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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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朝起きると湯の音。
先生は先に起きてお風呂に入ってるようだ。
俺も後追いで入ることにした。
「おはよう」
「おはようございます」
ぼんやり入ってると体が浮いてしまう。
先生が笑って引き寄せてくれた。
「胸とかお腹とか脂肪のあるところだけ水面から出ますね。あ、湯面か」
「ここも出てるわよ」
つん、と股間をつつかれた。
くるん、と伏せてふちに腕と顎を乗せる。
「お尻出てるわよ~」
「出ますよそりゃ。ってくすぐったい」
先生が俺の尻なでてる。
「大浴場行かなかったんですか?」
「後にしようかと思ったのよ」
先生も俺と同じ格好をした。
ぷっかり浮いてる。
喋ってると先生の腕がプルプルしてきた。
「意外と疲れるでしょこれ」
先生をひっくり返して膝の上に乗せ俺の腕をお腹にあてがい浮かないようにして座る。
部屋のテレビを伺い見ればそろそろ7時。
「朝御飯、7時半でしたっけ?」
「ああ、じゃもう出ないといけないわね。お化粧したいし」
「もうちょっとこうしてたいな」
「後ででもできるでしょ」
「まあそうですけど」
ぺちぺちと濡れた手で腕を叩かれて仕方なく開放する。
一緒に風呂から出てシャワーですすぎ、洗面台を使って身支度を整える。
きちっと浴衣を着て羽織を掛けて朝御飯のお時間だ。
適当に着るとだらしないと直されてしまうから最近はちゃんと着るようにしている。
昨日とは違って二階へ。
テーブル席だ。
フレッシュジュース、サラダから始まる本格的和風朝食。
美味しくて、そして量が多くてやっぱり先生は全部は食えなかった。
まぁ俺が食っちゃったけどね。
「やっぱり上げ膳据え膳で、色々食べられるのが嬉しいわ~」
「主婦はそうですよね」
「食べ過ぎちゃう」
「おいしいから」
うふふ、と先生が笑って俺も笑う。
「部屋で一服したらプール行きましょう」
「そうね」
二人連れ立って部屋へ戻る、その途中。
ヒーリングルームに先生が引っかかった。
「あら、ここは?」
「あぁ座ってみてください」
座らせて背中を倒しスイッチを入れる。
環境音楽みたいなものが流れるのだ。
ただ先生としては家で聞こえる鳥の声に慣れてるからそんなでもなかったらしい。
「都心から来てるとこういうの癒されるんですよね」
部屋に戻ってさて。
「あ、風呂行きますか?」
「大浴場?」
「その足でプール行きましょうよ」
「あぁそれいいわね、じゃええと何を持っていったら…」
「水着だけでいいですよ。下着は昨晩替えてたんだし」
「あなたは?」
「俺もプール入りますから安心して」
「ビキニ着るの?」
「違います」
「なぁんだ」
「何をそんながっかりしてるんですか」
ちゅっ、とキスされた。
「見たかったんだもの」
はいはい。
先生の手を引いて大浴場へ。
「あら。あらあら。凄いわねえ」
タオルを置いて掛かり湯し、湯船にはいる。
「あ、そこ段差ありますよ」
かくっとなったのを慌てて抱きとめる。
「ありがと」
一番奥まで進むと立ち湯になっていて半露天になっている。
風が気持ち良い。
少しだけ楽しんだらプールへ向かう。
そのまま奥へ進み、売店のある棟の一階がプールだ。
受付でロッカーキーを貰い、進む。
先生の横で水着に着替えるとずるい、と言われた。
うん? と思えばどうやら俺のが長袖だかららしい。
「替えますか? でも髪に引っかかりますよ。折角きれいにしてあるのに」
「んー、じゃいいわ」
ガウンを着せてぺたぺたと歩く。
ちょっとプールまで距離があるのだけど。
プールについて先生は眺め回している。
俺は二人分のビーチベッドを確保して先生のガウンを貰って置いた。
「さ、入りましょう」
こっち、と先導してプールにはいる。
「あら、あったかいのね」
「歩きますよ」
水流に逆らうようにぐるぐると2度歩く。
先生が途中でじたばたしているのを引っ張ったり。
それからジェット水流になっているところで足から背中、肩まで順番に。
「あ~気持ち良いわ~」
「でしょ?」
30分程度だけどすっかりほぐれてきて一旦上がると体が重い。
先生に水を飲んでもらって暫くまったり。
時計を見るとそろそろ10時半。
後30分したらエステだ。
少し寝湯に浸って、それから先生とエステの場所へ。
受付をして待つ間、先生の後の時間が空いてるようなのでこっそり受付に話を通す。
金額は言わずに本人に聞いて受けたいというならの受けさせるようにと。
本人に言うと遠慮するからね、金額。
各々別れてエステへ。
久々のエステは気持ちが良い。主に肩こりの面で。
一時間たっぷり掛けてやってもらって出てくると先生はもう一品目頼んだようだ。
ということは俺、一時間どうしよう。
受付の人と目が有った。
どうやらスケジュールは空いてるようなので俺はボディスクラブを頼んでみた。
気持ち良いなぁーと思ってるうちに終了。
そういう気持ち良い時間と言うのは早く過ぎるものだ。
先生が先に出て待っていて、俺を見て微笑む。
「ね、お腹すいちゃった」
「あぁ確かに」
それじゃ着替えて居酒屋に行こうかな。
着替え終えてスタッフに声を掛けると送迎車を呼んでくれた。
乗せてもらって居酒屋へ。
もうすぐオーダーストップなので慌てつつも色々軽めに頼んで待つ。
