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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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居間でゆったりと時を過ごす。
先生がさっきから俺の膝に手を置いたままだけど。
寂しかったのだろうか。
そんなわけないか、一週間じゃ。
「あ。久さん、買物行かない?」
「いいですよ」
家を出ると買物じゃない方向へ行こうとする。
「ん?」
「あっちの家、ちょっとだけ…」
珍しいこともあるもんだな。少し驚きつつ新鮮だ。
部屋は寒くて慌てて暖房を入れる。
ストーブの傍に座らせると俺にくっついてきた。
「あの、したいんじゃないの。こうしててくれる?」
「なんだ、したいのかと思った」
「違うわよ。ちょっと恋しくなっただけ…」
可愛いとこあるなぁ。
「お母さんの前でこんなこと出来ないでしょ、だから」
ほんの30分ほどで良いらしい。
ゆったりと撫でられるがままになっている。
暫くして落ち着いたらしい。
「いい加減買物行かなくちゃ怪しまれるわね」
「その前に髪を整えたほうが良い。乱れてるよ」
「あら? あらら、やだわ」
パタパタと洗面台の前に行って直している。
ストーブを切って玄関の草履を整えておいた。
珍しく脱ぎ散らしてあったから。
先生が俺の着付けを直してくれて、それから買物へ。
「何する予定ですか?」
「筑前煮をメインにするつもりよ」
菊菜のおひたし、あとは肉を焼いて白ネギを付け合せに。
「あなたいると高いお肉沢山買えて良いわ」
「いつもはそんなに買わない?」
「律はそんなに食べないからちょっとだけって買いにくいのよ」
「あぁ。確かに少しだけってなるとスーパーでついでに買っちゃいますね」
「そうなのよね」
あれやこれやを買って重いものは俺が持つ。
「っと危ない」
先生の横を自転車がすり抜けた。
あー、スマホしながら乗ってやがる。事故起こすぞ、あれ。
「吃驚したわ…」
「大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫よ。帰りましょ」
俺の腕握ったままなの自分で気づいてなさそう。
信号待ちをしているときに荷物を持ち替えようとしたとき、やっと気づいたようだ。
慌てて離して荷物落としそうになって。
笑ってたら怒られた。
「両方持ちますよ。ほら」
太腿をちょっとつねられたが両手に荷物で帰宅した。
「おかえり」
「ただいま」
「戻りましたー。もう支度しちゃいます?」
「そうしてくれる?」
先に台所へ行ってごぼうとレンコンの下拵えをする。
こんにゃくもちぎって塩で揉み、水が出てくるのを待つ間に湯を沸かし里芋を剥いた。
里芋をゆで、別の鍋でこんにゃくを湯がくその間に椎茸を戻す。
後は細々と切っていると先生がやってきた。
「どう?」
「そろそろ里芋、良いかも」
「じゃ炒めましょ」
切ったものから順次先生が炒めて、俺は菊菜を洗うことにした。
段々おいしい匂いがしてくる。
洗い終えるとあたり鉢とゴマを渡された。
二人いると手際がよくなるな。
律君のお嫁さんが来たら三人に。捗りそうだ。
それとも日々交代か。
後は肉を焼くだけになって先生は一旦台所から去っていった。
明日の用意を確認してくるらしい。
ネギを切って肉を焼く。
ん、うまそうな匂い。
「ただいまー」
律君も帰ってきた。
「手を洗ってらっしゃいよ、もうご飯だから」
先生の声が聞こえる。
ご飯が炊けた音がして先生が戻ってきた。
交代し、お櫃に入れて出す。
台所と往復し、先生が盛り付けたものを食卓に並べた。
「おいしそうだねえ」
「ですよねー」
「めし」
「もうちょっと待ってくださいね」
並べ終えて先生が戻ってきて。
いただきます!
肉うめー。筑前煮うめー。菊菜もうまい。
やっぱり味付けは俺より先生のほうがうまいなぁ。
おいしく頂いてごちそうさま。
洗い物を終り今へ戻ると先生がいない、
風呂に入ったそうだ。
「一緒に入ってきたら?」
「あ、そうします」
いそいそと風呂に向かいぱぱっと脱いで戸をあけた。
「きゃっ」
「…ん? どうしました?」
「あ、久さん。…吃驚させないでよ」
中に入って閉め、軽くキス。
「ん……だめ…」
「後で少ししましょうね」
「はい…」
先生の体を優しく洗ってやると気持ち良さそうにしている。
少し欲情もしているようだ。
「お風呂、あがったら先に布団敷いて待ってて。戸締りするから」
「わかったわ」
お湯に浸からせてその間に俺もざっと洗う。
濯ぎ終えて先生の入ってる所へお邪魔するとペタペタと手を這わせてくる。
「くすぐったいなぁ。どうしたのさ」
「もうちょっとだけ」
「でもそろそろ出ないとのぼせるよ?」
ふぅ、と息をついて先にあがるわ、と出て行った。
もう暫く浸かって俺も上がる。
ざっと拭いて寝巻きを羽織り、居間に声を掛けると八重子先生が続きに入る。
「あ、先に寝かせてもらって良いですか? 戸締りはしておきます」
「いいよいいよ。じゃおやすみ」
「おやすみなさい。お先です」
その足で玄関やお勝手の鍵を確かめ、居間以外の火の始末をした。
律君に声掛けをする。
年をとると風呂は怖いからね。
それから部屋に入ると明かりを落としてランプのみ点けて先生が待っていた。
「お待たせ。寒くない? 布団入ってたらよかったのに」
「一人で寝たくないもの…」
そういいつつ伊達締めをほどいて俺を誘う。
