだけど。
片付けて手を洗い、御節をつまみつつゆったりと更けてゆく。
「姉さん今日は泊まるのよね?」
「開が帰ってくるかもしれないから帰るわよ」
「外、危ないわよ」
「でも」
「泊まりなさいよ、あんた怪我でもしたらどうするんだい」
結局泊まられることになり先生が部屋の用意をしている。
その間に風呂に湯を張りに立った。
りゅうひと棒だらを出してきて晩飯。
食後、八重子先生が風呂に入り、環さんが続き、先生が入る。
ふとトイレに立つとあれが来てた。
八重子先生にあちらの家にいると理由を話して鞄を取りコートを着込んで移動した。
何かと八つ当たりしそうで一緒にいないほうが良い。
それは八重子先生も納得した。
しかし部屋が暖まらない。
布団に毛布を入れて潜り込んだが寒い。
とは言え今更戻るのはなんだかな、と震えていると携帯がなった。
先生から。八つ当たりしても良いから戻って来いと。
正月から喧嘩したくないからどうしてもと断った。
やっと暖まってきた部屋で一人静かに寝る。
こんな日になるなんてしょうもないなぁと思いつつ眠気に絡め取られた。
ふと目が覚めると夜明けの気配。
先生からのメール。
朝食が出来たころに呼ぶから寝てるようにと優しい思いやり。
ひと寝入りして電話で起きる。
着替えて先生のお宅へ戻り、朝ご飯を頂く。
俺の分はちゃんと白味噌で濃さも俺の作ったとおり。
覚えてくれたらしい。
環さんの隣は少々気に入らないが。
食後すぐに布団に追いやられてしまった。過保護だ。
お昼になったら起こすからって言われたけど一人寝は寂しいんだよね。
ぶつくさ言いながらも潜り込んで寝ているとたまに先生が来て頭を撫でていく。
病気の子供じゃないんだから、と苦笑しつつしたいようにさせた。
この人は何と言うか性愛より何より母性愛が強いんだろうな。
うまそうな匂いがしてきた。
八重子先生が呼びに来る。
肉。肉の匂い。
焼肉だ。毎年なのか。
先生が俺に肉をどっさりくれる。
食べた後また布団に連れ戻された。
太る…。
というかヤりたい。食欲睡眠欲の後は性欲だな。
とはいうものの環さんも司ちゃんもいる家でそれは無理だ。
今晩帰って家片付けて明日先生が来るからその時にしないとな。
ふと気づくと夕飯の気配。
寝てたようだ。
腹減ってる。
起きて台所に顔を出すと先生がもうちょっと寝てたら、と言う。
腹が減ってるから眠れない。
そういって食卓を片付けてご飯を待つ。
スパゲティが出た。
先生としてもちょっと和食に飽きた?
おかずとして舞茸チーズ、ほうれん草のソテー。
と言うことは買物いったのか。
ほうれん草にしたのは俺のためかそれともほうれん草くらいしかなかったか。
ブロッコリー食いたい気分だったんだが、ま、明日にしよう。
おいしく頂いた後、辞去を告げた。
「掃除くらいしてあげるわよ」
「甘やかしすぎです。大丈夫ですから。明日待ってますね」
「気をつけて帰るのよ? ほら、そんな格好じゃダメよ」
羽織の上からコートにマフフー、ショールを巻かれてしまった。
厳重な扱いに、バスも電車も乗るんだが、と思う。
環さんは明日朝帰られるそうだ。
別れて久しぶりの自宅へ。
……汚い。
先生の家の清潔さと比べると、年末掃除に来てもらった割には汚い。
移動で疲れた気になってたけどこれはいけないと慌てて掃除を始めた。
うっかり途中でやる気がなくなっても良いようにトイレと風呂から。
なんとか居間の掃除と、寝室のベッドメイキングを終えてやる気が終了した。
もう明日の朝で良いかな。
トイレに行って、寝た。
朝になって寝室の細々としたものを片付けていると先生が来た。
「ちょっとー、新聞くらい取りなさいよ」
「あ、忘れてた。いらっしゃい」
「ほらっ。もうっ」
年末から今朝までの新聞がどっさりと押し込まれてたようだ。年賀状も。
「ご飯食べたの?」
「いや、まだ」
「お買物行く? それとも喫茶店?」
「喫茶店行ってから買物行きましょう。俺、ブロッコリー食べたいから」
「じゃ着替えて」
「はーい」
その間に先生が新聞と広告を分けて始末しておいてくれた。
外出の支度をして先生と正月の気配まだ残る外を歩く。
腕を組んで。
すっかり先生は恋人気分のようだ。去年は人目を気にしていたのに。
俺は嬉しいけどそこのところどうなんだろう。
喫茶店で聞いてみるとこの辺りは知ってる人もいないし、と。
なるほどね。
羽を伸ばしてるわけか。
責めさいなまれに来ているのに。
先生はパンケーキ、俺はカレーを食ってから買物へ行き、あれやこれや買って帰宅した。
下拵えを済ませてから先生に寝巻きに着替えるように言う。
少し頬染めて頷き、和室へ行った。
脱いで裸で戻ってきてくれても良いんだが、と以前言ったけどそれは嫌なのだそうだ。
少ししてそそくさと俺の横に座った。
ま、暫くはお茶でも飲んでテレビでも見ようか。
でも先生はテレビより俺の年賀状が気になるようだ。
見ても良いというと可愛いだの綺麗だのと楽しんでいる。
そんな先生が可愛くてキスした。
一度触れると箍が外れてしまってそのまま押し倒しキスを続ける。
少し抵抗された。
身を起こすとそそくさと年賀状を片付け、俺の腕を掴んで寝室へといざなう。
床は嫌だってことらしい。
ま、最初は恋人のように丁寧にして欲しいって前から言われてはいる。
ここで機嫌を損なうとまた喧嘩になるのはわかっているから丁寧に。
耳元で絹、好きだよなどと照れくさいが囁いてたっぷりと甘えさせる。
先生もとりあえず満足したようで本気出しても良いと許可が下りた。
ただし壊れない程度だ。
飢えてるのはわかっているとの事。
お稽古日や初釜の日を確かめる。縄、いけるな。
道具を取りに一度布団から出て戻ってくると先生は俺の雑誌を見ている。
「こら、何見てるのかなー」
「これ前はなかったわよね?」
「……よく覚えてますね」
「だってこんなの、一度見たら忘れないわよ…」
「で、なんか面白いものありました?」
顔を赤くして何も言わないが、開いてたページを見ると成程、入れたまま外出ね。
「したいの?」
首を大きく振った。横に。
そりゃそうか。
「他は? どこ見てたのさ」
後ろから乳を揉みつつ聞くと恥ずかしそうにだがページを見せてきた。
あー。あそこに蝋燭ね。できなくても見ちゃうわけだ。
さっきより濡れてるのはどこか先生は羞恥とか、蝋燭とかに感応しているわけか。
「してあげようか。きっと熱いよ」
「あ、やだ、怖い…」
そろそろいいだろう。
丁寧に縛って珍しく3本も使った。
「綺麗だ…見てごらん」
鏡を見せるとほの赤かった頬や体がぱっと染まった。
張りの出た乳房を指でなぞるだけで喘ぐ。
あちこちをそっと触って行く。
気持ち良さそうに、くすぐったそうにしている。
ついにあそこを弄って欲しいとねだられた。
「だーめ、頼み方、前に教えただろう?」
そんなの言えないとか恥ずかしがっている。可愛いなあ。
「言わなきゃこのままだ」
焦らして遊んでると逡巡しつつも何とか頼んできた。
少し縄を緩めてから中を楽しむ。
途中から先生の言葉が不明瞭になっていくのが楽しい。
縄が軋む。
ペニバンをつけて中を抉ると漏れ出る嬌声。
ほどいて、と微かに聞こえた。
しがみつきたいらしい。
一度抜くと期待の目を向けられたが後ろに回って背後から挿入した。
「鏡見て」
耳元で囁くといやいやをする。
「こんなに濡らして…気持ち良いの?」
湿った音と先生の声と、縄の軋む音ばかり。
痙攣するのも縄に絡め取られた状態だ。
腹に触れる先生の指が冷たくなってきた。そろそろほどいてやるか。
ペニバンを抜いてほどき始める。
擦り傷をつけないよう丁寧に解き終えると満足そうに息をもらして先生がもたれて来た。
「まだいけるね?」
そのまま正常位で抱いてしがみつかれ引っかき傷もつけられたがやっと俺も満足。
先生はぐったり。
後始末をして仮眠を取る。
夕飯の時間になってさすがに先生の腹が鳴った。
起きて飯を作ってから先生を着替えさせ、食卓に着かせる。
座る体勢も辛そうなので後ろから抱きとめて背もたれとなって先に飯を食わせた。
「おいしいわ…」
「良かった。あとはゆっくり寝ると良い。明日俺が帰ってくるまでね」
「帰ってきたら…またするの?」
「さぁ。したくなるかも」
耳が赤い。
そくなとこが可愛いくてたまらない。
ゆっくり食べさせてそれからベッドへ入れた。
食べ終わる時には既に眠そうだった先生は布団に寝かせるとすぐに寝息を立て始める。
幸せそうで良い。
俺も残ったものを食べて洗い物をして先生の横にもぐりこんだ。
おやすみなさい。
翌朝良く寝てる先生を置いて出勤。
初市。
マグロは去年より安価だったらしい。
少し酒を入れて帰ってくるとまだ先生は寝ていた。
俺もまだ眠い。
一緒に寝てしまおう。
乳を揉みつつ密着してうとうとしていると寝返りを打たれてしまった。
むぅ。
仕方ない。諦めて寝るか。
昼過ぎまで寝て先生の身じろぎで目が覚めた。
「おなかすいたのよねぇ……」
「動けそうなら寿司食いにいきますか」
「ん、どうかしら」
もぞもぞとベッドから降りようとして…床に座った。
「だめねぇ。とりあえずお手洗い連れてってくれる?」
「はいよ」
軽々と抱き上げてトイレに座らせた。
「出ててくれないかしら」
「見てちゃダメかな」
「恥ずかしいじゃないの」
「だからいいんだよ」
「ばか言って、もうっ」
蹴飛ばされて追い出された。
暫くして流す音。先生を居間へ連れ出す。
寿司を出前してもらうことにした。
「ねぇ? この間から気になってたんだけど」
「はい?」
「あれってなぁに?」
筒状の古びたケースを指差す。
「あぁ。ちょっと待ってて」
納戸から同じ物の新品を持って出る。
「あら同じもの?」
古い方から中身を出すと先生が引きつった。
元は白かった血の染みのある古い使い込んだ鞭。
「あなたにこれ、使いたくないから捨てようと思ってね。新しくしたんだ」
古いのを仕舞って新しいのを出す。
「あの、あの…そんなの…」
「触ってごらん」
恐る恐る触れる。
「ソフトレザーにしたんだ。ハードは無理だろう? 色もやわらかい色にした」
「あの、これで……私…」
「打つかもしれないし、しないかもしれない。あなた次第だ」
先生はそっと鞭をなでている。
チャイムが鳴った。
ビクッと跳ねるように先生が身じろぐ。
「寿司が来たんでしょう」
インタホンに出て玄関へ受け取りに出た。
先生の前に鮨桶を出して鞭を受け取って納戸へ仕舞う。
古いのはごみの日に出そう。
おてしょうを出し醤油。
「いただきましょう」
「いただきます」
さすがに初市の後だからネタは新鮮だ。
「おいしい♪」
先生も嬉しそうだ。
「食べ終わったらもうちょっと良いかな」
「ええ? まだ足りないの?」
「ほんのちょっとだけね」
頬を少し赤く染めて可愛いなぁ。
おいしくいただいて桶を洗っておてしょうを片付ける。
先生は昨日の新聞を片付けていた。
「あら。これいいわね」
「なんですか? あぁ百貨店の広告? 行きますか?」
「…歩けるかしら」
「いつまでやってます? 明日?」
「水曜日までみたいよ」
「明日行きましょう。今晩は寝かせてあげますから」
「本当?」
「本当。だから今、ね」
キス。
抱え上げてベッドに連れて行く。
脱がせて抱いて楽しんで気がつけば夕方になっていた。
「あ、買物行かなきゃ。何食べたい?」
「なんでもー」
「んー。すき焼きは?」
「いやー」
「…白菜のクリーム煮?」
「それおいしそう。それでいいわー」
「はいはい。寝てて下さい」
顔を枕に落として寝始めた。
着替えて重装備で外へ出る。寒い。
先生が食べたいであろう具材を買い、プリンも買って帰宅した。
脱いで部屋着に戻って台所に立つ。
白菜と鮭のクリーム煮のほかにホイコーローを作り、味噌汁を作ってご飯を炊く。
味見してこれでよし。
食卓に出してお皿も配置完了。
先生を起こして寝巻きと羽織を着せ、席に着かせた。
「おいしそう…」
「たまにはこういうのもいいでしょう?」
ごはんをよそってあげた。
「ありがと」
お味噌汁を飲んでご飯を食べる。
「あら? お米、変えたの?」
「変えました。今日から」
さすがにわかるようだ。
食べているうちに先生が幸せそうな顔をしだした。
「おいしいわ。上げ膳据え膳なのもあるけど」
「肉も食わなきゃいけませんよー」
「味が濃いんだもの」
「あ、確かに。あなたには濃いかぁ」
俺がメインにホイコーローを平らげ、綺麗さっぱり食べ切った。
先生をトイレに連れて行き、ベッドに戻して洗い物を。
「久さん、まだ? 眠~い」
「はいはーい、もうすぐ」
急いで済ませて俺もトイレに行ってから先生の横に潜り込む。
「ぬくいなあ」
うふふ、と先生が笑って俺の胸に手を這わせてくる。
「おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
寝かしつけて寝息を聞くと眠くなる。
俺も疲れた。おやすみなさい。
翌日も先生を置いて出勤。年始は暇だ。
初釜の分を茶懐石の店が発注するばかり。
疲れもせずに帰宅すると先生が風呂から上がってきた。
「あ、おかえりなさい。お風呂今入ったらあったかいわよ」
「ただいま」
脱いで風呂に入ろうとすると洗濯機回すから、と下着を奪われた。
かわりに唇を奪うと早く入んなさいっとピシャリと尻を叩かれ風呂に追いやられた。
「あ、まだ縄の痕、残ってますね」
「若くないもの」
「腕のサポーター要りますね、出かけるなら」
「そうねぇ」
苦笑してる。
縄の痕が嬉しいって女なら居たが苦笑されるというのは何か新鮮だ。
「お湯、冷めるわよ」
「あ、はい」
とりあえず風呂に入るか。
湯を浴びて軽く洗って風呂に浸かると気持ち良い。
さて、上がったら現金を用意しないとな。
のびーっと伸びて風呂から上がりタオル片手に出て行けば先生にバスタオルを渡された。
「裸で出てきちゃダメでしょ。ほら。頭拭いてあげるから」
「いいよ」
「座りなさいよ」
世話を焼きたいらしい。諦めて座ってされるがままになる。
たまにはいいか。
ある程度タオルドライが終って先生は自分の髪を乾かしに洗面所へ行った。
俺は冷めても来たので着替える。
ドライヤーが終ったのを見計らい交代。
「おなかすいてきちゃった」
「百貨店行ったら先ずは昼飯ですね」
「そうね」
先生が着替えてる間に金を用意して財布に入れる。
それから腕のサポーター。
薄手で滑りの良いもの…ってあったかな。
暫く探すと出てきた。
とりあえずつけさせてみる。
フィット感はそれなりで滑りは良い様だ。
先生が化粧をしている間に外出準備を整えた。
「さてと。行きましょ」
「はい」
車で行って百貨店の人ごみに混ざる。
呉服の催し物の会場を確認しつつ先ずはランチ。
昨日は鮨食ったから今日はイタリアン。
先生は意外と健啖家でしっかり食べても大丈夫、と言うことでコース料理。
たっぷり食べて幸せそう。
ご馳走様をしてから催事会場を見て歩く。
「う~ん。これいいわねぇ…高い…」
「ああ、似合いますねえ。買ってあげる」
「もうちょっと他のも見てから」
結局うろついているうちに良い帯と出会いそっちを買うことになった。
後は普段着にするのに反物を見繕って仕立てに出した。
ちらほらと成人式の買物かな、親子連れがいる。
紐が足りないとか足袋のサイズが合わないとかあるんだろう。
先生も当日は朝から二人ほど着付けるそうだ。
つまり、前日手出し禁止と言うわけで。
夕飯用に地下で弁当を買って帰宅。
先生は明日の朝帰るといってるので朝の分も買った。
帰って暫くいちゃついて先生の見たいテレビを見させてゆっくりさせた。
夜は少し恋人のように抱いて、という希望に応えて。
ちょっと面倒だが仕方あるまい。
髪も乱さず衣類も大して乱さずに抱く。
ちゃんと寝る前に整えておやすみなさい。
軽めだった所為か朝はそれなりに早く先生も目が覚めた。
今日は朝食の準備もしなくて良いからゆっくりと布団の中で朝寝を楽しむ。
そのままついもう一戦してしまった。
起きて昨日買ってあったもので朝飯を食べ、風呂に入って着替えて先生のお宅へ送る。
「ただいまぁ」
「あ、おかえり。山沢さんは?」
「今買ったもの運んでくれてるのよ」
ひょいと顔を出して挨拶した。
「こんにちは、八重子先生」
「いらっしゃい。なに買って来たの」
「ホウレン草と白菜とジャガイモ人参玉葱カレー粉…」
列挙しているとカレーを作るつもり、と先生が補足した。
「絹、ちょっと。ここ」
あ、首筋にキスマーク残ってる。
ぱっと手で覆い隠して顔を赤くして慌てて逃げて行った。
か、可愛い。
「にやけてるんじゃないよ。見えるところに…バカだね」
「へへ、すいません」
台所で下拵えをしていると先生が湿布貼って帰ってきた。肩こり肩こり。うん。
「それ…聞かれても顔赤らめてたらバレますね」
あ、ますます赤くなった。
「ばか、恥ずかしい…」
ふふっと笑って先生にジャガイモを渡す。
「忘れるべく剥きましょうか。それとも」
「だ、駄目っ」
「そんなに慌てなくても。ここじゃ何もしませんよ」
キスくらいはするかもしれないが。
にやっと笑ってやるとそそくさと割烹着を着て包丁を取ってきた。
「手元、集中しないと危ないですよ」
「し、集中させて頂戴よ。あっち向いてて」
「はいはい」
暫く剥かせているうちに落ち着いたようだ。
指示が飛んでくる。
従ってカレーを仕込む。
お昼ご飯は冷しゃぶにしておいた。
ソテーしたホウレン草と金時・紫・金美人参をつけあわせに。
カレーに入れると面白くないのでサラダだ。
うまい。
食後八重子先生が洗い物を、俺たちは家の掃除を。
三時ごろ、お茶を入れてくれた。
おやつはカステラ。
ただし文明堂。今度福砂屋かってきてあげよう。そうしよう。
八重子先生に呼ばれて茶室へ行くと特別に稽古をつけてもらった。
メインは先生への初釜準備だけど。
3時間みっちりの稽古の間に俺はご飯を炊きに立ったり、スープやサラダの準備をした。
先生は流石に手前を忘れてたりはせず少し迷いはするもののクリア。
俺は……沢山怒られた。
やっぱり半月以上稽古してないのと先生にかまけてたのと。
良い時間になったので片付けてカレーを温める。
「お父さん呼んできて頂戴」
「はい」
ぱたぱたと離れへ行って孝弘さんを呼ぶ。
「ご飯できましたよ。今日はカレーです」
「ん」
むくりと起きてのそのそと後をついてくる。
「あ、あとでおやつに羊羹貰ってくださいね。渡してありますから」
「この間のあれか」
「そうですあれです」
正月だから奮発した。
戻ってスープを運びカレーを運ぶ。
サラダも出してみんなそろって食事。
「あ。そうだ。先生」
「なぁに?」
「土曜日これません」
「…どうして?」
「十日恵比寿ですので」
「ごめんなさい、意味がわからないわ」
「………えぇと」
何かっていわれるとどう説明したら良いんだ?
「去年も来てなかったの覚えてませんか」
「あぁ。そうそう、そうだったね。来なかった」
「うーんと。あ、そうだ。酉の市のようなものがあるんです」
「お酉さまね、わかったわ」
「こちらでも11月にえびす講ってないですか」
「そういえばそんなものしてたかね。五穀豊穣って」
「お百姓さんのお祭りなの?」
「関東では農業系ですよね」
「あんたのところは違うのかい?」
「商売繁盛笹持って来い! ですね」
「あ、聞いたことある」
「お商売の神様なのねぇ。そう。じゃ気をつけてね」
「日曜は…どうしましょう。月曜は成人式の着付けですよね」
「んー。来てくれると助かるわ。お手伝いして欲しいから」
「はい、じゃあ適当な時間に」
「おかわり」
「はい。律君は?」
「あ、下さい」
今日はお櫃も台所にある。
台所へ立ってお皿にご飯とカレーを掛けて戻り、渡す。
「ありがとう」
「ん」
「久さん、ついでに私、スープ欲しいわ」
「はいはい」
「これ、絹、あんたねえ」
「立ってるものは親でも使えと昔から言いますよねー」
あはは、と笑いつつスープを少し温めて。
「こんばんはー」
玄関から…あれは司ちゃんか。
先生が出迎えてご飯食べたか聞いてる。
「久さん、ご飯まだなんですって。おねがいね」
「はい」
サラダ、足りるか?
