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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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朝。
昨日しなかったから先生は早起きだ。
着替えた先生に起こされて台所へ行く。
朝ご飯を作り、食べてから家事だ。
掃除をしたり草引きをしたり、その合間にお昼を頂いたり。
夕方になって来客が有り先生はそちらに手を取られてしまい俺は一人、買物へ。
あなたの食べたいものを、と言われていたのですき煮の材料を買って帰った。
台所で八重子先生に見せると苦笑され、下拵えをしてお客さんの帰るのを待つ事にした。
部屋で繕い物を片付けているが一向に気配がない。
腹減ったなぁ。
と思っていたら孝弘さんがメシまだか、と言ってくれた。
重い腰を上げてお客さんが帰ってくれていそいそとご飯を作る。
「ごめんなさいね、遅くなっちゃって」
先生が孝弘さんに沢山ご飯をよそってて何かほほえましい。
「ただいまぁ、あーおなかすいた」
律君も帰ってきた。
「手、洗ってらっしゃい」
「はーい」
うまいうまいと飯を食って片付けをすればもはや帰る時間だ。
また明日、と別れた。
帰宅してすぐに寝て、翌朝仕事へ。
今日も暇だ。
先生に何か持って行こうか。
物色する。
俺も食えるものが良いな。
金目とかどうだろう。
よし、金目とホタテとでいいか。
仕事が終わる頃、イセエビがずっと売れなくてそろそろと言うのを連れて帰ることにした。
支払ってブクブクをつけて車に載せ、シャワーを浴びてから先生のお宅へ移動した。
到着してお勝手から入り、台所に置いて八重子先生に申告。
お夕飯が楽しみだ。
先生は喜んでくれるだろうか。
お稽古を済ませ、食卓に着いた。
「あら、おばあちゃん今日はどうしたの? こんなに」
「なんか凄いね」
「山沢さんが色々持ってきてくれたんだよ」
「そうなの、ありがと」
「私も食べたかったのでもってきちゃいました」
「でもちゃんと山沢さんの分、お肉焼いてあるんだね」
魚を少し食べてから、お肉を頂く。
サイコロステーキうまいなー。
「山沢さん? ちゃんとお野菜食べなさい」
「あ、はい」
「取らないから」
「あはは…食べます」
煮浸しを取って食べ、胡麻和えを食べる。
先生は孝弘さんの食事の世話をしているときが一番にこやかだ。
おいしいご飯に穏やかな団欒。
いいなぁ。
だけど食事を取ったら帰らなきゃいけない。
次は明後日だ。
ちゃんと来ると約束して帰宅した。
途中検問に引っかかりアルコールの検査をされてしまったが、幸い飲んでない。
何事もなく帰宅してベッドにダイブした。
翌朝、寝ぼけつつも出勤、流石に金曜日、水曜・木曜に比べればそれなりだ。
だが今日は雨だ。
しとしとと梅雨らしい、湿った空気、重い。
こんな日にビアガーデン予約していた奴がいた。
どうする?なんて話をしている。
こんな雨の日に決行するのかなー、風邪引くぞ?
結局決行するらしい。アホだ。
こんな日は…女とクーラーの効いた部屋でいちゃいちゃするのが良い。
なんて考えつつも仕事終了、さびしく一人寝の我が家だ。
クーラーを効かせベッドに潜り込む幸せ。
暫く寝て昼過ぎに起きる。
効きすぎだ。
一旦クーラーを止めて食事に出ることにした。
さてなにを食おうか。
ぶらぶらと歩いていつもの店に入り、結局イタリアンを頼んだ。
いつも行くのでいつも大盛を作ってくれる。
食事を取りつつ携帯のメールチェック。
やっぱり先生から来てた。
今日は軽めにナポリタンスパゲティとある。
写真は…まぁ俺のと同じだね。
俺も写真を撮って送り返す。
三回ほど返信して食事に集中した。
食べ終わると先生から更にメールが来る。
今晩一人で夕飯だからどこか食べに連れて行って欲しいそうだ。
食後に言われても中々思いつけない。
先生のとことうちの中間地点くらいでどこかあったかな。
ジャンルは何が良いかまずは聞かねば。
懐石をご希望だ。
さてあの辺にある懐石なぁ…あぁ、あそこがあるか。
電話して予約を取る。
先生に決まったから待ち合わせの時刻を告げた。
帰宅して少し寝て風呂に入って着替える。
こっちまで来るとは言わなかったところを見ると泊まる気はないようだ。
明日お稽古だから仕方ないな。
電車を乗り継いで待ち合わせ場所に到着。
近くの喫茶店でくつろいでいると先生が来た。
アイスコーヒーを追加して一服。
「ごめんね、急で」
「いいですよ、今日も綺麗ですね」
「あら」
コーヒーを飲み終わって一旦涼んだところで移動を開始する。
まだこのあたりは双方知り合いに会う可能性は捨てきれず、手はつなげないのが残念だ。
並んで歩きお店へ入る。
「予約の山沢です」
そう告げると席へ案内された。
あ、個室だ。
これは…ちょっと嬉しい。
仲居さんが来ない間先生の手に触れたり。
先生がドキドキしてるのが楽しくて、つい部屋にこないかと誘ってしまった。
残念ながらお稽古日だからと断られる。
少しごねては見たものの、土曜はやはりちょっとと言うことでまた今度。
やはりアレのときだけか…性欲溢れるのは。
性欲横溢のときに縛ってあれやこれやしてやりたいな。
キレられる可能性は高いかもしれないが。
「なぁに?」
「なんでもありませんよ」
「そう?」
「ええ、おいしいですね、飯」
「めし、なんて言わないの、ご飯でしょ」
「ごはん」
「良い子ね」
苦笑してお酒を注いで少し酔わせた。
「ねぇ先生。ここね、むかしは連込宿だったんですよ」
「え?」
ぴた、と手が止まる。
「代替わりと同時に建替えてね、ちゃんとした料理屋にしたらしくてね」
あからさまにほっとしてる。
「だけどね、所望があれば…ふふ、わかるよね?」
サッと頬に朱が差す。
「だ、だめよ」
「ここが嫌ならどこかラブホ入っても良いけれど」
追い詰められたような顔しちゃってまあ…可愛い。
ニヤッと笑い、冗談ってことにしてあげてデザートを食べる。
「おいし…」
ほっとして食べるのはさぞやうまかろう。
食後、会計して店を出ると少し離れがたそうなそぶりだ。
「明日お稽古行きますね。だから…」
「うん…」
「それとも。明日お稽古の後うちに来ますか?」
「そうしたいわ、でも…」
珍しく歯切れが悪い。
「展覧会、休みの朝から行きましょう。何か探しますよ」
「あ、それなら出れるわね」
駅で別れる前に少し指を絡めた。
「じゃあおやすみなさい。気をつけて帰って下さい」
「あなたも気をつけて帰って頂戴ね。おやすみなさい」
あー、キスしたい。
我慢して別れて帰宅する。
先生も同じように思ってくれているのだろうか。
帰り着いてすぐ、先生から帰宅のメールが届いた。
明後日どこか展覧会は、と調べてリストアップしたものを返事とする。
暫く待つと行きたい展覧会を二つ書いて送ってきた。どちらかで良いようだ。
明日稽古に行ってから決めようと返事をして、就寝の挨拶を交わした。
おやすみなさい。
翌日は土曜と言うこともあり忙しく、慌ててお稽古へ向かう。
急ぎ挨拶して水屋を整えた。
順々に生徒さんが来てお稽古が進む。
俺のお稽古も終り水屋を片付け夕飯を取った。
すぐに先生を連れて俺の家へ電車で戻ることに。
明日朝からでも、と言ったが朝ばたばたするのが嫌だからと。
ま、確かに暑いし雨気だしで朝用意するのは面倒くさい、その上の1時間半電車では。
二人で電車に乗り座っていると先生が寄りかかってくる。
クーラーが効いている分温かみが気持ちよい。
手に触れてくる。
ひんやりとした指先。
包み込むように握って袂で隠す。
先生は知らぬ振りして窓の外を眺めている。
俺は車窓に映る先生の顔を見つめて降車までぼんやりしていた。
このままどこか遠くへ…いやダメだ、それはしてはいけない。
せめて律君が独り立ちをしてからの話だ。
乗り換えて家に帰宅した。
電気を付けると先生が眉をしかめる。
あ、新聞散らかしたままだ。
「片付けるの手伝うわ」
「うわ待った、ストップ!」
「なぁに?」
「あれ、全部一枚一枚畳むんですよ。だから片付けないで下さい」
「それならそれで手伝うわよ?」
「手、汚れるから。とりあえず着替えて暇なら寝転ぶなり何なりしてて」
「そう? じゃあ」
先生が和室へ行って着替える間に新聞に手をつける。
一枚ずつ離して畳み積み上げ袋に入れていく。
まだ終らないのを見て先生は俺の背中にもたれかかってきた。
「眠いなら少し寝る?」
「眠くはないわよ」
「じゃもうちょっと待ってて」
「うん」
ガサガサと作業を続け10分ほど経った。
暇と見えて人の腹を揉むのはやめてくれ、くすぐったい。
暫くしてやっと終った。
先生が離れてやれやれと手を洗いに立つ。
無駄に時間を使ってしまった。
戻ると先生がお茶を入れてくれててありがたく頂く。
「疲れてる?」
「お稽古してそれから移動だもの。あら? でもあなたいつもそうよね」
「基礎体力の違いでしょうね」
「そうかも」
湯飲みを片付けて俺も着替え、先生の後ろに座る。
「さて、今からして明日展覧会行けるのかな」
「行けなかったらどうしようかしら」
「疲れてたみたいで寝ちゃったとか言いますかねぇ」
「お母さんにはばれるわよね」
「ま、仕方ないでしょうそこは」
ごそごそと胸をまさぐる。
柔らかくて気持ち良いなぁ。
暫く弄っていると体臭が立ち上ってくる。
体温が上がるとどうしても昼にかいた汗が匂うんだろう。
だけど不思議と好きな女だからか臭いとは感じない。
むしろ好きな匂いだ。
あと匂い袋なのか防虫香なのかはわからないがそういう匂い。
先生はそんな匂いよりも俺の動かす指に翻弄されて少し膝が崩れてきている。
浴衣の衿を広く開けて首筋から肩にかけて舐める。
もう少しで胸が見えそうだ。
普段は布団の中だけだから後ろから抱くのは久しぶりで少し興奮する。
そろりと裾を割ってはだけさせると色っぽくて素敵だ。
お腰の中に手を差し入れると温かくて湿っている。
指先がかすかに毛に触れるとビクッとして俺の腕を掴んだ。
指を動かして微かに、かすかに触れて反応を見る。
楽しい。
「足、開いて」
葛藤してるのを見るのも愉しい。
「ん? 犯して欲しいのかな?」
そう言うと慌てた様子で、だがそっと膝を開いた。
指をもぐりこませる。
「あっ」
「ほら、こんなにして…荒々しくされるのも好きなんじゃないの?」
「んっいや、違、うっ」
気持ち良さそうだなぁ。
「ほら、膝を立てて開いて。あの鏡に映るようにね」
少し体の向きを融通して鏡に映るようにした。
はっ、と見て自分の状況を認識したらしい。
浴衣を肩まで露わにされ乳には俺の手が蠢き、裾は乱れてはだけた腰巻と俺の腕。
とろり、と指がぬめる。
恥ずかしがっていて可愛くて。
耳を舐めると声が出た。
そのまま暫く玩び、弄り、十分に満足するまで責めた。
ぐんにゃりと力の抜けた先生を抱えて風呂に入る。
ゆっくりとなでて洗い、頭を洗っていると寝息に変わっていた。
可愛いなぁ。
濯ぎ終えてきっちり拭き取り洗濯できている寝巻きを着せて髪を乾かしベッドに入れた。
横にもぐりこんでお休みなさい。
翌朝はやはり先生はよく寝ていた。
朝御飯の支度をして先に食べる。
と言ってもパンとベーコン、卵だが。
空腹が押さえられたので10時にセットして二度寝することにした。
先生が寝返りを打ち俺の上に乗ってしまう。
ま、いいか。
重いのもそれなりに気持ち良いし。
しかし疲れきってるようだがトーハク行けるかな?
白菜が見たいらしいけど。
うつらうつらと朝寝を楽しんでいると9時半頃目が覚めたようだ。
「ん、おなかすいたぁ」
「ふぁ…うー、お早うございます」
「あ、おはよう。何時?」
「9時半みたいですね」
「随分寝過ごしちゃったわね」
「疲れてたんでしょう、今日いけそうかな?」
「行くわよ。7日までだったでしょ?」
「ええ」
「じゃ朝ご飯食べたら着替えて行きましょ」
起きるのは良いがちょっと立つのに苦労をしていた。
トイレに連れて行ってから食事を作る。
軽めで良いというので軽めに。
先生にはサラダをつけた。
食べて洗顔と歯を磨いて10時半過ぎ。
「さ。着替えたいわ。手伝って頂戴」
「はいよ」
ちょっとは回復したらしく、手を貸さずとも和室に入った。
髪を結ったりお化粧をして先生が調えている間に自分の身支度を整えた。
先生は昨日出してあった着物を着る。
「紐」
「はい」
やっぱり着るの手早くて、そして綺麗だなぁ。
つい見とれてしまう。
それから再度鏡を見直して色々とチェックし、俺の着物を少し直した。
先生がトイレに行く間に鞄や草履を出して後は家を出るばかり。
混む、と聞いていたので念のため飲み物を鞄に入れて、出発。
とはいえ5分ほど歩きすぐに電車に乗ったが。
メトロで上野に出てタクシーを拾う。
「混んでますか?」
「そうだねぇ3時間待ちとか」
「先生、どうされます」
「今日じゃないと…あなたが良いなら私は待てるわ」
「大丈夫ですか」
「ええ」
車を走らせて貰って正門へ。
「お、今日はそこまでじゃなさそうだ」
「あれでですか」
「よかったねえ、お客さん。3時間じゃないよ」
降車して手続きをして列に並ぶ。
やや時雨れている。
「先生、俺に体重預けて」
「ん」
一時間ほどかけてじりじりと列が進む。
途中先生が喉が渇いてそうなので飲み物を飲ませた。
「あ、おいしい」
汗、随分かいてるようだ。
体重を預けるとどうしても密着するからなぁ。
暫くしてやっと入場だ。
列の進むにしたがって見えてきた。
なるほど白菜…。
先生は真剣な顔でじっくり鑑賞している。
俺なんかはこんなもんなんで作ろうと思ったんだ…?なんて。
思っちゃってたわけだけども。
先生の鑑賞している横顔を見てるほうが楽しいわけなんだけども。
立ち止まることは出来ず他の展示物へ流れる。
先生は凄く楽しそうだ。
好きなんだなぁ。
その後常設展も巡って帰宅。
まずは先生を風呂に入れてベッドで休ませた。
流石に昨日の今日で1時間以上の待ち時間は堪えたようだ。
寝ている間においしいお弁当を買いに出た。
急いで行って急いで戻る。
そっと玄関を開けて静かに入り、冷蔵庫に仕舞った。
着物を脱いでそろりと先生の横に潜り込む。
良いにおいだ。
俺の匂いをつけて帰したくなるが。
もう一度抱いてしまったら帰れなくなるだろうな。
それはきっと叱られる。
なんて思っているうちに寝てしまい、7時前に目が覚めた。
先生を起こしてしまおう。
「ん、もうちょっと」
8時と9時に起こしたけど全然ダメだ。
諦めて先生のお宅に電話した。
起こしたけど起きない、そういうと苦笑する気配が伝わってくる。
トーハク1時間以上待ち時間があったので疲れた模様、と言えば納得されたようだ。
電話を切って一人寂しく弁当を食べる。
寝息を聞きつつ。
食べて歯を磨いてコーヒーを飲んでると起きたようだ。
「いま何時ー?」
「10時過ぎてますよ」
「あ、あらぁ?」
「弁当温めますね。それからお家には電話しておきました」
「ええっ?」
「明日朝のお稽古ないんでしょう?」
「ないわよ、ないけど…」
チン、と鳴る。
「はい、どうぞ」
冷たいほうが良いものだけを先によけておいたのでそれを盛り付けなおして渡した。
「お茶入れますね」
「ありがと…あ、あなたもう食べたの?」
「先ほど。もう少し待てばよかったな」
「起こしてくれたらよかったのに」
「ははは、3回起こしましたよ。もうこんな時間ですしね、これから帰すのは怖い」
「12時くらいまでなら平気よ?」
「俺が嫌」
ぷっと吹き出してくすくす笑ってる。
ま、納得してくれたようだ。
ゆっくりとお弁当を平らげてお茶を飲む先生はまだ少し眠そうだ。
「寝ますか」
「食べてすぐはダメよ」
眠そうなのに。
暫くテレビを見てそれから歯を磨いて先に布団へ潜った。
一人うつらうつらしているとそっと入ってくる気配。
温かくて丸みのある先生の体が俺に添う。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
懐に抱きこんで寝た。
翌朝、よく寝ている先生を置いて出勤する。
朝のうちに帰るよう書置きをして置いた。
でないと今日は先生はお稽古がある。
暇な仕事をして食事を買って帰宅した。
当然鍵は閉まっていて人の気配はない。
ちゃんと帰ったようだ。
ほっとしつつも少しさびしい。
八重子先生はうちの嫁になれば立場が安定するというけれど。
会えない日にさびしいのは一緒なんだよなあ。
後お付き合いは最低1年くらいすべきではないかと思う、うん。
だからもう少し様子見て欲しいなぁ。
ん? メールが来た。
先生が笹を飾ったようだ、暇なら来て書くようにと
あー今日は七夕か。
夕方行くと返事をして少し寝て。
おやつの時間に起きて風呂に入って着替えて、電車に乗った。
夕飯の用意はしてくれるとのことだから楽しみだ。
最近先生が作る、と言うの食べてないからなあ。
浮き浮きして先生のお宅に着く。
「あら山沢さん、さようなら~」
月曜の生徒さんと玄関前でかち合った。
挨拶を交わして中へ入る。
「あぁ、来たの。居間に短冊あるから書いてね。ご飯は今から作るから」
「はい」
鞄を置いて居間に入ると机の上にいくつか短冊、そして硯と墨と筆。
んん、何を書こうかな。
一人3枚までとか書置きしてあるからとりあえず1枚は上達に関することを。
もう1枚はやはり仕事かな。
後1枚には先生とのことを書きたいが人目に触れてはいかん物はかけない。
けど書かないと拗ねられる気がする。
暫く悩んで書き始めた。
笹に括りつけて手を洗って台所へ。
「書けたの?」
「括りつけときましたよ」
「ご飯もうちょっとだから待ってて」
「あんた律に見られて困るようなこと書いてないだろうね?」
「いやーさすがにそれは書けませんよね」
笑い飛ばした。
暫くして雨に濡れた律君帰宅。
「もー参ったよー夕立」
「あら、おかえり。山沢さーーん、律にバスタオルやってくれる?」
「もう貰ったよ」
「お風呂入ったほうが良いと思うけど。凄いずぶぬれだし」
「そうね、入ってらっしゃい。ご飯まだだから」
そうするよ、と律君が風呂場へ行った。
料理の音って良いなぁ。
今日はご飯、なんだろう。
きっとおいしいものだろうけど。
「あ、ねえ、机の上片付けてお父さん呼んで来て頂戴」
「はーい」
言われたとおりして、呼びに行って戻ると配膳されていた。
うまそう。
「律が戻ったら食べましょ」
皆が席に着いて律君がタオル片手に戻ってきた。
いただきます。
うーん、やっぱりうまい。
胡瓜の酢の物に俺にはなますもつけてくれた。
暑いからさっぱりしたものが良いでしょ、と律君に言ってる。
珍しく揚げ物が並んでいる。
暑いのによくやるなぁ。
と思ったらフライパンで揚げ焼きにしたらしい。
その手の絆創膏はそういうわけか?
ご飯の後聞いてみたら違った。
朝、庭で転んだらしい。
「庭のつっかけが壊れちゃったのよね」
「でどうしたの?」
「お昼に買ってきたわよ」
「手はよく洗いました? 流水で」
「兄さんがいたからホースでしっかり洗ってもらったけど…痛かったわよー」
「でも土は良くない菌が一杯いますからね」
「うん、兄さんもそういってたわ」
「お昼って開さん何しに来てたの? お母さん」
「蔵の鍵貸してっていってたけど…何してたかは知らないわ」
少しお酒を取ってきて縁側に移動した。
「あまり見えないわねえ」
八重子先生が蚊取豚に線香を仕込んでくれた。
先生はうちわ片手に足を崩して俺にもたれてる。
律君も少しだけ飲んで、レポートがあるからと部屋に戻った。
もたれてたのがいつしか枕にされて、可愛いけど困るな。
このまま泊まるなら問題ないけど明日も仕事だし。
小一時間ほど寝かせて八重子先生が起こした。
「あんたそろそろ山沢さん帰さないと。これ、起きなさい」
「ん、もうちょっと」
「これ、絹、起きなさい」
「まぁ10時くらいまでなら何とかなりますから、電車」
「すまないねえ」
ゆったりした時間が流れ、先生が目を覚ました。
あふ、とあくびをして。
「さて、起きられたようですので私はそろそろ」
「あら帰っちゃうの?」
「絹、あんたもう11時半だよ。終電なくなっちゃったらどうするんだい」
「最近お疲れですね」
頭をなでて手を離させた。
「気をつけて帰ってね。明日またお稽古来るのよね」
「来ますよ勿論」
八重子先生が台所に消えた隙に軽くキスした。
頬が赤くなって可愛い。
「じゃ、また明日」
「ん、またね」
「八重子先生、失礼しますねー」
台所に声を掛けて玄関を出た。
振り向くと軒先で見送ってくれている。
手を上げたら先生も手を上げて。
戻りたい気分を抑え、帰宅し、すぐに職場へ向かった。
さすがに暇とはいえ、いやむしろ暇だからこそ徹夜で仕事は辛い。
好きでもない相手のことでこうなったなら随分腹を立ててただろう。
6時半頃、先生から仕事頑張ってるか問うメールが来た。
今日は暇すぎる、と返事をした。
台風の所為で南の方からは荷物が来ないときている。
冷凍庫の在庫整理などを暇つぶしにしていると売る当てのなくなった食材が出てきた。
売っぱらうかそれとも買って先生のところへ持ち込むか。
悩んだが買って帰ることにした。
冷凍だから保冷剤を沢山入れた密閉箱に入れなくては。
あの家なら炭が有るからいざとなりゃこれを焼けば暫く食えるし。
帰宅して風呂入って着替えて先生のお宅へいき、冷凍庫にしまった。
昨日の笹はもはや片付けられて先生の談笑する声が聞こえる。
柔らかい声に心が浮き立つ。
「先生、先生のお兄さん山沢さんと結婚なさるんですって?」
「あら、ほほほほほ、まだそこまでは」
なんて話題だ、顔が出しにくい。
帰られるまで部屋で待機しておこう。
暫くして玄関の締まる音がしたので居間へ顔を出す。
「あら来てたの?」
「話題が話題だったので隠れてました」
「その方が良いわ…もう、困ったわよ」
取敢えずはと先生がお昼を食べてる間にお稽古の準備をして生徒さんと先生を待つ。
暫くして先生が戻って生徒さんも来た。
台風の間はお稽古休みかどうかを聞く生徒さん多数。
これなさそうならお休みの連絡いただけるよう、で落ち着いた。
今は台風はどんなものだろうな。
お稽古は進み俺のお稽古もつけていただいてお夕飯をいただいた。
結構この家にいると先生の作るご飯より八重子先生のご飯を頂く機会が多い。
今度先生にねだろう。
昨日うまかったし。
先生はお風呂に入った後ドラマを見ていて部屋に帰る気配はない。
八重子先生から風呂入れ、と言われた。
シャワー浴びてきているが確かに湿気て汗をかいている。
入らせてもらおう。
暑いけども湯船にはいるとやはりくつろげる。
自宅では湯船には入らずいつもシャワーだからかな。
風呂から上がってもまだドラマを見ていた。
暑くて襟元をくつろげてうちわを使う。
CMに入ってこちらを見た、と思ったら叱られた。
お父さんがが部屋にいるのにって。
いや孝弘さん全然興味ないから問題ないでしょ。
「律が戻ってきたら困るでしょ。律が」
なるほど。
っとCM終った。
仕舞いなさいよ、と言ってTVに向いた。
11時までのようなので戸締りと火の始末にかかる。
戻ればそろそろ終盤だ。
孝弘さんは部屋に帰ってしまった模様。
仕方ない、先に布団敷いてこよう。
暫くして先生が部屋に来て布団に潜り込む。
大あくび。
「先に寝るわよー」
「え、あ、はい…っておーい…」
寝息立ててるよ。
頬をつついても起きないし。
何か疲れてるのかねえ? やらせろよー…。
とは思うものの寝てる女抱いてもあまり面白くはないし。
俺も昨日は寝てないし。
寝るか。
おやすみ。
翌朝、先生は早くに目が覚めたようだ。
ご飯を作るにも小一時間ある。
なので…抱いた。
「朝からダメ…」
っていうけど気持ち良さそうだ。
終った後ホットタオルを作り体を拭いて。
足の指の間まで拭き終えてタオルを洗いに立った。
ざっと下洗いして洗濯籠へ。
部屋に戻ろうとすると先生が洗顔しに来た。
俺の胸に手が伸びて乳首をつねられてしまった。痛い。
後はいつものようにご飯を作って食べ、家事を手伝ってお昼も夕飯も頂いて帰宅した。
平和な日常だ。
木曜日の朝、既に南の方は台風被害が出始めているようだ。
出勤してもパソコンや携帯で台風情報を見たり。
そんなことが出来る程度には暇なんだよな。
こちらに来るのは明日かぁ。
今日のお稽古は行けるし帰れるが明日は先生たちどうするんだろう。
俺が行っても今度は帰れないとなると仕事が困る。
暇ながら仕事が終わり、先生のお宅へ。
お稽古。
台風の話題で持ちきりだ。
まぁこんな日じゃね。
俺はちょっとアレでだるい。
と言うのもあり、先生も諦めて今日は半分サロンモードだ。
お稽古の時間も過ぎて居間のテレビをつける。
今晩は近畿か。
夕飯を取った後ニュースを見ると早くも和歌山を通過したらしい。
「あんた強風圏に入ったって行ってるから早く帰りなさい」
「雨戸打ち付けたりしないで大丈夫ですか」
「大丈夫だよ、昼に孝弘さんにしてもらったからね」
おお、孝弘さんをコントロールしてる。
どうやら食い物で釣ったらしい。
だろうなぁ。
明日の朝6時ごろ、関東に来るようだ。
「気をつけてくださいね。何かあればすぐ連絡下さい」
「あなたもね、気をつけて頂戴」
「ありがとうございます。じゃ…」
帰りたくないなぁ。
土砂崩れとか心配すぎる。
渋々帰る俺を先生が見送ってくれた。
電車に乗って帰宅するしたものの…心配で困ったな、寝付けないぞ。
テレビをつけたままうとうとと寝る。
幸い出勤時刻頃には雨も終わり、仕事が終わるころには温帯低気圧になったようだ。
職場を出てみれば良い天気である。
なんだったんだ。
先生からメールがあって何事もなかった由。
だろうなぁ。
今日は暇だからジムに行く旨メールした。
"がんばって"と珍しく絵文字がついてきている。
何か可愛らしくてほんわかしつつ、がっつりとトレーニング。
アレのときに出る無駄なやる気の消化だ。
いや暫く行ってないと駄目だね。
シャワーを浴びて帰宅してベッドへダイブ。
寝転んだままメールチェックをすると先生はお友達と遊びに行っているようだ。
あーこれじゃ明日もさせてもらえんなあ。
きっと疲れて駄目だって言うはず。
たまにはしょうがないか。
理由、今回はわかってるんだし。
眠気がきたので寝た。
次に目が覚めたのは先生のメールの着信音でだ。
お友達とのお夕飯、らしい。
俺には報告するほうが後々こじれないのがわかったようだ。
遊びに行くと最近はこのようにメールが届く。
俺も食うとするか。
外は雨が降り出した。
職場で作ったハモの落としと酒でいいや。
一杯やっていると玄関から物音?