明日のことを考えると軽くにしておかねばならん。
布団に入れて電気をすべて消した。
求められるままに唇に、乳首にキスを落として行く。
股間に手を差し入れると随分と濡れていて指が中へ吸い込まれる感覚だ。
声が出そうなのはキスで防ぎ微かなうめき声を楽しむ。
シーツを掴んで耐えてるのが愛しい。
「孕ませたくなる…」
ついこぼした声に反応したようで俺の背に腕を回してきた。
「…ほ、しい」
微かに聞こえ、足が絡みつく。
背中を引っ掻き傷を作りつつ二度三度と逝かせると眠たげだ。
「そろそろ寝るかい?」
軽く頷く。
股間を綺麗にしてやって寝巻きを整えて寝かしつけた。
明日のために軽く済ませたから何とかなるだろう。
幸せそうな寝顔を見ているうち、眠くなった。
俺も寝よう。
朝起きて普段のように支度をして先生を起こす。
今日はお寝坊はしてもらっちゃ困るんだよ。
ぼんやりしている先生を着替えさせて食事を取らせ、髪結いさんに送り込んだ。
八重子先生と着物の用意を点検してバッグの中身の点検。
暫くして先生が帰ってきた。
「さてと。着替えてくださいねー。あ、綺麗」
「ありがと。お母さん、着物どうかしら」
「出してあるわよ」
「じゃ久さん手伝って頂戴」
「はい」
一旦脱いで長襦袢から着直す手伝いをする。
次は八重子先生をお手伝い。
流石に二人掛り、綺麗に納まった。
トイレに行ってから三人で連れ立つ。
先生方を道場で下ろして俺は帰宅の予定だ。
「シートベルトちゃんとしてくださいね」
「はいはい」
二人ともちゃんとつけたのを確認してから安全運転で送り届ける。
夕飯はどこかで食べてから帰ると言うのでそのつもりで。
帰宅後、暇なので縄を3本煮る事にした。
たっぷりの湯を二つ沸かし、煮て行く。
薄い飴色になっては捨て、沸いたほうに縄を移し、新たに湯を沸かす。
繰り返して色が出なくなったら今度は干す作業。
ベランダに日よけを出し端から端へ渡しかけて干す。
これでよし。
鍋の始末をして、寝た。
夕方、携帯の音に目が覚めた。
先生からだ。
夕飯のお誘い。
了解して先生方に格を合わせたものに着替え、指定された場所へお迎えに上がる。
喫茶店の中を見回す。いた。
「お待たせしました」
「早かったねえ」
「お疲れ様です。どうでした?」
「緊張したわ~」
車に回収して先生の食べたいものを伺った。
天麩羅、ということでホテルへ予約を入れる。
信号待ち、バックミラーを見る。先生、綺麗だなぁ。
「ねぇ明日あなた来るの?」
「伺います。お昼からになりますけど」
「そう、ならいいわ」
席に着いて少しお酒も頼んで。
俺は飲めないけれど楽しく食事を頂いた。
先生のお宅まで送り、すぐに引き返す。
泊まって行きたいのは山々だが明日も仕事だからね。
来週一杯ずっと初釜みたいなもんだから、先生は暫く俺の相手も出来かねるし。
あれ? ん、もしかして。
再来週って先生は生理か?
…適当な日に軽くでもさせてもらわなきゃ持たないかも。
俺は別に最中でも良いけどさ。
嫌がるからなぁ。
帰宅して縄の具合を見る。順調。
疲れた、眠い。今日は寝よう。明日も忙しい。
おやすみなさい。
そして朝になり仕事へ。
それなりの忙しさで帰宅してすぐに着替えて電車に乗った。
先生のお宅に着くと古株のお弟子さんが水屋をしておられる。
昨年のように指示通り水屋を回して。
なんとか間違いもなく終りそうだ。
生徒さん方が帰って行かれると先生が水屋の皆を呼んだ。
先生のお手前でお菓子と濃茶を頂き、散会。
美味しかった。
水屋の皆さんも帰られて後は先生とお片付け、の前に。
先生に頼まれてお薄を点てた。
八重子先生にも一服。
「美味し…。そろそろ片付けましょ」
とっとと片付けてしまわねば、晩飯の支度もある。
手早く始末をして居間で一服していると先生のあくび。
「飯、作りましょうか?」
「んー、お願いー」
そのまま座布団を枕にして寝転んでいる。
まぁ、良いか。
「私は部屋で寝てくるよ。あと頼んだよ」
「はーい」
その前にと先生の帯を解き毛布をかけてあげた。
帯枕が当たって結構寝にくいんだよね。
台所に言って冷蔵庫の中を確認する。うーん。買物ちょっと行ってくるか。
一応先生の耳にその旨囁き戸締りをして移動。
肉や野菜などを買って帰った。
あれ? 開いてる。
あ、この靴。律君が帰ったのか。
居間を覗くと先生はまだ良く寝ている。
よし、作るか。
手早く食事を作ってご飯が炊けたら孝弘さんと律君を呼ぶ。
先生は後回しでいい。
腹が減れば起きる。
「お母さん起こさなくて良いの?」
「ちゃんとおかずもご飯も除けてあるから大丈夫だよ」
だったらいいか、と食べ始めた。
二人がご馳走様をしたので洗い物をしていると上っ張りを引っ掛けて先生が起きてきた。
「おなかすいたわ…」
「はいはい、待ってて」
味噌汁とおかずを温めなおし、ご飯をよそって俺の分と出した。
ちょっとぼんやりしたまま先生は食事を取っている。
疲れたんだろう。
転寝の間に頬に皺がついている。
時間をかけて食べ終わり、まだ眠そうなので着替えさせて布団に入れた。
八重子先生の分は冷蔵庫にある旨書き置いて俺は帰宅。
明日は久々のお稽古だ。
うちへ帰ると良い感じで眠くて布団に潜り込む。
アラームに起こされる朝。
もう少し寝ていたいが仕方ない。
着替えて出勤するもやはり今日からは暇で早めに帰宅できた。
飯を食ってゆっくり風呂に入りそれから先生のお宅へ。
「こんにちは」
「あ、いらっしゃい。早く用意して」
「はい」