「お、うまそう」
食べる。
「うまい♪」
先生もおいしそうに食べてる。
「太っちゃうかしら」
「太ったらジム行きましょうジム」
おすすめのお造りも食べて先生は幸せそうだ。
食事を楽しんだら送迎車で一気に泊まってたところへ。
歩かなくて良くて楽である。
お部屋について先生が布団に転がった。
「お昼間からこんなことできるの、良いわねー」
「おうちだと畳の上ですもんねえ」
いない間に掃除が入っていて俺が散らかしたものはちゃんと片付けられている。
そのうち寝息になってしまった。
布団の上で寝ちゃってるのでもう一つの布団から掛け布団を剥がし、
先生の羽織を脱がせ布団の中に入れる。
俺も一眠りしよう。
携帯のアラームがなる。
あ、そろそろ起きて飯か。
先生を揺り起こして寝ぼけ眼の所、着替えさせる。
「あふ…」
「はいはい、眠いですよね」
着替え終わって部屋を出るころにはしゃっきりしてる。
「ねぇ寝皺ついてない?」
「大丈夫、綺麗ですよ」
ゆったりと食事場所まで行く。
一階だが昨日と違う場所だ。
食事も連泊なので昨日とは違うメニューになっている。
日本酒を頼み先生と杯を交わす。
今夜のご飯も美味しくて先生が嬉しそうだ。
今日は最初から少しずつ俺のお皿に分けてくださる。
「マナー違反だけど…」
「色々食べたいからね。下さい」
先生がなんか可愛いくて嬉しくなってしまった。
「味見味見、うまいなぁ」
結局俺が色々食べちゃうので良い感じにデザートで満腹となった。
お部屋に戻って更に部屋のウイスキーを飲む。
腹がこなれた頃、先生の胸に触れた。
熱海のときのように、飲みつつ。
でもあのときほど恥ずかしがってなくてやっぱり慣れだね、慣れ。
むしろもどかしげだ。
くすっと笑って全部脱がせて布団に追い込む。
「あ、着物、ハンガーにかけて頂戴よ」
はいはい。
ちゃあんと掛けて脱いだものも片付けて。
それから先生とお布団に入る。
大声は出させちゃいけないが先生のおうちほどには潜めなくて良い。
好きだ、愛してるも沢山に言って先生のうわごとの様な気持ち良さそうな声も楽しむ。
十分に先生の身体を堪能してぐったりしてるのを引き起こす。
「ほら、浴衣、着て」
脱力してるから俺にされるがままだ。
シーツのピシッとかかってる布団へ先生を寝かせて俺がくしゃくしゃの布団へ。
おやすみなさい。
朝起きたら先生はまだ寝ている。
今のうちに頭を洗おう。
シャワールームで洗い終えて露天にちょっと浸かるか、と思ったら先生も来た。
「頭?」
「うん」
「洗ってあげましょう。おいで」
「いいわよ、自分で洗うから。ゆっくり浸かってて」
髪を濡らしてシャンプーを取った。
「待った、それじゃないっ」
「ん?」
こっち、とローションを渡す。
「なぁに?」
「これで満遍なく髪濡らしてからじゃないと泡立ちませんよ」
「そうなの?」
「海水成分ついたままだと全然だめですから」
ふぅん? といって洗ってる。
湯船に入って先生が洗ってるのを見つつ。
んー天気は良くないかな。
まぁいいけど。
大浴場に行くもよし、日帰り施設の風呂に入りにいくもよし、ずっと抱いてるもよし。
今日は先生のために連れてきたんだから好きなようにすれば良い
上がって着替え、朝食をいただく。
連泊だから少し違う。
部屋に戻って先生にどうするか伺う。
「どうせだから日帰りのところ行ってみたいわね。ジムはいいけど」
急ぐ必要もないので暫く先生とまったりとしてもいいのだが。
ササッと用意されてしまった。
「行くわよ」
「はい」
送迎車で日帰り棟へ連れてってもらう
「平日なのに結構人いますね」
「そうねぇ意外だわ」
他の人もいるところで先生が脱ぐのはちょっと腹が立つが仕方ない。
「あの、お客様、男湯はこちらでございますが」
「……え。あぁ私ですか」
先生が横で笑ってる。
「この子、女性です、大丈夫ですよ」
なんとか笑いながら先生が言ってくれた。
「あ、あらそれは失礼いたしました」
ぺこぺこして去っていくのを見て先生が笑ったままだ。
「あんたも早く脱ぎなさい」
はいはい。
周囲の人が見ない振りをしつつ見てるなー。
乳が見えると視線が消えた。
下帯を外して先生と中にはいる。
うん、広い。
朝洗ってあるから掛湯をして湯船へ。
「んー、気持ち良いわ~」
幸せそうで俺も嬉しい。
いくつかある湯を楽しみ、風呂から上がる。
ふと見るとここでもエステの予約空き情報が。
「先生、昨日と別のエステ受けます? ほら空いてるって出てる」
「あら、今日は良いわよ」
下の売店でみやげ物の物色。
「ここで買えなくてもまぁ駅にも売店有りますから」
「ねぇお腹すいてきちゃった」
「ここのレストランか昨日の居酒屋どっちが良いです?」
「昨日のところが良いわ」
「ですね」
先生は色々食べる代わりにこんにゃくライスを頼んでる。
満腹で部屋に帰ってごろごろ。
少し抱く。
先生も俺の乳首を舐めたり摘んだりする。
怒らない怒らない、じゃれてるだけだろう。
その後もう一度風呂に入ったり、またじゃれたり。
恋人気分を満喫した。
お夕飯を食べに出ると初日とも昨日とも違うものが出た。
ちゃんとした宿に泊まるからこそだね。
今日は先生が梅酒を、俺は酒を頼む。
先生が美味しいおいしいと食べてる。
「こんなに毎日美味しいもの食べて良いのかしら」
「おうちに沢山お土産買って行きましょう、ね」
「ん…」
「家が気になりますか?」
「ちょっとだけね」
「なにかあるなら電話くれてますって」
里心と言うものなのかな?