「ただいまぁ」
「あれ、いらっしゃい。どうしたんです?」
「降られちゃったの、雨宿りさせて頂戴」
そういって着物を脱いでハネが上がってないか確認し始めた。
それが終って居間へ出てきて俺の食事を見た。
「あなたねぇ…またこんな…」
「ま、先生も一つ飲みませんか」
ぐい呑みを渡して注ぐ。
ちょっとだけ、と飲ませれば先生の頬はほんのり桜色だ。
先生の前に座る。
「足、出して」
「なぁに?」
足袋を脱がせてマッサージ。
気持ち良さそう。
暫く揉んでると眠そうだ。
「泊まっていきますか? 朝帰れば間に合いますでしょう?」
「何もしない?」
「して欲しければしますよ」
「しなくていいわよ…」
笑って揉み終えて電話を渡す。
「おうち、電話して」
その間に手を洗って台所を片付けた。
電話をしているその背中もマッサージ。
微妙にだが声が震えている。
気持ち良さそうなので腰へも手を伸ばし揉み解す。
電話が終った。
「もうっ気持ち良いけど変な声出そうだったじゃない」
ははは、と笑って先生が着替えるのを見る。
「ベッドで尻と太腿もほぐしてあげますよ」
あ、顔赤い。
先生をベッドにうつ伏せにさせ、さっき触らなかった部分をゆっくり解す。
尻や太腿の付け根は少し感じてしまうようで困った顔をする。
ただし今日は抱いてといわれないならしない気だ。
解すだけ解して後は撫でて緩めた。
少し迷うような顔をしているが、とりあえずトイレに立って戻ると眠そうだ。
横にもぐりこんで頭をなでていると寝息になった。
可愛いな、お休み。
俺もお休み。
夜半、起床する。
出勤の支度を整えていると先生がトイレに起きた。
「ねぇ、もう行っちゃうの?」
「そろそろ時間だからね。昼にはまた逢えるよ」
それでも昼間は出来ないディープキスをして胸をまさぐり先生を少し煽った。
もしかしたら今晩、とちょっと期待したのもある。
「じゃ仕事行くから。ちゃんと寝ておいで」
布団に入れて頭を撫でて。
もうちょっと構ってたいけれど出勤だ。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
出勤して仕事に精を出しているうちに6時過ぎ、先生が帰る旨メールしてきた。
気をつけて帰るよう返信して仕事を続ける。
うん、今から帰れば余裕で朝ご飯を食べてお稽古できるね。
とりあえず俺は仕事、仕事。
それなりにばたばたとして気づけばもう良い時間だ。
客も途切れた。
仕舞うとするか。
さっさと片付けて持ち帰る食材を探す。
うーん、海ぶどうなんて一般では使いにくいし。
今日は台風の所為で北のものも南のものもまだ入荷が少ない。
ハモすらあまりないときて。
サワラでいいや。
半分を切って幽庵地を作り漬け込んだ。
後の半分は普通に焼いて貰おう。
作業を終えて車に積み込む。
そうこうしている間に仕入れと売り上げのリストが出た。
つき合わして訂正を頼む。
事務からOKが出て帰宅し、風呂に入り服を着て車に乗り込んだ。
一路、先生のお宅へ。
到着して荷物を台所へ持ち込む。
八重子先生がお昼の支度をしてらしたので丸投げだ。
「あ、山沢さんちょっと」
先生が先にこちらを見つけた。
「お水屋はしておくから頼みがあるのよ」
「なんですか?」
「これ使ってあの桐の横にある松の虫、どうにかしてくれない? うまく掴めなくて」
ピンセット? 虫? えー…。
「ね、お願い」
拝まれてしまった。
「仕方ないなぁ…」
「これ、持って行って」
紙袋。虫を入れて捨てるわけか。
庭に下りて言われた木を探す。これか。
う、凄く多い。
やだなー…と思いつつピンセットで一匹ずつ取って袋に落とす。
気持ち悪いよう…。
げんなりしつつ大方取り去り角度を変えて眺め回す。
いるいる、まだいる。
頑張って取り去った。で、この紙袋どうしよう。
…鳥、食わんかな。いや目の前で食われるのは気持ち悪い。
しばしたたずむ。
遠くで車の音、そうだ。
道路に出て行き車の轍跡に置いた。しばし待つ。
3台ほど通り過ぎ綺麗に轢き潰されたようだ。
中身の見えない袋に入れ口を括って捨てた。
戻ってよく手を洗い一応髪をとかしてから着替えた。
既に生徒さんが来ている。
「遅くなりまして」
さっと水屋を確認して次の用意をする。
生徒さんが途切れたときにどう始末したか聞かれたので教えた。
ちょっと引いてるようだ。
その後もお稽古は続き俺のお稽古へ。
今日は盆点。
色々忘れてることがあって叱られたがしょうがない。
先生と水屋を片付けてる途中キスされた。
「ここで抱かれたい?」
「ち、違うわよ、つい…」
「俺は一度くらいしてみたいけどね」
「駄目よ」
頬を染めて可愛いなあ。
「ほら早く片付けましょう。八重子先生が律君を呼んでる」
「あっ、そ、そうね」
「今晩はあちら行きましょうか」
「えっ」
手が止まって耳まで赤い。
「声、聞きたいしね」
ごくり、と先生は唾を飲み込んだ。
「ばか…恥ずかしいわ」
のの字を書くようにしてる先生をほっといて片付け終えた。
手を取って立ち上がらせ、夕飯を取るべく移動する。
部屋にはいると俺の手を離し、女から母親へ意識を切り替えたようだ。
表情が違う。
切り替え上手でうらやましい。
ご飯を食べる。
サワラは照り焼きに化けたようだ。
俺には豚の生姜焼きがついてきている。
うまい。
「もっとお野菜も食べなさいよ」
注意を受けて菜っ葉を食べる。
お揚げと炊いてある。だしがしみてうまい。
幸せだなあ。
すっかり満腹になってお片付けを引き受けて台所へ。
洗い物をしていたら律君が来た。
コーヒーのボード片手に悩んでいる。
「山沢さん、これ、一番苦くのないのってどれですか」
「そうだなぁこのへんはどうかな。こっちは普通のサイズ、これはエスプレッソがお勧め」
うーん、と悩んで両方作って持って行った。
俺は今日は酒が良いなぁ。
洗い物を終えて居間に戻り先生を誘った。
「八重子先生、酒飲みたいんですけど先生連れてって良いですか」
「ここで飲んだら良いじゃない」
「律君に絡んで良いのなら」
「えっ僕?」
「それは困るわねぇ」
「行ってきたらいいよ」
うんうん、と律君もうなづいてる。
「しょうがないわねえ」
「じゃお酒取ってきますね。行きましょう」
冷蔵庫でよく冷やしたお酒を持って先生とあちらへ行く。
途中近所の人に会い先生が立ち話を始めてしまったものの、時間も遅いのですぐに別れた。
部屋にはいるとまたシーツの色がピンクに戻っている。
あ、クッションもピンクだ。
とりあえず着替えるか。
先生を脱がせると少し恥ずかしげだ。
うん、いいね。
着替えるのやめて抱こうか。
先生の帯と着物を衣桁にかけて俺も着物を脱いだ。
「おいで」
肌襦袢姿の先生を引き寄せてベッドへ。
ハ、とつく息が既に熱い。
「したかったんでしょう?」
こくり、とうなづいて顔を背けた。
恥ずかしいらしい。
紐を解いて更に脱がせた。
胸が大きく上下に動いて息が荒い。
昨日や今朝煽ったのがうまくいったようだ。
ちろりと乳首を舐めるとびくっとしてしがみついてきた。
可愛いねぇ。
そのままいつものように抱くといつもよりは先生の反応が強く。
ぎゅっと俺に抱きついてくる。
軽く一度逝かせ、脱力した先生に寝巻を着せると怪訝な顔をしている。
「お酒、飲みましょう」
少しエアコンをかけて先生をクッションに座らせコップを出して注いだ。
「ありがと」
俺は手酌で。
先生は喉が渇いていたのかクイッとコップの酒を飲み干した。
新たに注ぐとそれも半分ほど。
結構に強い。
俺がコップを空けると注いでくれた。
美人にお酌してもらえる幸せ。
呑みつつキスしてくる。
まだ足りないようだ。
そのまましようとすると床は嫌だというのでもう一度ベッドへ。
「寝巻、着せなくてもよかったかな」
「裸でお酒飲むのはいやだもの」
「俺はそれも色っぽいかもしれないと思うけどね」
ただし恥ずかしそうにはしてて欲しいかな。
大股開きでガバガバ飲まれちゃ興醒めだとは思う。
キスしてゆったりと抱く。
物足りなさに焦れるのが可愛くて。
もっと焦らせたくなる。
まぁあまり焦らせるのも可哀想だから適度に逝かせた。
息が整ったようだからとキスをして上に乗せて背中をなでる。
気持ち良さそう。
暫くしてお風呂入って戻りましょ、と言われた。
完全に落ち着いたようだ。
二人で入るとまたしたくなるから、と俺を置いて一人で風呂に行った。
一緒に入らなくとも一緒に寝るから同じだろうに。
脱いだ着物は明日取りに来ることにして新しい浴衣を出した。
暫くしてすっきりした顔でその浴衣を着て出てきた先生に早く入るよう言われた。
湯上り姿も色っぽくて良いな。
風呂に入って汗を流し裸で出た。
「浴衣出してあったでしょ?」
「まだ暑いから」
どっかりと座ってある程度冷えるのを待つ。
うちわで先生が扇いでくれた。
「早く着ないと襲っちゃうわよ? ふふ」
そういって俺の胸を弄る。
「そんなこと言ってるともう一度しちゃうよ?」
「あら」
手が引っ込んだ。
残念。
何とか汗が引いたので浴衣に着替え、もう少し酒を飲んでから戻った。
「お帰り。泊まらなかったの?」
「まだ起きてたの? もう遅いから寝なさい」
「うん」
「おやすみ、律君」
「おやすみなさい」
戸締りと火の元を確かめて、部屋に入り布団を敷く。
先生は大あくびをして俺が布団に入ると潜ってきた。
俺の胸を枕にすぐに寝息。
やっぱりしてから風呂入って部屋移動は疲れる?
でも汗で濡れた布団では寝たくなさそうだったしなぁ。
もう一組布団を置いて寝る前に取り替える、なんて現実的じゃないよね。
先生の寝息に引き込まれて俺も眠くなった。
おやすみなさい。
翌朝やっぱり先生は起きれなくて俺が朝飯を作る。
今日はご飯の前に八重子先生が先生を起こしに行った。
珍しい。
「今日は9時から町内の会合があるんだよ。だから絹を起こさないと」
あくびをしつつ先生が起きてきて食卓についたがまだ眠そうだなぁ。
「早く食べて支度しないと、ほら」
八重子先生にせっつかれてる。
町内会かぁ、大変そうだな。
草むしりとか側溝は律君が出たりしてたらしい。
食後、着替えて先生が出て行った。
俺はあちらの家から洗濯物を回収して先生の着物は畳んで仕舞った。
八重子先生と家事をして先生の帰りを待つ。
昼前、まだ帰ってこないので買物に出た。
買物袋を提げて戻る途中、先生と出くわした。
「あら、なに買って来たの?」
中を見せる。
「冷麺食べたいって律君が言ってたから」
「あらー」
「何か食べたいものありました?」
「甘いもの欲しかったんだけど…良いわ」
「プリン買って有りますよ。それともホットケーキ食べます?」
「いいわよ」
「なに、俺が食べたいから先生がお相伴と言う形で」
「そう? そうしてくれるならホットケーキにしてくれる?」
「勿論。じゃちょっと寄り道してください。牛乳がない」
「コンビニ?」
「そう」
あ、わらび餅に引っかかってる。
生クリームも一緒に買うことにした。
戻って八重子先生に冷麺を頼んで俺はホットケーキを焼く。
同時にカラメルソース。生クリームも泡立てて甘めに。
「甘そうだねぇ」
「どうせなら甘いほうが良いじゃないですか」
浴衣に着替えた先生が台所に来た。
冷麺を二つお盆に載せて持って行って、またこちらへ。
孝弘さんは出かけちゃったので後はホットケーキが出来たらOK。
カラメルと生クリームとバターを先に持って行ってもらった。
よし、焼けた。
お皿に乗せて食卓へ。
「おいしそう、うふふ」
律君はうんざりした顔で生クリームたっぷり乗せる先生を見ている。
甘党ではない男の子には嫌なのかもしれない。
俺は抹茶のアイスと食べた。
俺は流石に終盤しょっぱいものが食べたくなったが先生は完食。
午後は昼寝したいというのでお付き合い。
雨気にしっとりとした肌、甘く匂う体臭に何か気が緩んで。
ゆったりと部屋で寝ていると人の気配に目が覚めた。
あ、斐さん。
視線は俺の…胸?
あぁ先生ががっちり噛んでた。
何か痛いと思ったら。
先生に用があるようなので揺り起こした。
「んー…、なぁに~」
「絹ちゃん、あんたねえ」
ちょっと呆れてる声を出しているのは寝ぼけて俺の腹を揉んでる点か?
先生の口元を手拭で拭いてあげて、俺の胸を拭く。
歯形と涎でべたべただ。まだ先生はぼんやりしてて、寝が足りない様子。
ぺたん、と斐さんが布団の横に座った。
先生はやっと意識が現実に戻ったらしい。
「あら、姉さん」
腹を揉む手も膝へ行った。
「居間行きませんか?」
「そうね」
身づくろいをさせて髪を直して。
俺は布団を片付けて行く、と部屋から送り出した。
ああ危なかった。
噛まれてる程度の時で良かった。
部屋を整えて居間に戻る。
「あ、山沢さん、コーヒー入れて頂戴」
「はいはい、エスプレッソ?」
「ううん、普通のが良いわ。姉さんの分もね」
「はーい」
俺の分も入れて戻る。
「どうぞ」
「悪いわねぇ」
「いえ。あ、そろそろ買物行かないとですね、何しましょう」
ちょっと考えていくつかメニューを言われたので買物に立った。
買物から戻ると八重子先生が帰っていたので台所に二人で立つことに。
「斐、あんたご飯どうするの?」
「食べて帰って良いかしら、どうせ今日うち誰もいないのよ」
ということで作る。
結婚後に姉妹で仲良く話す機会ってあまりないだろうし。
さっと作ってご飯が炊けた頃、孝弘さんが戻ってきた。
はらへった、と言ってる。
「ちょっと待っててくださいね、律が帰ったら食べましょ」
律君待ちか、俺も腹減った。
バラバラッと音がした。
夕立。
八重子先生がタオルと雑巾を用意してる。
律君が濡れて帰った時のためか。
優しいなぁ。
がらっと戸が開いた。ナイスタイミング。
「ただいま、もー後5分降るの遅かったらなぁ」
タオルだけで済みそうだ。
じゃ食卓にご飯出しましょう。
お盆に載せておかずを運ぶ。
「あ、手伝うわ」
「いいわよ、この子に任せてたら」
「作ってもらったんだからそれくらいはしないとね」
そういっていただいたので軽いものばかり乗せて渡した。
あとはお櫃。
先生の横に置いた。
律君が食卓に着いたのでいただきます。
「あら、結構おいしいじゃない。お母さんじゃないわよね、これ」
「ほとんど山沢さんが作ってるからね、うちの味とはちょっと違うだろ」
「山沢さんの作るの、最初の頃は食べるの辛かったのよねぇ」
和気藹々とご飯を食べて、お片付けをしたらもう帰る時間だ。
今日はさらっと挨拶してさらっと帰る。
怪しまれないように。
帰宅して寝るころ、先生からメール。
斐さんが帰られてちょっと疲れたらしい。
俺ももう寝るから早く寝るように、と返事をした。
一緒に寝れたら一番なのだけどそうはいかない。
そうするわ、おやすみなさい。そうメールが返って来た。素直でよろしい。
おやすみなさい。良い夢を。
翌日は稽古もないし仕事が終わり次第京都へ立った。
何って祇園祭関係の茶菓子を一通り買う気でだ。
先生は昼寝をしたかったようだがお稽古があるから眠くても頑張ってるらしい。
デパートの地下でがっさりと沢山購入した。
明日の夕方までとの事なので余裕だ。
東京へ引き返して車に乗り換え先生のお宅へ行く途中メールが来た。
夕食の写真とともに食べたら寝ると。
俺の胸で寝たい、なんてメールに書いてきたので消すよう指示して。
嬉しいけどさ、一応不倫だし見られて困るメールは駄目だよね。
メールがやんだ。
拗ねちゃったかな?
5分ほどして到着し玄関を開ける。
ガラガラッ。
「お今晩はーお邪魔します」
「はーい…えっ山沢さん…どうして? えっ?」
「これどうぞ、祇園祭の菓子です」
「いいの?こんなに」
「アソートしてみました、今おやつにされるもよし、明日お稽古に使うもよし」
「あら山沢さんじゃないの。どうしたの」
「京都の祇園祭にちなんだ菓子、買って来ました」
「おばあちゃん、ほらこんなに沢山よ」
「凄いわねぇ。あらあんたお夕飯は食べたの?」
「帰ってから食おうかと」
「食べて行きなさいよ。あと出来たらで良いんだけど…」
「ありがとうございます。なんでしょうか」
「一緒に寝てやってくれる?」
「ああ、はい」
先生が俺の分としてパスタを用意してくれた。
鮭とネギのしょうゆバター。それと八重子先生の煮物。
おいしい。
ご馳走様をするころには先生の上体が揺れている。
「後片付けはしておくから。寝かせてやって」
「はーい」
満腹のまま先生を部屋につれて入り懐に抱いて少し寝た。
5時間たっぷり寝て先生の横から脱出し着替えてそっと玄関から出た。
外から鍵を閉めて帰宅する。

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あ、帰ってはいないようだ。
「おかえりなさい…ごめんね」
抱きついてくる。
しかし両手に物を持ってるからどうすることも出来ないでいると気づいてくれた。
慌てて荷物を一つ受け取って台所へ。
冷蔵庫にすべて食材を仕舞い終えてから先生にキスした。
「ごめん。いらいらしてた」
「ん…」
「お昼、作る? それとも」
先生が自分から脱ぎ始めた。
いや俺が作ろうか、と続けるつもりだったんだが。
まぁでも思い切りが出来ないと脱げないだろうからここで止めるのは恥をかかせるかな。
でも台所では先生とて本意ではなかろう。
せめてベッドに連れて行くことにして。
先生は肌襦袢に手を掛けて少し止まった。
いまかな。
その手を掴んでベッドへいざなう。
恥ずかしげにしていて可愛い。
思わず抱え上げてしまった。
ベッドに下ろしてキス。
追い詰めないように優しく、優しく抱いた。
少し落ち着いてお昼を作る気になった。
先生をそのままに台所をする。
買ってきた玉葱とマッシュルームをいため、挽肉は焼き、チーズを載せた。
ポテトはオーブンの中だ。
バンズも焼いてそろそろ先生を呼ぼう。
と思ってたら出てきた。
「良い匂い。おなかすいてたみたいだわ」
「もう出来ますよ。一つでいいのかな。二つ?」
「一つで良いわ」
ポテトもそろそろ良さそうだ。
塩を振って温かいハンバーガーとともに出す。
「どうぞ」
「おいしそうね」
俺のは更に朝の残りのベーコンも足した。
「こんなの久しぶりに食べるわねえ」
「でしょうね」
二人でぱくぱくと食べる。
「うっ…塩噛んだ」
ポテトの振った塩がだまになってた。くそう、しょっぱい。
先生がくすくす笑ってる。
食べ終わって一服。
先生を懐に抱いてお座部枕。
「ねぇ久さん。さっきのえっち…」
「んー?」
「優しくて驚いちゃったわ。酷いことされるんじゃないかしらって思ってたから」
「あぁ。だからされたくなさそうだったのかな」
「そうなの。怖くて」
苦笑する。
「そうしたかったけどね。怖がってるような感じだったから。無理だろうと」
緩くなでる。
あふ、と先生があくびをした。
「ご飯食べたら眠くなっちゃったわ」
「一緒に寝ましょうか。4時くらいに起きたら良いんだから」
「そうね」
そのまま寝ようとしたら叱られた。
ベッドに入るのね、了解。
トイレに行ってから潜り込む。
だけどなぁ、ベッドだとしたくなっちゃうんだよね、色々と。
ま、眠いようだし我慢して俺も一旦寝るとしよう。
寝ていると先生に蹴られて目が覚めた。
暑かったようで布団と一緒に俺を蹴飛ばしたのかな。
クーラーをつけて時計を見る。
そろそろ起きてご飯の支度をしようか。
下拵えをして少しテレビを見た。
かすかに音うるさいと聞こえた気がして音量を下げた。
先生の寝息が聞こえる。
さてこのまま寝かせるか飯の時には起こすべきか。
寝息がやんだ。
キシッと音がして起きたようだ。
そのまま俺にもたれかかる。
「何で一緒に寝てくれないの…」
「いやそろそろ飯の支度をと」
「もうそんな時間…?」
テレビが丁度良いタイミングでニュースに切り替わった。
5時半のニュース。
「もうちょっと、だめ?」
「布団だとそのまま朝まで寝ちゃうんじゃないかな」
「ここでいいわよ」
「最近本当に甘えただなぁ。どうした?」
「甘えたいんだもの…」
なんか理由になってない気がするがなでていたら寝てしまった。
しょうがないなぁ。
懐に抱いたままテレビを眺める。
ニュース、エンタメ、スポーツとニュース番組が終わり、チャンネルを変えた。
1時間半。
夕飯どうしよう。
腹減ってきたなぁ…。
と思ったら先生もやっと目が覚めたようだ。
「ん、よく寝たわぁ…あらぁ? どうしてここで寝てるの?」
「あー覚えてませんか。いいですけどね。腹減った…」
「あら」
くーぅ、と先生のおなかも鳴った。
「下拵えはしたんですけどね、後は味付けだけ」
「はいはい、じゃそれはするから食卓片付けて頂戴」
よっこらしょと起きて先生は台所を。
10分ほどで配膳となった。
「おいしいわねぇ」
「うまいです」
食事を取って、暫くして先生が着替え始めた。
帰る準備だ。
「帰したくないなぁ。このままうちにいて欲しい気分です」
「私だって…そういうわけにいかないでしょ、明日お稽古だもの」
「そうなんですよねえ」
なんだかんだてきぱきと着替えて。
さっさと帰っていかれた。
さびしいなあ。
明日お稽古ちゃんと行こう…。
こういう日は寝が足りてようと寝るべきだ。
おやすみなさい。
朝が来て起床。
出勤。
仕事を適当に終わらせお稽古へ。
到着して居間に顔を出す。
「いらっしゃい」
「こんにちは」
「ちょっとこっち座って」
「はい?」
どうやら八重子先生に夏の間のお泊りについて話してたらしい。
「昨日ほら、虫の話したでしょ。そういえば前にもそういう話してたわよね」
「あ、やっぱり俺してましたよね」
「何か聞いたような気はしてたのよ。それでね」
暫く対策を話して、7月からあちらの家に泊まるかこっちにクーラーか考えることに。
先生はクーラー設置に乗り気だ。
まぁ確かにわざわざと言うのは気術ないのはわかる。
だけどそろそろお稽古の支度をしないといけない。
話の途中だが後の話しは夜と言うことで水屋へ。
用意中に生徒さんの声、先生もあわてて出てきた。
高速で用意する。
うまく先生が場を繋いでくれて間に合った。
後はいつものように生徒さんのお稽古の間に次の生徒さんの用意をする。
何人かのお稽古が終って一息。
「さてと。あんたのお稽古ね…んー、お台子しましょうか。最近してなかったわよね」
「はい。じゃ用意します」
時間に余裕もあるのでセッティングしてお稽古開始。
あれ? 今日はそんなに厳しくない。
こりゃ俺の機嫌を見てるかな。
それなりに手を抜いてもらってお稽古終了。お片付け。
ご飯をいただく。
食事もそこそこに先生が広告を持ってきた。
エアコン、どれが良いかしら、と。
「日曜に電気屋行きましょうよ。現物見たくないですか?」
「ん、そうねえ」
「エアコンつけるの?」
「山沢さん、虫が嫌いなんですってよ」
「蚊帳吊らないの?」
「吊っても虫の気配あるじゃないか。いやなんだよね…」
「へぇ、意外だな」
「あっちの家にっていったら先生がわざわざ行くの嫌だって言うんでね」
「一人で寝るのもいやで虫もいやなんてワガママよねえ」
ほほほ、と笑ってる。
「と言うことで折衷案でね。クーラーつけさせてもらうことにしたんだ」
「障子あけたら十分涼しいのに、夜」
「こればっかりは仕方ないわねぇ」
話を纏めて日曜に家電量販店へ下見することに決めた。
帰宅、部屋が暑い。
クーラーを入れてよく冷えるまで置いて止めた。
おやすみなさい。
翌朝。
先生からメールが来ていた。
今日は先生はお出かけするらしい。
うちに来ても八重子先生しかいない、と書いて寄越した。
誰と?とメールを返して出勤。
仕事は少し荷物が動いてやや忙しくメールが返ってきてるのにに気づくのが遅れた。
お茶仲間の女性とのこと。
んん、ならいいか。
楽しんできて、とメールを返して仕事仕事。
仕事を終え帰宅途次。
先生から相手の方と撮った写メが来た。
良い人が出来たのか、と責めたからかな…。
その後は特段メールも来ず夕方までジムへ行ったり夕飯の買出しに出たり。
家で野菜炒めを作って食い始めると電話がかかってきた。
ご飯食べた?と聞かれていま食ってるというと残念そうな声だ。
「お友達と食べに行かないんですか」
『だってあちらも家庭あるもの』
「いまどこです?」
『代々木よ』
「んー…和食?」
『どちらでも良いわよ』
「電話返します、一旦切らせてください」
『はーい』
電話を切っていくつか心当たりにかける。
予約が取れた。和食。
先生に掛けなおしてどこかそのあたりの喫茶店で待っててもらうことにした。
二口食べた炒め物は冷蔵庫へ戻して、着替えて身なりを整えた。
急いで向かう。
到着すると先生はついでに買物をしたと言う。
「待たせちゃいましたね、すいません」
「いいわよ、急に呼んだんだもの」
「こっちです」
先導して連れて行く。
「予約した山沢です」
「いらっしゃいませ。どうぞこちらです」
ご予約のお二人様、と通されて食事にありつく。
ああ腹減った。
食前に梅酒をいただいた。
「あら、おいしい」
にこっと先生が笑ってつい見とれる。
次々と運ばれる料理に先生は嬉しそうだ。
飯食いに連れて行くの、これだから好きなんだよな。
おいしくいただいて、先生にちょっとだけお酒も飲ませて。
店を出た。
駅まで歩く。
「ねぇ…帰りたくないわ」
「お稽古がなかったらね、明日。帰さないって言うんだけど。八重子先生に叱られる」
「すぐそう言うのね。私よりお母さんに叱られる方が嫌なの?」
きゅ、とつねられた。
「わかってる癖に。あなたが叱られるのがいやなんですよ、俺はね」
「そんなのでお母さんは叱らないわよ…」
「ほんっと甘やかされてますよね。まぁでもね、明日も会えますから我慢してください」
「しょうがないわねぇ」
先生がやっと諦めてくれて別れた。
電車に揺られて帰宅する。
可愛いよなぁ、帰りたくないなんて。
帰宅後暫くして先生から帰着メールを貰った。
おやすみ、と返事をして寝る。
うーんよく寝た。
頑張って仕事しよう。
今日はいつものお客さんが大量に買って忙しい。
やることが沢山。
仕事を終えて急いでシャワーを浴び着替えた。
明日は電気屋に行くつもりなので車で。
渋滞が少しありナビに任せて進む。
いつもと違う道。
ちょっと不安になったが無事到着。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
「今日のお昼はなんですか?」
「冬瓜よ。食べる?」
「遠慮しておきます」
「あら、今日は夏至だわよ。今日食べないでいつ食べるのよ」
「うーん、じゃお夕飯のときにちょっとだけ」
「嫌いなの?」
「ははは…」
水屋の支度に入り、生徒さんと先生を待つ。
暫くしてお稽古開始。
炭があるからどうしても暑い。
だが窓からは良い風が入る。
さわやかだ。
何人目かの生徒さんをお稽古して今日の生徒さんは終了。
「さてと。私は何をしましょうか」
「そうねえ。円草しましょ」
「はい。用意します」
用意を整えてお稽古をお願いし、始める。
3回続けてお稽古をつけていただいてタイムアップだ。
水屋を片付けてお夕飯を食卓に出す。
孝弘さんと律君と私には冬瓜のお皿がついている。
私のは一切。
ちゃんと嫌いだからと考慮してくれたらしい。
しかし律君、大学生が土曜の夜に家で晩飯を食うのってなんか違う気がするよ?