昨日の初釜に来られなかった方の為に茶事形式で、ということだった。そうだった。
すっかり忘れてゆっくり来てしまった。
去年やったように支度をして、生徒さんを待つ。
つんつん、と背をつつかれて振り返ると先生が俺の口になんか入れた。
あ、お干菓子。
うまい。
頭をなでて茶室に戻って行かれた。暫くして生徒さんがいらっしゃってお稽古開始。
お菓子を出したり濃茶を点て出したりと先生の指示に従う。
炭の手前を拝見するのも楽しい。
今日はこれで、と声がかかったのは4時ごろ。
皆さんが帰られてから俺へのお稽古。
忘れているところが沢山あり、手厳しく直された。
「あさっても今日と同じだから忘れないで頂戴、水屋。もう指示しなくても動けるでしょ」
「う、はい…」
「わからなきゃ教えてはあげるけど」
「お願いします」
「さ、仕舞って頂戴。ご飯の支度手伝ってくるわ」
「はい。お稽古ありがとうございました」
先生と挨拶を交わして仕舞いに掛かる。
「あ、そうだ、久さん。今度の日曜なんだけど」
「はい?」
「お芝居行く約束しちゃったのよ~ごめんなさい」
「あ、お友達ですか?」
「そうなの。だからその、土曜日も…ごめんね」
「あぁ。いいですよ、かまいません。今日少し長めに良いですか?」
「それでいいなら」
ほっとした表情でそそくさと台所へ行った。
ま、たまにはね。お友達とも遊びに行きたいだろうし。
しょうがない。
片付け終えて台所に顔を出せば孝弘さんを呼んできてと仰る。
はいはい、と離れに行くとメシか? と先に聞かれた。
「もうそろそろご飯が炊けるそうですよ」
「ん」
のそのそと後をついてくる。
今日のメシはなんだろう、楽しみだ。
「律ー、ご飯よー」
「はーい」
先生の声が聞こえる。
家でご飯を取りたがる男子大学生はやっぱり珍しい。
食卓の上はいつものように和食だ。
一汁三菜以上かならず作るのは仕事を持つ女性としてはすばらしい。
美味い。
飯を食ったら後は半衿をつけたり足袋をつくろったり。
夜が更けて風呂に入り共に布団に潜り込む。
気恥ずかしそうなのはいつまでたっても変わらない。
ゆっくりと楽しみ気持ちよくさせて。あくびが聞こえる時間になった。
胸に手を這わせつつ寝かしつける。
「あなた、本当におっぱい好きよね…」
「やわらかくて好きなんだけど……腹のほうが良い?」
「お腹はやめて」
「じゃあここは?」
恥丘のふくらみや尻を触る。
「こら、もう。寝なさいよ」
「もうちょっと駄目? したくなった」
「ばか、もう、ん、こら」
「可愛いな。ね、好きだよ」
「やだ、恥ずかしい」
もう一度だけ、と抱いて。
し終わって眠たげなのをなでているうちに寝息。
今度は胸を触っていても眠気が勝ってしまったようだ。
気持ち良さそうな寝息に愛しくなる。
俺だけのものにしたくなっていつも困るんだよな。
キスマーク一つ、つけられないんだから。
溜息を落として寝ることにした。おやすみなさい。
翌朝、律君を送り出して掃除に掛かる。
俺は茶室から。先生は先ずは洗濯物。
昼を食べたら風呂の掃除。
トイレは流石に先生が掃除されるのを嫌がる。
終ったら庭お願い、の声に上着を着て庭箒を掴む。
箒目を付けつつ枯葉を集めた。
それが終ると八重子先生がお茶を入れてくれて少し休憩。
「ねぇ。この間あなた言ってたけど妊娠は無理だと思うの」
「へ? 何の話です?」
「覚えてないの?」
「そりゃあ無理だねえ」
「私を妊娠させたいって言ったじゃない」
「あぁ。そういえば言ったような。無理じゃないですけどね、今の科学じゃ」
「えぇっ!?」
「嘘だろ?」
「あ、ご存じない?」
「どうやってするのよ、ないのに」
「皮膚から作れるんだそうですよ。精子」
「えっ皮膚ってこの皮膚?」
「そう、それで卵子と受精させて体内に戻す」
「へぇー、今の医学って凄いもんだねぇ」
「ま、でも先生だと高齢出産にもなりますし世間体も有りますし。無理ですね」
「そうよ、無理よ。諦めて頂戴」
「はい」
「やっぱり欲しくなるものかねぇ」
「八重子先生だって覚えありませんか」
「それはまぁ、ねぇ。…あ、あんたが産んだら良いじゃないの」
「いやいやいや、それは誰の子だって話になりますでしょう」
「うーん、開とか」
「律君だと思われたら困ると思いませんか」
「困るね、それは」
「それに久さん子供苦手よね」
「とっても苦手です」
「なのに子供欲しいの?」
「あなたのなら」
あ、先生の耳が赤い。
「掃除、しましょ」
照れくさかったのか慌てて立って箒を取りに行ってしまった。
可愛いなぁ、とニヤついてると八重子先生に髪をまぜっかえされた。
「さてと。雑巾とって来ます。廊下やりますんで」
「はいはい」
とぎ汁の桶と雑巾で廊下を拭き清める。
素足で歩くの二人しかいないのに結構汚れるもんだね。
玄関の上がり口を拭いてるときに来客。
「ごめんくださ、あらまぁ山沢さん」
「あ、こんにちは、先生ですか?」
「えぇ、いらっしゃるかしら」
「ちょっとお待ちください」
広間を掃除中の先生に来客を告げる。
お通しするよう言いつかって先生は手を清めてから、と洗面所へ。
小間へ案内して先生とすれ違いに手を洗いに行き、お茶を煎れて出した。
それから掃除の続き。
板のところはすべて拭き終えた。
残りのとぎ汁は植木にやろう。
庭に出て撒いてると先生が呼んでいる。
「はい?」
「悪いけど広間もお願い。ちょっと出てくるから」
「あ、はい」
「早めに帰ってくるわね」
くしゃっと頭を撫でて外出されてしまった。
やれやれ、張り合いがないことだ。
撒き終えて中へ上がる。やっぱり多少は暖かい。