「後で電話、したら良いじゃないですか」
「そう、ね。そうするわ」
食後のコーヒーを頂いて部屋に連れ帰る。
すぐに先生が携帯を出した。
「俺、ラウンジにいますから」
「うん」
いない方が話し易かろう。
ラウンジに出てブランデーの水割りを頼む。
ん、おいしいなぁ。
次はウイスキーを頂いて。
暫くしたら先生が来た。
「あなたも飲みますか」
「うん、いただくわ」
「どれにします?」
甘めのものを、というので俺のさっき飲んでたブランデーになった。
「おうち、どうでした?」
「お稽古でね、何でお母さんなのかって結構聞かれたみたい」
「ああ、あまり稽古休まないから」
「で、お母さん正直に言っちゃったらしいから…。次のとき覚悟してね」
「うっ…」
もう一杯おかわりをして部屋に帰る。
「酔っちゃったわ」
と先生が俺にもたれてきた。
可愛いな。
「ね、もう一度抱いて良い?」
「いいわよ」
脱がせて抱く。
先生は普通のえっちで普通に声を出していいから旅行は好きなのかもしれない。
先生の家では声を出せず、俺の家では普通のえっちはしてもらえないから。
「実はえっち、結構すきなんじゃ…」
ぺしっと額を叩かれた。
「そんなこというならさせてあげないわよ」
「あ、冗談。言いませんからさせてくださいよ」
今日は自力で先生は着替えて布団に入った。
「どうして朝別の布団で寝てるのかと思ってたのよね…」
「仲居さんにばれたくないんでしょ?」
「そうだけど…」
「俺の懐で寝たい?」
こくり、とうなづいた。
「OK、じゃそっち入りますね」
潜り込むと先生は嬉しそうだ。
俺も先生を抱いて寝るのは好き。
おやすみなさい。
翌朝二人で露天風呂に入って、朝御飯をいただく。
部屋に戻ってお片付け。
水着とか仕舞うものはしまって荷造りする。
その間に先生はきちんとお化粧。
手荷物と分けてすべて片付いた。
「まだ時間ありますし、風呂入りましょう」
「そうね」
「気持ちい~」
「結局露天ばっかりでしたね」
「あら、私3回入ったわよ」
「いつの間に…」
「夜中目が覚めちゃったから」
「誰もいませんでした?」
「いなかったわよ」
「そりゃよかった。まだほら、こことか。消えてませんし」
沢山キスマークつけちゃってたから。
そのまま一戦してしまった。
「気持ち良いですね、外の空気」
「私は恥ずかしいわよ…」
「可愛いなぁ」
そろそろ風呂から上がってチェックアウトだ。
荷物を配達してもらう手続きとお支払いをカードでした。
電車の手配は既にしてある。
少し早めにタクシーをお願いしていたので駅についても30分ある。
先生はお土産を更に選んでいる。
お酒も。
しずおかコーラとか。
せめて静岡サイダーにしようよ。
あ、わさびらむねとかカレーラムネも買うのね。
いいけどさ、誰に飲ませるつもりなんだろう。
やっぱり律君?
そんなこんなでずっしりとした土産を持ち先生のお宅へ。
「ただいまー」
「戻りましたー」
「あーおかえり。なんだいあんたそんな沢山持って」
「お土産よー」
どれどれ、と覗き込む八重子先生。
わさびラムネとか見て呆れてる。
「あんたねぇ誰に飲ますの」
「んー兄さん」
それはおもしろそうだ。
「うっかりお客様にお出ししないようにね」
うんうん。
普段着に先生が着替えだして八重子先生が気づく。
「今日は律がいるときに着替えないようにね」
「え?」
「まだ消えてませんね、すいません」
「でもエステと温泉の効果かねえ、あんた肌つやつやじゃないの」
八重子先生が先生をぺたぺた触ってる。
あ、胸もんだ。
「俺もエステ受けてきたんですよー、ほら」
乱入しちゃえ。
腕を見せたのに乳もまれた。
「えーと。どっちの感触が良いですか」
「やだもう山沢さん」
「んー絹のほうが触り心地は良いね。でも張りはやっぱり山沢さんのほうがあるねえ」
「なにやってんの、おばあちゃん」
「司ちゃんいたの!?」
「お邪魔してます」
「旅行先でエステ行って来たのよ~」
「そしたら触り心地確認されてしまったってわけ」
「お夕飯何作ろうかねぇ」
「あ、私みょうがとなすのお味噌汁食べたい」
「あらいいわね。でもメインなんにしよう」
「外は暑いしねえ」
「買物行ってきますよ?」
「じゃ、カレー」
「暑いのにカレー?」
「暑いからよ。汗かいたほうが良いのよ」
「チキンカレーかビーフカレーかポークカレーかどうします?」
「山沢さんの好きなので良いわよ」
「じゃビーフにします」
てくてくと買物に出る。
途中先生から電話があった。
トイレットペーパーがないらしい。
了解して買物続行。
肉を多めに買い込み、帰宅。
多すぎたら先生が俺の炒め物を作るときに使うから。
台所に下ろすと先生が居間から指示を飛ばす。
「じゃがいもむいておいてねー」
そんで八重子先生に横着と叱られている。
「ただいまー」
律君が帰ってきた。
「お帰んなさい」
「お帰り」
「あ、お母さん帰ってたんだ。お帰り」
早速先生にわさびラムネを飲まされているようだ。
うーん、見たい。
面白そう。
ひとしきり笑い声の後先生が割烹着を着て台所に来た。
「人参頂戴」
ほい、と渡して二人で下拵え。
「わさびは律に飲ませたわ。あとはカレーね。兄さん来ないかしら」
「コーラは?」
「覚兄さんに、と思ってるの」
結構お茶目だよな、先生。
どんどん皮を剥いて積み上げていって後は先生の独擅場。
「お肉多いわよ」
「多すぎるなら他のときにどうぞ」
炒めて煮込んでルーを入れる。
氷水に鍋を漬けて暫く放置!