足りなきゃ切ればいいか。
カレーも温めて先にスープを出し、ご飯を皿によそいカレーを掛けて出した。
「いただきます」
「どうぞ」
「あ、お肉、豚じゃないんだ?」
「山沢さんが作ったから」
にこにこと先生は司ちゃんが食べるのを見ている。
優しげで、お母さんの顔してて。ほんわかとした気分になった。
さてと、そんじゃそろそろ帰るかな。
先生方のお皿を引き上げて洗ってから帰る旨を告げ帰宅。
お稽古のない暇な木曜、金曜を過ごした。
土曜になり仕事を終えたらすぐに移動して京都へ。
毎年のようにタクシーで近くまで行く。
交通規制と言うか車が入れないようにしてあるから。
人の流れに従って神社へ。
去年の熊手を納め、列に並び祈願して今年の熊手を授与していただく。
裏戸を叩いて出ていつもの鼈甲屋、と思うとシャッターが閉まっていた。なぜだ…。
タクシーを拾い、新幹線に乗り換え会社へ。
熊手を飾って帰宅した。おなかすいたー。
時計を見る。流石にこの時間からでは先生のお宅のご飯に間に合わないな。
だが鶴屋はまだ開いているはず。
車を走らせて求めに行った。
福ハ内と福梅、都しるべを購入してから飯を食いに行く。
肉食いたい、と思ったので近くの店に聞く。
一人くらいなら何とかなるとかで入れて貰った
赤みの多くて柔らかいのを希望したがさてどうか。
…うーん少し脂は多めだったようだ。先生は連れては来られない。
少し軽めに食べることにした。
ご飯を頼んで正解だ。
ロースをメインに7人前を食べ終えて支払う。
そんなに高くはなかった。
車だからジンジャーエール。帰ってから酒を飲もう。
ゆったり運転して帰宅。先ずは部屋が暖まるまでにと風呂に入る。
寒い!
震えつつも頭と体を洗い終える頃には流石に風呂も暖まる。
風呂から上がって酒瓶とコップを取りストーブの前に座って独酌。
体があったまる。
落ち着いたので寝ることにした。お休み。
休みの朝。
少しばかり朝寝を楽しむが一人でごろごろしてても楽しくない。
支度をして先生に会いに行こう。
軽い朝飯を取って歯を磨き顔を洗い着替えた。
さて。
昨日買ったものを持っていくか。
車に乗って先生のお宅へ行く途中酒屋に入り3本ほど日本酒を買った。
甘口の酒は俺しか飲まないけれど。
先生のお宅へ着いて先ずは台所に酒を持って行って居間へ。
「こんにちはー」
「あ、いらっしゃい。絹、いまあっちの家だよ」
「掃除ですか」
「年末から行ってないから空気を入れ替えてくるって言ってたよ」
年始に俺が一晩寝てたっきりか。
「お酒、買って来ました。それとこれ」
「お干菓子? と。あらー、これ可愛いねえ」
「でしょう。そう思って別に買ってきたんです」
暫くコタツで暖まってると玄関からただいまの声。
「おかえり」
「おかえりなさい」
「あら来てたの」
「ええ、ついさっき」
「買物行くけど一緒に来てくれないかしら。トイレットペーパーとか買いたいのよ」
「はい、待ってください」
さっき脱いだコートを着なおし、買物へ。
先生とお買い物は楽しい。
お昼と夜の分、何しようと迷いつつももち菜やべか菜、ネギに春菊、肉なども買う。
俺はそんな菜っ葉を知らなくて先生に聞くと最近出回っているという。
もち菜は小松菜っぽいものらしい。
べか菜は東京に来てから知った菜っ葉だったな。
こっちでは良く見かける白菜の仲間だ。
夜は鍋か。
んー、たら鍋食いたいなぁ。今度持ってこようかな。
最近魚持って来れてないから。
と先生に言うと今週は却下された。鍋続きは嬉しくないらしい。
色々消耗品を買って家に戻ってお昼ご飯。
もち菜でスパゲティとなった。
サラダに使えるくらいだからこういう使い方もありとか。
やわらかくておいしい。小松菜の仲間とは思えない。
食後は明日の支度を手伝い、それを終えたら茶室の手入れ。
何もせずとも埃は落ちてくるものだなぁ。
やることはやったので後は団欒。
律君達が帰ってきたから夕飯を取った。
先生の隣に座ったものだから肉ばかりと言うわけに行かず結構野菜も食わされた。
ま、良いけどね。健康的で。
食後くつろいでると明日の着付けを依頼する人が着物一式を持ってきた。
先生と別室で確認されている。
紐の本数とか伊達衿とか。
帰られたと思えばもう一組。
その間に律君や孝弘さんが風呂に入られて八重子先生が入って。
「あんた先に入ったら? 待ってたらぬるくなるよ」
「あ、はい。でも」
「いいから」
待つのを諦め風呂に入る。
すぐに先生が来た。
「一緒に入って良いわよね」
「どうぞどうぞ。お背中流しましょう」
ふふっと先生も笑ってる。
髪も体も洗ってゆっくりと温まってそれから先生の背中も拭いて出た。
風呂上りって幸せそうな顔してるなぁ。
居間へ戻るともう律君が戸締りの点検と火の用心をしてくれていた。
「じゃ、髪乾かしたら寝ますか」
「そうね……あなた良いわよね、すぐ乾いて」
「あー。短かいから。ほっといたら乾きますね、湿度低いし」
「ダメよ、冬はちゃんと乾かさないと風邪引くわよ」
「過保護だよねーお母さんって」
律君に笑われてしまった。
あ、ちょっと拗ねた。可愛い。
髪乾かしてくる、と洗面所に行っちゃったが羽織るものも羽織らずだ。
追いかけて着せるとありがとうと言うものの不本意そう。
宥めて髪にドライヤーを掛けてあげた。
「あなたのほうが過保護よね…」
どっちもどっちじゃないかなぁ。
「寝ましょうか、そろそろ」
「そうね」
布団を敷き先生を入れると俺が入るより早く寝息が聞こえてきた。
暫く寝顔を眺めてから俺も寝た。
翌朝は早めに起きて食事の支度をし食べ終えて一服していると着替えるよう言われた。
「手伝ってくれるんでしょ? だったら女らしい格好してくれないと困るわ」
なるほど。
確か会津木綿の長着があった気がする、と言うとそれで良いというので着替えた。
「……あんまり似合わないわね」
「ですね」
暫くして一人目が来た。
先生が着付けて俺は小物を渡したり、帯を締める時に手伝ったり。
良い感じだ。
「これでいいわ。どう?」
「きれーい。良いわねぇ、私も若い頃着たかったわぁ」
お母さんが付き添われていたのだがこの方は若い頃は着られなかったそうだ。
不況とは言え娘には着せたくて頑張ったそうな。
娘さんも嬉しそうだ。
先生が点検をしていると次の人が来た。
「はーい、ちょっと待っててくださいね」
「あら、じゃ先生、ありがとうございました」
先生と挨拶をして次の方と交代。
「あら? 山沢さん?」
おや、中川さんの娘さんか。
「……女性だったのね」
「あ、そっちですか」
先生が大変おかしそうにしている。
指示を受けて肌襦袢やらなんやらかんやら渡しては先生が着せて行く。
今度も綺麗に着せ付け完了したようだ。
「自分で着るのは簡単なのに人に着せるのって難しいのよねぇ」
と中川さんがぼやく。
それには同意する。
先生着せようとしてみたけど大変だった。
お礼を言って帰られて、先生はちょとほっとした顔。
片付けてそれから先生に挨拶。
「え、帰っちゃうの?」
「帰りますよー。俺も部屋の掃除したいし」
「明日してあげるわよ」
「だから…」
「明日まだお稽古ないわよ?」
「…あ。でも家庭のこと優先! ね? 俺だって一人でしたいことが」
「何するって言うのかしら」
失言…。
睨まれてしまった。
小さくなってたら溜息一つ。
「帰って良いわ、今日は。うちの事するわよ…」
「すいません」
「ただし! 浮気はダメよ。許さないわよ?」
「心配性だな。可愛いけどね」
「茶化さないの」
後ろを向いた先生を軽く抱き締めた。
「初釜、いつだっけ?」
「18日…うちのは19日にするわよ」
「了解、土曜日になったら来ますね」
「あら? 持つの?」
「持たせますよ」
耳を舐める。
「こ、ら…。こんなところで」
「あんまり浮気を疑うと次回縛って浣腸するからね」
「わかったわよ、疑わないからそれだけはやめて頂戴…」
脱力してるのも可愛いなぁ。
先生のお尻をぽん、と叩いて着替えてくる、と部屋に戻った。
長着を脱いで衣桁にかけていつものに着替え羽織とコートを手に居間へ。
「あれ? 帰るのかい?」
「はい、洗濯物とかしないといけないので」
「一人暮らしは大変だねえ」
「じゃ、また土曜に」
「はいはい、気をつけて」
「お邪魔しました」
台所から先生がまたね、と言ってる。手を振って挨拶して帰路へ。
危なく車で来てることを忘れそうになったけど。
急ぐ用があるわけではなし、ゆっくりと走らせる。
帰ったら道具の手入れ、しなきゃなぁ。
古いあれやこれ、もう使わない道具は捨てて。先生用に明日あたり買出しに行こう。
今週はそういう時間にしよう。
途中飯を食い、帰宅後納戸に篭り選別をしていると暗くなってきた。
日が落ちる。
飯を食って酒を飲み、風呂に入って寝た。
翌朝からは仕事の後に納戸の整理をする日々が続き、先生からはたまの電話。
納戸からは色々収集していたものを発掘した。
外側が暑さで解けてしまったバイブとか。
ワイヤ鞭とかゴム鞭。
この間買い換えた鞭が使えるのはいつになるだろうなぁ。
出番なかったりして。仕方ないか。
軽く打つ、なんて却って俺には難しい。
ついやりすぎて痛めつけてしまいそうだ。
気持ちよくなる鞭の打ち方、習いに行こうかな。
冷静に打つ、とか。
あ。古い縄出てきた。汚いなぁ。疲れて投げ込んで忘れたかな。
強度を確かめる。引っ張ったらちぎれた。
捕縄にも使えねぇな、こりゃ。捨てちまおう。
などと仕分けに時間がかかり、新しいのを買う暇がないまま週末を迎えた。
今度いつでも良いから一緒に買いに行く…流石にそれは無理か。
浅草で縄を仕入れなければ。
先日のは流石にカビてはいないから大丈夫だが在庫が少なすぎる。
仕事を終えてから買物へ出た。
7mを10本、それから10mを3本。先生ならこれで十分だろう。
その足で先生のお宅へ車を走らせ、到着。
「こんにちはー」
「いらっしゃい」
たたっと走り出てきて…よろけて俺の腕の中へ。
「どうしたんです?」
「あ、足攣っちゃった」
「それは痛いですね」
治まるまで温めてやる。
ひょいっと抱え上げて居間へ連れて戻した。
「なんだ、こんな寒い部屋にいるからじゃないですか?」
「だって一人だと勿体無いんだもの」
少し温度を上げて温まるまで暫くは先生を懐に。
「風邪引いたら困るでしょう」
「うん…」
「八重子先生は?」
「美容院…」
「ああ。あなたは後で?」
「私は明日の朝よ」
「じゃあ今日はこの髪、崩して良いんだ?」
「あ……今、ここじゃだめ…」
「わかってる」
暫く先生の腕を撫でて、温度が上がってきたのを機に離れると少し寂しそう。
「背中、寒い…」
「あぁ。これどうぞ」
着てきた羽織を背にかけてやる。
「じゃなくて…その…」
「ん? どうした?」
何か先生が言おうとしたら八重子先生が帰ってきて先生が顔を背けた。
「あぁ来てたの。綺麗にできたろ? ほら」
正直違いが良くわからないがそうなんだろう。
「さて、お昼食べに行こうか」
「あれ? もう食べられたんじゃなかったんですか」
「美容院行ってたからね」
なるほど。納得して立ち上がる。
先生の羽織とコートを取りに行って戻ると俺の羽織を返してくれた。
冷えないうちに先に着せてそれから俺も着る。
「どこ行くんですか」
「そこの喫茶店。軽食やってるから」
「ああ。あそこのカレー好きです」
先生が笑った。
「相変わらずねぇ」
「そりゃあ変わる方がおかしくないですか?」
「病気したら変わるけどね」
「あー肉が食えなくなったりね、しますね」
喫茶店に入り席に着く。
先生は悩んだ挙句エビピラフを選び八重子先生は野沢菜ピラフを。
俺は勿論カレー。
先生はちょっと呆れてる。
サラダと飲み物のセット。
ちょっと先生方は多かったようだ。
残すのは冥加に悪いと思われるのか無理しようとしてるのを貰って食った。
丁度満腹、ご馳走様。
カツカレーにしなくて正解。
紅茶を飲んでまったりとした午後。
「そろそろ…」
はいはい、と立って会計をして帰宅した。

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h41

食べ終わって夕飯の買出しをしたいというが、させず。
鮨を取る宣言をした。
そのあたりでやっとこれから何をされるのかわかったようだ。
ちょっと引いてる。
「あの、明日お稽古よ? わかってくれてるわよね?」
「ええそうですね。八重子先生にお願いしてあげましょう」
「ちょっと、ねぇだめよ」
「なぁ、俺はあんたのなんなのさ。たまには良いだろ」
先生はうっと詰る。
「でも…」
「なんだよ」
暫く困った顔をしてついに折れた。
俺は八重子先生にお願いの電話をした。
簡単に了承を取り付け、先生に着替えてくるように言った。
着替えてトイレに行って戻ってきた、と思ったら生理になったという。
「嘘ついてんじゃねえだろうな」
「そんな…」
「見せてみろ」
困り顔をしつつも足を開く。
指を這わせると多少のしるし。
「これくらい問題ない。汚さないようにしてやるから来いよ」
いやいやをする。
「おい、いい加減にしろよ。縛っちまうぞ。鞭を使われたいか?」
あ、泣いた。
「泣いたら良いと思ってるのか」
声を上げて泣き始めた。胸を叩いてくる。
その手をねじ上げて床に敷伏せた。
「動くなよ。怪我したくなかったらな」
いやいやと泣く先生の耳元でたっぷり犯してやると言うと更に泣いた。
「痛いことされたくなかったらいつものようにベッドに行けよ。
 優しくしてやっても良いんだぜ」
少し迷ったような気配がした後、ベッドに行くと返事があった。
手を離してやって防水シーツをセッティングする。
それから裸になった先生を引き込んだ。
体が冷えてる。
布団をかぶらせて暫く抱いてゆっくりと冷えている部分を撫で擦る。
涙目で震えていて。
俺を怖がっているのがわかる。
体が温まってきた頃、俺も諦めがついた。
「絹」
「は。はい…」
「トイレ行って始末しておいで。寝ていい」
「え?」
「すまなかった。嫌なこと言ったね。ほら寝巻き着て」
「あ、はい」
そろそろと布団から這い出して寝巻きを着てトイレに行った。
その間に防水シーツを外し、毛布を入れた。
先生が戻ってきて布団に入れる。
「さ、寝な。飯は腹が減ってからにしたら良い」
「あの」
「何か食いたいものあるかな。買物行くけど」
「良い、の? しなくて」
抱き締めると震えた。
「怖かったろ。ごめん。落ち着いたからもう俺は」
「その…ごめんなさい」
「だから。もう怖がらないで寝てくれたら良い」
そっとキスし、頭をなでた。
少しずつ先生の震えがおさまって長い息一つ。
「レバニラ食える?」
「え?」
「鉄分。レバーが良いって言うから」
「あ、うん、嫌いじゃないわ」
「じゃ、晩飯はそれと小松菜の胡麻和えとかどうだろう」
「でも…久さんレバー嫌いよね」
「俺は俺でなんか作るから」
「だったら、ん、それで」
「OK、決まりだね。眠くないかもしれないけど寝てて」
なんとなくうやむやにして寝かせ、買物に出た。
自分で自分がバカらしい。
頭痛を感じつつ買物をしていると先生からメール。
プリンね、はいはい。
買って戻ると先生は寝息を立てていた。
昨日の疲れと、生理の眠気だろう。
しかしあんな脅され方して、良くその部屋でのんきに寝息を立てられるものだ。
苦笑して下拵えをし、先生の横に潜り込む。
少し寝た。
夕方になって起きて夕飯の支度をする。
ご飯が炊けた頃先生も起きてきた。
トイレへ行って椅子に座り、ぼんやりしている。
「おなかすいた…」
まだ半分寝てるな?
「もうすぐ出来ますよ」
「うん…」
最後のおかずが出来たので先生の前に並べた。
ご飯をよそい、お味噌汁を掬う。
お箸と共に食卓に並べたらやっとぼんやりとした目がしゃっきりしてきた。
「あ、おいしそう。いただきます」
「どうぞ」
でもまだちゃんとは起きてないようだ。
こりゃ多分飯食い終わったらまた寝るなぁ。
先に食い終わって酒を持って飲む。
「少しちょうだい」
お猪口を出して注いでやるとおいしそうに飲む。
綺麗に食べ終えてあくび一つ。
「もう一度寝たら?」
「ん、食べてすぐ寝たら牛になっちゃう…」
「じゃさ、俺の膝で寝ない程度に横になるのはどう?」
「そうしてくれる?」
「もう少し飲んでて。これちょっと片付けるから」
「はーい」
食べたお皿をシンクにつけおきにしてトイレに行き、床に長座布団を敷く。
ハーフケットを用意して先生を手招きした。
くいっと残った酒を煽って俺の膝枕で転がりハーフケットを自力で被ろうとして。
うまく被れてなくて腹を立てている。可愛い。
一旦頭を下ろしてちゃんと掛けてやり、それから膝に乗せた。
小一時間ほどテレビを眺めて本気で眠くなったようだ。
先生は起きてトイレに行きベッドに潜った。
俺は台所の片付け。
それから俺も寝る用意をして横にもぐりこんだ。
「おやすみなさい」
「はい、おやすみ」
もはや寝息に近いような、微かな声。
背中をなでて寝かせ、俺も寝た。
翌朝、先生がよく寝ているのを尻目に出勤し、休み明けの暇に耐えつつ。
会社の事務員がイルミネーションがどうとか言っているのを小耳に挟んだ。
どうやら女性はそういうものを好むようだ。
神戸のルミナリエやロームは知ってたが、こっち来てからというもの。
気づいたらなんか光ってるなとしか思ってなかったからなぁ。
先生が生理終わったら連れて行ってみようかな。
喜ぶのかどうかはわからないが。
あ、いやでも畠山、明日連れてくと喜ぶか?