さてどこまでやってたのかな。
はたきはもうかけてあるようだ。箒が途中か。掃き清めて雑巾で畳を拭く。
八重子先生は花を活けているようだ。
茶花とは違い、鮮やかに派手に。
「広間終りましたー」
「ありがと」
「お茶かコーヒーいります?」
「うーん、コーヒー頼むわ」
「はい」
台所でコーヒーを二つ。俺はエスプレッソをダブルで。
「どうぞ」
テーブルの上にお砂糖も出して。
玄関の開く音、ただいまの声。
「お帰りなさい、コーヒーいります?」
「作ってー、ああ寒かった」
一散にストーブの前で手をあぶっている。
先生の分も作ってお砂糖も入れて混ぜて渡した。
「あぁ、おいしいわぁ。表寒いわよ~」
「でしょうね」
ふぅふぅ言いながらコーヒーを飲む姿は可愛くて。
半分ほど飲んでやっと落ち着いたようでコートを脱いだ。
おこたへ座って俺の手を掴む。
「あったかい手してるわよねぇ」
「手が温かい人は心が冷たいんだそうですよ」
「あら。そうかも?」
「同意しますかー、そこ」
八重子先生がウケている。
先生もクスクス笑いながら晩御飯の献立を相談し始めた。
すぐに決まったが先生が少し嫌そうな顔をした。
「寒いから行きたくないんでしょう?」
「あら、わかっちゃう?」
「俺行って来るから書いてください。上着取ってきます」
「お願いするわ」
廊下に出ると先生が八重子先生にちょっと叱られてるようだ。
ジャケットを取って戻るしょんぼりとして私も行く、と言い出した。
「いいからメモ書いて。俺は防寒万全だから大丈夫」
「でも…」
「八重子先生、先生は置いて行きます。外寒いですから」
「まったくあんたは過保護なんだから」
「メモ書かないんだったら後で電話します」
「あ、ちょっと待って、書くわよ。待って頂戴よ」
慌てて書いたメモを貰い買いに出る。
八百屋の近くでメモを見ると本当に慌ててたようで中々読みにくい。
それでも悪筆に慣れてるからまぁ読める。
指定されたものと別にプリンやチョコを買って帰宅した。
「戻りましたー」
「お帰りなさい…あの、読めた?」
「メモ? これでよかったかな」
買物袋の中身を点検して先生が微笑む。
「またプリン買ってきたの?」
「あなたも好きでしょう?」
嬉しそうな顔してるね。こんなことでも。
軽くキスしてみたらダメと言われた。
「ごはん、しないと…」
「はいはい、脱いできますね」
少し顔が赤いまま先生はお米を洗い始めた。
俺は部屋に戻って着替えたらお台所のお手伝いだ。
支度をしていると俺が少々ちょっかい出しても軽くいなされる。
お稽古中でもそうだが、切り替えが上手だ。
「そろそろお父さん呼んできて」
「あ、はい」
呼びに行って戻ると丁度律君が帰宅した。
八重子先生がお膳を拭いている。
配膳して夕飯を頂く。うまい。幸せ。
食後、洗い物を片付けてから帰ることにした。
先生が引きとめようとするが、諦めもまたいつもながらに早い。
「また明日、お会いしましょう」
そう言うと少し俺の袖を握り帰したくなさそうにしてるが、了見して離す。
そんな先生が可愛くて攫って行きたくなった。
苦笑して別れて帰宅。
翌日仕事が終わり次第すぐに先生のお宅へ。
火曜日にやったことと同じなのでさすがに手際よく動けたが、お稽古は散々で。
先生にやっぱり叱られて悄然と帰宅した。
土曜の仕事は忙しく、少し遅れて先生のお宅に着いた。
先生は今日はやや開放感からか朗らかで、お稽古もそんなには叱られなかった。
飯を食って風呂に入って部屋に入ってからも楽しげに俺にくっついてくる。
今日はしないで欲しい、と言われてたから我慢する気なのだが。
自分から俺の手を胸にやったりするのは何だ、からかっているのだろうか。
「して良いんですか?」
「え? しないの?」
「…明日お芝居見に行くからしないでって言ったじゃないですか」
「あら? そうだった…、きゃー、明日の用意してないっ」
慌てて俺の懐から飛び出て箪笥から着物を選びに行ってしまった。
「いや、待って。こら、上着!」
寝巻きのままじゃ風邪引くっての。
綿入れを着せて着物選びに付き合ってると律君が覗きに来た。
「こんな時間にどうしたの、お母さん」
「明日ほら、お芝居行くっていってたでしょ。それ忘れてたのよ」
これどうかしら? と聞きつつ決めて、後はバッグの中身の点検をしている。
律君は納得したらしく部屋に帰っていった。
「あ、お金出してないわ…久さん、どれくらい持ってる?」
「ひゃく」
「ええ、と。5万円くらい貸してくれるかしら」
「10持って行ってください、一応ね」
「悪いわ、そんなの」
「足りないの、恥ずかしいでしょう?」
「あんまり持ってるのもおかしいわよ…」
「じゃ間を取ったらどうですか」
「そぅ、ね、そうするわ」
部屋に戻って引き出しから金を出して渡すと財布に入れてバッグに仕舞った。
ちゃんとお出かけ用財布があるんだよな、先生。
家計用とは別に。
あとお茶のお稽古のときに違う財布を持ってることもあるけどあれはなんでだろう。
用意を済ませた先生に聞くと、あれはあれでお金を別にしているらしい。
経費の問題だそうだ。
部屋に連れ帰って布団の中に入れる。
冷たくなった手を俺の懐に。足も絡ませて。
「ふふ、温かいわ」
「風邪引かないうちに早く寝ないとね」
「そうね」
俺にしがみついていたのに温まると眠気に飲み込まれたようだ。
腕を掴む手の力も緩まって寝息が聞こえてくる。
肩が少し寒そうなので布団を直して共に寝た。
朝、早めの朝食の後。
先生は電車の時間など確かめつつ出かけて行く。