居間に戻って旅行の報告色々。
司ちゃんも八重子先生も行きたいという。
「二人で行ったら良いじゃないですか」
「そうよ。お稽古は私でも見れるんだもの。行ってきたら?」
「でも高いんだろ?」
「んー、たしか今は俺の泊まった所に一泊、ホテルに一泊で一人5万になってたかと」
「二人で十万ねえ。そうだね、司さえ良ければ行って見ようかね」
「いいの? やったー」
暫くごちゃごちゃ喋って時間が過ぎる。
「そろそろ温めようかしら」
「ご飯も炊けますしね」
「お味噌汁は?」
「カレーにはスープです」
「えー」
「みょうがなすは明日の朝です。と言うことで八重子先生よろしく」
「スープ?」
「コンポタです」
キャンベルの業務用だ。
1本で8人前作れる優れもの。
同量の牛乳で伸ばす。
ご飯が炊ける音がした。
お皿にご飯をよそう。
先生がカレーを掛ける。
司ちゃんが取りに来た。
「やだこれ、手が込んでるー」
真ん中をカレーにしてみた。
カレーが終ったので先生がスープを。
俺は洗い物とか片付けをしてさあ食事だ。
「いただきます」
ぱくぱくとたべていく。
「あー美味しいわー」
「自分で作っといてよく言うよ」
「美味しいでしょ?」
「美味しいけどね」
「スープも美味しい」
「そこのスープ好きなんだよね」
わいわいとご飯を食べて良い時間になった。
「後片付けはするからそろそろ帰って寝なさいよ。明日仕事でしょ」
「うーん、もうちょっと」
「ダメよ、疲れてるはずよ」
先生の思いやりによって追い出されて帰宅した。
おー、部屋に熱気が篭ってる。
窓を全開にして着替えてベッドへ。
おやすみなさーい。
寝起き、ちょっと寒かった。
まぁ疲れは取れていないが出勤。
皆にお土産をばら撒く。
暇だから丁度良い。
本日の営業先は、とテキトーに選んで見積もりを作ってもらう。
眠いけど頑張って気合を入れて…立川近辺を攻めた。
営業終って疲れてしまったのでお稽古へはいけないと先生にメール。
先生は先生でお稽古で色々聞かれて大変だったらしい。
土曜日、俺も質問攻めされるのかなぁ。
ま、しかたない。
楽しんできた部分を話せば良いのさ。
帰り道に飯屋に寄り定食を食べる。
味が濃い…。
きっと先生の食事と旅先の飯を暫く食べてるからだろう。
帰宅して後は寝るばかり。
先生も今日明日はうちへは来ないとのことだ。
きっと疲れるんだろうね、ずっと一緒は。
着替えておやすみなさい。
何か夢を見たような気がしつつ起床。
荷物少なし。
仕事は暇。
さて。
今日は帰ったらどうしようかな。
軽い目にジムか?
先生来ないって言うしそれでいいか。
帰宅して着替えてジムへ。
小一時間ほどして帰宅し風呂に入る。
うーん、極楽。
…さっさと寝よう。
昼寝だ昼寝。
ざっと体や頭を拭いてそのまま布団に潜り込む。
先生が見たら怒るだろうな。
おやすみなさーい。
日が落ちた頃腹が減って目がさめた。
メールが入っている。
先生から夕飯の写真がきてた。
あぁうまそうだな。
でも今日は食べたくても無理だ。
あ、二通目?
明日お昼にちょっと食べる?と書いてある。
勿論だ。
頑張って早めに行っていただきたい。
そう返事をして。
さて今日は何を食うか。
とんかつ?
あ、良いやそれでいこう。
近所の肉屋まだ開いてるね、急げ!
と買ってきてヘレカツとご飯を食べる。
先生に飯は何かと聞かれ写真とって送ったら電話かかってきて怒られた。
野菜が足りない。
言い逃れをしてもう一度おやすみなさい。
土曜の朝、流石に仕事は忙しい。だけど!
今日は早めに着くんだ!
とばかりに仕事を頑張って終わらせて先生のお宅に飛んでいく。
なにかって?
