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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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朝、起きた直後に先生から詫びのメールが来た。
今寝れないそうだ。
あんな時間から寝るからだね。
子守唄でも歌おうか?と返事を書く。
そんなのより抱いて欲しい、とメールが返って来た。
慌ててそのメールを削除するよう返した。
だけどえっちな意味じゃなくて抱っこしてて欲しい程度だったようだ。
驚いたじゃないか。
雨の夜の一人寝は少し、さびしかったらしい。
今日昼から行く旨を伝える。
嬉しい、とメールが返って来た。
慌しく出勤。
仕事中ふと考える。
この関係はちょっと先生にとってよろしくないんじゃないか。
八重子先生と二人になった時に少しお話したほうが良いかもしれない。
いや、頼られるのも甘えられるのも嬉しいが。
母として、妻として、教室の先生として。
俺に入れ込みすぎておざなりになるようなら離れなくてはならない。
先生に言うとこじれるんだろうけれど。
飽きたの?とか言われるのは勘弁して欲しい。
なんてよそ事を考えてたら商品出し忘れた。
うん、俺もいかん。
仕事に集中し直し、こなして行く。
雨か…。
気は晴れぬまま仕事が終わり、食事を取り風呂に入る。
着替えて先生のお宅へ車で移動した。
「こんにちは」
と入ればお花のお稽古日らしく女性陣の声がさざめく。
部屋には近寄らないようにして自室へ向かった。
鞄を置いて寝転がる。
雨音、遠くの女性の声。
ミシと廊下が軋む。
「あら、きてたの」
「ええ」
「もうちょっと待っててくれるかしら。生徒さんたちまだいらっしゃるから」
「寝そうです」
「寝てていいわよ」
身を翻して部屋から去っていった。
少し寝よう。
うつらうつらする。
重みを感じて目が覚めた。
「ん、いま何時ですか?」
「さっきから30分ほどしか経ってないわ」
「皆さん帰られた?」
「そう。お昼食べてきたの?」
「食べました。先生はまだですか?」
「もういただいたわ」
「なるほど、重い」
「それくらいで重くならないわよ」
ちょっとふくれっつらをして拗ねてる。可愛いな。
「明日、泊まってくれるのよね?」
「もちろん」
「今日は…」
「無理ですよ。でも夜までは居られますから」
暫くべったりとくっついていたが、そろそろお昼の生徒さんが来るからと起きた。
「寝るならお布団着て寝なさいよ」
「はい、頑張ってらっしゃい」
ちゅっと軽いキスをして部屋から送り出す。
教室は確か3時間ほどか。
布団を敷いてタオルケットをかけて少し寝ることにした。
今からちゃんと寝て、夜、先生が寝る頃にここを出れば丁度良い時間になる。
涼しいこともありよく眠れた。
先生がご飯と呼びに来て目がさめた。
そのまま引き寄せる。
「ダメよ、お夕飯食べましょ」
暫くぐずぐずしていたらデコピンを鼻の頭に受けてしまった。
うーむ、痛い。
食卓に着くと八重子先生からおはようと言われた。
「お邪魔してました」
「今日も泊まっていくのかい?」
八重子先生、それは無理です。
「いや、明日まだ仕事ですから。夜には帰ります」
「ご飯食べたら帰っちゃう?」
「1時までなら居れますよ」
「寝なくて良いの?」
「さっき寝ましたし大丈夫です」
先生の矢継ぎ早の質問に八重子先生が笑う。
「そういえばお稽古じゃないのに何で来たの?」
「やだなぁ、今朝来て欲しいってメールくれたじゃないですか」
「あら? そうだった?」
「寝ぼけましたか。先生にとっては夜中ですから仕方ないですが」
気になるものの食事をしながら携帯を触るのはお行儀か悪いと思ったらしい。
食後すぐ携帯を見だした。
「あら~」
「どれどれ?」
八重子先生が覗き込んでる。
「山沢さん、あんた甘いねえ」
「八重子先生も甘いでしょう? お稽古日なのにうちにやったり。良くないですよ」
「あら、迷惑?」
「じゃなくて家のこととお教室と。
 どっちもおろそかにしちゃいけないんじゃないですか」
先生がしょんぼりした。
「いいんだよ、私がいるうちは娘気分でも。
 ずっとあんたお教室や孝弘さんのことで遊びにも行かせてないしね」
「八重子先生がそう仰るなら」
「それにあんた来てくれると家の事が捗るからねえ、丁度良いよ」
「ああ、先生がしない分は私でまかなえてます?」
うん、と八重子先生がうなづく。
「ということで洗い物頼むよ」
「はい」
食器を引いて台所へ。
先生の前で言うつもりじゃなかったんだが。
苦笑しつつも片付ける。