帰ったら聞いてみようかな。
流石に帰ったら起きてるとは思うが…。
客からじゃこの良いのを買いに行くと聞いて俺の分も頼み、ついでに唐辛子も頼んだ。
気が向いたら炊こう。
仕事が終わりの時間に近づいて客が帰ってきたのでお金を返す。
鯛を1枚と伊勢えびの弱いのを買って帰った。
「ただいま」
あれ、反応がない。
風呂場で物音がする。着替えがてら覗けば体を洗ってるところだった。
「お帰りなさい。お昼まだなの。ごめんなさいね、さっき起きたのよ」
「ああ、どこか食べに出ようか? それとも鯛があるけど食べる?」
「お野菜ないんでしょ? 遅くなって良いなら外で良いわ」
「はいはい。何食べたいかな」
「パスタがいいわねえ」
「了解。ところで」
「なに?」
「背中洗ってあげようか?」
「…Hなことしそうだからいらないわよ」
バレたか。
寒いから閉めてって言われた。
苦笑して扉を閉め、手を洗って着替えているとざぶん、ざぶっと浴室内から水音がする。
うーん。うっすら見えるからエロい。気がする。
しちゃいけないと思ってるから余計だな。
風呂場から離れてリビングに行き、寝転ぶと眠くなってしまった。
腹減ったなぁ。
ぼんやりしてると先生が風呂から上がり浴衣を着て出てきた。
ふぅっと息をついてる。
「風呂疲れしたんたらなんか買って来て作るけど」
「ううん、食べに行きたいの。おなかすいてるわよね。ごめんね」
「いや、ゆっくりしてくれたらいいよ」
気にしてるようなので俺も風呂入ってくる、と時間を作ってあげた。
体も頭もざっと洗って上がれば丁度髪を乾かし終えたところだ。
俺が頭を拭いている間に外出の支度を整えている。
「ん、なに着よう…」
「近所の店だから普段着で良いよ」
「じゃこれにしようかしら」
「うんそれで」
「あなたも着物着る?」
「どっちでもいいよ」
「んー…これ着て欲しいわね」
「はいはい」
タオルドライを済ませ、肌襦袢や長襦袢を身に纏う。
着物を着て帯締めて。
先生も着替え終えたようだ。
トイレに行ったら羽織を着て二人で外出。
お店へ入ってメニューを眺める。
先生は栗と鮭とキノコのクリーム、俺は鮭とカボチャと小松菜のチーズパスタ。
うまいなぁ、こってり系だけど野菜も入ってて。
おいしく頂いて帰り道は晩御飯の買出しを。
鯛と伊勢えびがあるというとあとは煮物を作る気になったようだ。
「あ、でも青いものも欲しいわね、何しよう…」
「春菊とほうれん草でゴマ和えにしましょうか」
「あらいいわね、じゃそれと人参と」
色々選んで買い、牛肉も少々買う。
春菊少々と炒めるつもりだ。
お買物を済ませてコンビニに立ち寄り、プリンを買った。
好きだよなぁ、甘いもの。
帰ったらちょっと疲れたようだ。
添い寝をしたくなって着替えて一緒に布団へ潜る。
俺の胸にくっついてきてほんの少しの時間で寝息が聞こえる。可愛い。
んー、良い匂い。
柔らかいし。
女の人だよねー。
とか思ってたらなんか噛まれてるし。
痛いけどまだ甘噛だな、これは。
俺も少し寝て、今度は先に先生が起きた。
揺り起こされて食事の支度をする。
というのもギシギシいってる伊勢えびは流石に先生には調理できなかったようだ。
献立どおりに食事を作って先生と二人で食べる。
煮物はちゃんと先生の味でおいしい。
「あ、そうだ。明日。畠山行きませんか」
「ん?何かあるの?」
タブレットを出してみせる。
「ほら、ここ。11時からミニトークって」
気が乗らなさそう。
「明日も一日寝てるほうが良いかな」
「うん、悪いけどそうさせて頂戴」
「じゃ明日、夕方になったら送りましょう」
「一人で帰れるわよ。夜じゃないから危なくもないし」
「俺が、あなたと一緒にいたいんですよ。俺が」
くす、と先生が笑う。
「次の日も会えるじゃないの」
会えるけどさ。
夕飯を終えて洗い物をしてそれから先生を引き寄せ抱き締めながら時を過ごした。
キスだけに止めるのは中々辛いものがあるけれど。
水曜は休みと言うことで朝寝を楽しみ、でもまだ先生のアレは終ってないので何もせず。
夕方になっておうちまで送り届けた。
上がらずに別れ、帰宅する。
土曜にはあちらの部屋に連れて行こう。うまく言いくるめて。
明日我慢できるのかな、俺。
寝るに寝られずジャコと唐辛子を炊き、布団に入って溜息一つ落として寝た。
翌朝仕事が終った後タッパーを二重にして提げて先生のお宅へ行く。
お稽古の後、夕飯に出してもらった。
やっぱりうまいよなぁ。
自分で作っといてなんだけど。
先生の食べてるのを見ているうちむらむらと来てしまった。
困ったな…どうしよう。今日は絶対させてくれない筈。
とりあえず食べ終わって洗い物を律君がしてくれることになり、団欒。
ダメだ、触れたい。
八重子先生がトイレに立った。
思わず先生を脱がしにかかってしまい、抵抗にあうものの。
止まれなくて肌襦袢までも脱がせた。
「静かに」
無理に伏せさせて背中を触る。
気持ち良い肌だなぁ、と思いつつ背中を揉む。
「何してるんだい、こんなところで」
「え、いやぁ。なんとなくマッサージしたくなっちゃいまして」
戻ってきちゃったよ、八重子先生。
「部屋でしなさい、部屋で」
「寒いじゃないですか」
マッサージとわかって先生は力を抜いてきている。
「この子ったら急に脱がすのよ。びっくりしちゃったわよ。あ、もうちょっと右」
「はいはい」
「そこくすぐったいわ」
「まったく…」
八重子先生が呆れてる。
十分肌の感触を楽しみ先生も緩々にしたので着せようとしたが風呂に入るとの事。
かといってそのまま風呂場まで行くわけじゃなく寝巻きをさっと着て行かれた。
慎み深くしとやかな人だ。
俺なら下帯一つで行って怒られるところだ。
脱がせて散らかした着物や帯を片付ける。
「さて、じゃそろそろ帰ります」
「そうだね、もう良い時間だわ。気をつけて帰んなさいよ」
「はい、お邪魔しました。それじゃまた明後日に」
それなりに満足して帰宅する。
先生の焦ってる顔とか好きなんだよね。
でも土曜日はちゃんと抱かせてもらおう。
少しの期待と殆どの諦めを感じつつ就寝した。
金曜は年末準備に忙しく帰宅が夜の9時過ぎということで。
帰ってすぐに寝たが先生のメールを無視する結果になっていたようだ。
土曜も仕事に追われ、稽古には何とか間に合わせ到着し参加する。
稽古の後、先生にメールしたのにと愚痴られてしまった。
申し訳ない。
「でもこれからそういうこと、増えると思います。すみません」
「年末だから?」
「はい」
ちょっと不機嫌そうだ。
水屋を片付けて夕飯を頂く。
今夜はにんにくも入った匂いのあるものが出た。
明日休みで予定がないから、らしい。
食後、台所を片付け酒を持ち出して先生を呼んだ。
「八重子先生、先生をお借りして良いですか。ちょっと飲みたいので」
「あぁ。いってらっしゃい」
「えぇ? …私ちょっと眠いわよ」
「ま、そう仰らず付き合ってくださいよ」
「帰ってくるの昼過ぎてもいいからいっといで、ほら」
先生は渋々席を立って上着を取りに行った。
寒いのは嫌だから先日設置したリモコンをリモコンするツールでエアコンを先に入れる。
先生を連れて部屋に入ると暖かいことに驚いている。
床暖とストーブをつけ、エアコンを切った。
先生を座らせてぐい飲みを二つ出し、横に座って酒を注ぐ。
「ねぇ先生、少し飲みましょうや」
しょうがないなという顔して飲んでいる。
それでも飲んでいるうちに少し緩んできた。
引き寄せてキスする。
片手で帯締めなどを解いていると腕を叩かれた。
「ん?」
「脱ぐからちょっと待って…」
「すとりっ…痛い痛い、待て! 爪を立てるな!」
「バカなこと言うなら帰るわよ?」
うー。
仕方なく寝巻きに着替えるのを手伝った。
「寒くない?」
「丁度良いくらいかしら。ちょっとさっきまで暑いって思ってたのよね」
「…俺もそう思ってた」
「あんたも着替えたら?」
「そうする」
俺も着替えて先生の横に座る。もう少し飲もう。
でも二度注いだ頃、先生の口からあくびが出だした。
もうこれ以上飲ませてはまた寝られてしまう。
布団に入れるのも危険。と言うことで膝の上に引き寄せて乳を揉んだ。
「ん…」
もはや我慢も限界だ。
キスマークを胸の上につけてしまうほど求めて、先生もそれに応えて乱れてくれた。
終った後もうピロートークも何もあったものじゃなくすぐ寝てしまわれたけど。
朝になってやっぱり先生は起きられなくて。
風呂に湯を張ってから寝ている先生を眺める。
いくつキスマークをつけたのか朝日の中確認しているうちにまたしたくなった。
綺麗な体だなぁ…。
「あ、ダメ…朝なのに…」
「だって綺麗だ。したくなるほどに」
流石に昨日のようにガツガツとはせず優しく丁寧に愛して。
一息ついてから風呂に入った。先生をまず洗って浴槽に入れてから自分を洗う。
「あら。だめじゃないの。こんなに。どうするのよ~」
キスマークつけすぎてて怒られた。
「どうせ八重子先生の前くらいしか着替えないでしょうが」
「だけど困るわよ」
「本当は縄の痕とか、そういうのつけたいんですけどねえ…」
笑って言ってやると赤くなってる。
「可愛いなぁ。好きだよ」
「からかわないで」
「からかってないさ、好きだよ。絹」
身を乗り出してキスをする。
「のぼせそう…」
「そりゃいけない。先に出てて」
慌てて立とうとして立ちくらみしたようだ。
俺の肩に体重を乗せて頭も俺に預けてる。
暫くして息が漏れた。
「ん、もう大丈夫、と思うわ」
「そのまま」
体を拭いてあげて抱き上げてベッドに下ろし、毛布を掛け、膝下に枕を入れる。
「大げさね…」
頭と足首を常温の水で絞ったタオルで冷やした。
「疲れてるところに長湯させた俺が悪いね、ごめん」
常温で台所に隠してあったポカリを飲ませつつ様子を見る。
顔色も見ているうちに良くなってきたようだ。
自分から這い出して俺の膝に座り、もたれかかってくる。
「横になってるほうが良いよ。ほら」
一緒に添い寝のようにしてあげると嬉しそうだ。
「あ、こら。ダメでしょ。何で俺のを触るんですかね」
乳を揉むなと言うに。
くすくす笑いながら触っている。
と、先生の腹がなった。
「おなかすいた?」
「そうみたい」
「喫茶店行きますか? それとも帰る?」
「どうせ帰ってもご飯炊きなおさないとないわよ」
「んじゃ着替えますかね」
先生の身支度の間に八重子先生に喫茶店寄って帰る旨を連絡した。
俺もさっと支度して先生と近くへ。
喫茶店で食事をしていてふと先生がこっちを見た。
「ねぇ。来週寒いんですって。ちゃんと着込まないとダメよ?」
「寒い? どれくらいでしょう」
「ええっとねぇ。確か水曜くらいから冷え込むって言ってた気がするわよ」
「やだなぁ寒いの」
「今くらいだと楽よねえ。こっちはマイナスになるらしいわ」
「うへぇ…そりゃ寒い。水曜の夜ですかね」
「多分そうだったと思うけど。急に冷え込むから困るわね」
「おうちも暖房ちゃんと焚かなきゃ。廊下とか気をつけないといけませんね」
「そうねぇ。ヒートショック? 怖いもの」
「あっちの家やうちの家みたいに全部を温めるのがベストですが先生のお宅はねえ」
「そうなのよね、使ってない部屋が多いから」
「廊下、床暖房にしませんか。随分変わりますよ」
「床を剥がすの? うーん」
「剥がさなくても上置きタイプありますが」
「どれくらい高さ変わるかしらね」
「後でショールーム行きませんか。たしか立川にあった気がします」
「一度家に帰ってからね。お母さんに言ってみるわ」
食後、そのまま先生のお宅へ戻って八重子先生にふってみた。
「結構高いんじゃないの?」
「100程度なら俺出しますよ」
「そんなわけにはいかないわよ」
「だって俺、冷たい床苦手ですしーってことで」
八重子先生には受けたようだ。
「じゃ、ショールーム行きませんか」
「私は良いよ、あんたら二人で行って来たら?」
「良いんですか? 先生が気に入れば即決しちゃいますよ?」
「いいよ」
着替えて先生と二人、ショールームへ。
説明を受けて床材を見せてもらう。
実際にはってある床を歩いて確かめると納得がいった様だ。
「では現地確認など必要ですので近くの販売店のものを向かわせます」
「先生のところは出入りどこでしたっけ。そこかな」
どうもそのようだ。
日取りや時間は先生にお任せしておおよその金額を聞く。
間取りを図にして算出。予算内でいけそう。
近日中に現場確認と言うことでショールームを出るとお昼を過ぎていた。
八重子先生に連絡を入れると作ってないとのこと。
先生が食べたいものを出す店を探し、入った。
結構にうまかったので覚えておこうかな。
帰ってご報告。
そして月曜には下見に来て正式な見積もりが出たようだ。
火曜日のお稽古の後に確認した。
「本当に良いの? こんな大金…」
「どうせ必要じゃないですか。寒いの嫌でしょ?」
勿論かかるガス代の分、いつもお渡ししてる金額に加算する予定である。
乾燥機も連日雨の時は使っているそうだ。
寒くて乾かない冬は特に使い勝手が良いだろう多分。
見積もりを確認したのですぐに工事の日取りを決めてもらった。
まだそんなに予定が詰ってないそうで幸い来週の頭にはと言うことだ。
風呂に入って布団に潜り込む。
先生の体を少し楽しんで先に寝た。
ちょっと不満そうだったけどあまりに眠くて。
朝、求めてくるかと思ったがさすがにそれはなかった。
「寒いわねぇ」
「はい、スリッパ」
「ありがと。あんたもうちょっと寝てたら」
「いや、寒いのは慣れてるから」
ふらーっと台所に行って朝飯を作る。
いつもの水曜。
朝飯を食べたら後は掃除。掃除。掃除。
特に廊下を磨かされた。
やっぱりね、工事の人に汚いところは見せられないって思うよね。
掃除に疲れた頃おやつを頂いて一服し、お夕飯を買いに出る。
先生にもたっぷりとショールにマフラーを巻いて。
「やぁねぇ。これからずっと寒いのかしら」
「もうすぐ大寒ですからね、仕方ないですね」
手を繋いで買物を済ませ帰宅し食事を作る。
今日は肉じゃが。
煮崩れ上等。
つまりはいつもの男爵芋だ。
先生から丁寧に面取りするよう言われた。
フライパンでこんにゃくと一緒に酒で煮て他の材料も入れた。
こんにゃくは最終的にどうするのだろう。
と思ったが先生は普通に盛り付けてしまわれた。
夕飯を食べて帰ろうとすると表の寒さに一瞬震えた。
「マフラーしなきゃだめじゃない」
「はい。持ってきてるの忘れてました」
一度中に戻って首元をしっかり塞ぎそれから改めて別れを。
寒い外気に包まれて電車に乗る頃にはすっかり冷えた。
車内は暑く、コートもマフラーも外した。
置き忘れに注意。
ちゃんと下車時に思い出してコートを着てマフラーを巻いた。
家に着いたが室内も冷え切っている。
ストーブと床暖とエアコンまとめてつけて急いで温めた。
温まった頃エアコンを消し、ストーブと床暖の設定温度を下げ、ベッドに潜り込む。
おやすみなさい。
朝、出勤するのが嫌になる寒さで中に一枚増量して出社。
仕事を終える頃にはすっかり芯まで冷えて先生のお宅へつくと風呂に入れられた。
ざっと温まってすぐに支度をして稽古に間に合わせる。
くすっと先生が笑って俺の髪を撫でてきた。
「ちゃんと乾かさなきゃダメよ」
「あ、はい。部屋、乾燥してるから乾くかなと思いまして」
くしゃっと混ぜっ返されて。
生徒さんがいらしてお稽古が始まる。
夕方までお稽古をして飯を食って帰宅する。
流石に今日はタイマーを掛けておいたからそれなりに部屋が暖まっている。
体と布団を温めてから就寝した。
翌日寒くて忙しくて仕事が終わってすぐ風呂に入って寝てしまった。
その間に先生から電話が数回あったようだ。
夕方、腹が減って目が覚めて気づいてすぐ詫びた。
怒られるかと思ったが逆に心配されてしまい、申し訳なく思う。
まださすがに年末に掛かってきているとは言え心配をかけるほどではない。
用件を聞くとカニがほしいということだった。2匹。おいしいの。
簡単な御用ではあるものの急な寒気で荷物が薄い。
電話を切ってすぐ確保に動いた。
客からの注文分に上乗せして何とかいけそうだ。
ほっとしたら腹が減ったのを思い出して近くの飯屋に行った。
他人丼がうまい。
明日も忙しいのかそれとも物がなさ過ぎて暇なのだろうか。
ふと、そういえばクリスマスに何かプレゼントを買わねばと思い出した。
その足でデパートに行くが…ピンと来ず帰宅した。
何が良いんだろうか。
帯留。いやお稽古ではつけない。
帯締めと帯揚げか。
それともバッグか帯か。
明後日連れ出して自分で選んでもらおうかなぁ。
少し思い悩みつつ就寝し、翌朝仕事をこなしてお稽古へ行く。
家で風呂を浴びてからなので車て来たとは言え少し冷えてしまった。
風呂は沸いてないので火の傍に寄せてもらいそれから支度をする。
まだ12月も一週目と言うこともあり時間には余裕がある。
再来週はきっとそんな余裕はなく、来たらすぐ稽古に入らねばならないだろう。
炉になってからと言うもの、皆さんぎこちない。
風炉の癖でつい正面に座ろうとしたり。
炉になってすぐ逆勝手を指定された生徒さんは大変だった。
うん、俺も大変だったけど。
「週3回じゃ足りないのかしらねぇ」
「いや、その、むしろ雑念が多すぎるというか…」
「山沢さんは仕事してるからね、お稽古のことばかり考えていられないよ」
「そうかしら」
先生方がカニと格闘しているのを見つつ肉を食う。
っと孝弘さんが殻まで食いそうだ。
慌てて先生が奪って剥いてあげてる。
ほのぼのとした光景だ。
「あ。そうだ。先生明日はお暇ですか。暇なら呉服屋行きたいんですが」
「ん? 明日? ちょっと待ってね」
手を拭いてカレンダーと手帳を見ている。
「何もないわよ~」
「じゃすいませんが一緒に来てください」
「はいはい、おかわりは?」
「いや、もう二杯目ですから」
食事を終え後片付けをしてコーヒーを持って先生の横へ戻った。
「ねぇ、何か欲しいものあるの?」
「んっ? 何かとは?」
「明日呉服屋さん行くんでしょ」
「あぁ。コートとか防寒具、買い換えたいのでその見立てをですね。お願いします」
「今着てるの、嫌いなの?」
「嫌いじゃないんですが不具合がありまして」
「そんな風に見えないわよ」
「えーと。寒いから行くのいやでした?」
「えっ あ、違うわよ、ごめんね」
「いや、行きたくないなら良いんです」
「拗ねないで頂戴よ…」
八重子先生が苦笑してる。
「あんた行くならついでに足袋買ってきとくれ、ほら、フリースの」
「あれ暖かそうよね、2足?」
「フリース足袋って滑りませんか?」
「そのままだと滑るかも…滑り止めついてるのかしら」
「何言ってんの、中がフリースで外がストレッチ足袋ってのがあるんだよ」
「え、なんですかそれ。欲しいです」
「そんなのあるのねぇ」
「別珍より温かいらしいからね」
明日売ってたら絶対買おう。
先生が買物メモを書いている。
腰紐とか肌着とか。古くなったのを買い換えたいようだ。
「折角行ったのに忘れたらいやでしょ?」
それから暫くして先生方が風呂に入って出てくる。
「ふー…。あんたも温まってきたら?」
「あ、そうさせてもらいます」
「お風呂は明日洗うからそのままで良いわよー」
タオルを持って風呂に入り温まる。
ま、ついでだからと掃除もして風呂から上がった。
居間に戻ると八重子先生は先に寝たそうで先生は半襟をつけている。
「お裁縫をしている姿とか好きだな」
「なぁに? こんなのがいいの?」
「これを仕事にしてて年がら年中なら飽きるかもしれないけど」
「それはそうねえ、四六時中縫い物してるの見てもねぇ」
ほほほ、と笑いつつさっさとつけ終わり、待針や針を数えて。
「あ…あなたのも持っていらっしゃい、つけてあげるわよ」
「良いんですか、助かります」
「そのかわり後で肩揉みお願いね」
「承りました」
部屋から取ってきてつけてもらう。
手早い。
「はい、出来たわよー」
「やぁほんと手ぇ早いですよね」
「慣れたらそうなるわよ」
「んじゃ揉みましょう」
「あ、部屋でお願い。腰も揉んで欲しいのよ」
「はいはい、片付けて部屋行きましょう」
戸締り火の用心、確かめて寝間に入る。
布団を敷くと先生が身づくろいを済ませてうつ伏せに寝た。
「お願~い」
「うん」
まずは全体を撫でて凝ってる所のピックアップ。
それから少しずつ揉んで緩めていく。
「んー…気持ち良いわぁ」
声が出てしまうようだ。
「あぁ…そこ、もうちょっと…」
パタパタと足音が聞こえる。
手で先生の口を覆った。
「むぐ…?」
「…多分律君。待ってて」
身を起こして障子を開けた
「どうしたのかな? 寒いから早く寝なさい」
「あの、これ。忘れてて」
ん? なんとなく納入書と見える。
中に入れて電気をつけた。
「どうしたのよ」
「講習会の納入書のようですが…今日が期限…」
「ええっ、どうしよう」
「コンビニ納付だから、えーと。まだ時間大丈夫だね。行ってきなさい」