昨日の先生の作った肉じゃがを食べるためにだ。
「こんちは、いただきに来ました」
「いらっしゃい」
先生がクスクス笑ってる。
「昨日は暑かったわ、ご飯作るのイヤになっちゃった」
「ああ、30度超えてたんですよね、こっちも」
「今日も暑いのかしらねえ」
いただきますをして肉じゃがを食べる。
うまい。幸せ。
「今日も暑いそうですよ。女性の着物は大変ですね」
「外に合わせてるからお茶室はクーラーほんの少し入れてるのよ」
「ああ、そっか、皆さん外歩いてこられるからガンガン効かせたら寒くなっちゃう?」
「ずっとうちにいるならねえ。暑いと言っても知れてるんだけど」
ぱくぱくと食べてご馳走様をして水屋の支度を整える。
台所の片付けはいつものように八重子先生がしてくれる。
暫く待って生徒さんが来て支度ができると先生が入ってきてお稽古開始だ。
いつものようにお稽古。
その合間に先日の旅行の話に花が咲く。
プールの話では先生の水着姿の想像がつかないという生徒さん方。
だろうね。
俺も想像できなくて着せてみて得心したくらいだから。
そして厳しい俺へのお稽古。
たっぷり遊んできた後だけに、の厳しさ。
ま、そうやって恋人に厳しく出来るからこそ、なのだが。
甘くするような、そういう贔屓にならないのが先生だ。
とは言うもののお稽古が辛い。
そんなとき、八重子先生が混ざってくれると一気に和む。
和やかな雰囲気でお稽古を終らせ、水屋のお片付け。
先生が横で嫌いだから厳しいわけじゃないとか何とかいっている。
「先生たまにSいですよね…、まぁお稽古とか、日常は別にそれはそれで良いです」
慣れたし。
ただまぁ…夜とか、俺とエッチな雰囲気のときに出さないでいてくれたらいい。
少しいじけてる先生にキスしたら怒られた。
水屋でもダメらしい。
片付け終えてお夕飯をいただく。
今日は暑いからハモの落としを八重子先生にしてもらった。
やっぱり涼しげで夏だなぁと言う感じだ。
あと持ち込みの魚素麺。
それと何品かのおかず。
律君が魚ぞうめんがなんなのかわからないようだ。
「それかまぼこみたいなものだよ。食べてごらん」
白と緑のかまぼこの元を素麺状にしたような物で夏の風物詩なのだが。
東京では見ないなぁ。
「あ、おいしい」
しかしさすが八重子先生。
俺なら大皿にわっさわっさとハモを盛って各自梅肉つけて食え、ってなとこだが。
ちゃんと小鉢に盛って上にちょんと梅肉を載せてある。
美味しそうに見える工夫だね。
おかげで律君たちもおいしそうに食べてる。
ご馳走様をする頃には全部売り切れ。
筑前煮がちょっと残っているので腹に始末して洗い物をする。
居間に戻って団欒。
律君たちが部屋に帰った後八重子先生に旅行中の写真を見せた。
「これ、先生の写真です」
ぱっと見せたのは先生のビキニ姿。
「やだっ、いつの間に撮ったのよ、捨てて頂戴」
「あんたこれでプール入ったのかい?」
「入ってないわよ、そんなの」
ははは、と笑って新たにもう一枚。
「こっちがプールのときのです」
「もー山沢さんいつの間に撮ってるのよ~」
「ああ、これならうん、いいね」
「あんまり肌を見せるのはどうかと思いまして」
「じゃどうしてビキニ?」
「見たかったからです」
キリっといったら笑われた。
「律君に見せますか?」
「見せないわよ」
後はいくつか先生の写真を渡す。
「この辺は見せても良いね」
選別が終って先生がお風呂に行く。
八重子先生が律君を呼んで写真を見せてるのを眺めていると眠気。
気がつくと座布団を枕にタオルケットが掛けられて先生が覗き込んでいた。
「あら起きた? ほっといて寝ようかしらって思ったわよ」
むっくり起きると先生がタオルケットを畳む。
「布団もう敷いたから着替えて頂戴」
そういいつつ俺の手を引いて部屋に連れてってくれた。
脱ぐと着物を片付けてくれて、着替えて布団に潜り込む。
先生もすぐに入ってきた。
寒くもなく暑くもなく先生の体温が丁度心地よい。
うなじを舐める。
手を胸に這わす。
先生の体温が上がる。
汗をかかない程度の緩いえっちを終えるとすぐに先生の寝息が聞こえて来た。
もうちょっとしたかったが、ま、仕方ない。
俺も寝た。
翌朝、先生の寝顔を見つつぼんやりしてたら八重子先生が部屋に来た。
「ご飯できてるよ。いつまで寝てんだい」
「ありゃ? 寝過ごしました?」
「もう7時半すんでるよ、早く起きなさい」
凄く寝過ごしてた。
先生を揺り起こして着替えさせる。
食卓につくと律君が食べ終わってて笑ってた。
「二人ともって珍しいね」
「旅行いって調子狂っちゃったみたいでね」
「山沢さんなんて夕べ早いうちから寝てたのに…おかしいわねぇ」
「ま、たまのことだからね。早く食べなさい」
「はーい」
「そうね、いただきます」
遅めの朝御飯をいただいたら後は衣替えのお手伝い。
昼前には汗だくになって何とか終了した。
「ね、山沢さんはしたの?衣替え」
「しませんよ、いつも適当に着てますし」
「…火曜日お稽古終ったらあなたの家行くわね」
「ダメですって、おうちのこと大事にしてくださいよ」
「でも…」
「毎年適当に暑ければTシャツ着るとかしてますから気にしないでください」
お昼はなんだろう。
「今日は早いけど素麺にしたよ。暑いしね」
あ、うれしい。
見るからに涼しくて、食べるとすっきりした。
だけど時間が進むに従い気温急上昇である。
「八重子先生、水気とってます?」
「とってるけど追いつかないねぇ、暑いね」
「ほんと暑いわね、雨でも降らないかしらね」
室温も29度になってしまった。
「行水したい…」
「あ、いいわね、たらいあるわよ」
庭にたらいを出して水を張る。
すぐにぬるま湯になった。
縁側で脱いでたらいにはいる。
