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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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翌朝起きて、初夢を問う。
私の夢には茄子と扇が、先生は茄子だったらしい。
いやに頬を染めて言うので詳細を伺えば茄子の使い方は俺と同じだったようだ。
あれだ、以前に変なビデオ見せたからだろう(笑)
さすがに賀茂なすではなかったようだが。
「じゃ…濡れてる?」
と股間の辺りに軽く手を持っていったら泣きそうな顔をされてしまった。
「酷いわ…人を淫乱みたいに…」
いんら…っておい。そこまでは言ってないぞ。
「淫乱って言うのは、そういう夢を見たからしたくなった、して欲しいと。
 皆が居るのなんか構わない、隣の部屋にいてもいいとかなら淫乱ですよね。
 あなたは違うでしょう? 濡れる濡れないは生理的反応ですよ」
となだめて、それは言わずに先に見た夢の方を人には言うといいでしょう、と。
先の夢は家族皆で温泉旅行とか。
「温泉は熱くはなかったですか?」
「ううん、いいお湯だったわよ?どうして?」
「熱い湯だと健康状態に注意のサインだったかな、と」
「あらそうなの?山沢さんと二人で露天風呂にも入った夢だったわよ」
何度か入ったからなあ。
「さて、そろそろ起きますか」
「そうねえ…もうちょっとだけ」
寒いから布団から出たくないだけなのか、俺の懐にいたいのかどっちだろう。
触って煽ると後で怒られるしなあ。
「ねぇ先生。夢の通りにしていいですか? うち来た時」
「怒るわよ」
やっぱりそうだよな。
「はいはい、わかってますよ」
「わかってるなら言わないの。恥ずかしいんだから」
「というか恥ずかしがってるのが可愛いんですよねー」
「馬鹿…」
「早くあなたを抱きたいな。こうやって懐に、というのもいいけれど」
あ、顔埋めちゃった。
相変わらず恥ずかしがり屋で可愛いなあ。
ピピッと5時半のアラームがなる。
あきらめて起きて身づくろいをすることに。
さっさと用意して台所へ。
雑煮の支度やお重への詰め直しなどをして食卓に出す。
律君たちも起きてきて雑煮と御節をつつく。
食事もひと段落して洗い物を済ませるとそろそろお年始に。
黒紋付に着替えて先生のお供をする。
うん、先生、綺麗だなぁ。
先生の先生に当たる方のお宅やご親戚、ご近所のお茶仲間さんのおうちなど。
すっかり昼になって帰途に。
先生のお宅に戻ると司ちゃんが来ていた。
おお、振袖姿だ、可愛い。というか綺麗かな。晶ちゃんは可愛い感じになるが。
司ちゃんにもお年賀を。
「あーおなかすいたわ~」
「ですねー、さっさと着替えましょう」
先生を脱がせ、小物を片付ける。
それから俺。
袴の紐を解いて、袴を取る。
それを先生が畳んでくれている間に帯を外す。
司ちゃんが変な顔で見ている。
先生が甲斐甲斐しいのに違和感を覚えているのか?
礼装用の長襦袢を脱いで普段の長襦袢に袖を通す。
脱いだものを先に片付けよう。
「早く着なさい、風邪引くわよ」
と先生に止められてウールの着物をざっくり着る。
先生にちょいと手直しをされて。
お昼ごはんお昼ご飯♪
「いらっしゃい、遅かったね」
「忘れ物しちゃったのよ~司だけ先に来させたんだけど。あけましておめでとう」
「あら斐姉さん、あけましておめでとう」
「明けましておめでとうございます、斐さん」
「山沢さんだったかしら?明けましておめでとうございます」
「兄さんたちは?」
「そろそろ来るんじゃないかしら」
「先食べちゃいましょうか?」
台所へ行ってお重とお雑煮の支度をお手伝い。
ああ腹減った。
玄関で声がする。皆そろったのかな。
食卓にお重とオードブルを出して、お雑煮も出して行く。
ぎょっとしてるのは洸さんだな。
「母さん、お客さんなんじゃないの?律にでもやらせたら?」
「あの子はいいんだよ」
「八重子先生、孝弘さんは?」
「部屋で食べるって、律に渡してくれるかい?」
「はーい、律君、これよろしく」
最後に自分の雑煮を用意して食卓につく。
環さんの横か、まぁいいけど。
私の雑煮に変な顔を。まぁこれは仕方ない。
味噌漬けはそれなりに人気である。
「やっぱり母さんの雑煮がうまいなぁ」
あぁ、そうだよなぁ。嫁さんのとやっぱりどこか違うんだろうな。
嫁実家と折衷したりするし。
私は先生の作る雑煮と自分の作る雑煮と両方いただいてるが。
先生はうちのはもう食べたくなさそうだったしな。
箱根駅伝を見つつ、先生の末っ子振りを楽しむ。
やっぱり末っ子で甘やかされてるんだなぁ。
本人たちにそのつもりはなくとも。
御節をいただいて暫く団欒の後、皆さん帰られた。
司ちゃんと晶ちゃん、律君が残って部屋で騒いでるようだ。
絹先生が書初めしようと言うので用意を手伝う。
山沢さんも、と言われて。さあ困った。下手なんだよなあ。
初春、と書いた。
先生に書道を習いなさい、と言われてしまった。
人に教えるようになれば字を書かねばならないことが増えるからと。
「通信教育とかじゃだめですかねえ…」
「いいんじゃない?うちにきたときにすればいいわよ」
どこか探すか。
「先生は段位とかお持ちじゃないんですか?」
「初段くらいなら持ってるわよ。学校でとったもの」
「先生に教えていただくことはだめですか?」
「無理よ」
ばっさり断られてしまった。
「だって律君も字が上手じゃないですか。先生が教えられたんでしょ?」
「教えてないわよ」
ええ~。
「だって身内になんて甘くなって勉強にならないもの」
「そうだねえ、絹にお茶を教えるのも結構大変だったねえ」
あ、八重子先生。
「私の教えてもらった頃は先生は物差片手に持ってねえ、怖かったものだよ」
「今それやると生徒さんいなくなりそうですよね…」
「山沢さんなら耐えれるんじゃない?ふふ」
「え、いや、ちょっと遠慮します」
「今年からはビシバシといこうかしら」
「これからは先生の資格取るんだからねえ、そうしたほうがいいかもね」
うひー、怖いなぁ。
八重子先生もさらっと書かれる。草書か。読めん。
和顔愛語、と書いたらしい。
もう一枚、半紙に寿と書いてみた。
「あら、これはそれなりにいいわね」
「永、と書いてごらんよ」
書いて見る。
「うーん、別段悪くはないねえ…なのになんでああも下手なのかねえ」
なんででしょうね。
あれやこれや書かされる。
払いがだめだとか、横棒がまっすぐじゃないとか。
一文字一文字はまだ見れるが二文字になるとバランスが悪いとか。
先生が上から握りこんで、払いを。あ、こういう感じなのか。
「力、入りすぎなのよ。いつもそうだけど力任せじゃだめよ?」
「ああ、力があるとそれに頼りがちになります。柔らかいものも強く握ってしまったり」
先生の手に更に左手で触れた。先生がビクッとする。
ゴンッと拳骨が頭に落ちた。
八重子先生だ。
痛くはないけどね。
交代して八重子先生が私の手を握りこんで草書でなにやら書かれる。
何か面白い感覚。
まったく読めないが。磨穿鉄硯と書いたそうだ。
意味は?と聞くと鉄の硯に穴が開くほどの努力とか。
つまり俺に努力しろと言うことですね、どれとは言わないが。
ひとしきり色々書いて片付ける。
先生の手に墨がついている。私も付いてた。
一緒に洗いに立った。
「先生、手、また荒れましたね」
「どうしても水仕事するから…山沢さんはざらついてるけど切れなくていいわね」
「仕事柄脂っ気があるんですよね。だから切れにくいんです」
そっと手を取りひび割れたところを舐める。
「だめよ。ほら、手を洗って」
「はい」
手を洗ってついてないか確かめる。先生もついてないか確かめて。
拭いて、先生の頬に手をやりキスした。
頭を撫でられてもう少しだから我慢するように言われ、居間に戻る。
お酒を飲みつつ、つまみを食べつつ更け行く。
夜ご飯に御節。そろそろ先生も飽きてきたようだ。
作るほうはそうなるよね。
俺は美味しくて手が止まらないけれど。
なますと叩きごぼうはすでになく、田作りもなくなってしまった。
今晩は空いたスペースにりゅうひを詰めた。
鯛りゅうひと平目りゅうひ。
律君や司ちゃん、晶ちゃんは初めて食べるようで恐る恐る食べている。
先生方は一度懐石で食べたことがあるそうだ。
なるほど出てきそうな気がする。
飲んで食べて。
先生と律君が同時にあくび。
気が緩んでるね、みんな。
司ちゃんも晶ちゃんもお泊り。同じ部屋でと言うことだ。
皆が部屋に引けたので戸締りや火の用心をして先生とゆったりと飲む。
足を崩して私にもたれかかってお正月番組を見ながら飲んでる。
可愛い。
もう膝の上に乗せたい。
見ている番組が終ったので部屋に連れ帰る。
布団に入れて抱きしめているとあっという間に先生は寝てしまって、参った。
沢山人が来ていてそれが兄姉であってもきっと気疲れするのだろう。
仕方なく先生の体臭を楽しむ。ちょっと酒臭い。
そのまま寝てしまった。
今日は朝までぐっすりと。俺もどうやら気疲れしていたようだ。
朝御飯の支度に台所へ。
「あら、お母さんどうしよう」
「どうしたの?」
「お餅が足りないわ…」
「…もしかして山沢さんの分足して頼むの忘れた?」
「あら?…そうかも」
「丸餅まだ余裕ありますが何個足らんのですか?」
「三つかしら。ある?」
「あります。誰を丸餅にします?」
「んー私とお母さんと山沢さんでいいでしょ、ねえお母さん」
「はいはい、それでいいよ」
今日で仕舞い、とばかりにお重に詰めて出す。
今晩は何か肉を食べるとか。
じゃ明日の昼はなに食べに行こうかな。
先生が食いたいものを食いにいこう。
律君達は食事後遊びに行ってしまった。
さて俺もそろそろお暇を。
「もう帰っちゃうの?」
「ええ、大掃除ちょっと残ってますし、洗濯とかしとかないといけませんし」
「あらぁしてあげるのに」
「いや、いいです。自分でやりますよ。それより明日。お待ちしてます」
「…ええ」
顔を赤らめていて可愛らしい。
では、と別れて帰宅。
自宅は寒々しく、そして散らかっている。
落ちてる洗濯物を拾って洗濯籠へ。
シーツも洗って掃除機をかけて台所を片付けて。
洗濯機からシーツを出して干して。
籠の洗濯物を洗濯機へ。乾燥までやってしまえ!
先生が触れなかった納戸を片付ける。
使う予定のものを前のほうへ。
使わないものは奥のほうへ。
アブノーマル系グッズは使わないから。
んー痕の残らない手縄だけは出しておこうか。可愛いファーのついてるやつ。
手錠とか革のカフスよりはされる側にとって負担は少ない…のかどうかは知らんが。
ニップルリングはいくつか18金とサージカルステンレスのものを入手した。
どれを気に入ってもらえるだろう。
夜、冷蔵庫をあさる。
うーん。何もないなあ。
買出しに行くか、とりあえず明日の朝の分も必要だ。
コンビニでいいか。
お弁当と朝のパンを買って戻る。
暫く先生の料理に慣れた口ではコンビニ弁当のまずさがわかる。
苦笑して久々の自宅、一人寝。
ちょっと寂しいが明日への期待。
おやすみなさい。
朝、起きて隣に先生がいないことを不思議に思う。
たった数日、一緒に寝ていたからってそう思うとは。
とりあえず腹減った!とばかりにパンを食べてコーヒー入れてゆったりと。
昼前かなぁ、先生来るの。
テレビを見ながらゆっくりと年賀状の仕分け。
うーむ、出してないところはなさそうだな。
友人から数枚。
9時半すぎ。
チャイムが鳴る。
出てみると先生だ、早っ。
「いらっしゃい。早かったですね」
「律も早くに遊びに行ったから…出てきちゃったわ」
鍵を閉めて、すぐキス。
「待ってた…こうできるのを」
先生が私の懐に入り込む。
抱き寄せてそのまま持ち上げて部屋まで連れて行く。
「あ、待って、まだ草履…」
「えぇ?脱いでなかった? も、いいです、ベッドの上で脱いで」
ベッドの上に降ろして草履を脱がせる。
玄関まで持って行って、手を洗って戻るとすでに長襦袢姿。
「先生、綺麗…というか色っぽい」
今すぐ襲いたい。
先生は頬を染めて長襦袢を脱いだ。
よし、もういいだろう。
肌襦袢のままベッドに押し倒す。
先生の息が荒い。
荒々しく胸をまさぐり股間に手をやった。
「…溢れてる。期待してたんですか?」
バチッ!と俺の頬がなった。
え、あ、ビンタ食らったのか。
「すいません、恥ずかしかったですね。ごめんなさい」
拗ねたような顔つき。
「ねえ、こっちむいて下さいよ」
「いや」
「キスしたい。ダメですか?」
そっとこっちを向いてもらえた。
ディープキスをしていると、トンと胸を押される。
離れると肌襦袢と湯文字を脱がれた。
私も着ていたものを脱ぎ捨てる。
勢いを出来るだけ抑えて首筋に、鎖骨に、デコルテ、乳房、乳首、お腹、へそ。
手を這わせ舌を這わせる。
先生の荒い息に釣り込まれる。
微かな喘ぎ声に興奮して荒々しくなりそうな手を頬の痛みを思い出して我慢をする。
先生の求めているのは荒々しくされることではない。
優しく愛されること、だ。頑張れ俺!
太腿をなでて、ふくらはぎを舐める。すべすべして白くて。
翳りの内が光っている。本当に溢れていて、淫靡で。
舐めたくなって、舐めてしまった。
むんず、と私の髪を握る。
舐めないで、と声が聞こえるが無理。
喘ぎ声が大きくなってきた。
太腿が締め付ける。
しばらくして脱力、逝ったようだ。
キスするといやいやをする。
舐めた口でキスされるのはいや、という。
少し落ち着いたようなので中に指を入れて探ってゆく。
うん、いい声だ。
「俺のこと、好き?」
耳元で聞く。
「あぁっすき、すきよ。あぅ、や、そこ、だめ」
可愛いなあ、可愛い。
年上だけど可愛い。
4回ほど指で逝かせた頃、空腹を感じた。
時計を見れば12時前。なるほどもうこんな時間か。早いな。
二人とも汗だくだ。
「シャワー、浴びません?」
「え、あ、そうね…」
「お昼なに食べたいでしょう?そろそろ腹減ってますよね?」
「今考えられないわ…」
まぁ余韻のさなかだもんなあ。
抱えて風呂場に連れて行く。
シャワーで汗をざっと流しソープを泡立て満遍なく泡だらけにする。
乳房や股間では喘ぎ声を楽しむ。
「あなたも洗ってあげる」
と言うので任せて見たところ同じように私の乳房や股間に指を這わせてきた。
「そこまでにしないとだめですよ」
ちょっと不満そう。
「先生、お仕置きされるの好きですか?」
「……ずるいわ、そうやって封じるなんて」
ずるくて結構。
「してほしいんじゃないですか、実は。だから私を煽るんでしょう?」
「ち、違うわよ、私はただ…」
「はいはい、私を触りたいだけって言うんでしょう。わかってますって」
ほっとしたようだ。
泡を流して風呂から出る。
「さて、なにが食べたいでしょう」
「そうねえ、お肉は昨日の夜いただいたから…
 ねえ、いつものお鮨屋さん、今日は開いてるの?」
「5日か6日からだと思いますが一応聞きましょうか」
電話してみる。おやっさんが出た。
やってるか聞くと今日は予約のみだとか。
二人無理か?と問えば俺が魚あまりいらないから何とかなるとの事。
30分後と頼んで支度をする。
着物を着て羽織を整えた。
先生も着物を着なおして美しい。
手を握ってぶらぶらと歩いて向かう。
お正月だなあ。
静かで。
ついてゆったりとお鮨をいただく。
美味しそうに食べるなあ。
おやっさんもついニコニコとしている。
良い食べっぷりにおまけ、とエビ出してきた。
さっきまで生簀に泳いでたやつだな。
天然活車海老…よく生きてたなぁ。
温度管理とか結構大変だからな。すぐ死ぬんだ。
満腹になってお茶をいただいて支払って出る。
天気もまあまあ良くて、暖かい。
手を軽く握って歩む。
外だとこれ以上は難しい。
不倫ってやだなあ。
とは思うが先生と別れるなんて思いたくもなく。
自宅なら好きに出来るから我慢するさ。
うちにもどってお茶を入れた。
先生が年賀状をちらっとみて、お仕事の?と聞かれた。
「友人からも数枚来ましたね」
「見ていい?」
どうぞ、と見せる。
女性からの年賀状を読んで私の腕をつねる。
どうした、なにか嫉妬するようなこと書いてあったかな。
ああ、また泊まりにおいでって書いてある。
くすくす笑って、これは小学校の頃の友人、と教えてあげた。
小さい頃は泊まったり泊まらせたりとか、そういうのはよくある話だったから。
「可愛いな。そんなことで嫉妬してくれるんだ?」
「だって…」
「私があなたを好きで仕方ないの、わかってるでしょう?」
「でも…離れていきそうで怖いわ」
「うーん、なんでそう思っちゃうんでしょうね…」
「わからないけど…」
「けど?なんですか?私があなたを求めてるの、もっと体に覚えこまそうかな」
「ちょっと、だめよ、押し倒さないで!」
ずいっと近寄ったら慌てて面白い(笑)
「はいはい、たまにはあなたから求めて欲しいですね」
あ、真っ赤になった。
「で、できるわけないじゃない、恥ずかしいわよ」
ふふっと笑っていざなう。
「ベッド行きましょう。おいで」
「…はい」
ベッドルームに連れ込んで脱がせる。
恥ずかしそうで、凄く嬉しくなる。
すべてを脱がせた。
私がまだ脱いでないのをなじられる。
ずるい、らしい。
自分だけ恥ずかしいのはずるい?
可愛くてキスしてしまう。
「ごまかさないでよ…」
「ごまかしてなんかいませんよ、あなたが可愛くて」
恥ずかしいのか、先生の体が温かい。
先生に帯を解かれた。
その手をとどめて、紐類を中から抜いて纏めて脱ぐ。
さらしも解いて。
「これでいいですか?」
「だめ、これも」
と下帯をはずされる。しょうがないな。
二人とも一糸纏わぬ姿でベッドに入った。
うつぶせにさせて、背中を舐める。
くすぐったい、と笑っていたけれど腰の辺りまで来るとびくっとしたりする。
お尻を撫でつつ双丘のあわいを舐めると息が荒くなってきた。
つうっと下ろしてお尻の穴を舐めるとそこはだめ、と言う。
「耐えれない?」
「そんなに…どうしてもしたい、の?」
「どうしても、といったらどうします?」
「出来ないなら別れる、なんていうなら…困るけどしてもいいわ」
「ほんっとあなた可愛いな。言いませんよ、そんなこと。
 わかりました、こっちだけにしましょう」
そういって濡れそぼつ中に指を入れる。
もうたっぷりと濡れていて、嬉しくなってしまう。
「後ろからはいや、ねえ、お願い」
「わがままだなぁ」
「あの…だめ?」
うおぅ、もうすっごく甘やかしたくなる。
指を抜いてひっくり返す。
キスをされて、先生からディープキス。
その状態で突起をなぶり、中をなぶると舌の動きが止まる。
口が離れて喘ぎ声。
ぎゅっと腕を握り締められて、こりゃ痕がつくかもしれないな。
沢山泣かせてもう無理、の声を聞くまで楽しんだ。
「足、攣りそう…」
「運動不足かな、毎日してたらもう少し長くできるかもしれませんね」
「馬鹿…まだ足りないの?」
「足りてるように見えます?」
「見えないわね、まだしたいって書いてるわ」
「まぁ今日中に回復するようならその時、明日になってからでもいいですけどね」
「壊れちゃうわ」
「壊さないように今やめたんですが」
「うん…そうなんだけど…」
「それとも狂うほどにされたい?」
あ、怖くなっちっゃたようだ。身を縮めて顔を俺の胸につけてしまった。
「ねえ本当は山沢さんって…酷いことするの、好きなのよね?」
「うん?どうしました?」
「私、出来ないから。嫌いになったりしないかしら、と思ったのよ」
「ああ、そういうことか。勿論したいですけどね、でも嫌いになるとかないです。
 させてくれれば確かにこの飢えはおさまるかも知れませんが。
 …そっちの意味で泣かせたいとは思ってませんよ。大概酷い自覚はありますし」
胸をもまれた。おい。
「こういうこと、したら酷い目に合わされるのよね?」
「そうですね。あわせちゃいますね。だからやめてくださいね」
「ずるいわ…本当にずるいんだから」
「酷い目に遇う度胸はありますか? ないでしょう?」
「ある、って言ったらどうするの?」
「抱かれてあげますよ。そのかわり凄く酷いことをしますけれど」
「それじゃできないじゃないの…」
「おとなしく抱かれててくださいよ」
「おとなしく抱かれてあげるわ」
よしよし、となでているとすぐ寝息。ありゃ。晩飯はどうするんだ。
髪をなでる。
可愛いよなあ。
うつらうつらしながら様子を伺う。良く寝ている。
もうこりゃ晩飯は食いそうにないな。
布団から出てコンビニへ。とりあえずはデニッシュパンを買うか。
玉子とベーコンかハムも買っておこう。
日持ちするからなあ。
戻ると先生が部屋から出ていて、すぐに抱きつかれた。
ちょ、裸、ドア開けるなりは見えるから、外に。
慌てて鍵をかける。
「どうしたんですか、いったい」
「だって起きたらいなくて…どこ行ってたの」
「コンビニ。あなたが良く寝てたから…腹減っちゃいまして」
「いなくならないで」
「といわれましても冷蔵庫何も入ってないんで」
「そうじゃなくて…行くなら起こして一声かけて。お願いだから」
「え、あ、はぁ…わかりました。腹減ってます?」
「……もうっ!」
あれ、なんで怒ってるの?
わけがわからん。
ま、いいや。抱き上げて食卓の前に座らせる。
机に袋を置いた。
「食べます?」
きゅっとつねられた。
「もう、なんなんですか。そんな顔して。なに拗ねてるんです?」
「わかってるくせにっ」
「わからないな、言ってくださいよ」
「言わないっ」
「言わなきゃわかりませんよ」
「なんでわかってくれないの?」
「夫婦は他人の始まり、といいますよね。俺達、夫婦ですらありませんよね。
 ちゃんと言って下さらなきゃわからない事だってあるんです。どうしたんですか?」
「他人だなんて…」
「ああもう、そんなところにひっかからんでください。ほら、泣かないで」
なんで泣くんだよ…。
そう泣かれたら俺も悲しくなるじゃないか。
参ったな。
暫く懐で泣かせて、背中を撫でる。
ああ、ぐしょぐしょだな、胸。
洗濯に出さなきゃいかんなぁこれは。
暫くして落ち着いたようだ。
「ごめんなさい…」
くぅきゅるる~。
腹が返事してしまった。
少し先生が笑って、和む。
「あのね、起きてあなたがいなくて。置いて出て行ったんじゃないかしら、
 わがままをたくさん言ったから嫌いになっちゃったんじゃない?
 他の女の人のところに行ったんじゃないかしら、なんて思ったの」
「ちょっと俺、信用なさ過ぎですね。それは」
「なのに帰ってきたあなた、ご飯のことしか言わないんだもの。腹が立っちゃったのよ」
「腹減って一時間ほどたってましたからねえ」
「本当にお腹すいてたのね。もうこの時間じゃどこもあいてないかしら?」
「まだ9時前ですよ。着替えて9時過ぎでしょう。余裕ですよ」
「じゃ、行きましょう。着替えてくるわ」
俺も着替えないとな、この格好では。幸いネルシャツだったからいいけど。
脱いで洗濯籠に投げ込んで着物を着る。
先生が着替えている間に電話をした。
よし、空いてる。時間もラストオーダーに1時間半もある。
先生がささっと化粧をして戻ってきた。
「綺麗だ…」
「あら…嬉しいわ、行きましょ」
タクシーを止めて先生とともにホテルへ行く。
席に着いてメニューを見る。コースはまだ頼めるかと聞くといけそうだ。
どうしますか、と聞くとそれでいいという。
一番いいコースを頼んで、シャンパンを頼む。
「こんな時間からしっかり食べるのもどうかとは思いますが…」
「だってお腹すいてるんでしょ?」
「ええ、まあ。先生はどうなんです?」
「すいてるわよ」
「ならいいか。結構に夜景見えますね」
「そうねえ。ロマンチックね」
前菜が来て、スープと続きコースがすすんで行く。
先生は魚、私に肉をメインにしてもらった。
うまいなぁ。
デザートまで美味しく頂き、エスプレッソを飲む。
「この後どうします?バーにでも行きますか?」
「ううん、久さんの家がいいわ」
「あ…はい、そうしましょう」
支払いを済ませタクシーで戻る。ずっと手を握られていた。
うちへ入って鍵をかけて。
先生が寝巻きに着替えた。
パンを台所に持って行ったり、ブランデーを出して氷を出して飲む用意をする。
それから俺も着替えて。横に座ると先生がしなだれかかる。
情人、か。
まったく。捨てられるんじゃないかって思ってるのは俺のほうなのにな。
脱がずに寝巻きだから今晩はもうする気はないようだ。
「今日はもう…できないわ、疲れちゃった」
「へぇ…俺の飢えを埋めてくれる気はない?」
「え、あの、…だめ、むりよ」
くいっと引き寄せて、先生のドキドキして怖がるのを楽しむ。
身を縮めているのが大変に愛らしくて本当に辛そうで。
くすくす笑っていると意地悪となじられる。
「酷いこと、したくなっちゃうな。あなたが可愛すぎて」
「やだ、怖いこといわないで…」
少し飲んで。
「絹、愛してる」
そっと耳元で囁く。
先生が酷く赤面していてかわいくて。
「好きだよ。あなた以外欲しくない」
「か、からかわないで…」
「からかっているように見える?」
あごに手を掛けこちらを向かせ、目を合わせて、問う。
目を伏せた。
「ちゃんと俺を見て」
そぅっとこちらをみた。
「あなたのすべてが欲しい。くれますか」
「……お尻はいや」
っておいっ!
がくーっと来ちゃったぜ。思わず笑ってしまった。
「せんせ、そこはとりあえずハイって言って下さいよ、も~(笑)」
「だってお尻、怖いもの」
はいはい、ブランデー飲んで寝ましょ寝ましょ。
口移しに飲ませて、酔わせて部屋に連れ込む。
ベッドに入れて抱きしめて。
「寝てあげましょう。それがいいんでしょう?おやすみなさい」
ぴったりと俺にくっついて、恐々としている。
「早く寝ないと知りませんよ」
「そんなこと言われたって」
「いっそ一度されてしまいますか?そのほうが脱力できるでしょう。
 ほら。随分と体に力が入ってる」
触れれば息を詰める。
泣きそうな顔をしていて。
ああ、また泣かしてしまうのか。
ふぅっと息をついて。
「ちょっと頭冷やしましょう。シャワー入ってきます。寝るなら先に寝てもいいです」
ベッドから出ようとすると袖を掴まれて。
行かないで、と言うので先生を布団に入れて寝かしつける。
なんで今日はこんなに情緒不安定なのだろう。
激しいこともこれではできない。
参ったなぁ。本当に。
怖がらせ、過ぎたか。
ああやっと寝息になった。俺も寝よう。