「あ、今日って夏至?」
「そうよ~。あ、そうそう。夏越の人形来てるから後でちゃんとしといてね」
「うん」
「山沢さんはおうちでしてるの?」
「いつも地元に帰ったときにしてますね」
「今年はどうするの?」
「帰る用も今のところありませんし…余ってるのならこちらでしたいですね」
「いくつか予備入れてくださってるからできるわよ」
「じゃ後で。あ、そうだ。明日電気屋行きます。
 八重子先生、律君何か買ってきて欲しいものありましたら」
「ああ、なんだっけねぇあったんだけど」
「明日行くまでに思い出していただければ結構ですよ」
「あ、僕USBメモリとデジカメ欲しいな」
「何GB? カメラは好みもあるからなぁ」
「カメラはあんたお小遣いあげるから自分で買いなさいよ」
一緒に来る?と続けようとしたが先生は一緒につれて行く気はないようだ。
「じゃUSBもその時にしようかな」
「そうしたら?」
ご馳走様をして片付ける。
それから風呂。先生が入ってる間に布団を敷いた。
暫く団欒を楽しみ、鍵や火の元の確認をしておやすみなさい、と部屋に。
勿論先生を連れてだ。
そっと俺の転がる横へ入ってきた。
自分からキスしてきて、今日は受け入れる気があるらしい。
そっと優しく緩やかに抱く。
はにかむような顔。
可愛い。
ほてった肌も愛しくて、胸の下にかいてる汗を舐める。
そのまま乳首を舐めて吸う。
髪をなでられた。
「ちょ…なにしてんですか」
「あ、ごめんなさい、つい。ぁ…」
きゅっと乳首をつねった。
「お仕置きだね」
ひゅっと先生が息を吸い、身体をこわばらせた。
きょろっと鴨居を見る。有ったあった、洗濯ばさみ。
起きてそれを取り強さを確認。
古いから随分弱くなってるようだ。
「何をするかわかります?」
にこっと笑って聞いてみた。
「…わからないわ」
「こうするんですよ」
先生の乳首を挟む。
「ひっ痛っ、はずして」
緩めたりはさんでみたりと弄る。
「うぅ…」
「ほら。声を出しちゃ駄目ですよ」
もう片方の手は股間を探る。
「ん…」
乳首を玩びつつ下の突起を弄る。
「気持ち良いでしょう? 直に痛いのも気持ちよくなれますよ。ふふふ」
「お願い、ねぇ」
くく、と笑って外してあげた。
洗濯挾の後がついた乳首を舐めるといつもより感じるようだ。
声を上げないようにしているのが可愛くて楽しい。
暫く責めて涙目になりそうになっているので終了した。
「酷いわ…つい撫でちゃっただけなのに」
「そういうのはこの部屋に入るまでにしなさい」
少し腫れて赤くなっている乳首を弄りつつ、先生を寝かしつける。
「寝られないわ、ねぇ」
「寝かさないで置こうか」
先生の拍動が感じられる。
「どうする? もっとされたい?」
「だ、だめよ…」
「ふふ、また明日の昼にしましょうか」
「そうして、お願いします」
「お願いされちゃ仕方ないな。良いでしょう」
手を放して懐へ抱きこんだ。
「これなら寝られる?」
「うん…おやすみなさい」
「はい、おやすみ。良い夢を」
ほんの数秒で寝息に変わった。眠かったようだ。
俺も釣り込まれて寝る。
朝、流石に先生は起きて来れないで台所は俺のもの。
八重子先生からの指示書を元に作る。
む、これは難しいな。
茄子の煮浸し。
ささっと調べてレシピどおりに。味が違うって言われるだろうけど。
格闘しつつも出来た頃、八重子先生が起きてきた。
味見をされる。
少しみりんが入った。
それくらいで済んだようだ。
先生が起き出して来て配膳と律君たちを呼びに。
食卓に着いて先生は律君に涼しいうちに勉強しなさいよ、と言っている。
孝弘さんは相変わらず沢山食べていて俺が苦手に思うものをお皿に乗っけても食べる。
食後、お昼の下拵えをした。
昼前から電気屋めぐりをするから遅くなったら食べてて、と言うことで。
実際は確かに電気屋も行くけれどあちらの家にも行く。
そういう手はずだ。
着替えて先生を後部座席に乗せて量販店へ。
まずはお目当て、と思うが先生があちこちで引っかかる。
「欲しいもの、買ってあげますから先にクーラー見ましょうよ」
「ここで買うの?」
「いや先生の家のお出入りのところですよ。じゃないと後困りますでしょ?」
「うん、そうだけど」
「今回はどんなものが有るかの確認です、あれが良いとかこれが良いとか」
「あらそう?」
「後はあなたの欲しいものを買いましょう」
クーラーの売り場に行きあんな機能があるほうが良い、この機能は別にいらない。
そんな話を詰めて大まかにメーカーなどをチェックした。
先生は他の売り場をうろついたが欲しいものを決めかねているようだ。
「さ、そろそろ次行きましょう」
「うん」
車に載せて移動した。
次の量販店でもクーラーは特に別に変わったものはなく。
他の家電製品を見る。
先生は炊飯器を買い換えたいらしい。
「美容関係は良いんですか?」
「うーん、欲しいんだけど…でもそんなに手を掛ける暇がないのよね」
「15分かそこらでしょ?」
「朝の15分は貴重なのよ」
「まぁそうですが。ん、俺が来てる時に使えばどうです?」
「ん…朝御飯、ずっとあんただけど良いの?」
「いいですよ」
「じゃあ…どれがいいかしら」
店員さんと話して結果ナノケアの最新作に決めた。
それからドライヤーの買い替え、炊飯器の新しいの。
後は電池や電球、エスプレッソマシンを買った。
車に積み込んであちらの家へ。
近くの駐車場に入れて先生を連れ込んだ。
「あれ?」
「なぁに?」
「カーテン、グリーンにしたんですね。シーツも」
「だってピンクじゃ暑いでしょ?」
そういいつつ先生は脱ぎ始めた。
「クーラーつけて頂戴よ」
「はいはい」
着物をハンガーに吊ってベッドイン。
暫く昼のHを楽しむ。
少しいつもより先生は大胆だ。
それでも大股開きにさせたら嫌がった。
「いい加減慣れましょうよ。俺しか見てないんだから」
まぁでも恥ずかしげもなくバッと開いて舐めろといわれたら引くかもしれない。
舐めたり弄ったりすると気持ち良さそうで俺も楽しい。
じっくりいじめるのも良いが、たまにはこういうのも良い。
先生は普段からこういうのの方が良いとか言ってるが。
「そういうとこ行っても良いんならね」
「そんなこといわないで頂戴よ…」
ベッドに座ってる先生の足を取り、指を舐めた。
「ん…やだ」
「こういうので我慢してあげるから」
ふふ、気持ち良さそうだ。
こんなところで、と言う困惑もしているようで複雑な様子。
そういうのが楽しくてついしてしまうわけだが。
「今度律君の前でしてあげましょうか」
「だ、だめよそんなの」
「マッサージ、律君の前でしてさ。その続きに」
「いやよ」
そっと股間を指でなでた。
「あ…ん、はぁ…」
「こんなにしてるくせに」
音をわざと立てて弄ると恥ずかしそうで凄く良い。
何度か逝かせてくたびれた。
先生をお風呂に入れて暫く寝かせることにした。
着替える気力もないらしく、裸のままシーツに寝転んで寝ている。
可愛いなー。
2時間ほどして起こした。
そろそろ帰らないと夕飯の支度に間に合わなくなる。
裸で寝てたことに気づいた先生が恥ずかしげでこれもまた良い。
キスをして着替えさせ、ついでに夕飯の材料を買ってから連れ帰る。
八重子先生は何も聞かない。
律君にはエスプレッソマシンの使い方を教え込んだ。
お夕飯の支度をして、いただく。
うーん、やっぱり先生の作る飯はうまい。
幸せ。
それも束の間、帰らねばならない。
「それじゃ明後日、また来ますから」
「うん。まってるわね」
玄関先で軽くキスして別れ、帰宅した。
おやすみなさい。
さて休み明けでお客は少なく荷物も普通だ。
早仕舞いにして帰宅する前にそのままジムへ行くか。
そう決めて、その足でジムで身体を動かした。
昼を過ぎ風呂に入って帰り、お昼寝。
夕方に起きて飯を食い、更に寝る。
あ、先生からメール。
うまそうなメシだなぁ。
新しい炊飯器で炊いたとの事、うまかったそうだ。
明日の夕飯はそれで炊いたご飯を食べさせてくれるらしい。
ちょっと楽しみだ。
おやすみの挨拶をして寝直した。
翌朝、出勤するがまぁいつもの通り暇だ。
お客さんも定休日だったりするから仕方ないね。
仕事を終えてシャワーを浴び、ゆったりと先生のお宅へ向かう。
涼しいような、暑いような。
電車などはクーラーがかかっていて少し冷える。
先生のお宅へ着く。
室内は良い感じの涼しさで気持ち良い。
「あら、いらっしゃい。早かったわね」
「こんにちは」
「いま生徒さん帰られたとこだから。ご飯これからなのよ」
「それは早すぎましたね。じゃ片付けて用意してから戻りますね」
茶室を軽く掃除して、水屋の片付けと次の生徒さん方の為の用意を整えた。
それから居間へ。早くも食べ終わったようで八重子先生がお茶を入れてくれた。
「お天気怪しいわねえ」
「あー降るって予報ですよね」
「生徒さん、キャンセルないと良いんだけど」
ま、そういう連絡は降り出してから入るものだ。
一服をして、お稽古にかかる。
生徒さんがいらして今日は5人そろってのスタートか。
暫くすると空気が重くなってきた。
そろそろ降るのか。
生徒さんの切れ目に空をうかがう。
あ、落ちてきた。
「降り出しましたね」
「あらそう?」
次の生徒さんが来られてお稽古。
暫くすると八重子先生から先生へ耳打ち。
やっぱりキャンセルが出たようだ。
「つぎ、山沢さん、清・薄で」
「はい」
貴人のお稽古か。
白い天目と貴人台を出す。
生徒さんがお稽古を終られて続きで私のお稽古。
久々の貴人のため、先生に叱られる。
前の生徒さんが見てくすくす笑っていてちょっと恥ずかしい。
キャンセルが出た時間を使ってもらったので今日のお稽古は早仕舞い。
「酷い雨ねぇ」
「本当に凄いな」
外は土砂降りだ。
夕飯のお手伝いをしていると先生が呼ぶ。
ニュースでは雹が降っているという。
暫くして雨がゆるくなってきた。
「あらもう止みそうね」
「律君帰ってこれるのかなぁ」
「お友達のおうちに泊めてもらうかもしれないわねぇ。電車動かなかったら」
ま、いざとなれば何がどうあっても帰るだろう。
配膳してると律君から電話があってやはり帰れそうにないとのことだ。
学校のあたりは酷いらしい。
「心配だわ…」
「ま、お友達も晶も一緒みたいだから大丈夫だろうよ。はい、お櫃」
「そうねぇ」
先生の座る横にお櫃を置いて、孝弘さんを呼ぶ。
メシ♪とうれしそうだ。
孝弘さんは先生が飯を作ってくれる限りはこの家にいるんだろうな。
ほほえましい。
そして新しい炊飯器で炊いたご飯がおいしい。
食事を終え後片付け。
おとなう声がし、先生が応対をしている。
片付け終るころ帰られたようだ。
そのままパタパタと台所に先生が来られた。
「あのね…その、あなたに縁談って…」
「はっ?」
袖をつかまれて居間に連れて行かれた。
「なんだったんだい?」
「山沢さんが独身だからってお見合いの写真持ってこられたの。どうしよう」
「その場で断ってくださいよ…」
「だってその、私がお断りするのはおかしいじゃない…」
「で、どう言ったの」
「いまいないから明日電話で聞くからって言っておいたわ」
「んん、参ったな」
「どう断ったら良いかしら…」
「山沢さん。あんた開と結婚しないかい?」
「えぇっ?」
「一番断りがきくのはそれだよ、婚約してるので結婚できません、だよ」
「でも先生が本人に聞かないとっていったんでしょう?」
「二人の仲がどれほど進展してるのか、なんてわからなくて、とか言えば良いんだから」
「うーん、婚約ですか」
「あぁ実際結婚しなくても良いけどね、そういうことにして置いたら?」
「先生はどうですか」
「それなら…良いと思うけど」
「わかりました、方便と言うことでそうしてください」
「じゃ明日私がそういうよ」
「お願いします」
「お母さん、お願いね」
ふぅ、と息をついて。
「コーヒー、いりますか?」
一昨日買ったマシンで入れてくることにしよう。
エスプレッソか通常かを聞きくと通常のものが良いとのことで三種類入れた。
味見をして先生はモカっぽい味のもの。
八重子先生は香りの良いコーヒーを取った。俺は苦目のもの。
「結構おいしいねえ」
「でしょう?」
「エスプレッソマシンなので本当はこんなカップ使って入れます」
カップを見せる。
「小さいねえ…」
「これに半分くらいですよ」
へー…、と覗き込んでるので実際どうなるか入れてくることにした。
抽出して手渡す。
「これだけ?」
「ま、どうぞ飲んで」
「うっ濃いわね」
「…濃いねぇ」
コーヒーで口直ししてる。
俺はダブルで入れてきたのだが二人とも飲めなさそうなのでそれもいただいた。
…甘い。
そういえばお二方のはお砂糖入れたんだった。
ぐいっと残った自分のエスプレッソを飲み干し、さっぱり。
先生はお風呂入ってくる、と言って部屋から出て行った。
八重子先生がカップを回収して台所へ。
「あ、洗いますよ」
一緒に台所に立つと機械の使い方を聞かれた。
水入れてカプセル入れてボタンを押せば出てくるので簡単。
味は色々ありますよ、と見せた。
居間へ戻り、色々おしゃべりをしてると先生が上がってきた。
八重子先生が交代ではいる。
「ねぇ」
「ん?」
キスされた。
「どうしたんです?」
「…凄くコーヒーの味するわね。漱いでらっしゃいよ」
思わず笑ってしまった。
はいはい、と洗面所へ立つ。
歯を磨いて戻れば先生はあくび。
「寝ますか?」
「お母さんが上がったら」
んじゃ戸締りと火の元を確かめよう。
玄関と勝手口、茶室の炭、ガス。確認して戻る。
「あぁ良いお湯だった」
八重子先生が上がってきた。またあくび。
「布団敷きますから、もう寝てください」
「んー」
畳に寝転がってる。
可愛いけどさ。
「こんなところで寝てないで。山沢さん、連れてってくれるかい」
「はい、じゃ私も先に休ませていただきます。戸締りはして有ります」
「はいはい、おやすみ」
「おやすみなさい」
先生を抱き上げて部屋に行く。
布団に寝転がらせて俺も着替える。
早くも寝息が聞こえてきて残念な気分だ。
ま、仕方ないか。
先生の横にもぐりこみ、ゆっくりなでているうち、いつしか眠りに落ちた。
朝になって先生が先に起きたらしい。
身支度をしている。
「あら起きたの? おはよう」
「おはよ。美容の奴、使ってみた?」
「ん、今から使うのよ」
「おっけー、朝飯用意してきます」
ささっと身づくろいして台所へ。
八重子先生と合作で朝ご飯を作る。
律君いないから少しゆったりと。
出来たころ、先生が出てきて食卓を片付けて孝弘さんを呼びに行った。
ご飯を食べてから八重子先生が開さんに連絡を取る。
勿論結婚の件だ。
幸い現在彼女とかいないから構わないそうだ。
先生と手分けして家事をし、俺は二階の拭き掃除。
おとなう声、あれは昨日の人だな。
八重子先生が応対に出て断ってくれている。
耳を済ませて様子を伺う…。
暫くして帰られたようだ。
先生が階段を上がってきた。
うまく断れた、と言うことでほっとしたらしくもたれかかってきた。
可愛くて思わずキスして胸を揉んだら流石に額を叩かれた。
「だめよ、もうっ」
お母さんいるんだから、と怒って階下へいってしまった。
仕方ないので掃除の続きをして、終らせてから下りた。
「そろそろ買物行くけどあんたどうする?」
「一緒に行きます」
着物を着なおして外に出る。
「暑っ」
「暑いわねえ」
「なんなら家にいますか。買うものかいてくだされば買ってきますよ」
「良いわよ、一緒に行きましょ」
日傘をさしてる先生と二人で歩く。
流石に暑くて腕を組んだりはしてこないのが残念だ。
お昼とついでに夜の分も買って帰宅した。
食事を取って一服したら家事の続き。
いつもの水曜日。
疲れたらお茶を入れてもらって。
少し先生といちゃいちゃしてたら夕飯を作る時間だ。
てきぱきと動き、先生から出る指示をこなしてたらおいしいご飯が出来る。
「ただいまー」
「おかえり」
律君が帰ってきたようだ。
「もうすぐご飯できるから手を洗ってらっしゃい」
「はーい」
食卓について律君が八重子先生にこぼしてる。
昨日は大変だったようだ。
「結局どこに泊まったの?」
「近藤の家。晶ちゃんは司ちゃんち」
「律君も司ちゃんちに泊まったらよかったのに」
にやにやして言ったら先生に後頭部をコツンと叩かれた。
「バカ言ってないで運んで頂戴」
笑いながら配膳し、お夕飯を頂いて帰宅した。
真っ暗の部屋はさびしいなあ。
とっとと寝よう、おやすみなさい。
翌朝、出勤して仕事をしていると残業が確定した。
先生のお宅に電話を入れる。
八重子先生だ。
理由を話すと快く許していただいて仕事を続ける。
昼頃先生から電話が入った。
珍しいな、来て欲しいなんて。
それもあちらの家に直接なんて。
どうしたんだろう。
そう思って先生がお夕飯を終えるであろう時間にあちらの家へ行った。
まだ電気はついていない。
鍵を開けて電気をつけ鞄を置いて台所に立つ。
っと。こっちにコーヒーはなかったんだっけ?
諦めてコップに水を汲み、ぐいっと飲む。
ふぅっ。クーラーをつけた。
暑い。
暫くすると先生がやってきた。
あけて後ろ手で鍵を閉め、俺にしがみつく。
「どっ、どうしたんですか」
何も言わずキスしてくる。
もぞもぞしてる、と思ったら帯〆を解き始めてた。
あ、え? 抱かれたいのかな。
ちょっと手伝って帯を解き、着物と襦袢を脱がせ、抱えあげてベッドへ。
女の匂いがして煽られる。
少し焦らすと早く、とねだられた。
「抱いてっていって」
少し躊躇してるが…。
「お願い、抱いて頂戴」
恥ずかしげでとても可愛らしい。
俺の脚に擦り付けるようにしてきた。
いつもよりは激しく抱く。
幸い先生の家ではない、声はいくら上げても構わない。
なのにもっと、といわれる。
どうしたんだろう。
まだ大丈夫らしいので何度も責める。
暫く頑張って攻めているとやっともう駄目、と言い出した。
腕が攣りそうだ。
息の荒い先生を抱き締めてどうしたのか聞いた。
絶え絶えに昨日眠れなかったこと、昼に来ないといったので困ったことなどを語られた。
自慰しそうになったという時点でおかしい。なんか変なもん食ったか?
暫くなでていると落ち着いてきたようだ。
「恥ずかしいわ…ごめんね、呼びつけたりして」
「たまにはそういうのも良いですよ」
いつもは突撃されるからな。
暫く喋ってて気がついた。
「ね、先生あなたそろそろ生理じゃないですか?」
「え? あら? そういえばそうかも」
「それででしょう。そういう時期なんですよきっと」
「そうなのかしら」
「ま、それならそれで暫く出来ませんからね、丁度よかった」
汗だくになったから抱き上げて風呂へ行く。
先生の身体を泡でなでて洗ってるとなにやらまたしたくなったようだ。
可愛いなー。
もう一回だけ、と抱いてから濯ぐ。
「さ、そろそろ帰らなきゃね。明日もお稽古でしょう?」
「うん…帰りたくないわね」
「俺もですよ。でも俺もあなたも仕事なんだから仕方ない」
「ね、明日…また来てくれない?」
「いいですよ。呼んでください」
着物を着せてお見送り。
さて俺もかえって寝なきゃなぁ。
帰宅して布団に潜り込む。
先生も今頃は布団の中かな。疲れてるからきっとすぐに眠れるだろう。
おやすみなさい。
そして翌朝出勤すると忙しくて。
久々に疲れて帰宅して横になっていると先生からメールだ。
やっぱり今朝から生理で、それで別にこなくても良いという連絡だった。
ま、やっぱり会うとしたくなるしね。
来て欲しくなったらいつでも連絡するよう返事をして昼寝、夕飯を食べて本格的に寝た。
金曜はそんな感じで終ってしまったが今日は土曜だ。
仕事が終わったらすぐシャワーを浴びて先生のお宅へ急ぐ。
居間に寄ると先生は顔色が少しよくない。
「いらっしゃい。今日ね、もしかしたら途中からお母さんと交代するかも。お願いね」
「はい、大丈夫ですか?」
「大丈夫とは思うんだけど…」
「今日は簡単なものをしたらどうかねえ」
「小習復習ですか?」
「そうしたら?」
「それでいいですか、先生」
「そうね」
と言うことで支度を整えてお稽古だ。
流石に稽古ではあまりわからないようにしてはいるものの、
生徒さんが途切れるとやはり辛そうだ。
「八重子先生と交代したらどうです?」
「そうさせてもらうわ…」
と言うことでチェンジ。
久々に八重子先生と二人で生徒さんのお相手をする。
ちょっとやりにくそうだ。
先生が用意したほうがやりやすいのは事実。
と言うことで今日の俺へのお稽古は水屋のやり方。
色々と段取りを教えていただく。
でも今日は早めに切り上げて夕飯をしなければということでおしまいにして。
買物行ってきて、と言われてメモをもらって買いに走った。
途中先生からメール。
チョコも買って帰った。
寝ている先生に渡してお夕飯作成。
今日は手早く出来るおかずのみ。
でもそれでもちゃんと手のかかっているように見える。
実際おいしい。
先生は食欲もあまりないようだ。
ご飯をよそうのも今日は八重子先生。
食事を終えて先生は部屋へ引っ込んだ。
片付けをしてコーヒーを入れて戻る。
「八重子先生もコーヒーいかがです?」
「ありがと、いただくよ」
しばらくまったりとして八重子先生が今日は疲れた、もう寝ると仰る。
戸締りと火の元を確かめて俺も部屋に引くことにした。
布団を敷いて寝る支度。
…一人寝か。
やだなぁ。
そう思って転がっているとすっと襖が開いた。
「あ、先生」
何も言わずに布団に入ってきた、と思ったら俺の上に乗っかってキスしてきた。
そのまま俺の胸をまさぐっている。
怒っても仕方がない。
諦めて身を任せる。
手が徐々に股間に下りてきた。
俺が眉間に皺を寄せているのを見て嬉しそうにしている。
こういうとこSだよな。
弄られて二度逝かしたら気が済んだようでトイレに行ってから俺の腕を枕に寝始めた。
やれやれ。
げんなりしつつもまぁ先生が懐にいるわけだから、と寝ることにした。
夜半また触られてる気配がして目が覚めた。
眠気のほうが強くそのまま寝たが。
朝、先生はよく寝ている。
それは良いんだが指を入れたままで。
引き抜くとふやけてて苦笑いだ。
手を拭いてやって布団に戻してもう少しまどろむ。
一時間ほどして先生が目覚めた。
起きるなりキスしてくる。
まだしようとするからさすがにそれはダメ、とひっくり返した。
「朝ご飯作らないとね。ダメでしょう?」
むっとしてる。
「お昼、あちらの家でさせてあげますから」
「だったらいいわ」
しょうがない、しかたないと諦めつつ朝ご飯を作る。
げんなりした顔を見て八重子先生は察したようで苦笑している。
作り終えた頃匂いにつられて男共が起きてきた。
あれ? 司ちゃんが来てた。
仕方ない、先生用に作った分を司ちゃんに出した。
先生の分は起きてきたら作ろう。
「あんたいつ来たの?」
「9時半くらいかな。おばあちゃんたち寝てたみたいだから律に入れてもらったの」
「昨日は疲れてたからねぇ」
孝弘さんがこっち見てにやっとした。
これはわかってるな。
先生にはそういう態度は取らないで欲しいものだ。
食べ終わった頃先生が起きてきた。
「あら司ちゃんきてたの? おはよう」
「あ、おばさん。お邪魔してます」
「先生遅いからもうないですよーなに作って欲しいです?」
「何残ってるの?」
「ご飯と味噌汁が既にないのでパンかパスタか」
んー、と考え出した。
「卵有ったかしら」
「有ります」
「じゃハムかベーコン」
「有ります。ハムエッグ?」
「カルボナーラがいいわ」
「生クリームが無いですよ」
「牛乳で良いわよ、あるでしょ」
「了解」
台所に向かってパスタを湯がく。
牛乳を使ってカルボナーラのソースを作った。
後は絡めるだけだ。
絡めてお皿に盛り付け、フォークとお皿をもって先生の前へ。
いただきます、とちゃんと手を合わせてから食べる先生は何か良いね。
食べてる間に洗い物をして食べ終わった頃を見計らってコーヒーを出す。
代わりにお皿を回収。
俺の分もコーヒーを入れて先生の横に座った。
先生の機嫌は良さそうだ。
司ちゃんとおしゃべりを楽しんでいてほのぼのとする。
コーヒーを飲み終わって落ち着いていると先生に手を引かれた。
ん?
「そろそろ行くわよ」
「あー…やっぱり行くんですか」
「朝そう言ったでしょ」
気が変わってて欲しいなーと思ったのだけどダメだったか。
はいはい、と連れられてあちらの家へ。
すぐにどうこう、と言うのは雰囲気がないと思ったのか膝の上に座ってきた。
「先生、この体勢だと俺があなたを抱きたくなる」
「だめよ、そんなこというんならすぐに脱いで頂戴」
渋々脱ぐとキスされて、そのまま床の上で押し倒された。
自分は床の上は嫌なくせに。
昼過ぎ、先生の携帯がなった。
お昼ごはんはどうするのか、そろそろ俺を開放してやれという電話だったらしい。
なんだかなぁ。
されてること知られてるのもちょっと微妙だ。
でも先生は後1時間くらいで帰る、お昼はいらないとか言っている。
左様ですか、まだするのか。
そろそろ乳首を噛むのはやめてくれないと腫れるよなあ。
まぁ今日を我慢すればあと一ヶ月はないだろうから諦めるしかない。
先生が飽きるまで仕方なく身を任せた。
まぁ結局先生がおなかすいた、と言うところで切り上げて着替えて喫茶店へ。
先生はパンケーキとパフェ、俺はカレーを食べる。
甘いものが食べたい時期なのはわかるが…太るんじゃないかなぁ。
ま、太ったら俺の懐でカロリー消費すれば良いだけだよな。
幸せそうなのを邪魔するのもなんなので黙って食べて。
それから先生のお宅へ戻った。
並んで座れば俺にもたれてくる。
司ちゃんいるけど良いのかな。
「あんたら結局何食べたの?」
「私? ホットケーキとパフェ」
「生クリームたっぷりでしたよね、あのパンケーキ」
「わ、おばさんそれカロリーものすごいんじゃ…」
「いいのよ~」
「で、私はカレーです」
「大盛よね、あれって」
「太らないの?」
「普段それなりに動くからね」
暫く団欒を楽しんで律君が司ちゃんを送って行った。
ニュースでは都心は酷い雨らしい。
落雷で一部停電だとか。
「あら…あなた大丈夫? 帰れるかしら?」
「どうせ明日は月曜ですからねえ…いざとなったら休めるでしょう」
「簡単に休むなんてダメよ、ちゃんと行かないと」
それをあなたが言うか?