「うー丁度良いや」
ぱしゃぱしゃと先生が顔に水を掛けてくる。
「先生も入る?」
「いやよ」
ほぼ、と笑って湯にならない程度に水を足してくれた。
さっぱりしたので手拭を貰って拭いて出る。
「うわっ!」
「あら、律。あんた出かけたんじゃなかったの?」
「何してんの!?」
「行水よ、あんたも小さい頃したでしょ」
「覚えてないよ、そんなの…」
あはは、と笑いながら浴衣に着替えてたらいの水を日陰の植木に撒く。
さっとたらいを濯いで立てかけて終わり。
「やぁさっぱりしました。でも帰りの電車が思いやられますが」
くすくす、と先生も笑ってる。
やっぱり可愛いな。
部屋に戻ると八重子先生も流石に麦茶を飲んでいた。
それでも都心よりは涼しいので夕暮れまで先生のお宅でごろごろして帰宅した。
むっとする室温にクーラーをつけてしばし。
26度まで下げて止め、寝た。
朝、起きて仕事をするが、みな何かぼんやりとしているのは寝苦しかったんだろう。
はかどらない仕事をこなして帰るとご飯の匂い。
「ただいま、で、お稽古は?」
「お帰りなさい。生徒さん夏ばてみたいで二人だけだからお母さんが見てくれるって」
ピッとクーラーをつける。
「良くこんな暑い部屋にいますね」
「うん、そろそろ扇風機、と思ったんだけど」
「扇風機はありませんよ」
服を脱ぎ手を洗って先生を脱がす。
「ちょ、ちょっとまって、なんで脱がすの」
「抱きたいから」
「お昼ご飯、食べてから。ねぇ、だめよ」
抵抗されつつもそのまま全部脱がせてベッドかここか、と聞く。
諦めたようだ。
ベッドに連れて行ってたっぷりと楽しむ。
クーラーを効かせているからどんなに激しくても軽く汗をかく程度。
終った後、布団をかけてやる。
じゃないと風邪引いちゃうよね。
「おなかすいた…」
ぽそっと文句の上に呟かれてなんだか笑ってしまった。
クーラーを緩めて先生を起こす。
浴衣を背中に掛けて台所からお盆に載せて食事を持っていく。
お箸とスプーンで手ずから食べさせてあげると恥ずかしがっている。
「あなたのために作ったのに…」
「ちゃんといただきますよ。まぁでも先に食べてくださいよ」
全部食べてご馳走様、と言う。
おかわりいりませんか?と聞いたがもう良いらしい。
台所に食器を返し、自分の分を平らげた。
それから先生の横に戻る。
「お腹、こなれたらもう一度しましょうね」
「ええっ、まだしたいの?」
「したいんですよねぇ」
「旅行中ずっとしてたのに?」
「一昨日すぐ寝ちゃったじゃないですか」
「そうだけど…」
「しかし八重子先生、俺に先生を甘やかしすぎるって言うけど。
 ご自身も十分先生を甘やかしてますよね」
ぷっと先生が笑う。
「そういえばそうね、そうよね」
「で、実際何しに来たんですか?」
「衣替え」
「しないって言ってるでしょう」
「するわよ」
「出来ないようにしちゃおうかな。こうやって」
キス。
コツン、と額にこぶしを当てられた。
「ばか…、普段着じゃなくて、お稽古とか、お出かけの着物あるでしょ」
「あぁなんだ、そういうのですか」
ぶるっと先生が震えた。
クーラーきつかったかな。
「お手水連れてってくれない?」
そっちか。
抱えあげてトイレに連れてって裾をまくって座らせる。
そのまま見てたら嫌がられた。
「どうせ一人じゃ出れないんだし。子育ての時と同じと思えばどうです」
それでも恥ずかしそうで可愛い。
思わず肩を抱いてしまう。
先生は我慢が切れたようで…した。
「ヘンタイなんだから…」
あ、なじられた。
拭くのもやっちゃったぜ。
流して担ぎ上げてベッドに戻る。
で、舐めたら踵で肩を蹴られた。
流石に腹が立ったようだ。
ベッドから降りて部屋を出る。台所片付けよう、うん。
洗い物を終えて先生のそばへ行く。
「ごめんなさい…蹴っちゃって」
あ、当たり前じゃないんだ。
蹴られて当然だと思ってたからなー。
「そろそろ起きれますか?」
そろり、と先生がベッドから身を起こす。
手を添えてゆっくり立たせてリビングへ連れ出した。
「はい、お茶」
「ありがと。ねぇ…ああいうの、私、無理だわよ」
「やっぱり無理?」
「うん」
「ふぅん…またいでかけるプレイとか」
「無理よ、そんなの」
「かけるほうがSなんですけどね、普通」
「出るところ見られるのなんて恥ずかしくてダメよ」
「そういうとこが可愛くて、そういうことをさせてみたくなる」
「蹴るわよ」
「蹴ろうと思っては蹴れないでしょ?」
げしげしと座ったまま足先で蹴ってきた。
「お行儀悪いですよ、先生」
更に強く蹴られた。
「可愛いなー」
顎に手を当て持ち上げてキスする。
そのまま押し倒した。
「ダメよ、箪笥、整理するんだから」
「ま、そういわず…うっ」
先生に乳首捻り上げられた。
地味に痛い。
「退きなさい」
「はーい…」
上から退くと先生はぺしっと俺の頭を叩いた。
「さっさと整理、するわよ。明日もお稽古なんだから」
身を起こして浴衣の乱れを直し、手を洗って和室へはいる。
樟脳の匂いにまみれつつ、たとう紙を開けて中を見ては夏物、相物と入れ替えた。
なんだかんだ夕方近くまで掛かったので先生を誘ってホテルディナーとする。
ちょっと久しぶり。
「暑ーい…」
「暑いですね…梅雨前だってのに」
先生は日傘をさした上で日陰を通って、俺も日傘の下に入れようとする。
「そんなことしてるとあなたが焼けますから、俺は良いですよ」
「早めに対策した方が良いわよ」
「ちょっとくらい焼けたほうが男らしいじゃないですか」
「男じゃないでしょ」
「ま、今度、今度」
扇子を日よけにホテルへ入る。
先生の遠慮で一番高い奴の一つ下のコース。
「おいしいわ~」
昼に怒ってたのとはまったく違って幸せそうだ。
最後のデザートも美味しく頂いて、先生はその足で帰ると言い出した。