「さて、と。明日からは普通のお稽古だから用意しないとね」
八重子先生の指示で茶道具を出して確認。
なんだかんだお昼までかかり、昼飯を食べて退出した。
自宅の整頓をしていると夜に先生から無事帰ったのメール。
俺が心配するからとお出かけの時はちゃんと連絡くれるんだよね。
心配される年じゃないと言うけどさ。
恋人を心配して何が悪いのか。
それから今週は早めに来て助けて欲しいとの事、生理だからかな。
返事をして飯を食って寝る。
今週の稽古日は仕事の後はすぐに行って。
出来るだけ先生じゃなくても良い人は引き受けた。
先生は監査である。
上の方のお点前になると流石に無理で八重子先生と先生が交代勤務。
夜は抱かれないのが当然、と思っているわけでは無い様で気を使ってくれる。
ま、別に今は飢えてないから来週で良いんだよね。
ただ困るのが夜中に胸をまさぐられることだ。
冷たくて目が覚めるんだよね。
それとたまに噛まれる。
朝になって噛み跡を見て謝られる事があるがわざとじゃないし仕方ない。
諦めている。
そんな日が続き月末となった。
もう殆ど終りではあるがもう一日だけ、とお願いされて我慢する。
節分の夜、久々にした。
昼に神社へ行って疲れていたのもあり早々に終了だったけれど。
尻穴に豆を入れてあげるといったら切々とやめるよう訴えかけられた。
その必死さがたまらない。
まぁどうせ明日は消化不良だろう。
キスをして寝かしつけた。
朝、やっぱり先生はトイレから中々出てこなかった。
八重子先生が苦笑している。
「ついつい食べ過ぎるのはわかるんですけどね」
「私も何度か経験あるよ」
皆一度はやるよね、豆の食いすぎ。
食欲もなさそうなのでお味噌汁だけ。
「しかし年の数って無理ありますよねぇ」
「だっておいしいんだもの」
アイタタ、と何度かトイレに通っている。かわいそうだ。
流石に夕方には治っていたが機嫌は良くないようだ。
夕飯の後帰ろうとしたら何か言いたげにしている。
明日もまた会えるのに、帰したくないと言う。
少し考えて、じゃ、あなたが寝るまでなら、と譲歩した。
幸い車で来ているから寝かしつけてから走ればなんとかなる。
少し機嫌が直った。
風呂に入れて髪を洗ってあげるとすっかり気分が変わったようだ。
「ね、ちょっと寝たら?」
「寝過ごしそう」
「起こしてあげるわよ」
「そう? それじゃ悪いですけどお先に」
3時間ほど寝て、先生に起こされた。
「そろそろ起きないといけないんじゃない?」
「うぅー…行きたくない…」
「会社、休んじゃダメよ」
起こされて洗面所に連れて行かれた。
「ほら、顔洗って」
眠くてもたもたしていたらちょっと叱られた。
「もうちょっと甘えさせてくれても…」
「ダメよ、お仕事でしょ」
発破を掛けられて出勤する。
眠気も運転しているうちに取れて会社に着く。
一仕事終えて先生に作ってもらった弁当を食ってるとうらやましがられた。
朝からしっかり煮炊きしたものを食ってるのがうらやましいようだ。
まぁ昨日の残り物だけどね。
しかも半分は俺の作ったものだし。
朝からパンよりは体に良いらしいけど。
しっかり食って仕事仕事。
暇な半日の後帰宅して弁当箱を洗って先生のお宅へ。
「こんにちは」
「お帰りなさい」
「あ、ただいまです」
なんか照れくさいぞ。
「眠くない? 大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
お稽古の用意をして生徒さんを待つ。
先に先生が来た。
覆いかぶさってきてキスされて驚く俺に目が覚めた? と聞く。
「覚めました、吃驚した…大胆ですね」
ふふっと笑って俺の頭を撫でている。
「こんにちは、お邪魔します」
玄関から生徒さんの声だ。
すっと離れて定位置につかれた。
お稽古が開始され指示が入るまでもなく動く。
締めに俺のお稽古。
「はい、いいでしょう。お疲れ様」
「ありがとうございました」
「さ、片付けましょ」
「はい」
お夕飯を楽しみにしつつ片付けた。
「今日はご飯食べたら早く帰りなさいよ」
「なんで?」
「寝不足でしょ。ちゃんと寝て」
「あぁ。わかった、帰ります」
片付け終えて食卓へ。
あ、うまそう。
おいしいご飯をたっぷり食ったら眠気が。
「泊まるの? 帰るならコーヒー入れてあげるけど」
「うぅ、帰ります。泊まりたいけど。朝、眠いですし」
ふふっと笑って一番苦い銘柄を選んで淹れた。
「うまいけど苦い…」
飲んでる間に部屋からコートと鞄を持ってきてくれていて。
律君が笑ってる。
飲み終えてコートを着た。
玄関で先生に乗り過ごしたりしないように、と注意を受けて帰宅。
電車の中が暖かくて危なく本気で寝入ってしまうところだった。
うちに帰って脱ぎ散らかして布団にもぐりこんだ。
朝になって着物を片付けたけど。
少し忙しい金・土曜の仕事をこなしてお稽古。
終った後、明日百貨店行くので一緒に、と言われた。
お夕飯を食べて風呂に入って、明日の半衿をつけたら寝間へ。
「明日、百貨店行った後うちに来ませんか」
「え、でも」
「今日はしないから、ダメかな」
先生は何も言わず耳まで赤くなってる。
「連れ帰ってくれたら良いのに…言われたら恥ずかしくなっちゃうじゃないのよ」
「可愛いなぁ」
後ろから抱き締めた。
「暖かい…」
「布団、入ろうか」
ひんやりした布団も二人で入れば温まる。
しかし数分は頬染めていたくせにすぐに寝息を立ててしまう先生である。
相変わらず寝つきが良い。
したいときには結構困るんだけど、今日はね。
んー、良い匂いだ。