八重子先生と顔を見合わせて笑う。
きゅっと腕をつねられたので尻をなでといた。
うん、キスしたい。出来ないけど。
先生は身を起こして洗濯物にアイロンを当て始めた。
律君の衿のあるシャツなんかも綺麗に掛けていくのを見ると感心してしまう。
完璧な主婦能力はやはり八重子先生が仕込んだんだろう。
それから暫く家事を手伝いお夕飯を頂いて帰宅した。疲れた。
おやすみなさい。
翌朝仕事をこなし、少し叱られる事もあったりでげんなりとして帰宅した。
ベッドに転がる。
だるい。
寝るか。
そのままうとうとと寝て暑さに目が覚めた。
午後2時。
メシ、食わなきゃな。
面倒くさい。
焼きそばにしよう。カップ焼きそば。
先生に叱られるなぁ、きっと。
内緒にしよう。
湯切りしてソースをかけ混ぜる。
ん、良い匂いだ。
食べていると携帯にメールが来ているのに気づく。
開いて読んだらやっぱり先生からで、今日の体調は宜しいとかそういう話だ。
そりゃ終わりかけならずいぶん楽だろう。
その分俺がだるいぞ。
食後再度ベッドにもぐりこんだ。
とりあえず体力回復しなければね。
夕方メールに起こされた。
先生からの夕飯写真。
うまそうだなぁ…でも眠いから夕飯も食べずにそのまま寝た。
翌火曜日。
今日は暇と決まっている。
お朔日なんだけどなぁ。
鯛を一枚持って帰ることにした。
八重子先生に造ってもらおう。
あくびをかみ殺しつつ帰宅して風呂に入り、先生のお宅へ車を飛ばす。
「こんにちはー」
「はい、いらっしゃい」
「先生、これ鯛、台所置いときますね」
「あらーありがと」
先生の微笑に心癒されて鞄を置いて用意する。
「あ、そうそう、今日は葉蓋するから」
「そうか、そういう時期ですね」
「足りなかったらお庭から摘んで頂戴、桐とか赤目柏とかあるでしょ」
「はーい」
きちっと用意して待つ。
今日の稽古は楽だ、全員同じ。
これをはじめてする人にはやり方を教えたり、前もやった人は洗茶巾をしてみたり。
涼しげで良いよね。
そんなこんなでお稽古が終る。
葉っぱは使い切って普通に水屋を片付けた。
晩飯何かなぁ。
食卓に配膳する。
鯛のお造り、昆布〆、霜皮。
ほうれん草の白和え。
後は煮物2種。
鯛の一部はカルパッチョ風になっていた。
水菜と玉葱が敷いてある。
涼しげで良いなあ。
「あ、お肉炒めるの忘れた」
「いいですよ、鯛食べますし」
「足りる? すぐ出来るわよ?」
「足らなきゃ自分でやりますから食べましょう、腹減りました」
「はいはい、じゃ呼んで来てくれる?」
「イエッサー」
二人を呼んで食卓に着く。
いただきます、と食べはじめた。
うん、おいしい。
先生が白和えのお皿からざっくり取り、俺に渡してきた。
野菜もっと食えということだ。
「あれ? おばあちゃん、今日は山沢さんに肉ないの?」
「忘れちゃってねえ、鯛をいろいろしてたら」
立ち上がろうとされる。
「鯛は食べれるから別に良いんですよ、たまになら」
「そうかい?」
煮物がうまい。
「あ、そうそう」
先生がお箸をおいて台所へ。
パタパタと言って戻ってきたと思えば俺に小鉢を。
「はい、これも食べなさい」
胡瓜の酢の物か。
わかめは嫌いと言ったし茗荷も嫌いと言ったし、生姜も嫌と言ってるのに全部入ってる。
少し悲しくなって目を見つめた。
「食べなさい」
先生の迫力に押され諦めた。
早く食べて何か次に食ってリセットしよう。
我慢して食べる。
器を辛にして次は取りあえずとカルパッチョへ。
んー、うまいなー。
すべて食べ終えてご馳走様。
「今日なんで鯛だったの?」
「おついたちですからね、やっぱり鯛かな、と思いまして」
「…山沢さんのところは一日に鯛食べるってそういえば言ってたわね」
「本当は赤飯も。でも面倒くさくて」
「ええっ」
「何日には何を食べる、とか決まりはありますよね」
「そうなの?」
「本当なら今日にしんと昆布の煮付け、なますにしたりします」
「何か意味があるの?」
「赤飯、小豆ご飯は家中・豆で暮らせるように、にしんは渋いので渋ぅこぶぅ暮らせ」
「こぶぅ?」
「形容詞、こぶいです。物惜しみとか始末、けちとか」
「一日から随分と厳しいこと言うのね」
「そうしたら鯛とか赤飯が食べられるわけですね。月末なんかおからですよ」
「それはどういう意味があって?」
「包丁使わないでしょう、切らず。炒って食べるから縁やお金が切れず入るって」
「へぇー」
「一旦覚えると献立考える手間半分くらいですから楽ですよ」
「それっていいわね」
「普段ケチっても折り目折り目節気でちゃんとしようと言う現実的な考え方です」
「あなたそういうところないわよね」
「そういう家じゃなかったものですから」
そろそろ、と律君が風呂に湯をはった。
「律が出たら一緒に入らない?」
「ん? いいですよ」
「肩凝っちゃって。辛いのよ」
「あぁ、温めながらのほうが効率良いですからね」
暫くみんなで喋って律君が入り、出てきた。
「お母さん先どうぞ。長湯するつもりだから」
「はいはい」
どっこらしょと八重子先生が立ち上がってお風呂へ行った。
居間に二人になる。
ついキスしてしまってぺちんと叩かれた。
その手を引き寄せて舐めると慌てて手を引っ込めた。
可愛いね。
じゃれているうちに八重子先生が上がってきた。
「お湯冷めないうちに入りなさいよ」
「はーい」
一緒に入り、先生の身体を洗ったり髪を洗ったり。
それからゆっくり浸かって背中を揉み解す。
気持ち良さそうだ。
「先生、随分背中が冷えてる」
「そうなのよね」
湯あたりしない程度に先生を揉み、風呂から上がる。
表情も和らいでいて綺麗だ。
「あぁ良いお湯だったわ」
俺はその足で台所へ行きアイスコーヒーを作る。
先生はお白湯。
すっきりしたところで寝間へ入った。
布団を敷いて先生を待つ。
暫くして入ってきた。
懐に抱くと先生はほうっと息をついた。
「ん?」
「あったかくて」
「梅雨寒、といいますからね」
「うん」
「温かいのと暑くなるのとどっちが良い?」
「…嫌じゃないなら温かいのが良いわ」
くすっと笑っておなかを撫でる。
「暑い方が良いって言わせたくなるな」
顔を赤らめていやいやをするのが可愛らしくて良い。
こういうとこ年上とは思えない。
「良いよ、寝て」
したいけど。ま、良いか。
おなかをなでたり腕をなでているうちに寝息に変わった。
俺も寝よう、おやすみなさい。

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h30

朝、起きた直後に先生から詫びのメールが来た。
今寝れないそうだ。
あんな時間から寝るからだね。
子守唄でも歌おうか?と返事を書く。
そんなのより抱いて欲しい、とメールが返って来た。
慌ててそのメールを削除するよう返した。
だけどえっちな意味じゃなくて抱っこしてて欲しい程度だったようだ。
驚いたじゃないか。
雨の夜の一人寝は少し、さびしかったらしい。
今日昼から行く旨を伝える。
嬉しい、とメールが返って来た。
慌しく出勤。
仕事中ふと考える。
この関係はちょっと先生にとってよろしくないんじゃないか。
八重子先生と二人になった時に少しお話したほうが良いかもしれない。
いや、頼られるのも甘えられるのも嬉しいが。
母として、妻として、教室の先生として。
俺に入れ込みすぎておざなりになるようなら離れなくてはならない。
先生に言うとこじれるんだろうけれど。
飽きたの?とか言われるのは勘弁して欲しい。
なんてよそ事を考えてたら商品出し忘れた。
うん、俺もいかん。
仕事に集中し直し、こなして行く。
雨か…。
気は晴れぬまま仕事が終わり、食事を取り風呂に入る。
着替えて先生のお宅へ車で移動した。
「こんにちは」
と入ればお花のお稽古日らしく女性陣の声がさざめく。
部屋には近寄らないようにして自室へ向かった。
鞄を置いて寝転がる。
雨音、遠くの女性の声。
ミシと廊下が軋む。
「あら、きてたの」
「ええ」
「もうちょっと待っててくれるかしら。生徒さんたちまだいらっしゃるから」
「寝そうです」
「寝てていいわよ」
身を翻して部屋から去っていった。
少し寝よう。
うつらうつらする。
重みを感じて目が覚めた。
「ん、いま何時ですか?」
「さっきから30分ほどしか経ってないわ」
「皆さん帰られた?」
「そう。お昼食べてきたの?」
「食べました。先生はまだですか?」
「もういただいたわ」
「なるほど、重い」
「それくらいで重くならないわよ」
ちょっとふくれっつらをして拗ねてる。可愛いな。
「明日、泊まってくれるのよね?」
「もちろん」
「今日は…」
「無理ですよ。でも夜までは居られますから」
暫くべったりとくっついていたが、そろそろお昼の生徒さんが来るからと起きた。
「寝るならお布団着て寝なさいよ」
「はい、頑張ってらっしゃい」
ちゅっと軽いキスをして部屋から送り出す。
教室は確か3時間ほどか。
布団を敷いてタオルケットをかけて少し寝ることにした。
今からちゃんと寝て、夜、先生が寝る頃にここを出れば丁度良い時間になる。
涼しいこともありよく眠れた。
先生がご飯と呼びに来て目がさめた。
そのまま引き寄せる。
「ダメよ、お夕飯食べましょ」
暫くぐずぐずしていたらデコピンを鼻の頭に受けてしまった。
うーむ、痛い。
食卓に着くと八重子先生からおはようと言われた。
「お邪魔してました」
「今日も泊まっていくのかい?」
八重子先生、それは無理です。
「いや、明日まだ仕事ですから。夜には帰ります」
「ご飯食べたら帰っちゃう?」
「1時までなら居れますよ」
「寝なくて良いの?」
「さっき寝ましたし大丈夫です」
先生の矢継ぎ早の質問に八重子先生が笑う。
「そういえばお稽古じゃないのに何で来たの?」
「やだなぁ、今朝来て欲しいってメールくれたじゃないですか」
「あら? そうだった?」
「寝ぼけましたか。先生にとっては夜中ですから仕方ないですが」
気になるものの食事をしながら携帯を触るのはお行儀か悪いと思ったらしい。
食後すぐ携帯を見だした。
「あら~」
「どれどれ?」
八重子先生が覗き込んでる。
「山沢さん、あんた甘いねえ」
「八重子先生も甘いでしょう? お稽古日なのにうちにやったり。良くないですよ」
「あら、迷惑?」
「じゃなくて家のこととお教室と。
 どっちもおろそかにしちゃいけないんじゃないですか」
先生がしょんぼりした。
「いいんだよ、私がいるうちは娘気分でも。
 ずっとあんたお教室や孝弘さんのことで遊びにも行かせてないしね」
「八重子先生がそう仰るなら」
「それにあんた来てくれると家の事が捗るからねえ、丁度良いよ」
「ああ、先生がしない分は私でまかなえてます?」
うん、と八重子先生がうなづく。
「ということで洗い物頼むよ」
「はい」
食器を引いて台所へ。
先生の前で言うつもりじゃなかったんだが。
苦笑しつつも片付ける。
洗い終わって居間へ戻り先生の横に座る。
と、もたれられた。
俺は嬉しいんだけど良いのかなぁ。
まぁ八重子先生気にしてないし良いか。
ただなんだ、触りたくなるのだが。
そこはちょっと我慢して一緒にテレビを見た。
番組が終って先生がトイレに立つ。
八重子先生が半襟持って来た。
「あんたもつけたら?」
そうか、絽の半襟にしなきゃいけない時期か。
八重子先生と付けていると先生も混ざりだした。
俺が一つつけてる間に二つ。
二つ目を終える頃には足袋の繕いと律君のシャツの綻びをつくろっている。
「手、早いですね」
「あなたが遅いのよ」
八重子先生はとっとと付け終わって部屋に戻ってしまった。
やれやれ、と針と糸を仕舞って先生の肩を揉む。
気持ち良さそうだ。
そのまま胸も揉んだら小突かれた。
「だめよ」
ふっと笑って足を揉む。
足袋を脱がせて指を。
揉み終えて履かせ、ふくらはぎ、膝裏、太腿。
ガタッと音がした。
「律君、どうした?」
「…えぇと、マッサージ、ですか?」
「そうだよ」
違うものに見えてしまったかな。
「あ、あんたのシャツつくろってあるから部屋持って行きなさい」
「うん。あ、お風呂あいたけど」
「おばあちゃんは?」
「今日は良いって」
「じゃ山沢さん、一緒にはいる?」
「ん、そうですね、浸からせて頂きましょう」
「ちゃんと寝巻き持ってきなさいよ」
「はーい」
寝巻きを持ち込んで、風呂に先生とはいる。
うー、ぬくい。
気持ち良いなあ。
横で先生が頭を洗ってる。
濯ぎ終えたので背中を流してあげた。
「うーん、やっぱり先生の肌綺麗だなあ」
「そりゃあ気をつけてるもの」
ここに…傷をつけるのは背徳感と色気を感じるんだろう。
あまりに綺麗で勿体無くてできないが。
他の人にされるくらいなら俺がしたいな。
触っていたら先生はどきどきしてきたようだ。
「あの、だめよ…こんなところで」
「あっ、あぁはいはいはい、そうですね」
湯船に再度浸かって、それから出る。
うん、気持ち良い。
このまま先生と布団にもぐりたい気分だ。
先生の寝間に布団を敷く。
今日は泊まらないから。
先生と布団の横でおしゃべりしてると先生が眠そうにしている。
抱っこして背中をなでて寝かしつけた。
さて、帰るか。
物音を立てないようにして部屋を出て、玄関の鍵を閉めて車に乗って帰宅した。
そして着替えて出勤。
土曜の朝は少し忙しい…はずがこの雨では。
荷物少なくばたつくが最終的には売り上げは今一つだった。
帰宅し、着替えてお稽古へ。
水屋の支度をしていつものように生徒さんのお稽古を済ませ、夕方。
私への稽古が始まる。
前回お疲れで緩い稽古だったが今回はしっかりと。
でもそれが終ると水屋で先生がもたれかかる。
「先生…疲れてます?」
「んー別に」
「疲れてないならけじめつけたほうが良いと思うんですが」
「何でそんなこと言うの?」
「いや…居間に戻ってからなら良いですが、水屋ってまだお稽古の時間でしょう?」
「あら…そうね。けじめのないことしちゃったわね」
しゃっきり背筋に力が入り、てきぱきと指示を出される。
きち、きちっと元の場所へ返し、火の元も確認する。
点検をしてヨシ、となりお稽古終了、夕飯の支度の手伝い。
配膳して呼びに行く。
「あ、今日は団子汁なんだ?」
「そうよーそれと生姜焼き」
それと八重子先生の作る煮物。
俺の分に野菜のおかずが一品多いのは…。
ま、いいけど。おいしいし。
しっかりと食べてお片付けもして。
今日は寝るばかり。
涼しいからあちらにもいかずに。
雨だねえ。
昨日帰る頃の雨は凄かった。
このまま泊まっていたかった程だ。
今日はしとしと。
八重子先生も何か眠そうだ。
「もう寝ちゃいますか?」
「ん、あぁそうだねえ、寝ようか」
「じゃ、戸締りしてきます。先生、火の元お願いできますか」
「うん…あ、律。火の元確かめてきて頂戴」
上手におしつけたな。
戸締りをして戻る。
律君は火の元を確かめてくれて、あとは自室でレポートだそうだ。
先生に部屋へ行くよう誘う。
「連れて行って」
腕を絡めてきた。
「仕方ない人ですね」
ひょいっと抱っこして寝室に入る。
部屋で下ろして布団を敷くと先生が寝る用意をしている
俺も寝巻きに着替えた。
髪をほどいてる先生の後ろから抱きついて胸を揉む。
「もうちょっとまって、ね、お願い」
少し緩めてあげて先生は何とか身支度を終えた。
布団に引きずり込み、素肌に手を這わせる。
「んー気持ち良いな」
滑らかな肌を堪能しているだけなのに先生の息が荒くなる。
結構な時間楽しんでから股間に手をやると随分と濡れていて、
軽く突起を弄るだけで逝ってしまった。
入れて欲しい?と聞くと恥ずかしげにうなづく。
ゆっくり丁寧に弄る。
かすかに啼く声が楽しい。
3度ばかり逝かせると、もう疲れてだめ、と言う。
そろそろ寝かせるとするか。
後始末をして背中をなでて睦言を言ってるうちに先生は寝てしまった。
うん、俺も寝よう。おやすみなさい。
翌朝、先生はよく寝てて起こすのに忍びない。
一人で台所へ行き、朝飯の段取り。
八重子先生が起きてきて味噌汁を作る。
あ、みょうがだ。
自分の分は麩を入れよう。
などと用意をして三人を起こす。
律君と孝弘さんは寝ぼけた顔でそのまま出てきた。
先生はそれなりに身づくろいしてくるから少し遅れて。
先生にお櫃を任せて朝飯を食べる。
んー。
炊き立てのご飯とお味噌汁、うまい。
一日の始まりに美味しいものを食べる幸せ。
食後、片付けを終えて居間に戻ると先生が綺麗な着物に着替えていた。
「あれ?」
「あ、さっきね、古いお友達から電話があって急にお芝居行くことになったの」
ごめんなさい、と拝んで外出の身支度をしている。
「いいですよ楽しんできてください」
こういうのは拗ねたりせず笑顔で送り出してあげねば。
外出の用意を整え終えて化粧もきっちりした先生を見る。
「綺麗だなぁ」
「あら。ありがと。じゃ行ってくるわね」
「行ってらっしゃい、気をつけて」
行ってしまわれてから思い出す。
「あ、八重子先生。何時くらいに帰ってこられるんでしたっけ」
「さぁ、夕飯は食べてくると思うよ。あんたどうする?」
「うーん、帰っても一人部屋でごろごろするだけですしご迷惑でなければ夕飯一緒に」
「まぁとりあえずお昼だね、何しようねえ」
「律君と孝弘さんお出かけでしょう。丼物とかにしますか?」
「あぁいいねぇ、あんた作ってくれる?」
「親子か他人かカツか何にしましょうか。衣笠丼も好きですが」
「衣笠丼?」
「えぇと、油揚げと葱の丼です」
「あぶ玉丼かねぇ、こっちだと。それでいいよ」
あぶらげと玉子であぶ玉丼、なるほど。
と言うことでお昼は冷蔵庫の油揚げとネギで手早く作ってお昼ご飯とした。
後の時間は八重子先生の茶室掃除と整理のお手伝い。
ゆったりとした日曜日。
お夕飯のお買物を頼まれて家を出る。
昼からまた降り出した雨はまだ止まない。
先生が帰ってきたらきっと染み抜きに着物を出すんだろう。
跳ねを上げたりはしないだろうが風が吹くと雨染みがつくからなあ。
あ、でも雨ごーと持って出てたな、急に降られないなら大丈夫か。
そんな私はジーパン履いている。
普段着一式、何セットかは置いてるからね。
ただこの間先生がうっかり糊を効かせてしまったのでパリパリだ。
ジーパンが折り目正しいのは何か面白い。
メモに書いてあるものを買って戻る。
八重子先生の指示通りに下拵えをして、付きっ切りで味付けを教えてくださる。
何とか八重子先生に合格をもらえた。
律君が帰ってきて、知らぬ間に孝弘さんも帰ってたようで食卓で待っていた。
配膳して八重子先生がお櫃からご飯をよそう。
この家はいつも炊き立てご飯。
うちだと一度炊くと二日くらい食べてるからなあ。
米の良いものを買っても…ね。
食べ終わる頃、先生が帰ってきた。
「ただいまぁ、あぁ疲れた」
暑い~といいながら隣の部屋に入って脱ぎ始めた。
さっさと浴衣に着替えて着物を衣桁にかけて食卓へつく。
「あらおいしそう。ちょっと頂戴」
俺のお箸を取って食べている。
「あんたご飯食べてきたんじゃないの」
「軽くしか食べてないのよ。時間が半端だったから」
ご飯は孝弘さんが食べつくしてしまった後なのでおかずだけ。
しっかり食べて満腹、と嬉しそうだ。
引き上げて洗い物。
居間では八重子先生と先生、律君で話している。
中々に楽しかったらしい。
俺もまた芝居に誘いたいものだ。
きっちり片付け終わって先生に辞去の挨拶。
そろそろ帰らないといけない。
また明後日ね~と見送られて帰宅した。
すぐに布団に潜っておやすみなさい。
朝。メールが入ってる。
また寝ぼけてるのかも知れない。
明日顔出したらそんなメール送ったかしら、なんていうのかな。
来て欲しいなら仕事が終わった頃にもう一度メールを、と返事をする。
メールが来なければただの寝ぼけだろう。
暇な月曜。
ざっくり仕事をしてメールを待つ。
正午を過ぎても来ないところを見るとやっぱり寝ぼけたようだ。
今晩から雨らしいので非常食を買い込む。
そして寝る。
耳元に置いた携帯に起こされた。
先生からメール。
美味しそうなお夕飯。
もうそんな時間か。
空は…曇っているが大丈夫だろう。
近所で天ざるを食べた。
そうメールしたら怒られてしまった
暑いからって冷たい物食うと怒られるんだよなぁ。
たまに反発心を覚えるが心配してくれているのはわかっているから何もいえない。
あ。雨が落ちてきた。
寝よう。
寝ているうちにメールでまた起こされた。
なんだなんだ?
あ、先生の所はひどい雨らしい。
ということで俺を心配してくれたようだ。
幸いこちらはそうでもなく、先生のほうはどうかとメールを返す。
雨漏りもなくなんとかなったとのことで安心した。
あの家も古いから。
暫くメールを交わして先生も落ち着いたようだ。
明日もお稽古に来なさいね、と書かれて勿論です、と返す。
おやすみなさいと挨拶をしてメールが終った。
翌朝、仕事を終えかけていると先生から電話が。珍しい。
急な用でこっちに出てきたけど財布にそんなに入ってなくて帰れん?