「いくらなの?」
金額を見て慌てて財布を見ている。
「えっとおばあちゃん起こしてきて。お金持ってないか聞いて頂戴」
「あ、まった。起こさなくても俺持ってますから」
財布から出して渡す。
「すいません…」
「先に私たち寝てるから、領収書は明日渡すと良いよ。気をつけて行ってらっしゃい」
「はい」
「気をつけなさいよ」
「うん、ごめん」
障子を閉めてもう一度うつ伏せになるよう言った。
「明日返すわね、ありがとう」
「抱いてる時じゃなくてよかった…」
「…ほんとよね」
「いや、うん。プレイとしてはありなんですけどね」
「やめて頂戴よ」
「わかってますって」
家庭争議は求めてない。面倒くさい。
もう少しほぐして体を緩めて。
「もう良いわ、ありがと。気持ちよかったわ」
俺も横にもぐりこんで布団を被る。
ぴったりと背をくっつけてきた。
ぬくい。良い匂い。
そっと胸に手を差し込みやわらかさを楽しむ。
そのまま眠ってしまったようだ。
朝になって目が覚めた先生にすると思ってたのに、と言われた。
したかったんだけどね。
お昼を食べた後連れ出した。
大手の呉服屋さんへ行き、先ずは足袋と先生の小物を揃え俺のコートを見繕ってもらう。
少し派手かな、とも思ったが先生が似合うといってくれたものにした。
それから帯留めを見せてもらう。
「どれが好き?」
「そうねえ、あらこれいいわね。でも高いわ」
ためつすがめつして見ている。
「それがいい? すいません、包んでもらえますか」
「えっ、いいの?」
「早いけどクリスマスプレゼントですよ」
「あら…ありがとう。嬉しいわ」
お、店の人が会話に反応してクリスマス柄の包装紙にしてくれた。
気が効いてるなぁ。
それからデパートへ行きたいというので連れて行き、色々見て回る。
台所用品など買い換えたかったようだ。
後は孝弘さんの服など買って。
飯を食いに行ってからヒルズのイルミネーションを。
歩くほうが良いかと聞けば車の中からが良いと仰るので通り抜け。
「きれーい…」
「ですねえ」
「あ、今ハートマークあったわよ」
「やっぱりカップルで来る人多いんでしょうね」
先生の不満は助手席に座れないことらしい。
車だとやはり一瞬でもう一見行くことにした。
表参道へ。
「どっちも負けず劣らず良いわぁ」
先生が少女のような顔をしている。可愛いなぁ。
「ねぇ。今日泊まって良いかしら」
「明日お稽古でしょう」
「だってしてほしいもの…」
急ブレーキ掛けそうになった。
「火曜日にしませんか」
「この間も、だったじゃない」
そういえば軽くしかしてなかったっけ。
「良いんですか。うちだと腰抜けるほどしますよ?」
「……そこまではして欲しくないわね」
「火曜にあちらの部屋に行きましょう。それでよくないですか」
「いやなの?」
「お稽古サボらせるのがとってもいやです」
先生が鞄から携帯を出して家に掛けてお稽古を押し付けてる。
電話を切って、お母さんの許可は取ったわよ。と強く言う。
そこまでされちゃ仕方ない。
連れて帰った。
先生はさっさと和室に行ったのでその間に風呂を洗う。
昨日入ったままだったから。
出てくると浴衣に着替え、俺のフリースを背に羽織ってテレビを見ている。
「その格好寒いでしょう」
「うん、ちょっと寒かったから借りたわよ」
「ストーブの前に座れば良いのに」
ベッドに布団乾燥機をセットする。そのまま入る気にはなれない。
「先に風呂にしますか?」
「うーん…」
「どうせ汚れるから後にしますか」
あ、赤くなった。
後ろから抱いて胸に手を差し入れて揉む。
「ねぇ…最近ね。左だけ大きくなった気がするの」
「あーどうしてもこっち揉んじゃうからなぁ。じゃこうしますかね」
胸をはだけさせて手を入れ替えた。
「冷えてますねぇ。温めないとね」
触れている部分から徐々に熱を持っていく。
足を崩させて冷えた足に手を這わせると気持ち良さそうだ。
性的になのかどうかは知らないが。
ゆっくりと上に手を這わせていくと掴まれた。
でも力は入ってなくて。
あそこに軽く触れるとビクッと震えた。
指を割りいれて少し濡れているのを塗り広げ突起を刺激する。
掴む力が強くなる。
喘ぎ声が上がってきた。
きゅっと身を縮めて耐えるかのように。
「ひっ」
軽く爪を立てると悲鳴が上がる。
「ここ、大きくなってきてるよね、初めての時に比べて」
「う、あなたがしたんじゃない…」
「乳首も。段々エッチな体に変わってきたね」
「ばか…恥ずかしいわ」
「欲を言えばもっと求めて欲しいかな。無理だろうけど」
喘いでて俺の言葉なんて聞こえてないようだ。
指を中に入れて玩ぶ。
腕に爪を立てられてちょっと痛いけど楽しくて。
一度逝かせてからベッドに転がした。
体中たっぷり舐めて気持ち良くもさせてむさぼりつくした。
「も~だめぇ…」
ついにばてたようなのでやめてあげた。
「気持ち良いけど…疲れたわ…」
「そりゃあねぇ。もっとしてもいいんですよ」
「ダメ、ストップ!」
慌てて止めてくる。可愛いなー。
「はいはい、寝ちゃいますか」
「もうちょっとこうしてて欲しいの…」
寝るまで、ね。了解。
俺の足に股間を擦り付けてるようだけど足りなかっただろうか。
指摘するとそうじゃないけどなんとなく、だそうだ。
そうこうしてるうちに眠気が来て、先生のあくびが聞こえる。。
「寝ましょうか」
「うん、おやすみなさい」
「おやすみ」
電気を消して寝た。
当然夜中に俺は仕事に行かねばならず、先生を放っておくことになるわけだが。
布団から出て毛布を間に詰める。
多少寒くはなかろう。
支度をして先生の顔を一度覗き込んでから出勤した。
俺がいない間に動けるようなら一人で帰ってお稽古に行くようにと書置きをして。
仕事は暇で今日は早く帰れそうだ。
先生がまだ家にいるようなら昼を食ってもう一戦しても良い。
帰っててくれたら一番良いんだけど。
家に着くと電気がついてる。
いるなぁこれは。
「ただいま」
「お帰りなさい、お昼どうする?」
風呂に入った後のようで髪が濡れている。
「どこか行きますか。風呂入ってる間に乾かしといてくださいね」
「うん」
ちゃんと湯が張ってある。
さっと洗って湯に浸かると大変に温まった。
風呂から出て流石にバスローブを羽織って出ると甲斐甲斐しくも髪を拭いてくれる。
「俺に構ってないで着物着たらどうですか? 食べちゃいますよ」
慌てて手を離して和室へ行った。
今からされるのはいやなようである。
ざっとドライヤーをしてなんとなく乾いたので着替えよう。
先生はお化粧もしている。
「どこ行きます? ん…ホテル?」
それなりの格好してるからなぁ、先生。
「えぇと、天麩羅。ダメかしら」
「はいはいちょっと待ってて」
電話して席があるか聞く。平日だしね、有るよね。
よしよし、ある。30分後。
先生にそう伝えて俺も着替え、トイレを済ませて連れ立った。
「寒いわねえ」
「ま、こんなもんでしょう」
久々の天麩羅はうまくて先生も嬉しそうだ。
クリスマスは行けないから先に楽しませねば。
満腹になって帰宅して、着替えてテレビを見て。
「お稽古どうなってるかしらねえ」
「気になるなら帰りますか?」
「今から帰ってももう遅いわよ。もうちょっとこうさせてて」
俺の胸にもたれてあくび一つ。
「ん、寝れなかった?」
「寝たけど眠くなってきちゃったわ」
「じゃ、寝ますか。添い寝しましょう」
「ダメよ、こんな時間に寝たら夜寝れなくなるじゃない」
「ふむ、んじゃぁ抱かれてください」
「えぇ? お昼間っから何言うのよ。あ、こら、ちょっと」
帯を解いて脱がせてしまった。
縄を取りに行くのはもはや面倒で手拭で手首を巻き上から腰紐で腕を固定した。
胸にも腰紐を通していく。
「さすが正絹は締まりますねえ」
「あの…恥ずかしいわ」
「足も縛っちゃいましょうか」
「だ、だめ…そんなのだめよぅ」
でも腰紐がないんだなこれが。
伊達締めじゃあなぁ。
あ、俺が脱げば良いのか。
帯を解いて襦袢の腰紐を抜き、先生に胡坐をかかせ足首を縛った。
じっくり見ると目が潤んできた。
触れもしてないのに股間も潤んできたようだ。
足袋を脱がさなかったから妙に色っぽい。
あちこち触れて焦らし、お願いさせて。
道具使っても良いとまで言わせた。
足だけ腰紐をほどいてペニバンを持ってきた。
いやいやをしているけどあそこのほうは準備万端。
ゆっくりと焦れるほどの速さで出し入れして、それでも先生は感じているようだ。
先生の足が俺の腰に絡みつく。
嫌がる割に感度が良くて随分俺になれたようだ。
何度か逝かせてから腕の紐をほどき、胸紐もほどいた。
うっすら痕はついているが縄目ではない。
「酷いわ…」
「愛してる。酷くてごめんね、それでもあなたが欲しくてたまらない」
「一緒になんか、住めないわね…」
「あー…、性欲面で?」
「だって毎日したいんでしょう…無理だもの」
「わかってますよ、ええ。無理ですよね」
「でも浮気されるのもいやよ?」
「したら暫くあなたとキスも出来ないのに何でするんですか」
「そう?」
「むしろ…今月後半、俺のいない間あなたがちょっかい出されないか心配で」
ぷっと吹き出されてしまった。
「ばっかねぇ。もう。疲れちゃったわ、ちょっと寝ましょ」
「はーい」
抱き上げて布団に寝かせた。
「着物片付けてくる」
「ん、先寝るわよ」
手を洗ってさっさと衣桁にかけて横に潜り込む。
昼寝昼寝。
おやすみなさい。
夕方を過ぎた頃目が覚めて夕飯を食べに出てその足で先生は電車へ。
うちに寄ってからと思うと帰りたくなくなるなどと嬉しいことを言って。
明日また、と別れた。
帰宅して寝て夜が明ければ仕事をこなし、お稽古に行き先生を軽めに抱いて寝る。
これが出来るのも後一週間。
先生は既に正月準備に掛かっていて俺も少し手伝った。
再来週適当な日にうちの掃除をしてくれるらしい。
本当に助かる。ありがたい。
日々、稽古に来る時間が遅くなって申し訳ないなぁと思いつつもそろそろ月後半に入った。
この火曜のお稽古で俺は一足先にお終いになる。
先生方の終いは翌週月曜日らしい。
火曜日にいらっしゃる生徒さんとも今年はこれでお別れだ。
先生にきっちりと皆さんご挨拶をされて帰られた。
俺も稽古をつけていただいた後、今年の稽古のお礼と来年の稽古をよろしくお願いした。
このときばかりは八重子先生も食事の準備の手を休めて。
馴れ合いにしてしまわれないのが先生方の良いところだと思う。
おいしい夕飯にありついて、先生を抱いて寝るのも今日から年内はない。
つまらんなぁ。
ぼやくとそのかわり三ケ日の後は泊まってあげるとおっしゃる。
それを楽しみにして頑張るしかない。
先生も名残を惜しむかのように寝るのを嫌がり、俺の肌を触りまくっている。
浮気の心配はないと見えて噛まれはしなかったけれど。
たかが半月、と笑われる向きもあろうが、二日に一度以上会ってるからこそ寂しい。
「ねぇ、明後日寒波って聞いてるわ。気をつけてね」
「先生も。積もってたら気をつけてくださいよ」
「積もるかしら」
「多分。お稽古するんですか、そんな日でも」
「そうね、誰も来なかったらお母さんとするわ」
「俺も混ざりたいなぁ」
「無理なこと言わないの」
「だって一緒にいたいんだよ、あなたが好きだから」
うん、と小さく答えがあるが最早眠いらしく会話は無理そうだ。
キスをして撫でてあげてるとすぐに寝息になる。
やっぱり可愛いよなぁ。
俺も眠気に負けた。
翌朝絡みつく足から抜け出すのに苦労しつつも台所へ行き朝食を作り皆で食べる。
ゆっくり出来るのも今日限り。
帰る頃には先生が袖を離してくれなくて困った。
「俺寝てても良いんなら添い寝しに来ますか?」
少しからかい半分に言ったのに食いつかれた。
「だけどあなたも大掃除しないといけないでしょう。疲れるからやめなさい」
「でも…」
「大晦日、来ますから」
ぐずるのをなんとか説得して別れて帰宅した。
寂しいのは俺も一緒だがこればかりは仕方ない。
明日からは気を入れて仕事をするしかないんだから。
一夜明けて今日からは昼から焼鯛や御節の仕込みに加わる。
だが年々正月が近い感覚が薄れているなぁ。
以前なら12月に入った途端あれやこれやと仕込むことが多かったのだが。
最近はまだ何を仕込むとかの情報も得意先から来ない。
ま、それでも鯛を箱詰めして冷凍かける作業があるから早くは帰れない。
夕方に帰宅する日々が続き俺にとって最後の日曜が来た。
先生とのメールのやり取りは続いていて先生もそれなりに忙しそうだ。
今日は茶会に行ったようで何枚か写真が来ている。
疲れて寝ていると鍵の開く音?
「ただいまぁ。疲れたー。あら寝てた? ごめんね」
「あー。らっしゃい」
「もうちょっと寝てたらいいわ」
「うん…」
ぱたぱたと和室で着替えてる気配があり暫くしたら水を使う音がする。
すっかり眠くて寝てしまったようで揺り起こされた。
「ご飯できたわよ」
「んぁ? めし?」
「そうよご飯出来たの。食べないとダメよ」
半分寝ているところを居間まで引きずり出される。
ちゃんとした和食の夕飯。
「うまそう」
「でしょ、温かいうちに食べてね」
寝ぼけつつも食べる。うまい。
うまくて掻っ込んでると先生が変な笑い方をしている。
「どうしました?」
「こぼしてるわよ。そんなに焦って食べなくてもまだあるから…落ち着いて食べなさい」
「あぁ。うまいもんだから、つい」
「ちゃんと食べてるの? 普段」
「夕飯…最近食ってないかな、眠くて」
「だめじゃないの」
「年末大体何キロか落ちますねぇ」
「毎日作りに来たくなるわ」
「それはダメだ」
慌てて却下する。
近所ならまだしも遠いのにそんなことしてたら先生が倒れる。
「あと十日程度だから何とかなるから」
「心配だわ」
「去年と一緒、問題ない」
ごちそうさまをして洗い物に立とうとすると先生に止められた。
だけど座っていると眠くなる。
泊まって良いかと言われ、却下した。
「どうしてダメなの?」
「明日最後でしょうが。最後にサボりは認めませんからね」
「そういうとこ、堅いんだから…」
「いじけてもダメなもんはダメ。送れないから早くお帰んなさい」
「追い出すの?」
「ええ」
むうっとしつつも諦めたようだ。
仕方なさそうに着替え、俺にキスをして抱きついて。暫くして離れる。
「帰るわ」
「はい、気をつけて。酔客に捕まらないように」
「あんたも。体に気をつけなきゃダメよ」
「家が近けりゃ…帰さないで済むのに」
「今更そんなこと言わないでよ…。帰りたくないのわかってる癖に」
暫く玄関先で絡まって先生が諦めをつけて出て行った。
帰したくなかった。
明日、先生がお稽古じゃなければ絶対帰してなんかいなかった。
だけど流石に年内の最終をサボらせるのはね。
いけないだろう。
暫く玄関で見送って見えなくなってから閉めた。
体が冷えてしまった。布団に潜り込む。
枕元に先生が香袋を置いて行ってくれていた。
先生のいつも使っている香だ。
体臭はもっと甘くて濃く感じるが、会えないだけに有難い気がする。
とりあえず後一週間と半分。頑張ろう。
寝て起きて。仕事をして帰って寝る。
朝、天皇誕生日と言うことで旗を出してから寝なおした。
ふと目を覚ますと横に先生がいる、という夢を見た。
起きて空しく思う。
メールは相変わらず続けており、先生が大体の一日の様子を送ってくれる。
たまには写真がついてくる。
仕事が終わって寝るだけの日々が続き、後もう数日となった。
くたびれて帰ると家が綺麗になっていてご飯が作って置いてある。
まだほのかに温かく、さっきまでいてくれたのかと心が温まる思いだ。
外は寒く、体は冷え切っているのに。
おいしい飯も嬉しくて全部食べた。
洗い物をしなくて良いようにと器は捨てて良いもので、本当に気のつく人だ。
風呂に入ったあとベッドでお礼のメールを打っていると気がついた。
香袋が新しくなっている。
シーツも変えてくれていた。
きもちいいなー。
メールを送ってそのまま沈没。
良く寝れて危なく遅刻するところだった。
慌てて出勤し、仕事をする。
午前中はやはりなんとなく暇で合間に先生とメールをする。
昨日俺が寝た後お歳暮が届いたようだ。
今年は去年にプラスして酒も一緒に。
司ちゃん来ると飲むから多め。ついでにコーヒーのカプセルも届いたようだ。
先生は切らしたからって早々買いにいける距離ではなかったから。
特定のカプセルが切れたままになってたんだよね。
先生の好みの味は多めに仕入れた。
午前の仕事が終わり、一度片付けて昼飯を食い午後の仕事をこなす。
昨日より調子は良いのは晩飯を食ったからかもしれない。
これをキープして大晦日を迎えたいので帰宅してすぐに寝た。
翌朝も多少は調子が良い。
本当に近所なら毎日ご馳走になっていたいくらいに食事って大事なんだなと思う。

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h40

お夕飯の買物と、日用品の買出しだ。
トイレットペーパーは律君も買ってきてはくれるが生理用品は流石にね。
洗剤なども選んで。
そうこうするうち少しは気が晴れてきたようだ
「あ、そうそう。連れてってくれるの?」
「はい、八重子先生から許可でました。温泉ありますよ」
「あらーほんと? 嬉しいわ」
「ただそんなに期待しないでくださいよ。仕事で行く予定だったんで」
「いいの、いいの」
すっかり機嫌が直ったようだ。良かった。
沢山の買物をして積み込み、車を走らせる。
「ね、あっちの家行ってもいいわよ」
「夜するのは嫌ですか」
「だって朝起きれないんだもの」
「OK、じゃ参りましょう」
連れて行って暖房を入れ一服してから脱がせた。
「寒…うぅ、お布団もまだ冷たいわねぇ」
「すぐに暑くなりますよ」
まずはキスして。
サブイボが出ていて滑らかではない肌を丁寧に撫でていく。
つん、と乳首が立っていてつい齧った。
「痛いわ…」
甘噛甘噛、問題ない。
暫く両乳首を弄ってるとサブイボも落ち着いたようだ。
布団も先生も俺の体温で温まってきた。
でもまだ背中が冷えてるな。
手を隙間に押し込んで温める。俺の手は暖かいからね。
目がとろんとしてきた。
「寝そうになってるでしょ」
「あ、ごめんなさい、つい」
「優しく、と思うとすぐ寝ちゃうよね、先生。やっぱり激しいのが良いのかな」
「だ、だめよ。帰らなきゃいけないもの…」
「だよね」
寝ない程度に優しく、やや声が出る程度に抱いて布団が暑くなった。
「お風呂入るわ、汗かいちゃった」
「洗ってあげよう」
「ダメ、そう言ってまたする気でしょ。そろそろお夕飯の支度しないといけないのよ?」
「へーい…」
頬を両手で挟まれてキスされた。
先生は俺の長着を羽織って着替えを持って風呂に入る。
えらいよなー。
俺ならそのまま裸で入って裸で出るぞ。
さてちょっと物足りなくはあるが俺も着直さなくてはなぁ。
もぞもぞと布団から出て下着を替えて手早く襦袢を着る。
長着は先生が脱衣所に持っていったんだっけ。
取りに行くと先生が風呂から上がってきた。
うーん、綺麗だ。
ふっと先生が笑って浴衣を羽織る。
「ね、先生、もう一度だけ」
「だめって言ってるでしょ。着替えるから待ってて」
ちぇっ。
長着をまとって待てば着替え終えた先生が帰ろう、と仰る。
仕方なく共に先生のおうちへ戻ると八重子先生にふて腐れた顔していると指摘された。
苦笑しつつ夕飯の支度をする。
先生は湯冷めしちゃ行けないから居間でゆっくりして貰い、下拵えが終わって呼ぶ。
後は味付けだけだからお任せして俺は居間のコタツに足を突っ込んだ。
「うぅーぬくい」
「明後日のお稽古は来るのかい?」
「あ、はい。水曜から行く予定です」
だから明日帰宅したら荷造りしておかねばならん。
明後日もこっち泊まるし。
「久さん、取りに来て頂戴」
「あ、はーい」
ぬくぬくしてたら呼ばれてしまった。
お盆に載せて運んで。
律君も孝弘さんも匂いに釣られて出てきた。
「んー、おいしそう」
「でしょ? 一昨日テレビでやってたのよ」
なるほど、これがさっきのあれか。
何を作らされてるのか良くわかってなかった。
食うと実際うまい。
綺麗さっぱり無くなってご馳走様をしてお片付け。
それから風呂に入って、まったりして戸締り火の用心、寝間に移動した。
休みって早いよな、時間経つの。
あくびを連発する先生を懐に抱いて寝て気づけばもう朝だ。
今日は流石に先生も早起きで朝食を二人でこしらえ、皆で食べる。
昼までにあちこちを片付けた。
お昼ごはんは八重子先生作。三人だからと丼物。
食べた後先生に荷造りのこと、出発時間とうちに来る時間の話を詰めた。
「結構移動時間かかるのねぇ」
新幹線で京都まで、そこから乗り換えはしだてで宮津。そっからはレンタカーだ。
9時半にうちを出て3時半にチェックインの予定をしている。
但馬空港直結の飛行機でも飛んでたら良いんだが。
「乗り遅れると京都からレンタカーで3時間ですからねー」