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h11

-山沢-
お昼を食べて黙々と作業をして疲れて。
でも今日、頑張りさえすれば明日は。
…明日早めに行って抱こうかな。
そうだ、そうしよう。
三が日終ってからじゃ抱き壊してしまいたくなる。
やっと仕事が終った。
後は明日の朝……。
大晦日。
昨日は仕事が終わり仮眠。
そのままの格好で今は加工場にいる。
鯛を焼いているのだ。
火に掛けだすとしばらく放置することになる。
先生のお宅にもって行く味噌漬けやお造りの用意。
すべて段取りが終った頃、焼き終わった。
車に積む。
一旦帰宅してシャワーを浴びて着替え、用意した紋付、これも車に積む。
匂いが移らないようにして。
さあ、先生のお宅へ車を走らせよう。
まだ暗い中、渋滞もなくスムーズに到着した。
お勝手口を開けて魚を搬入する。
焼鯛は風通しの良いところにおいてあとは冷蔵庫へ。
刺身が入らない。
……寒いから良いか、袋もかけてあるし。
お勝手の鍵を締めてから、寝間に行き紋付を衣桁にかける。寒い。
時計を見れば4時過ぎ。先生のお部屋に行こう。
そっと襖を開けてはいる。良く寝ている。
ジャケット、カッターシャツ、スラックスを脱いで、そろりと布団に進入し、キス。
寝ている先生の浴衣の帯を解き乳房を揉み乳首を舐め、翳りに手を伸ばす。
暫くして濡れて来たそれを突起にまぶして弄る。
かすかに喘ぎ声。
指を入れて弄っていると起きたようだ。
きゅっと私の胸にしがみついて、声を我慢している。愛しい。
中に入れながら突起をコリコリと弄って感じている顔を楽しむ。
そのまま3回程逝かせて、声が出そうなのはキスで塞いだ。
ディープキス。先生も離れようとしない。
遠くで居間の時計が5時を告げている。
「お仕事終ったのね…おかえりなさい」
お帰りなさいって…それって…。うわー。なにそれ。嬉しい。
「……ただいま戻りました」
「三ヶ日終るの待てなかったのね?」
「はい。今ならまだそんなに激しくしないですみますし…」
「十分激しかったと思うけど…凄い隈ね」
先生がそっと私の目の下をなぞる。
「髪もまだ湿ってるわねえ」
頭を撫でられた。
「お昼まで寝てなさい。このまま。私はもう起きるけど」
「はい、そうさせてもらいます」
暫く頭や背を撫でられているうちに寝てしまったようだ。
-絹-
弄られて目が覚めて。
寝ている間に山沢さんが来ていたみたい。
何度か昇りつめて、息を荒くしていると背を撫でてくれるの。
今日はシャツを着ていて素肌じゃないけれど。
いつもは肌同士密着して、それも好き。
あら、石鹸の香り、お風呂入ってきたのね。
落ち着いて山沢さんにお帰りなさい、と言った。
さすがに十日は長かったみたい、私を抱きたかったのね。
凄い隈が出来ていて、眠そう。
寝るより私を抱きにくるなんて可愛いわよね。
頭を撫でるとまだ湿っている。
寝かしつけて、布団から出ると脱ぎ捨てた服が散乱している。
ワイシャツを畳んで、ジャケットとスラックスは釣って置いた。
身づくろいをして朝食の支度へ。
「おはよう」
「ん、おはよう。山沢さんいつ来たのか土間の棚に魚が置いてあったよ」
「うん、さっき来たみたいよ、今私の部屋で寝てるわ」
「あぁ直行したのかい、可愛い子だねえ」
恥ずかしいわね、ちょっと。
朝御飯を作って夫と息子を呼んで食べさせて。
一服したら御節の準備にとりかかる。
足の早い物は今晩作ることにして、元旦の夕方につまむようなものを。
「絹ー、ちょっとー」
あら何かしら。
「晶がねえ、今晩からこっちに来たいって。
 三が日って言うけど御節、量的に大丈夫かねえ?」
「少し多い目に用意してるから大丈夫だと思うわ」
「そう?」
「後でお買物に行くときに何か買い足したほうがいいものあったかしら?」
「今晩の分くらいでいいんじゃないかね」
「お部屋、用意しなくっちゃね。律の隣の部屋でいいかしらねえ」
「その方が無難かね、あんたと山沢さんの部屋からは離れてるほうがいいだろうしねえ」
「お母さん、もうっ」
そんなことを言いながら御節の支度を進めて、足りないものをメモしてお買物へ。
戻ると母がお昼の支度をしていたから後は私がするわ、と引き受ける。
-山沢-
昼前、八重子先生が覗きに来た
その時、寝ぼけて布団の中に引きずり込んでしまったらしく、
お昼ご飯にと八重子先生が呼びに来たときは距離を保って起こされてしまった。
脱ぎ捨てたはずのシャツなどがきちんと畳まれてある。
着ようと思うと浴衣を渡された。それを着る。
ご飯をいただいて、まだ眠そうだからと布団に押し込められた。
確かにまだ足りないようですぐに眠りに落ちた。
-絹-
お母さんが山沢さんを起こしに行って暫くして戻ってきた。
「山沢さん、あんたと間違えたみたいで布団の中に引き込まれちゃったよ」
「ええっ。で、どうしたの?」
「どうしたのもなにも、すぐ違うってわかったみたいで謝ってたよ」
「うーん、晶ちゃんや律に起こしに行ってもらったら危険ねえ」
「そうだねえ」
お昼の用意が出来たけれど山沢さんが起きてこない。
食卓を拭いて、おかずやお櫃を出しているとお母さんがもう一度呼びに行ってくれた。
ふらふらと揺れて、浴衣を着た山沢さんが食卓について、お昼を食べて。
凄く眠そうで、お母さんが部屋に戻した。
「山沢さんっていつの間に来てたの?」
「朝からよ。気づかなかったの?」
「うん。凄く眠そうだったね」
洗い物をして、御節の準備の続きをして気づけばもうお夕飯の支度をする時間。
山沢さんが持ってきてくれたお刺身と、あとはどうしようかしら。
メインがあるんだからお野菜を煮たものがいいかしらねえ。
豚肉がちょっとあるから大根と煮て、ほうれん草のおひたしも作ろうかしら。
あ、山沢さんのメインは先日いただいたお肉を焼いちゃいましょ。
そういえば冷蔵庫にニシンは入ってなかったわね、持って来たのかしら。
土間の棚をみると冷蔵庫に入らなかったと思われる食材がいくつか収められていた。
ニシンの真空パックや、お餅、白味噌等々。
……なんでお鍋が置いてあるのかしら。二つも。
お大根を煮ていると山沢さんが起きてきた。
-山沢-
次に目が覚めたとき、また美味しそうな匂いがしていて、もう夕刻か、と思った。
ちゃんと腹が減っている。
ひょいと台所をのぞくと先生方がお夕飯の支度をしている。
「あら、起きたの?」
「ええ美味しそうな匂いがして目が覚めました」
先生はクスクス笑ってる。
「そういえば玄関も勝手口も締まってたけどどうやって入ったんだい?」
「玄関の鍵は一つお預かりしてますよ?」
「そうね、山沢さんに前に一つ渡してたわねえ。忘れてたわ」
「二週間ほど前にこちらで飲んだときもその鍵で鍵かけて帰りましたから」
「ああ、あれって私が締めたと思ってたよ」
「先生方お二人とも先寝てしまわれたんで私が掛けました」
「あらあら、そうだったの?」
布巾を渡される。食卓を拭いて用意だな。
お座布団も出して、台所からおかずを出して行く。
朝持ってきたお造りとか、風呂吹き大根かな。そういった普通のおかず。
お櫃も持ってきて、孝弘さんと律君を呼ぶ。
「うわっどうしたのこれ」
イセエビの見た目か?むしろメインは鯛だ。トロもあるが。
折角俺が居るんだからお造りくらいはね。
「あ、そうだ。こちらだと初詣は二年参りですか?それとも元日のみですか?」
「二年参り?なぁに?それ」
「大晦日も元日もってやつです。ということは元旦だけですか」
「そうねえ、いつも元旦の朝に行ってるわねえ」
「あんたも一緒に行くんだからちゃんと寝なさいよ」
「あー、はい。着物で行かれます?一応紋付持ってきたんですが」
「今年は律も着せようと思ってるの」
「ええっ僕も?」
「たまには着なさいよ」
「ええー」
ほほえましい光景だ。
「先生。あとで針と糸とお借りできませんか」
「どうしたの?」
「半襟つけそびれちゃって」
「あららら~。つけてあげるわ、後で持ってきなさいよ」
「いや、そんな勿体無い、自分でつけますから」
「つけてもらいなさいな」
「いいんですか?なんか悪いですね…」
玄関の開く音。
「こんばんわー」
「晶ちゃん、いらっしゃい」
「お邪魔しまーす」
「こんばんわ、晶さん」
「あ、山沢さん、こんばんわー」
「ご飯もう食べてきたの?まだならここ座って、ほら」
「やー、荷物とかあるから先においてきますー」
「律の部屋の隣に布団敷いてあるからそこ使ってね」
「はーい」
…朝、軽くでもしといてよかった。
うっかりやりたい気分で見つめたりして、晶ちゃんからばれるとか有りそうだ。
正月から家族争議は困るだろう。
とにかく気をつけねばならんな、酒は控えめにしよう。
先生方にもあまり飲ませないようにしよう。
こうして見ているといいお母さんで、奥さんで。私の腕の中に居るときとは随分違う。
美味しいご飯を作り、家を守り、優しく息子を育て。
厳しくの部分は八重子先生だな(笑)
食べ終わって洗い桶に漬けに行ったついでに晩酌の用意をする。
あれ?徳利あるじゃないか。
聞くと居間で二人で飲むなら都合がいいが、
居間から離れた私の部屋なんかでは燗鍋が都合よかったとのこと。
「居間で飲んでいたら…こうはならなかったかもしれませんね」
「そうねえ」
「後悔、してますか」
「してるって言われたいの? ばかね」
オホホと笑って燗のついた徳利を持っていった。
苦笑して、麒麟山は純辛の一升瓶と棒鱈を持って後を付いて行く。
食中酒にするにはうまいんだよね、これ。
棒だらをつまみに酒を飲み、大晦日番組を見る。
孝弘さんや律君が風呂に入り、若い子の歌はどうでもいいと八重子先生が続いた。
5分ほどして後を追う。
風呂に入ってから来ている時は八重子先生が体を洗う間に浸かるようになった。
ぬくぬくしていると背中の傷が少なくなったね、と言われた。
今朝つけられたのもあるけれど。
八重子先生が洗い終わったので、湯から出る。
股間を掴まれた。
「……っ、なんですか」
「あれから自分でしたかい?」
「いや、してませんが」
「してあげようか?」
「自分でするからいいです」
っていってるのに中をまさぐられてる。
「風呂は駄目です、声。が、やばいですから」
「おや、それもそうだね」
手は止まって開放されたが中途半端に煽られてしまった。
参ったなぁ。
風呂に入る前なら散策して来ればいいが、風呂のあとでは風邪を引く。
ああ、部屋で抜くか。
さっき火鉢に火を入れたから風邪引かん程度には暖かかろう。
一応の為に結界を張って、一発抜く。
自分でする分には声も出なけりゃ息も荒くはならない。
さっさとすませて洗顔シートで手と股間を拭い、それから手を洗いに立つ。
途中律君に会い、ちょっと気恥ずかしい。
手を洗って長襦袢と半襟を持って居間に戻る。
晶ちゃんもお風呂から出ており、先生が入っているらしい。
「ね、山沢さんっておばさんの事好きでしょー?」
「ええ、好きですよー」
こういうときはさらっと返すべし!
「やっぱりー」
うん、酔ってるなー。
「晶さんだって絹先生のこと好きでしょう?」
「あー、うん、おばさんって憧れだよねー。女としての」
「家事万全、旦那さんを愛して家を守る、理想ですね」
「あらあら、晶ちゃんとも仲良くなったの?」
っと先生が風呂から上がってきた。色っぽいなぁ。どきどきする。
むくり、といじめたい心が動いて、いけない、と治める。
「おばさーん、山沢さんがおばさんのこと好きだってー」
酔っ払いは困るな。
「あーおばーちゃん、この歌手私好きなのー」
テンション高い(笑)
「山沢さん、半襟。つけてあげるわ。いらっしゃい」
ああ、なにか言いたそう。
長襦袢と半襟を持って先生のお部屋へ。
入るなり言われた。
「晶ちゃんに手を出しちゃ駄目よ…」
あ、嫉妬か。可愛いな。
思わず引き寄せてキスしてしまった。
「可愛いこといいますよね、先生」
まだ乾ききらない髪を撫でる。
「あら?山沢さん、もう冷えてるのね」
…嫉妬はどこへ行った?
「私は風呂を出たら5分でさめますからねえ」
というと火鉢に近い所に私を座らせてくれた。
裁縫道具を出してくる。
2枚あるから、と私にも針と糸を貸していただいて半襟を付ける。
さすがに先生は手早い。
私の分をつけて、自分の分をつけて、律君の分もつけてしまわれた。
「晶さんには着せないんですか?」
「あら、そうねえ。ちょっと待ってて」
暫くして、長襦袢と半襟を持って戻ってきた。
ちくちくと縫い付けて、ハンガーにつるから後のをもってくるよう言われる。
吊り下げて並べ、二人で居間に戻った。
「ああ、戻ってきた、そろそろおそば、作らないかい?」
「あらそうね、もう作らなきゃいけないわね。山沢さん、来て」
はい、と後を付いて台所。
おそばを茹でて、天麩羅を…。
「お母さん、数が足りないわ」
「えぇ?」
ひいふうみい…。
「あ。晶さんの分が数に入ってないんじゃないですか」
「あらららら。どうしましょ」
「誰かニシン食いません?あれ2尾入なんです」
「じゃ私がいただくわ」
決まった決まった。汁を少し鍋に取り分けてニシンを温めて、乗せる。
「律ー、晶ちゃーん、取りにきてくれる?」
と先生が呼び、そばを食卓へ。
「あれ、天麩羅じゃないのがある」
「それはお母さんと山沢さんだよ。あんた七味は使う?」
「僕はいらないけど」
「晶は?」
「私もいらないー」
私の前に七味の小袋が3つ。
全部入れて、頂きますをしてすする。
「あら、意外と美味しい」
先生が小声で言った。意外ってなんだ意外って(笑)

-律-

「ありがとうございました」
教室の生徒さん達が帰っていく。
それと入れ違いに来る生徒さんもいる。
「こんにちは、律君」
山沢さんだ。
「こんにちは、今日も暑いですね」
「いやぁほんとに」
「あら山沢さん、いらっしゃい」
「こんにちは、お邪魔します」
「水屋、お願いできる?」
「はい」
母に水屋を任されているようで、すぐに茶室に入られる。
以前は母と祖母が交代で食事や休憩を取りつつ教室をしていたけど、
最近は山沢さんがお昼の早いうちに来て後始末と、次の用意などをしているらしい。
その間に祖母と母がお昼を食べて休憩をする。
教室が終ると以前は4人で食事していたのが5人になり、
夕飯の支度や後片付けを手伝って泊まって行かれる。
「山沢さんってなんでいつも泊まってくの?」
と母に聞いたことがある。
「あぁ、山沢さんねえ、うちから遠いのよ。だから」
「どれくらい?」
「スムーズに乗り換えて1時間半かしらね」
「えっなんでそんなとこからうちに?」
「紹介されたらしいわよ」
「へー、そうなんだ?普通近所に行くよね。教室がないくらい田舎とか?」
「そんなことないでしょ、あの人築地に住んでるのよ」
「あっちなら沢山あるのになんでなんだろう」
「希望の時間帯とか、曜日とか、どこまで教えるかとかそういうので決まるのよね」
「ふーん」
というわけではるばるうちまで来て習っている。
泊まるようになったのは祖母から着物の仕立を習うためだったらしい。
それからずるずると休み前に泊まるようになったようだ。
先月は山沢さんは母と京都に旅行に行った。
女性だと僕は知っていたけど、あの格好で母と旅行では噂も立つよな、と思った。
お茶の勉強会だといってたけど。
その後も展覧会だ、なんだと母と山沢さんが出かけて行く。
秋の初め頃には母が山沢さんの家に泊まりに行ったりして、随分山沢さんと親密らしい。
青嵐は気にならないようだ。
祖母は母が旅行だお泊まりだというと教室が大変なようで僕を使う。
生徒さんたちは噂好きで母と山沢さんが不倫の仲じゃないかとか、
どうでもいい事を耳に入れてくれる。
山沢さん、すっかり男の人と思われてるよね。
うちでくつろいでる時は胸が見えたりしてやっぱり女の人だとは思うけど。
というか隠して欲しい。
僕だって一応男なんだから、お風呂上りに浴衣をざっくり着るのは勘弁して欲しい。
まだ司ちゃんのほうが隠してくれて助かる。
冬になりつつある頃気づいたんだけど山沢さんは母と同じ布団で寝て居るらしい。
山沢さんに聞くと、一人で寝るのが嫌いなんだそうだ。
一人暮らししてるのに?と思った。
そしたら一人住まいの一人寝はわかってることだけど、
人が居る家なのに一人は寂しくて嫌いなんだって言ってた。
祖母と一緒に寝たこともあるらしい。
山沢さんは結構寝相が悪い、と祖母が言う。
寝ぼけて抱きつくんだそうだ。
だから僕は山沢さんを起こしに行っちゃ行けないらしい。
山沢さんは僕より力があるらしい。
そして着物姿が決まっていて格好良く、知らなければ男性だ。
ちょっと背が低いけれど。
でも母よりは少し背が高いのかな、並ぶとわかる程度に。
母に呼ばれてはすぐに指示を受けて何かをしている。
食事の仕度だったり、掃除だったり。
祖母にお客様なのにいいの?と聞くと良いんだという。
いつも母や祖母が立ち働いているとき、山沢さんも手伝っている。
食事も普段の僕たちと同じご飯を食べていて、
まるで家族のような扱いを受けていて、不思議だ。
司ちゃんはうちに来てもお客様扱いなのに。
いつの間にか開さんや、晶ちゃんとも仲良く話していて不思議だ。
先日祖母が月謝袋を開いてる時に居合わせたけれど、
山沢さんだけ多くて、なんで?と聞くと居候料と月謝だという。
そんなの貰ってたんだ、と言うといらないといったんだけど、と母が言う。
でもたかが稽古事なのにそんなに払えるなんて凄いなぁ。
僕のバイト代全部より多かった。
そういうと、母がクスクス笑った。
「あら、山沢さんとお食事に行くと2、3回でこれくらいよ」
「ええっ?そうなの?」
「前に旅行行ったでしょ?あれも一泊で二人でそれくらいらしいわよ」
「…それって山沢さんのおごり?」
「そうよ」
「うちの経費の分は別に領収書切ってもらったみたいだけどね」
「そうそう、ツインの一番安い部屋じゃなかったかしら」
「なんでそんなこと?」
「宿泊費があまり高いと税務署から調査が入るんですってよ」
「へー。山沢さんってそんなの詳しいんだ?」
「役員さんだから知ってるんじゃないの」
よくわからないや。
「それに山沢さんはもう人を教える資格持ってるのよ」
「あ、そうなんだ? あの人優しいから教えるのはいいかもね」
「優しい…怒らせると怖いわよ?」
「怒らせたことあるんだ?」
「本当に怖くてねぇあの人…」
母が怖がるくらいだから、よっぽどなのだろう。
意外と僕の母は強くてこんな仕事をしているからか揉め事には強い。
「でもこの間お母さん、山沢さんを踏んでなかった?」
「あらやだ、あんた見てたの?」
「絹?」
「山沢さんが肩凝ったから踏んで欲しいって言うから踏んであげたのよ」
「肩こりで胸も踏むの?」
「よく判らないけど気持ちいいんですって」
僕はそんなに肩が凝ったことがないから乗って欲しいと思ったことはない。
ご飯のとき山沢さんは"お父さん"のおかずに何かを足したりしているのを見る。
嫌いなおかずを母に見えないようこっそりと移動させてるらしい。
山沢さん自身が持ってくるのに、絶対に赤い魚を食べないのが面白い。
"お父さん"は嬉しそうにそれを食べる。
確かに母が買ってくる魚より美味しい。
でも山沢さんは母が作る肉料理を食べるほうが好きみたいだ。
沢山のお刺身や魚料理が出るときに山沢さんだけ母の作った肉じゃがが有ったりする。
そういう時、魚を料理したのは山沢さんだ。
見ているとどこか山沢さんは母が好きなんじゃないか、と思ってしまう。
母はああいう人だから受け入れてるのかな。
祖母が何も言わないところを見ると問題はないんだろう。
泊まるようになって3ヶ月くらいになるけれど、母を先生と呼ぶのも変わらず、
敬語も崩さないのに、どこか狎れた雰囲気があるときがあって。
そういう時、祖母が指摘する。
親しき仲にも礼儀あり。
結構難しいよね。
母もつい山沢さんに甘えているようだ。
トイレットペーパーや洗剤を買いに行かせたりする。
すると後で母が祖母に叱られている。
山沢さんは、母が頼むと何でも聞いてしまうところがあるらしい。
母と一緒に買物へ行って重い荷物を持たされて帰ってきたり。
"お父さん"はほっとけ、というけど、いいのかな。
うちの鳥どもは山沢さんを気に入っている。
和菓子をくれるし、司ちゃん用のお酒が探さなくても沢山あるのもいいみたいで、
すっかり手なづけられてるようだ。
どうも山沢さんはうちの有象無象が見えてるらしい。
一人で寝られないのはそれが原因なのかも。
青嵐のことは知っているのだろうか。
12月になりお教室も年内のお稽古が終了して、山沢さんが来なくなった。
何かいつもいる人がいないのは変な気がする。
母も少しさびしそうだ。
話のついでに山沢さんの年を聞いた。
てっきり母と同じくらいか少し上だと思っていたから驚いた。
僕を子供扱いするし、見られても平然としているからてっきりそうだと。
開さんが来たから、いくつに見えるか聞いてみた。
20代って開さんは思ってたらしい。
祖母が開さんのお嫁さんに、なんて言い出したけど開さんが断った。
ホモに見えるから。って想像したら面白くて、凄く笑った。
見えるよね、絶対そう見える。
開さんと抱き合ってる姿とかキスしてる姿とか想像しちゃって、ツボに入った。
母が呆れたような顔で見ている。
翌日、祖母から大学に電話があって早く帰るようにと言う。
急いで帰ってみると今日はすき焼きだからって言うんだ。
松坂牛を山沢さんが送ってくれたらしくて、凄くやわらかくて美味しくて幸せだった。
母はいつもこんなのを山沢さんと食べてるらしい。
日曜に大掃除を手伝ってお昼ご飯を食べているとテレビで築地が映った。
人多いねー。
ぼんやり見ていたら母が山沢さん、と言った。
映ってる?
母がテレビの一角を指差す。本当だ、山沢さんだ。
よくわかるなあ、こんなに人が一杯なのに。
テレビに映る山沢さんは近くの人と何かを投げ合っていて元気そうだ。
母の顔がほっとしたものになっている。
大掃除の続きをしていると雪。寒いなあ。道理でバケツの水が冷たいはずだよ。
いつもこんな冷たい水で料理してるんだからあの手なんだよな。
あれ、でも今年は痛いって言わない気がする。
山沢さんが手伝ってるからかな。
でも山沢さんの手はあまり荒れてそうじゃないなあ。
翌日、今日は休講だからと言うと買物に借り出された。
毎年のことだけどいろんなものを母は買ってすべてを料理する。
今年はいつも買わないようなものを買っていて、珍しいなと思うと山沢さんの分と言う。
お正月、来るのか。
何か母が浮かない顔をしている。
買物を終え、車に積み込んで運転する。
母は何か上の空で話しかけても返事がない。
どうしたんだろう。
荷物を降ろしてバイトに行く用意をする。
年末は時給が高くて良いね。