お稽古までに帰りたいから律君は無理、なるほど。
すぐに来られるかって、ええと。
保留にして社長に帰って良いか聞く。OK出た。
電話を取ってすぐって着替えてからで良いのか?と言うとだめって言う。
しょうがない、この格好でお迎えに行くか。
急いで車に乗り込む。
指定の場所について後部座席へ先生を乗せた。
「ごめんね、ありがと」
「このままおうちまで飛ばします。シートベルトしてくださいよ」
「え?」
ちょっと普段よりはスピードを上げて先生のお宅へ。
20分ほど短縮できた。
「お母さんの運転みたいだったわ…」
どきどきしてたらしい。
先生を降ろしてから車庫入れをして戻る。
長靴を脱いで端にそろえ、替えの靴下を履いてから。
居間に顔を出す。
早速に先生はお昼ご飯を食べようとしている。
「あ、あなたもいるわよね」
八重子先生がその前にシャワー浴びて着替えておいで、と言う。
「そうします、後でご飯ください」
「悪いわねぇ急がして」
ふっと笑ってシャワーを浴びる。
生臭さを落として風呂から出ると、着替えの浴衣が置いてあった。
さっと纏い、居間へ出て食卓に着く。
先生は水屋の支度を始めているようだ。
八重子先生がご飯をよそってくれた。
さらにおかずが足りないと思ってかふきの葉の佃煮を出してくださる。
うまい。
美味しく残ったおかずを全部頂いてごちそうさま。
「洗い物は私がするからあんた着替えといで」
「あ、はい」
部屋へ行って単衣の着物を着る。
今日の気温は25~26度って所だろう、丁度良いね。
着替え終わると丁度生徒さんがいらっしゃったようだ。
茶室に急ぐ。
「こんにちは」
「こんはちはー」
生徒さんと先生が玄関の長靴に注目してしまった。
二人とも大人だからスルーしてお稽古開始。
うーん、先生の支度したのはやりやすい。
見習おう。
身を入れてお稽古に従っていたら気づけばもう最後の生徒さん。
送り出して先生は俺のお稽古を始められた。
今日は前回叱ったからか、ちゃんと先生の顔で厳しくお稽古をつけてくださる。
いくつも駄目だしをされて気がそれたら叱られた。
稽古が辛くなる前に時間切れ。
八重子先生がご飯、と呼びに来た。
水屋を片付け終えると頭をなでられた。
「何です?」
「ん、よく頑張りました」
にっと笑ってお夕飯。
あ、すき煮。
どうやら食卓ですき焼きの鍋を囲むのは暑くていやと言うことらしい。
肉の量は分け隔てなく。
さらに俺のおかずにきゃらぶきがついた。
あとは人参のお味噌汁。
甘くてうまい。
あまり喋ることもなく食べてたら先生に笑われた。
「おかわりあるよ」
すき煮はまだあるらしい。
他の人がいらないなら貰おう。
様子を見ておかわりをお願いした。
更に先生が冷蔵庫からおひたし持って来た。
「食べなさい、お肉ばっかりじゃ駄目よ」
はい。
しっかり食べて満腹満腹。
その後、片付けをして居間へ行く。
先生が手招いた。
なんだろ。
横に座ったら引き倒されて先生の膝枕。
あ、気持ち良い。
けどどうしたんだろう。
…耳かきね。
はいはい。
「…あら?」
「どうしたんだい?」
「山沢さんの耳、綺麗なのよ。面白くないわー」
「なんですか、それ」
「だってするんだったら沢山あるほうがやりがいがあるじゃない」
「あー確かにそうかも」
耳かきを置いて俺の髪をくしゃくしゃとかき混ぜて。
「律君にしたら良いじゃないですか」
「恥ずかしがってさせてくれないのよ」
「じゃ八重子先生の」
「お母さんもあまり溜まらないのよねぇ」
そのまま手が俺の首筋、胸へと動く。
揉みたくなったらしい。
「あ、そうそう」
ころん、と横に転がされて先生が立ち上がった。
「あなたこんなの食べる?」
あ、これうまいやつだ。
「結構好きです」
「もてあましてたのよ、食べて頂戴」
「孝弘さんは食べないんですか」
「苦手みたいなの」
へー、意外だな。
八重子先生がわざわざ紅茶作ってくれた。
うん、濃い。うまい。
ぺろりと三つほど食べたのを見て先生が溜息一つ。
「よくこんなの食べれるわねえ」
「ほんとにねぇ」
「あと10年もしたら受け付けなくなるかもしれませんけどね」
紅茶を飲み終わり、台所に持って行く。
先生はお風呂入ってくる、とのこと。
居間に戻ってくつろいでると先生と入れ替わりに律君がお風呂に行った。
ちら、と先生の乳が見えて凝視しそうになる。
八重子先生のいる前は駄目だ。
ぐっと我慢して、火の元や戸締りを確かめに行く。
律君がお風呂から上がったのをキリに部屋へ連れ込んだ。
入ってすぐに抱き寄せて暫くキス。
唇を離す。
気持ち良さそうな顔つきで色っぽくなった。
寝る用意をさせて布団を敷き、俺も脱いで布団の中へ入るよう促す。
恥ずかしげに入ってくるのはやっぱり可愛くて年上とも感じさせない。
もう一度キス。
それから首筋や鎖骨に手を這わせ、掠めるように乳首に触れる。
「ん…」
きゅっと俺を掴む。
優しく乳首を弄ったり、舐めても見たり。
吐息が熱い。
お腹や腰、太腿をなでる。
「ねぇ…久さん、キスして…」
求めてくるのは珍しい。
というかキス好きだよなー。
納得するまでキスしつつ、胸も愛撫する。
太腿をすりあわすようにしている感触。
そろそろ触るか。
そっと突起へ指を伸ばす。
触れると舌に歯を当てられた。
危険だ。
唇を離して腕を噛ませる。
その後はいつものように声を上げない程度に。
もっと手荒くしたいけど仕方ない。
伏せさせる。
「ひっ…だめ、そこっ」
小声でいやいやを言うが、尾骨をなでつつ尻穴を舐めた。
先生は俺の手拭を噛んで声をこらえている。
じたばたして足が当たる。
いてて。
あきらめてひっくり返して抱きこんだ。
キスしようかと思ったら手で顔を押された。
「ん?」
「口、すすいできてちょうだいよ」
あー、ケツ舐めた口でキスするなと。
はいはい。
笑って起きて、先生にちゃんと布団をかぶせ洗面所へ。
可愛いねー。うん。
濯いで戻ると先生はうとうとしてた。
もぐりこんで背中を撫でる。
気持ち良い肌だなぁ。
すぐに寝息に代わって俺も寝る。
そして朝、やっぱり先生が少し遅れて起きる。
寝起きのキスをして台所へ。
朝ご飯をして食べて、律君を送り出す。
「展覧会、あんたら行かないかい?」
「いいですねぇ」
「良いわね、行きましょ」
着替えて出ようとしたものの、そういえば長靴で来たんだった。
「先生、何か草履か雪駄かないですか」
「お母さーん、お父さんの草履、どこかに仕舞ってなかったかしら」
「はいはい、ちょっと待ってて頂戴。ええと」
暫く探してくれたけど、礼装用しかないようだ。
「あ、下駄あるわよ、ほら」
おっとこりゃ丁度良い。
途中でどこかによってあれば草履、なければ雪駄を買おう、と言う話になった。
懐に足袋を忍ばせて雨ゴートに身を包み、展覧会へ。
雪駄はその辺の靴屋にもあるのでまだ助かる。
竹皮表の雪駄を購入し移動する。
会場に着いて履き替えた。タイヤ底なので滑らない。
ここの会は売らない会で沢山良いものを見て目を養ってもらったり、
考える暇を与えてずっと着てもらうと言うコンセプトだ。
そのときの勢いで買って死蔵されるのは嫌ということらしい。
色々見て先生は欲しいものが決まったようだ。
とりおきはしてもらえるのでお願いする。
俺は浴衣を一枚とお茶席用の帯を先生に見繕って貰った。
さてそろそろ帰りましょう。
入り口で下駄に履き替えて先生と歩く。
「雨強いわねぇ」
「そうですね、シルックにして正解だったな」
人通りも少なく雨の音が凄い。
「ねぇ、久さん。昨日みたいなことやめて頂戴」
「昨日?」
「あの、…舐めるの」
「どこをかな」
「わかってるくせに言わせるの? 酷いわね」
「恥ずかしがってるの、可愛くて好きですよ」
「ばか、もうっ」
少しむくれて、それがまた可愛くて笑ってしまう。
手の甲をつねられた。
「あ、ちょっとこっち向いて」
頬にまつげか眉毛か知らんがついている。
そっと取って捨てた。
「お夕飯何にしようかしら」
「二人でどこか行きませんか」
「あら駄目よ」
「駄目ですか?」
「うちにいるのに食べになんて」
「でも俺、この辺の美味しいところ知らないからあなたと食べに行きたいな」
「ん、また今度ね」
「わかりました。じゃ、今日は何にしますか」
「しょうが焼きとかどう? あなた好き?」
「んん、すり下ろしならば」
「じゃそうしましょ」
携帯で家に電話して八重子先生と献立の話をして、そのままお買物へ。
あれやこれやと買い帰宅した。
雨ゴートを片付けて台所へ下拵えに立つ。
先生は八重子先生に報告してるようだ。
ご飯も炊いて、あとは焼くだけ、煮るだけにして戻った。
「あ、山沢さん、あんた昨日の服。隣の部屋にかかってるから。
 畳むなり着て帰るなりしなさい」
「あれ? 洗ってくださったんですか、すいません。有難うございます」
「けど畳みにくい服だねぇあれ」
「そうなのよね。いつも畳んでないわよ」
「そうなの?」
「3D縫製は着心地は良いんですが畳めないですよね」
なんだかんだと暫くおしゃべりを楽しんでから先生がそろそろ作りましょと言った。
台所へ行ってお手伝い。
作って配膳して皆を呼んで食べる。
団欒だなぁ。幸せ。
でも帰らなくちゃいけない不幸せ。
車に雪駄を履いて服と長靴を積んで帰る。
ちょっとさびしく思いつつ帰宅。
着替えて布団にもぐりこんで、お休みのメールをする。
すぐに返信があった。
気持ちが温かくなりすぐ眠りに落ちた。
翌朝も雨、梅雨は嫌いだ。
出勤しても客もやる気がない。
俺もやる気がない。
社長も今日はあまりやる気がないようだ。
しかしながら昼になるにつれ雨がやんできた。
まだ空は曇っているが予報はこれから晴れ間もありらしい。
お稽古に行こう。
お宅に着いてお稽古の準備を整えた。
先生も何か気だるげなのは気のせいだろうか。
それでも水屋を片付けるまでは何とか気力が持った様だ。
台所ではなく先生の部屋に呼ばれた。
暫く俺の懐に。
八重子先生が呼びに来てやっと離れて食事へ。
夕飯を食べた後も物憂げだ。
どうしたのだろうか。
「…おばあちゃん」
「なに?」
「明日お稽古お願いしていいかしら」
「いいけど?」
「山沢さん、家行っても良いわよね?」
「ええ、かまいませんが」
「じゃ用意してくるから待ってて。あ、律。ちゃんとお勉強するのよ」
「はいはい」
「はいは一回」
「はーい」
そういうことで支度をした先生を連れて帰宅した。
「…掃除してないでしょ」
「明日する」
「しておいてあげるわよ」
「いいですよ」
「暇なんだもの、あなた帰ってくるまで」
「すいません」
先生はぽいぽいと着物を脱いで寝巻きになった。
「早いけど一緒に寝て頂戴」
「はい」
俺も着替えてベッドにはいる。
「今日はしないでね。寝たいだけだから」
「いいけど。どうしたの?」
「なんでもないわ」
「そう?」
言いたくないなら仕方ない。
緩く抱きこんでゆっくりと背をなでた。
少しずつ穏やかな息になり、寝息に変わる。
肩に入っていた力が抜ける瞬間。
それを見届けて俺も寝た。
先生にとっては夜半、俺にとっては朝がやってきた。
寝ている先生にキスを落として出勤する。
過ごしやすい気温、と思っていたら一気に快晴になったらしく。
段々と暑くなって上着を脱いだ。
お客さんも今日は買う気になったようだ。
それなりに売れてやれやれと仕事を終える。
あ、上着持って帰らないといけない。
先日から置き去りの数枚も一緒に持って帰った。
あれ、暗い。開錠してドアを開ける。
先生の草履は…ある。
風呂?
でもない。
寝室かな。
そろりとドアを開ける。うん、寝てた。
そのままにして洗面所で脱いで手を洗う。
寝巻を羽織って先生の横に忍び込んだ。
床に割烹着と帯が脱ぎ捨ててある。珍しい。
抱っこして10分くらい経っただろうか、先生が起きた。
「あぁ帰ってたの? おかえりなさい」
「ただいま。まだ寝てて良いよ」
「うん…こうしててくれる?」
そのまますぐに寝息。
さていったいどうしたのだろう。
朝御飯は作って食べたようだけど、掃除はすると言ってたがしてない。
食後の眠気に負けたのかな。
結局2時ごろ、起きた。
「ごめんね、おなかすいたでしょ」
「ま、たまにはいいでしょう。喫茶店でも行きましょうか」
「着物なにか貸してくれない? くしゃくしゃになっちゃったわ」
はいはい。
先日衣更えして把握してるだろうからと勝手にあさってもらうことにした。
脱いで衣桁にかけて、そして着物を着て出てきた先生を連れて近所の喫茶店へ。
俺はホットサンドとサラダのセット、それとカツサンドを。
先生はパンケーキ。なんか色々かかってて甘そう。
途中で俺のカツサンドを一切れ食べた。甘いから休憩?
コーヒーと紅茶で落ち着いて、帰宅。
先生はまた寝巻に着替えて、俺にべったりとくっついてる。
「泊まる?」
「そうしたいけど…明日もお稽古だから。夜になったら帰るわ」
お腹がすくまでこうしてたいと言うのでベッドに移動した。
たまには先生もこういう日があるんだろう。
そのまま一緒にうとうととした。
ふと目が覚めた。
なんだ。と思ったら先生が乳摘んでた。
「ん?」
「なんとなく…触りたくなっちゃっただけよ」
ま、良いか。今日は甘やかす日ということで。
「つっ!」
「痛い?」
「乳首噛んだらそりゃ痛いですよ」
って言ってるのにまだ噛むんだからSなところあるよな。
「うー…」
楽しそうにくすくす笑ってる。
機嫌回復したのは良いことだが。
「お腹すいちゃったわ、何か食べましょ」
引き起こされた。
時間は6時か。
「何食べたい?」
「んー、ピザかしら」
「デリバリーか食べに行くかどっちがいい?」
「持ってきてもらいましょ」
メニューを取ってきて見せる。
野菜の多いピザをチョイス、更にサラダ。
届くまで先生を膝に載せて抱く。
くぅくぅと先生のお腹がなってる。
「早く来ると良いですね」
「そうね」
暫くして届いて食卓に広げる。
「おいしそう、いただきます」
「うまそうですね」
先生はLサイズの3分の1とサラダを半分食べてもうお腹一杯らしい
手を洗って俺の膝に座った。
ちょっと食べにくい。
綺麗さっぱり食べつくして俺も手を洗いに立つ。
暫くまったりといちゃいちゃして先生がそろそろ帰る、と言う。
「送らなくて良いわ。明日お稽古ちゃんといらっしゃい」
「勿論、行きますから待っててくださいね。でも駅まで送りますよ」
着物を着替えて先生は帰ってしまった。
俺は後は寝るばかり。
おやすみなさい。
熟睡中に先生の帰宅報告メールを貰った。
起きて出勤、それなりの荷動き。
やっぱり天気が怪しかろうと土曜は土曜だ。
忙しくてお稽古に少し遅れそう。
メールを先にしておいた。
仕事が終わり、慌てて帰宅しシャワー、着替えて駅へ。
電車に乗っているとメールが返って来た。
落ち着いて事故の無い様に来なさい、と書いてある。
うん、落ち着こう。
電車の中で焦っても仕方ない。
深呼吸をして電車を乗り継いで先生のお宅へ。
「すみません、遅くなりました」
「いらっしゃい。水屋はして置いたから着替えてらっしゃい」
「はい、有難うございます」
着替えて茶室へ。生徒さんは後5分もすれば来るはずだ。
先生にちょっと着方を直された。
「急ぎすぎよ。ちゃんと着ないと駄目よ」
「すいません」
笑い声に気づいて見やると生徒さんがくすくす笑っていた。
「おじゃまします」
「あら。いらっしゃい」
「こんにちは」
「仲がおよろしくて良いですわねぇ」
ほほほ、と先生も笑ってお稽古開始だ。
たまにお客様の稽古に混ぜてもらったりしてのんびりなごやかなお稽古。
先生も今日は普通に落ち着いて生徒さんの相手をなさってる。
いったいなんだったのか。
夕方、生徒さん達が帰られて俺へのお稽古もいつもどおりに厳しい。
完全にいつもどおりだ。
ご飯を頂いて、団欒。
八重子先生があちらの家に行って来て良いと仰る。
先生は今日は行く気はないようだ。
別に今日どうしてもしたいほどでもないのでそのまま団欒を続け、風呂に入った。
先生と寝間へ行く。
布団に寝転がって先生が着替え、髪をほどくのを眺める。
色っぽいなぁ。
それから布団の中に先生が入ってきて、キスをした。
唇が離れたら先生は背中向けて、おやすみなさいって言って寝てしまった。
ありゃ。
する気にはなれなかったか。
いいけどさ。
眠くなるまで先生の乳を玩ぶ。
やわらかくてすべすべで気持ち良いんだよなぁ。
堪能しているうちに眠ってしまった。
朝は先生が先に起きたようだ。
どうも先生の乳をつかんだまま寝てたらしい。
手の甲を撫でられる。
起きるにはまだ早い時間だ。
そろりとその手をお腹、そのまま下の毛をまさぐると逃げられた。
「朝から駄目よ」
「昨日もしてないのに」
「でも駄目。朝なんだから」
そういって身づくろいをはじめてしまった。
不機嫌に布団で大の字になる。
暫くして部屋に先生が戻ってきたと思ったら顔踏まれた。
「早く支度しなさい、朝御飯作るわよ」
「まだ早い…」
「涼しいうちにしないと駄目よ」
もそもそと布団から出て畳む。
「ほら、早く顔洗って着替えなさいよ」
追い立てられて着替えて台所に行く。
米を炊飯器にセットして、朝御飯の支度にかかる。
「あら、お味噌切れてる」
「あー…赤出汁と白味噌混ぜます?」
「そうね」
適当な割合で混ぜて、味見。
「ちょっと甘いかしら…まぁいいわ」
「おはよう」
「お早う、お母さん」
「おはようございます」
手伝いに回って食卓を片付けたり、洗い物をしたり。
「どうしたの? 何か機嫌悪い?」
八重子先生に聞かれた。
なぜばれるのだろう。
言いづらいのでなんでもないことにして朝ご飯をいただく。
食べた後の片付けもして居間に戻る。
「暑いわねぇ」
「本当に暑いねぇ」
そういいつつおいでおいでをして俺を膝枕させた。
先生の膝は気持ち良い。
暑いけどそれなりに風が有って心地よく、
「お昼どうするー?」
「そうねぇ…」
「なます食べたいです」
「紅白?」
「はい」
「ほかは?」
「小松菜と厚揚げの煮びたしとかどうでしょう」
「いいわねえ。じゃお買物行きましょ」
着替えてくる、と言って先生は俺を膝から下ろす。
途中律君の部屋によって夕飯は何食べたいか聞いてるようだ。
暫くして戻ってきた。
「さ、行くわよ」
「はい」
起き上がり先生の後をついていく。
ふと思い出した。
「そういえば父の日でしたけど何かされたんですか? 孝弘さんに」
「ああ、お父さん? さっき着てた服がそれよ」
「よかった。忘れてたらどうしようかと思いましたよ」
「流石に忘れないわよ…」
お昼ごはんの買出しついでにお夕飯の分も買い、更に和菓子を一箱。
「あ、うまそう」
「これはお父さんのよ。なぁに?食べたいの? 駄目よ」
「なんで? いいじゃないですか」
「太るわよ」
「運動したら」
「屁理屈言わないの、帰るわよ」
手を引かれて渋々帰る。
台所に立ち早速にお昼の支度。
なますと煮浸し、後いくつかの保存食系小鉢。
おいしい。
食べ終わると八重子先生が洗い物に立ち、律君はレポートを書きに行った。
孝弘さんは寝てくる、と部屋へ。
先生は俺の膝に手を突いて膝を崩してテレビ。
段々と胸に肩をもたせかけてきた。
うーん。
「先生、俺、今日は帰ります」
「あらそう? 気をつけてね~」
なんとなく気乗りしないまま帰宅する。
昼を食ったのだからもう寝れば良いだろう。
しかし引き止める気もなかったようだ。
もうどうでも良い相手になっちまったんだろうか。
少し悲しい気分のまま寝た。
起床、トイレへ行って気がつく。
いらいらと悲しい気分の原因は判明した。
だけど昨日は夕飯メールもなく、本当にどうなんだろう、と思う。
気が向いたらメールで聞こうか。
向く可能性は低いけれど。
出勤し少しいらいらとしつつも仕事をこなし帰宅する。
寝よう。
着替えてトイレに行ってすぐに寝た。
2時間ほど寝て、掃除にかかる。
無駄にやる気が出るんだよな。
きっちりとあちこち掃除し、台所も綺麗になった。
風呂もトイレも。
ああ疲れたと床に転がり、ふと思いついて先生の家に電話をかける。
八重子先生が出た。
「こんにちは、山沢です」
『あんた昨日はどうしたの』
「今日からアレでして、それで明日多分辛いと思うので休ませて頂いて宜しいですか」
『あぁ、なんだそれでかい。不機嫌だったからまたなんかあったんじゃと思ったよ』
そういうことにしておいて貰おう。
「じゃ先生にもそのようにお伝えください」
『はいはい、あったかくして寝てなさいよ』
「はい、ありがとうございます」
電話を切って布団に潜る。
暑い時期に暖かくしてろとは中々に難しいが。
少し暑さで寝苦しい。
そろそろ晩飯の時間か。面倒くさいな。
うーん…親子丼食いたい。
でも着替えて外に出るのが邪魔くさい。
うぅ。
何か冷蔵庫とかにあるかなぁ、あ。カレーはあるな。
もうそれでいいや。
ご飯を温めカレーを温めて食べた。
洗い物も明日で良いや。
寝よう。
おやすみなさい。
翌朝、少し辛いまま仕事をして疲れて帰る。
明日は休みだからなんとかなるだろう。
すぐに布団に入った。身体が冷えている。
そういえば昨日もメールはなかったな。
明日、問い詰めようか。他に良い人でも出来たのかもしれない。
ぼんやりと考えているうちに眠気が下りてきた。
そのまま寝る。
寝汗が酷く、自分の声で目が覚めた。
「大丈夫?」
「うぅ…う? …なんで、お稽古は?」
「もう7時半よ?」
「いやそれより何で来たんですか」
「お母さんがお夕飯差し入れたらって言うから」
「あー…」
「食べるでしょ?」
とりあえず起きてトイレに立ち、食卓についてご飯を食べる。
「掃除したのね」
「ええ、昨日」
黙々と食べ終わって、食器を台所へ返す。
「洗い物はしてあげるから布団入ってなさい」
ベッドに入らされた。
暫くして先生が着替えて布団に入ってきたからキスをする。
「ダメよ」
「どうして。他に良い人でも出来たのか」
先生を下にして押さえ込む。
「え、ちょっと、何でそういうこと言うのよ」
「この間からずっとさせてくれないじゃないか。したくないわけが有るんだろ」
「えっ…、痛っ、ちょっと、ね、離して…怖い…」
睨め付ける。
「言えよ、理由あるんなら」
目を伏せて黙る。
「早く。言わないならケツにぶち込む」
「待って、それだけは…。お願い…」
「じゃあ言え」
「…暑くて」
「クーラーつける」
起きてクーラーつけた。24度に設定した。
「で?これだけか?」
「先週の頭は疲れてただけなのよ…。
 ここ数日は暑いから…したくなくなっちゃっただけで」
他意はなかったらしい。なんなんだよ。
「それならそれで暑いから嫌だとはっきり言やぁいいのに」
「だってあっちの家でってことになるでしょ、恥ずかしくて」
「今更。うちに来るのもあちらも変わらんでしょう」
「あなたの家ならご飯食べたりお出かけしたりもするじゃない。
 あっちはその…えっちのためだけだから…」
息をついた。
「あなたの家の俺の部屋、クーラーつけますよ? いいですね?」
「は、はい」
ひんやりした空気に包まれだして先生が身を添わせてきた。
「あの…する?」
「したくないなら今日はもう良い、寝なさい」
「ごめんなさい」
トイレへ行って布団に潜り込む。
クーラーの温度設定が28度に戻っていた。
「あなた、寒いと思って」
「抱いてればあったかいから平気。それよりキスくらいはいいでしょう?」
「したくなっちゃうからだめ…」
「なったらクーラー強めて抱かれたらいい」
そっと唇をなでる。
それだけで体温が上がったようだ。
どきどきしてるようだが、困った顔もしているのでそのまま懐に抱きこんだ。
「寝ましょう」
「いいの?」
「今日のところは。明日、クーラー効かせてしましょうね」
先生から軽くキスしてきた。
「あの、あまり酷くしないでね…」
「さぁね。寝るよ」
電気を消した。
いらいらしたままではあるものの、先生の体臭が心を穏やかにする。
腕を掴む先生の手が緩んできた。
暫くして寝息。
暗いとすぐ寝れるのはうらやましい。
おやすみなさい。
翌朝起きてトイレへ行き、また布団に戻る。
まだ気持ち良さそうに寝ている。
朝は涼しくて心地よい。
起こすのは忍びない、と眺めていたのに起きてしまった。
あふ、とあくび。
「何時?」
枕もとの時計を見る。
「7時半ですね」
「あらいけない、朝御飯作らなくっちゃ」
「腹減ってないならもっと後で良いよ」
「それからじゃご飯炊けないわよ」
ぽんぽん、と腕を叩かれてあきらめて開放した。
もうちょっと抱いてたかったなぁ。
先生がトイレへ行って身づくろいしている間にご飯を炊く。
暫くして台所に来たので交代して洗面所を使う。
あれ? 朝飯になるようなもん冷蔵庫にないんだけどな。
ベーコン焼く匂いがする。
台所に戻るとほうれん草をいためているところだった。
「あ。昨日買物してからうちに来た?」
「そうよ、朝御飯作るつもりだったもの」
人参もいためてたようだ。
「トマト切って頂戴」
「はい」
…これは桃太郎ゴールド?
珍しいものを買ってきたんだなぁ。
「スライスにします?」
「何でも良いわよ」
赤いトマトも有った。
同じサイズ。
スライスして交互に盛り付けようか。
そうしよう。
夏用の皿に盛り付けて涼しげにしてみた。
小細工をしてるうちに出来た様で、洗い物もお願いーと菜箸などを渡された。
早炊きモードだがまだ少しかかりそうだ。
先生がお味噌汁を作る。
具は麩。
「あ、そうだ。これからずっと俺が泊まるときあっちの家で寝てくれません?」
「どうして?」
「前も言いましたが虫が苦手で。あちらは入ってこないから」
「でも…」
「一人で寝るのは嫌です。律君にも私から言いますから。
 なんだったら八重子先生と一緒に寝てもいいです」
「そんなに苦手なの?」
「虫が身近じゃなかったからでしょうかね」
「酷く暑い時はお母さんと寝て欲しいわ」
「うん?」
「お母さんも年だから…寝不足って言ってるときあったのよね、去年」
「ああ、そういうことですか。布団一組増やしましょう」
上は肌掛とタオルケットで良いだろう。
押入れはまだ余裕あったし入る入る。
あ、飯が炊けた。
「お味噌汁注いで頂戴」
先生がご飯をひっくり返して蒸らしにかかろうとする。
「先生、それ蒸らしもできてるやつですから」
「あ、そうだったわね、つい」
ワンプレートにオムレツ、ベーコン、人参とほうれん草を盛り付けて食卓へ。
パンとスープではなく、ご飯とお味噌汁。
「いただきます」
一人でだったらこんな朝御飯は絶対に作らん。
等量に盛り付けたのだが、先生がベーコン一枚こっちにくれた。
食べ終わって洗い物を終えると洗面所から先生が呼ぶ。
「脱いで頂戴」
「へ?」
「洗うから」
「あぁ…何かと思った」
脱がされてついでだから風呂入れといわれてシャワーを浴びる。
風呂から上がってすぐにトイレへ。
始末をして床に寝転んだ。
「浴衣着なさいって言ってるでしょ」
「暑い…」
「冷えたら痛くなるわよ」
「抱いたらあったまる」
「バカなこと言ってないで早く着なさいよ」
そう言われつつも暫く転がってると先生が干し終わった。
「ん、冷えてきた。おいで」
苦笑してる。やっぱり朝だから嫌っぽい。
「それよりお昼のお買物行かない? 今のうちなら暑くないし」
紫外線か。
諦めてむくりと起き、着替えた。
ほっとした顔をしている。
「何食べたいんです?」
「なにしようかしらねぇ」
「晩飯、あなたが煮物作ってくれるなら昼はハンバーガーでも良いんだけどな」
「そんなのでいいの?」
「うん。どこ行きます?」
「作るわよ。外でなんて食べられないでしょ、こぼしちゃうわよ」
「買ってきてうちで食べれば良いじゃないですか」
「冷めちゃうじゃない」
「強情だな」
「そんなこと…」
「買物、行ってくる」
いらっとしてしまった。ちょっと冷まさなきゃいけない。
先生を置いて雨の中スーパーへ行く。
バンズ用パンと玉葱、トマト、牛ひき肉。チーズ。マッシュルーム。レタスにポテト。
それから夕飯の材料。
先生も腹を立てていたら帰っちまってるかもしれないから日持ちするものを。
買い終えて帰宅する。。

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h29

朝起きると湯の音。
先生は先に起きてお風呂に入ってるようだ。
俺も後追いで入ることにした。
「おはよう」
「おはようございます」
ぼんやり入ってると体が浮いてしまう。
先生が笑って引き寄せてくれた。
「胸とかお腹とか脂肪のあるところだけ水面から出ますね。あ、湯面か」
「ここも出てるわよ」
つん、と股間をつつかれた。
くるん、と伏せてふちに腕と顎を乗せる。
「お尻出てるわよ~」
「出ますよそりゃ。ってくすぐったい」
先生が俺の尻なでてる。
「大浴場行かなかったんですか?」
「後にしようかと思ったのよ」
先生も俺と同じ格好をした。
ぷっかり浮いてる。
喋ってると先生の腕がプルプルしてきた。
「意外と疲れるでしょこれ」
先生をひっくり返して膝の上に乗せ俺の腕をお腹にあてがい浮かないようにして座る。
部屋のテレビを伺い見ればそろそろ7時。
「朝御飯、7時半でしたっけ?」
「ああ、じゃもう出ないといけないわね。お化粧したいし」
「もうちょっとこうしてたいな」
「後ででもできるでしょ」
「まあそうですけど」
ぺちぺちと濡れた手で腕を叩かれて仕方なく開放する。
一緒に風呂から出てシャワーですすぎ、洗面台を使って身支度を整える。
きちっと浴衣を着て羽織を掛けて朝御飯のお時間だ。
適当に着るとだらしないと直されてしまうから最近はちゃんと着るようにしている。
昨日とは違って二階へ。
テーブル席だ。
フレッシュジュース、サラダから始まる本格的和風朝食。
美味しくて、そして量が多くてやっぱり先生は全部は食えなかった。
まぁ俺が食っちゃったけどね。
「やっぱり上げ膳据え膳で、色々食べられるのが嬉しいわ~」
「主婦はそうですよね」
「食べ過ぎちゃう」
「おいしいから」
うふふ、と先生が笑って俺も笑う。
「部屋で一服したらプール行きましょう」
「そうね」
二人連れ立って部屋へ戻る、その途中。
ヒーリングルームに先生が引っかかった。
「あら、ここは?」
「あぁ座ってみてください」
座らせて背中を倒しスイッチを入れる。
環境音楽みたいなものが流れるのだ。
ただ先生としては家で聞こえる鳥の声に慣れてるからそんなでもなかったらしい。
「都心から来てるとこういうの癒されるんですよね」
部屋に戻ってさて。
「あ、風呂行きますか?」
「大浴場?」
「その足でプール行きましょうよ」
「あぁそれいいわね、じゃええと何を持っていったら…」
「水着だけでいいですよ。下着は昨晩替えてたんだし」
「あなたは?」
「俺もプール入りますから安心して」
「ビキニ着るの?」
「違います」
「なぁんだ」
「何をそんながっかりしてるんですか」
ちゅっ、とキスされた。
「見たかったんだもの」
はいはい。
先生の手を引いて大浴場へ。
「あら。あらあら。凄いわねえ」
タオルを置いて掛かり湯し、湯船にはいる。
「あ、そこ段差ありますよ」
かくっとなったのを慌てて抱きとめる。
「ありがと」
一番奥まで進むと立ち湯になっていて半露天になっている。
風が気持ち良い。
少しだけ楽しんだらプールへ向かう。
そのまま奥へ進み、売店のある棟の一階がプールだ。
受付でロッカーキーを貰い、進む。
先生の横で水着に着替えるとずるい、と言われた。
うん? と思えばどうやら俺のが長袖だかららしい。
「替えますか? でも髪に引っかかりますよ。折角きれいにしてあるのに」
「んー、じゃいいわ」
ガウンを着せてぺたぺたと歩く。
ちょっとプールまで距離があるのだけど。
プールについて先生は眺め回している。
俺は二人分のビーチベッドを確保して先生のガウンを貰って置いた。
「さ、入りましょう」
こっち、と先導してプールにはいる。
「あら、あったかいのね」
「歩きますよ」
水流に逆らうようにぐるぐると2度歩く。
先生が途中でじたばたしているのを引っ張ったり。
それからジェット水流になっているところで足から背中、肩まで順番に。
「あ~気持ち良いわ~」
「でしょ?」
30分程度だけどすっかりほぐれてきて一旦上がると体が重い。
先生に水を飲んでもらって暫くまったり。
時計を見るとそろそろ10時半。
後30分したらエステだ。
少し寝湯に浸って、それから先生とエステの場所へ。
受付をして待つ間、先生の後の時間が空いてるようなのでこっそり受付に話を通す。
金額は言わずに本人に聞いて受けたいというならの受けさせるようにと。
本人に言うと遠慮するからね、金額。
各々別れてエステへ。
久々のエステは気持ちが良い。主に肩こりの面で。
一時間たっぷり掛けてやってもらって出てくると先生はもう一品目頼んだようだ。
ということは俺、一時間どうしよう。
受付の人と目が有った。
どうやらスケジュールは空いてるようなので俺はボディスクラブを頼んでみた。
気持ち良いなぁーと思ってるうちに終了。
そういう気持ち良い時間と言うのは早く過ぎるものだ。
先生が先に出て待っていて、俺を見て微笑む。
「ね、お腹すいちゃった」
「あぁ確かに」
それじゃ着替えて居酒屋に行こうかな。
着替え終えてスタッフに声を掛けると送迎車を呼んでくれた。
乗せてもらって居酒屋へ。
もうすぐオーダーストップなので慌てつつも色々軽めに頼んで待つ。
「お、うまそう」
食べる。
「うまい♪」
先生もおいしそうに食べてる。
「太っちゃうかしら」
「太ったらジム行きましょうジム」
おすすめのお造りも食べて先生は幸せそうだ。
食事を楽しんだら送迎車で一気に泊まってたところへ。
歩かなくて良くて楽である。
お部屋について先生が布団に転がった。
「お昼間からこんなことできるの、良いわねー」
「おうちだと畳の上ですもんねえ」
いない間に掃除が入っていて俺が散らかしたものはちゃんと片付けられている。
そのうち寝息になってしまった。
布団の上で寝ちゃってるのでもう一つの布団から掛け布団を剥がし、
先生の羽織を脱がせ布団の中に入れる。
俺も一眠りしよう。
携帯のアラームがなる。
あ、そろそろ起きて飯か。
先生を揺り起こして寝ぼけ眼の所、着替えさせる。
「あふ…」
「はいはい、眠いですよね」
着替え終わって部屋を出るころにはしゃっきりしてる。
「ねぇ寝皺ついてない?」
「大丈夫、綺麗ですよ」
ゆったりと食事場所まで行く。
一階だが昨日と違う場所だ。
食事も連泊なので昨日とは違うメニューになっている。
日本酒を頼み先生と杯を交わす。
今夜のご飯も美味しくて先生が嬉しそうだ。
今日は最初から少しずつ俺のお皿に分けてくださる。
「マナー違反だけど…」
「色々食べたいからね。下さい」
先生がなんか可愛いくて嬉しくなってしまった。
「味見味見、うまいなぁ」
結局俺が色々食べちゃうので良い感じにデザートで満腹となった。
お部屋に戻って更に部屋のウイスキーを飲む。
腹がこなれた頃、先生の胸に触れた。
熱海のときのように、飲みつつ。
でもあのときほど恥ずかしがってなくてやっぱり慣れだね、慣れ。
むしろもどかしげだ。
くすっと笑って全部脱がせて布団に追い込む。
「あ、着物、ハンガーにかけて頂戴よ」
はいはい。
ちゃあんと掛けて脱いだものも片付けて。
それから先生とお布団に入る。
大声は出させちゃいけないが先生のおうちほどには潜めなくて良い。
好きだ、愛してるも沢山に言って先生のうわごとの様な気持ち良さそうな声も楽しむ。
十分に先生の身体を堪能してぐったりしてるのを引き起こす。
「ほら、浴衣、着て」
脱力してるから俺にされるがままだ。
シーツのピシッとかかってる布団へ先生を寝かせて俺がくしゃくしゃの布団へ。
おやすみなさい。
朝起きたら先生はまだ寝ている。
今のうちに頭を洗おう。
シャワールームで洗い終えて露天にちょっと浸かるか、と思ったら先生も来た。
「頭?」
「うん」
「洗ってあげましょう。おいで」
「いいわよ、自分で洗うから。ゆっくり浸かってて」
髪を濡らしてシャンプーを取った。
「待った、それじゃないっ」
「ん?」
こっち、とローションを渡す。
「なぁに?」
「これで満遍なく髪濡らしてからじゃないと泡立ちませんよ」
「そうなの?」
「海水成分ついたままだと全然だめですから」
ふぅん? といって洗ってる。
湯船に入って先生が洗ってるのを見つつ。
んー天気は良くないかな。
まぁいいけど。
大浴場に行くもよし、日帰り施設の風呂に入りにいくもよし、ずっと抱いてるもよし。
今日は先生のために連れてきたんだから好きなようにすれば良い
上がって着替え、朝食をいただく。
連泊だから少し違う。
部屋に戻って先生にどうするか伺う。
「どうせだから日帰りのところ行ってみたいわね。ジムはいいけど」
急ぐ必要もないので暫く先生とまったりとしてもいいのだが。
ササッと用意されてしまった。
「行くわよ」
「はい」
送迎車で日帰り棟へ連れてってもらう
「平日なのに結構人いますね」
「そうねぇ意外だわ」
他の人もいるところで先生が脱ぐのはちょっと腹が立つが仕方ない。
「あの、お客様、男湯はこちらでございますが」
「……え。あぁ私ですか」
先生が横で笑ってる。
「この子、女性です、大丈夫ですよ」
なんとか笑いながら先生が言ってくれた。
「あ、あらそれは失礼いたしました」
ぺこぺこして去っていくのを見て先生が笑ったままだ。
「あんたも早く脱ぎなさい」
はいはい。
周囲の人が見ない振りをしつつ見てるなー。
乳が見えると視線が消えた。
下帯を外して先生と中にはいる。
うん、広い。
朝洗ってあるから掛湯をして湯船へ。
「んー、気持ち良いわ~」
幸せそうで俺も嬉しい。
いくつかある湯を楽しみ、風呂から上がる。
ふと見るとここでもエステの予約空き情報が。
「先生、昨日と別のエステ受けます? ほら空いてるって出てる」
「あら、今日は良いわよ」
下の売店でみやげ物の物色。
「ここで買えなくてもまぁ駅にも売店有りますから」
「ねぇお腹すいてきちゃった」
「ここのレストランか昨日の居酒屋どっちが良いです?」
「昨日のところが良いわ」
「ですね」
先生は色々食べる代わりにこんにゃくライスを頼んでる。
満腹で部屋に帰ってごろごろ。
少し抱く。
先生も俺の乳首を舐めたり摘んだりする。
怒らない怒らない、じゃれてるだけだろう。
その後もう一度風呂に入ったり、またじゃれたり。
恋人気分を満喫した。
お夕飯を食べに出ると初日とも昨日とも違うものが出た。
ちゃんとした宿に泊まるからこそだね。
今日は先生が梅酒を、俺は酒を頼む。
先生が美味しいおいしいと食べてる。
「こんなに毎日美味しいもの食べて良いのかしら」
「おうちに沢山お土産買って行きましょう、ね」
「ん…」
「家が気になりますか?」
「ちょっとだけね」
「なにかあるなら電話くれてますって」
里心と言うものなのかな?