「電車のほうが楽よねぇ」
「一応特急ですし、トイレついてますしね。車内販売はありませんが」
「ないの? お昼どうするの」
「乗換えが15分程度ですし、新幹線で買って特急で食べましょう」
ホームが端から端の移動ゆえに危険を冒したくはない。
俺だけなら6分有ればいけるけど。
「あ、でもちょっと待って」
電話を掛ける。
まだ予約できるかと聞いたら今日までとのこと。
一旦電話を切り、先生とタブレットで弁当一覧を見る。
先生は結局400kcal台弁当、俺は仙台黒毛和牛弁当とチキンサンドを頼んだ。
新横浜で車内販売の人経由での受け取りになる。
「お肉の弁当に更にチキンサンドねぇ…」
そういいつつ俺の腹肉を抓む。
「何で太らないのかしらね」
「それなりに動いてますから」
「いいわよねぇ」
「あっ」
「どうなさいました?」
「お茶室掃除するの忘れてたよ」
「しときました」
「え、いつ?」
「当日中に。いつも先生仰ってますから」
「なら良かった。うっかりしてたわ」
「偉いわねぇ」
先生が髪を混ぜ繰り返す。
「セットが乱れるー」
くすくす笑ってセットなんてしてないくせにー、と撫で付けてくれた。
「何で七三ですか」
「なんとなく? うふふ」
夕方になってそろそろ、と別れ、帰宅した。
旅行の荷物を作る。
寒いかもしれないので荷物が大きくなる。
…先に宿に送るか、仕事用の上着とか。予備あるし。
天気予報を確認する。特に荒れそうな気配はない。
送ろう、うん。
荷物を作り、クロネコに持ち込んだ。
そうすると持っていく荷物は少なくなり、先生の荷物を持って歩くことが出来る。
用意を終えて食事に出た。
もう時間は遅いから軽めに焼肉を食べに行って、それから寝た。
おやすみなさい。
翌朝、出勤して仕事をする。
暇である。
しょうがない。
社長に出張の時に先生を同伴することを言うと小遣いを貰った。
流石にすべて二人分となるとこの給料でも痛いっちゃ痛いから助かる。
仕事を終え一旦帰宅し風呂に入って先生のお宅に向かった。
お稽古を手伝い、食事を頂いて先生を連れ、うちへ戻る。
先生は少し疲れた表情なので即就寝。
俺は朝食の買物をしてから先生の横に潜りこんだ。
そんなわけで出張当日だ。
先生が簡単な朝ご飯を作ってくれ、食べた後支度をする。
俺は洋服、先生は着物。
「支度、よろしいですか?」
「いいわよー」
「じゃ行きましょうか」
9時半過ぎに家を出て順調に新幹線に乗り京都へ。
寝てるように言ってあったので早々に寝息を立てている。
新横浜を過ぎて車内販売がきた。
支払って弁当を受け取り、バッグから保冷バッグを出し、弁当を入れた。
新幹線の中は暖かいからね。
少し大きいしかさばるがしっかり保冷できるバッグだ。
いわゆる業務用だから柄とかなくて無骨だけど。
後は京都まで電車に揺られて。
先生を手前で起こして乗り換え準備。
降りたら先生の手を引いて足早に山陰線方面へ移動した。
電車は既に到着していたが、時計を確かめれば指定の車両までホームを移動可能だ。
自販機でお茶を購入して指定の車両に乗車し席を確かめて座る。
ふー、と先生が息をつくとドアが閉まった。
「乗り換え出来たわね。なんとか」
「あとはまた駅まで長いので落ち着いたら飯にしましょうね」
宮津までディーゼルが唸る。
弁当を出し先生に預けて保冷バッグを畳んで仕舞った。
ちゃんとひんやりしている。
温かいお茶と共に暖かい車内で食う分には問題ない。
欲を言えば熱々のものを食いたいが。
駅弁を食い尽くしたら先生は車窓風景を楽しんでいる。
俺は続いてサンドイッチを食う。
食べ終わった頃、トイレに行かれた。
戻ってきてすっかり目が冴えたようである。
俺がちょっと眠そうなのを察したのか、肩を引き寄せられた。
「ねぇ。起きてるから寝ても良いわよ」
「ありがとう」
ほんの少し寝ることにして、先生の体温と匂いを楽しむ。
夜には軽めにだが抱いてしまおう。
どうせ寝坊をしても食事の支度をする必要はないから。
揺り起こされて気づけば次は宮津とのことだ。
下車準備をする。
先生にもコートを着せ、俺も上着を着た。
到着、下車。
「さむーい…やっぱり日本海側ねぇ」
「まだ日があるから暖かいですよ。日が落ちると冷えますから早く行きませんとね」
レンタカーを借りに行く。
真っ赤な車体に先生がこれが良いという。
デミオか、まぁいい。
割と剛性あるらしいし4WDみたいだし。雪も降ってないし。
ナビに宿をセットして先生を後部座席に、荷物をバケットに積み込む。
助手席に座れないのはいつも不満らしいけど。
初めて乗る車だから安全運転に勤める。
先生は俺が眠くならないように色々話しかけてくれる。
1時間ちょっと走らせて宿につくとやっと気が楽になった。
大事な人を乗せて長い時間運転はやはりしたくない。
部屋に通される。予想していたより良い部屋で先生も嬉しそうだ。
荷物も届いていたのでさっと片付ける。
早速お風呂に行きたい、と仰るので一緒に行った。
今日は着物じゃないから脱衣所で間違えられても平気だし。
掛湯をして湯に入る。
「うぅー」
「気持ち良~ぃ」
「ぬくいですねぇ」
のんびりと、出張と言うことを忘れそうになる。
湯から上がると先生が洗ってあげる、と持ってきたボディタオルを。
泡を沢山立てて撫でるように洗ってくれた。
俺もお返しに洗って差し上げる。
先生の滑らかな肌が好きだから雑になんて出来ない。
綺麗に濯いだら再度湯に浸かる。
とん、と先生がもたれて来た。
乳が湯の浮力で上向きになっている。若いときはきっと…。
いやまて、ずっと着物生活なら若くても垂れてたか。
「なぁに?」
「なんでもない」
流石に今聞くのはどうかと思う。
「そろそろ上がりましょ」
「はい」
着替えて部屋に戻りくつろぐ。
「ねぇ、あなた明日、朝早いの?」
「あはは、昼からですよ」
「そう。なら良いけど」
「ご飯食べたら寝ちゃうのかしら、って」
「旅に来てそれは顰蹙ですね」
くすっと先生が笑う。
「今日は疲れたでしょ、だから眠くなっちゃったんじゃないかと思ったのよ」
「そうだなぁ。あなた以外となら寝ちゃうかもしれませんね、ほっといて」
だけど恋人と一緒にいて、触り放題なのになんで寝たくなろうか。
「おいで」
呼んで懐に抱く。
「食事まではこうしていたいな」
「そうね…」
昨日久さんと一緒におうちへ行って、先に寝ててと言われて布団に入った。
楽しみで寝付けないかと思ったけど気づけば朝で、久さんが横で寝息を立てている。
朝御飯、作ってあげなきゃ。
でも冷蔵庫に何があるのかしら。
お手洗いを済ませ、冷蔵庫を覗き込むと意外と色々入っていた。
あら? もしかして昨日買いに行ってたのかしら。
助かっちゃったわ。さ、作りましょ作りましょ。
ご飯を炊いてお味噌汁の具を切って。
おかずは…んー…これにしましょ。
手早く作り終えると久さんが起きてきた。
「あー腹減った、うまそう」
「こら、おなかすいたって言いなさいよ」
ほんと男の子みたいなんだから。
めしーと言うので叱りつつ配膳させて朝ご飯を食べる。
嬉しそうよね。
こちらも嬉しくなって。
食べ終わってから身づくろいをしていざ旅行へ。
新幹線では眠くなったら寝て、と言われて寝てしまい、そろそろ降りるよ、と起された。
荷物は全部久さんが持ってくれて手を引かれて乗り換えの電車へ。
電車が動いてすぐ。公園が見える。
「ここ、俺の通ってた学校の裏。であっち。俺の元職場。んでこの下、俺の前の家です」
「あらー。ほんとすぐそこなのね」
何か荷物が多いような、と思ったらお弁当。私に預けて入れ物を仕舞ってる。
「さていただきましょうか」
「冷たいのね」
「車内暖かいから悪くなるよりは、と。ほい、温かいお茶」
山沢さんなりに気を使ってるみたい。
私はお野菜たっぷりのお弁当を頂いて久さんはお肉。
おいしそうだけど私なら胃が重くなりそう。
こっちにして置いてよかったわ。
久さんが食べ終わったと思えばサンドイッチも食べ始めた。
見ているだけで胃が重くなりそうで窓の外を見る。
風景がうちのあたりとは違うわねぇ。
そろそろお手洗い行きたいかも。
久さんがガサガサと片付けだしたので捨てついでにお手洗いへ行った。
…新幹線で行っておけば良かったわ。
ちょっと後悔しつつ席に戻ると久さんが眠そう。
肩を抱いてもたれさせ、寝かせた。
こうしてると他の人からはどう見えるのかしら。
親子やツバメと言うには久さんは若くない。
旦那さんと言うには若い。恋人かしら。不倫カップル?
気持ち良さそうに寝息を立てる久さんを見ているとイタズラしたくなるけれど。
時折山間に町が開ける車窓を楽しみに。
ゆっくり時間が過ぎて次は宮津、とのアナウンス。
久さんを揺り起こし目を覚まさせた。
大きなあくびをして荷物を下ろし、私にコートを渡してくれた。
手早く着ると山沢さんはジャンバー姿。
最近着物姿しか見てなかったから違和感があるわねぇ。
洋服といえば衿のあるものばかりだったもの。
荷物を全部持ってくれて駅に降りる。
電車内との温度差に身をすくめた。
車を借りるから、とレンタカーショップに行くと色々並んでる。
「赤いのが良いわ、あれ可愛いじゃない」
久さんが性能など聞いている。私にはさっぱりわからないけれど大丈夫みたい。
助手席に乗ろうとしたらあなたはこっち、と後部座席。
それも久さんの後ろに座らされる。
「いつもここよねぇ」
「一番そこが安全なんです。シートベルトもしてくださいね」
「あなたの運転で怖いって思ったことないわよ」
「いいからいいから」
納得はしてないけどみっともないから諦めた。
いつもより久さんは緊張して運転しているようだけど。
眠くならないよう適度に話しかけていたらついた。
お部屋に通されると素敵な部屋。
「あ、結構良いな。ランクアップは頼んであったけど心配だったんだ」
「嬉しいわ。ね、お風呂はどうなのかしら」
「はいはい、行きましょう行きましょう」
着替えを手にとって二人連れ。
脱衣所も綺麗で嬉しいわね。
久さんを洗ってあげたら代わりに私も洗ってもらってゆったりお湯に浸かる。
丁寧に洗ってくれるから任せていられる。
お風呂から出て部屋でくつろぐ。
ご飯までもう少し、少し久さんは眠そうにしている。
食べたら寝たら? と言ったけど勿体無いから起きてるって言うの。可愛いわよね。
暫く抱っこされてたんだけどそろそろ時間ね。
ちょっと身づくろいをして。ここは部屋食らしいから。
山沢さんも敢えてちゃんと離れてくれている。
運ばれてくる食事は豪華でおいしそう。
「かには明日頼んでありますからね」
「そうなの?」
「まだ解禁してませんもので…すいませんねえ、他の産地のものならあるんですよ」
仲居さんがすまなさそうにしている。
「だから明日。良い奴頼んでありますからねー」
「で、久さんはやっぱりお肉なのね」
「あはは、これ丹後牛なんですよ。聞いたことないでしょ?」
「ないわねぇ」
「もともと農耕用ですが改良して肉牛になったんですよ。
 中央第二市場を通すと京都肉ってブランドになりますが」
「京都でお肉ってイメージないわねぇ」
「米のイメージもないでしょ。海のイメージもないし」
「ないわー」
「京都の人は東京の米のイメージもありませんけどね」
「そうでしょうねぇ」
おいしい、おいしいと食べていると久さんが微笑んでいる。
「太っちゃうわね」
「運動しませんとね」
うふふ、と笑い返してデザートもおいしい。
満腹で幸せ。
お酒も頂いたし。
「ねぇ、これだけ山があるんだから鹿や猪もいるの?」
「いますいます。食いたいなら昼に食いますか?」
「ううん、折角海の近くだからお魚が良いわ」
だって両方うちのあたりにもいるって話だもの。
仲居さんが片付けに来てテーブルを綺麗にして行った。
上げ据え膳、やっぱり良いわよね♪
お酒だけ残してあって久さんが注いでくれる。
ん、おいしい。
返杯。
もう少し飲みたいのに取り上げられちゃった。
「お風呂、入るんでしょう? ならこの辺にしましょう」
沢山飲んではいると良くないんだそう。
脱衣かごに浴衣を脱いで落とし、久さんと二人で部屋の露天に浸かる。
やんわりと久さんに抱き締められて、手が胸を揉み、股間に伸びてくる。
乳首をこじられるとお腹に不快ではない響き。
早く下にも触れてほしいけれどじらされる。
久さんはいつもそう。私から求めるのを待っている。ずるい。
「そろそろのぼせるね、出ようか」
湯船から出されてバスタオルで拭かれた。
そのまま指が股間を這う。
「あ、だめ、ここじゃ…」
まだ外だもの、聞こえちゃうわ。
「たまにはいいだろう?」
耳元で言われてゾクゾクする。
「ほら、随分と濡れてるじゃないか」
恥ずかしい…。
音を立てて弄られてからだが熱くなる。
「して欲しいんだろ」
思わずいやいやをする。
「正直じゃないなぁ」
久さんが笑って一番敏感なところを刺激してきた。
「そ、そこだめ、声出ちゃ、あっ、うぅっ」
キスされて声を封じられて頭が真っ白になる。
体が痙攣して後はされるがままになった。
久さんのいやらしい問いにうっかり答えては、なぶられて。
私のすべてをむさぼられているような、そんな気がするのよね。
足の指の一本一本まで舐められたり。
「嫌がる顔、良いね。ここはくすぐったい?」
くすぐったいけど感じてしまう。
でもお尻の穴をいじるのだけはやめてほしい。
いつかここにも太いのを、なんていうけど無理よ。
指だけでもこんなに入ってる感じがするのに…。
「あれ? 便秘?」
ばっと顔に血が上った。
「ほら、これ」
「きゃっ中で動かさないでっ」
あ、お手洗い行きたくなってきちゃった。
そう言うと指を抜いてくれて離してくれた。
慌ててお手洗いに入ると久々に出てスッキリ。
手を洗うと既に久さんは浴衣を着て座敷に座ってお酒を飲んでいる。
私も浴衣を着て傍に座った。
「出た?」
「あ、うん…」
「そりゃ良かった。今度便秘になったら言うといい」
「何言ってんのよ…」
恥ずかしいじゃない。
「出させてあげるよ?」
久さんなら確かにいろんな事知ってそうだけど…。
「浣腸とかって言うんでしょ、自分でするわよ」
イチジクくらいしたことあるもの。
「ま、それでも出なけりゃね。出るようにしてあげますよ」
恥ずかしがってたらコップを渡された。
ん、おいしい。
けどお酒じゃなくお水だった。
「風呂の後は血が濃くなるって言いません?」
コップを置いたら杯を渡されて注いでくれる。
いくつか飲んで眠くなりもたれかかった。
「疲れたみたいですね。そろそろ寝ますか?」
「うん…」
抱き上げて布団に入れてくれる。
腰、大丈夫なのかしら。
私から身を離した。すっと温かみが消えて寂しくなる。
あ、お膳を片付けてるみたいね。
そんなのいいのに。
暫くして私の横にもぐりこんできた。
ひんやりしている。
「うぅあったけー」
「行火じゃないわよ」
笑いながら抱き締めてあげて撫でてあげる。
お休みのキスを交わして睡魔に身をゆだねた。
朝、目が覚めて横を見ると先生は幸せそうな顔して寝ている。
やっぱり疲れたんだろう。
起さないようにそっと身を抜いてトイレに行く。
酒臭いな、俺。
シャワーを浴びることにして脱ぎ捨てて風呂。
頭を洗って露天風呂にはいる。
んー、涼しい中、熱い風呂。いいね。
湯を楽しんでいたら先生も起きてきて風呂に入ってきた。
掛湯をして俺の横に。
「綺麗だなぁ、ね、抱いて良いですか」
「こら、朝から何言ってるの。朝御飯の時間もうすぐよ」
「そりゃ残念」
軽くキスだけして温まったらすぐに出て着替える。
朝ご飯を取ってゆっくりとくつろいで先生は昨日の疲れを回復するかのように寝始めた。
昼前に起して、食事に誘うと食事はいらないから仕事してるのを見たいと仰る。
仕方なく俺の着てきたものを着せ俺は仕事着。
あまり動き回らないよう指示して取引先の社長を訪ねた。
その後案内をつけてもらいセリを見学。
購入し当日便で送ってもらう。
先生のお宅に2匹、会社に8匹。
生きたままだ。
運送賃込み30万で話がついて現金で支払った。
宿の買出し人もそれなりのものを仕入れているようでほっとする。
その後取引先の人に教えてもらった店で遅い昼飯を食い、宿へ。
「…かにってあんなに高いのねぇ」
「いやご祝儀相場ですからね」
「え?」
「ほら、築地でも正月にマグロに凄い値段つけるでしょう」
「あ、じゃこれから値下がりするの?」
「しますします」
なぁんだ、と笑って。
「どうします、この後。観光? それとも抱かれる?」
「バカ、もうすぐそんな事言うんだから。観光ってどこかあるの?」
「ここから1時間ほどで野田川っていいまして。ちりめんの資料館かな。あります」
「あら、いいわねぇ。ちりめん…」
「白生地買って染めに出すのも良いですね」
うっとりしてる。
そんなわせで先生を後ろに乗せて歴史館へ。
見学をして、後は先生に色々買って差し上げた。
お土産を宅急便に頼み、宿へ戻り冷えた体を大浴場で温める。
風呂から出て一服したころ、夕食が運ばれてきた。
「あ、かに」
「はい、今日解禁しましたものですから」
「良いかにだね」
「久さんは見てわかるのねぇ」
「この甲の黒いつぶつぶ。これが多いのはうまい奴なんですよ」
「良くご存知ですねぇ」
そりゃこれで商売してるからな。
「で、何で大きいのは一匹? 久さんもしかしてあなた」
「当たり、好きじゃない」
先生が笑って背中をバシバシ叩いてくる。
なんかツボに入ったらしい。
「痛いですよー。ほら、食べましょ」
席に着いておいしい夕飯。
先生は途中から無言になっている。
カニって食うと静かになるよね。
ふと気づき、立っておしぼりを濡らし緩めに絞る。
「先生、ちょっと」
一旦手を拭いてあげた。
「身、出してあげましょうか?」
「お願いするわ…お料理冷めちゃいそう」
せっせと身を出してあげて、味噌も食べ易いように。
セコも外子と内子を取り出して手が汚れず食べれるようにしてあげた。
足も出してあげると驚いている。
「足は食べれないんだと思ってたわ」
「あー手間なんでやらないだけですよ」
蟹味噌に燗酒を入れて渡す。
「おいしいわねぇ。うふふ」
こっぺといえばおやつだから、というと高いんじゃないの? と聞かれた。
「ヤケって言って見た目が汚いのがあるんですよ。売れないんですよね、これがまた」
中身一緒なんだけどねー。
全部綺麗に出してあげて俺は手を洗って自分の飯を食う。
足を1本2本食ったりはするんだけどね。
すっかり満腹になってお酒を楽しみ、お土産を買って戻ると電話。
八重子先生からだ。
生きた蟹が怖くて触れないらしい。
笑いつつ茹で方を教えて律君にやってもらうように言う。
ハサミはぐるぐる巻きにしてあるから挟まれる心配はないはず。
って電話中なのに先生が俺の乳を触ってくる。
良いけどね。まぁ。
電話を切ってからキス。
「いつもやめなさいって言うくせに…先生がそういうことしちゃ駄目だろう?」
「"いつも"のお返しよ」
なるほど。
うまく言うものだ。
少しひんやりしてきた足を撫で、抱きかかえる。
「もう一度風呂に入りましょうか。それから布団にね」
「そうね」
そういいつつ再度キスをして暫く抱いていた。
とん、と先生が胸を押して立ち上がる。
あ、トイレね。
はいはい、と行かせて風呂に入る。
先生はトイレから出てから掛湯をして入ってきた。
「あぁ温か~い」
「やっぱりもう冬にかかってるんですよねぇ」
「湯冷めしちゃう季節よねえ」
「しないように風呂から上がったら早めに布団に入りましょうね、これから」
「あら、そのまま寝かせてくれるの?」
「んー…。三回に一回くらいなら良いですよ」
「なぁに? どうかしたの?」
心配そうな顔をして覗き込まれた。
「何で?」
「だっていつもはすぐにしたいって言うのに…」
「俺にも一応性欲の波ってものがあるんですよ。流石に常にと言うことはなくてですね」
「じゃあ今は?」
「ここで抱いてしまいたい程度には」
自分で聞いておいて照れんなと言うのに。
まぁ可愛いけど。
体が十分温まったので風呂から上がり、寝る準備を整え先生が布団に入った。
俺は荷造り。ある程度は送ってしまうから。
片付けるものはすべて片付けて布団に入ろうとすると寝息が聞こえている。
待たせた俺が悪いのかもしれないがそれは無いだろ…。
かといって寝入りばなを起こせば不機嫌だし。
腹が立つのとそのまま一緒の布団に入れば襲ってしまいそうなのとで。
苛々ともう一つの布団にもぐりこんだ。
布団が冷たい。
明日は帰る日だから今晩は疲れさせるわけに行かない、などと自分を落ち着かせる。
何とか折り合いがついた頃やっと布団も温まり、なんとか寝た。
朝、起きると布団に先生がいて俺の胸に顔を寄せている。
「…おはよう」
「お早う。昨日はごめんなさい」
わかってるなら…諦めるしかないかな。
起きるにはまだ早いから無言で抱いていると、あれ? なんか震えてる?