-山沢-

除夜の鐘が聞こえてきた。
煩悩は払えるものだろうか、いいや払えない。
テレビの行く年来る年が荘厳な寺内の様子を放送している。
年送りは寺、年迎えは神社。日本は神仏習合の国だなあ。どこが無宗教だ。
食べ終わって、器を洗いに立つ。
年の終わりに好きな人と同じものを食べて、同じ家に居る。
幸せだな。初詣はこの幸せがいつまでも続くようお願いしよう。
器を仕舞って戻ると八重子先生と絹先生が撃沈してる。
とりあえずは八重子先生を布団に入れてくるか。
ひょいと抱き上げて晶ちゃんについてきてもらう。
布団を敷いてもらって寝かせて。
戻る途中に絹先生の部屋に立ち寄り布団を敷く。
火鉢の火は、うん、落ちてるね。
戻って絹先生を回収。晶ちゃんは今回はいいと断って。
そっと布団に横たえ頬をなでて布団をかぶせる。
可愛いなあ。
さてと。居間に戻ってみれば律君も晶ちゃんも仲良く沈没。
はてさて。晶ちゃんをとりあえず布団に入れるか。
先生に嫉妬されるかなぁ。
でも風邪引かせてもいかんな。と、抱えあげて部屋の布団に入れた。
律君はとりあえず起きるか試してみるか。
男は重くて運びにくい。
…駄目か、起きない。
肩に担ぎ上げて律君の部屋に連れて行って布団に押し込む。
敷いてあってよかった。
食卓や床に散乱したお酒やつまみを片付けて、正月を迎えるようにする。
うん、こんなものだろう。
さてと、俺も寝るか。
火の始末の確認と、戸締り。
昼に寝かせてもらったおかげで後始末が出来る。
寝間へ行って布団にもぐる。
シーツが一瞬冷たい。すぐに温まるのはいい綿だからだな。
本日はこの家での久々の一人寝だ。
なにか心さびしい。
ふと思いついて、台所へ。
私用の茶を出し湯を沸かして茶室から楽茶碗を持ち出し茶を練る。
飛び切り濃い茶をたっぷりと。
コトと音がした。調理台に茶碗を置いて振り返ると先生が起きてきていた。
「寝なくていいんですか?」
「なに飲んでるの?」
「お濃茶。飲みたくなって」
ん…ディープキスされた。寝ぼけ半分か?
「苦い…」
「当たり前でしょう…私のは安物のなんですから」
「おいしいの点ててあげるわ。それ、捨てなさいよ」
シンクで濯いで拭いた茶碗に先生の特級の茶が勢いよく入る。
勿体無い、なんて貧乏性だが思ってしまった。
特に飲むのが俺だから。
抹茶も勿体無いが、先生に点ていただくのも勿体無いことだ。
ありがたく、といただく。
甘い。気が休まる。
先生も一口、と言うのでお渡しする。
あまり飲むと寝られなくなるぞ。
先生の唇に抹茶が残っているのを舐めた。
茶碗に少しお湯を足して薄茶にしてもう一度いただいて。
後始末をしていると八重子先生がお水を、と出てきた。
苦笑して湯を少しの水で埋めてお渡しした。冬の水では体が冷える。
「あんたらこんな時間に濃茶なんか飲んだら寝られなくなるよ」
「なぜ濃茶と」
「口」
絹先生がこちらを見る。
「あらほんと、まだ口についてるわね」
指で拭うと確かに残っていた。
「取れました?」
「もうちょっと残ってるわ」
と先生の指が私の唇に。
その指を舐めたい!
と思いつつも流石に八重子先生の見ている前では出来なくて。
各々部屋に立ち返る。
そのまま先生が私の部屋についてきた。
今日はしちゃいけないのに。どうしてだ。
布団に入れ、懐に抱いて、我慢して。
暫くすると心地よさげな寝息。
…先生もさびしかったのだろうか。
まさかただの酔っ払い。
それだと明日になったらなんでここにいるのーって言われそうだな。
まぁなんでもいいか、先生がこうして俺の懐にいて、暖かくて。
幸せなのは事実なんだから。
風呂上りでも体臭はあるもので、先生の匂いは俺にとって甘く感じる。
先生の布団で寝るのも先生にくっついてる気分がして、それもまた良い。
しかし。しかしだ。
こう、ずっと我慢してきているのに触れて抱きしめて。
それ以上は禁止と言うのは中々に苦しいぞ。
思わないでもないんだ。
このまま攫っていって隠棲して、ずっと抱いて暮らす。
だけどこの人は絶対家を選ぶだろう。
娘であり、妻であり、母だから。
それにきっと。
私の性癖に我慢できなくなって、別れたいといわれるだろう。
うちに泊めてるときのようなのが毎日では体も心も辛かろうと思う。
だから。定年後かな。同居できるのなら。
私の欲も少しは枯れて、この人も少しは慣れて。
でもその頃には激しくしたら先生の息が切れちゃうな。
激しくなく、体力がなくても楽しめるような何かを二人で探せたら良い。
甘い匂いに耐え切れず、首筋を舐める。
「ん……」
起きたか? いや、寝息。
顔を先生の首筋に押し付けて、寝る。
いい匂いだ。
三が日すぎたら、と約束している。我慢しよう。
明けて元旦。
まだ暗いうちに目が覚めた。懐の中の先生はまだ寝息を立てている。
時計を見れば4時半。
そろそろ起きるか。
いやもう少し、もう少しだけ。
もぞ、と先生の寝返り。
私の胸に頬を寄せて寝ている。くっそ可愛いなあ。
先生は私に比べると華奢で、大事に扱わないと、と思わせる。
腕が痺れた。
ごろりと先生を上に乗せ、仰向く。
血行が戻ってきた。この瞬間だけが辛い。
うわっ、乳首舐められた。
くすぐったかったがこういうのも寝相なのかな。
と言うかなぜに俺の寝巻、こんなに乱れてるんだ。
先生の寝息が乳首を刺激して、困る。
「ん…」
起きたかな。いや、また寝息だ。
5時半までこのままでもいいかな。
あ、先生、涎。
俺の乳房の上に。
今一寝心地が良くないらしい。
さっきと逆の腕を枕にさせて寝かせる。
正月から叱られるのはどうかと思うのでちょっかい出したいけれどぐっと我慢。
寝息を聞いていると少しうとうとしてしまってそろそろ起きる時間だ。
「先生…5時半ですよ、起きて」
「ん……もうちょっと」
「お雑煮作るんでしょう?」
「…あらぁ?なんで山沢さんと寝てるの?」
「えーと、どこまで記憶あります?」
しばし無言。
「居間で皆でお酒いただいてたところまでかしら」
やっぱりそこまでか。
「あー…。その後各々の部屋に布団敷いて寝かせたんですけどね、
 夜中台所に出てきたんですよね。あなた。
 それでそのまま私の部屋についてきたんですよ?」
「あららら。癖って怖いわねえ」
「いいですけどね、私は」
先生が上半身を起こしたのにあわせて起き、先生に羽織をかける。
軽くキス。
「おはようございます」
「おはよう」
さて、身づくろいして台所へ行くか。
台所へ行くと八重子先生も出てきたところのようだ。
割烹着を着てお雑煮の準備にかかられる。
私の分は10分もあればいいので先生方の分をお手伝い。
御節もお雑煮も用意ができたので、一旦部屋に戻って紋服に着替える。
羽織袴に、と思ったが先生が色留袖の方を着るようにという。
久々に女装。袋帯を締めるのに悪戦苦闘していたら手伝ってもらえた。
先生に口紅を差していただく。
どうやら私が下手そうだから、ということだ。
扇子を持って、まだ時間もあるので茶室へ。
師弟としての新年のご挨拶をまずは交わすことにした。
お年賀をお渡ししてそれから居間へ。
絹先生が律君を、八重子先生が晶ちゃんを着せてみなで新年のご挨拶をした。
「明けましておめでとう、今年もよろしく」
などと挨拶が交わされ、山沢さんも今年もよろしくね、といわれた。
お屠蘇を飲んでお雑煮を配膳し、いただく。
先生のお宅のお雑煮は美味しいが…やはり正月といえば白味噌だ。
俺と先生だけ白味噌の雑煮を。花かつおをたっぷりと。
ただし先生のは少なめに。濃いからね、うちのは。
やはり一口飲んで絶句している(笑)
ポタージュかなにか?と晶ちゃんが覗き込む。
一口いる?と飲ませて反応を楽しんだ。
「山沢さん、これ、濃すぎるわよ…」
「京都のイメージじゃない…」
「あの綺麗な薄味の雑煮は他所向けですよ、ちょっと田舎に入るとコレです」
入ってて大根かにんじんか芋か青物、彩りにする程度。
御節をいただく。
おおっ私の希望が通ってる。
なますにたたきごぼう♪
味噌漬けも入ってる。
「山沢さん、黒豆、一粒だけでも食べなさい」
うっ。
しかしながら数の子は勘弁してもらえた。
子孫繁栄は関係ないからね。
「でもお餅、焼かないのねえ。鍋二つも何するのかと思ったわよ」
「よく伸びてたでしょう? あれは別鍋じゃないといかんので」
さて、御節もある程度食べたのでお年賀を晶ちゃんと律君に。
先生が笑ってる。
「ありがとうございます、でもこんな年になってもらえるなんて変な感じ~」
「晶さんまだ学生だから学生の間はと思いましてね」
その後初詣に行こうということになり羽織を着て皆でぞろぞろと。
やっぱり混んでるなぁ。
はぐれないように、と先生が私の右手を。
少しドキッとしてしまった。
神前まで着いて勿論願うことはこの幸せの続くこと、弥栄。
皆健康でこのまま良い状態が続くことを。
先生も真摯に何事かを祈願されている。
綺麗だな。
美しい。って見とれているまもなく怒濤に押し流されそうになる。
先生を引き寄せて人の波に乗る。
律君たちとははぐれてしまった。
お守りなどを受けて、待ち合わせ場所を決めてあるそうなのでそちらに向かった。
合流してゆっくりと元日の気配を楽しみつつ帰宅する。
律君がさっさと脱いでしまった。
若い男の子に着物は辛いか。
先生、晶ちゃん、私で坊主めくりをする。
惨敗。
最後に「これやこの」を引いた。
なお、その後に「嵐ふく」を先生が引いて、結局晶ちゃんの一人勝ち。
二回戦は先生の勝ち、俺が最後近くで坊主だ。
三回戦も坊主を引くなど坊主に好かれてしまったようで負けまくり。
お酒の入った八重子先生が負けたら一つずつ脱げとか言い出した。
あっという間に帯も着物も脱がされて一人、肌襦袢と裾除け。くそう。
晶ちゃんと先生が帯をはずした頃、それらも脱がされ胸の晒と下帯のみに。
八重子先生が次の勝負を煽る。
「おばあちゃん、これ以上は律が困るわよ」
そういって先生が終了を言い渡してくれた。
というか十分今も困ってる気がするが。
普段の着物に着替えることにして一旦部屋に戻る。
着物を衣桁にかけて普段着を出した。
裾除けを片付けてステテコを穿く。
さっと着替えて居間に戻ると晶ちゃんも洋服に着替えていた。
先生は、と。
とっくに着替えて燗をつけて居るらしい。
台所へ行くと先生にごめんね、と言われた。
気にしなくて良いですよ、と言ってかすめるようにキス。
少し飲みたくなって常温の天神囃子を取り燗徳利とともに先生と戻る。
律君にもついであげる。顔が赤い。
先生が燗酒を私についでくれて飲んで。返杯、返杯。
八重子先生にも。お正月番組を見て、団欒。
いいね、あったかいね。
晶ちゃんと律君は部屋に引き上げ、そちらで飲んでいるようだ。
孝弘さんも離れに寝ている。
先生があくびをした。
「少し寝たらどうです?」
「でも…」
「女手なら私がいますからね。大丈夫ですよ」
御節作りや大掃除で疲れているんだろう。
はいよ、と八重子先生からハーフケットと座布団。
先生が横になってうとうとし始めた。
可愛いなぁ。
先生の寝姿を見ながら八重子先生と酌み交わす。
少し不埒なことを考えてしまった時、八重子先生に頭を撫でられた。
「あ…えぇと、風呂。洗ってきます」
慌てて席を立った。
いかん、いかんよ俺。
八重子先生の居る前で先生をそういう目で見るなんて駄目だ。
雑念を吹っ切るべく丁寧に風呂を洗う。
洗い終えて出ると律君とばったり。
律君が慌てて後ろを向いた。
「やっだ、律、あんた山沢さん見て赤くなってるんでしょ~」
「ああ、晶さん」
うん?ってああ、そうか、風呂洗うのに下着以外脱いでるからか。
青年には刺激が強いんだな?
声を聞きつけて八重子先生が来る。
「さっさと着なさい」と叱られて着なおす。
「もー山沢さん気にしなさすぎ!」
「見慣れんものですかね…?」
「晶、お風呂どうする? 入るならお湯張るけど」
「んー、入ろっかな。山沢さん先じゃなくていいの?」
「私は後で頂きますからどうぞ」
お湯が沸くまでの間、居間でゆったり。
「おばさん寝てるの珍しいね」
「お疲れなんですよ。あ、ちょっと雑煮作ってきますがいります?」
二人ともに要らないといわれてしまった。
酒飲んで御節食べて雑煮、幸せ~。
御節も随分と夜に近い時間には減ってきた。
明日はどうするのかと聞くと詰めなおす部分と新規のものを入れるのと、とか。
皆がお風呂に入り、先生を起こしてお風呂に。
眠くてふらついてる。
「今日どうしても入らなきゃいけないというのでもないと思うのですが?」
「そうね、明日の朝にするわ…」
いっそ、と抱えあげてお部屋にお連れする。
部屋で降ろして寝巻きに着替えるように言い、布団を敷く。
衣擦れの音が心を乱す。
先生はすぐに布団に入り、寝息を立て始めた。
脱ぎ捨てられた着物を片付け、部屋を後にする。
居間に戻って飲んで騒いで、後片付けをして自室へ戻る。
他の部屋や居間から遠いこともあり部屋が冷えていて、冷気が寂しさを煽る。
同じ家にいて寂しさを感じるとは、こうなるまでは知らなかったことだ。
後二日、二日を我慢したらいいんだ。
部屋を温め、布団にもぐりこむ。
さすがに酔いも手伝いすぐに寝た。
夜半、いつも起きるような時間に目が覚めトイレに立つ。
戻ると部屋に先生がいた。
またか。
追い返すのもなぁ。
布団に入れて、懐に抱く。
「…迷惑だったかしら」
「そんな顔してましたか?」
「ええ」
「このまま抱けるならね、凄く嬉しいんですけどね。抱けないのでちょっと苦しいなと」
「あら…」
あ、耳まで赤くなった。
「まあ、我慢します。ここが落ち着くってならここで寝てください」
「…落ち着かなくなっちゃったじゃないの」
背中を撫でる。ゆっくり、優しく。
「ん、だめ…」
落ち着かそうと思ったが煽ってしまったか。
すっと先生の手が私の胸の合わせを割り開く。
「どうしました?」
ぴとっと先生が私の胸に耳をつける。
ああ、あれか、心音を聞くのか。
落ち着きたいんだな。
「山沢さん、いつも早いわよね…」
あなたとくっついてる所為もありますがね。
先生の背を撫でつつ自分も落ち着くべく努力する。
「ねぇ、明日年始まわり行くけど…あなた、一緒に来る?」
「お茶関係ですか。それなら」
「親戚も回るわよ?」
「表でお待ちしてますよ」
「寒いのにいいの?」
「あなたのいない家で孝弘さんと待つんですか?一分一秒でもあなたのそばがいいのに」
「山沢さん、可愛いこと言うのね」
「ガキっぽくてすみません」
「あら、嬉しいわよ」
「そうですか?」
先生からキスをされて。
私の胸に手が這う。
煽って楽しんでるな?されないと思って。
くるり、と組み敷く。
「あっ…」
「抱いてもいいんですよ、今」
耳を舐める。
「だめ、やめて…」
「スリル、あるでしょう?」
先生の頬が赤く染まって、衿から覗く胸の辺りもほの赤い。
きゅっと身を縮めるさまは愛らしくて、少し淫靡で。
生唾を飲み込んでしまう。
「ゆるして…お願い」
息をたっぷり吸って、吐いて。横にごろりと転がる。
「仕方ないな。おいで、寝ますよ」
先生はそろりと私の腕枕におさまって目をつぶっている。
可愛いな。本当に。
髪を撫でて、腕を撫でているうちにうとうととしてきた。
もう一眠りしよう。
「ごめん、ね」
先生がつぶやいた。
「いいんですよ。愛してます」
「ありがとう…」
そのまま眠りに落ちて行かれた。相変わらず寝るとなると早いな。
俺も寝よう。

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h10

「えーといまのところは大丈夫です」
「辛くなったらきたらいいよ」
「ありがとうございます」
「しかしあんた、飲んでるのに乱れないね」
「まだそう飲んでませんよ、3合ほどです
 八重子先生こそ結構飲んでるんじゃないですか?」
突然胸揉まれた。
「こんなことする程度には酔ってるよ」
「いいですけどね…私の胸なんぞ触って楽しいですか?」
「そうだねえ、あんたがどう泣くのかは知りたいかもねえ」
「…ちょっとここでは」
「私の部屋にくるかい?」
「ええ?いやいや、ええと、本気ですか?」
乳首を弄られて声を上げそうになる。
確かにここで声を上げたくはないが、ないが…。
いやだが着いてったら泣かされちゃうわけで。
ええい、酔ってることを言い訳に、行くか!
「…わかりました、行きます」
酒瓶などを軽くまとめて片し、火の始末をして八重子先生のお部屋へ。
布団を敷く間に八重子先生が寝巻きに着替えた。
そして布団に入られて。
寝息。
え、ちょっと!?
なんでそこで寝るんだ…。
決心したというのにそう来るとは。
時計を見る、まだ終電はあるな。
帰ろう。
八重子先生の部屋を出て、ぐい飲みや酒瓶を台所に片付け、着物を整えて。
お預かりしてる鍵で玄関も閉めて帰ることにした。
なんだかんだ八重子先生も結構酔ってたということか。
電車を乗り継いで帰宅し、着替えて仮眠。
翌朝出勤し連休明けのややこしい仕事を終える。
今日は昼寝もしよう、流石に二日酔いではないが眠い。
シャワーを浴びて布団にもぐる。気持ちいい。
すぐに寝てしまって目が覚めると夕方だ。
何か食わないと腹が減った。
ご飯はチンしておかずは…味噌漬けを食うか。
ニュースを見ながら一人で食べる。
わびしい。
先生方と食べるのにすっかり慣れてしまったんだなあ。
明日は、きっと一緒に食べていただけるから今日のところは休もう。
少し部屋を片付けたり、洗濯物をやっつけたり。
こんなものかな、さて寝るか。