「後で電話、したら良いじゃないですか」
「そう、ね。そうするわ」
食後のコーヒーを頂いて部屋に連れ帰る。
すぐに先生が携帯を出した。
「俺、ラウンジにいますから」
「うん」
いない方が話し易かろう。
ラウンジに出てブランデーの水割りを頼む。
ん、おいしいなぁ。
次はウイスキーを頂いて。
暫くしたら先生が来た。
「あなたも飲みますか」
「うん、いただくわ」
「どれにします?」
甘めのものを、というので俺のさっき飲んでたブランデーになった。
「おうち、どうでした?」
「お稽古でね、何でお母さんなのかって結構聞かれたみたい」
「ああ、あまり稽古休まないから」
「で、お母さん正直に言っちゃったらしいから…。次のとき覚悟してね」
「うっ…」
もう一杯おかわりをして部屋に帰る。
「酔っちゃったわ」
と先生が俺にもたれてきた。
可愛いな。
「ね、もう一度抱いて良い?」
「いいわよ」
脱がせて抱く。
先生は普通のえっちで普通に声を出していいから旅行は好きなのかもしれない。
先生の家では声を出せず、俺の家では普通のえっちはしてもらえないから。
「実はえっち、結構すきなんじゃ…」
ぺしっと額を叩かれた。
「そんなこというならさせてあげないわよ」
「あ、冗談。言いませんからさせてくださいよ」
今日は自力で先生は着替えて布団に入った。
「どうして朝別の布団で寝てるのかと思ってたのよね…」
「仲居さんにばれたくないんでしょ?」
「そうだけど…」
「俺の懐で寝たい?」
こくり、とうなづいた。
「OK、じゃそっち入りますね」
潜り込むと先生は嬉しそうだ。
俺も先生を抱いて寝るのは好き。
おやすみなさい。
翌朝二人で露天風呂に入って、朝御飯をいただく。
部屋に戻ってお片付け。
水着とか仕舞うものはしまって荷造りする。
その間に先生はきちんとお化粧。
手荷物と分けてすべて片付いた。
「まだ時間ありますし、風呂入りましょう」
「そうね」
「気持ちい~」
「結局露天ばっかりでしたね」
「あら、私3回入ったわよ」
「いつの間に…」
「夜中目が覚めちゃったから」
「誰もいませんでした?」
「いなかったわよ」
「そりゃよかった。まだほら、こことか。消えてませんし」
沢山キスマークつけちゃってたから。
そのまま一戦してしまった。
「気持ち良いですね、外の空気」
「私は恥ずかしいわよ…」
「可愛いなぁ」
そろそろ風呂から上がってチェックアウトだ。
荷物を配達してもらう手続きとお支払いをカードでした。
電車の手配は既にしてある。
少し早めにタクシーをお願いしていたので駅についても30分ある。
先生はお土産を更に選んでいる。
お酒も。
しずおかコーラとか。
せめて静岡サイダーにしようよ。
あ、わさびらむねとかカレーラムネも買うのね。
いいけどさ、誰に飲ませるつもりなんだろう。
やっぱり律君?
そんなこんなでずっしりとした土産を持ち先生のお宅へ。
「ただいまー」
「戻りましたー」
「あーおかえり。なんだいあんたそんな沢山持って」
「お土産よー」
どれどれ、と覗き込む八重子先生。
わさびラムネとか見て呆れてる。
「あんたねぇ誰に飲ますの」
「んー兄さん」
それはおもしろそうだ。
「うっかりお客様にお出ししないようにね」
うんうん。
普段着に先生が着替えだして八重子先生が気づく。
「今日は律がいるときに着替えないようにね」
「え?」
「まだ消えてませんね、すいません」
「でもエステと温泉の効果かねえ、あんた肌つやつやじゃないの」
八重子先生が先生をぺたぺた触ってる。
あ、胸もんだ。
「俺もエステ受けてきたんですよー、ほら」
乱入しちゃえ。
腕を見せたのに乳もまれた。
「えーと。どっちの感触が良いですか」
「やだもう山沢さん」
「んー絹のほうが触り心地は良いね。でも張りはやっぱり山沢さんのほうがあるねえ」
「なにやってんの、おばあちゃん」
「司ちゃんいたの!?」
「お邪魔してます」
「旅行先でエステ行って来たのよ~」
「そしたら触り心地確認されてしまったってわけ」
「お夕飯何作ろうかねぇ」
「あ、私みょうがとなすのお味噌汁食べたい」
「あらいいわね。でもメインなんにしよう」
「外は暑いしねえ」
「買物行ってきますよ?」
「じゃ、カレー」
「暑いのにカレー?」
「暑いからよ。汗かいたほうが良いのよ」
「チキンカレーかビーフカレーかポークカレーかどうします?」
「山沢さんの好きなので良いわよ」
「じゃビーフにします」
てくてくと買物に出る。
途中先生から電話があった。
トイレットペーパーがないらしい。
了解して買物続行。
肉を多めに買い込み、帰宅。
多すぎたら先生が俺の炒め物を作るときに使うから。
台所に下ろすと先生が居間から指示を飛ばす。
「じゃがいもむいておいてねー」
そんで八重子先生に横着と叱られている。
「ただいまー」
律君が帰ってきた。
「お帰んなさい」
「お帰り」
「あ、お母さん帰ってたんだ。お帰り」
早速先生にわさびラムネを飲まされているようだ。
うーん、見たい。
面白そう。
ひとしきり笑い声の後先生が割烹着を着て台所に来た。
「人参頂戴」
ほい、と渡して二人で下拵え。
「わさびは律に飲ませたわ。あとはカレーね。兄さん来ないかしら」
「コーラは?」
「覚兄さんに、と思ってるの」
結構お茶目だよな、先生。
どんどん皮を剥いて積み上げていって後は先生の独擅場。
「お肉多いわよ」
「多すぎるなら他のときにどうぞ」
炒めて煮込んでルーを入れる。
氷水に鍋を漬けて暫く放置!
居間に戻って旅行の報告色々。
司ちゃんも八重子先生も行きたいという。
「二人で行ったら良いじゃないですか」
「そうよ。お稽古は私でも見れるんだもの。行ってきたら?」
「でも高いんだろ?」
「んー、たしか今は俺の泊まった所に一泊、ホテルに一泊で一人5万になってたかと」
「二人で十万ねえ。そうだね、司さえ良ければ行って見ようかね」
「いいの? やったー」
暫くごちゃごちゃ喋って時間が過ぎる。
「そろそろ温めようかしら」
「ご飯も炊けますしね」
「お味噌汁は?」
「カレーにはスープです」
「えー」
「みょうがなすは明日の朝です。と言うことで八重子先生よろしく」
「スープ?」
「コンポタです」
キャンベルの業務用だ。
1本で8人前作れる優れもの。
同量の牛乳で伸ばす。
ご飯が炊ける音がした。
お皿にご飯をよそう。
先生がカレーを掛ける。
司ちゃんが取りに来た。
「やだこれ、手が込んでるー」
真ん中をカレーにしてみた。
カレーが終ったので先生がスープを。
俺は洗い物とか片付けをしてさあ食事だ。
「いただきます」
ぱくぱくとたべていく。
「あー美味しいわー」
「自分で作っといてよく言うよ」
「美味しいでしょ?」
「美味しいけどね」
「スープも美味しい」
「そこのスープ好きなんだよね」
わいわいとご飯を食べて良い時間になった。
「後片付けはするからそろそろ帰って寝なさいよ。明日仕事でしょ」
「うーん、もうちょっと」
「ダメよ、疲れてるはずよ」
先生の思いやりによって追い出されて帰宅した。
おー、部屋に熱気が篭ってる。
窓を全開にして着替えてベッドへ。
おやすみなさーい。
寝起き、ちょっと寒かった。
まぁ疲れは取れていないが出勤。
皆にお土産をばら撒く。
暇だから丁度良い。
本日の営業先は、とテキトーに選んで見積もりを作ってもらう。
眠いけど頑張って気合を入れて…立川近辺を攻めた。
営業終って疲れてしまったのでお稽古へはいけないと先生にメール。
先生は先生でお稽古で色々聞かれて大変だったらしい。
土曜日、俺も質問攻めされるのかなぁ。
ま、しかたない。
楽しんできた部分を話せば良いのさ。
帰り道に飯屋に寄り定食を食べる。
味が濃い…。
きっと先生の食事と旅先の飯を暫く食べてるからだろう。
帰宅して後は寝るばかり。
先生も今日明日はうちへは来ないとのことだ。
きっと疲れるんだろうね、ずっと一緒は。
着替えておやすみなさい。
何か夢を見たような気がしつつ起床。
荷物少なし。
仕事は暇。
さて。
今日は帰ったらどうしようかな。
軽い目にジムか?
先生来ないって言うしそれでいいか。
帰宅して着替えてジムへ。
小一時間ほどして帰宅し風呂に入る。
うーん、極楽。
…さっさと寝よう。
昼寝だ昼寝。
ざっと体や頭を拭いてそのまま布団に潜り込む。
先生が見たら怒るだろうな。
おやすみなさーい。
日が落ちた頃腹が減って目がさめた。
メールが入っている。
先生から夕飯の写真がきてた。
あぁうまそうだな。
でも今日は食べたくても無理だ。
あ、二通目?
明日お昼にちょっと食べる?と書いてある。
勿論だ。
頑張って早めに行っていただきたい。
そう返事をして。
さて今日は何を食うか。
とんかつ?
あ、良いやそれでいこう。
近所の肉屋まだ開いてるね、急げ!
と買ってきてヘレカツとご飯を食べる。
先生に飯は何かと聞かれ写真とって送ったら電話かかってきて怒られた。
野菜が足りない。
言い逃れをしてもう一度おやすみなさい。
土曜の朝、流石に仕事は忙しい。だけど!
今日は早めに着くんだ!
とばかりに仕事を頑張って終わらせて先生のお宅に飛んでいく。
なにかって?
昨日の先生の作った肉じゃがを食べるためにだ。
「こんちは、いただきに来ました」
「いらっしゃい」
先生がクスクス笑ってる。
「昨日は暑かったわ、ご飯作るのイヤになっちゃった」
「ああ、30度超えてたんですよね、こっちも」
「今日も暑いのかしらねえ」
いただきますをして肉じゃがを食べる。
うまい。幸せ。
「今日も暑いそうですよ。女性の着物は大変ですね」
「外に合わせてるからお茶室はクーラーほんの少し入れてるのよ」
「ああ、そっか、皆さん外歩いてこられるからガンガン効かせたら寒くなっちゃう?」
「ずっとうちにいるならねえ。暑いと言っても知れてるんだけど」
ぱくぱくと食べてご馳走様をして水屋の支度を整える。
台所の片付けはいつものように八重子先生がしてくれる。
暫く待って生徒さんが来て支度ができると先生が入ってきてお稽古開始だ。
いつものようにお稽古。
その合間に先日の旅行の話に花が咲く。
プールの話では先生の水着姿の想像がつかないという生徒さん方。
だろうね。
俺も想像できなくて着せてみて得心したくらいだから。
そして厳しい俺へのお稽古。
たっぷり遊んできた後だけに、の厳しさ。
ま、そうやって恋人に厳しく出来るからこそ、なのだが。
甘くするような、そういう贔屓にならないのが先生だ。
とは言うもののお稽古が辛い。
そんなとき、八重子先生が混ざってくれると一気に和む。
和やかな雰囲気でお稽古を終らせ、水屋のお片付け。
先生が横で嫌いだから厳しいわけじゃないとか何とかいっている。
「先生たまにSいですよね…、まぁお稽古とか、日常は別にそれはそれで良いです」
慣れたし。
ただまぁ…夜とか、俺とエッチな雰囲気のときに出さないでいてくれたらいい。
少しいじけてる先生にキスしたら怒られた。
水屋でもダメらしい。
片付け終えてお夕飯をいただく。
今日は暑いからハモの落としを八重子先生にしてもらった。
やっぱり涼しげで夏だなぁと言う感じだ。
あと持ち込みの魚素麺。
それと何品かのおかず。
律君が魚ぞうめんがなんなのかわからないようだ。
「それかまぼこみたいなものだよ。食べてごらん」
白と緑のかまぼこの元を素麺状にしたような物で夏の風物詩なのだが。
東京では見ないなぁ。
「あ、おいしい」
しかしさすが八重子先生。
俺なら大皿にわっさわっさとハモを盛って各自梅肉つけて食え、ってなとこだが。
ちゃんと小鉢に盛って上にちょんと梅肉を載せてある。
美味しそうに見える工夫だね。
おかげで律君たちもおいしそうに食べてる。
ご馳走様をする頃には全部売り切れ。
筑前煮がちょっと残っているので腹に始末して洗い物をする。
居間に戻って団欒。
律君たちが部屋に帰った後八重子先生に旅行中の写真を見せた。
「これ、先生の写真です」
ぱっと見せたのは先生のビキニ姿。
「やだっ、いつの間に撮ったのよ、捨てて頂戴」
「あんたこれでプール入ったのかい?」
「入ってないわよ、そんなの」
ははは、と笑って新たにもう一枚。
「こっちがプールのときのです」
「もー山沢さんいつの間に撮ってるのよ~」
「ああ、これならうん、いいね」
「あんまり肌を見せるのはどうかと思いまして」
「じゃどうしてビキニ?」
「見たかったからです」
キリっといったら笑われた。
「律君に見せますか?」
「見せないわよ」
後はいくつか先生の写真を渡す。
「この辺は見せても良いね」
選別が終って先生がお風呂に行く。
八重子先生が律君を呼んで写真を見せてるのを眺めていると眠気。
気がつくと座布団を枕にタオルケットが掛けられて先生が覗き込んでいた。
「あら起きた? ほっといて寝ようかしらって思ったわよ」
むっくり起きると先生がタオルケットを畳む。
「布団もう敷いたから着替えて頂戴」
そういいつつ俺の手を引いて部屋に連れてってくれた。
脱ぐと着物を片付けてくれて、着替えて布団に潜り込む。
先生もすぐに入ってきた。
寒くもなく暑くもなく先生の体温が丁度心地よい。
うなじを舐める。
手を胸に這わす。
先生の体温が上がる。
汗をかかない程度の緩いえっちを終えるとすぐに先生の寝息が聞こえて来た。
もうちょっとしたかったが、ま、仕方ない。
俺も寝た。
翌朝、先生の寝顔を見つつぼんやりしてたら八重子先生が部屋に来た。
「ご飯できてるよ。いつまで寝てんだい」
「ありゃ? 寝過ごしました?」
「もう7時半すんでるよ、早く起きなさい」
凄く寝過ごしてた。
先生を揺り起こして着替えさせる。
食卓につくと律君が食べ終わってて笑ってた。
「二人ともって珍しいね」
「旅行いって調子狂っちゃったみたいでね」
「山沢さんなんて夕べ早いうちから寝てたのに…おかしいわねぇ」
「ま、たまのことだからね。早く食べなさい」
「はーい」
「そうね、いただきます」
遅めの朝御飯をいただいたら後は衣替えのお手伝い。
昼前には汗だくになって何とか終了した。
「ね、山沢さんはしたの?衣替え」
「しませんよ、いつも適当に着てますし」
「…火曜日お稽古終ったらあなたの家行くわね」
「ダメですって、おうちのこと大事にしてくださいよ」
「でも…」
「毎年適当に暑ければTシャツ着るとかしてますから気にしないでください」
お昼はなんだろう。
「今日は早いけど素麺にしたよ。暑いしね」
あ、うれしい。
見るからに涼しくて、食べるとすっきりした。
だけど時間が進むに従い気温急上昇である。
「八重子先生、水気とってます?」
「とってるけど追いつかないねぇ、暑いね」
「ほんと暑いわね、雨でも降らないかしらね」
室温も29度になってしまった。
「行水したい…」
「あ、いいわね、たらいあるわよ」
庭にたらいを出して水を張る。
すぐにぬるま湯になった。
縁側で脱いでたらいにはいる。
「うー丁度良いや」
ぱしゃぱしゃと先生が顔に水を掛けてくる。
「先生も入る?」
「いやよ」
ほぼ、と笑って湯にならない程度に水を足してくれた。
さっぱりしたので手拭を貰って拭いて出る。
「うわっ!」
「あら、律。あんた出かけたんじゃなかったの?」
「何してんの!?」
「行水よ、あんたも小さい頃したでしょ」
「覚えてないよ、そんなの…」
あはは、と笑いながら浴衣に着替えてたらいの水を日陰の植木に撒く。
さっとたらいを濯いで立てかけて終わり。
「やぁさっぱりしました。でも帰りの電車が思いやられますが」
くすくす、と先生も笑ってる。
やっぱり可愛いな。
部屋に戻ると八重子先生も流石に麦茶を飲んでいた。
それでも都心よりは涼しいので夕暮れまで先生のお宅でごろごろして帰宅した。
むっとする室温にクーラーをつけてしばし。
26度まで下げて止め、寝た。
朝、起きて仕事をするが、みな何かぼんやりとしているのは寝苦しかったんだろう。
はかどらない仕事をこなして帰るとご飯の匂い。
「ただいま、で、お稽古は?」
「お帰りなさい。生徒さん夏ばてみたいで二人だけだからお母さんが見てくれるって」
ピッとクーラーをつける。
「良くこんな暑い部屋にいますね」
「うん、そろそろ扇風機、と思ったんだけど」
「扇風機はありませんよ」
服を脱ぎ手を洗って先生を脱がす。
「ちょ、ちょっとまって、なんで脱がすの」
「抱きたいから」
「お昼ご飯、食べてから。ねぇ、だめよ」
抵抗されつつもそのまま全部脱がせてベッドかここか、と聞く。
諦めたようだ。
ベッドに連れて行ってたっぷりと楽しむ。
クーラーを効かせているからどんなに激しくても軽く汗をかく程度。
終った後、布団をかけてやる。
じゃないと風邪引いちゃうよね。
「おなかすいた…」
ぽそっと文句の上に呟かれてなんだか笑ってしまった。
クーラーを緩めて先生を起こす。
浴衣を背中に掛けて台所からお盆に載せて食事を持っていく。
お箸とスプーンで手ずから食べさせてあげると恥ずかしがっている。
「あなたのために作ったのに…」
「ちゃんといただきますよ。まぁでも先に食べてくださいよ」
全部食べてご馳走様、と言う。
おかわりいりませんか?と聞いたがもう良いらしい。
台所に食器を返し、自分の分を平らげた。
それから先生の横に戻る。
「お腹、こなれたらもう一度しましょうね」
「ええっ、まだしたいの?」
「したいんですよねぇ」
「旅行中ずっとしてたのに?」
「一昨日すぐ寝ちゃったじゃないですか」
「そうだけど…」
「しかし八重子先生、俺に先生を甘やかしすぎるって言うけど。
 ご自身も十分先生を甘やかしてますよね」
ぷっと先生が笑う。
「そういえばそうね、そうよね」
「で、実際何しに来たんですか?」
「衣替え」
「しないって言ってるでしょう」
「するわよ」
「出来ないようにしちゃおうかな。こうやって」
キス。
コツン、と額にこぶしを当てられた。
「ばか…、普段着じゃなくて、お稽古とか、お出かけの着物あるでしょ」
「あぁなんだ、そういうのですか」
ぶるっと先生が震えた。
クーラーきつかったかな。
「お手水連れてってくれない?」
そっちか。
抱えあげてトイレに連れてって裾をまくって座らせる。
そのまま見てたら嫌がられた。
「どうせ一人じゃ出れないんだし。子育ての時と同じと思えばどうです」
それでも恥ずかしそうで可愛い。
思わず肩を抱いてしまう。
先生は我慢が切れたようで…した。
「ヘンタイなんだから…」
あ、なじられた。
拭くのもやっちゃったぜ。
流して担ぎ上げてベッドに戻る。
で、舐めたら踵で肩を蹴られた。
流石に腹が立ったようだ。
ベッドから降りて部屋を出る。台所片付けよう、うん。
洗い物を終えて先生のそばへ行く。
「ごめんなさい…蹴っちゃって」
あ、当たり前じゃないんだ。
蹴られて当然だと思ってたからなー。
「そろそろ起きれますか?」
そろり、と先生がベッドから身を起こす。
手を添えてゆっくり立たせてリビングへ連れ出した。
「はい、お茶」
「ありがと。ねぇ…ああいうの、私、無理だわよ」
「やっぱり無理?」
「うん」
「ふぅん…またいでかけるプレイとか」
「無理よ、そんなの」
「かけるほうがSなんですけどね、普通」
「出るところ見られるのなんて恥ずかしくてダメよ」
「そういうとこが可愛くて、そういうことをさせてみたくなる」
「蹴るわよ」
「蹴ろうと思っては蹴れないでしょ?」
げしげしと座ったまま足先で蹴ってきた。
「お行儀悪いですよ、先生」
更に強く蹴られた。
「可愛いなー」
顎に手を当て持ち上げてキスする。
そのまま押し倒した。
「ダメよ、箪笥、整理するんだから」
「ま、そういわず…うっ」
先生に乳首捻り上げられた。
地味に痛い。
「退きなさい」
「はーい…」
上から退くと先生はぺしっと俺の頭を叩いた。
「さっさと整理、するわよ。明日もお稽古なんだから」
身を起こして浴衣の乱れを直し、手を洗って和室へはいる。
樟脳の匂いにまみれつつ、たとう紙を開けて中を見ては夏物、相物と入れ替えた。
なんだかんだ夕方近くまで掛かったので先生を誘ってホテルディナーとする。
ちょっと久しぶり。
「暑ーい…」
「暑いですね…梅雨前だってのに」
先生は日傘をさした上で日陰を通って、俺も日傘の下に入れようとする。
「そんなことしてるとあなたが焼けますから、俺は良いですよ」
「早めに対策した方が良いわよ」
「ちょっとくらい焼けたほうが男らしいじゃないですか」
「男じゃないでしょ」
「ま、今度、今度」
扇子を日よけにホテルへ入る。
先生の遠慮で一番高い奴の一つ下のコース。
「おいしいわ~」
昼に怒ってたのとはまったく違って幸せそうだ。
最後のデザートも美味しく頂いて、先生はその足で帰ると言い出した。
「え? どうしてですか」
「だってあなたの部屋戻ったら帰るの嫌になるもの」
胸に響くなぁ。嬉しい。
「明日お昼に一緒に帰るほうが楽じゃない。電車乗らなくて良いんだから」
「そっちですか」
がっくりしつつ会計を済ませて駅まで送る。
まだ日が高いから送らなくて良いようだ。
「じゃ、また明日いらっしゃい」
「はい、ではまた明日」
別れの挨拶を交わし、電車を見送って帰宅した。
後は寝るばかり。おやすみなさい。
さて夜も明けてお仕事。
やっぱり火曜日はダメだね、暇で。
あくびも一つ。
おかずに良いものはないかな。
社長と雑談してると在庫整理で味噌漬けが余ってきてるのが判明した。
今晩は味噌漬けだな。
先生にメールを打ったら来るときに洗濯の洗剤を買ってくるように頼まれた。
あー。重いもんな。
律君が帰ってくるまでに第二段を干して畳む必要があるらしい。
仕事を終え、帰り道に買い込んだ。
風呂に入って着替えて車に乗り込む。
流石にこの格好で洗剤を手荷物に電車はちょっとね。
電車を乗り継ぐのと変わらない時間、車を走らせて先生のお宅へ着いた。
裏から上がって先生に声を掛ける。
すぐに先生が来て洗濯機を回し始めた。
「あとはお母さんが干してくれるわ」