洗い終わって居間へ戻り先生の横に座る。
と、もたれられた。
俺は嬉しいんだけど良いのかなぁ。
まぁ八重子先生気にしてないし良いか。
ただなんだ、触りたくなるのだが。
そこはちょっと我慢して一緒にテレビを見た。
番組が終って先生がトイレに立つ。
八重子先生が半襟持って来た。
「あんたもつけたら?」
そうか、絽の半襟にしなきゃいけない時期か。
八重子先生と付けていると先生も混ざりだした。
俺が一つつけてる間に二つ。
二つ目を終える頃には足袋の繕いと律君のシャツの綻びをつくろっている。
「手、早いですね」
「あなたが遅いのよ」
八重子先生はとっとと付け終わって部屋に戻ってしまった。
やれやれ、と針と糸を仕舞って先生の肩を揉む。
気持ち良さそうだ。
そのまま胸も揉んだら小突かれた。
「だめよ」
ふっと笑って足を揉む。
足袋を脱がせて指を。
揉み終えて履かせ、ふくらはぎ、膝裏、太腿。
ガタッと音がした。
「律君、どうした?」
「…えぇと、マッサージ、ですか?」
「そうだよ」
違うものに見えてしまったかな。
「あ、あんたのシャツつくろってあるから部屋持って行きなさい」
「うん。あ、お風呂あいたけど」
「おばあちゃんは?」
「今日は良いって」
「じゃ山沢さん、一緒にはいる?」
「ん、そうですね、浸からせて頂きましょう」
「ちゃんと寝巻き持ってきなさいよ」
「はーい」
寝巻きを持ち込んで、風呂に先生とはいる。
うー、ぬくい。
気持ち良いなあ。
横で先生が頭を洗ってる。
濯ぎ終えたので背中を流してあげた。
「うーん、やっぱり先生の肌綺麗だなあ」
「そりゃあ気をつけてるもの」
ここに…傷をつけるのは背徳感と色気を感じるんだろう。
あまりに綺麗で勿体無くてできないが。
他の人にされるくらいなら俺がしたいな。
触っていたら先生はどきどきしてきたようだ。
「あの、だめよ…こんなところで」
「あっ、あぁはいはいはい、そうですね」
湯船に再度浸かって、それから出る。
うん、気持ち良い。
このまま先生と布団にもぐりたい気分だ。
先生の寝間に布団を敷く。
今日は泊まらないから。
先生と布団の横でおしゃべりしてると先生が眠そうにしている。
抱っこして背中をなでて寝かしつけた。
さて、帰るか。
物音を立てないようにして部屋を出て、玄関の鍵を閉めて車に乗って帰宅した。
そして着替えて出勤。
土曜の朝は少し忙しい…はずがこの雨では。
荷物少なくばたつくが最終的には売り上げは今一つだった。
帰宅し、着替えてお稽古へ。
水屋の支度をしていつものように生徒さんのお稽古を済ませ、夕方。
私への稽古が始まる。
前回お疲れで緩い稽古だったが今回はしっかりと。
でもそれが終ると水屋で先生がもたれかかる。
「先生…疲れてます?」
「んー別に」
「疲れてないならけじめつけたほうが良いと思うんですが」
「何でそんなこと言うの?」
「いや…居間に戻ってからなら良いですが、水屋ってまだお稽古の時間でしょう?」
「あら…そうね。けじめのないことしちゃったわね」
しゃっきり背筋に力が入り、てきぱきと指示を出される。
きち、きちっと元の場所へ返し、火の元も確認する。
点検をしてヨシ、となりお稽古終了、夕飯の支度の手伝い。
配膳して呼びに行く。
「あ、今日は団子汁なんだ?」
「そうよーそれと生姜焼き」
それと八重子先生の作る煮物。
俺の分に野菜のおかずが一品多いのは…。
ま、いいけど。おいしいし。
しっかりと食べてお片付けもして。
今日は寝るばかり。
涼しいからあちらにもいかずに。
雨だねえ。
昨日帰る頃の雨は凄かった。
このまま泊まっていたかった程だ。
今日はしとしと。
八重子先生も何か眠そうだ。
「もう寝ちゃいますか?」
「ん、あぁそうだねえ、寝ようか」
「じゃ、戸締りしてきます。先生、火の元お願いできますか」
「うん…あ、律。火の元確かめてきて頂戴」
上手におしつけたな。
戸締りをして戻る。
律君は火の元を確かめてくれて、あとは自室でレポートだそうだ。
先生に部屋へ行くよう誘う。
「連れて行って」
腕を絡めてきた。
「仕方ない人ですね」
ひょいっと抱っこして寝室に入る。
部屋で下ろして布団を敷くと先生が寝る用意をしている
俺も寝巻きに着替えた。
髪をほどいてる先生の後ろから抱きついて胸を揉む。
「もうちょっとまって、ね、お願い」
少し緩めてあげて先生は何とか身支度を終えた。
布団に引きずり込み、素肌に手を這わせる。
「んー気持ち良いな」
滑らかな肌を堪能しているだけなのに先生の息が荒くなる。
結構な時間楽しんでから股間に手をやると随分と濡れていて、
軽く突起を弄るだけで逝ってしまった。
入れて欲しい?と聞くと恥ずかしげにうなづく。
ゆっくり丁寧に弄る。
かすかに啼く声が楽しい。