「どうした? 寒い?」
「あの、怒ってる…わよね。ごめんなさい、許して…」
「怒ってないよ。気にしないで」
背中をなでて落ち着かせる。これは俺が悪かった。
少しして先生は脱力した。
「もう少し寝る? それとも大浴場行く?」
「ん、折角だから…」
「風呂ね。了解」
起きてざっくり整えて羽織を着て風呂へ。
「目が覚める…うぅー」
おっさんみたいな声が出てしまった。
先生が思わず笑って、慌てて顔を背けた。
相変わらずだなぁ、良いって言ってる時はさっさと元に戻ったほうが良いのに。
変に気を使って俺がイラつくパターンに陥りかけた。
幸い他所の人が入ってきた事で険悪化を免れたが。
体を洗ってやってもう一度浸からせる。
その間に俺も体を洗った。
実のところ先生の洗い方は緩くて洗ってる気がしないんだ。
ざっと濯ぎ俺も浸かる事にした。
先生の横に座る。
水ははじかないが綺麗な肌だよなぁ、この人は。
じっくり見てたら恥ずかしそうだ。
可愛いな。
「先、出るわね」
「いや俺ももう出ますよ」
「そう? もうちょっと入ってたら?」
「暑いから」
風呂から上がって体を拭き、脱衣所で着替える。
部屋に戻ったら朝飯か。
今日は何かなぁ。
先生にじゃれたくなって部屋に帰ってから押し倒した。
「あっ、ちょっと…もうすぐ朝御飯なのよ?」
「Hはしませんよー、時間がない。何もしないから上に乗ってよ」
そういうことならと体を入れ替えてくれた。
んー、温かいなー。
頭をなでてキスをするとほんの少し頬を染めている。
おっと何もしないっていったんだった。
「あれ。先生太りましたね?」
「やっぱりわかっちゃう? 重くてごめんなさい」
「もうちょっとくらいは問題ないですよ。でもあれだ、運動しましょう」
あれ、赤くなった。
話題そらしたつもりがHで運動すると思ったらしい。
いいけどね、そっちでも。
暫く感触を楽しんでそろそろご飯の時間。
離してあげて衣服を整え、朝食を頂く。
うん、うまい。
後は着替えて帰るだけだがその前に荷物を送る手続きと支払いを。
先生を部屋に残しフロントへ。
カニ代が結構つくが想定済みだから現金で支払った。
財布が軽くなったなぁ…。
とは言え想定外の出費は今回は無く、余裕はある。
部屋へ戻ると先生が化粧を直しているようだ。
「久さん、あなたもそろそろ着替えないといけないんじゃない?」
「そうですねぇ」
昨日帰ってから外干ししたから服の匂いは随分薄くなっていた。
先生は気にならないと言うのでそれに着替えて帰ることになっている。
少し不本意だが。
とりあえず着替え、忘れ物が無いか点検した。
先生がトイレを済ませ、俺もトイレに行ってからチェックアウト。
車に乗って宮津へと向かう。
助手席と強く要望されたが却下してやはり後部へ座らせた。
早い時間の出立だがすべては電車の本数が少ない為だ。。
特急が少ないものだから…。
ただこの電車に乗れると昼に京都につける。
ゆっくり京都でランチが楽しめるってわけだ。
少し飛ばして駅に着き、車を返却する。
ホームへ行き乗車した。
またこの車両、と先生が微妙な顔をしているが国鉄車両よりは良いだろうと思う。
京都駅まで揺られて着いて、お昼をどうするかと相談すると駅弁で良いと。
駅弁を買って中央口近くの窓口で指定席を問い合わせる。
のぞみのグリーンが普通に取れてホームへ上がった。
「あら? 高くなかった?」 
「狭いの嫌だったから」
特にうっかり3人席なんか取られちゃったら最悪だし。
お弁当を早速に広げていただく。
「んーおいしいわねー」
すっかり機嫌を直したようだ。
俺も肉々しい弁当に手をつけ始めた。
うまい。
「ほんとお肉すきねえ」
「うまいじゃないですか。で、何で先生はまたそれなんですか」
「だっておいしかったんだもの。失敗したくないじゃない?」
「失敗を恐れず開拓しましょうよ」
「いやよ、勿体無いわよ」
苦笑し車内販売のコーヒーを買った。サンドイッチも。
「やっぱりまだ食べるのねぇ」
「だって少ないじゃないですか」
「何で太らないのかしら、本当に…」
「そういう体なんじゃないでしょうかね」
綺麗に食い尽くしてごみを捨てに立つ。
「あ、久さん。お茶買ってきて。温かいので良いわ」
「はいはい」
ごみを捨てて温かいお茶を2本買う。
戻って手渡せば既に眠そう。
「ちょっと寝て良いかしら」
「どうぞ」
乗り物って意外と疲れるからなぁ。
先生が眠りについた後は暇で。
早く着かないかなぁ…。
途中先生が一度トイレに立ち、入れ替わりで俺も行っておいた。
それからは多少すっきりしたようでお喋りをして東京に到着。
先生はそのまま家へ一旦帰るから、と別れた。
これからまた1時間半だから一旦うちに来いと言ったのだが帰りたくなくなるからと。
残念だ。
俺も帰宅した後は疲れていたようですぐに寝てしまった。
翌日出勤し仕事をして土産を配る。
カニは送った翌朝すぐ買われていったそうだ。
ただ次回出張は一人で行きたいなぁ。
ちょっと疲れたし。
仕事が終わってお稽古に行き、夜は今度こそと思ったが疲れてるからとお願いされた。
まぁ確かに俺も疲れてる。
諦めて抱きかかえて寝ることに。
申し訳なさそうな顔を見てると可哀想になって頭をなでてしまった。
暫く背中をなでているうちに先生が寝て、俺も寝て。
翌朝は一緒に朝ご飯を作って食べてから旅行の荷物を広げて洗濯。
先生の下着や俺の下着も。
それからお土産の箱を開く。
ちりめんの白生地を10反と小物類。
染めも縫いも先生のお知り合いのところに頼まれるそうだ。
重目から軽目まで色々。
八重子先生は軽いのが最近はお好みだそうで。
一番重いのを律君のにしようか、など仰っている。
俺は知ってる染屋というと京都になるので自分の分はそのまま預けてきた。
そんなには着ないから3反だけ。
先生も八重子先生も嬉しそう。
今日の昼から早速染屋に持っていくと仰るが休みではないのかな。
そう言うと既に電話してあるんだそうだ。
ま、俺は荷物持ち兼アッシーだろう。
なんだかんだしていたら時間が過ぎた。お昼ごはんにしよう。
軽いものを作って食べて落ち着いたら先生方と荷物を積んで先生のナビで染屋へ。
色々と先生方が色見本を見せてもらって相談している。
京都とは色の選び方がやはり違うよね。
依頼をして帰宅する途中、夕飯の買出しもした。
なんだか疲れたが先生方はそうでもないらしく夕飯の支度をしている。
俺はちょっとごろ寝。
暫くしてそろそろ出来るから、と起こされたがハーフケットを掛けられていた。
ごろ寝のつもりが熟睡していたようだ。
夕飯を頂いて帰宅し、また寝た。
意外と疲れてた?
翌週は普通の一週間でいつものようにお稽古を手伝い、つけてもらい。
火曜の夜は軽くではあるが抱いて。
そんなこんなで週末。
稽古中に違和感に気づきトイレへ行くとやはり今日からだ。
部屋へ寄って下着を替え、用意をして戻った。
今日はお稽古は無し、と言うことにしていただく。
夕飯を頂くと早く寝るように言われた。
「顔色悪いわ…うちのことはいいから」
あんまり勧められるので先に布団に入らせていただいた。
布団が冷たい。
これなら起きて先生を抱っこしてるほうがなんぼかいいじゃないか。
とは思うもののそういうわけにも行かず。
それなりに布団が温まった頃少し転寝をした。
物音で目を覚ますと先生が寝間に入った音で丁度良いからトイレに立つ。
戻ると先生も寝る準備を済ませて布団に入るところだった。
「うー、さむ」
「寒いわよねぇ」
「抱かせて」
「…早く寝なさい」
呆れられた。
「やだ。却下。抱きたい」
「まったくもう。わがまま言うわねぇ」
仕方なさそうに俺の手を掴み胸に差し入れてくれた。
「冷た…」
「あっ、ごめん。手洗ったから」
ふぅ、と先生が息をついて俺を引き寄せる。キス。
しっかり絡ませて唇を離す頃には少しは温まってきた。
俺を煽るのも最近はお手の物のようだ。
布団の中で静かに、優しく抱いて。
耳元で囁かれるうわ言のような俺を好きと言う声に、より大切にしたくなる。
あそこも舐めて十分に楽しみすっかり満足して横に転がった。
すっかり寒くは無くなってむしろ暑い。
「トイレ行ってくる。何なら先寝てて」
「ん…」
ぺたぺたとトイレに行く途中律君に会った。
「うわっ」
慌てて後ろ向いてる…。
自分のなりを見た。これはいけない先生に叱られる。
ざっと直す。
見なかったことにしてくれと頼み、トイレへ。
とは言え見ちゃったんだろうから見なかったことには出来ないか。
明日叱られそうだ。
トイレから戻ると眠そうにして待っていてくれた。
嬉しくて抱きかかえて寝る。
朝は少し先生が遅れて起きてきた。
俺に炬燵に入るように言ってくれてタッチ交代。
うまそうな匂いが漂ってくる。
机の上を片付けて出来るのを待っていると律君が起きてきた。
「おはよう。あれ?」
「あらおはよう。どうしたの」
「いや今日はお母さんが作ってるんだ?」
「私の具合が良くないと気を使ってくださってね」
「お母さん、出来たわよ。あら、律。おはよう」
「はいはい」
八重子先生が配膳して律君が孝弘さんの分を持って行った。
先生の作る御飯が好きだ。
なんだろう、俺が作るのと何がどう違うんだろう。うまいんだよね。
味わって食べて。
お腹が膨れたので洗い物をと思ったのだが律君がやるからと持って行ってくれた。
「優しいなぁ、律君。良い子に育てましたね」
「でしょ。でも学校の成績はねぇ…」
「まぁまぁ、あの大学には入れてちゃんと続いてるんですから」
「でも今度は就職口があるかねぇ」
「文系は今難しいですからね。開さんと二人であっち系をやるか…」
「それは困るわよ」
八重子先生も嫌がっている。
「ところであんた昨日浴衣羽織っただけで夜中お手洗い行ったんだって?」
「あ、ははー…あんな時間誰も遭わないと思ってました」
「久さん…? もしかして律に見られたの? ちゃんとしなきゃ駄目じゃないの」
二人から責められてごめんなさいをした。
「道理で目をあわさないようにしてると思ったわ…」
まぁ幸い昨日は先生にキスマークもつけられてないし、噛まれてもいなかったし。
「いやでも律君、女の裸に耐性無さ過ぎですよね」
ごつん、と頭に拳が落ちてきた。
「あなたみたいに裸でうろうろしないわよ」
まったくもうっと怒られて。
その手を引き寄せる。
「普通お母さんの裸とか見てて気にならなくなるもんですけどねぇ」
「そんなもんかねぇ」
「だって一番身近な女、でしょ? 母親や女兄弟」
「あんたも?」
「いや私は流石に物は同じもんついてますし。むしろ兄貴のはどうなってるかなとか」
「あ、それはわかる気がするわ」
先生もやっぱり気になった時期はあったようだ。
初夜に大きくなったあれ見て吃驚したって。
お兄さんたちはうまく見られないように処理していんだな。
可愛い大事な末っ子の女の子だもんな。
環さんあたりはうっかり見てそうだ。
「で、なんか初心なまま今に至る、ですか」
「そうねぇ。今はあんたの所為ね」
ぴんっと鼻先をはじかれた。
地味に痛い。
「さてと、そろそろ洗濯物しようかね」
「じゃ久さんは…んー。お茶室の拭き掃除お願いね。ゆっくりでいいから」
「はーい」
「私はおふろ洗ってくるわね」
家事を分担してバラバラに動く。
いつもなら俺が風呂掃除だがアレだから外したようだ。
障子の桟や棚の上など気にしつつ拭く。
最後は畳の目にそってしっかりと。
きょろきょろと見回して掃除のやりのこしがないか確認した。
こんなものかな。
腹減ったな。そろそろお昼か。
台所に顔を出すと八重子先生が何か作ってる。
「なに作ってらっしゃるんですか?」
背中から覗き込んだ。
「ん、今日はね。チャーハンにしようと思ってるよ」
「あら、なにべたべたしてるの?」
先生も作業が終ったらしい。
「人聞きの悪い。スキンシップです」
「ほら、手が空いてるならそのハム刻んで頂戴」
先生が包丁を取ってハムを切り始めた。
「何入れるんです?」
「普通のだよ。卵とか。あんた高菜大丈夫なら高菜も入れるけど」
「あ、大丈夫です」
「はいはい、それじゃ食卓片付けてきて頂戴」
「はーい」
ぱたぱたと台所から出て食卓をきれいにしていると先生たちの会話が微かに聞こえる。
何かぼやいて、たしなめられてるみたいだ。
微妙にだけど先生嫉妬してたよね。その辺かな。
炒めてる音がしている。良い匂いだ。
孝弘さんも出てきた。
「もう少しみたいですよ、待っててくださいね」
「律は?」
「10時頃に出かけてくるって出て行かれましたよ」
「できたわよ」
「あ、はい」
台所に取りに行って配膳する。
孝弘さんのは大盛だ。
おかずより米が良いとかいいつつ、おかずがうまいと上機嫌なんだよな。
そんなわけで付け合せの大根のさっと煮がうまい。
飯がうまいのは幸せである。
食べ終わったら洗い物を引き受けて台所へ。
片付いたらコーヒーを淹れて。
4人でコタツの住人だ。
のんびりした日曜が過ぎる。
うつらうつらと気づけば孝弘さんも俺も寝ていた。
いかんいかん。
目が覚めたのを見計らって先生からお夕飯の買物に誘われる。
コートを羽織ってお供した。
「さむーい」
「ですねー…これからもっと寒くなるんでしょう」
「いやねぇ」
「ほんっと嫌ですがしょうがない」
先生が袖口に手を引っ込めちゃったので懐手をして。
「…それはよしなさい」
「じゃ手ぇ繋ぎましょうよ」
「しょうがないわねぇ。ほら」
手を出してくれたので手を握って歩く。
先生はもう気にならないようだ。
色々買って流石に繋いでもいられなくて離したけど。
帰宅してご飯を作って。いただいたら帰る時間だ。
「帰りたくないなぁ。仕事行きたくないや」
「ダメよ。ちゃんと稼いできてね」
「はーい」
軽くキスして別れた。
電車で居眠りしつつ帰宅。
寝巻きに着替えてすぐに布団に入った。
おやすみなさい。
寒い中の一週間が始まり、火曜は先生のお宅でいつものように抱いて。
眠くなってきた頃。
「あ、そうだわ。日曜朝から出かけるのよ。久さんは土曜日帰る?」
「んん?」
「ほら、出来ないのに一緒の布団は嫌とか言ってたでしょ」
「言ってたけど…おでかけかぁ。お友達?」
「そう、お茶の。でどうするの?」
「どうしようかな。考えておく。今すぐ決めろってことじゃないよね」
「土曜までに決めてね」
「OK、じゃ今日は寝ましょう」
軽いキスをして寝かしつける。
木曜の朝、会社から指令があった。丁度良い。
八重子先生に電話して土曜の稽古を休む理由を告げてから稽古場へ行った。
いつものようにお稽古を済ませ、夕飯を頂く。
土曜に来ない旨を告げたら先生は少し嫌な顔をした。
「すいません。ちょっと用がありまして」
「しょうがないわねぇ…」
「まぁまぁ、仕事だって言うんだから仕方ないじゃない」
八重子先生のとりなしもあり、何とか機嫌を直していただいて帰宅した。
忙しき連休前の仕事をこなし土曜の仕事を終えて帰宅する。
昼寝をして夕方、料亭へ。
業者会だ。
「あら、お久しぶり」
「姐さん。お元気そうですね」
宗直さんだ。
「今日はお稽古日だったんじゃないの?」
「やーぁたまには休んでみました」
「不真面目ねー」
稽古の進捗具合を喋って飲んで。男共は若い芸者とはしゃいでる。
今日の参加者で女は俺一人だ。
いつものばあちゃんも今日は息子が代わりに来ている。
話し相手不在になるところだったから宗直さんがいて助かった。
先生から夕飯写真のメールが来た。
姐さんに見られて少し気恥ずかしい。
暫く騒いで業者会がお開きになり三々五々帰宅する。
久しぶりにしっかり飲んだ。
帰りにつまみと明日の朝の分を買って。
ストーブをつけて少し飲み直してから布団に入った。
布団が冷たくて、何でここに先生がいないのかと思う。
少し腹を立てつつも寝た。
翌朝早く、先生から遊びに出た旨メールがある。
折角の連休なのに俺は一人か。
苛立ちのあまり部屋を掃除した。
熱が入ってしまい、昼飯も食わず気づけば外が暗い。
外に食べに出ることにし、着替えて近くの居酒屋へ行く。
ガッツリ食って飲んで憂さを晴らす。
いい加減帰ろう、と思ったのは11時半を過ぎていた。
家に帰ると鍵が開いていて、草履がある。
あぁ、また家に帰らずこっち来ちゃったのか…。
和室を覗けば着物が脱ぎ捨ててあり、ベッドを覗くと寝巻姿で布団に潜り込んでいる。
苦笑して和室の着物を衣桁に掛け、肌襦袢を洗濯籠に入れた。
それからシャワーを浴びて先生の横に潜り込む。
いつもと違いお酒の匂いや化粧の匂いがする。
男の匂いがしないだけマシか。
寝てるの起こすと機嫌が悪くなるのはわかっているがやりたくなって。
熟睡してるから反応は薄い。
途中で目が覚めたようで怒ってる。
それでも構わずに反抗できなくし抱いた。
先生は終った後不満そうに背を向けて寝てしまった。
むかついたので明日いじめてやろう…。
翌朝、9時を過ぎた頃目が覚めた。
先生もまだ寝ている。
腹減った…。
冷蔵庫の中、なんもないんだよな。
ガサガサと冷凍庫を掘り返していると先生が起きた。
「おはよう」
「おはよ、もう早くはないけどね」
「おなかすいたの?」
「なんかないかと思ったけどなんもなかった。買物行くけどどうする」
「そうねぇ、ちょっと待てる? 待てるなら喫茶店行きましょ」
「待ってる。着替えてきて」
先に洗面所を使わせて先生と交代で洗面所を使う。
俺の着替えはすぐ終わるしね。
着替えている先生を見るとむらむら来るが朝からは叱られるしそれより腹が減った。
先生が普段着に着替えて俺も着替え終えて、煙草と財布と携帯だけを身につけた。
トイレだけ行って、外に出る。
先生が俺にくっついてくる。
「寒いわねぇ」
「うん」
近所の喫茶店に入ると暖房が効いてて自然と先生が離れる。
席に着いて先生はホットケーキを頼んだ。
「好きですねえ」
「あんたこそ」
ま、俺もまたカレーを頼んでしまったわけだが。
「昨日、何時帰ってきたの?」
「11時半過ぎてたかな。帰ったら鍵開いてるし草履はあるし。
 着物も脱ぎ散らかしてあったよ。どんだけ飲んだんだって思った」
「あら。そうだった? ごめんなさい、記憶がないのよね」
「これで男の匂いでもしたら問い詰めようかと」
「ばか、女の人よ。昨日会ってたの」
「でも飲みにいったんでしょ? そこで何かあったら。記憶ないんでしょう?」
「…記憶はないけどそんなことするような女だと思ってるのかしら」
「あなたからしなくても男からする奴がいてもおかしくない」
「あなたみたいに?」
食事がきたので話は一時中断。
「本当にあなた嫉妬深いわよね」
食べつつ深い溜息をつかれてしまった。
良い女だから取られそうで怖いとも言えず、苦笑をこぼすしかなかった。

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h38

昼食後は八重子先生がお出かけされて、先生と茶室の手入れをした。
「あ、そうだ。乾燥機、買いません?」
「なぁに、突然」
「噴煙。大体高度3000で隣県に行くんですが今回8000でしょう。来る可能性ありますよ」
「えぇ? その間に山あるのに来るかしら」
「取敢えず3000の時点で山梨に降灰予報が出てましたよ」
「うーん…」
「買うなら来る前じゃないと品薄になります」
「でも高いでしょ」
「出します」
「うちのなのにそんなわけにいかないわ」
「俺のも洗ってもらってるんだからいいんです」
先生は諦めたようだ。
「洗濯機の上に置くの?」
「そうですね、そうしようと思います」
掃除を終えて洗濯機回りの確認。
「なにか希望あります?」
「わからないから任せるわ」
よし、決めた。
東京ガスに連絡し、見積に来てもらうよう言えば明日昼から来れるという。
2時に予約。
「先生、2時から取り付けできるか見に来てくれるそうで。俺も明日昼から来ますから」
「わかったわ、私、お稽古してるけど良いの?」
「ん、先生方のどちらかお呼びすることはあるかもしれません」
「はーい」
それから二人で買物に出て夕飯の支度を始める。
夕方帰宅された八重子先生にも話を通した。
「えぇ? いるかねぇ?」
「降らないとしてもですね、梅雨時とかお二方とも風邪だとかの時良いですよ」
「うーん、でも高いんだろ?」
「ドラム式ほどじゃありません、大丈夫です」
「あんたがどうしてもって言うなら、まぁいいよ」
お許しが出てほっとする。
勝手に付けるわけにはいかないからなぁ。
夕飯を皆で食べてそれから帰宅した。
一応着信履歴を見る。連絡はない。
どこへ行ったんだかなぁ、開さんは。
しかし今回は先生も俺もアレが同じ日というのもあってしなかったが…。
暫くはしたがらないだろうし大丈夫かな、俺。
風呂に入って取敢えずビールを飲んで、そして寝た。
翌日仕事を終え先生のお宅へ向かう。
いつもよりはゆっくりでは有るが。
既に生徒さんも着てお稽古が進んでるようだ。
暫くして業者が来た。
応対し、簡単につくとのことであとは工事契約書にサインが必要。
どちらかお手すきかな?と水屋を伺う。
先生が手が空いたところで、説明してサインをいただいた。
工事は水曜10時からと決定して業者が帰る。
さて、そんじゃ俺も帰るとするか。
暇を告げて帰宅する。
晩飯はどうしようか…途中でうまそうな匂いに引き寄せられ、つい焼肉に手を出した。
先生と一緒じゃ滅多には食えないというのもある。
たまに脂っこいもの食べたいからね。
しっかり食って帰り、早めに寝た。
翌日、鯨が入荷し、皆がうまいと言うので先生のお宅へも持っていくことにした。
台所にいた八重子先生に渡すと微妙な顔。
「刺身でどうぞ」
水屋の用意も整い、生徒さんも来られたのでお稽古をする。
先生は心配事があるのに、それを毛ほども見せず、凄い。
見習いたいものだ。
俺へのお稽古も済ませ、夕飯。
鯨、と聞いてみんな恐る恐る手を出した。
「あ、意外とおいしいね」
「堅くないねぇ」
「給食のイメージしかなかったわ」
そんなこんなで全部なくなり、洗い物を終え居間に戻った。
先生は少し溜息をつきつつ俺にもたれてくる。
…色っぽい。
いや、つけこんではいかん。
孝弘さんは通常通りだがこの人は何があっても普段どおりの気がするからなぁ。
今日も先生はしたくなさそうで俺は諦めて寝かしつけた。
しょうがないよね。
朝、してないけど起きられないのはきっと寝付けなかったからだろう。
やはり朝飯を俺が作って先生を起こす。
「…要らない。もうちょっと寝かせて」
「はい。お腹空いたら言ってくださいね」
「うん」
二度寝する先生の頭を撫でて、食卓に着く。
律君もあちこち声を掛けて探しているそうだ。
早く見つかれば良いのに。
10時になり、工事の人が来た。
手早く作業されてガス漏れなども確認しての動作チェック。
OK。問題なし。
昼には先生が起きてきて、スパゲティを食べる。
カレースパゲティ。
俺が前に作ったのがおいしかったとかで。
冷凍庫に有ったカレーで作られた。
あー…ポークカレーだ。
お二方とも家事も何もする気が起きないらしいので出来る事はやってあげた。
台所をしていると背中にもたれてくる。
ドキッとしたが触りに来たわけではないようだ。
開さんが心配すぎて誰かにくっついていたい、そんなところだろう。
あ、そうだ。
台所を片付け終え、先生に乾燥機の使い方を教えた。
「台風来ますしそれまでに一度使ってみると良いですよ」
カレンダーを見て顔を曇らせた。
「あなたねえ、今日仏滅じゃないの。なんでこんな日に設置するの」
「ああ、今日は成ですから。良い日なんです」
見合いや婚礼、新規事業、開店。種まきから普請造作、引越に良い日で、更に結納大吉。
揉め事をするにはよくない日ではあるが。
「成?」
「ほら、ここにかいてあるでしょう」
日めくりカレンダーの小さく書いてある字を示す。
「次の日曜なんて友引に建ですからいい日ですよね。土いじりと蔵開き以外には」
「そうなの?」
「建は大吉です。あれ? 暦注って見ません? 神宮暦とか」
「年末に売ってるのよね? おばあちゃんがどこかに仕舞ってた様な気がするけど」
「気にする人はそれを見て予定立てたりしますよ」
「そんなの気にしてたら生活できないわよ」
「でしょうねえ」
あはは、と笑って明日か日曜に使ってみることを勧めた。
それから先生と買物に出て夕飯の買物を済ます。
「暑いわねえ」
「残暑ですね」
「衣更えしたのにまた単衣着てるのよ、襦袢」
あ、本当だ。
抱いてないから気づかなかったけど、振りから覗いてる。
色々買って帰って、先生と下拵えをする。
気づいてないようだけど、溜息多い。
ちょっと辛気だな。
先生を居間に帰して俺が作ることにした。
今日は律君遅いのかな。
そろそろ食事が出来そうなんだけど帰ってこない。
「先食べたらどうです?」
「ん、そうねぇ。どうしたのかしら」
「友達と騒いだりしてるんじゃないですか。携帯持ってないから連絡が遅れてるとか」
「あの子も携帯持ったら良いのにねぇ」
怖がりだからなー。
食事を終え、俺は帰宅して就寝。
翌朝仕事中に電話。
律君が帰ってこなかった?