お腹を触ったりして楽しんでいるうちに俺も寝ていた。
翌朝は食事の後、着替えて銀座へ出る。
楽しそうだ。
百貨店に着いたら先ずは特設会場。
俺には呉服エリアで待っているように言残して一人で入っていった。
あー、チョコね。
渡す前から何渡すか知られるのはいやと言うところか。
ま、楽しみに取っておくか。
呉服売り場をうろついていると作り帯の面白いのがあった。
切らずにできると言うもの。
まぁ先生には必要はないだろうが俺には必要だ。
袋帯、苦手なんだよね。
説明を受けてチラシを貰っている所へ先生がきた。
「あらあ、なぁに?」
「作り帯ですね」
「着付けてあげるわよ? それくらい」
「それはありがたいんですが一人で他所の土地に行くことだってありますしね」
「あ、そうね」
納得しつつどうなっているのか確かめている。
「うーん、良く考えてあるわねぇ」
「ですよね、今度作ろうかな。見立ててください」
「そうね、一つあったら便利よね」
その後、帯や着物を見て、でもぴんと来るのがなくて。
アウトドア衣料の所で先生に仕事着を見繕ってもらった。
シャツの首が伸びてたりして見苦しいって。
どうしても仕事だと見えないところはどうでもよくなるからそのままにしていた。
いくつか買ってそれからお昼を食べにレストランエリア。
ごった返していて先生が嫌な顔をした。
「お弁当買わない?」
「そうしますか。いや混んでますねえ」
「平日よねぇ」
「みんな同じ考えでしょう。チョコ買ってお昼に良いもの食べて帰る」
「そうなるわよねぇ」
地下へ降りてお弁当やお惣菜を見て回る。
「これがいいわ。あんたは?」
「俺はこっちが…」
「……サラダか何か買いなさいよ」
「うぃっす」
ローストビーフのサラダを買おうとしてると背後から怖い声。
「こら、ダメ。そこのほうれん草と小松菜とチーズとトマトの温サラダの方がいいわ」
「…うぅ、はい」
「お肉にお肉なんてダメでしょ」
「生ハムのサラダは」
「だめよ。体冷えるわ」
苦笑して先生の言うサラダを200g頼んだ。
持って帰って手を洗い着替えて食卓に着く。
先生は俺が着物をつるしている間に冷蔵庫にチョコを仕舞った。
部屋暖かくなるからね、解けちゃう。
「先生、食べましょう」
「ん、ちょっと待ってね」
ガサゴソと紙袋を片しているのを尻目に弁当を広げる。
お皿を出した。
サラダは先生も食べるだろ。
「お待たせ。いただきましょ」
いただきます、と手をつけ始めた。
と思ったら箸を置いた。
「ねぇ、おつゆ何かあったわよね」
「ありますよ」
「何か貰っていい? ちょっと温かいものほしいわ」
「ああ、ちょっと待って」
台所で湯を沸かしつついくつか持って出す。
「どれがいいですか?」
「そうねぇ、この鯛のお吸い物がいいわ」
一人分の味噌汁なんて作らないから買ってあるんだが、こういうとき都合がいい。
俺は試食用で貰った湯葉と海苔の吸い物。
味噌汁碗で出して食事再開。
「意外とおいしいわね」
「こっちも中々」
「こら、サラダから食べなさい。お肉からはダメよ」
「はい」
あ、意外とうまい。
見た目が微妙だったんだけど。
「おいしいわねえ」
「ですねぇ」
お弁当もおいしくて先生も俺もすべて食べてしまった。
片付けて少し一服。
先生から俺の膝に手を突いてもたれかかってきた。
キスをして胸に手を這わすと身を震わせ俺の手首を掴んだ。
「もうちょっと食休み、させてちょうだい。ねぇ」
「したくなった」
「まだ時間あるじゃないの」
「しょうがないなぁ」
後ろに手を突いて好きなようにさせる。
ま、家じゃこんなこと出来ないからいいけどね。
暫くして先生が立ち上がり、ストーブの設定を下げた。
「暑くなっちゃったわ」
そのままトイレへ行き、シャワーを使う音がした。
汗ばんでるほうが好きなのになぁ。
と思ったらすぐに浴衣を羽織って戻ってきた。
「早いな」
「だって、あなた舐めるでしょ、だから」
顔を赤らめている。
なるほど、股間だけ洗ってきたか。
「どれどれ?」
ぴらっと裾をまくってやったら慌てて隠そうとする。
「隠すなよ、どうせ裸になるんだから」
「いやよ、恥ずかしいわよ」
「じゃそのままここでしよう」
壁に押し詰めて弄ってやるとぎゅっと俺の肩を掴んで声を出すのを耐えているようだ。
乳首を捻り上げるようにすると声が出た。
「あっ、うぅ、痛、ん…」
中もほぐして結構いい感じになってきたところでペニバンをつける。
さっき先生がチョコを仕舞っている間に出してきておいた訳だ。
座り込んでしまってる先生に舐めさせようとするといやいやをした。
「舐めなきゃ痛い思いをするよ? いいんだね?」
「ぁ、う……」
唇に押し付けると諦めたようで舐め始めた。
「ん…ぐ、うぅ…はっ」
おっと奥へ入れ過ぎたようだ。抜いてやると咳をしている。
それでも健気に治まったらまた舐めて。
「よし、後ろを向いてお尻をこっちに突き出して」
「あ、お願い。ここじゃいや…」
「ベッドでもいいけどそれなら自分で入れてもらうよ」
「えっ」
「自分から俺の上に乗って。おまんこ広げてこいつを中にぶち込むの、自分でやるんだ」
「そ、んなの、むりよ…」
結局その場で挿入した。
とはいうものの膝も痛いし先生も辛そうで抱え上げてベッドに下ろした。
乳首を責めつつ中を抉る。
突いてるうちに先生が潰れてきた。
腰を抱え後背位のままあぐらの上に座らせる。
足を開かせて三点責め。
まだ始めて1時間も経ってないのにもう辛そうだ。
手があと二本あれば両乳首と尻の穴も追加で弄れるのにな。
そこまでしたら狂っちゃうか?