3度ばかり逝かせると、もう疲れてだめ、と言う。
そろそろ寝かせるとするか。
後始末をして背中をなでて睦言を言ってるうちに先生は寝てしまった。
うん、俺も寝よう。おやすみなさい。
翌朝、先生はよく寝てて起こすのに忍びない。
一人で台所へ行き、朝飯の段取り。
八重子先生が起きてきて味噌汁を作る。
あ、みょうがだ。
自分の分は麩を入れよう。
などと用意をして三人を起こす。
律君と孝弘さんは寝ぼけた顔でそのまま出てきた。
先生はそれなりに身づくろいしてくるから少し遅れて。
先生にお櫃を任せて朝飯を食べる。
んー。
炊き立てのご飯とお味噌汁、うまい。
一日の始まりに美味しいものを食べる幸せ。
食後、片付けを終えて居間に戻ると先生が綺麗な着物に着替えていた。
「あれ?」
「あ、さっきね、古いお友達から電話があって急にお芝居行くことになったの」
ごめんなさい、と拝んで外出の身支度をしている。
「いいですよ楽しんできてください」
こういうのは拗ねたりせず笑顔で送り出してあげねば。
外出の用意を整え終えて化粧もきっちりした先生を見る。
「綺麗だなぁ」
「あら。ありがと。じゃ行ってくるわね」
「行ってらっしゃい、気をつけて」
行ってしまわれてから思い出す。
「あ、八重子先生。何時くらいに帰ってこられるんでしたっけ」
「さぁ、夕飯は食べてくると思うよ。あんたどうする?」
「うーん、帰っても一人部屋でごろごろするだけですしご迷惑でなければ夕飯一緒に」
「まぁとりあえずお昼だね、何しようねえ」
「律君と孝弘さんお出かけでしょう。丼物とかにしますか?」
「あぁいいねぇ、あんた作ってくれる?」
「親子か他人かカツか何にしましょうか。衣笠丼も好きですが」
「衣笠丼?」
「えぇと、油揚げと葱の丼です」
「あぶ玉丼かねぇ、こっちだと。それでいいよ」
あぶらげと玉子であぶ玉丼、なるほど。
と言うことでお昼は冷蔵庫の油揚げとネギで手早く作ってお昼ご飯とした。
後の時間は八重子先生の茶室掃除と整理のお手伝い。
ゆったりとした日曜日。
お夕飯のお買物を頼まれて家を出る。
昼からまた降り出した雨はまだ止まない。
先生が帰ってきたらきっと染み抜きに着物を出すんだろう。
跳ねを上げたりはしないだろうが風が吹くと雨染みがつくからなあ。
あ、でも雨ごーと持って出てたな、急に降られないなら大丈夫か。
そんな私はジーパン履いている。
普段着一式、何セットかは置いてるからね。
ただこの間先生がうっかり糊を効かせてしまったのでパリパリだ。
ジーパンが折り目正しいのは何か面白い。
メモに書いてあるものを買って戻る。
八重子先生の指示通りに下拵えをして、付きっ切りで味付けを教えてくださる。
何とか八重子先生に合格をもらえた。
律君が帰ってきて、知らぬ間に孝弘さんも帰ってたようで食卓で待っていた。
配膳して八重子先生がお櫃からご飯をよそう。
この家はいつも炊き立てご飯。
うちだと一度炊くと二日くらい食べてるからなあ。
米の良いものを買っても…ね。
食べ終わる頃、先生が帰ってきた。
「ただいまぁ、あぁ疲れた」
暑い~といいながら隣の部屋に入って脱ぎ始めた。
さっさと浴衣に着替えて着物を衣桁にかけて食卓へつく。
「あらおいしそう。ちょっと頂戴」
俺のお箸を取って食べている。
「あんたご飯食べてきたんじゃないの」
「軽くしか食べてないのよ。時間が半端だったから」
ご飯は孝弘さんが食べつくしてしまった後なのでおかずだけ。
しっかり食べて満腹、と嬉しそうだ。
引き上げて洗い物。
居間では八重子先生と先生、律君で話している。
中々に楽しかったらしい。
俺もまた芝居に誘いたいものだ。
きっちり片付け終わって先生に辞去の挨拶。
そろそろ帰らないといけない。
また明後日ね~と見送られて帰宅した。
すぐに布団に潜っておやすみなさい。
朝。メールが入ってる。
また寝ぼけてるのかも知れない。
明日顔出したらそんなメール送ったかしら、なんていうのかな。
来て欲しいなら仕事が終わった頃にもう一度メールを、と返事をする。
メールが来なければただの寝ぼけだろう。
暇な月曜。
ざっくり仕事をしてメールを待つ。
正午を過ぎても来ないところを見るとやっぱり寝ぼけたようだ。
今晩から雨らしいので非常食を買い込む。
そして寝る。
耳元に置いた携帯に起こされた。
先生からメール。
美味しそうなお夕飯。
もうそんな時間か。
空は…曇っているが大丈夫だろう。
近所で天ざるを食べた。
そうメールしたら怒られてしまった
暑いからって冷たい物食うと怒られるんだよなぁ。
たまに反発心を覚えるが心配してくれているのはわかっているから何もいえない。
あ。雨が落ちてきた。
寝よう。
寝ているうちにメールでまた起こされた。
なんだなんだ?