まさかの外泊?
今日は様子を見るけどと心配そうだ。
仕事のあとお稽古に向かう。
お宅へ着き、先生方が食事をしているのを見れば食が進んでない。
二人ともじゃ流石に、ということだろう。
それでも先生は気丈にもお稽古のときだけは気を張ってにこやかにされる。
終った途端溜息だけど。
水屋を片付けていると俺の背に頭を寄せて、ごめんね、と言う。
「どうしたの?」
「溜息ばかりついちゃって。嫌でしょ…」
手を拭いて懐に入れた。
「身内が二人して、なんて溜息出るの当たり前でしょう。早く帰ってくると良いんだけど」
「うん…律、どこ行ってるのかしら…」
「ほら、まだ一日だけだから友達の家とか、女の子と一緒とか」
「だったらいいんだけど…」
「司ちゃん、聞いてみました? 彼女なら行動をともにしてませんかね」
「あ、そうよね、電話してみるわ」
ぐいっと胸を押して俺から離れ、電話しだす。
晶ちゃんにも。
今のところ心当たりは無いようでがっくりと肩を落として俺の膝に来た。
「調べるって言ってくれたけど」
「俺もちょっと探しはしますが接点が少ないからなあ」
八重子先生が食事と呼びに来て取敢えず食卓へ。
孝弘さんにも先生が相談。
表情からすると今回はかかわってなさそうな…気がする。
食事を終えて帰るとき、先生が寂しそうだ。
「明日、また来ます。明後日も来ても良いですよ」
「来てくれるの?」
「ええ。寂しいのなら」
「本当は帰したくないわ。でもあなたお仕事だものね…」
「こればっかりは勝手休み出来ませんからね」
引き寄せて撫でて。暫くして離れ、別れた。
帰宅して就寝。
木曜も暇で。早めに先生のお宅へ。
「こんにちは。先生…ちゃんと食べないといけませんよ」
「あ、いらっしゃい。胃にもたれちゃうのよね」
おもやつれして可哀想だ。
それでもお稽古となると背筋がぴんと伸びて気配も朗らかになる。
無理してるの知ってるだけにサポートをしっかりして差し上げ、遅滞なく終った。
「明日も来ますね、お手伝いさせてください」
「いいの? 疲れない?」
「大丈夫。俺が強いの知ってるでしょう」
軽くキスだけして帰宅した。
さてさて金曜、いつもなら仕事の後は昼寝をしているが今日は特別に。
ブリと小ヨコを持って先生のお宅へ着いた。
「ん? 山沢さん? どうしたの」
八重子先生に驚かれた。
「や、お疲れみたいですからお手伝いにと」
「ああ。ありがとうねえ」
「台所に魚置いてあるんで夕飯にでもどうぞ」
水屋を用意してお茶室をざっと雑巾がけし、生徒さんを待つ。
生徒さんが来ると食事と小用を済ませた先生が戻ってきてお稽古開始。
上の方の水屋の準備は結構大変だ。
間違えないように気をつけつつ、稽古を眺める。
難しい点前をあまり間違えずにされていて修練の差かな。
皆さん帰られた後、先生が俺にもたれてきた。
「疲れたわ…」
だろうなぁ。
「水屋、やっときますから居間でくつろいで来たらどうですか」
「邪魔かしら?」
「そうじゃなくて」
ちょっと慌てたら八重子先生が絹ー、と呼んでる。
はーい、と先生が居間へ行った。
水屋を仕舞いにかかり、片付けていく。
騒がしいがどうしたのだろう。
片付け終わって居間に顔出すと律君がぼろぼろになって帰ってきてた。
先生がしがみついてるが…。
「先生、律君風呂に入れたほうが良いかと。怪我の治療しませんと」
「あ、そうよね。そうよね、お風呂、一人で入れる?」
「うん、大丈夫」
「手伝ってあげるから、ほら」
「いいよ、一人で入るって」
「あ。いや私と入ろう。傷口かなり洗う必要あるから」
「えぇー」
嫌がりはしたものの強制的に一緒に入る。
傷を洗ってると声にならない悲鳴を上げているがこればっかりは仕方ない。
全身くまなく触れてみる。
先生が心配そうにしているが打撲と擦り傷だな。
一応破傷風が気になるから病院へ行くことに。
先生と律君を乗せて行き、付き添う。
注射は嫌そうだなぁ。
律君が消毒されるのにうめく声に先生は耳をふさぎたい様子。
俺の腕を握り締める、その手も汗ばんでる。
終って会計を済ませて帰宅。
「どうだった?」
「打撲と擦り傷だけだったわ、よかった」
「今日は熱が高くなるって言ってましたよ。布団敷いてください、律君寝かせます」
「はいはい」
既に発熱してぐったりしてる。
先生が横に着いて今日は様子をしっかり見るそうだ。
「じゃ、私はこれにて」
「今日はありがとねえ、助かったよ」
「いえ、無事に見つかってよかったですね。ではまた明日」
帰宅途中パンを買い食らいつつ移動して空腹をごまかした。
家に着いてすぐに布団に潜り込む。
疲れた。
夢を見ることもなく朝が来て仕事へ行く。
土曜日なのに思ったほどでもない。
台風来てるからだろう。
先生から焼鯛を頼まれたので焼いてもらって帰宅、先生のお宅へ向かった。
「こんにちは。具合どうです?」
「あ、いらっしゃい。律? 熱下がったわよ」
ひょいと先生の頤に手を掛けてこちらを向かせた。
「クマ、結構酷いですね」
「ほんと? わかっちゃう?」
「今日はお稽古終ったらすぐ飯食って寝たほうが良いと思いますよ」
「あ、でもそれじゃあなた…大丈夫?」
にっと笑って水屋の支度にかかった。
お稽古も機嫌よくされていて、後は開さんさえ帰ってきてくれればと思う。
お夕飯を食べると眠くなったようで早々にお布団へ。
八重子先生と俺は暫く団欒してから片付けて戸締りなどして各自部屋へと別れた。
部屋に戻ると先生はすっかり気持ち良さそうな寝息を立てている。
着替えて横に入ると寝返りを打って俺に絡まってきた。
可愛い。
俺も疲れていたこともあり、すぐに寝た。
夜半、先生が懐の中でもぞもぞと動く。
「どうしたの」
「ぁ…その…、夢、見ちゃって」
そっと俺の手を股間に誘導する。
なるほと、そういう夢ね。
前戯的なものをすっ飛ばして直接股間を弄る。
声が出ない程度に加減して逝かせたが物足りなさそうだ。
「今からあちら、行きましょう」
「…はい」
恥ずかしそうに浴衣の上からもう一枚重ねて着、物音を立てないように移動した。
夜更けとは言うものの1時すぎ。
まだ沢山楽しめる。
部屋に入って脱がせ、ベッドに潜り込む。
少し冷めた気分をキスで煽り、たっぷり泣かせる。
眠気が来たようだ。
少し迷ったが着替えさせて抱きかかえて戻り、布団に寝かせた。
八重子先生に言ってないから、いるはずのものがいない騒ぎは困る。
幸せそうな寝息が心地よく、俺もすぐまた眠りに引き込まれた。
翌朝、寝過ごした。
目が覚めたら日が昇っている。
時計を見れば7時過ぎ、慌てて台所に行くが八重子先生も起きてないようだ。
取敢えずご飯炊かねばなるまい。
米を研いで水につけてる暇がないのでそのまま炊く。
うーん、朝御飯何作ろう。
冷蔵庫を確認…。オムレツとベーコンとサラダで良いか。
ご飯がようやく炊けて配膳した頃、皆が起きてきた。
「おはよう…お母さんは?」
「お早う、律君。まだ寝てると思うから起こしてきてくれるかな。八重子先生も」
「二人とも? 珍しいね」
「私も寝過ごしちゃったよ。孝弘さんも出来たらよろしく」
「あ、はい」
台所に戻ってスープを出すと三々五々、起き出して来た。
「おはようー」
「おはようございます」
「おはよ、寝過ごしちゃったねぇ」
「おはようございます、そんな日もありますよね」
食卓に着いていただきます。
お櫃は先生。
「ん? あら? ちょっと硬いわね」
「すいません、私も寝過ごしました。吸水させてません」
「あらあら、そうなの? 仕方ないわねぇ」
テレビを見ると明日朝方台風が来るとのこと。
「あなた大丈夫?」
「出勤する頃はまだ近畿でしょう、大丈夫ですよ、きっとね」
「あんまりだったら休みなさい」
「そうですね」
「律、あんたも今日は用事あるなら早めに済ましなさいよ」
「あ、うん」
さっさとご馳走様をして食後のコーヒー。
律君が出かける用意をしている。
ブラックスーツ? 葬式か。
先生は今日はある程度疲れも取れ、律君が帰ったことで落ち着いた様子。
ということで茶道具の入れ替えに掛かった。
夏の道具を仕舞って、秋の道具立てに。
昼を過ぎて律君が戻った。
少し雨が強くなっている。
「あ、そうそう。旅行行くの?」
「ん?」
「ほら、今度の連休」
「どうしましょうか、そっちも台風来てますし」
「…うーん。来なかったら、でどう?」
「いいですよ」
「じゃ、そうしましょ」
「来ないと良いなぁ」
「そうねえ。それよりそろそろあんた帰んなさい。雨ひどくなってきたわよ」
「あ、はい」
暗雲立ち込めている。
「先生も危なそうだと思うなら避難してくださいね」
「大丈夫でしょ」
「裏山が怖いじゃないですか」
「うーん…考えとくわ」
誰もいないのを見て軽くキス。
「昨日、あなた可愛かったよ」
「やだ、ばか。早く帰んなさい」
背中を押されてしまった。
あはは、と笑って片付けて先生のお宅を出る。
帰宅すると本格的に降り始めたようだ。
カッパの用意だけして就寝した。
翌朝、雨の中出勤する。
お客さんも来ない上にキャンセルの電話ばかりで仕事にならない。
仕事が終わって帰ろうとすると道が川になっているところがあるらしい。
心配になって先生に電話するが、あちらはそれほどでも無いようでひと安心だ。
帰って心配をされたが俺は長靴だし合羽着てるし。
問題なく帰宅した。
けど昼から暇でしょうがない。
昼寝をしている間に台風は終わったようだ。
夜。テレビをつけるとあちこちで土砂崩れがあったなどニュースが凄い。
古い友人にメールをし、無事を確かめた。
幸い誰も被害にはあわなかったようだが…今年は酷いな。
外はといえば水が引いてるのでコンビニへ行き、飯を買って帰ると先生からメール。
何食べたの?と。
うーん、これは教えたら叱られるな。
仕方ない。
冷蔵庫の保存食、漬物を加算してメールを返した。
今度は塩分が多すぎる、とお叱りの電話が。
苦笑。
明日、先生がまた野菜責めにするんだろうからいいじゃないか。
そう答えると少しむっとした気配。
明日、嫌いな物尽くしにするわよ? と言われて降参した。
素直にごめんなさいと言うと野菜は多いけど好きなものにしてくれるという。
優しいよなぁ。
暫く喋って、眠くなったというと柔らかな声でもう寝なさいと。
お休みの挨拶を交わして電話を切った。
翌朝、仕事は暇で時間が過ぎない。
ふと見れば甘えびが売れずに残っている。
少し考えて買い取った。
先生と食べよう。
仕事を終えて先生のお宅に向かう。
台所に置いてからお稽古の準備を整え、茶室で待つ。
生徒さんが来て先生も支度が済み、お稽古が始まった。
サラサラと中置きの稽古。
いつもは壁際の風炉を中央に置いて水指を壁際へ。
少し戸惑いつつも皆さん何とかお稽古。
炭手前も先生の指名した生徒さんが行なった。
稽古が終って水屋を片付け、食卓へ。
「あら、えび? おいしそうね」
俺へは野菜尽くしと豚のしょうが焼き。
ん、うまい。
「甘~い♪」
「おいしいねぇ」
甘エビに手を汚しつつ、先生方はうれしそうだ。
買って来た甲斐もあった。
こちらの地域ではトウガラシなどとも言う。
唐揚もうまいエビだが、刺身で食うのが一番だ。
「おかわり」
先生は手が汚れてるので俺が受け、よそって孝弘さんに渡した。
俺は野菜責めで満腹。
食事が終って片付けてしばしの団欒。
順送りに風呂に入って寝間に引き上げた。
しっとりとした先生を懐に抱いていたら寝息が聞こえてきた。
やりそびれた。残念。
諦めて寝て起きていつもの水曜日が始まる。
家事を手伝い、お買物にも付き合った。
夕飯をいただいてからの帰宅。
最近すっかり安定してきた気がする。
良いことだ。
ベッドにもぐりこみ早めの就寝。
休み明けの仕事は暇で早く終ってしまう。
ゆっくりと支度をして先生のお宅へ向かい、稽古の助手。
俺への稽古もつけてもらった後、水屋を片付けていると先生が背中に触れた。
「ん? どうされました?」
「ね、旅行、連れてってくれる?」
「旅行?」
「ほら、連休に京都って行ってたじゃないの」
「あぁ旅行ね、旅行…台風来てるのに?」
「だって13日の夜からって言ってるわよ、京都」
「足が遅くなってるとは聞いてますけど。新幹線止まったらどうするんですか」
「止まったらあなたの家に泊めて頂戴」
「あー…はい。いつから行きますか」
「土曜、お稽古終ったらすぐでどうかしら」
「お夕飯は」
「新幹線の駅弁で良いでしょ」
「じゃ八重子先生に話を通して置いてください」
「ちょっと待っててね、今言ってくるわ」
宿と電車手配しないといけないな。
さっとタブレットで調べてみるとキャンセルがあるようで良い宿が手配できた。
電車の手配もする。
禁煙車のできればグリーン。
余裕で有った。やっぱりキャンセルが多いのかな?