さて火曜日、仕事は暇で時間がたたないといいつつ定時。
帰宅して着替えて先生宅へ。
さて八重子先生とどうしたらいいものか。
「こんにちは」
「はい、いらっしゃい」
あれ、普通だ。
まさか記憶になかったりするのだろうか。有りうる。
何もなかったことにして、お稽古をしていただいて、水屋をお手伝い。
その後夕飯をいただいて絹先生がお片づけしているその間。
昨日のことを覚えているか八重子先生に聞いてみた。
「絹をあんたが布団に入れに行ったのは覚えてるんだけどねえ」
そこから先覚えてない?そうですかそうですか。
「何か変なこと言ったかねえ?」
「いや覚えてないならいいんです」
二人とも酔うと大胆になることはわかった。わかったよ…。
その後絹先生と私の寝間でいたして寝た。
もう最近は八重子先生も何も言わない。
お泊りの朝は絹先生が寝過ごすのも。
そんなこんなで12月に入り、仕事も忙しくなってきた。
「あんたクリスマスはどうするんだい?」
「ご家族水入らずで楽しんでください」
「もう律だってそんな年じゃないよ。絹とどこか行ったらいいのに」
「いや仕事が結構きついんです」
「天皇誕生日の日なら休みだろ?」
「いえ、臨時開場日です。23日から30日までずっと仕事です」
「なんとかならないのかい?」
「夜中の2時から夜9時まで仕事なんで、ちょっと無理かと」
「…それは無理だねえ」
「無理ですよ…毎年3日に一度シャワー、あとは空き時間寝る!と言う感じです」
「洗濯とかどうしてるんだい?」
「30日に纏めて洗って乾燥機ですね」
異臭とか言ってる状態じゃない。誰もが。
「ああ、でもディナーショーの予定が入れば作業からはずされるんですけどね」
「外れたところで結局寝る時間じゃないんだねえ」
「もし予定入れられてしまったら絹先生をお誘いできたらと思います」
「そうしてやって。ああ、そうだ、お正月は地元に帰るんだろ?」
「いや毎年一人で部屋で寝正月してます」
「じゃ今年はうちにおいで。31日から来たらいい」
「いいんですか?」
「来たらすぐ部屋で寝ればいいよ。疲れてるんだから」
「ありがとうございます」
「絹がさびしがるからね、あんたみたく忙しくしてれば別だけど」
「ああ、確かに暇なときほど寂しいです。でも大掃除とかでお忙しいのでは?」
「頭は使わないからね、大して。物思っちゃうもんだよ」
そんなものか。
二週目ともなれば水曜日も朝御飯をいただいてすぐ帰り、仕事をする。
忙しくなって、ますます性欲が強くなり先生は結構辛そうだ。
土曜の夜。
「来週。火曜日は泊まれませんから…土曜日の晩は覚悟してくださいね」
先生の耳元で囁くと、怖がられてしまった。
「そう怖がらないで…可愛すぎてまたしたくなる」
「だって…今でも凄いのに…」
「それと、23日から30日。来れませんから。電話は無理だと思いますけど、
 メールくらいなら出来ますから、携帯、見てくださいね」
「どうして?会いにきてくれないの?会いに行っても駄目かしら」
「そのころはほぼ会社でぶっ倒れて寝てますしね、会える感じじゃない筈です」
「あら、大変なのねえ」
「そのかわり年明けはよろしくお願いします」
「……すごく激しいんじゃない?」
「かもしれません」
先生は困った表情だ。
「したくない? そうならそういってください」
「あ…拗ねないで、そうじゃなくて。その…お正月だとみんないるから」
「ああ。そうか、聞こえたり見られたりしたら一大事だ…失念するところでした」
「お母さんならまだいいけど…他の人だったら…」
「八重子先生でも良くないですよねえ」
うーん弱った、絶対抱きたくなる。
「三が日。終ったらうち来てくれませんか?」
「我慢できるの?」
「がんばります…できるだけ」
「ごめんなさいね…」
駄目だ可愛い。
「もう一回しても良いかな」
「えっ」
「駄目?」
「明日立てなくなっちゃうわ…」
「八重子先生には俺が怒られますから」
「駄目よ、山沢さんのおうちじゃないのよ、お父さんも律も居るんだから」
「ほんと俺って考えなしですね…思ったことすぐ口にしてしまう」
「山沢さんのそう言うところ、可愛いわ」
「でもあなたを困らせてる」
先生から軽くキスされる。
「それだけ…山沢さんが私を好きってことでしょ?嬉しいからいいわよ」
しっかり抱きしめると、息がしにくいと叱られた。
「そろそろ寝ましょ?もう3時よ」
もうそんな時間か。腹が鳴った。
「あらあら。何か食べる?」
「いや、ああ、そうだ」
たしか鞄の中に一口羊羹がある、あれでいい。
鞄を漁って放り込み、噛まずにお茶で飲み込む。
「やぁねえ、そんな食べ方だめよ」
噛むと虫歯の原因の砂糖が残るからわざわざ歯を磨きに立たねばならない。
すぐに布団の中にもぐって先生の体にくっついた。
んー、あったかいなあ。気持ちのいい肌。このさわり心地の良さ。
撫でて匂いを嗅いで舐める。
先生がくすくす笑う。あくび。
「おやすみなさい」
「はい。おやすみなさい」
うとうとしていると懐の中から寝息。つられて熟睡。
翌朝。
と言うか10時過ぎていた。
律君には八重子先生がうまく理由を作って説明してくれて助かった。
ただし叱られた。
二人雁首そろえて。
せめて律君の起き出す時間までに起きてくるようにと。
八重子先生に謝って絹先生にも謝った。
簡単に許してはいただけたが申し訳ないと思う。
まさかこんな時間まで俺も先生も起きないとは思わなかった。
絹先生のお腹が鳴った。八重子先生が苦笑する。
お昼ご飯の用意を手伝って、食事を取った。
「あんた来週からお稽古の後すぐ帰るんだろ?」
「そうなりますね。睡眠時間の問題で」
「始発が有ればいいのにねえ、うちに泊まっていけるのに」
「こういうときは一般のサラリーマンがうらやましいですね」
「お稽古は来れるんだろ?」
「来週は大丈夫です」
その代わり水曜も仕事だし日曜も昼からは仕事だ。
「じゃ、次の日曜は絹に濃茶を練っててもらうといい。濃いのをね」
「眠気防止ですか」
むしろ仕事中に飲みたい。
「前にお母さんが点ててくれたの、すっごく濃くてむせたことあるけどあんなやつ?」
「あら。受験前の?あれはまだ緩いほうよ?」
ぱっと八重子先生が台所に立ち、暫くして戻ってきた。
手に茶碗を持って。
「律、あんたちょっとこれ飲んでみなさい」
「ええー、なにこれ。こんなに濃いの?」
おお、おいしそう。
律君は一口舐めて凄く微妙な顔をしてすぐに普通のお茶を飲んでいる。
口をつけたところを八重子先生が拭いてくれて私へ。
「飲みきっちゃっていいですか?」
「絹も飲むかい?」
「私はいいわ」
じゃあ、とすべて飲み、吸い切る。
甘くて美味しい。
「練り加減はどうだったかねえ」
「凄く美味しいです、甘かったんですがこれはどちらのお茶ですか?」
「"慶知の昔"だよ」
「小山園ですか。うちにもあそこのお茶を冷凍庫に入れてますが精々"青嵐"です」
律君が挙動不審だ。
「薄茶用だろあれは。濃茶にしても美味しくないだろうに」
「苦味が立ちまして眠気払いですね。それにうちだとステンレスヤカンの湯ですし」
「ああ、これ一応鉄瓶の湯だからねえ」
「そんなに味違うの?」
「釜の湯のほうがやわらかいですよねえ」
「そうだねえ」
「そうよねえ」
「あと炭の方が美味しいです。なんとなくかもしれませんが」
「ああ、それはそうだね、なんでかねえ、あれは」
「ふーん」
「律君はお茶はする気はない?」
「この子正座も長く出来ないのよ」
「ああ、そうか正座する習慣がないとそうですよね」
今も胡坐だもんな。
「山沢さんは長い正座、平気よねえ。
 上に座っても1時間くらい痺れたとも言わないもの」
「…山沢さん、よく大丈夫ですね。母、結構重いでしょう?」
「はは、仕事で60キロなんか毎日運んでるからね、絹先生くらい軽い軽い」
「あらあら、だから筋肉質なのねえ」
「律の方が腕でも細いんじゃないかねえ」
「ほんとだ…」
「いや、若い男の子って結構細いですよ。
 特に律君は腕力使うようなことあまりないでしょうし」
「でも彼女出来たらお姫様抱っこくらい出来なきゃ駄目よぉ?」
確かに女の子を柔道の肩車のように持つのはお勧めしない。
「あれはむしろ抱っこされる側が協力的かどうかだと…暴れられると無理です」
「暴れられたことあるの?」
「ええ、小学校の頃に」
あぶなく薮蛇のところだった。
時計が鳴る。
「あ、もうこんな時間だ。
 友達と出てくるから今日は遅くなるよ。僕の分のご飯は要らないから」
「はいはい、気をつけて行ってらっしゃい」
律君が外出し八重子先生が後ろを向いた隙に絹先生にキス。
赤面する先生、可愛い。
それを見た八重子先生に額を叩かれる。バレた。
「ほんとあんたお稽古のときとは別人だねえ」
「そうですか?」
「堅物の優しげな、と思ってたからねえ」
「すいません、実際はこんなんです」
「意外と怖いわよね」
「山沢さんの怖いのなんて想像できないけどねえ」
「だって八重子先生、私が怒るようなことされませんし」
「私にだけ酷いの?」
「会社で本気で怒れば手が出ますからね」
「うそ…」
「最近はほぼしてませんが…」
「山沢さんのその手で殴られたら痛いだろうねえ。絹が女だから殴らない?」
「好きな人を殴る趣味も持ち合わせておりません」
あ、また頬染めてる。
怒ってるかと思えば照れたりと。可愛いなあ、うん。
「あら?前に叩きたいとか言ってなかったかしら」
「なんでそれ今思い出すんですか…」
「どういうことだい」
「あーえーと…私ちょっとS入ってるので、そっちです…」
「ああ、鞭とか?TVでやってるような?」
「端的に言うとそれですが、まあそのー傷つけるのは別に趣味じゃないんで
 お仕置きするようなことがあればーみたいな…」
「ああそれじゃいつか叩かれるんだろうねえ」
「いやいや、できればやらないでやってとか言うところじゃないんですか、そこは」
「まあ山沢さんのことだから。
 うちのことやらお稽古に差しさわりがあるようにはしないだろ」
「お母さん、もうっ。なんで怒らせるの前提なのよ」
「これまで何度も怒らせてるじゃないの、あんた」
「それは…そうだけど…」
八重子先生に頭を撫でられた、と思ったら掴まれて上向かされた。
「でも山沢さんちょっとMなところもあるよねえ」
「え…」
「あるわよねえ」
「いやまあ、ありますけどね…」
だからって髪をつかまないで欲しいなあ。
というと頬をつかまれた。
「いや、ですから掴まんで下さいよ…」
絹先生もくすくす笑っている。
ったく。
「さてと。あんたそろそろ帰る時間だろ?」
ああ、もうそんな時間か。
「ええ、ですが明日も仕事かと思うとげんなりしますね…」
「来週一杯は絹に会えるんだから頑張りな、それとも絹をつれて帰るかい?」
「いやそれはさすがに結構ですから」
それでは、と帰ることにした。
きっと先生のSっぽいのは八重子先生の遺伝だな。
玄関を出ると寒い、そういえば冬将軍が居座ってるとか言ってたな。
来るときは昼だったから暖かかったがもはや夕間暮れ、寒い。
先生がマフラーを貸してくれた。
首もとを暖めると随分違うからと。
暖かくて嬉しい。
気持ちが暖かい。
明日からの仕事がんばろう。
ほんと、好きな人がいないと仕事を続けるのってしんどいんだよなあ。
心の張りというものがやはり必要だ。

明けて月曜仕事は暇で。
作業はあるものの忙しいなんて気分でない。
黙々とこなす。早く終ればそれが睡眠時間の確保になる。
特に明日は早上がりをするのだからちゃんとしておくべきだ。
しっかりこなして夕5時半。帰宅して食事。面倒だな。
羊羹を食べて寝てしまおう。日持ちするから助かる。
翌朝、仕事をして申し訳ないが早帰り、いそいそとお稽古に行く。
「こんにちはー」
「はい、こんにちは」
お稽古をして、すぐ帰ろうとしたら食事を取るように言われた。
どうせまともなもん食ってないからと。大当たりだ。
食事をいただいて、洗い物をして帰った。
やっぱり嬉しいなあ。考えてもらえてるんだな。
寒い外気だが心はぬくい。
一日おきに仕事、稽古と頑張ってこなして土曜日だ。
今日、抱いたら後は会うのは大晦日、抱くのは三ヶ日終るまでお預けか。
きついなあ。
それでも予定があるのだからまだしもだな。
先生も思いは同じなのか、少し激しいのに嫌とは言わない。
私が求めるままに、辛そうな顔をしつつ答えてくれる。
愛おしい。
離し難い。
息を切らせて辛そうな先生を上に乗せ背中を撫でる。
「…まだ、…物足りないんでしょ…?」
「これ以上したら、あなたを壊してしまう…だからいいんです」
「壊れても」
「だめです」
困ったような顔をしている。
「そんな顔をしないで…私は大丈夫ですから。
 あなたの今日の、そう思ってくれた、その心が嬉しい」
これを燃料に大晦日まで頑張ろうじゃないか。
キスをして、背中を撫でて寝かしつける。
まあ、たかが一週間やそこらだろうといわれそうだが。
週の半分以上顔を見てた相手と会えない声も聞けないのはさびしくて辛い。
今日だって本当は家に連れて帰ってしたかった。
声を我慢させるのはかわいそうで。
でもその姿が欲情をそそる。
寝息に変わってきた。
"お母さん"をしている時の顔と"娘"をしている時の顔、"先生"をしている時の顔。
そして"女"としての顔。
今は私以外には見せていないはずだ。
孝弘さんとはどの程度のことをしていたんだろう。
詮索はしてはいけないが。
今も脱ぐのは恥ずかしげだが、きっと二十の時はもっと恥ずかしがっていたんだろうな。
というか脱げたのだろうか。
あ。まつげが抜けてる。
そっと取ってちり紙に手を伸ばして包む。
「…ん」
おっと起こしてしまったか?
大丈夫だった。
綺麗だなぁ。
肌は普段の手入れだろうけど。
きっと八重子先生も若い頃は綺麗だったのだろうな。
うん?…股間を触られている気がするんだが。
寝息、だよなぁ、これ。無意識、夢の中でしてるつもりなのか?
参ったな、これは怒れんな。
まあこの程度ならいいか。
暫く触り続けられていたがやがて止まった。
夢終了か?
布団から這い出てトイレに行く。
八重子先生に出会った。
ちょっとお部屋に連れて行かれお茶をいただく。
寝る前だからとほうじ茶だった。
トイレで抜くつもりだったのになぁ。
さめるにはもう少し時間が必要だ。
先日乳首を触られたことを思い出してしまった。
このタイミングで思い出すんじゃないよ俺…。
八重子先生の顔を見るのが照れくさい。
「どうしたんだい?顔赤いよ?」
うわっ、頬を触られた。
「……先生。先日私の胸揉んだこと忘れてますよね、今のでわかりました」
とぼけてるのかとも思ってたけど!
「そんなことあったかねえ?」
「私の胸揉んで泣かせたいといって部屋に連れ込んだの先生ですよ」
「えっ?うそだろ?あんたに?」
「ええ、それで着替えて布団敷いたらそのまま先生寝ちゃったんですけどね」
「あらー…それは悪いことしたねえ。ああ、じゃあ」
「うっ」
乳首を掴まれた。
「その続きかと思った?」
「はい」
「されたいかい?」
「…ええと」
「それとも絹にされたい?」
「絶対いやです」
「きっぱり言うね」
「いやです。こればっかりは」
「で?されたいのかねえ」
やっぱりSだ、自分から言わせようとしてるよね。
もう我慢限界だ。きつい。
「すいません、お願いします」
何度か逝かせて貰って落ち着いて、ふらふらと絹先生の寝ている横へ戻って寝た。
夢だったと思うことにしよう。疲れた。
翌朝、八重子先生は何もなかったように振舞ってくださり、
私も何もなかったような顔をして絹先生との別れを惜しんだ。
ばれなきゃいいんだよ、ばれなきゃ、うん。
それからの一週間は仕事中に先生へ朝のご挨拶メールを送ったり、
おやすみなさいのメールを貰ったり。
水曜の夜に帰宅すると冷蔵庫に食事が入っていた。
片手で食べられるものが。
昼に来て、作っておいてくれたようだ。
往復3時間もかかるのにありがたいことである。
丁重にお礼をメールするとお歳暮ありがとうとメールが返って来た。
そういえば年内いつでもいいからいいものが入り次第と言う注文をしたんだった。
今日届いたようだ。すき焼きをしたらしい。
しゃぶ用もあるしステーキも有るが年内に食えるのかな。
サーロインメインでヒレとかイチボとかランプとか入れてくれと言っておいたが。
まあ孝弘さんが食ってくれるだろう。
美味しい晩飯を一人食べて、風呂に入る。
掃除と洗濯がしてくれてあった。シーツがいい匂いしてる。
愛されてるなぁ俺。嬉しい。凄く嬉しい。
さびしいけれど幸せな気分で良く寝た。
正月が待ち遠しいなんて久しぶりに思う。
あ。クリスマスか。今日。ならば会いたかったなあ…。
そう思っているうちに眠ってしまった。
明けて翌日暗いうちから働く。
それでも昨日よりは今日のほうが気分が落ち着いている。
仕事も捗る。
残り一週間もない、頑張れそうだ。
先生は今頃大掃除だろうか。
あ、鏡餅買わなきゃな。
年賀状は今日作ろう、今日。
注連飾りも居るな。
明日は作業の真ん中に買物時間作ろう。
帰宅時間は遅くはなるが仕方ない。
6時過ぎ、いつものおはようのメールをする。
朝、先生から来るメールはそっけない。
夜のメールは色々書いてある。
きっと朝は眠いか忙しいかなんだろうな。
俺は朝のメールのほうが文章量が多く、夜は少なくなる。
二人とも、好きだとも愛してるとも書かないことにしている。
メールを見られて破綻。
そんなのは困るから。
だが、ただの弟子と朝晩メールの交換してるというのも。
なにやらおかしい気がしてきた。
体裁を気にすると彼女に怒られるという話を良く聞くが、
俺らの場合気にしすぎでもいいはずだ。
まぁ、先生の場合初めてのメル友で距離のとり方がわからなかったと。
そういう言い訳が使えると思う多分。
しかし上流の人と離れているとすぐに品性が堕落するなぁ。
正月はうっかり変なことを言わないように気をつけないといけないな、これは。
翌日、作業の合間に買いだしに行く。
ついでに栄養ドリンクを数箱。社員達に差し入れる。
日々みんなの目が死んだ魚のようになっていく。
毎年思うがクリスマスに魚市場を空けるメリットはない。
本当に売れないし、客自体来ないし。
あの日休めば光熱費の点からも休養の面からも助かるんだが。
大体この時期から救急車のサイレンを聞いたり、誰かが倒れたらしいと小耳に挟むんだ。
絹先生からも大丈夫?と言うメールをいただいた。
どうやら半分くらい書いて送ったらしい。昨夜。
そんなこんなで日曜日。特別開場日。
今日明日と仕事を済ませば会いにいける。
早く先生の声を聞きたい、抱きたい。
会わずに我慢できるのはやはり三日だな、三日。
メールの交換をしてもらっていて忙しいから何とか日をすごしているが。
しかし今年の忘年会はまた飲みだろうなぁ。
毎年私は出ないけど。なんでみんなそんな体力あるんだろう。
今年は幸い大掃除しなくて済んだ。
先生が来たりするから日常的に整理整頓していたし、先日は先生が掃除してくれた。
毎年、仕事で出来なくて年明けに掃除してしまうからなあ。
仕事中に先生からメールが来た。
うわ、洋装だ。掃除中の姿。
八重子先生が写真を撮ってくれたようだ。
可愛いなぁ。
そして俺の姿をテレビで見たらしい。
画面の端に芥子粒のように映っていたのを絹先生が見つけたとか。
よくわかったなぁ。
元気そうで安心したと書いてある。
でもそれ多分木曜の取材だ。
あの日は先生の気配を家で感じて、愛されてるという実感で仕事が捗った。
まあそれはメールには書けないから、お会いしたときに耳元で囁くとしよう。
あ。帰ったら襦袢に半襟つける作業が待っている。忘れてた。
思い出してよかった。しかし帰宅するまでに忘れてしまうのではないか。
忘れきってたら31日の朝に慌てて付けるか、先生のお宅でつけるかだな。
紋付の用意をするときに思い出せよ自分。
先生はうちに来てくれるときは刺繍半襟だったりする。
この間は小さいもみじが散っていて、可愛らしい雰囲気だった。
お稽古では白い半襟に静かな柄の小紋や紬姿ばかりで、
茶事くらいしか華やかな姿を見なかった。
だけど俺と一緒にお出かけするときは華やかな着物を着てくれる。
襦袢も綺麗だったり可愛かったり手が込んでいる。
お出かけの予定がないときはシックな紬に派手な襦袢とか、
お洒落で、俺に見られることを思ってそういう格好をしてくれてると思うと嬉しい。
前にそういったら、俺がちゃんと衣桁にかけるのを待つから、着てこれると。
エロビデオみたいに着てるのそのままで体液がついたりするような、
あんなやり方をするなら着てこれないよね、正絹は。
たまに脱ぐの待てないの?と怒られるが。
ああそうか、汚していい正絹の襦袢を作ればいいんだ。
だったら着衣で出来るな、そうしよう。
寸法は今度寝てる間にでも測ってしまえばいい。
柄は…そうだ、八重子先生に相談しよう。
そんなことを考えて眠気をやり過ごす。
家に帰って気がついたら服を着たまま寝ていた。
ベッドにもたどりつけていなかったようで、床で寝ていた。
ストーブはつけたようだが。
ついに30日、今日働いたら明日は会える。
気合を入れ直して、一日頑張ろう!
もうはっきり言って商売の時間は暇だ。
当然ながら料理屋なんかは今日明日は料理してお重に詰める日。
うっかり買い忘れたとかがない限り市場には用はない。
暇なので二人を1時間半ずつ仮眠させて少しでも作業時の負担軽減を図る。
その時間に作業させればいい?場所が空かないと出来ない作業なんだ。
みな今日は疲れているが表情は明るい。
明日休日出勤の当番の者も、今日までのような時間帯に出勤しなくてよい。
昼までに終ってゆっくりできるのだから。
使った道具は翌日の当番が洗ったり始末する。
当日始末するのは無理だからね、体力的に。
冗談も飛ばす余裕が出てくる。
私は先生に明日うかがうメールをした。
会いたい…。
そうは書けない。
こんなに貪欲だったんだなぁ、俺。
先生から待っているとお返事をいただいた。
待っていてくれるんだ、ということを心の支えにして。
ひたすらに仕事をこなして行く。
あっ!半襟!つけるの忘れた。今晩か明日の朝つけるか。
覚えてるといいなあ。
家のお飾りは今朝飾って出たし。
他に忘れてることはないよなあ…。
律君にお年賀の用意くらいか?
作業をしつつ忘れ物はないかとチェックする。
明日焼く鯛もキープしてある。
刺身にする魚も泳がせてある。
はっ!現金をおろしてこなければ。
休憩時間になってすぐに銀行に走る。
初売りを考えれば30くらい財布にあってほしい。
昔、某呉服屋で後日にしたら翌日売れていて悔しかったからなあ。
手付けを打てる金はやはり必要だ。
一旦自宅に寄り、明日持っていく鞄に入れておいた。
スーツにも男の着物にも合う重宝な鞄だが女の着物を着るときには流石に合わない。
持って行く紋付は一応男のなのでこの鞄にしたわけだ。
先生にもしかしたら女の格好をさせられるかもしれない。
だから湯文字だけ入れてある。
また職場に戻って作業を進める。

-絹-

「山沢さん、お仕事頑張ってるかしらね」
お母さんになんとなく言うと、ふふっと笑われた。
「今週一杯、来ないからさびしいのかい?」
「そりゃそうよ…週の半分はきてくれてたんだもの」
「きっと山沢さんもそう思ってるよ」
「そうかしら?」
晩御飯の支度をして、お父さんを呼んで律は今日も遅くて。
そろそろ大掃除を手伝ってもらいたいのに。
買出しもしなきゃいけないわね。
「あなた、おかわりは?」
「くれ」
この人は、山沢さんとのこと気づいているのかしら。
わからない振りをしてくれているのかしら。
「ただいまぁ」
律が帰ってきたわ。
「お帰り、ご飯できてるわよ、手を洗ってらっしゃい」
律にもご飯の用意をしてお母さんにお茶を入れる。
「ごちそうさま」
ご飯を4杯。お父さんはいつもどおりに食べて部屋に帰って、
入れ違いに律が食卓についた。
「あれ、今日は山沢さんは?」
「あらあんたに言ってなかったかしらね。今週はお仕事忙しいんですってよ」
「へー寂しい?」
どきっとした。
「寂しいねえ、いつもいるからねぇ」
お母さんが代わりに言ってくれた。助かったわ。
「山沢さんって格好いいよね。開さんとは違う意味で。でも女の人なんだよね」
「そういえばあんた、前に山沢さんの胸見ちゃったろ?」
「あぁー有ったよね、そういうこと。あの人気にしてなくて吃驚したよ」
「開に見られても気にしてなかったからねえ」
そういえば兄さんも山沢さんの胸を見たのよね…。
兄さん、山沢さんに手を出したりしないかしら。
私のってわかってて取ったりする様な人じゃないけど…心配だわ。
「お母さん、山沢さんっていくつなの?」
律に聞かれて驚く。
「あら?そうねえ、確か35歳だったかしら?」
「えっ40代じゃなかったの?」
「あの人若く見えないよねえ、でも実は子供っぽいというか」
「そうよね、甘えん坊なところもあって面白いわよねぇ」
「ええっ?そんな風には見えないな」
そういえば若い時は10歳年上の人が凄く大人に見えたわねえ。
自分がその年になるとそうじゃないのがわかるんだけど。
「母さん、なんか食べるものない?」
「あら。開、どうしたの?」
「財布落とした…いま探してるけど。環姉ちゃん今日は帰れないって言うから」
「開さん開さん、山沢さんっていくつくらいだと思います?」
「20代かな?どうして?」
「今ねえ、律は40代って言ったのよー」
はい、とお茶碗にご飯をついで兄さんに渡す。
「で、いくつなの?」
「多分35歳だったと思うわ」
「えっ意外だなあ」
「いやもうてっきり、お母さんと同じくらいの年だから僕に見られても
 大丈夫なんだと思ってたんだよねー」
「ああ、それはそうだな、僕も見たけど普通だったしね」
「よく考えたら開とも年は釣り合うよねえ」
「母さん?」
「おばあちゃん、駄目よ。それは」
「ちょっと年開きすぎてない?一回り違うんじゃないの?」
「あら、昔は一回りなんて普通だったんだから大丈夫だよ。
 山沢さんが開のお嫁さんだったらお教室も続けれるじゃないの」
「それは山沢さんが嫌がるんじゃないかな」
「なんだい?開、あんた山沢さん苦手かい?」
「いやそうじゃないけど…見た目がホモ?」
律が大笑いしてお母さんが考え込んで一旦この話は流れてほっとしたわ。
夜、戸締りをして寝る支度をすませて居間に行くとお母さんが繕い物をしていた。
「明日山沢さんの家に行ってて何かつまめるものを用意してあげたらどうだい?」
「どうせだから洗濯とお掃除もしてあげたほうがいいかしら?」
「そうだねえ、手が回らないだろうから。してあげるといい」
「じゃ、律が出たらうちのことをして、それから」
「ああ、うちのことはあたしがするからいいよ、行っといで。洗濯があるだろ」
「いいの?」
「洗濯物を取り入れて畳むまでやってあげないと取り入れる気力もないとは思うけどね」
「あら、そうねえ。帰るの遅くなっちゃうわ」
「構わないからちゃんとやっといで」