「え? どうしてですか」
「だってあなたの部屋戻ったら帰るの嫌になるもの」
胸に響くなぁ。嬉しい。
「明日お昼に一緒に帰るほうが楽じゃない。電車乗らなくて良いんだから」
「そっちですか」
がっくりしつつ会計を済ませて駅まで送る。
まだ日が高いから送らなくて良いようだ。
「じゃ、また明日いらっしゃい」
「はい、ではまた明日」
別れの挨拶を交わし、電車を見送って帰宅した。
後は寝るばかり。おやすみなさい。
さて夜も明けてお仕事。
やっぱり火曜日はダメだね、暇で。
あくびも一つ。
おかずに良いものはないかな。
社長と雑談してると在庫整理で味噌漬けが余ってきてるのが判明した。
今晩は味噌漬けだな。
先生にメールを打ったら来るときに洗濯の洗剤を買ってくるように頼まれた。
あー。重いもんな。
律君が帰ってくるまでに第二段を干して畳む必要があるらしい。
仕事を終え、帰り道に買い込んだ。
風呂に入って着替えて車に乗り込む。
流石にこの格好で洗剤を手荷物に電車はちょっとね。
電車を乗り継ぐのと変わらない時間、車を走らせて先生のお宅へ着いた。
裏から上がって先生に声を掛ける。
すぐに先生が来て洗濯機を回し始めた。
「あとはお母さんが干してくれるわ」
「先生はお稽古優先なんですね」
「二人でいるときはそうね」
ぱたぱたと先生が食事をとりに行ってる間に冷凍庫に味噌漬けを収納する。
そのまま水屋の支度。
生徒さんと先生がそろえばすぐにでも出来るように。
順々に生徒さんが来て穏やかに、やわらかい雰囲気で進む。
いつものように生徒さん達が帰られた後は厳しく俺へのお稽古…のはずだが。
今日はいつもの種目以外をとのことであまり怒られず緩やかに終った。
水屋を片付ける前に洗濯物を取り入れる。
先生と二人で日が落ちる前に。
下着は先生が畳む。
俺のは勝手に洗ったり干したりするのに自分のはいやなのだそうだ。
畳んだ洗濯物を先生が各々の部屋に分配する。
孝弘さんの分は先生が箪笥にしまっているそうだ。
ま、できなさそうではある。
律君の分は昔は仕舞ってあげてたが今は自分でさせている模様。
俺の冬物の服も有った。
「あ、それ持って帰ってね」
「はい。こっちの箪笥もしたんですか」
「そうよ、だから今度夏物持ってらっしゃい」
「りょーかいです」
それから水屋を片付けて、八重子先生の作るご飯をいただく。
今回持ってきた味噌漬けはすべて俺が食えるもの。
だから八重子先生もつくるのは菜物のおかずだけだ。
ホタテの味噌漬けがうまい。
「八重子先生、これよく崩さず焼けますね」
キスの味噌漬けだ。
ストーブで焼いてばらばらにしたことがある。
良い感じで味噌漬けがはけて行く。
そればかり食ってたら菜っ葉のおかずをお皿にとって先生が渡してきた。
「ちゃんと野菜も食べなさい」
「お母さん、山沢さんを子供扱いしてない?」
律君が笑ってる。
「言わないと食べないのよね」
はい、おかわり、と先生が孝弘さんのご飯を渡している。
俺は取ってもらったおかずを食べつくしてまた味噌漬けへ手を伸ばす。
別のおかずを先生に渡された。
「これも食べなきゃダメよ」
「はい」
もくもくと食べて最後に味噌漬けを取る。
ごちそうさまでした。
食器を洗って片付けて居間に戻る。
律君はレポート書きに部屋へ、孝弘さんはもう寝に戻ったとか。
まったりと先生方と団欒。
「ああ、あんたら最近暑いしこれくらいの時間からあっち行ってさ、
 夜お風呂入って寝たらどうだい?」
「朝から汗臭くなっちゃいますかね?」
「多分ね」
先生が赤面してる。
「今から行ってきたら?」
「そんなの…」
「先生可愛いー、照れちゃって」
ごちん、と拳が落ちてきた。
「からかわないでよ、もうっ」
あはは、と笑って立つ。
「じゃそうさせていただきます」
ひょいっと先生を起こして抱えあげた。
「ちょ、ちょっと」
「はいはい、行ってらっしゃい」
そのまま玄関を出てあちらの家に入る。
下ろすなり叩かれたけどクーラーをつけてベッドの布団を剥がした。
「さぁさぁ脱いで脱いで♪ ああ、いや、待った、そのままで抱き締めたいな」
先生は俺に翻弄される。
先生が恥ずかしいって言うようなことを沢山させて、気持ち良いって言うことも沢山。
だけど時間が時間だから、早めに切り上げて戻る。
先生の体力を奪ったのもそうだけど先生は草履履かせずにこっちへ来てしまったから、
やっぱり抱き上げて夜道を歩くことになった。
恥ずかしがってるのが良いなあ。
「もうちょっと散歩しましょうか」
「だ、だめよこんなとこ見られたら」
「出先で草履の鼻緒がって言えば良い」
「ダメ、やめなさい」
「はいはい、しょうがないな」
連れ帰ってお風呂へ。
二人で入って、先生を隅から隅まで洗ってあげた。
お湯に浸かってそろそろ出ようかと思えば先生は転寝してる。
気持ち良いもんな。
起こしてお湯から出して拭いてあげて。
俺もざっと水気を落として先生に寝巻きを着せる。
立ってるのがやっと、と言う風情だ。
抱き上げて寝間へ連れて行く。
座らせて布団を敷いたらすぐにもぐってしまった。
俺は寝巻きを着て一度居間へ戻る。
八重子先生と火の元の始末や戸締りの確認をして先生の元へ。
おやすみなさい。
翌朝起きて先生が熟睡しているのを置いて行こうとしたがしがみつかれた
脱皮のごとく先生の腕に浴衣を残し着替えて台所に立つ。
さすがに昨日の今日で寝過ごすと八重子先生に叱られるからな。
納豆に焼き魚、お漬物、味噌汁、おひたし。
ご飯が炊ける良い匂い。
先生が起き出して来て食卓を片付けている。
八重子先生が起きだしてくるより早く起きてくれて助かった。
先生が律君を起こしに行ってる間に八重子先生も起きてきて配膳をすます。