手配を済ませた頃、先生が戻ってきて水屋の片付けを再開する。
「どうでしたか」
「構わないって。水屋も律に片付けてもらうわ」
「いいんですか?」
「そうしないと電車の時間遅くなるわよ」
「まぁそうですけど」
「荷物どうしたら良いかしら。あなた全部持ってくれる? それとも送っちゃう?」
「台風の影響あると困るからお持ちしましょう」
「じゃ明日のうちに荷物作っておくわね」
「はい、俺も用意してから来ますね」
片付け終えて食卓へ。
今日は何かなぁ。
へぇ、先生方はエビしんじょのお吸い物か。
また面倒なものを。
俺には豚バラの炒めたのに大根おろしと薬味、ポン酢を添えたのをメインに。
先生が律君に色々といない間の家の事について言ってる。
「おばあちゃんは家にいるんだよね?」
「いるわよ。でもほら。おばあちゃんだってお出かけするかもしれないでしょ」
「そうなったら食事は出前取ったら良いからね」
「お父さんの分はご飯炊いて頂戴ね」
「何しに行くんだっけ」
「展覧会と資料館と博物館の予定してるのよ」
「やっぱり京都だと沢山あるの?」
「常設展が随分有るからね、あっちは」
「大西は行きたいわ」
「はい、ぜひ」
食べ終わって片付けて帰る段になり、先生が見送ってくれた。
「じゃ、あさって楽しみにしてるわね」
「楽しみですね。じゃあ失礼します」
「またね」
機嫌よく帰宅して、明日の仕事に備えて寝た。
翌日は連休前なのにそこまで忙しくない。台風の影響だろうか。
仕事を終えて食事をして帰宅。
昼からは旅行の荷物を作ることにした。
着物バッグにあれこれ詰め込み、更にボストンを。
下着や小物類、縄とペニバンだけだが。
なんせ何か足りなきゃ家から取れば良いわけで。
勝手知ったる京都では特にさしたる荷物も要らない。
すっかり作り終えればそろそろ夕刻。
小鯛を造っておいたのでそれをアテに少し飲んでから寝た。
土曜は忙しく、流石に連休だ。
客先からまだ届かないなど電話が入り、手が空いた時には私も配達に出た。
それでも昼過ぎには仕事が終わり慌てて帰宅し整えて先生のお宅へ。
既に稽古が始まっていて、遅刻を詫び、混ざった。
やはり今日は数人お休みらしい。連休だもんね。
先生と協力して早めに終らせると水屋を片付ける時間が出来た。
俺が片付けてる間に先生が旅行の荷物を玄関へ出し、着替え始める。
俺も終わり次第着替え出立の用意が出来た。
八重子先生に挨拶して荷物を確認、すべて持って移動を開始した。
「せわしないけど仕方ありませんね」
「お稽古日だもの」
荷物を忘れないように、乗り継ぐ。
新幹線で駅弁を購入して広げた。
俺は牛すき重、先生は野菜たっぷり弁当。さすがだ。
食べ終わって物足りなく思っていたら車販が来た。
サンドイッチを貰ってコーヒーと温かいお茶を買い、先生にお茶を渡す。
くすくす笑いつつ先生もお弁当を食べきって満腹な様子。
俺もサンドイッチを平らげ、ごみを捨てに立った。
ついでに温かいお茶を自販機で買い、戻る。
っと先生が車掌と話している。
切符の改めか。
近寄って懐から出して見せ、確認は済んだ。
にこっと先生が車掌に微笑む。
俺は少しむっとする。
座ってそう言うと笑われた。
「ばかね、他の人から見たらただのおばさんよ」
「美人さんですから。ただのとは思ってないかと」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
うふっと笑う。可愛い。
ゆったりと喋りながら夜が更ける。
すっかり暗くなり先生が眠くなった頃、到着しタクシーで宿泊先に移動した。
「あなた、ちゃんと良い宿知ってるのね」
「今回はキャンセルが出たそうで幸いですよ」
荷物を片付け、明日の用意をしたら早速シャワーを浴び、着替えてベッドに潜り込む。
「ねぇ…しなくていいの?」
「今日したらあなた明日資料館とか無理でしょう?」
「そうね」
暫く撫でていたが突然先生が起きた。
「あ、忘れてたわ」
寝る前のトイレか。
戻ってきて俺の胸を枕に寝始めた。
よしよし、可愛いな。安心しきっている。
先生のぬくもりと寝息に引き込まれ、寝た。
翌朝、食事をして支度し、出る。まずは定番の資料館。
丁度名碗展を開催していた。
白鷺、広沢、三宝に小原木など名器と呼ばれる茶碗だ。
楽しんだ後西陣織会館へ。
少し買物と目の保養をして、楽美術館。
やっぱり楽は良いなぁ。
欲しくなる。
見終わった後どこかでお昼をいただこう、となり職員にお勧めを聞いてみる。
ここから二筋下がった町屋とのことで先生と歩く。
危なく普通過ぎて通り過ぎるとこだったが先生に引き止められてわかった。
入ると古書店でもあるらしい。
先生はカレー、俺はガッツリ系を予想したプレートを頼んだ。
しかしながら出てきたものを見て先生がそっちが良いというので交換。
肉だけ半分くれた。
ま、ね。プレートの中身は俺の苦手とするものが多かったから良いんだけど。
一旦宿に戻り小用を済ませて午後は岡崎エリア。
大西へ行き、泉屋と野村を回る。
もう3時半、そろそろとタクシーを上七軒に回してもらった
4時前に入場して席に着く。
ブザーが鳴り、静かになると真っ暗になった。
開幕。
晒し三番叟であけて子の日。
おさん茂兵衛。
駆け落ちもので有名だ。
先生が俺の手に触れてくるのは自分の現状と重ね合わせてるのだろうか。
休憩時間に先生がトイレに行き、俺は一服。
〆は枕獅子。
鏡獅子の元になったやつだね。
しかし当時の人も傾城物を大奥に持ってくるなんて大胆なことをしたのか。
すっかり鏡獅子が有名になって枕獅子は見なくなった。
番組が終って千秋楽、良い会だった。
先生と腕を組み歌舞練場の裏へ出て歩く。
少し寒そう。
俺の羽織を着せた。
「暖かいわ…何度目かしら」
「ふふ、今日は冷えますよね」
手を握って料理屋さんへ入る。
「どうも」
「あ、いらっしゃい、どうぞ」
仲居に従って部屋に通され、席に着く。
「お酒はどうされますか?」
とメニューを貰って冷酒を二つ頼み、待っていると酒が来た。
まずは乾杯。
暫くして芸妓が一人、来た。
「へ、おおきに、おまっとうはんどした」
「やぁお久しぶりですね」
「へぇへぇ、そうどすな、一年はお顔見せてもぅてまへんな、
 忘れはったんちゃいまっしゃろか、ゆうてたんどっせ」
「いやぁ仕事とか習い事とかでね、時間が作れなくて。こちらうちのお茶の先生」
「へ、よろしゅうおたの申します」
「あ、はい、こんばんは」
随分年寄りが来たとて驚かれてしまった。
「このお人は割りと古くからこっちで芸妓されててね」
「へぇそうどすな、さすがに戦前はよう知らしまへんけど」
「勝喜代はんやったらよう知ってはるんやない?」
「今年は会も出たはらへんのえ」
「あぁ、もう随分なお年やもんなぁ」
先生が目をぱちくりさせてる。
「うん、何で呼んだかといいますとですね、娼妓がいるところってイメージだったでしょ」
「え、あ、うん」
「ここ上七軒は芸妓本位の街で娼妓を置かない街だったんです。それをね」
「まだ赤線やらあった頃はよぅよぅ知っとりますよって」
「ここは置かなかったんですよね。基本」
「祇園町には150年前はいはったそうやけどね、太夫。歌舞練場は駆黴院の痕やそうどす」
「くばいいん?」
「性病の治療する病院どすな」
「こっちの街にはないんですがそれもその筈、戦前でたったの3人ですからね」
「今はどこの花街も体を売らはるようなことさせたらしまへん。自由恋愛ですわ」
「まぁ自前で着物やら支度やら、足りなくてパトロンを持つことはあるようですが」
「他所さんの事はそんなゆうたらあかしまへんけど、こっちは昔から芸妓本位どすよって」
「まぁ娼妓本位はわが地元、島原ですね。娼妓以外が殆どいなくてもう営業できなくて」
「えっ、島原ってあの?」
「はい、吉原か島原か、の。もうお茶屋組合すら解散しちゃいました」
「歌舞練場ものうなりましたなぁ」
「さびしいですよ、小さい頃そこでお餅つきしてたのに」
「本当にそこが地元なのねぇ」
「小さい頃はね、あたりから清元が聞こえたりね。友達が禿したり」
色々と喋って先生のこだわりをほぐして行く。
ご飯もいただいてすっかり気持ちのほぐれた先生を連れてホテルへ戻った。
俺に少し寄りかかって暫くいる。
「疲れた?」
「うん。…脱がしてくれる?」
帯締めに手を掛けて帯を解いて行く。
腰紐を外しつつ問う。
「風呂? それとももう寝る?」
「ん…寝るわ」
長襦袢まで紐を抜いて、浴衣を出して渡した。
「ほい、立って」
よっこらしょ、と俺に掴まって立った。
べろん、と全部抜いてさっと着せ掛ける。
一瞬の寒いぼ。
軽く首筋にキスし伊達締めを渡してボストンを漁る。
コールドクリーム。と湿った吸水スポンジタオル。
このコールドクリームは先生のと同じメーカーだから肌荒れの心配はない。
ベッドに寝かせ、股の間に先生の頭を落としこんで丁寧に先生の化粧を落とす。
途中で寝息が聞こえてくる。
拭き取り化粧水で二度ばかり拭き取れば先生の肌の感触が凄くよくなった。
髪をほどいてやり、枕を当てて布団の中に入れた。
俺も手を洗い先生の着物を片付けて寝る用意を整え、横にもぐりこんだ。
おやすみなさい。
朝。目が覚めたが先生はまだ寝ている。
時間はまだ早い。
朝食の支度をしないで良いからもう少しこのまま先生の寝息を聞いていよう。
ゆったりと時間が流れる。
7時半を過ぎた頃、先生が目覚めた。
「おはよう…」
「おはよう」
「何時かしら。台風どうなったの?」
「7時40分かな、台風はちょっと待って」
テレビをつけて確認する。
「まだ遠いかな。どうします?」
「ここ、今日チェックアウトよね」
「いや予備日取ってましたから今日も泊まれますよ」
うーむ、と先生が悩んでる。
「俺はもう一日、あなたといたいけど」
「じゃ昨日ね、資料館行ったでしょ。もう一度行きたいのよね」
「だったら午前中ですね、やっぱり」
もそもそとベッドから出て身づくろい。
「ん? ねぇ。昨日化粧…」
「落としておきました、痒い?」
「ううん、ありがと」
キスしてくれた。
身支度を整えて食事へ。
朝食は軽めの懐石風味でまぁまぁいけるね。
それからお出かけの支度。一応雨支度を整えて。
先生の希望通り資料館へ行き、ゆっくりと見歩く。
流石に台風当日と有り人が少なく、先生は落ち着いて楽しんでおられる。
俺はその先生の様子を見るのが好きだ。
昨日よりしっかりと見て退館すると小雨。
「降って来たわねぇ」
「これから強くなるんでしょうね」
先生が少し考えてから表千家の会館を希望された。
流派は違えどあちらのお道具も見たいとのことで一応のため電話で問い合わせて伺った。
流石にすばらしいお道具ばかりで先生の溜息が聞こえる。
ひょうたん型の水差しとか使いにくそうだけど。
その後、お昼ご飯を近くで食べることにした。
先生が色々注文してくれてるが、あまり愛想を振りまかないようにお願いしたいところだ。
次は北村に行きたいと仰る。
どうやら下調べしていたらしい。
これも一応確認の電話をしてから伺った。
先生は熱心に見ておられるが人のいない日だけに結構目立つね。
流石に雨脚がきつくなってきてホテルへ戻った。
着替えて着物の始末をしてくつろぐ。
先生は満足そうだ。
俺も満足したくなって引き寄せた。
「ぁ…暖かいわ」
「寒かった?」
「ちょっと雨だったから冷えちゃってたみたいね」
「温めてあげよう」
「ん…、ぁ…」
胸をまさぐると軽く喘ぐ。
左手で裾を割って股間に手を差し入れる。
はっはっ、と先生の荒い息が心地よい。
「ぬ、脱ぐから待って、お願い」
「はいはい、お手伝いしましょう」
貝ノ口をほどいて対丈の木綿の着物を脱がせる。
すっかり着崩れてたけど。
肌襦袢も腰巻もすべて脱がせれば恥ずかしそうに胸とあそこに手をやって隠そうとする。
キスをして抱くとしっかりと懐に入ってくる。
ベッドに連れ込んで暫く楽しみ、ふと思い出した。
「あ、そうだ。ペニバン持ってきたんだよね」
「えぇ? ちょっとこんな所で?」
「うん」
先生の上から退いて装着する。
「ね、ちょっと。ねぇ、久さん…」
コンドームつけてローションを塗りつけた。
「ん? いいでしょ」
「いや、ちょっ、ダメよ。あっ」
抵抗してるけど入れちゃったもんね。
眉をひそめて抵抗むなしくも気持ちよくなっていく先生は可愛くてきれいでたまらない。
腰を使うたびに啼く。
二人で随分汗をかいて先生が疲れきって寝た。
窓の外は豪雨、まったく気づかなかったな。
後始末をしてから横にもぐりこんだ。
携帯にアラームをセット。
夕飯前には起きないと。
先生の匂いを嗅ぎつつ幸せな気持ちで寝ていたらあっという間にアラームに起こされた。
もっと寝てたいが仕方ない、先生を揺り起こす。
ぐずってはいるが何とか起こして着替えさせ、化粧を直されるのを待ち、食事へ。
眠たげだがおいしそうな食事に心が浮き立ち始めたようだ。
軽くワインもいただきつつのフレンチ。
コースが進むごとににこやかになる先生を見て自然に嬉しくなる。
しかしこの天候でよく食材そろえたなぁと感心しつつ、食事を楽しんだ。
デザートも美しく仕上がってて、手が込んでいる。
甘くて、俺はエスプレッソで口直し。
部屋に戻ると先生は帯が苦しい、と脱いで寝巻きに着替えた。
「おいしいから食べ過ぎちゃったわ」
「うん、うまかったですね」
それから俺の懐に擦り寄ってもたれてきた。
「えっちはダメよ?」
「はいはい」
テレビをつけて台風情報を見始めた。
「明日帰れるわよね?」
「ダメならうちに来て。たっぷり抱いてあげますよ」
ぱっと耳まで赤くしているのが可愛らしい。
手を差し入れて乳をなでるとベチン、と叩かれた。
「だめっていってるでしょ、後でなら良いわよ」
「しょうがないな」
膝の上に載せて抱きかかえた。
「これくらいはいいでしょう?」
「うん」
暫くすると寝息。
やっぱり寝ちゃったか。
しょうがない、化粧落として寝ることにしよう。
昨日と同じように拭き取ってベッドに寝かしつけ、俺も諦めて寝た。
翌朝になるとすっかり台風は落ち着いたようで関東方面が荒れ始めた模様。
遅い目に発てば十分と判断し、夕方の新幹線を取った。
夕方までどうするかってそりゃ俺の部屋か観光かだよね。
そう先生に言うと赤面してる。
「観光が良い?」
「…どっちでも、いいわ」
「へぇ、じゃラブホでご休憩でも?」
「い、いいわよ。行きたいなら」
耳まで赤くなってて可愛らしくてつい、うなじに手を這わせてしまった。
「ペニバンでも?」
そのままうなづいて、ああ、もう超可愛い。
「だけどお預けだ。あなたとラブホなんてね」
「私とじゃいやなの?」
「じゃーなくて。他所の先生に見られたらどうするんだって言うね」
「ここ、地元じゃないわよ?」
「京都ですよ。あなたの顔を見知ってる先生がたまたま見てたりしたらどうします」
「そんなの、台風だから泊まるところがなくてとか言えば良いじゃないの」
「というか、したいんだ?」
「あっ…。ち、違うわよ、そんな」
「ふふ、じゃあなたの意見採用だ、良いホテル知ってるんでそこ行きましょうね」
チェックアウトの後直接そのラブホへ行くと先生が驚いてる。
「すごいわ…」
「でしょう? セックス目的じゃなくても快適っぽいでしょ?」
先生が部屋のあちこちを見ているその間に用意を整えた。
「さてと。着替えたらこっちおいで」
「えっ…あ、はい…」
こくり、と息を呑んで。
上気して恥ずかしそうで、そそる。
脱がせてバスローブを渡して着替えさせる。
「まずはそのまま舐めてもらいましょうかね」
膝を突かせて。この間教えたとおりに出来るかな?
ぎこちなくて初々しいけれど丁寧に、そして恥ずかしそうに。真剣で。
足で先生の膝を割って股間に足の甲を当ててみた。
既にぬめってきている。
んん、と呻きつつも舐める努力をしていていじらしい。
もはや用意は整った、入れてあげよう。
立たせてゆっくりと割り入れた。
手をちゃんと回してきてるのを確認して膝を抱え上げる。
より深く刺さったようでいい声を出した。
ゆすってやると反ろうとする。気持ち良いようだ。
そのままベッドの上に移動する。
座位。
落とす心配もなく楽しめる。
先生はそこまで意識が回らないようでよがり続けている。楽しい。
こっそりとお尻に指を入れるといやいやをするものの、抵抗できないようだ。
唇もむさぼり、乳首も弄ってやる。
一杯一杯なのが見て取れて本当に良い。
何度逝かせたやら、2時ごろになり開放してあげた。
息が出来なくなってたから。
そのまま抱き上げて風呂に連れて入り、丹念に汗とぬめりを流して拭き取る。
着替えさせてから自分も着替え、タクシーを呼んだ。
疲れ果てている先生を抱え上げて乗り込み、クロネコのセンター前で少し止めてもらう。
荷物を発送してボストンのみ残した。
それから八条口へ。
抱き上げて乗車手続きをしたが案外大変だった。
今度から出発ギリギリはやめておこう、うん。
喫茶店で座らせ、コーヒーを頼んでから駅弁を手に入れた。
戻ればコーヒーが来ていて先生が嫌がらせで砂糖を3杯入れている。
「う、何してんですか」
「甘いの嫌いだったわよね、沢山入れてあげたから」
にこーと笑んでいる。
ご立腹らしい。
そりゃ怒るよね、と思いつつも甘ったるいコーヒーを飲み干した。
駅弁を先生に持たせて抱えあげる。
そろそろ乗車時間が近い。
人目を引くが仕方あるまい、まだ立てやしないんだから。
電車が到来して乗車、席に座らせた。
やっとほっとした表情だ。
横に座って早めの夕飯、と弁当を広げる。
「あ、おなかすいてたみたい」
「お昼食べてなかったですもんね」
何か思い出したらしく、赤面している。
可愛いなあ。
いただきます、と食べる。
途中、先生がお茶買ってきてと言うので席を立った。
二つ買って戻り、蓋をあけて渡す。
「ありがと」
食べ終わって暫くすると先生がもぞもぞする。
電光掲示板を見やったり。
「どうしました」
「お手洗い、行きたいのだけど…」
「あぁ。この車両、トイレ広いから大丈夫ですよ」
「恥ずかしいわ…」
「今更。はい、手を俺の首に回して下さい」
「うん」
そのまま抱え上げ懐に貴重品を入れてトイレへ行く。
トイレの中で下ろして裾を捲り上げて座らせた。
「あの、外で待っててちょうだい」
「はいはい」
ドアにもたれてぼんやりと待つ。
暫くして声がかかり、中に入った。
先生は恥ずかしそうで、俺はちょっといじめたくなるが我慢我慢。
裾を下ろして整えてあげて抱えて出るとトイレ待ちの人がいた。
先生が更に恥ずかしがってて可愛い。
手を洗わせまた抱えて席に戻る。
軽く太腿をつねられた。
「可愛いな…」
ぺんっと額を叩かれた。
「イテッ」
思ったことをそのまま口にしてはいけないね。
暫くくだらないことを喋っていると駅に着いた。
ボストンを持って先生を担いで下りる。
タクシーに乗せてうちへ連れ帰った。
「はい、お疲れさん」
そういって全部脱がせる。
「えっ、ちょっと、なにするの」
肌襦袢まで全部脱がせて裸にした。
「あ、あの?」
「ほい、浴衣」
ひょいひょいと寝巻きを着せてベッドに転がした。
「夜まで寝てなさい」
「そ、そういうことね…」
一旦寝かせて明日の昼連れて帰るつもりだ。
そのように八重子先生にお話してある。
「寝られないなら抱いてあげようか?」
「ばか、もうっ」
あはは、と笑ってちょっと外へ。
夜食の分を買いに出た。
台風の残滓、天気はまだ荒れている。
先生も食べれそうなものと、明日の朝の分も買って帰った。
ドアを開けると寝息が聞こえる。
俺も寝ようかな。
そうと決めたら着替えて横にもぐりこんだ。
おやすみなさい。
少し寝て、俺は9時半頃に目が覚めて腹減った。
先ほど買ってあったものを食べる。
暫くすると先生が起きたようだ。
ベッドから降りようとして…あ、落ちた。
「久さん、お手洗い」
「まだ無理みたいですね」
「はやく」
漏れそうなのかな。
抱き上げてトイレに連れて入り、たくし上げて座らせた。
途端の排尿、先生が顔を赤らめている。
追い出す暇がなかったようだ。
「後ろ、向いてて頂戴よ」
「舐めてあげようか?」
そういってキスしたら乳首を捻り上げられた。
「ばかなこと言ってないで。ね? ほら、後ろ向いて頂戴」
「はーい」
始末している気配がし、流して。
抱えて裾を下ろしてまたベッドに連れて行こうとしたけどお腹がすいたようだ。
膝に乗せてまだ手をつけてないものを食べさせた。
口に運んであげようとしたが流石に却下され、背もたれ代わりとして。
ちょっとでよかったようで軽めに食べてご馳走様をされた。
俺に手を突いて自力でベッドに行こうとされる。
ふらついてはいるけど何とか大丈夫なようだ。
しかし良い加減慣れても良さそうなものだがなぁ。
そういうとあなたが体力ありすぎるのよ、と説教されてしまった。
俺も残ったものを平らげ、洗い物をしてから添い寝。
「明日、あなた一人でトイレ行けるかな」
「多分いけるわよ…」
だったらいいけど立てなきゃトイレ困るよなぁ。
背中をなでていると寝息が聞こえてきた。
本当に寝つきが良くてうらやましい。
好きだな、本当にこの人の事が。
なんだってしてあげたくなる。
でも泣かせたくもなる。
その辺は諦めてもらおう。
先生の尻をなでながら寝て夜中に起きる。
仕事だ仕事。
支度をして先生の寝顔を覗いてから休日出勤した。
昨日休んだからね、たまには休日出勤も引き受けねば。
台風明けの水曜と言うことでたいしたことはなく早々に帰宅できた。
「お帰りなさい」
「ただいま。自力で着替えたんですね」
「ええ。お風呂入ったら? 沸いてるわよ」
「ありがとう」
軽くキスして風呂に入る。
シャワーを浴びていると着替えここに置くわよ、と声がかかった。
良い奥さんと言うかお母さんと言うか気がつくよね。
風呂から出て髪をざっと拭き、体をぬぐって着替えた。
「じゃ、帰りましょうか」
「まだ乾いてないじゃないの」
「大丈夫大丈夫」
荷物を積み込んで先生を後部に乗せ、運転する。
「お仕事お疲れ様、今日はどうだったの?」
「まぁ暇で暇で。流石に休みですね」
「あらあら、そうだったの?」
「ええ、台風の後ですしね」
先生のおうちに着いて荷物を持って入る。
お昼をいただきながら展覧会や資料館の話を沢山八重子先生にした。
先生はまだちょっとお疲れで途中からお昼寝させて。
気持ちよさげなのを眺めていたら来客の由。
八重子先生が応接しているのを聞き耳立てる。
どうやらやはり誰かに見られてたと見えて。
駅かな。
抱えられてる姿と言うわけだから。
お茶を持って行き、話題に加わった。
「ご覧だったそうで。あの台風で転びそうになられて足を捻られたんですよね」
「あらそうなの?」
「今日は大丈夫だったように思うけど?」
「湿布まみれにしました。昨日。転びそうになると変なところの筋肉使うみたいで」
「あーわかるわぁ、変なところ痛くなるわよね」
暫くお二人と歓談して退出。
さて、ごまかせたかなぁ。
先生の寝ている様子を伺いに寝間に入る。
あ、足袋はいたままだ。
脱がせたら起きちゃうか、なんて思いつつ丁寧に脱がせた。
幸い起きてない。
愛しくてたまらなくなるがまだ昼日中。
眺めているだけにしておこう。
お客様も帰られたようなので居間に戻る。
「絹は?」
「まだ寝てらっしゃいます」
「…ほんとに転んだのかい?」
「えーと…すいません、嘘です。疲れさせました」
「だと思ったよ。あんたのそれ、いつになったら落ち着くのかねえ」
「ははは…」
多分あと数年は落ち着かないと思います、はい。
夕方になって先生が起きてきたので俺は帰ることにした。
「また明日、お仕事頑張ってきてね」
「はい、じゃぁまた来ますねー」
頭をなでられた。
なんでだろう。
よくわからないまま帰宅して、飯を食って寝た。
翌朝は普通に出勤したところ暇だった。
なので合間合間、社長に旅行の話を聞かれた。
京都土産に定番の八橋がよかった? といえばあんなのいらん! と言われたが。
今回は新定番の京ばあむを3つ買ってきた。
抹茶と豆乳のバームクーヘン。
オッサンと若い兄ちゃんばかりだから和菓子は喜ばれない。
適当に切り分けて俺も一切れ食べた。
うまいね。
仕事が終わって飯を食い、風呂に入って着替えて先生のお宅へ向かった。
「あら、いらっしゃい」
「お邪魔します」
「昨日お土産届いたわよー、あんたも食べる?」
「後でいただきます、今満腹ですから」
「そう? じゃ二つだけ出すわ」
「バームクーヘン、昨日孝弘さんといただいたよ」
「どうでした?」
「意外とおいしいもんだね」
「そりゃ良かったです」
「それと利休バッグ、良いね、あれ」
「あぁ、それは先生のお見立てです。数奇屋袋と悩んだんですけど」
会話を交わしていると宅急便、先生がはーいと言って俺に取りに出るよう言った。
あ、旅行の荷物。
受け取りにサインして引き上げる。

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