翌朝、律を送り出してすぐに電車を乗り継いで山沢さんのおうちへ。
鍵を開けて中に入ると凄く乱雑に散らかっている。
足の踏み場もないわねぇ。と溜息をついてとりあえず洗濯物を拾って、
まずはシーツを洗って、これはすぐに乾くから脱ぎ散らかっているものを洗濯機へ。
シーツを干して、床に落ちている広告や新聞をかため、郵便物はまとめて。
開封はしてあげたほうがいいのかしら。
このガスのハガキは多分引き落とし出来なかったときのよね。
躊躇ってそれだけ開く。今日までの期限で5千円ちょっと。
これだけ払ってきてあげたほうがいいわよね。
きっと見る暇もなかったんでしょうけど…律も一人暮らしさせたらこうなるのかしら。
お買物のときに一緒に払い込みすることにして、まずはお掃除しましょう。
天井に近いところから。あら、はたきはあるのかしら?
あるとしたら掃除機のある納戸よね。
あったけどこの部屋…変なものも一杯あるのよねえ。
鞭、とか。蝋燭、とか。
いつか使われちゃったりするのかしら。
お尻も、っていつか言ってたわね。
ぞくっとして、少しドキドキとして。
慌ててお部屋から出てお掃除にかかる。
まずは窓や玄関を開け放して。
天井に近いところから叩きをかけて埃を落とす。
たんすの上やテレビなどのものの上の埃を落として行き、拭き掃除。
掃除機をかけていると洗濯機が鳴り響く。
表のシーツも乾いたので取り込んで、残りの洗濯物を干して。
寝室のお掃除もしているとエッチな本やビデオが。
こんなの見てるのねえ。
パラっとページが開いた。
やだわ、こんなこと……したいのかしら?
でも、こういう格好。私山沢さんに見せてるのよね…恥ずかしいわ。
Prrrrrrrr.... Prrrrrrrrr...
電話の音にはっとして慌てて仕舞って掃除を続ける。
やだわ、こんな。
欲情するなんて恥ずかしい。
掃除をしているうちにいつしか醒めたけれど。
納戸のお掃除はどうしようかしら…。
もうそろそろ夕方だから。ご飯の支度をしてから考えようかしら。
とりあえずお買物行かなきゃね。
ガスの払込書を持って、お買物に出る。
前に一緒にお買物に行ったから大体のお店はわかるんだけど。
何を作ろうかしら。
コンビニに入って払い込みするついでに山沢さんの好きな銘柄のコーヒーを買って。
椎茸のカナッペ作ろうかしら。
後はお野菜の肉巻きもいいわね。
おにぎりと。
ピラフのおにぎりも美味しいわよね
八百屋さんとお肉屋さんによってあれこれお買物をして。
おうちへ戻って調理するともうそろそろ帰らなきゃいけない時間になった。
洗濯物を取り込み畳んで仕舞って、ご飯が冷蔵庫にあると書置きをして。
缶コーヒーを文鎮にして帰ることに。

「ただいまあ」
「あぁお帰り。山沢さんからお歳暮届いてるよ」
「中は何だったの?」
「お肉。今日はすき焼きにするから律に早く帰ってきなさいって電話しといたよ」
「あらいいわねえ」
お台所に行ってお肉を見ると沢山入っていて、
ステーキ用、しゃぶしゃぶ用、すき焼き用、焼肉用と分けられている。
「あらお母さん、松坂牛A5って高いんじゃないの?」
「多分すっごく高いお肉だよ。山沢さん、ほんとあんたのこと…。だねえ」
「お母さんたら。でも嬉しいわね」
「ただいまー。早く帰って来いってなんだったの?」
「おかえり。山沢さんが松坂牛送ってくれたのよ~。きっとおいしいわよ~」
「へー松坂牛って高いんじゃないの?」
「そうよ、そのお肉を色々送ってくれたのよ」
「…山沢さんって魚屋だよね。なんで肉?」
「あら?何でかしらね。手を洗ってらっしゃいよ。もう用意できてるわよ」
「ん、お父さん呼んでくるよ」
食卓にお鍋も出してすき焼きを皆でいただく。
「柔らかいねえ、これなら胃もたれもしないし美味しいねえ」
「山沢さんとステーキこの間食べたけど柔らかかったわよ」
「お母さん、いつもそういうところで山沢さんと食べてるの?」
「うーん、そうねえ、私は作るって言うのよ、だけどねえ」
「そりゃあんた、いつも作ってる人となら食べに連れて行く方が良いもんだよ」
「そうなの?」
「主婦が旅行好きなのは上げ膳据え膳だからだよ」
「律も結婚したらお嫁さんにそうしてあげなきゃ駄目よ?」
お父さんにご飯のおかわりを注ぎながらすき焼きを食べて。
「さすがにもうお腹一杯」
「でもおばあちゃんいつもより沢山食べてたね」
「そうだねえ」
お父さんもご馳走様をして、律もお箸を置いた。
台所で後始末をして、居間に戻るとお母さんが山沢さんち、どうだった?と聞いた。
「もう足の踏み場もないくらいだったわよ、結構疲れたわ」
「えぇ?うちだと後始末きちんとしているのにねえ。よっぽど仕事が大変なのかねえ」
「未開封の郵便物も沢山あったわよ。今日が期限のガスの払込書とか」
「それはどうしたんだい?」
「預かってるお金もまだあるし払ってきたわよ。止められたら可哀想じゃない?」
「まあねえ」
少し話して、お風呂に入って寝る。
翌朝、朝御飯を食べてから大掃除にかかる。
お母さんが窓を全開にしてレシートを飛ばしたり、
古いアルバムを見つけたり。
そんな日々を送り日曜日。
お昼をとっているとテレビで年末の築地が放送されているのをみる。
「あら?これ山沢さんじゃないかしら」
「え?あらほんとだねえ」
「どこ?」
「ほら、ここ」
「あーほんとだ。なんか投げつけてない?」
「他の人と投げ合いしてるわね。氷かしらね?」
「元気そうだね」
「良かったわ。あらもう切り替わっちゃったわね」
後でメールに見たこと書こうかしら。
ご飯を食べた後、お掃除の続きをしていると子宮・乳がん検診のおしらせを見つけた。
そういえば行った事ないわねえ。
山沢さんはどうかしら、行ったことあるのかしら。
よく読んでみると乳がんは40歳から。
来たときに聞いてみようかしらね。
おかあさんがそれをみた。
「山沢さんは中央区だから無料にならないんじゃないかねえ?」
「あらそう?年明けに保健所に聞いてみましょうか。
 きっと一人じゃ行きにくいでしょうし」
「女装させないと駄目じゃないかい?」
「やだ、お母さんったら。女装って。多分凄く嫌がるわよ?」
「面白いじゃないの、それも」
「そういえば今年も環姉さんは帰ってこないのかしらね」
「仕事みたいだねえ、あの子は。いい加減結婚すればいいのに」
「あら、雪」
「寒いと思ったら降ってきたねえ」
「先週も雪だったわねえ」
ぼんやりと雪を眺めているとお母さんに毛布について聞かれた。
「あ、そうね、山沢さんのお部屋に要るわね」
「ん?お正月はしないのかい?」
「お母さん!皆居るんだからできるわけないでしょ」
「それもそうだけどちょっと可哀想だねえ、山沢さん」
お母さんは最近山沢さんとのことをからかったりする。
最初の頃は見られて叱られてたのに。
「開兄さんは知ってるからいいけど…律に見られたらどうするのよ」
「まあねえ」
「山沢さんが三が日は我慢するって言ってくれたの」
「それじゃ明けは山沢さんち泊まってきなさい。その方がいいよ」
「ん…そうね、そうするわ」
お母さんが私の携帯をちょっと触って、この状態でメールを打って送りなさいという。
ぽちぽちと本文を入れて送るといつもより少し時間がかかった。
なんだったのかしら。
「クリスマス、残念だったね」
「仕方ないわよ。お仕事だもの」
「ディナーショーの券が回ってきたら誘いたいって言ってたけどね」
「あらー、残念ねえ、それは」
文箱から古いものを纏めて、不要なものを除けて。
もう一度不要なものに目を通して、捨てて行く。
山沢さんからの去年の年賀状が出てきた。
印刷。両面ともにパソコンかしらね。
文面も今見ると苦労の跡が伺える。
翌日、大掃除もほぼ終わり御節に入れるものなどをお買物に。
律に車を出させてあれやこれやと買い、ふと。
こういうの山沢さん好きかしら、なんて思ってしまう。
毎年なら買わないものも少し買って帰宅。
「…お母さん、何でそんなの買うの?」
「んー、お正月山沢さん来るのよね。こういうのあの人好きだから」
「あ、山沢さん、くるんだ?」
「多分大晦日のお昼頃に来るんじゃないかしらね。
 来たらすぐに寝かさないと駄目でしょうけど」
「なんで?」
「4時間睡眠なんですってよ。月曜から30日まで」
「へー、大変なんだ?」
「あんたも就職考えないとねえ」
「ははは…」
薮蛇、そんな顔している息子に頼りなさを少し感じて、まだまだ頑張らなきゃと思う。
来年も生徒さんが増えるといいわねえ。
きっと山沢さんも手伝ってくれるでしょうし…。
別れなければ、の話だけど。
あの人だって他に好きな人が出来るかもしれないわよねえ…。
そうなったらどうしよう…。
「どうしたの、お母さん急に」
「なんでもないわよ。さ、帰りましょ」
律の運転する車に乗って、ぼんやりと考えてしまう。
今はいいけれどいつか、私が年を取ったらしてくれなくなるわよね。
若い子とするようになって私から離れていくかも。
やっぱり兄さんと結婚…山沢さんと兄さんがえっちなことするなんて…いや。
「お母さん?ついたよ?」
「あら?ごめんね、ぼーっとしてたわ」
「おばあちゃん、ただいま、これどこ置いたらいい?」
律と一緒に食材を降ろして片付けるものは片付けた。
下ごしらえをお母さんとする。
「じゃバイト行って来るから」
「はいはい、気をつけて行ってらっしゃい」
友達と旅行に行きたい。そう言ってたわね。
お母さんと二人で台所仕事をする。
「ねえお母さん…」
「なんだい?」
「あと10年もしたらきっと山沢さん、離れていくわよね…」
「うん?」
「だってもっと若くて綺麗な子沢山居るでしょうし…」
「あー…多分山沢さんは大丈夫だと思うけどねえ。絹が私の年になっても一緒だろ」
「そうかしら?」
「大晦日にでも聞けばいいじゃないか、きっとそう言うよ、あの子」
「うん…」
「なんなら養子にしたらいいじゃないか」
「え?」
「この間ね、ガーデニングの集まりでそんな話を聞いたんだよ。
 同性愛者は結婚できないから養子縁組をするんだそうだよ」
「うーん。同性愛者って言われると…なんかいやねえ」
「いざとなればの話だからね」
そんな話をしながら御節の準備をして、29,30日と日を過ごす。
黒豆もつやつやに出来たし、きんとんもいい感じね。
夫に食べられないようにして、夫が食べていいものを出しておく。
長く暮らす間にそれくらいはするようになった。
普段は食べられたら作ればいいわよ、と思っているけれど。
最近お風呂に入っているときや寝るときに山沢さんを思い出してしまう。
あの人はうちに来ると優しくて、あの人のおうちだと激しくて。
うちだとちゃんと声が他の部屋に聞こえないように気を使ってくれる。
朝、山沢さんの腕は私の噛んだ跡で腫れている。
いつも私の限界を見てやめてくれる。
物足りないって思ってるのはわかるわ。
だから。
あの人のおうちでするときは泣いてもやめてくれない。
次の日立てないほどされて。
たまに激しいだけじゃなく酷いことをされる。
私がしたことへの報復に。
でも痛いことはされたことがなくて。
体は気持ちと裏腹に喜んでしまう。
女っていやね。
あの人は怖がらせるのが好きなのに怖がられると悲しそうにする。
だから、つい受け入れてしまうのよね。
優しくしてって言うとしてくれるし。
本当は激しくしたがってるのわかってるんだけど。
私、激しいのはあまり好きじゃないのよね…。
以前はうちでも酷いことをされてたけど。お尻に入れられたり。
あんなところで気持ちよくなったなんて言えないわ…。
あの人だけが知っているけれど。
裸で抱き合っていると山沢さんもやはり女の子で、胸もあって。
でも私より筋肉質で。
いつも泣かされるから山沢さんを泣かせたくなっちゃって。
でも手を出すと後が怖いのよね。
気持ちよくなるのがいやなのかしら。
それとも弱みを握られたと思っちゃうのかしら。
よくわからないけれど。
私よりほんの少し背が高いけれどキスをするときは少し上を向けば出来て。
お稽古前にわざとしてみたり。
だって山沢さんはお稽古のときはえっちなこと絶対してこないから。
困ってる顔が可愛くてついしちゃうのよねー。
結構律儀で旅行のときもご飯の前とか時間が決まってるときはしなかったわ。
うちでも夜、私が部屋に行くまで待っていてくれる。
だけどお昼間、抱きつかれるのも嫌いじゃないわ。
見られる心配がなければだけど。
いい着物を着てるとき、絶対触れてくれないのよね。
普段の、木綿の着物だと不意に引き込んでキスしたりするくせに。
脱がせて、と言っても手を洗ってからしか脱がせてくれない。
前に怒ったからかしら。
あら?そういえば山沢さん、月の物はいつなのかしら。
スパッツを穿いてるときがあるけれどそれがそうだったのかしら。
それとも妙にいらいらしてるとき?
激しいとき?
今度機会があれば聞いてみましょ。

今年の御節はいつもより一段増えて、山沢さんの希望に応じて色々入れる予定に。
たたきごぼうとか、なます・田作りを多めにとか、味噌漬け、焼鰤、等々。
お味噌とお餅は持ってくるって言ってたけど。
こちらのお雑煮だとお正月気分になれないって言ってたわねぇ。
すこしお相伴させてもらおうかしらね。
そういえばところてんをおかずに出したら手をつけてもらえなかったわね。
食文化が色々と違うみたいだからうちに入ってもらったら大変かしら。
うーん、自分で作ってもらえばいいわよね。
そうそう、年越しのおそばは山沢さんの分もいるわよね。
天麩羅でよかったかしら。メールしてみましょ。
すぐにメールが帰ってきて、天麩羅はいらなくて鰊を持っていくからと書いてある。
ああ、そういえばあちらはにしんそばなのね。
メールって便利ねえ。お仕事中でも気にしなくて良くて。
山沢さんはメールで愚痴を書いてこなくて、私の愚痴に対して励ましてくれる。
もっと甘えてくれてもいいのに。
お母さんにそういったら、ちゃんと山沢さんは甘えてるだろ、と言われた。
そうは見えないわ…。

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拍手[1回]