孝弘さんも起きてきた。
普段どおりの和やかな朝食。
律君が大学へ行けば静かな日常。
「今日も草引きお願いね」
先生は俺に野良着と麦わらを渡して洗濯や掃除を始めた。
八重子先生は茶室の掃除に行ってしまった。
塩砂糖水を作りコップに入れておき、着替えて庭へ。
黙々と作業する。
喉が渇けばその水を一口飲む程度だが。
今日は曇ってどんよりとして…別に塩水にしなくても良かったかもしれない。
お昼になってご飯に呼ばれ、手を洗っておにぎりをいただく。
小さめのおにぎりだが中が全部違う。
俺のためだけに作ってくれるおにぎりもまた美味しい。
お昼からもそのまま草むしり続行だ。
先生は八重子先生と二人で掃除に余念がない。
これまではどうしても庭は後回しになってたらしい。
ま、俺が出来る間はしてあげても良い。
謝礼は美味しいご飯と先生の体ってことで。
あ、来客。
先生が部屋にお通ししてなにやら歓談されている。
暫くして喉が渇いた。
「先生、すいません。お茶下さい」
「はいはい、これで良い?」
先生の飲みさしのお茶を俺の湯飲みに移動して渡してくれた。
丁度ぬるくて飲みやすい。
ふぅ、と人心地ついてよく見たら安藤さんだ。
「こんにちは、安藤さん」
「あら? 誰かと思ったら山沢さん? そんな格好してるから驚いちゃったわ」
「今やんないと盛夏じゃ出たくもないですからねえ」
「絹先生ったら飲みかけたお茶渡されたからどうして?って思ったんだけど。納得だわ」
「猫舌ですから新しいの入れてもらったら悲しいですねー」
先生がクスクス笑いながら新しいお茶を入れている。
「じゃ続きしてきますね」
「ん、お願いね」
黙々と抜いてたら帰られた気配と、先生が茶室に行く気配。
後は夕方まで。
「ごはんできたよ、手を洗っといで」
八重子先生に呼ばれて野良着を脱ぎ、手を洗って着物に着替えた。
ごはんごはん。
お二人の作るご飯はやっぱり美味しくて。
塩気が足りないのは後で補えば良いだけのことだ。
夕飯を頂いてしばし団欒を楽しみ、一人さびしく帰宅する。
先生も少しさびしそうなのが救いだ。
だが帰り道思い出した。
6月だ。ホテル営業行かなくて良いんだった。
明日も会えるじゃないか。
にやり、とにやけたが幸い車だから見てる人もいない。
さびしい気分も吹っ飛んだまま帰宅して、寝る。
朝起きると空気がひんやりしている。
天気予報は昼から雨。
と言うことは客は買物控えめかな。
長袖を着て出勤する。
荷物は少なめだ。
やや暇ではあるものの、それなりに売れた。
ヨコワを一尾売り損ねたから持って帰る。
先生に食べてもらえば良い。
着替えて先生のお宅へ。
「こんにちは」
居間に顔を出すと先生が驚いてる。
「あら? 営業は良いの?」
「月替わりましたから。八重子先生、台所にヨコワあるんで今晩どうぞ」
「あ、ありがとう」
「今日はお稽古何されます?」
「ええとねぇ、そうね。荘物したいの」
「わかりました。支度しておきます」
「吃驚しちゃったわ。来ないと思ってたから」
「おや何か後ろ暗いことでも?」
「ばかなこと言ってないで支度して頂戴」
突き放されて水屋に入る。
雨音。
ついに落ちてきたか。
用意が終ったころ、生徒さんが来られた。
「こんにちは、降って来ちゃったわねえ」
「ええ、もう入梅ですね」
「辛気で嫌よね」
先生が入ってきた。
「先生、こんにちは。今日もよろしくお願いします」
「はいこんにちは」
生徒さんが支度を整え、先生も座られた。
お稽古開始。
湿度で空気が重い中、生徒さんが入れ替わり立ち代りのお稽古。
先生が少し倦んだ気配を見せた。
もう一人だから我慢して欲しいなあ。
目が合うと気配を払拭された。
ん、そうじゃないとね。
生徒さんが他のお稽古を終えて送り出す。
茶室に戻ると先生がもたれてきた。
「疲れましたか?」
「うん、ちょっとね。でもあなたのお稽古はするから」
「しんどいなら土曜でも構いませんが」
「良いわ、出来るときにしないと。だから用意してらっしゃい」
「はい」
ささっと用意をしてお稽古をつけてもらう。
「んん、まぁいいでしょ」
納得はされてない。
だがもう一度見てもらうのは今日は無理そうだ。
「そろそろ片付けるわよ」
そう仰ったがてきぱきとはされなくて。
ふと思い立ち額と額をあわせてみた。
「なぁに?」
「ん、熱はないですね」
ただの疲れか。
「まぁ、でも俺やりますからそこで座っててください」
「そう?悪いわね」
あれやこれや片付けていると先生が転寝しだした。
気を許してる感じが可愛くてたまらん。
すべて片付け終えて茶室と水屋の電気を消す。
そっと先生を抱えるようにする。
あ、いかん、ここでしたくなってきた。
だめだめ、と自分をいさめて抱え上げて居間へ。
座布団枕にタオルケットを掛けてあげておく。
「ん? 寝てるのかい?」
「何か疲れるようなこと朝ありました?」
「ああ、ちょっと町内会のことで色々あったからね」
台所を手伝って律君が帰ってきたので食事を取る。
先生が寝てるからごはんは八重子先生がよそってくれる。
「あんたのはレモンステーキとかいうのにしたからね」
雑誌で読んだらしい。
横では孝弘さんがおかわりをしている。
先生の分あるのかなあ。
なければまた味噌漬けにしちゃう?
「ちゃんと取ってあるよ」
八重子先生が察して教えてくれた。
ならいいか。
食事を終えて後片付け。
まだ先生は寝てる。
八重子先生は半襟をつけ始めた。
雨の日の手仕事、俺は入り込めない。そろそろ帰るか。
八重子先生にご挨拶して雨の中帰った。
雨の夜は好きじゃない。
おやすみなさい。

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