狂ったら俺がずっと面倒みればいい話だな。
おっと痙攣している。一旦休憩だ。
抜いて横臥させてやった。落ち着くまで様子を見る。
息が落ち着いてきたがまだぼんやりしている。
乳首をつねると焦点が合った。
「い、た……あっ、だめっ」
尻の穴を弄ったものだから抵抗している。
「ほら、力を抜いて息を吐いて」
「やだぁ」
「暴れたら痛いの知ってるだろう? それとも痛い事されたい?」
痛いのと秤にかけたような、微妙な顔をする。
「ど、どれくらい?」
「泣くまでかな」
「う……なに、するつもりなの…」
「鞭」
「ひっ」
「はまだ早いから手で叩いてあげましょう」
「あ…それなら」
膝に抱え込んで先ずは軽く。
眉間に皺をよせて痛みに耐えている。
まだまだ余裕はあるな、大丈夫。
少しずつ強く打っていくと耐えかねてか声が出た。
まだだ。
逃げようと暴れだす、それを押さえ込んで打ち続けるとついに泣き出した。
「いやよ、もういやぁっ、ぎゃっ」
暴れた拍子に膝から動いてしまい、股間を叩いてしまった。
「今のは痛かったね、でもおとなしくしないからだよ」
「もう勘弁してぇ…お願い」
「まぁいいよ、初めてにしては頑張ったね」
キスをするとちゃんと舌を絡めてきた。
痛い後は優しく抱いて。
すっかり疲れた先生は夕方には寝てしまった。
尻は結構赤くなっていて熱を持っている。
濡れタオルで冷やす。
その俺の手も結構腫れているので絞りにくい。
何度かタオルを替えて赤みが引いてきた。
ところどころ指の痕になっているのが嬉しくて。
楽しみつつもどうせ夜中まで起きはすまい、とある程度冷やしてから寝た。
やはり夜中に揺り起こされてトイレに。
だが痛くて座るのがつらいと言う。
「こういうときは和式のほうが楽ですね。ああ。風呂でする?」
「えっ、やだ、それはいやよ」
「だって痛いんでしょう? 座るの」
「痛いけど…恥ずかしいもの…」
「今更」
「お手洗いでいいわよ、ね、連れてって」
トイレでそろりと腰を下ろして、痛そうに顔をしかめる。
心なしか音も途切れ途切れで。
「あっやだ、なんでいるの?」
「なんでって…あ、止まっちゃった? ちゃんと出し切らないと膀胱炎になるよ」
「やだもぅっ、出ててっ」
腕をバシバシと叩かれて追い出された。
恥ずかしがってるのが可愛い。
まぁすぐに呼ばれて部屋に連れ戻したんだが。
ベッドの上で点検する。
そんなには腫れてないかな。
ついでにもう一戦、と思ったら先生のお腹がなった。
「ありゃ。なんか食いますか」
「でも冷蔵庫、何にもないわよ」
「食べには…むりですね、このお尻じゃ」
「無理ねえ…」
「何か買ってきましょう。何がいいですか」
「軽いものがいいわね。こんな時間だもの」
「スープご飯なんてどうです?」
「あ、それいいわね」
「トマト系? 塩系?」
「塩系でいいわ」
「OK」
ささっと会話しつつ着替えて買物に出た。
コンビニにあるものでスープの具材をそろえる。
袋野菜とサラダとウインナー。
帰宅して湯を沸かした鍋にあけ、味付けをして行く。
「いい匂い~おいしそうね」
炊けた頃ご飯をチンして丼へ。
その上にスープをかけ、具材もたっぷり載せる。
少しゴマをあたって散らした。
先生を食卓につかせ、食べさせた。
正座の方が楽らしいので卓袱台でだけれど。
「おいし♪ おつゆかけご飯なんて行儀が悪いって言われてたのよ」
「これはスープご飯ですから。別物別物」
おいしく食べ終えると先生が横たわった。
正座しててもやっぱり痛むようだ。
洗い物を終えてからベッドに連れて戻り、添い伏し。
お腹も膨れて先生はとっても眠そう。
キスをして撫でているうちに寝息に変わった。
可愛いなぁ。
明日もたっぷりしてあげよう。
おやすみなさい。
朝、先生を置いて出勤する。
帰る頃にはいないだろう。
そう思っていたのに帰宅するとお昼ご飯を作っていた。
「お稽古は?」
「あ、おかえりなさい。昨日のうちにお母さんにお願いしたの」
「ただいま。いつのまに?」
脱ぎつつ聞く。着替え着替え。
「朝あなたがご飯作ってくれてる間よ」
「へぇ、泊まるつもりだったんだ?」
「あら。家に来いってそういうつもりでしょ? 違ったの?」
「違わない」
後ろから抱きついて胸をまさぐると叱られた。
ご飯食べてからにしなさいって。
「お尻、調子どう?」
「まだ痛いわ…」
「後で見てあげようね」
「ばか、もうっ。服着なさいよ」
「はーい」
着替えて手を洗うと飯ができていた。
テーブルに並べようとすると卓袱台を指定される。
なるほど、確かにまだらしい。
先生は恐る恐る座って楽な体位を探している。
「これでお稽古に行けって言うなんて…」
ぶつぶつと文句を言われてしまった。
「あぁむしろ見たいですね。生徒さんの前でどうするか」
「階段から落ちたっていうわよ」
「……そういう回答は望んでなかった」
「あらそう。早く食べなさい」
軽くかわされて昼飯を食う。
「おいしいなぁ」
「ありがと」
食事中に少し愚痴を言われてしまったものの、メシは美味しかった。
片付けてから押し倒す。
「あ、こら、痛いわよ」
「ごめん、乗って」
うん、確かに床の上でごろ寝は後頭部が痛い。
先生はケツが痛かったんだろうけど。
割烹着を俺の太腿の上で解いて脱いで、畳んでる。何か面白い光景だ。