h9

翌朝、シャワーを浴びて酒臭さを抜く…無理だ、服が酒臭い。
とりあえず仕事着から臭いのしないの選んで着て、どこかで一式買うか。
どうせそろそろ秋物買うつもりだったし。
ざっと調べると伊勢丹くらいか。
いやまて、帰り大宮で乗り換えるんだから。
うん、スーツカンパニーが大宮にあるな。
デパートで買うくらいならオーダーしたい。
ブランドスーツを買ってもサイズで困るのは事実。
8時半、ホテルの精算を済ませ荷物を自宅に送って、みどりの窓口へ。
9時40分ごろの電車が良いといわれてしまった。お茶飲むか。
っと携帯がなる。先生から。
時間が有るようなら、とお願いされた。
からいすけとお福正宗の大吟醸?はいはい。4合瓶でいい。はい。
余裕で買える。戻って3階で買い、下げやすくしてもらった。
先生の指定の大吟醸3種と私の好みのにごり。
駅弁を買って、新幹線に乗る。
混んでたら指定席にすればいいかと思っていたが、すいてて自由席で全然問題なし。
乗車後すぐに弁当を開ける。
普通の幕の内だけどうまいな。米が違う。
米どころだなぁ、やっぱり。
先生のところの米はコシヒカリとは違う食味で好きではあるが。
家は最近淡雪こまち。秋田米。
ご飯を食べて、コーヒーを飲んで。車窓風景をのんびり眺めて。
しばらくしてトンネル。長いな。抜けた。トンネル。またか。トンネル多いな。
高崎。後20分ほどで大宮だ。
今寝ては危険だ。再度コーヒーで目を覚ます。
よし、大宮だ、降車して一度改札を出た。案内板を見る。
あれ?ユニクロがある。そっちでいいか。
ジャケットとシャツ、チノパン、コートを買ってその場で着替える。
畳んで袋に入れてこれも家へ送ってしまえばいい。
さて、次は埼京線で新宿か。遠回りしてる気分になるなぁ。
新宿で乗り換えて後は最寄まで一本。
駅についてさてタクシーにしようかな、そう思っていると先生から電話。
「あ、山沢さん?今どこかしら。駅?じゃあ悪いんですけど…」
トイレットペーパーついでに頼まれてしまった。
買い置きがあるつもりだったそうだ。
すぐ近くのDSで買ってタクシーに乗って先生宅前まで。
両手ふさがってるし庭から入るか。
「こんちはー三河屋です~」
なんて入ったら先生に笑われた。
「おかえりなさい、山沢さん」
「ただいま戻りました」
「お買物ありがとう。お稽古、していく?」
「ええ、お願いします」
手を洗って部屋から袱紗を取ってきて稽古をつけていただく。
ビシビシ厳しい稽古に疲れた頃、他の生徒さんが来られて水屋に回る。
生徒さんのお稽古がすみ、何か質問は?との声に生徒さん。
「先生は山沢さんには厳しくされてますがどうしてですか?」
あ、答えを探しているな、先生。助け舟出すか
「よろしいでしょうか」
「え、えぇ」
「来年にはじめに私、上級の許しをいただく予定でありまして。
 それで上級に上がるからには、と厳しくしていただいてるのですよ」
「ああ、そうなんですか!」
「そうなのよ、ホホホ」
生徒さんが帰られて、助かったわ~と仰る。
「ああいう理由にしときましょう。一番有り得るかと」
「そうねぇ」
水屋を片付けていると八重子先生ご帰宅。
「ただいま。あぁ山沢さん、お帰り。お土産ありがとうね」
「お帰りなさい、先程戻りましてお稽古もつけていただきました」
「あんた今日夕飯食べていくだろ?」
「そうさせていただければ助かります、帰りに買物しないと何もないので」
「あら、そういえば山沢さん洗濯物は?」
「それは明日家に宅配で来ますんで明日やります」
片付け終えて居間へ移動。絹先生はお台所。
八重子先生がお茶を入れてくださった。
「あっちは寒かっただろ?」
「やー流石に海は寒かったです。けど後はほぼ屋内でしたから」
塩沢くらいか、寒かったの。
「…まさかずっとしてたのかい?」
「え、いや、ええと酒飲んだりとか…も、してましたよ」
「若いねえ…」
「ははは…」
「まぁあの子が良いと言うならいいけどね」
「ありがとうございます」
「……あんた、男の人としたことはあるのかい?」
八重子先生が声を潜めて言う。
「あ、一応。後学の為に」
「するのはどうだった?嫌だった?」
「胸の内と体とは別、と言うのが体感できましたね。感覚的には面白い体験でした」
「へぇそんなもんかねぇ」
「しかし八重子先生、聞きにくいこと結構聞かれますね」
「そりゃまぁ絹の相手だからね」
あーじゃ土曜日に渡すか、検査書類。
「お母さん、ご飯できたわよ」
「はいはい」
配膳を手伝う。あれ?孝弘さんと律君は?
「律は合コンだって。お父さんはお出かけ、ご飯炊いたのに~、もうっ」
3人でご飯か。ちょっとさびしいな。
「あれ?律いないの?」
「あら兄さん。どうしたの?」
「いやちょっと借りたいものがあったんだよね。いないのか」
「どうせだからご飯食べていく?」
「助かるな。姉ちゃん今日帰ってこないからどこかで買うかと思ってたんだよね」
「あら環姉さんまた帰ってないの?」
「仕事が忙しいみたいだぜ」
「あの子も早く結婚したら良いのにねえ」
「山沢さんは出張からいつ帰ってきたの?」
「ああ、今日ですよ、昼過ぎに直接こちらへ」
「へぇー、そんなに絹がすきなんだ?」
「兄さん!?」
あ、お茶碗取り落としそうになってる。
「開…なんであんたそういうこと言うかねえ」
「ええ、そうですね」
「山沢さん!」
「あんた知ってたのかい?」
「うん、山沢さんは僕が知ってることも知ってたようだけどね」
「絹先生には言わないってことにしませんでしたっけ?なんで言うんですか」
「面白いから?」
こういう人だった、忘れてた。
八重子先生が開さんを叱りつつ、食事。
さすがは二十歳程度の中身、最近ちょっと年相応になろうとしてるらしいけど。
久しぶりの先生のご飯が美味しい。
黙々と食べる。
「山沢さんどうしたの?あまり喋らないのね」
「あ、いや、メシ。うまくて」
「子供みたいねえ」
なにぶん一週間ぶりだからなぁ。
「山沢さんも結構食べるね」
「だからタフなのかしら」
「仕事してるときは朝・朝・昼・夜食ってますしね」
「4食も食べてるのかい?あんた食べすぎじゃ…」
「ないんですよね、これが。暫く夜抜きにしたら体脂肪一桁に。
 大体2700カロリー目安に取るように言われてます」
「あら、私1800って言われたわよ」
「デスクワークしてた頃はそれくらいでしたね」
さて、ごちそうさまでした。
お片付けを手伝おうとしたら良いと言われお茶をいただく。
うまいなあ。
ほっこり…しててはいけない、帰らねば。
明日明後日仕事して、お稽古だな。
絹先生も戻ってきた。
「お酒、明後日飲みましょ。買うときは思わなかったけど随分沢山だったわね」
「買いすぎだよ、あんなに飲めないだろ」
「いや、司ちゃんが飲んでくれるでしょうし」
「司ちゃんねえ、誰に似たのかしら」
「八重子先生じゃないですか。いける口ですよね?」
「ああ、そういえば母さん結構飲むよね」
「山沢さんも凄く飲むのよ。利き酒の所で私が半分飲んだ杯、全部飲んでたわよ」
「ああ、でも新潟の酒は辛口で私は飲みにくいです」
「辛かったかしら、美味しいと思ったわよ?」
「京都の酒に慣れているからかもしれませんねえ、うまいとは思いますが」
ああ、タイムアップ、帰らねば。
「それではそろそろお暇を」
「あらもう? 気をつけて帰ってね。明後日お稽古だから忘れずにね」
「はい、よろしくおねがいします」
見送っていただき、バス・電車を乗り継ぎ帰宅。
即布団に転がって寝た。
翌日遅刻しそうになり慌てるものの普通の金曜日、そこまでは忙しくなく。
早めに仕事を切り上げ報告書などを纏めて送る。
帰宅してすぐに荷物が届き開梱して洗濯。
先生のパンツとパジャマ…シルクだ。
手洗いか。
洗い方がわからん。
先生に電話すると明日持ってきたら自分で洗うとの事。
別の袋に除けておく。
自分のは乾燥が済むまで放置だな。
3時間半ある。寝よう。
熟睡。疲れてたんだなぁやはり。
洗濯機が鳴って目が覚める。
畳んで片付けて。
腹が減った。何か食わねばならんがコメを炊くのも面倒だ。
冷凍庫をあさってチャーハンを温める。食べて…寝る。
ひたすら、寝る。
すっきりとした目覚め。
よし出勤だ!
土曜だからそれなりに気忙しく、仕事も多くてちょっと疲れた。
帰宅途中、携帯の契約をする。
かんたんなヤツ。まずはなれてもらおう。
やっぱりピンクかなピンクがいいよね、女持ちだから。
最近のものは普通のガラケくらいに使えるものになっているらしい。
1番に先生のお家、2番に司ちゃん、3番に私。
あとは先生のお宅に行って電話帳をすべて写せば良い。
充電器を二つ、一つはうちに置こう。
帰って、シャワーを浴び久々に着物を着る。
先生のパジャマを入れた袋を忘れずに持って行かなければ。
さて、電車に揺られようか。
暖かくて眠くなっていると電話が鳴った。
ん、先生のお家だ。
「はい、山沢ですが」
「こんにちは。今日お稽古来るのよね?悪いんだけど…」
「ああ、はい、わかりました」
昼の方用の和菓子が足りない模様。羊羹でもいいようだ。であれば…。
途中、日本橋で下車して購う。
早上がりした分時間に余裕があってよかった。
先生宅にいつもの時間につけそうだ。
到着、食事中の先生方に挨拶して羊羹を手渡す。
「あら、あらあら、綺麗ねえ」
「ほんとだねえ、これはいいね」
「お父さんが食べちゃったのよ~それで足りなくなっちゃったの」
「律が車乗って行ってるし買いにいけなくてねえ、助かったよ」
おや、またお出かけか、律くん。
「じゃ私たちお昼食べてるから、お水屋お願いね」
はいはい。
道具を用意して炭も確認する。
食事を終えた八重子先生に確認してもらう。
これで良いということで羊羹を切っていただく。
「おや、山沢さん。あんた芋餡は食べれたんだっけ?」
「あ、食えますじゃなくて食べれます」
「じゃ今日は誰かに濃茶練ってもらおうかね」
「いいですねえ。あ、できれば澁口さんがいいですね、あの方の美味しいから」
「そうだねえ」
しばらくして生徒さんが来られ、八重子先生と共にお稽古開始。
絹先生は外出、上の先生のところへたまにお稽古に行かれるその日らしい。
あそこ岡崎さんも来るらしいからちょっと心配なんだが。
止めるわけにも行かないし。
お稽古がすすみ、主菓子をいただいて澁口さんに濃茶を練っていただく。
美味いなぁ。でも二人で飲むのに五人分で点てた模様で、多い。
正客役は二口で渡してくれたから沢山いただくことに。
ま、いいけど。美味しいし。お正客との問答を聞きつつ。
さてさて順繰りに数人の生徒さんのお稽古も終わり、
私への厳し目の稽古も終ったので水屋をしまった。
そろそろ絹先生も帰ってくるかな?
お台所を手伝う。今日のお夕飯はなんだろう。
かぼちゃの炊いたんと肉豆腐とぬたとかぶのお味噌汁とポテトサラダ。
なぜそこにポテトサラダ。いいけど。
作り終えて居間に戻ってお茶をいただく。
「絹先生遅いですね…」
「たまのことだからお友達と話が弾んでるのかもしれないね」
「そうですねえ」
頭をくしゃくしゃと撫でられた。
「先に食べるかねえ、孝弘さん呼んできてくれるかい」
「はい」
呼びに行く。
「絹はまだ帰らんのか」
とニヤッとされてしまった。わかってていってる絶対。
絹先生がいない中での食事はやはり微妙だなあ。
早く帰ってきて欲しいなあ。
電話が鳴って八重子先生が取る。
「あらそうかい? うん、うん、それで…はいはい」
ガチャッと電話を切った。
「後30分位したら電車に乗るからってさ。
 先に食べてお風呂入っててくれっていってたよ」
「30分ですか…」
食事を終え後片付け。八重子先生がお風呂にお湯を張る。
いつもは孝弘さん、律君、八重子先生、絹先生、俺と入ってるのだが。
八重子先生が入る頃には戻ってるだろう。
居間に戻って思い出した。
「そうそう、これ。お渡ししておきます」
「なんだいこれ?」
「性病の診断書です。一応のため」
直近の先月頭に検査したものだ。
「それと宴席つれてかれた先がセクキャバだったんです。
 女には触ってはいませんが今週はそのー…しないでおこうと思ってます。
 検査して結果でてからと。なので。フォローお願いできますか?」
「セクキャバ?」
「胸触ったり下触ったりOKのキャバクラです。本番はないですが」
「あぁ…はいはい。わかったよ、だったらしないほうがいいね。
 あんたちゃんと検査してるんだねえ」
「いや、だって好きな人に移すとか一番嫌ですし…」
「そうだよねえ…」
「キスもしないでおきたいので本当にフォローお願いします」
「え、それも駄目なのかい?」
「移るやつあるらしいです。なので今日は先生お戻りになったら帰ろうかと」
「回し飲みとかは大丈夫なのかい?」
「それで移ることはないです、大丈夫です。
 ただ気分的に最後に飲むようにして頂けたらいいかと」
梅毒が怖いんだよなーあいつは1ヶ月たたないとわからん。
梅でも今は薬で治るけどさ。
そういう心配しなきゃならんから行きたくないんだよな。
芸者で遊んでるときは心配しなくてすむのに。
「来週のお稽古日はお稽古だけして帰ることにする予定なのでお願いします」
「はいはい。あんたも大変だねえ。行きたくて行ったところじゃないのにねえ」
「セクキャバ行っても面白くないんですけどねえ。後の心配大きいですし」
しばらく話し込んでいると先生が帰ってきた。
「ただいまぁ、ああつかれた~」
「はいおかえり」
「お帰りなさい、先生」
「お母さん、先お風呂いただいていい~?」
「いいよ、入っといで」
「じゃ、俺帰りますね。お邪魔しました」
「あら山沢さん、何で帰っちゃうの?どうして?」
「ちょっと用がありまして。一応お帰りを待ってたんですよ」
「そうなの?気をつけてねえ」
退散。携帯は次回だな。
折角の土曜に一人寝、日曜は掃除、食料買出しとかしょうもない。
翌週は月曜仕事、火曜仕事・お稽古、水曜仕事・検査に行く。
「土曜に恋人とsexしたいんで結果わかり次第連絡いただけますか?」
と医者に言うと電話くれることになった。
即日分は陰性、感染の恐れはない可能性が高いとのこと。
翌日も仕事、稽古。
先生からキスされそうになるのをかわして帰宅する。
金曜の仕事は連休前で大変だった。
土曜日、先生が今日は朝から家に来る。
そわそわしていると医者から電話、すべて陰性とのこと!
良かった、今日も触れないとか辛すぎるからな!
八重子先生に連絡すると良かったねと言ってもらえた。
しばらくして駅に着いたとの先生からの電話を貰いいそいそとお迎えに行く。
さっそく携帯からかけてくれたようだ。
回収して玄関を閉めた途端、後ろから抱きしめてうなじにキスする。
片手を身八つ口から入れて乳を揉む。
先生が喘ぎ身をよじる。
ちゃんと乳首のリングもつけてくれている。
「こんなところで…だめよ…」
「はい。ベッド行きましょう。我慢できない」
そのまま押し倒したいのをぐっと我慢して着物を脱ぐのを手伝い、
ベッドに入るのを待つ。
「ねぇ、どうしてキスもしてくれなかったの…嫌いになっちゃったのかと思ったわ」
「その話は後で」
とにかく抱きたい無理我慢できん。
キスも、愛撫もすべて強めになってしまい、先生の息も荒く。
先生が逃げそうになるほどに抱いてしまった。
少し収まったので懐に抱いて先生が落ち着くのを待つ。
「ひどいわ…」
「すみません。一週間出来ないとやっぱ無理です」
「どうして? なんでキスもしてくれなかったの?」
「実はですね…」
と説明する。
「もうっ そんなところ行って! だからって…」
怒られてしまった。
キスをしてその口を封じ、たっぷりと楽しむ。
押しのけようとしていた腕がしがみつくようになったころ唇を離した。
「ばか…キスなんかでごまかされないわよ」
「ごめんなさい。あなたが好き過ぎて我慢できませんでした」
「根津。今の内に行かないと駄目ね」
「はい?」
「だって…明日だと立てそうにないもの」
「あ…ですね」
ヤりまくっちゃいそうだからな、夜。
着物を着てもらって、私も衣服を改めて根津美術館へ行く。
井戸茶碗展。
名碗が沢山沢山並んでいる。
先生は楽しげだ。
茶会で練るならどの茶碗が手持ちの道具に合うだろう
そんな感覚で眺めていると聞いた。
そうか。茶会を主催する側からの感覚か。
確かに点てるときに当たりが悪くてだまが出来やすい茶碗あるな。
ああいうのはどんなに見た目が良くても駄目だ。
って程度の考えではないということか。
井戸茶碗は私は好きじゃないが、結構な人数が観覧していることを思えば、
深い考えを持って見に来ている方も多いということか。
私に取っちゃ茶碗は持ったときの感触、飲むときの口当たり、だまにならない。
そんな程度しか重要視してないが。
美術品を見る目を持たない私にとっては楽しむ先生を見る場でもある。
「ねえ山沢さん、これ。こういうの私好きなんだけど」
どれどれ?
「ああ、これですか。んー」
「でもこういうのに合うお道具がないわねえ」
「あ、細川さんの茶会のときにこういうの使ってましたよ、たしか」
「流石は、ねぇ」
いろんな井戸茶碗を鑑賞して、疲れた頃帰ろうということになった。
「どこで昼食べます?」
「あのね、ここ」
とメモを見せてくれたのは駅にも近いところ。
お友達に聞いたそうだ。お勧めのランチのお店。
行ってみるとなるほど先生が気に入りそうな。
流石はお友達だなぁ、よくわかっているんだな。
お魚のランチとお肉のランチを一つずつ頼む。
出てきた量を見て私は一品も注文。オムレツ。
先生はデザートにパフェを、私は蕨餅。
蕨餅が先生の前に置かれてしまった。
イメージだろうな、お魚食べてた着物美人はパフェじゃなく蕨餅なんだな。
先生がくすくす笑う。
それが綺麗で可愛くて、つい微笑んでしまう。
デザートも美味しくいただいて外へ出る。
昼はまだ暖かく、少し歩かない?というので表参道を歩く。
ヴィトンやディオール等々ブランドショップを見たが欲しいものはなかったようだ。
欲しいものがあれば買ってあげるのだが。
まあ女性は見て歩くの好きだからなあ。
「そろそろ帰る?」
「もういいんですか?見たいものとか有るならいいですよ」
「だってお買物なら他の人ともできるもの」
「可愛いこと仰る。じゃ帰りましょうか」
先生から手を繋いできて、嬉しいなあ。
電車を乗り継いで自宅へ。
その前に百貨店に寄りたいと言う。
デパチカでお弁当なりお惣菜を買おうと。
ああ、なるほどそうしたら篭れるな。
好きなときに食える。
銀座で降りて松屋に入った。
「あらこれ…いつか京都に行ったとき食べたわよね」
「ええ、そうですね、懐かしいな。
 これがいい? OK、これとなだ万とひとつずつしましょう」
お弁当二つと朝食のパンを手に家に帰った。
ストーブと床暖のスイッチを入れ、弁当を冷蔵庫に仕舞う。
手を洗って着替えた。先生も浴衣に着替えている。
お茶を入れてお茶菓子を出す。ほっこり。
ラグの上に座って先生ものんびりしている。
「疲れましたか?」
「ちょっとね。膝枕してくれるかしら?」
「いいですが寝心地悪いですよ」
膝の上に頭を乗せて寝転がる先生。
しばらくして、堅いわね…と起きてしまった。
「腕枕の方がまだいいでしょう? おいで」
引き寄せて一緒に寝転ぶ。
「ん、でもこれじゃあなたしたくなっちゃうでしょ?」
「ええ、でもかまいませんよ。まだ時間はたっぷりありますし」
うとうとする先生。可愛い。
頬にかかった髪を撫で付けてあげて、背中を撫でる。
昼寝は布団だと良く寝れないんだよな。そんなもんだ。
寝顔を眺めて小一時間。流石に腕が痺れて感覚が…。
と思ってたら起きたようだ。小さくあくび。可愛らしいなあ。
頭を撫でるとむくっと起きてトイレに行ってしまった。
さて、手の痺れが戻ってきた。つらい。もがいてしまった。
早くもどれ血行!早く!
楽になってきたのでお茶を飲んで落ち着く。
先生も戻ってきた。
隣に座って私に身を持たせ掛ける。
くそう、かわいい。
可愛さのあまりキスしてしまったじゃないか。
そのまま床に押し倒して浴衣の上から乳を揉む。
「脱ぐの、待てないの?」
「無理、あとでなら」
「着たままなんて…あ、ん…ん、いやよ、ね?あっ…そこ」
「ちゃんと脱がせて、あげるから。もっと声出して」
「いや」
痛っ、指を逆側に曲げようとするのはやめてくれ。
「もうっ、いやって言ってるでしょ。そんな顔しないの」
「だって…あなた色っぽいから。我慢できない」
乱れる裾の中の、白い太腿へ口付ける。
「誰がしていいって言ったのかしら」
あ、れ、冷たい声。もしかして怒ってる?
ちらっとうかがうと額に青筋。
「えぇと…ごめんなさい」
身を起こして、先生も引き起こす。
はだける胸。乱れる裾。
マテを食らわされてる気分だ。
ふぅ、と先生のため息。
浴衣の帯を解いて脱いでくれた。
「ベッド、行きましょ。ここはいやよ」
「ここがいいです」
「だめよ。来なさい」
大人しくついて行きベッドに入ると先生に言われた。
「やさしくして。できるでしょう?」
「えぇと、はい」
まずはキス。軽く。
「いい子ね」
もう一度今度はしっかりとキス。
乳房をそっと撫でて軽く揉む。
唇を離して、首筋に、鎖骨に乳房にキスをする。
片方の乳首を弄りながらもう片方の乳首を舐めると、喘ぎ声。
そういえば胸だけで逝けたはず、と思い出してしばらく胸を責める。
…あれはたまたまか。
あきらめてお腹をなでたり太腿をなでたり。
膝を開けさせる。恥ずかしそうにしているのがいい。
襞をくつろげるとたっぷりと濡れていておいしそうだ。
突起を軽く舐めると膝を閉じようとする。
「キスして」
舐められるのはいやか。
キスをしながら突起を弄り、中に指を入れてこねる。
指を動かすごとに喘いで、足をうごめかせ、指は私の背に傷をつける。
ぎゅっとしがみつかれ、背を抉られる。
相変わらず、逝く時に逝くとはいえないらしい。
荒い息の落ち着くのを待つ。
少し収まってきた頃、頭を撫でられた。
…ちょっとムカ。
子供扱いするのか。
「なぁに?怒ったような顔して」
うー…。
「ちょっと、怖いから…ね、どうしたのよ」
頭を撫でていた手を降ろして私を押し返そうとする。
構わず抱きしめて耳を噛む。
怖がらせつつ感じるところを刺激する。
困ったような、怯えるような。そんな先生の様子を楽しみ、逝かせた。
「どうして…こんな…こと…」
「子供扱いするからですよ。エッチのときの主導権は私に渡してくれなきゃね」
「だからって…ひどいわ」
「それとも。道具使って欲しかったですか?」
「いやよ!あれはいや。それくらいなら…」
「それくらいなら?」
「どっちもいやよ」
そうくるか。
「いやよいやよも好きのうち~♪」
「じゃないわよ、怖いのは嫌よ」
くくっ可愛いねえ。
しかし。気持ちのよい肌だなぁ。
ずっと背中を撫でて、肩をなでて、腰をなでまわしているけど。
ざらついたところがない。
なんとなく唇にキスを落とす。
そのままディープキス。
むさぼっていたら先生のお腹がなった。
「…腹減りました?」
「そうみたい。お昼あんなに食べたのに…」
恥ずかしげで可愛いな。
「メシにしますか」
「そういいながら腕に力入れたわよね。まだしたいの?」
「したいですねぇ。もっと声聞きたいな」
「ご飯食べてからでいいじゃないの」
「それもそうですね」
「でも離してくれないのね」
ぺろりと唇を舐めて。
「あなたを食べ足りない」
「少しお腹がすいてるほうがおいしいものよ?」
「言うようになりましたね」
あきらめて腕を緩め、先生を起こす。
ベッドから降り立とうとして先生がふらついた。
背中を抱きとめて、そのまま抱き上げる。
「そういえば結構筋肉質よね…」
壁際で一度降ろし、寄りかからせてさっき脱がせた浴衣を着せた。
また抱えあげて食卓の前で降ろし、お弁当を先生の前に広げる。
俺は…先生の後ろ。背中を抱きしめる。
「食べにくいわ。横に来なさいよ」
「ここが…」
「食べさせてあげるわよ?」
……横へ移動。
「口移しはありですか?」
「してほしいの?」
「ええ」
「やっぱり山沢さんって…」
「ん?」
「変態よねえ」
「今更ですよ。してくれます?」
天麩羅を咀嚼して。口移しにしてくれた。
飲み込む。
「こんなのでいいの?」
「ええ、嬉しいですね」
「後は自分で食べなさいよ」
笑ってる。なにか面白かったようだ。
苦笑して横でお弁当を半分個ずつ食べる。
両方有名店と言うこともあり、うまい。
先生も美味しそうに食べている。
最後の一つを先生が口にし、キスされた。口移しにしてくれる。
飲み込んでそのまま舌を絡める。
口を離すと、お茶入れてくれる?と言われた。
お湯を沸かす。
「先生、紅茶か緑茶か中国茶どれがいいです?」
「なんでもいいわよ~」
では老水仙を。
「あら。こんなお茶もあるのねえ」
「おいしいでしょう?」
二杯目を注ぐ。
「あら?あらあら?」
「面白いでしょう?これ。八杯目くらいまで味が変わっていきますよ」
更に三杯目。
「あらほんと。でもそんなに飲めないわよ」
「適当に飲みやめりゃいいですよ。
 お茶だけなのもなんですし、お酒も持ってきましょう」
伏見の酒から大鷹と嵯峨紅梅を。
錫の酒器に一つずつ注ぐ。
先生には杯、俺はぐい飲み。
「大鷹、甘くて美味しいわね」
そっちは中口だよ…。
俺の飲んでるほうを一口飲ませる。
「これ凄く甘いわねえ…」
「覚えてます?ほら、最初に先生とした時。あの時のですよ」
「そういえばこんなラベルだったかしら」
「まさかここまで、あなたが私とこうなってくれるとは思ってなかったんですけど」
「そうねえ。思わなかったわ」
「まぁどうしてとは思いはしますが嬉しいんでいいです」
「どうしてかしらねえ」
軽くキスする。
「ねぇそういえば山沢さん。煙草すってたわよね」
「ああ。最近吸ってませんね。キスしたとき味がするの嫌かと」
「そんなこと気にしてくれてたの?吸ってもいいわよ?」
「いや、やめときます」
もう一度キス。
「お酒も口移ししてほしいの?」
「それは私から」
ぐいっと呷り、口付けして流し込む。
こくりと飲み込むその白い喉に触れる。
少し、こぼれた。
たどって舐めて行く。
「ん…」
白い肌がほのかのピンク色になってきた。
「吸うならこっちがいいな」
浴衣の胸をはだけさせ、乳首を舐める。
「吸っても何も出ないわよ?」
「ぶっ、笑わせないで下さいよ、もー」
横に転がって笑ってるとお酒を先生から口移しされた。
う、辛い。大鷹か。
「山沢さんも…上気してるのね」
「好きな女とキスして冷静でなんていられませんよ」
先生が私の浴衣の前をくつろげる。
「噛んだ痕、すっかり消えちゃったわねえ」
「浮気、しなかったでしょう?」
「でもあんなところ、行ったわよね」
と乳首をひねられた。
「いたた、捻らないで下さいよ。仕事だったんですから」
「断れるものは断って頂戴」
「ええ、勿論です。じゃないとキスもできない。あれはつらかった」
先生からキス。は良いけど乳首痛いってば。
「痛いから離しなさい。そんなことしてると縛りますよ?」
よしよし手が離れた。
「そんなに縛られるの、嫌ですか?」
「だって恥ずかしいもの。いやよ。いやらしい」
「そういういやらしい事が大好きな俺とこうなったからには」
「駄目よ、させないから」
「手強いな。ま、なにかあなたが悪いことをしたときにとっておきますよ」
「しないわよ」
「だといいですね…ってなに萎縮してるんですか」
「だって…」
「だめだ、かわいい。したくなった」
「いやよ」
「ここでします?していい?」
「なんでここでしたいの?」
「なんでって…なんでだろ。そのほうがエロいからかな」
「私はそういうの、嫌なのよ」
「あ、やっぱり?」
「わかってるのになんでなのよ…きらい」
背を向けられてしまった。
「わかった、わかりました。わかったから嫌いなんていわないで下さい」
身を起こして抱きしめる。
「わっいけませんて!」
湯飲みにお酒ついで一気に飲んじゃったよ。
「そういう飲み方、駄目ですよぅ」
「酔わなきゃ出来ないわよ、あなたがしたいようなこと…」
「しないから。そんな飲み方、しないで下さいよ」
湯飲みを手から離させて、その手を撫でる。
「好きです。だからしたくないっていうならしません。怒らないで」
「床で…するのはいやよ?」
「はい」
「えっちしたい?」
「はい。でももう少し飲みたいならいいですよ」
「お手水。連れて行ってくれる?」
抱き上げてトイレに連れて行く。
裾をまくって座らせて。ついキスを。
「きゃっ。もうっ。こんなところでだめよ」
「見てましょうか?」
「馬鹿なこと言ってないで外で待ってて頂戴」
「はいはい」
外で待つことしばし。
呼ばれて抱きかかえて。ベッドへと言われてベッドに降ろした。
「少しくらい酷くったっていいけどあまり変な事はやめてくれないかしら」
「そいつは難しいな。あなた、俺がすること殆どが変なことだと思ってそうだし」
くにくにと乳首を指先で潰す。
「普通がいいけど…物足りないんでしょう?山沢さんは」
「普通か。…体はどうでしょうね、いつも結構に…」
「叩くわよ」
「そーゆーところが可愛いんですよね」
恥ずかしがって頬が赤い。
「普通だとあなた理性飛ばしてくれないから。イクとも言ってくれないし」
「そんなの言えないわよ」
「言わないでいいですけどね、おまんこいいのとか言われるほうが吃驚ですし」
「ばか、言うわけないでしょ…そんなの」
翳りの中に指をうずめてとろとろになったそこを楽しむ。
「でも気持ち良いんでしょう?」
こくりとうなづく。
乳首をこねたり、突起をこねたり。
何度も逝かせて喘ぎ声を楽しむ。
先生が涙目になった頃、やっと落ち着いた。
撫でていると酷いんだからと詰られる。
「大声出すの、いいでしょう?たまには」
「声枯れちゃいそうよ」
少し会話をしていると途中で応答がなくなった。寝てしまったようだ。
本当に可愛い人だなぁ。
布団をかぶせてベッドから出て、お酒を片付ける。
明日はどうしようかな。
一日ずっとしてたんじゃ先生がつらかろう。
さっさと先生のお宅に戻して八重子先生たちと飲むか?
それもいいな。
心が決まったので先生の横にもぐりこむとしがみつかれた。
寝息。無意識か。
可愛すぎて甘くなってしまう。困ったな。
泣き顔見るのも好きなのに。
翌朝、懐の中で先生はまだ良く寝ている。
綺麗だなぁ…。
体も子供産んでるのにそう崩れてなくて…。
もう少し寝るか。
うつらうつらと先生の寝息を聞きつつ。
6時を過ぎた頃、先生が起きた。
が、もぞもぞしたかと思うとまた寝た。
結構に疲れるのかな。
1時間半ほど寝て、トイレにおきる。
部屋に戻ると先生が起きていた。
「もう少し寝ててもいいですよ」
「うん。お手水つれてってくれない?」
「やっぱり立てませんか」
「山沢さんが悪いのよ?仕方ないじゃないの」
先生をトイレに連れて行って、部屋に連れ戻して。
もう少し寝るかと聞けば、寝るという。
一人で寝かそうとするとしがみつかれたので俺ももう一度ベッドにもぐりこんだ。
「一人で寝てるの嫌ですか?」
「折角一緒にいるんだもの。嫌じゃなかったらこうしてて?」
可愛いことを言うのでキスした。
「寝るんだから駄目」
懐に抱いて撫で、一緒に寝る。
普段ならこんな時間に寝てるなんて自堕落なことはしないだろうに。
あ、そういえば昨日化粧落とさせるの忘れた。
薄化粧だからいいのかな。
そんなことを思いつつ、うつらうつらと…。
起きたら11時だ。腹が鳴る。
こりゃ昨日買ったパン食うよりはどこか昼飯食いに出るべきだな。
とりあえず洗顔しよう。
顔を洗って歯を磨いて戻ってくると、先生が身を起こしてぼんやりしている。
「立てます?」
そろりとベッドから降りて。
おっと、一応立てるようだ。ふらついてるけど。
手を貸して連れて行き、体を支えて洗面所を使わせる。
お化粧は一応和室に鏡台有るからそっちでして貰うことにして。
まぁどうせ着替えるのも和室だし。
「メシ食いに出ようと思いますがどうです?出られそうですか?」
「そうねえ、手を引いてくれたら大丈夫だと思うけど」
「何か食いたいものあります?」
「ステーキ食べたいかも」
「ホテルでいいですか?席あるか聞いてみますね」
ホテルの鉄板焼の部署に問い合わせる。二人。1時間半後ならOK。
風呂入ってゆっくり着替えて化粧したらそんなもんだろう。
シャワーを浴びさせ、着付けを手伝って、座鏡の前に座布団を置いて座らせた。
先生が化粧をする間に自分の着替えをして財布の中身を改め、出る用意。
パチリとファンデの蓋を閉める音。
化粧、終ったようだ。
トイレに連れて行って、さてと。行きますか。
「山沢さん、凄くお腹すいてるんでしょ?」
くすくす笑ってる。
腹鳴ってるの聞こえてたのね。
タクシーでホテルまで。
レストランへエスコートしてステーキでランチ。
「なんとなく和食のイメージだったんですが」
「たまにはいいじゃないの」
うまいなー肉。先生も美味しそうに食べていて、なんか嬉しい気分だ。
結構健啖家だよね。
ごちそうさまをして、一度連れ帰る。
「おいしかったわぁ」
「ですねー」
お茶を入れて、落ち着いて。
「そろそろ帰りますか?」
「どうして?」
「ここにいたらしちゃいそうですし。明日また立てなくなりますよ?」
「あら、それは困るわねえ」
「立てなくしてずっとうちにいてもらうのもいいですけどね」
「怒られちゃうわよ?」
「私が怒られるだけなら別にいいんですけど。先生も怒られちゃいますね」
「そうねえ、よく言われるもの」
「それは申し訳ないことを」
「激しすぎるのよね、山沢さんの」
「飢えてますからねー」
「えっちなことに?」
「あなたに」
「一緒に居るのに?」
「もっと触れて居たいし、抱いても居たいし声も聞きたいですよ」
「若いわねえ」
「膝の上、来てくださいよ」
「駄目、帰るわ」
道行を着て、私のナリを見る。
ちょいちょいと直されて羽織を着せられた。
「家まで一緒に来てくれるのかしら」
「当然ですよ」
キスをしてくれた。嬉しい。
部屋を出て、電車に乗る。
道中、そっと私の手を握っていてくれて周囲に聞こえない程度に会話を交わす。
最寄り駅についてタクシーに乗る。
バスでもいいんだけど二人だと大して変わらない。
とはいえ、誰に見られるかわからないから手を握る以上は出来ないが。
お宅の前について、手を引いて家の中へ。
「ただいま」
「お邪魔します」
「あら、あんたら早かったね。夜になるかと思ってたのに」
「いやぁ、夜までじゃ先生の体力が」
って頭叩かれた。
着替えてくるといって席をはずされた。
「八重子先生も一緒に飲まれませんか?この間のお酒」
「そうだね、明日はお稽古もないしそうしようかね」
「じゃどれがいいですかね。大辛口とか?」
「鶴齢持ってきて」
おや、もう着替えたのか。
「天神囃子もいいですか?」
「いいわよ」
日本酒ケースに積まれて居る中から捜索。
鶴齢と天神囃子の二本と、うちからもってきたぐい飲みを持って居間に戻る。
八重子先生が台所からおつまみになるものを持ってきてくれた。
絹先生が燗鍋を出してきて鶴齢の御燗をつける。
つくまでの間ぐい飲みに直接注ぎ乾杯。
少しほろ酔いになった頃、晩御飯はお鮨を取るという話に。
俺は玉子のみで頼んだ。
「魚いらないのかい?」
「実は魚好きじゃないんです…」
「あらそうだったの?魚屋さんなのに変ねえ」
笑われつつもお鮨が取られて、律君と孝弘さんを呼んで晩御飯。
「はい、山沢さん」
と玉子を取ってくれる絹先生に律君。
「お母さん、山沢さんにも魚とってあげたら?」
苦笑。
「山沢さんは玉子がいいのよ。ねえ山沢さん」
「ええ。玉子がいいんです」
「遠慮してるんじゃ…」
「してるの?」
「してませんよ」
「ですってよ」
孝弘さんが勢いよく食べてる。
やっぱりこの家は食費が凄いだろうな。
食べてしまうと孝弘さんはすぐに部屋に戻ってしまう。
律君にも飲ませてしまえ。
「いや明日学校あるんで…」
とそんなに飲まないうちに退散されてしまった。
先生方に飲ませて、飲ませて、飲ませる。
絹先生はべったりと俺にくっついてキスしてきた。
八重子先生はにこやかに見ている。
いいんだろうかこの状況。
酔っ払いだから仕方ないのか。
あ、寝息。寝ちゃったか。とりあえず横に転がしておこう。
「先生の部屋に布団していきますね」
「はいはい」
布団を敷いて、先生を回収して寝かせる。
戻って八重子先生と更に酌み交わす。
「随分あんたには素だねえ、絹も」
「そのようで嬉しいです」
「結構あんたを困らせてるんじゃないのかい?」
「ええと、まあそういうこともありますが。我侭いわれたりとかも楽しい時期なので」
「じゃもうすぐしたら呆れる時期かねえ」
「どうでしょうね。八重子先生にはご心労おかけして申し訳ないと思ってます」
「いや別に良いんだけどね」
「やっぱり末っ子なんだなあと思うことはありますよ」
「まあねえ、しかも実家暮らしだからねえ」
「ま、その私も末っ子なわけですが」
「だと思ったよ」
「わかりますか?」
「わかるよ、結構甘えたいほうだろ、山沢さんも」
あ、頭撫でられた。
「絹には甘えにくいなら…」