「先生はお稽古優先なんですね」
「二人でいるときはそうね」
ぱたぱたと先生が食事をとりに行ってる間に冷凍庫に味噌漬けを収納する。
そのまま水屋の支度。
生徒さんと先生がそろえばすぐにでも出来るように。
順々に生徒さんが来て穏やかに、やわらかい雰囲気で進む。
いつものように生徒さん達が帰られた後は厳しく俺へのお稽古…のはずだが。
今日はいつもの種目以外をとのことであまり怒られず緩やかに終った。
水屋を片付ける前に洗濯物を取り入れる。
先生と二人で日が落ちる前に。
下着は先生が畳む。
俺のは勝手に洗ったり干したりするのに自分のはいやなのだそうだ。
畳んだ洗濯物を先生が各々の部屋に分配する。
孝弘さんの分は先生が箪笥にしまっているそうだ。
ま、できなさそうではある。
律君の分は昔は仕舞ってあげてたが今は自分でさせている模様。
俺の冬物の服も有った。
「あ、それ持って帰ってね」
「はい。こっちの箪笥もしたんですか」
「そうよ、だから今度夏物持ってらっしゃい」
「りょーかいです」
それから水屋を片付けて、八重子先生の作るご飯をいただく。
今回持ってきた味噌漬けはすべて俺が食えるもの。
だから八重子先生もつくるのは菜物のおかずだけだ。
ホタテの味噌漬けがうまい。
「八重子先生、これよく崩さず焼けますね」
キスの味噌漬けだ。
ストーブで焼いてばらばらにしたことがある。
良い感じで味噌漬けがはけて行く。
そればかり食ってたら菜っ葉のおかずをお皿にとって先生が渡してきた。
「ちゃんと野菜も食べなさい」
「お母さん、山沢さんを子供扱いしてない?」
律君が笑ってる。
「言わないと食べないのよね」
はい、おかわり、と先生が孝弘さんのご飯を渡している。
俺は取ってもらったおかずを食べつくしてまた味噌漬けへ手を伸ばす。
別のおかずを先生に渡された。
「これも食べなきゃダメよ」
「はい」
もくもくと食べて最後に味噌漬けを取る。
ごちそうさまでした。
食器を洗って片付けて居間に戻る。
律君はレポート書きに部屋へ、孝弘さんはもう寝に戻ったとか。
まったりと先生方と団欒。
「ああ、あんたら最近暑いしこれくらいの時間からあっち行ってさ、
 夜お風呂入って寝たらどうだい?」
「朝から汗臭くなっちゃいますかね?」
「多分ね」
先生が赤面してる。
「今から行ってきたら?」
「そんなの…」
「先生可愛いー、照れちゃって」
ごちん、と拳が落ちてきた。
「からかわないでよ、もうっ」
あはは、と笑って立つ。
「じゃそうさせていただきます」
ひょいっと先生を起こして抱えあげた。
「ちょ、ちょっと」
「はいはい、行ってらっしゃい」
そのまま玄関を出てあちらの家に入る。
下ろすなり叩かれたけどクーラーをつけてベッドの布団を剥がした。
「さぁさぁ脱いで脱いで♪ ああ、いや、待った、そのままで抱き締めたいな」
先生は俺に翻弄される。
先生が恥ずかしいって言うようなことを沢山させて、気持ち良いって言うことも沢山。
だけど時間が時間だから、早めに切り上げて戻る。
先生の体力を奪ったのもそうだけど先生は草履履かせずにこっちへ来てしまったから、
やっぱり抱き上げて夜道を歩くことになった。
恥ずかしがってるのが良いなあ。
「もうちょっと散歩しましょうか」
「だ、だめよこんなとこ見られたら」
「出先で草履の鼻緒がって言えば良い」
「ダメ、やめなさい」
「はいはい、しょうがないな」
連れ帰ってお風呂へ。
二人で入って、先生を隅から隅まで洗ってあげた。
お湯に浸かってそろそろ出ようかと思えば先生は転寝してる。
気持ち良いもんな。
起こしてお湯から出して拭いてあげて。
俺もざっと水気を落として先生に寝巻きを着せる。
立ってるのがやっと、と言う風情だ。
抱き上げて寝間へ連れて行く。
座らせて布団を敷いたらすぐにもぐってしまった。
俺は寝巻きを着て一度居間へ戻る。
八重子先生と火の元の始末や戸締りの確認をして先生の元へ。
おやすみなさい。
翌朝起きて先生が熟睡しているのを置いて行こうとしたがしがみつかれた
脱皮のごとく先生の腕に浴衣を残し着替えて台所に立つ。
さすがに昨日の今日で寝過ごすと八重子先生に叱られるからな。
納豆に焼き魚、お漬物、味噌汁、おひたし。
ご飯が炊ける良い匂い。
先生が起き出して来て食卓を片付けている。
八重子先生が起きだしてくるより早く起きてくれて助かった。
先生が律君を起こしに行ってる間に八重子先生も起きてきて配膳をすます。
孝弘さんも起きてきた。
普段どおりの和やかな朝食。
律君が大学へ行けば静かな日常。
「今日も草引きお願いね」
先生は俺に野良着と麦わらを渡して洗濯や掃除を始めた。
八重子先生は茶室の掃除に行ってしまった。
塩砂糖水を作りコップに入れておき、着替えて庭へ。
黙々と作業する。
喉が渇けばその水を一口飲む程度だが。
今日は曇ってどんよりとして…別に塩水にしなくても良かったかもしれない。
お昼になってご飯に呼ばれ、手を洗っておにぎりをいただく。
小さめのおにぎりだが中が全部違う。
俺のためだけに作ってくれるおにぎりもまた美味しい。
お昼からもそのまま草むしり続行だ。
先生は八重子先生と二人で掃除に余念がない。
これまではどうしても庭は後回しになってたらしい。
ま、俺が出来る間はしてあげても良い。
謝礼は美味しいご飯と先生の体ってことで。
あ、来客。
先生が部屋にお通ししてなにやら歓談されている。
暫くして喉が渇いた。
「先生、すいません。お茶下さい」
「はいはい、これで良い?」
先生の飲みさしのお茶を俺の湯飲みに移動して渡してくれた。
丁度ぬるくて飲みやすい。
ふぅ、と人心地ついてよく見たら安藤さんだ。
「こんにちは、安藤さん」
「あら? 誰かと思ったら山沢さん? そんな格好してるから驚いちゃったわ」
「今やんないと盛夏じゃ出たくもないですからねえ」
「絹先生ったら飲みかけたお茶渡されたからどうして?って思ったんだけど。納得だわ」
「猫舌ですから新しいの入れてもらったら悲しいですねー」
先生がクスクス笑いながら新しいお茶を入れている。
「じゃ続きしてきますね」
「ん、お願いね」
黙々と抜いてたら帰られた気配と、先生が茶室に行く気配。
後は夕方まで。
「ごはんできたよ、手を洗っといで」
八重子先生に呼ばれて野良着を脱ぎ、手を洗って着物に着替えた。
ごはんごはん。
お二人の作るご飯はやっぱり美味しくて。
塩気が足りないのは後で補えば良いだけのことだ。
夕飯を頂いてしばし団欒を楽しみ、一人さびしく帰宅する。
先生も少しさびしそうなのが救いだ。
だが帰り道思い出した。
6月だ。ホテル営業行かなくて良いんだった。
明日も会えるじゃないか。
にやり、とにやけたが幸い車だから見てる人もいない。
さびしい気分も吹っ飛んだまま帰宅して、寝る。
朝起きると空気がひんやりしている。
天気予報は昼から雨。
と言うことは客は買物控えめかな。
長袖を着て出勤する。
荷物は少なめだ。
やや暇ではあるものの、それなりに売れた。
ヨコワを一尾売り損ねたから持って帰る。
先生に食べてもらえば良い。
着替えて先生のお宅へ。
「こんにちは」
居間に顔を出すと先生が驚いてる。
「あら? 営業は良いの?」
「月替わりましたから。八重子先生、台所にヨコワあるんで今晩どうぞ」
「あ、ありがとう」
「今日はお稽古何されます?」
「ええとねぇ、そうね。荘物したいの」
「わかりました。支度しておきます」
「吃驚しちゃったわ。来ないと思ってたから」
「おや何か後ろ暗いことでも?」
「ばかなこと言ってないで支度して頂戴」
突き放されて水屋に入る。
雨音。
ついに落ちてきたか。
用意が終ったころ、生徒さんが来られた。
「こんにちは、降って来ちゃったわねえ」
「ええ、もう入梅ですね」
「辛気で嫌よね」
先生が入ってきた。
「先生、こんにちは。今日もよろしくお願いします」
「はいこんにちは」
生徒さんが支度を整え、先生も座られた。
お稽古開始。
湿度で空気が重い中、生徒さんが入れ替わり立ち代りのお稽古。
先生が少し倦んだ気配を見せた。
もう一人だから我慢して欲しいなあ。
目が合うと気配を払拭された。
ん、そうじゃないとね。
生徒さんが他のお稽古を終えて送り出す。
茶室に戻ると先生がもたれてきた。
「疲れましたか?」
「うん、ちょっとね。でもあなたのお稽古はするから」
「しんどいなら土曜でも構いませんが」
「良いわ、出来るときにしないと。だから用意してらっしゃい」
「はい」
ささっと用意をしてお稽古をつけてもらう。
「んん、まぁいいでしょ」
納得はされてない。
だがもう一度見てもらうのは今日は無理そうだ。
「そろそろ片付けるわよ」
そう仰ったがてきぱきとはされなくて。
ふと思い立ち額と額をあわせてみた。
「なぁに?」
「ん、熱はないですね」
ただの疲れか。
「まぁ、でも俺やりますからそこで座っててください」
「そう?悪いわね」
あれやこれや片付けていると先生が転寝しだした。
気を許してる感じが可愛くてたまらん。
すべて片付け終えて茶室と水屋の電気を消す。
そっと先生を抱えるようにする。
あ、いかん、ここでしたくなってきた。
だめだめ、と自分をいさめて抱え上げて居間へ。
座布団枕にタオルケットを掛けてあげておく。
「ん? 寝てるのかい?」
「何か疲れるようなこと朝ありました?」
「ああ、ちょっと町内会のことで色々あったからね」
台所を手伝って律君が帰ってきたので食事を取る。
先生が寝てるからごはんは八重子先生がよそってくれる。
「あんたのはレモンステーキとかいうのにしたからね」
雑誌で読んだらしい。
横では孝弘さんがおかわりをしている。
先生の分あるのかなあ。
なければまた味噌漬けにしちゃう?
「ちゃんと取ってあるよ」
八重子先生が察して教えてくれた。
ならいいか。
食事を終えて後片付け。
まだ先生は寝てる。
八重子先生は半襟をつけ始めた。
雨の日の手仕事、俺は入り込めない。そろそろ帰るか。
八重子先生にご挨拶して雨の中帰った。
雨の夜は好きじゃない。
おやすみなさい。

拍手[0回]

h28

月曜は仕事をしたくない。
そんな思いで仕事を何とかこなしたが天気もよくなく何か滅入る。
風が強い。
今日は寝る日にしてしまおうか。
先生と会えないだけでテンションが下がる。
とメールもできないわけで。
あきらめてどさりとベッドに倒れこみ、寝た。
夕方。
メールの音で目が覚める。
先生から夕飯の写真。
おいしそうだ。腹が減った。
何か食べに行くか。
のっそりと起きたところに来客。
「あれ、ハル? どうした?」
「彼氏と別れた。泊めて」
「ついにか。家帰らんの?」
「家まで来そうだから、アイツ」
「はいはい。良いけど俺今からメシ食いに行くよ」
「一緒に行く。おごって」
「テメ、財布は?」
「見ての通りなんも持ってない」
「しょうがねえ奴だな。ちっと待ってろ」
着替えて飯を食いに出る。
蕎麦が食いたいというから蕎麦屋だ。
ざるを頼み酒とざるでやる。
ハルは天そば食っている。人の金で容赦のない奴だな。
食い終わって帰って俺はすぐ寝る用意。
和室に客布団を敷いた。
携帯がなる。先生からだ。
『あ、よかった、まだ起きてたのね。こんばんは。
 あのね、明日羊羹を二棹買ってきて欲しいの。それで…』
「ねー久ービールないのー?」
「ないからコンビニで買って来い! そこに金あるだろ」
「えー若い女一人で行けって言うのー」
「イヤならとっとと寝ろ」
ぶつくさとハルは言いながら出て行ったようだ。
『……山沢さん』
「はい?」
『女の子、家に呼んでるなんて良い度胸ねえ』
あ、やべえ、浮気と間違われてる。
「違いますから」
『あら、若い子が良いなら良いのよ。こんなおばさんより若い子の方が良いわよね』
「若い若くない関係ありませんよ。あなただけです」
『知らない』
あ、電話切れた。
何度かリダイヤルしても駄目。
仕方ないからメール。
ハルが家にいる理由を簡単に書き、羊羹はどうして欲しいのか問う。
一時間ほど返事がなくて、今ではハルがビール片手にテレビを見ている。
返事がないなら明日お稽古早めに行かなきゃなぁ。
「おい、先に寝るから。明日適当な時間になったら帰れよ。俺は昼から用事あるから」
「えー暫く泊めてよ~ねー」
「却下。留守宅に人がいるとか無理」
「ちぇーじゃ鍵どうしたら良いのー?」
「掛けて玄関のオーナメントの中に隠しとけ」
「わかったー」
ベッドに潜り込んで更に30分ほどしたとき、やっと返事が来た。
明日ちゃんと聞くから、と。
羊羹は贈り物用として熨斗つけて一本ずつ、表書きはなくて良いということだ。
了解してほっとして寝た。
翌日仕事を早々に終え、帰宅。
鍵はちゃんとオーナメントの中に隠しこんであった。
急いで身支度して先生のお宅へ。
だが話はあとで夕飯が終ってから、と打ち切られてしまった。
怖いな。
とりあえず羊羹を冷蔵庫に、と言うと今持って行くからと取り上げられた。
うん、やっぱり怒ってる。
水屋の支度に入るにも時間が有るので八重子先生とお話。
友人を泊めた際に丁度先生から電話があって、と。
八重子先生はそれで色々納得の様子。
先生の態度とか。
うまく納得させれたら良いね、と言うことで水屋の支度を。
暫くして先生が帰ってきて、生徒さんが来た。
お稽古開始だ。
お稽古中は怒ってることそぶりにも出されず、凄い。
俺へのお稽古も通常通りの厳しさで、忘れてるのかな、とも思ったが…。
夕飯を終えた後、八重子先生に断ってあちらの部屋に連れて行かれてしまった。
入って鍵をかける。
「さ、そこに座りなさい」
説教モードか?
「いてっ」
少しどうしようかと迷っていたらぎゅっと乳をつかまれた。
「抱いたの? 抱かれたの?」
なんちゅうこと聞くんだ。
「ちゃんと別の布団ですってば」
「そんなこと聞いてないわ。ちゃんと答えて」
「どっちもありませんて。誰彼なしにやる奴だと思ってるんですか?」
「そうじゃないけど…仲良さそうだったから…」
「腐れ縁ってやつです。あなたにもいるでしょ古馴染みの困った奴の一人や二人」
「いるけど…」
「だったら信じて。たかが一日会えない間に浮気なんてしませんよ」
おとがいに手を掛けてキスをする。
「信じさせて頂戴…」
「ベッド、いきましょうか」
脱がせて軽めに抱いた。
「愛してるよ、絹」
「私もよ…」
少し落ち着いた頃着替えて先生の家に戻る。
「あらおかえり。話、ついたの?」
「うん。あ、ドラマ始まっちゃってるわね」
何か見たかった番組があったようだ。
先生方はドラマに集中しててCMの間に少しおしゃべりをして。
番組が終る頃には眠くなったようだ。
「あふ…」
「そろそろ寝ようかね」
「はい、じゃ戸締りと火の元を確かめてきますね」
玄関やお勝手、火の元を確認して戻る。
八重子先生はもう部屋に寝に行ったようだ。
先生は大あくび。
「あらやだ、見ちゃった?」
ふふっと笑って部屋に移動。
「あ、お母さん。明日近藤と遊びに行くから」
「何時から?」
「朝の七時」
「朝御飯どうするの」
「いらない。近藤と食べるから」
「はいはい」
「たまには連れていらっしゃいよ」
「うん。じゃおやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
部屋に入って着替え、布団を敷いて寝る用意。
布団に入れば先生が俺の浴衣を乱して胸を触ってる。
結構触るの好きだよなぁ。
というか胸を触るのがすきなのかも?
腹はあまり触らないし。
先生の手も水が温かくなってきて手荒れがマシになってるようだ。
そうやって俺に甘えてるのは可愛くていとしくなる。
そのうち、寝息に変わってきた。
俺も寝よう。
翌朝食事の支度をしてると律君が行ってくる、と台所に顔を出した。
「行ってらっしゃい」
「お早うお帰り」
「気をつけるんだよ」
三者三様に送り出して配膳。
孝弘さんも出てきた。
朝ご飯を食べて、今日は平日だからお洗濯やお掃除のお手伝い。
「山沢さんちょっと、お買物行ってきて」
メモを持たされて買物へ。
重い洗剤類とトイレットペーパね。
買い揃えて帰る。
「トイレの洗剤頂戴」
渡すとすぐトイレの掃除に取り掛かられた。
「俺、ふろ洗ってますから」
「うん」
風呂を洗い終え、ひょいと出たら律君と近藤君がいた。
「うわぁっ」
ありゃ。
律君が慌てて近藤君を後ろ向かせて連れてった。
「どうしたの?」
ぱたぱたと先生が駆けてきた
「や、気づかなくて」
長襦袢を着て長着を手に。
先生に叱られた。
なんでだ。
長着も着て居間に戻ると八重子先生がお昼できた、と言うので台所へ取りに行く。
配膳を済ませて孝弘さんを呼びに。
先生は律君たちを。
食卓についてお昼をいただく。うまい。
近藤君がすぐ目をそらすんだよな。
仕方ないか。
「お昼の後は草むしりね」
先生にそういわれて台所を片付けた後麦わらを借りて庭に下りる。
小鳥の声、木のざわめき。
そんなものを聞きつつ。
お、でっかいみみず発見。八重子先生のガーデニングエリアに放つかな。
草むしりをしていると時間がわからない。
あっという間に日が暮れて美味しそうなにおいがする。
先生がお夕飯そろそろだからと呼びに来た。
手袋を脱いで手を洗い、ついでに顔を漱いで居間へ。
すでに配膳が済んでいた。
座るとご飯を渡されていただきます。
筑前煮メインに俺にはしょうが焼きがついてきた。
草むしりを手伝ったご褒美、と言ったところか?
野菜もそれなりに食べさせられた。
満腹満腹。
先生が台所に片付けに立った。
八重子先生がお茶を入れてくださり団欒。
先生が洗い物を終えて戻ってきたとき、何かに蹴躓いて俺の上に転んだ。
「きゃっ」
「うぅ、いてて」
後頭部打った。
暫く呻いて先生も起き上がれずじたばたしてる。
「ただいまー。え?」
あ、司ちゃん…。
「えーと、その。おばさん?」
「あら? 司ちゃん? あらあらあら」
「痛い、先生、そこっ」
手を突いたところが悪い。痛い。
「ご、ごめんなさい」
先生も慌ててる。
「ただいま。って何してんの?」
「あー、律君良いところに。悪いけどお母さん引っ張りあげて」
よいしょっと律君が先生を引き上げてくれてやっと起き上がれた。
変な風に乗っかかられて力が入らなかったんだよね。
「ああ吃驚した。あんたらご飯食べてきたの?」
「いやまだ。何かある?」
「んー、そうねえ。筑前煮まだ残ってるしお漬物とお野菜の煮たのとあるわよ」
「それでいいよ。おなかすいた」
「はいはい」
後頭部を擦り擦り、先生が出すものを食卓に並べる。
「さっきなんであんなことなってたの?」
司ちゃんも聞きたそうだ。
「それ、そこの。先生が躓いてね」
畳縁から出ている小さい何かを指差す。
「あ、ほんとだ」
「見えない…なにかあるの?」
「うん、なんだろう」
律君たちが食べてるのを見つつ、先生にそろそろ、と挨拶をする。
「明日もお仕事だものねえ。お稽古は来れないんでしょ?」
「はい、残念ながら。土曜日にはきますから」
「わかったわ、気をつけて帰ってね」
「ええ、有難うございます」
玄関まで送られて、人目のないのを確認して唇を合わせてくださる。
少し頬を染めてて可愛い。
「連れ帰りたくなるな」
「駄目よ…また、ね」
「わかってます。じゃあ」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
別れて帰宅し、風呂に入ってすぐに寝る。
明日は営業をしなければならない。
さて起床して出勤だ。
なんだか面白くないが仕事だから仕方ない。
ざっとこなせば昼前だ。
飯を食って営業周り。
道順を組む。
あれ?あ、いいこと考えた。
ここを最後にしたら先生の顔見るくらいできるかもしれない。
よし、と気合一発入れて営業する。
最後のホテルを出るとき、テイクアウトコーナーで売っているデザートを
持ち帰らせてもらうことにした。
たまにはケーキも良いじゃないか。
その足で先生のお宅へ。
「こんばんは。お邪魔します」
「あらぁ?いらっしゃい、どうしたの?」
「これ、ケーキ。近くまで来ましたので持ってきました。
「あらあらあら。おいしそう。冷蔵庫入れておいてくれる?」
台所に行って八重子先生に挨拶して冷蔵庫に入れる。
「あんた時間あるならお稽古して行ったら?」
「いいんですか?」
着替えといでと言われ、着替えて茶室へはいる。
「あら。お客様に入ってくれる?」
「はい」
こんにちは、と言われて挨拶を返しそのまま次客へ。
そのままお稽古は進み、生徒さんは帰られて俺の番だ。
台子は出てないので通常の風炉を。
流石に怒られはしない。
手直しされるだけだ。
お稽古が終わり水屋を片付けて、お夕飯はいただかずに帰った。
帰宅後先生からケーキ美味しいとのメール。可愛い。
土曜日に来るのを待ってるとか書いてある。
何か嬉しい。
明日の仕事も頑張ろう、そういう気になれた。
飯を食って寝る。
適度な疲れ。
よく寝れて朝。起きた。よし、頑張ろう。
ちょっとひんやりしてるなあ。
仕事をしているうちに段々温かくなって、上着を脱いで、脱いでしている。
たまに忘れて帰ってしまうのが難儀だ。
そういうと先生が仕事着にすべて名前を書いてくれた。
だから最近は忘れてもちゃんと次の日に回収できるようになって助かっている。
帰り道、行く気になってジムへよった。
寒いと行く気がしなかったのは汗が引いた後風邪を引く気がしてたからだ。
温かくなったからには風呂がてら行かないのは勿体無い。
ジムで汗をかいて風呂で洗い流し帰宅する。
程よい疲労感。
温かい日差しと眠気。
おやすみなさい。
ふと目が覚めれば暗くなっていて、腹も減る。
メシ。
何食べよう。
面倒くさいな。
とりあえず着替える。買いに行くにも食べに出るにも着替えねば始まらない。
財布と携帯を持ってぶらりと家を出る。
あ。
パスタにしよう。
どこだったかソラマメのパスタをしていたはずた。どこだった?