そういえば昨日散らかした色々なものが片付いてる気がする。
「せんせ。ペニバンとかどうしました?」
「あの、洗っておいてあるわ…。その…ベランダの縄って」
「あなた専用の縄。もうちょっと手を掛けますけどね」
「洗濯物かけようかと思っちゃったわよ」
「あれ作るの大変なんですよ、やめて下さい」
「そうなの?」
「教えますから手入れ、家でします? 俺より繊細だろうし」
「遠慮するわ、律にそれ何? なんて聞かれたら困るもの」
「八重子先生になら良いんですか?」
「ばか、しらない…」
横向いて耳を赤くしている。
「可愛いな、そろそろしましょうか」
上から退かせて先ずはお尻の点検。
トイレをする時のように着物をたくし上げた。
「壁に手を突いて前傾してー。はい、足を肩幅に開く」
「こんな格好させるなんて…酷い人よね」
お尻に触れて様子を見る。
「赤くはそうなってもいないし、蚯蚓腫れもない。腫れてもない感じだな」
「座ると痛いのに?」
「中のほうがまだなんでしょう。あそこは痛くなかった? 最後当たっちゃったけど」
「あ…、うん、大丈夫よ」
「一応確認ね」
「えっあっ、だめ」
割り開いて確認する。
「もう濡れてるねぇ」
「ぅ…、あっ待ってちょっと」
「どうした?」
「窓、開いてるの。閉めないとダメ」
「おっとと、それはいかん」
慌てて窓を締めている間に先生は寝室で脱いでいた。
こんにゃろう。
「なんで勝手に脱いでるのかなー? 脱いでいいって誰が言いました?」
「えっ、だってするんでしょ? 脱がないと…」
「脱がせる楽しみってものがあるんですよ?」
「え、じゃ着たほうがいいかしら」
「もういいですけどね、勝手に脱がないでくださいよ」
とりあえず脱いだものをハンガーにかけてやって、それからベッドイン。
今日は帰らなきゃいけないだろうからと軽くに止めた。
疲れて寝ているのを見るのが結構好きでついキスしたら起こしてしまった。
「ん、もう帰らないと……眠~い」
「もうちょっと寝てたら良いじゃないか」
「だめ、帰らないと。明日もお稽古だもの」
「だったら送るから車の中で寝る?」
「そうしてくれる? お風呂はいるわ…」
「洗ってあげるよ」
眠すぎて体に力が入ってない先生を抱きあげて風呂に連れて入る。
ゆったりと髪を洗い体も洗ってあげた。
このまま布団に戻して寝かせてやりたいほど眠そうだが帰る意志は強固だ。
体を拭いて髪をドライヤーで乾かし、着替えさせるにも立つと体が揺れるほど。
もうこれは寝巻きの上にロングコートが一番だ。
ということでネルの寝巻きを着せ、とりあえずベッドへ転がし、帰す用意をした。
着替えて車を玄関前につけ、先生の鞄や買物した物を載せる。
それから先生にダウンコートを着せ抱えあげて車へ。
後部座席から寝息が聞こえる中、安全運転でお宅まで走らせた。
玄関を開けて先生を運び込む。
八重子先生が驚いていたが、ただ寝てるだけと知って布団を敷いてくださった。
「あんたら夕飯食べたの?」
「まだです」
「何か作ろうか?」
「そんな、いいですよ。先生の夜食だけお願いします」
「そう? お腹すかない?」
「大丈夫です。お昼ちょっと多かったんで」
一旦車へ戻って鞄などを運び入れた。
チョコは冷蔵庫へ。
「すいません、袋忘れてきました。必要でしたら土曜に持ってきます」
「どうだろうね、連絡させるよ」
「あ。草履も。着物も土曜でいいですよね?」
「悪いねぇ」
「いや、私の所為ですから」
謝ってから帰宅した。
途中で買ってきた弁当を食って部屋を片付けた。
脱ぎ散らかした着物とか。
とりあえずで出てきたからなぁ。
なんだかんだで眠くなってベッドにもぐりこむとすぐに起きる時間だ。
疲れてたみたいでまだ眠いが仕事仕事。
それが終って帰宅すると不在票が入っていた。
風呂に入ってから連絡して持ってきてもらったのは、先生に渡すチョコ。
京都の今年は和菓子コラボ品。
明日渡そう。忘れないようにしなければ。
取敢えずは眠いので昼寝をして夕方起きて食事を取りまた寝た。
翌日、仕事の後。
先生の忘れ物とチョコを持ってお稽古に伺う。
「こんにちは、お邪魔します」
「あらいらっしゃい。この間はありがと」
「はい、これ。どうぞ」
「あらあら、なぁに? あら」
「今日バレンタインデーでしょう? だから」
先生の頬が赤くなった。
「こっちは八重子先生に。じゃ、用意してきますね」
「あ、はい、よろしくね」
そのままパタパタと居間へ入っていく先生を可愛いなぁと思いつつ。
茶室に入って昼からの支度をする。
のんどりと穏やかに待っていると生徒さんが来た。
「こんにちは」
「こんにちは、お願いしますー」
「先生はもうちょっとしたら来られますから」
「はぁい、用意してますねー」
しばらくして生徒さんの用意が整った頃、先生が戻ってきた。
「いらっしゃい」
「あ、こんにちはー。先生、今日もお願いしますぅ」
「はい、じゃお稽古始めましょうね。久さん、用意出来てるかしら」
「茶筌荘ですね」
「そう」
生徒さんに道具を説明して先生が指導なさる。
順々に次の生徒さんが来られてお客に入ってもらったりとやはり土曜は忙しい。

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