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拍手[1回]

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フロントから電話。
飯嶋八重子様からお電話がかかっております、だとさ。
繋いでもらって電話を受ける。
絹先生が今さっきこちらに向いて発ったそうだ。
受け入れて泊めてやってくれと。
「火曜日までにお帰し出来ないかもしれませんがその点は…」
『それはいいけどあまり酷いことはしないでやってくれないかい』
「出来る限りは」
電話を切ってフロントにダブルの部屋にチェンジしてもらうことにする。
スーペリアしか空いてなかった、しかたない。
移動し、21時前後に人が来るかもしれないので、来たら通してくれとお願いする。
それまでは少しでも寝よう。つらい。
21時を少し回った頃先生が来た。
起きてドアを開ける。
ソファに座るよう言い、手を洗うことにした。眠い。
先生は怒気を感じて少し怯えているようだ。
座っている後ろから首に手を回す。
喉に触れると息を呑んだのがわかった。
「来るなと言いませんでしたか?」
「ごめんなさい…でも…」
「なんですか?浮気なんかしていませんよ、わからない?」
「だって…」
深呼吸、落ち着こう。
携帯をとり、昨日の座敷の写真を見せる。
年寄芸妓数人と私の写真。
「これでわかりますか、浮気なんざしていません」
「でも若い女の子の声がしたわ、それは?」
「仲居さんです」
「そう、そうだったの。ごめんなさい」
「メシ食いましたか?」
「えっ? あぁ、まだよ」
「食いに行きますか、俺も腹が減った。腹が立ったからですけどね。それとも」
再度、喉に触れる。
「あなたを食べてもいいんですが、ね」
先生は怯えて身を縮めている。
「あの、ご飯、食べに行きたい、です…、山沢さん…怖い…から、よして」
「ちょっと待っててください、着替えます」
さっと着替えて先生の手を取る。
「メシ、行きましょう。和食か洋食かどちらが良いですか」
「和食でいいわ」
「居酒屋ですがいいですか」
「はい…」
食事処に連れて行き、先生が好みそうな酒を注文する。
いくつかの料理とご飯。
酒とメシのうまさに少し気分がほぐれて。
先生はほろ酔い、俺は満腹で部屋に戻った。
「あれ、そういえば鞄それだけですか?」
ハンドバッグしか持ってないじゃないか、泊まるつもりなら着替えは?
「慌てたから、お財布しか持ってないの…どうしよう」
うーん、この時間じゃどこも開いてないな。
とりあえずパジャマだパジャマ、俺の予備着せるか。
「あーパンツいりますか? 洗顔料とかもいりますよね」
戻る前に気がつけばよかった。
コンビニがあったはずだからそこで調達しよう。
明日ドラッグストアなりデパートなり行って買えばいいし。
一回分セットのお泊りセットとショーツ、ヘアバンドを購入。
部屋でパジャマに着替えさせて洗顔させる。
脱いだ着物は衣桁も着物ハンガーもないのでベッドの上で着物を畳み、
私のジャケットの中に入れておいた。
あとは寝るだけだ。
先生が髪を解いて戻ってきた。
ベッドに腰掛けて気恥ずかしそうだ。
パジャマ姿は見慣れないな。
「さてと、早いけど寝ますよ。入って」
ベッドの布団の中に連れ込んで懐に抱く。
少し身を硬くしているようだ。
「このまま寝るか、気絶するまでかどちらが良いですか?今日は選ばせてあげますよ」
顔を赤らめて迷いを見せる。
「あの、このままで…いいわ」
まあ疲れてるわな、茶事のあと電車でここまでだ。
しかも怯えてたし。
頭を撫でて、おやすみなさい、と声をかけて。
駄目だ、先に寝ちまう。
翌朝暗いうちに起き出して移動。
10万を渡して着替えを買うなり化粧品買うなりして待つように言う。
帰りたければ帰ってもいい。
気がかりだが仕事仕事、漁港へ足を伸ばして挨拶回り。
昼前、交渉も終わりホテルに戻る。
先生がいてほっとした。
「ただいま。買物してきました?」
「おかえりなさい、お化粧品とパジャマと下着だけ…」
「朝はどこかで食いました?」
「駅にあるカフェで食べたわ。モーニングセット。おいしかったわよ」
「そりゃ良かった、まだ腹は減りませんか?」
「んー、そろそろ空いたかも?」
「じゃなんか食いに行きましょう。何が良いですか?」
「ここの1階のレストラン行ってみたいわ」
はいはい。
先生は和食のイメージだけどイタリアンでもいいのか。
「あ。3階行ってみました?」
「ううん、行ってないわよ、どうして?」
「行ってないならメシの後いきましょうね」
店に入ってメニューを開く。
俺はステーキにしようか。腹減った。
と思ったら本日のピザとパスタが美味しそうだというのでペアセットに決定。
料理が来る間、昨日の茶事の次第について聞く。
なんとかの理由は糊か。糊が緩かったらしい。
乾いてたから緩めたら緩くなりすぎた、そういうことだな。
少し拗ねた顔つきで、そういう失敗もすべて俺の所為だという。
「帰って来いって言やぁ良かったんですよ。
 あの時間からなら夜中になりますがたどりつけてましたよ。
 あなたも怯えずに済んだんだ」
「今思うとそうよね、来てって言ったらよかったわよ」
料理が来たので半分ずつ食べながら会話を続ける。
「まぁ昨日は腹も立ちましたが。会えた事自体は嬉しいと思ってます」
「あら、本当?」
「好きな人が4時間近くもかかるのに、疲れてるのに来てくれたんですからね、
 嬉しくないわけないでしょう」
「昨日は本当にあなた怖かったわよ、首絞められるかと思ったもの」
「怖くしたんですもん。怖がってくれないと困りますよ」
「…怖がってるのがいいの?」
「えぇと、そういうときもあるかも」
腕をつねられた。
「怒ってます?」
「ちょっとだけね」
「可愛いな、そういうところも好きですよ」
「もうっ」
額を叩かれて。
「でも先生、私のためにお家の事や仕事をおろそかにはしないで下さい」
「してるかしら…?」
「お稽古休んだりとか…こんな風に来てしまうのは良くないことです」
「でも…あのまま木曜日までなんて待てないわよ」
「そういう時は一言、釈明しに来いと仰ってくださいよ。なんとかしますから」
「今度からそうするわ」
ケーキとコーヒーをいただいて。
「あ、そうそう。お釣。7万と4800円」
「あれ?化粧品そんなに安かったんですか?」
「いつものなくて。キュレルのトライアルキットお勧めされたの」
「ああ、あれは割りと合う人が多いそうですね」
「それと下地とファンデとアイブロウとリップと買ったけど良かった?」
「それはいつものあったんですか?」
「うん、そうなの」
「そりゃ良かった、合わないの買ってもしょうがないですもんね」
「ちょうどそろそろ買わなきゃと思ってたの。戻ったらお金返すわね」
「返さなくていいですよ」
「あら、だめよ」
「いいんですよ、それくらい払わせてください」
「ありがとう。そろそろお部屋戻る?」
「そうですね、一度戻りますか」
戻る道に3階へ連れて行く。
大量の酒に驚いたようだ。
「後で飲みに来ませんか?先生の好きそうなのもありますよ」
「あらー、楽しみね」
とりあえず一度部屋に戻って腹ごなしに…。
「抱いていいですか?」
くすくす笑いながら着物を脱いでくれた。
その間に手を洗って、自分も脱いだ。
「ね、山沢さんの使ってる化粧水、あれなぁに?」
「ああ。ここで売ってたんですけどね、あなたに合うかわからなかったから。
 コンビニのやつなら前使ったやつ有りましたでしょう?」
「お酒の化粧水ってどうなのかしら。味とかするのかしらね」
「さすがにしないでしょうよ」
そっと翳りに手をやるとすでにとろけるようになっていた。
「期待、してたんですか?」
「そうよ…いけない?」
深くキスをして。
「俺も期待してましたから」
リングのついた乳首を玩び、少しきつめに締める。
「ラブホじゃないんで大きい声出しちゃいけませんよ?」
濡れている所に指をすりつけて少し勃ってきた突起を刺激する。
ぎゅっと私の腕に爪を立てて、喘いで、可愛い。
「ねぇ、キスして、声、無理…」
口をふさぐようにキスをし、むさぼる。
痛ってェ、舌噛まれた。逝ったのか。
「ご、ごめんなさい、噛んじゃった…」
「うぅ…」
結構痛い。
腕を先生の口に押し当てて、激しく突起をこねる。
がっちり腕に歯が入る。
背中を引っかかれる。
強く噛まれること5回、手を休めると先生もちょっと涙目だ。
「酷いわ、わざとじゃないのに」
「わざとだったらもっと酷いことしますよ」
噛むんなら腕か胸かその辺にしてくれ。舌は駄目だ。
「落ち着きました?じゃ、中入れますね」
んっ、という声。
思わず出る声ってのは良いね。
中を堪能してゆっくりとなぶる。
耳元での荒い息、我慢して漏れる声。ぞくぞくする。
たかが4日しか離れてないのにこんなにも飢えていた。
一週間我慢してたら先生の家では出来なかったな、八重子先生に怒られる。
「好きです、愛してる…」
「んんっ、私、もよ…」
「嬉しいです。あなたのえっちな顔、もっと見たいな」
「やっ…それはだめ…」
「恥ずかしい?」
顔を赤らめて可愛い。
「そんなこと…」
「ほんとに、ほんとに好きですよ、あなただけです」
「本当?」
「ええ、ええ、疑わないで下さい」
「信じさせて頂戴…」
「いくらでも。腕一本でも足一本でも差し上げますよ」
「馬鹿ね、そんなことしたら困るでしょ」
「それくらいあなたを愛してて、信じて欲しいと思ってるんです」
「私、山沢さんの冷静さが嫌いだわ…」
「熱くなったりしてるでしょう?よく怒ったり拗ねたりしてるでしょうに」
「そうだけど…私ばっかり気にしてる気がするのよ」
ああ、確かにあまり先生が浮気してるんじゃないかという心配はしてないかも。
「茶会。男の方は呼ばないで欲しいな、とか思ったりしますよ。私だって。
 特に岡崎さん呼んだでしょう。あの方気があるんですよ、あなたに。」
「そうなの?」
「あの方、女性から人気ですからね、あなたを取られるんじゃないかと。
 私だってひやひやしてるんですよね。実のところ言いますが」
「あら…気がつかなかったわ」
「だからって気にしちゃ駄目ですよ。気が行くのは駄目です。許しませんよ」
くすくす笑ってる。
「山沢さんも嫉妬するのね、可愛いわ」
「俺は結構嫉妬深いんですよ。というか、からかうなら強くしますよ?」
「ん、だめ」
気持ち良さそうだ。艶だなぁ。
しばらく楽しんで俺の性欲が落ち着いた頃、3階に行かない?ということで、
先生に着物を着てもらって俺も服を着た。
「明日、俺は市場に行ったらそのあと暇なんでなんだったら湯沢行きませんか。
 そこから直接帰れば時短ですよ。夜9時前までなら一緒に居れます」
「湯沢?温泉? いいわねえ」
「塩沢に寄っても良いですね、確実な本物売ってますよ」
「あら、塩沢って近くなの?でも高いでしょう?」
「50もしませんよ、それくらいは買ってあげます」
「あら、そんなわけにはいかないわ」
「貢がせてくださいよ、ね?」
「駄目よ、それなら行かないわ」
「じゃ、気に入ったものが有ればってところで手を打ってください」
「しかたない子ねえ」
利き酒エリアに入ってまずは2000円分をコインに。
10枚ずつ持っていろんなお酒を試す。
先生の好きそうなのはこれとかあれとか…と説明。
それを飲んでみてくれる。
「あら、ほんと、おいしいわ」
私はここからスタート、と半ばあたりから飲み始める。
うっこれは酸味が強い。あ、これ辛い!
む、もうちょっとコインを足そう。1000円分追加だ!
「コイン足ります?持ってるから足りなきゃ言ってくださいよ」
「鶴齢ってどこにあるかしら、飲んでみたいんだけど」
「確か60番あたりだったような。ああ、あったこれだ」
入れてあげて渡す。一口飲んで。
ほい、とキュウリを渡すと笑われた。
「どこから持ってくるのよ~」
「え、そこに味噌と一緒にあるんですよ。塩もうまいですよ」
「あら、ほんと。お塩は見えてたけどキュウリもあったのね。気づかなかったわぁ」
「一杯が多いんなら半分助けますよ、数飲んでください」
結局20種くらい先生も試して、少し酔ってしまっている(笑)
そのまま酒売り場に移動して、好みの酒を色々と買う。
30本ほど選んで先生のお家に送ってもらうことにした。
ホテル側に向かうと食品も売っていて、どうせならと米や味噌醤油、
お土産になりそうな食品も買い込んで先生宅や自宅に送る。
「ね、お腹すいちゃったわ」
「ああ、もうそんな時間ですね、昨日のところで良いですか?
 それともどこか行きますか?」
「昨日のところでいいわ、もう動くのやだもの」
酔っ払いだから(笑)
昨日のお店、つまりここの下の階に移動して色々注文する。
頼まなかったメニューを色々と。
酒は梅酒を頼む。
メシも酒もうまくて、横には沢山飲んで酔って色っぽくなってる好きな人がいて。
幸せだなあ、しかもここは遠方ゆえに誰憚ることなくベタベタできる。
先生もにこにこと嬉しげだ。
ごちそうさまをして部屋に戻って。
先生はベッドに腰掛けてそのままぱたりと寝転がってしまった。
酔ってる酔ってる。
俺は服を脱いで歯を磨いて手を洗って先生の足元に。
草履を脱がせ、足袋を脱がせる。
素足の指先を一本一本舐める。
「あっ、ねえ、やめて。くすぐったいわ」
音をぴちゃぴちゃと鳴らしながら舐め続けていると喘ぎ声に変わってきた。
性感帯ひとつ見つけた♪
甲の足袋の縫い目に沿って痕がついてるラインを舌でなぞる。
「あ、ん、脱ぐから、そんなところ舐めないで、ねぇ」
「ここ、感じるでしょう?」
足首の痕のついたラインも丁寧になぞる。
「駄目よぅ、やめてくれなきゃ踏むわよ?」
「踏む…それもいいですね」
「……変態ね」
「ええ、変態です。踏んでみます?酔ってる内ですよ」
何か迷っている気配。
「踏まれたいのー?」
「あなたが女王様ってのもたまには良いかなってね」
「無理よぉ、そういうの。わからないもの」
「わからない?じゃ、しょうがないですねえ。
 ま、とりあえず脱いでてください。口濯いできます。
 足舐めた口でキスされるのは嫌でしょう?」
「うん…わかったわ」
先生が脱ぎ始めたのを尻目に再度口をすすぐ。
そばに行って今度はちゃんと唇に、耳に、首筋にとキス。
昼に締め付けを強くしておいたリングの所為で乳首が凄く勃っている。
こりこりと弄ると更にピンと勃って、先生からは喘ぎ声が出る。
背を撫でてその手を腰へやり、立たせたまま翳りに口付ける。
膝を突いて濡れそぼつ裂け目を舐める。
先生はやり場のない手をわたしの頭に持って行き髪を掴む様にして耐える。
膝が笑っているのを楽しみながらお尻を撫でたり太腿をなでたり。
「もうだめ、ベッド、行かせて。お願い」
「ここで逝ってからね」
「やっ、ああぁ、むりよぉ」
「支えてるから大丈夫、我慢しないでいいですよ」
「んんっ!」
ぐっと顔に股間が押し付けられて体重がかかる。
腕でしっかりと先生の体を支え、先生の痙攣が治まるのを待つ。
このまま倒れて床でこれやると顔面騎乗だよな。
ひょいとベッドの上に転がして伏せさせる。
背中を舐めつつ乳房を玩ぶ。
気持ち良さそうな声が聞けて嬉しい。
まるい双丘も撫でたりなめたりして楽しむ。
肌が綺麗で良いな。
割れ目に舌を沿わす。
窄まりに到達、音を立てて舐めると、そこは駄目、いやよという。
舌を少し押し込んで嫌がる声を楽しむ。
「ここ、いつか入れて欲しいっていうようにしてあげますよ」
「そんなこと言わないわよ!もう!」
「言わない人を言うようにするのが楽しいんですよね。
 こっちの穴だってほら、前はいれてなんて絶対言わなかったでしょう?」
と、膣のほうに指を入れる。
「んぅ、だって焦らすから…」
「自分でしたりしないんですか?もう今ならどこが良いかくらいわかってるでしょ?」
「出来ないわ、そんなふしだらな事」
「後で俺の前でして」
「そんなのできないわよ…ばか」
「見たいんだ、ねえ、してみせて」
「やっ、無理」
「あなたの淫らな姿もっと見せて。あなたのことすべて知りたい」
「私。こんなにえっちなこと…山沢さんとするなんて思ってなかったわ」
「思ってもない性癖が出たりするものですよ、だから沢山色々するんです」
「あの…排便とかは無理よ?」
「食糞とか塗りつけは無理でしょうね。
 でも出すのを見られるの恥ずかしいでしょう?
 それが気持ちよくなることもあるんですよ」
「やだ、もう」
「恥ずかしい、が気持ち良いにリンクすると楽しいですよ」
尾底骨のあたりをくすぐりながら中を刺激する。
大きい声が出ない程度に、いいところを探る。
「あっ、も、だめ」
きゅっとお尻の穴も窄まって逝く。
可愛いよなあ。
背面からやった後はキスしてちゃんと抱きしめないと嫌がるんだよな。
もてあそばれている気がするらしい。
でも酔ってる分いつもよりはちょっとえっちで可愛い。
「もぅ、なんで山沢さん、いつもそんなに冷静なのよ…」
「冷静?そんなわけないでしょう、ほら」
先生の手を私の股間に導く。
「あ、すごい…」
その手を引き寄せて一本一本丁寧に舐める。
音を立てて舐めるとなにやら先生が恥ずかしげだ。
俺のほうが恥ずかしいんだけどね、本当は。
先生がその指をぺろりと舐めた。
そのまま指と舌と、先生の舌を絡めて。
先生の舌から指に糸を引いて、その指をまた俺が舐めて。
「意外と…ぬめりって取れないのね」
「ちょっ、今更何を。何度も舐めさせてるでしょう、あなたの」
「だって舐めてる間にあなた色々するから!そんなこと気づいてなかったのよ」
にゅるっと先生の汁を掬って口へ持って行く。
「じゃ、ゆっくり舐めてみて?」
「いやよ、恥ずかしいわ」
そう言ってる先生の口に指を滑り込ませる。
しばらく舐めさせて、指を抜く。
「ほんとに中々取れないのねぇ」
「糸を引くほどの時はそんなもんですよ」
「あら、じゃ山沢さんもそれくらい、良いの?」
「ま、そういうことですね」
先生が私の股間にまた手をやり、ぬめりを楽しんでいる。
「すごい…熱い、ねえ、私のもこうなってるの?」
「そうですよ、熱くて軟らかくて滑らかで。自分で触って御覧なさい」
先生は自分の股間に手をやり、まさぐっている。
いいところに触れてしまったようで慌てるのが可愛らしい。
悪戯っぽい顔をしてこちらを見る、これはやばい。
くっ、自分のいいところは相手のいいところと気づいたらしく、私の突起を弄る。
我慢して耳元で囁く。
「酷いこと、されたいんでしたっけ?してあげましょうか?」
あ、弄る手が止まった。
刺激されてむずむずしてしまったじゃないか、あとで風呂で抜くか。
「私を弄ってないで自分でしてごらん、見てあげる」
「恥ずかしいから嫌よ、ね、お願い」
ぬめってぐちょぐちょの指で私の手を取り、股間に導く。
自分で触れてるうちに再度したくなったらしい。
しょうがないなぁ。と沢山愛してあげた。
「シャワー、浴びてきたらどうです?汗かいてるでしょう」
「一緒に入りましょ、ねえ、いいでしょ?」
ねだる可愛さに一緒に浴びることにした。
シングルの風呂はトイレ一体型だったがスーペリアはちゃんと風呂だ。
「もう、せっかく流してるのに!」
風呂でも少し愛撫して怒られるほどに楽しんでしまった。
ベッドに戻ると先生に早く寝なさいと撫で付けられる。
「明日も早いんでしょう?」
確かに早いけど明日一日くっついたらあとは木曜の夜までお預け、と思うと。
と言ったところ。
「いつもと同じでしょ。火曜にお稽古に来て、木曜にお稽古にくるんだから」
そういえばそうだった。
「でも嬉しいわ、そんなに一緒に居たいって思ってくれるなんて」
「恋人なんですから当然でしょう」
「恋人…」
「違いました? 先生はただの浮気のつもりでした?」
「えっ?あっ違うのよ、拗ねないで!そうじゃなくて恋人って言葉が新鮮だったから」
「ああ良かった、ただの遊び、浮気って言われたらどうしようかと」
「ばかね、そんなわけないじゃない。ほら早く寝なさい」
「はい…」
頭を撫でられていい気分で寝た。
朝、暗いうちに起きる。
今日は市場見学だ。
寝ている先生の唇にキスをして部屋に置いて行く。
中央市場に着く。
なるほど、新築したというだけ有って綺麗だ。
店舗のブースも広く、通路も広い。
先に連絡してあったのでせり場や店舗なども案内していただいた。
だけど仲卸業者が少ないことに驚いた。
たった17しかない。
「築地や京都と比べると少ないでしょうが地方ですから」
まあ、たしかにそうなんだろうけど。
業者が少なくて土地が広いから1店舗あたりが広いのか。
荷物がなくて暇な日は閑散として嫌だろうなあ。
そしてやはりここでもスーパーの直接取引が問題となって居るようだ。
どこも抱える問題は似たり寄ったり。
さて入荷するものはやはり東北・北海道のものが多いとか。
地物はそこまではないのかと思ったがただの時化だった。
色々と仲卸や大卸のお話を伺う。
10時半ごろ、お客さんたちも引けたようなので見学を終了して戻ることにした。
ああ、疲れた!
部屋に戻ると先生はもうちゃんと着物を着て化粧もしていて、綺麗だ。
「先生、綺麗ですね。ただいま。ちょっと待っててくださいね」