暫く考え込んで思い出し、店へ行って頼んだ。
少し女性には多いそれを食べて、更に一品を頼む。
先生となら、先生が食べれない分を食べてしまえば良いんだが。
食事を終えてコンビニで甘いものを買って帰る。
うちに帰ってからプリンを食べて、寝た。
翌朝、出勤。
さすがは土曜日忙しく。
途中先生からメールが来た。
"カツオ食べたいわ"
ああ、カツオね、はいはい。
1尾キープしてもらってお仕事お仕事。
終った。疲れた。
魚を持って帰宅する。
先に車に積み込んで、シャワー入って着替えたらお稽古場に移動だ。
ついて渡すと八重子先生がちょっと悩んでいる。
「どうしました?」
「冷蔵庫に入らないからどうしようかねぇ」
「あー。氷いれてきてるんで土間にでも」
そう? といって土間に置いてもらい、手を洗って水屋を用意する。
先生も茶室に戻ってきた。
「あのね、今からの生徒さん、お休みになっちゃったのよ。
 だからあんたの先にみてあげるわ」
「ありゃ。そうですか。じゃ用意します」
手早く用意してお稽古をつけていただく。
終ったころ、次の生徒さんがいらっしゃった。
ナイスタイミングである。
さくさくとお稽古は進んで生徒さんが帰られた。
「さてじゃ仕舞いますか」
「そうね」
「絹ー、あんた片付けて山沢さん台所来て頂戴よ」
八重子先生が茶室に顔を出した。
「どうして?」
「カツオ。私がするより山沢さんのほうが良いだろ」
「あらそうねえ。じゃこっちはしとくわ」
とりあえず汚れて良い服に着替えてからカツオを下ろした。
四分一は炭を貰って叩きに。
後は八重子先生が好きにすれば良いということであらとかを片付けた。
なまり節を作るらしい。
あとヅケとおろし和えにするらしい。
へー。
いろいろにして食うもんだなぁ。
手を洗って服を着替え、食卓を片付けてお箸や取り皿を出す。
しばらくして先生も戻ってきて配膳を始めた。
あ、炒め物の匂い。
と言うことは俺の分かな。
律君が帰ってきて、孝弘さんを呼びに行って。
しばらくしてタタキとかヅケとかお刺身とかになって出てきた。
俺の分には肉野菜炒め。
ごはんをよそってもらっていただきます。
炒め物は生姜の風味がする。
おいしいなぁとにんまり。
「カツオ、美味しいわね」
「うん。山沢さんが持ってきたの?」
「そ、お母さんが食べたいって仰ったからね、良いのを持ってきたんだ」
「1尾丸ごと持ってきてくれたのよ」
「高いんじゃないの?」
「仲卸だからね、そうでもないんだよ」
「後でお支払いするから教えて頂戴ね」
「いいですよ、そんなもん」
「だめよ、私が食べたくて頼んだんだから」
「いやいやいや」
「貰っときなさいよ。いいから」
「そうですか?」
「私から持ってきてっていったのは払わせて頂戴」
「そうおっしゃるなら」
ご飯を食べて後片付けしてまったり。
お風呂、と先生方が入って。
なんだかんだ眠くなってきた。
そろそろ、と先生と布団に入る。
何もしてないうちから腕を噛まれた。
「ん? どうしたんですか?」
「なんとなく…噛みたくなっちゃったのよ」
「じゃなんとなく、ここ噛んじゃおうかなあ」
さわっと股間を撫でる。
びくっとしてか細くダメ、というのが可愛い。
「眠そうだね」
「うん…寝て良い?」
「そういうときもあるよね、いいよ。おやすみ」
「ありがと」
キスだけして寝かせた。
ちょっと物足りないけどしょうがない。
おやすみなさい。
翌朝、すっきりとした顔で先生が先に起きている。
俺が起きたの見計らって布団から出て身づくろいしてて、綺麗で良い。
見とれてるとあんたも早く支度しなさいって言われた。
もうちょっとーと甘えてみたら布団引っぺがされた。
そんなとこでオカン発揮しないで欲しい…。
しょうがなく起きてご飯の用意をして食べて。
お洗濯のお手伝いをしてパタパタしてるとあっという間に昼の支度をせねばならない。
お昼の支度をして食べる。
さて午後からはどうしようかな。
あ、そうだ。
「先生、来週、日曜から旅行しません?」
「旅行?」
「水曜までダメですか、先生お借りしちゃ」
八重子先生に振ると、別に良いよと仰る。
「どうですか?」
「お母さんが良いなら良いけど、律にはどういうの?」
「普通に旅行行くで良いじゃないですか」
「そう?」
「堂々といえば問題ないでしょ」
「そうかしら」
「まだ宿とってないから、取れたら本決まりで良いですか?」
「あなた会社は?」
「4半期に3日休んで良いことになってまして既に休むの言ってあります」
「あら」
タブレットを引き寄せて目当ての宿に連絡する。
その後喋っていると一時間ほどでメールが帰ってきた。
一階が取れるようだ。
茶室付の離れとどっちでも取れるとのこと。
先生に提示したところ、茶室はなくて良いということになり、
普通の1階の部屋を取った。
食事についての連絡をしっかり目にしておく。
来週は先生と旅行か、楽しみだ。
「ああ来週しないなら今からしようかね」
「へっ?」
「お稽古。昨日一回しかしてないだろ」
「あ、はい。いいんですか」
「じゃ電熱器の方でする?」
「炭、熾すの面倒だからねぇ」
そんなこんなで水屋の用意をしてお稽古5回。
夕方になってしまった。
先生と夕飯のお買物に出て沢山買い込む。
「あなた明日来るの?」
「これそうなら」
「できるだけ来なさいね」
「はい」
お夕飯の支度をして食べる。
和気藹々とした食卓はにぎやかで良い。
お片付けをしたら帰る時間だ。
「帰りたくないなぁ」
「明日お仕事でしょ、早く帰って寝なさい」
「ここから通えたら良いのに」
「はいはい、無理なこと言わないの。ほら」
急き立てられて帰る。
疲れて帰って脱いでベッドに倒れこむ。
あっという間に寝てしまった。
翌朝出勤し仕事をする。
暇だ。昼になるに従い暑くなってきた。
ぽいぽいと脱ぎ捨てつつ仕事をして帰宅。
あ、服忘れてきた。まぁ良いか。
先生からメール。
暇ならお稽古来なさい、と。
どうしようかな…。
行くか。
よし行こう。
身支度して電車に乗り先生のお宅へ。
「こんにちはー」
「いらっしゃい、用意して入ってらっしゃい」
「はい」
鞄を置いてお稽古に混ぜてもらう。
上級の方々とのお稽古は緊迫感がある。
そして叱られるのは私だけだ。
内弟子には厳しい。と言うことにしてある。
お稽古がすんで、お夕飯のお手伝いをして食べた。
先生と二人台所で片付け。
帰りたくないなぁ。
「なぁに? また言ってるの? 明日お仕事でしょ」
「ですけど帰るのが面倒くさくなっちゃいました」
「お仕事ちゃんと行かなきゃだめよ」
少し考えて。
あちらの家に行かないか、と言ってみた。
「今、してあなたが寝る頃にこの家を出れば。仕事間に合うからどうかな」
「ダメよ。帰んなさい。寝不足で仕事なんてダメ」
くい、と引き寄せてキスする。
先生はぎゅっと俺の手を握って…唇が離れると頬を染めている。
「可愛いな。あちらへ行かないならここで続き、しちゃうよ?」
「だめ、ね、良い子だから今日は帰って寝て頂戴」
首筋に手を這わせてくすぐる。
びくっとしてて本当に可愛くて。
「だめ?」
「そう、だめよ…お願い」
「しょうがないな…そのかわり」
先生の身八つから手を入れて乳首にリングをつけた。
「明日、朝までつけてて」
真っ赤になって、崩れた部分を整えてる。連れ帰りたい。可愛い。やばい。
「去年、外したままそれっきりだったでしょ?
 今度は18金にしてみました。デザインはお風呂のときにでも見てください」
こくり、と頷いて。
このままでは居間に戻れないからくだらない話をする。
先生が普通に話せるまで。
本当ならそのまま居間に連れて行って恥ずかしがってるのを楽しみたいけどね。
「さて。諦めて帰りますね。また明日」
「ん…明日、ね」
居間で八重子先生に挨拶して玄関へ。
「おやすみなさい」
「おやすみ、気をつけて帰ってね」
「はい。じゃ…」
暫く見送ってくれた。
電車に揺られて帰宅し着替えてすぐに眠りに落ちた。
翌日暇な仕事はとっとと終らせ先生のお宅へ。
先生は逢うなり俺を見て頬を染めて手を握ってきたがどうしたのだろう。
「あの…」
「どうしました?」
なにかもじもじしている。
クゥと先生のお腹がなった。
「ほら、早く食べてきてくださいよ。水屋支度してきますから」
「あ、うん…」
頬を染めたまま、戻っていった。
いいけどさ、八重子先生だけだろうし。
用意をして生徒さんが来られてしばらくして先生が定刻で茶室に。
うん、いつもの先生の雰囲気に戻ってる。
切り替えが早くて凄いよな。
そのままお稽古は進み俺のお稽古へ。
いつものように厳しくて、でも目が合うと一瞬そらしてるような。気のせいか。
お稽古が終って水屋を片付けていると先生がご飯終ったらあちらの家に、と言う。
なんだろう。
とりあえずご飯を食べて、ちゃんと律君たちがいるときは先生は平常で。
よくわからないまま先生とあちらの部屋に入った。
鍵をかけたらすぐ先生がぺたりと俺にくっつく。
「どうしたの?」
「あなた、昨日あんなのつけるから…」
あ。忘れてた。
「外したんでしょ?」
「外したけど…その…」
「欲情しちゃった?」
「…ばか、恥ずかしいわ」
「我慢できなくなっちゃったの? 可愛いな。抱いてあげる」
凄く顔が赤くて凄く恥ずかしがってて大変に可愛らしい。
たまらんなぁ。
着物を脱ぐのも焦っちゃって、と言う様子。
「そのまま抱いてあげようか? とりあえず一回したらゆっくり脱げば良いんだから」
「汗が困るわよ…」
じゃ、と手伝って脱がせた。
珍しくも脱ぎ散らかしたまま先生は床で抱かれた。
しばらくして息が荒いのが収まって、気分も落ち着いたようだ。
「恥ずかしい…」
「ん? 俺は恥ずかしがってるあなたが好きだから。良いけど」
「ひどいわ」
くすくす笑って柔肌を撫でる。
気持ち良い。
「で、どうします? 一旦戻りますか? それとも10時くらいまでここにいますか」
「そう、ね。あなた我慢できる?」
「できますよ。もう一度くらい、家でもさせてくれるんならね」
「だったら帰るわ。お風呂も入らなきゃいけないし」
「あぁ。じゃその前に」
先生の汚れたそこを舐める。
「あっ、もうっんんっだめよ、舐めないで…」
そういいつつも押し付けてくるのが可愛い。
でもつんつんとお尻の穴を舌先でつつくと身体が逃げる。
黒ずんでなくて綺麗でやっぱり体質って重要だ。
ずっと我慢していたからか、軽く舐めてるだけで逝ってしまった様だ。
ちょっと怒ってる。
にこにこと見てたらなんなの?と聞かれた。
「ん? いや怒ってるあなたも綺麗だと思って」
「もうっ」
先生は息をついて着物を着る。
俺はその間に手と口を漱ぐ。
そして帰宅。
先生はそのままお風呂へ。
俺は八重子先生とおしゃべり。
先生がお風呂から上がってきたので火の始末や戸締りを確かめた。
八重子先生に挨拶して先生と寝室へ。
布団を敷いて先生が髪を乾かすのを待つ。
ふぅ、とドライヤーを置いて落ちた髪を拾い上げてる。
眉根に皺。
「どうしたんです?」
「ん、白髪。やんなっちゃうわ」
「先生は少ないような気がしますが」
「そう?」
「俺はほら、ここにたくさん」
「あらほんと、見えなかったのに結構あるのねえ」
するん、と先生の股間に手を這わす。
「ここは、もうないでしょ?」
「あ…」
見つけ次第抜いてるしね。
「ね、片付けるまで待って…先、布団に入っててくれる?」
「うん」
手を離して布団に入る。
横になって先生が細々としてるのを見てるのも楽しい。
そろりと布団に入ってきた。
いつになっても照れくさそうに入ってくるのが可愛らしく。
たまにそのまま寝ちゃうけれど。
キスをして、ゆっくりと丁寧に抱く。
さっきは先生が急いてたからざっくりとしか出来なかった。
滑らかな肌も心地よく、背中に腰にと手を這わす。
白い肌が徐々にピンクに染まる。
幸せそうな顔を見ていると嬉しくもあり、いじめたくもあり。
まあでもここで声を立てられるとそれはそれで困るから。
幸せな顔だけ見ているとしましょう。
ゆったりと抱いて眠る。
寝息も心地良い。
翌朝、目が覚める。先生は気持ちよさげな寝息で。
布団から出たくないなー。
とは思うものの、律君も学校だから朝飯作らないとね。
布団に先生を残して台所に向かう。
ちょっとひんやりした朝だ。
ご飯を炊いてお味噌汁と焼き魚。酢の物と納豆。
ととのった頃先生が起きてきて食卓を片付けている。
八重子先生も起きてきた。
今日は皆お寝坊さんか。
「律ー、いい加減にしないと遅れるわよー」
そんな声が聞こえてる。
朝が涼しいと布団から出たくなくなるよね。
お母さんをしている先生も好きだな、微笑ましい。
皆で食卓についていただきます。
ご飯を食べて律君を送り出したらお洗濯。
掃除、掃除。
先生に指示を貰ったり。
平穏な日常も先生となら楽しい。
お買物へ行ってお昼と晩のおかずを考えるのも先生と共に。
幸せを満喫。
「明日どうするの? くるの?」
「うーんどこのホテルにしようかと」
先生に近隣のホテル情報を教えてもらう。
生徒さんからの口コミらしい。
「うちの近くは一緒に行くけど…この辺は行ってませんね、たまには行きたいなぁ」
「中々ねえ。家族いるとね」
「作っといてよそ食べに行くのも面倒になりますよね」
「そうなのよね、もう良いかってなっちゃう」
「八重子先生に作ってもらって俺らは出るというのも何かちょっと」
「そうよねえ。まぁ機会が有れば、にしましょ」
「はい」
帰宅してお昼を作って食べて、また掃除。
草むしりに庭に下りる。
八重子先生に抜いてはいけない雑草に見えて雑草じゃない奴を教えてもらって。
黙々とむしってると先生が下りてきて麦わらを頭に載せてくれた。
「涼しいけど…日に焼けるわよ」
「ありがとう。で、悪いんですが背中かいてくれません?」
「ここ?」
「あー、気持ち良い。この手ではちょっとかけなくて」
くすくす笑って軽めに掻いてくれて。
ぽんぽんと頭をなでて掃除に戻って行かれた。
さて再開。
夕飯の匂いがするまで頑張って手袋を脱いで手を洗い顔を漱ぐ。
「お疲れ様、ご飯できたわよ」
おいしくて沢山頂いて満腹。
「じゃあ。また明日、来れたら来ます」
と別れて帰宅した。
すぐに風呂に入って寝る。
起きて出勤。
暇だ。
今日は雨の予報と言うこともあり、いつもよりも更に暇だ。
あくびも出る。
今日はどこを回ろうかなあ。
いくつかプランを考えて事務方に見積を作ってもらった。
仕事が終って着替えてホテル回りをする。
いくつか回って交渉し、最後に先生に教えてもらったホテル。
なるほど良い雰囲気でお勧めされる理由がわかる。
遅めのランチなのか早めの夕食なのかお客さんもおいしそうに食べている。
交渉の反応は悪くない。
営業を終えてケーキを買う。
先生に差し入れしよう♪
そのまま車を走らせ先生のお宅へ。
「あぁ来た来た、入って」
「はい、あ。着替え」
「なくてもいいわ、お客様して頂戴」
はいはい。
正客に入り、お茶をいただいたり問答をしたり。
生徒さんのお点前が終わって俺のお稽古。
お夕飯も頂いて先生たちとケーキを食べる。
おいしい。
先生も幸せそうな顔をしている。
甘いものは別腹らしい。
暫く団欒を楽しんで帰宅する。
トイレに入って気がつく。そうか今日からか。
夜更かしせずさっさと寝よう。
おやすみなさい。
翌朝、もっと寝てたくてグダグダしつつも出勤する。
暇なりに荷物は動き昼前に仕事が終った。
眠い。
早く帰って寝よう。
帰宅すると先生が来て飯を作ってくれてた。
食い気より眠気なんだが…。
作ってくれたんだからと食うことにした。
うまい。幸せ。
「あら眠そうねぇ、寝てくる?」
「うん。あなたもおいで。洗い物後でいいから」
くすっと先生が笑って台所に食器をつけ置きしている。
暫くして着物を脱ぎ寝巻を着て布団に入ってきた。
懐に抱きこんで寝る。
良い匂いだ。
3時間ほどだろうか、ぐっすりと寝てふと目がさめる。
先生はまだ寝ているが先生も俺も汗をかいていた。
流石に昼日中、布団をかぶって抱き締めて寝てたら暑いよな。
そろりと布団から出てまずはトイレに。
それから先生が蹴っ飛ばしかけてる布団をはいで肌掛け布団に変更。
潜り込んだ。
丁度良い温かさだ。
もう眠気はないけれど先生を抱いてごろごろしてるのは幸せで良い。
少しして先生も起きた。
軽くキスする。
俺の腹がなった。
「あらもうおなかすいたの?」
「そのようで…」
くすくす笑ってる。
「冷蔵庫、何も入ってなかったわよ。何か買ってくる?」
「ん、コンビニ行きます。なんかいりますか?」
「あらどうせならお夕飯の買物もしましょ」
布団から出て先生は着替えだした。
「泊まっては…」
「いかないわよ。朝忙しくなるじゃない」
「ですよね。ってかどうしたの、今日は。来る予定なかったんじゃ」
「朝ね、お友達と会ってたのよ。大森に住んでる人でね。
 ランチ一緒にとって夕方まで遊ぶつもりだったんだけど…急に用事が入ったみたい」
「ああ、ついでですか」
「だって大森まで出たんだもの。そのまま帰るよりお昼作ってあげたくなったの」
一瞬むっとしたのを察知されたようだ。
「おいしかったよ。嬉しかった」
後ろから抱き締めてうなじにキス。
「だめよ、着替えてるのに。おなかすいてるんでしょ」
邪魔しないで、と手を外されて着替えるのを眺める。
時折先生は強い。
着替え終わってお買物へ出る。
先に喫茶店に寄って先生はレモンスカッシュ、俺はパンケーキとコーヒー。
腹の虫が泣き止んで、それからぶらぶらとお買物だ。
先生に任せてたらおいしいものが食べれる。
言われるがままに買い揃え帰宅するとすぐ割烹着を着て台所へ。
美味しいご飯を作ってもらって食べる。
食べてすぐ。
「じゃ帰るわ」
「え、ちょっと」
「明日も会えるんだから良いでしょ」
「飯つくりに来ただけですか、マジで」
「そうよ」
「昼にしとけばよかった…」
うふふ、と笑って頭をなでられた。
「明日待ってるわね」
「はーい、しょうがないなぁ。駅まで送ります」
「ありがと」
先生を送って、帰宅。
寂しさは寝ることでごまかすしかないなぁ。
おやすみなさい。
朝、気だるいが出勤して仕事。
少し忙しかった。
旅行の用意をした鞄を持って先生のお宅へ到着。
食卓を囲む先生に挨拶した。
「先生、旅行の用意出来てます?」
「えっあっ! 明日からだったわね、忘れてた…お母さん、お稽古ちょっとお願い」
先生が八重子先生を拝んで、今日は八重子先生とお稽古ということに。
とりあえずはお稽古の用意をして生徒さんを迎え入れる。
二人目のお稽古が終ったころ先生が戻ってきた。
八重子先生と交代だ。
生徒の皆さんが帰られた後、俺のお稽古。
今日もかなり怒られて少しへこんだ。
水屋は先生に任せ、荷物を預かり俺の荷物と共に宅配に出す。
戻ると既に食卓にご飯が並んで先生と律君が喋っている。
「そうそう明日から山沢さんと旅行行くから。あんたお父さんのことよろしくね」
「ええっ? 聞いてないよ」
「忘れてたのよね」
「おばあちゃんは?」
「行かないよ」
「そうなんだ? じゃなくて聞いてたの?」
「聞いてたよ。お稽古の都合もあるからねぇ」
「ただいま。やぁ律君、こんばんは。お母さんいないとさびしい?」
「そういうわけじゃないけど」
「水曜になったらちゃんとお帰しするから安心して待ってたら良いよ」
「それでどこ行くの?」
「伊豆だよ。八重子先生、これ宿の電話番号です」
「はいはい」
「あ、そうだわ、ドライヤー…」
「私のでよければ入れてますよ」
「部屋にあるんじゃないの?」
「ブラシついてない奴はあるんだけどねー」
ご飯を終えて片付ける。
「ね、明日これどうかしら」
「うん、いいんじゃないかねえ」
明日着ていく着物の相談をしてるらしい。
「ねえ山沢さんはどれが良いと思う?」
「どれでもいいですよ」
むっとしてしまったようだ。
「だってどれも先生が着たら似合いそうですから」
あ、ほころんだ。可愛い。
「そろそろお暇しますね。明日お待ちしてます」
「はぁい、気をつけてね」
そして別れて帰宅だ。
手荷物だけ用意して後は明日の昼は先生が来るまでに三友居さんの弁当でも買うか。
明日が楽しみだなぁ。
翌朝、ゆっくり目に起きて一応手荷物品の確認もすませた。
携帯には荷物の到着を知らせるメールが来ている。
先生から家を出たとの連絡をもらったのは11時ごろ。
さてそれでは、と松屋銀座へ。
中の人と話していると予約キャンセルが出てそれをお勧めされた。
勿論そっちを選んで持ち帰る。
暫くして先生が来た。
「いらっしゃい。お昼どうします? 今食べるか電車で遅い目のお昼にするか」
「泊まるところのお夕飯何時かしら」
「6時半にお願いしてます。新幹線は1時半です」
「じゃ…電車で頂きましょ」
上から下まで眺めて。
「なあに?」
「綺麗だな、と思って」
ぽっと頬を染めて可愛らしい。
少しお茶を飲んだり先生が手荷物を確認したり。
「じゃ行きましょうか」
「そうね」
忘れ物なし、テレビも電気も切り忘れはなし、と。
東京駅までタクシーで行き、新幹線に乗る。
お弁当を広げると先生が凄くうれしそうな顔をした。
ふふん。
おいしい、おいしいと先生が食べていて、俺も幸せだ。
ごちそうさまをして暫くしたら乗換え。
残念ながら普通車しかあいてなかったけれど海側の座席。
旅情を誘う風景だ。
俺は何度か来ているけれど。
駅について先生はきょろきょろしてる。
こっちこっちと手を引いて階段を下り外に出たらちょうど宿の送迎バスが停車していた。
先生を乗せて俺も乗る。
他の客を待って10分ほどして出発。
ほんの5分ほどで宿に到着し、フロントでお茶を頂きチェックインした。
手荷物を仲居さんが持って部屋に案内される。
送った荷物は部屋に入れてくれてある。
先生を上座に据えて落ち着くと化粧品を選ばせてくれる。
選んで細々とした説明を先生が受け、仲居さんが部屋を出た。
「すごいわねぇ」
と先生があちこちうろうろしてる。
これが見たくてつれてきたようなものだ。
「お風呂、入りますか?」
「そうね」
「その風呂か、大浴場かどっちが良いです?」
「ん、先にお部屋の入ろうかしらね」
じゃあ、とハンガーを出して先生を脱がせる。
「自分で脱ぐわよ…」
照れてるのも可愛いなぁ。
シャワー室でさっとかかり湯をして先生が風呂に入った。
俺は持ってきた浴衣に着替えて縁側から風呂へ。
「湯加減どうです?」
「気持ち良いわぁ」
「それはよかった」
湯がきらきらと反射し、先生の肌に。
綺麗だなぁ。
「ねぇ先生、付き合いだした頃熱海に行きましたね」
「あぁそうねぇ随分前に思えるわ」
「俺に抱かれるのもまだ怖がってましたっけね」
「あの頃はねえ」
「今は怖くない?」
キスする。
「たまに怖いわ」
肩を舐める。
しょっぱっ!
「どうしたの?」
「お湯、海水だったの忘れてた」
「あらあら」
くすくす笑って、そろそろ出るから、と言う。
俺も中に入ろうかな。
ぱしゃりと湯船から出てシャワー室に入ってすすいでる。
暫くすると宿の浴衣を羽織って先生が縁側に出てきた。
「良いお天気ねぇ」
「ですねぇ、湯冷めもしなさそうな」
風に先生は身体を冷まされるのを待っているようだ。
色っぽいなぁ、湯上り。
そろそろ引き寄せたくなって動いたら先生が立ち上がった。
「あなたお茶いる?」
「あー…はい、いただきます。が、冷蔵庫に冷えた水ありますよ」
「…冷蔵庫どこにあるの?」
こっち、と玄関の方へ連れて行く。
シンク下は冷蔵庫だ。
中に入ってるものを見て先生が楽しそうな顔になる。
青汁豆乳を持ってお座布団の上へ行き飲み始めた。
それ飲まれたらキスしにくいなぁ。
「それお腹膨れません?」
「うん、ちょっと」
「散歩しましょうか。館内案内しますよ」
「そうしてもらおうかしらね」
先生も持ってきた浴衣に着替え、一緒にぶらぶらと。
ここの館内履きは草履で普段から履きなれてる二人には気楽だ。
先生の手を引いて大浴場や売店、ジムやボーリング場などを見せる。
「広いのねぇ」
「あっちの方には居酒屋と日帰り温泉がありますよ。あさって昼に行きましょうね」
「明日は?」
「プールとエステ。エステは予約入れてありますからね」
「あら嬉しいわ。でもプール?」
「泳ぐんじゃなくてジャグジーみたいなやつですよ」
「水着持ってきてないわよ?」
「持ってきてありますよ、俺の見立てですけど。後で着てみてもらえます?
 サイズあってるか知りたいから」
「えっ」
赤くなってる可愛い。
ちょっとキスして頬を撫でる。
「あ、だめ、こんなところで」
「知らない人しかいませんよ、大丈夫」
「人前なんてはしたないわよ」
「可愛いなー」
「もうっ」
ゆっくり先生と歩いて売店へ。
BBクリームや口紅などを先生が見ている間に俺はサプリをいくつか。
「それ試してみますか? 色はピンク系でしょうかね」
店員さんが先生を見てこちらのお色のほうが、と勧めてくる。
手の甲に伸ばすと結構気に入ったようだ。
「じゃこれと口紅は?」
「あ、この色が良いかしら」
「うん、じゃこれとこれと…」
会計をして部屋に戻る。
先生が慌ててトイレに入った。
「我慢してたんですか? 売店にトイレあったんですよ」
「え、そうなの?」
トイレの中から返事が返ってきた。
出てきたので洗面所でさっきのBBクリームをオイルで取り、手を洗ってもらった。
大きい鏡を見ていると…先生の胸を揉みたくなってしまう。
いやもうすぐご飯だ、今はだめだ。
お座布団に座ってテレビを見つつ暫くおしゃべりして、ご飯の時間になった。
先生を連れてラウンジへ行く。
係りの人に案内されて今日は1階だ。
食前に梅酒を頼み先生と乾杯していただく。
「おいしいわねぇ」
「ですねぇ」
暫くして食事が運ばれてくる。
懐石のように一品ずつ。
「あら、あなたのメニューと私のメニュー違うのね」
「俺は魚苦手ですからね、その分あなたのお皿は良いものばかりお願いしてありますよ」
うふふ、と先生がうれしそうにしている。
次々と食べては出てくる料理。
「お腹膨れてきちゃったわ~でもおいしい」
「でしょ? どうしても多いなら助けますよ」
「そう?」
先生がちょっとずつ、残す分を平らげつつデザート。
「甘いものは」
「別腹ですよね」
うっふっふ、と先生がにこやかで見ていて本当に楽しくなる。
食後のコーヒーを頂いて部屋へ戻る。
「ああ、お腹一杯~」
「布団に寝転がっても良いですよ~」
「あらだめよーお化粧落としてないもの」
「じゃ、落としちゃいましょう」
「そうね」
「どうせだから脱いで…風呂で洗ったら良いでしょう」
「んー」
畳の上で俺の膝を枕に転がっちゃった。
そのままテレビを見ている。
番組が終って先生が脱ぎ始めた。
「あなたも一緒にはいる?」
「そうしましょう」
脱ぎ捨て先生と一緒にシャワー室へ。
先生が洗顔の間に背中を流し前も、と思ったがそれは自分ですると言われてしまった。
残念がりつつ自分の身体を洗って漱いで外の湯船へ。
う、あつい。
「早く入りなさいよ」
「ケツ押さんで下さいよ」
「お尻」
「ケツ」
ごつん、と拳骨が落ちてきた。
中ほどまで行って浸かる。
先生も俺の横に。
「あぁ良い星空ねえ」
「あ、ほんとですねえ」
ぱちゃぱちゃと湯を楽しんで先生に触れたり。
暑くなってはふちに腰掛けて涼んで、また冷えたら入って。
気持ち良いねえ。
先生が俺に覆いかぶさってキスして来た。
「そろそろ上がりましょ」
「はい」
シャワーで湯を流して宿の浴衣を羽織る。
先生は洗面台の前で化粧水をたっぷり目に使っている。
先ほど飯の間に化粧品が置かれていた。
俺も化粧水だけつけて布団に転がる。
「はー暑いー」
暫くごろごろして、むくっと起きて荷物の整理。
明日の水着を出して、後はいろんなものを仕舞ったり出したり。
ドライヤーはとりあえず先生の希望だし。
先生が戻ってきたので水着を渡した。
「着てください」
「いま?」
「そう、今」
「……え、こんなの無理よ」
「まぁそういわず」
渋々つけるものの凄く恥ずかしがる。
「綺麗だな」
「ビキニなんて恥ずかしいわ」
「ま、そうおっしゃると思って…持ってきてますよ、フィットネス水着」
着せてみると丁度良いサイズ。
「んー、でも俺はさっきのほうが良いなぁ」
「いやよ、こっちでいいわよ」
そういいつつ脱いで畳んでいる。
笑ってビキニは鞄に仕舞って先生を引き寄せる。
「なぁに?」
「そろそろ抱いて良い?」
「いいわよ」
掛け布団をのけて、先生を転がす。
キス。
「昨日してないから…」
「ん、わかってるわ」
まぁでも移動とかで疲れてるだろうからと軽めに抱いて。
案の定2回逝かせたら寝てしまった。
気持ちの良さそうな寝息がなんか良くて幸せな気分だ。
浴衣を着せてもう一つの布団に仕舞ってあちこち片付けて電気を消す。
布団は片方しか使ってないとしたのがバレバレで先生が困る。
ぐしゃぐしゃになったほうの布団に潜り込む。
大丈夫、先生の残り香がある。
おやすみなさい。

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