服を着替えてスーツ姿に戻る。
昨日買って置いた利休バッグに先生の財布の入ったバッグや化粧品などを入れて貰い、
湯沢からそのまま先生が帰れるように用意した。
「さて、と。忘れ物はないですね、パンツとパジャマは後日お届けしますから」
「そうね、多分ないわよ」
「で、先に飯食って塩沢行って湯沢行きます?」
「うーん、お腹すいちゃったしそれでいいわ」
「どこ行きます?」
「おそば食べたいわ。へぎそば、ここのあたりの名産よね?」
「はいはい、じゃ一度表通り出ましょう。ちょっとうまい店があるらしいんで」
一旦ホテルから出て駅前の通りへ向かい右折。
ほんとに近くにあった。
先生は天麩羅そば、私はそば御膳。
天麩羅そばは天麩羅が乗っているのではなく別の皿で出てくる。ざるそば方式だ。
私の頼んだものはそばと、丼物のセット。
ご飯を少なめにしてもらいひれカツ丼でお願いした。
お酒も頼み、昼酒うまいなあ。
満腹・ほろ酔い機嫌で塩沢まで。
新幹線に乗って浦佐で下車、乗り換えて塩沢へ。
うお、寒い!
聞くとあちらとは3度くらい違うらしい。
まっすぐ行って一本目を左折して直進、右手角にあると聞いてその通り歩くと有った。
織物体験も出来るようだ。
少しやってみるが中々に難しい。
いざり機もあり、上布を作るのに使うそうだ。
塩沢はいわゆる厩機を使うそうである。
西陣はすでに手織機ではなく力織機を使っている。
力織機は量産には良いのだが、上布のような湿度管理が必要なものは織れないらしい。
十日町小唄に有るように雪の間はいざり機や高機に座って織るものなんだろう。
ここと十日町はそう離れていない、似たようなものだろう。
まあどこも後継者不足、手間を考えると反物の価格が上がるのも仕方ない話といえる。
納得しつつ、反物も見せていただく。
さすがの本塩沢。
これ、いいな。と思うと先生も気になっていたようだ。
先生の肩に当てて貰うと顔映りもいい。
だけどあちらの人が首をひねる。いくつか出してきてくれた。
そのいくつかを当てると更に良い、うんと先生に合う物があった。
これでいくら?仕立て込みで25?買った!
採寸してもらい、前幅を少し広めにお願いするのはお茶の人ならでは。
勿論パールトーン加工や胴裏八掛も良いものをお願いする。
後日先生のお宅に送ってくださるそうだ。
私は私で気に入った反物を買う。
「それは8万5千円、B反だけど貴方の体格なら隠れますよ」
安い。どの辺がB反?と思うとちょうど帯で隠れるようなところに柄の乱れ。
こんな程度でB反扱いか。
反物としては流通させられなくて仕立て上がりなら流通させられる。
けれど仕立て上がりにするには勿体無い織地だからB反で売ってるらしい。
八重子先生にも何か買いましょうと言うと、バッグを買って欲しいといわれた。
本塩沢のバッグ、へぇ。
ついでにストールを買った。
お買物も終えて、湯沢に向かうことにする。
記念館を出てさっきのストールを先生に纏わせる。
外寒いしね。
電車に乗り15分、越後湯沢へ。
湯の街、湯沢。
一応宿は取ってある。
だけど夜9時になったら先生をお返しせねばならない。
本日の一人寝は確定事項である。
宿に行く前にで駒子の湯へ。
脱衣所で男性はあちらです、などといわれ先生にすごく笑われる。
今日は女物のスーツなのになあ…。
ざんぶりと湯を楽しんで、あたたまって。
それから宿へ移動する。
駅から5分もかからないここにしたのはやはり利便性だ。
先生をお返しする段になって離れ難くとも、なんとか新幹線に間に合わせることが可能。
中々に良い宿で、普通に先生と泊まりたくなってしまった。
部屋に露天風呂もついている。
まずは大浴場のお風呂へ。
気持ちが良い。やはり宿の風呂のほうが落ち着くね。
「あら…もうこんなに薄くなってるわねえ…」
胸の噛み痕か。
「部屋に戻ったらまた噛みますか?」
「そうね、浮気されちゃ嫌だもの」
「…まぁいいか」
「なぁに?」
「なんでもありませんよ。しかし、綺麗ですね、先生」
「あら、嬉しいわ」
「肌も綺麗だし、白いし。だから温まるとピンクになる」
あ、顔も赤くなった。
パシャッと音をさせて先生が私の肩に手を置いて。
「ね、帰る前に…」
ガラガラッ!
先生は慌てて俺から離れた。
うう、他の宿泊客かっ。
「そろそろ上がりますか?」
「うん、そうしましょ」
体を拭いて、ふと見ると先生、背中が拭けてない。
さっと拭いてあげて浴衣を羽織らせる。
部屋に戻って布団にごろりと転がると先生が上に乗っかってきた。
「なんだ、さっきの帰る前にって、してほしいってことでしたか?」
「恥ずかしいわ…」
「可愛いな。壊してしまいたくなる」
求められることの嬉しさよ。
わかっているのかな、こんなに嬉しいのを。
「でもね、もう少しでメシの時間なんですよね」
「あら?あらそうなの?」
「そうなんです、だから食べた後に、ね?」
「じゃ着替えないといけないわね」
宿の浴衣ではだめかというと、はだけたときに私以外に見せるのが嫌という。
なんという嬉しがらせを言うんだ。
もうなんというか、言葉に出来ない。
あ、わかった、こういう時に格好いいことの一つも言えないから不安を抱かれるのか。
「後でたっぷり見せてくださいね」
「…ばかねえ。ほら山沢さんも着替えて」
「ん?俺も?」
「だってあなたのも見せたくないもの」
あ、さいですか。ささっと着替えて一緒に飯を食べに行く。
おお、和食かと思ったらちょっと違った。
ワインにするかお酒にするか。
お酒だなお酒。
軽くいただいてご飯を食べて。美味しいなあ。
先生も嬉しそうに食べていて幸せを感じる。
食後部屋に戻って脱がせる。
「綺麗だ…」
「そんなにまじまじと見ないで。恥ずかしいわよ」
「可愛いな…」
何度しても、ちゃんと脱いだときは胸と股間を手で隠すんだよな。
丸みを帯びた肩に手をやって唇に軽くキス。
首に、鎖骨に、とキスを落としていくと私のシャツを握り締めて息を荒くする。
胸元、乳房、乳首、お腹、おへそと下げていくとお布団に、と言われた。
押し倒して再度唇にキスし、耳元で囁く。
「好きです」
「ねぇ、一度でいいの、名前で呼んで…」
「……絹、愛してる」
「嬉しい…久さん」
先生から深いキス。うぉう。
最近甘えてくれることがあってすっごく嬉しい。
嬉しくてつい優しいえっちをしてしまう。酷いこともしたいのに。
熱中して愛していたらアラーム。
え、もう9時!
「先生、帰る用意しなきゃ!身づくろいして帰らなきゃ今日中に着けませんよ!」
「いやよ、帰りたくないわ。もっとあなたと一緒に居たいの」
「だけど今日帰らないと」
「明日は別にお稽古じゃないもの、帰さないで」
「いいんですか?」
「いいの。それとも山沢さんあなた私を帰して何かするつもり?」
「ちょ、なんでそっちに話が行くんですよ、もう」
「女の人呼ぶの?」
「なんで好きな女抱いてんのに帰して、他の女呼ぶんですか」
「だって帰したそうだもの」
「本当は帰したくはないですよ。もっとあなたとしたいんですから」
口を封じるためにキス。
「なんであなたそんなに俺が浮気してるって思うんです?」
「女の人の扱い上手でしょ…だからそういうの、慣れてそうだもの」
「慣れてなんかいません。エッチのほうは手探りですしねえ。
 ほら。最初の頃。あのころはあなたのいいところがわからなくて結構大変でしたよ」
「えぇ?あら、そうだったの?翻弄されてたわよ?」
「今だから言いますが一杯計画練って手順確認してましたからね」
「イメトレ? そんなことしてたの? なんだか可愛いわねぇ」
「そんなことしないとあなたともこういう関係になれなかっった。
 あなたが好きで、手に入れたかった」
「過去形?」
「ええ、今はほら、あなたは私の腕の中だ。逃げないで下さいよ。愛してます」
「逃げたりなんてしないわ…久さんも私だけ見て。他の女の人なんて見ないでね」
「…うーん」
「なんでそこで即答しないのよ」
「いや八重子先生とか生徒さんを見ないというのは現実として難しいなと」
「もうっ!そういうことじゃないでしょっ。性的な目で見ないで!」
「ああ、それなら守れます、良かった」
「お母さん見ないでなんてお稽古にもならないじゃない。
 もう、笑えて来ちゃったじゃないのよぅ~」
「あなただけだよ、絹」
引き寄せて耳元で囁くと笑いが止まって少し震えたようだ。
「泊まるんなら、明日の朝食頼まないとね」
「あ、えぇ、そうね」
フロントに依頼する。
食材はあるらしく、この時間からの連絡なら間に合うようで良かった。
ただまったく同じものとはいかないそうで。
ま、そうだよなあ。
「ねぇ、山沢さんも脱いで…」
スラックスを脱ぎ、カッターを脱ぐと先生がきちんと畳んでおいてくれる。
その間にブラやショーツを脱いだ。
ああ、肩が凝った!と一つ伸びをしたら先生に股間を触られた。
うわわわわ。
「そんなに驚いたの?」
「いや、ね?あなたからこう、触られるのはちょっとね?」
私のものでぬめった指を私の口に押し付けられた。
たまには逆をやりたいのかな。
先生の指を丁寧に舐め取り、手の平、手首、肘の内側と舐めるとあわあわしてる(笑)
脇の下も舐めてやれ。
「きゃっ。そんなとこ舐めないで、くすぐったいわ、だめ」
「ほら、逃げないで?私の腕の中にいて」
「でも脇は駄目よ~くすぐったいもの。そんなところよりキスがいいわ」
先生の頤に手をやって深く長いキス。
舌を絡めて。
指を割れ目に滑り込ませる。
「さっき舐め取ったのにもうこんなになってる。自分でもわかるでしょう?」
こくり、とうなづく先生。可愛い。
「立ったままがいいですか?それとも四つん這いがいい?」
「仰向けで普通にって選択肢はないの?」
「さっきしたしなーと。ああ、座って膝の上はどうですか?」
「それならいいわ」
ひょいと座ると対面で座ってきた。
ええい、そうじゃない、対面だと弄りにくいってば。
「向きが違いますよ。私に背を向けて座って」
「キスできないもの」
「結構キス好きですよね。背中向ける方が密着率はいいのに」
「あら?そういえばそうね、でも私こっちのほうがいいわ」
「ま、なんでもいいですけどね」
「投げやりね」
「どんな格好でもいいですよ、あなたがこの手から逃げないなら」
「酷いことされたら逃げるかもしれないわよ?」
「逃げたらもっと酷いことしますよ? というか怖いことするかと」
「怖いのはやだわ…」
「だからおとなしく食べられてください」
乳房を玩び、乳首を舐めて、歯を当てて楽しむ。
反る背中を撫でる。
やりにくいが翳りに手を滑り込ませて弄る。
お尻側から逆の手を持っていって両手で玩ぶと先生が私の頭を掴む。
「そんなの…いや、だめ、…変な、感じ…」
「他の人にもされてる感じがする?」
「うん、だから、やめて…」
「大丈夫、私の指ですから沢山感じて。気持ちよくなればいいんですよ」
首を振って嫌がりつつも凄く感じてしまっているようで、いつになく濡れている。
いつもより早く逝ったな。
「もう…ばか。酷いわ。…キスして?」
求められるのも嬉しくて唇をむさぼる。
「もっと酷いことしますからね、今から」
「えっ、やだわ…」
「なぁに、これだけですよ」
手拭を見せる。
「それをどうするの?」
「目隠し。それだけです」
「それくらいなら…」
半分に折り、それを三つ折にする。
「自分で出来るならしてください」
俺が締めると強すぎるかもしれないからね。
しゅっと自分で目隠しを締めて、首を傾げたりしている。
「見えますか?」
「ううん、見えないわ」
くくっと笑うと先生は焦り始めた。
「あ、あの、怖いことはよしてね…」
無言で背中に指を伝わせる。
あっという声、背中をそらせる。白い喉にキス。
普段より反応があって楽しい。
乳首に急に触れたり、お尻を揉んだり。
その度にビクッと反応する。
翳りに手をやって突起に軽く触れるだけで逝ってしまった。
指を軽く中に入れたり、また乳首を弄ったり。
奔放にあちこちを玩んで嬌声を楽しむ。
何度か逝ったようだ。
そろそろ辛そうなので最後の一回、とばかりに中で逝かせる。
くったりと私にしがみついて、可愛らしい。
目隠しをはずしてあげる。
「よく逃げませんでしたね」
「ほんと、ひどいんだから…」
「逃げないのは怖い事されたくないから?」
「違うわよ…怖いのは嫌だけど」
「怖いのは、嫌?」
懐に抱いたまま気配だけ変える。
「い、いやっ! 怖い!」
「このまま愛してあげようか」
「いやよ、やめてっ。お願いだから」
「なんてね」
気配を戻す。
「もうっ、なんでこんなことするのよ…逃げなかったのに酷いわ」
「あなた可愛いんですもん、嫌がって怯えてるときも」
「ほんっとに酷い人ね」
「ええ、酷いんです」
「でも…こんなに噛んでも怒らないのね」
と先生が出張前に私の胸へつけた噛み痕に触れる。
「あなたが私を所有したいとつけるもの、何で怒りますか」
「本当は…お仕事やめてうちにずっといて欲しいくらいなのよ」
「うーん、そうしたいのは山々ですが」
「無理なのはわかってるわ…言ってみただけ」
「定年になったら転がりこみたいですねぇ」
「あら、そんな頃まであなた私で満足できるの?」
「共白髪と行きたいところですね」
「ほんとに?嬉しいわ」
「それまでに俺があなたに嫌われてなければですけど…」
「嫌いになるようなこと、しないでね」
「ええ、できるだけ気をつけましょうよ」
もう一度お風呂に入って寝ようということになった。
「大浴場?部屋の露天?どっちがいいですか?」
大浴場がいいという。んじゃちょっと宿の浴衣でも着るか。
「あ、待って」
「どうしました?」
うっ!胸、噛まれた。
「とりあえず、一つだけね。帰るまでにもっとつけてあげるわ」
「はい。そうしてください」
とりあえず風呂へ行く。
先生の胸にはリング、私の胸には歯形。
「ねぇ先生?風呂で見られるのはいいんですか?」
「あらだってお風呂で他の人の体、性的に見ないでしょ?」
見る、見るよ!
ざっと髪と体を洗い終わると先生はまだ髪を洗い終えたところだ。
先生の背中を洗ってあげて前に手を伸ばしリングを一度外す。
少し感じてしまったようだ。
そのままそっと股間に手を伸ばそうとする。
「駄目よこんなところで」
叱られてしまった。
まあ誰かきたら困るよな。
他の部位を洗ってすすいであげて、湯に浸かる。
ふうっ。
のびーと体を伸ばして。
先生も気持ち良さそうにしている。
「やっぱり綺麗だなぁ」
「あら…」
恥ずかしがって可愛いな。
にこにこしてたら他の方が入ってきた。
会釈。
と、その視線が私の胸へ。
先生の顔へ。
ええい、見るな!
相手は慌てて目をそらし、先生は恥ずかしそうだ。
「そろそろ上がりますか?」
「ええ」
風呂を出て浴衣を着て部屋に戻る。
ちょっと温まり足りないと部屋の風呂にも入ることになった。
二人で入っているとまたしたくなるわけだが。
「見られちゃったわね、これ」
と先生が私の胸に触れる。
「あなたがつけた、と思ったかな」
「恥ずかしいわ…」
「堂々としてりゃいいんですよ。知ってる人が居るわけじゃなし。
 私の所有者だ、と」
「いいの?」
「なにがです?俺は先生が独占したいと思ってくれたこと、結構嬉しいんですけどね」
「私のもの、って人前で見せていいのかしら…」
「そういうところ、女性だなあと思いますね。
 男はね、この良い女は俺のだって見せびらかしたくなるんです」
「そういうものなの?山沢さんも?」
「ええ、私もどちらかというと見せびらかしたい口です」
「あらあら、そうなのねえ」
「でも見せびらかせない。だからこそのリングですね。
 お風呂上がったらまたつけてくださいね。今度新しいの買ってあげますから」
「はい…」
恥ずかしがってて可愛い。
思わずキス。乳房を揉んでしまった。
「あっ、だめ、もうつらいわ、私そんな体力ないわよ、今日はもう駄目よ」
ふうっと一息ついて。
先生の尻を膝に乗せる。背中から肩を抱いてつぶやく。
「もうこのままあなたとずっといられたら。
 明日の心配なんてしなくてすんだらいいのに」
「お互い仕事も有るからむりよねぇ」
「ですねえ。そろそろ上がりますか?」
そういいつつ乳首を弄る。
「ん、だめっていってるじゃない」
うなじに舌を這わせる。
「だめ…」
「ごめんなさい、我慢できない」
乳首を責めて喘ぎ声を楽しんでいると、ビクッと体がはねた。
え、逝った?
「今もしかして…胸だけで逝けました?」
「恥ずかしい…」
開発成功!嬉しい!
って茹だる!暑いわ!
のぼせそうなので慌てて風呂から出して。
くったりしている先生の体を拭き、浴衣を着せて布団に運ぶ。
「もう、だめっていったのに…」
「すいません」
横に寝転がると浴衣の胸をはだけさせられた。
「噛んであげる」
う、わ、色っぽい。
どきっとしたが、痛みに押しつぶされる。
血が出るまで噛むとか絶対実はSだ、絶対!
前回噛んだのとは違う方の乳首を噛まれた。
今回も5つの歯形、血が滴る。
それを舐め取られて、ぞくっとして乳首が立つ。
「仕返し、しちゃおうかしら」
先生が私の乳房を揉む。
「そんなことしたら明日立てないほどにしますよ?」
「あら…それは困るわ」
手が引っ込んだ。可愛い。
胸を仕舞って先生の頬をなでる。
「もう疲れてるんでしょう?寝てもいいですよ」
「そうね、おやすみなさい」
軽くキスして。
「おやすみなさい」
懐に抱いて寝た。
いつも起きるような時間に目が覚める。
ちょっと散歩してこよう。
ふらりと抜け出し宿周辺を歩く。
真っ暗だ。
空を見上げると曇っている。今日はきっと寒くなるな。
散歩しても体が温まらないので戻って大浴場に行く。
いてて、傷に湯がしみる。
温まったので出て部屋に戻る。
もう一寝入りしよう。
先生は…良く寝ている。寝顔を見るのも好きだ。
横にもぐりこむと抱きついてきた。
「どこいってたの?」
「何だ、起きてたんですか」
「お布団に入ってきたので起きたのよ。なにしてたの?」
「散歩。意外と寒くて風呂も。明日きっと寒いですよ」
「そう…」
「まだ夜中ですから、寝ましょう?」
キスしてきた。
「随分甘えたになりましたね。可愛いな。そんなあなたも」
「ねぇこんな…嫉妬ばかりしてて嫌いにならない?」
「嫉妬もして貰えんとかそれすでに終ってませんか。
 凄く信用されてるならそれはそれでありですが」
「そうなの…?」
「嫉妬してるあなたも可愛いと思ってますよ。だから大丈夫、安心して」
「うん…」
懐に抱いたまま頭を撫で、背中を撫でる。
しばらくして寝息。
まぁたしかにしょうもないことで疑うな!と思うこともあるわけだが。
こうやって懐に入られたら可愛いとしか思えなくて困る。
俺だってかなうことならその笑顔、誰にも見せて欲しくない。
お稽古つけてる間は無理だよなあ。
八重子先生の年になっても無理だろう。
わかってるから言わないが。
寝顔を見ているうちに二度寝。
朝。
ふと目を覚ますと懐に先生がいない。
あ、着物は有る。風呂か。
大浴場へ行くとやっぱり入ってた。
「あら、おはよう」
「おはようございます」
先生がくすくす笑ってる。
「どうしました?」
「ここ、かさぶたになってるわね」
「ああ、昨日血が出てましたからね…」
「かさぶたってめくりたくならない?」
「駄目ですよ!」
「めくらないわよ~」
オホホ、と笑ってる。からかわれてるなー俺。
お風呂から上がって部屋に戻り、身づくろい。
先生は着物に、私はシャツとスラックスを身につける。
朝御飯だ。
二人ともちょっとずつ違って、少し先生の方が良さそうなものを使ってあるのは。
もしや格を考えてくれたかもしれない。先生と呼びかけてるし。
美味しくいただいて、もう一度部屋の風呂でまったりとして。
そろそろチェックアウトだ。
支払いをして宿を出る。駅のホームまで見送りで着いてゆく。
帰りたくなさそうだ。
「明日、先生のお宅に顔出しますから。だから待っててくださいね」
「必ず来てね、待ってるわ…」
「じゃあ」
「また、ね」
新幹線を見送って、私は新潟へ。
あちらで最終日は宴席があるんだよね。
実はキャバクラと決まっている。
八重子先生には日程説明で言ってあるんだが、絹にはいわないと言ってくれていた。
ばれたときが本気で怖い。新潟の宿へ戻り少し寝る。
携帯が鳴り目が覚めた。先生から帰着報告。うむ、よし。
そろそろ起きて昼飯食おう。
イタリアンでゆっくりランチ。
やっぱり今日は冷えるなぁ。
すこし観光。
夜。迎えが来てキャバへ。
…セクキャバかよ。
おっさんども自分たちが楽しみたいんだな!?
女の子がはべってくれて触っても良いのよ~とか言われる。
横に着いた女の子に女だから触ってもねぇとか言うと嘘ーと言われたり。
まぁネタになるし雰囲気は楽しんでしまえ。
触らんけどな!
二次会は今度はピンサロらしい。
せめて三次会にしてくれよ二次会は飲もうよ!
さすがにそれはお断りして、宿に戻った。
もう少し飲みたいので1階でつまみと酒を頼む。
いくつか食べて3合ほど飲んで部屋に戻ってベッドに転がる。
んー。明日早めにチェックアウトして早く先生に会いに行こう。

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