あ、先生の所はひどい雨らしい。
ということで俺を心配してくれたようだ。
幸いこちらはそうでもなく、先生のほうはどうかとメールを返す。
雨漏りもなくなんとかなったとのことで安心した。
あの家も古いから。
暫くメールを交わして先生も落ち着いたようだ。
明日もお稽古に来なさいね、と書かれて勿論です、と返す。
おやすみなさいと挨拶をしてメールが終った。
翌朝、仕事を終えかけていると先生から電話が。珍しい。
急な用でこっちに出てきたけど財布にそんなに入ってなくて帰れん?
お稽古までに帰りたいから律君は無理、なるほど。
すぐに来られるかって、ええと。
保留にして社長に帰って良いか聞く。OK出た。
電話を取ってすぐって着替えてからで良いのか?と言うとだめって言う。
しょうがない、この格好でお迎えに行くか。
急いで車に乗り込む。
指定の場所について後部座席へ先生を乗せた。
「ごめんね、ありがと」
「このままおうちまで飛ばします。シートベルトしてくださいよ」
「え?」
ちょっと普段よりはスピードを上げて先生のお宅へ。
20分ほど短縮できた。
「お母さんの運転みたいだったわ…」
どきどきしてたらしい。
先生を降ろしてから車庫入れをして戻る。
長靴を脱いで端にそろえ、替えの靴下を履いてから。
居間に顔を出す。
早速に先生はお昼ご飯を食べようとしている。
「あ、あなたもいるわよね」
八重子先生がその前にシャワー浴びて着替えておいで、と言う。
「そうします、後でご飯ください」
「悪いわねぇ急がして」
ふっと笑ってシャワーを浴びる。
生臭さを落として風呂から出ると、着替えの浴衣が置いてあった。
さっと纏い、居間へ出て食卓に着く。
先生は水屋の支度を始めているようだ。
八重子先生がご飯をよそってくれた。
さらにおかずが足りないと思ってかふきの葉の佃煮を出してくださる。
うまい。
美味しく残ったおかずを全部頂いてごちそうさま。
「洗い物は私がするからあんた着替えといで」
「あ、はい」
部屋へ行って単衣の着物を着る。
今日の気温は25~26度って所だろう、丁度良いね。
着替え終わると丁度生徒さんがいらっしゃったようだ。
茶室に急ぐ。
「こんにちは」
「こんはちはー」
生徒さんと先生が玄関の長靴に注目してしまった。
二人とも大人だからスルーしてお稽古開始。
うーん、先生の支度したのはやりやすい。
見習おう。
身を入れてお稽古に従っていたら気づけばもう最後の生徒さん。
送り出して先生は俺のお稽古を始められた。
今日は前回叱ったからか、ちゃんと先生の顔で厳しくお稽古をつけてくださる。
いくつも駄目だしをされて気がそれたら叱られた。
稽古が辛くなる前に時間切れ。
八重子先生がご飯、と呼びに来た。
水屋を片付け終えると頭をなでられた。
「何です?」
「ん、よく頑張りました」
にっと笑ってお夕飯。
あ、すき煮。
どうやら食卓ですき焼きの鍋を囲むのは暑くていやと言うことらしい。
肉の量は分け隔てなく。
さらに俺のおかずにきゃらぶきがついた。
あとは人参のお味噌汁。
甘くてうまい。
あまり喋ることもなく食べてたら先生に笑われた。
「おかわりあるよ」
すき煮はまだあるらしい。
他の人がいらないなら貰おう。
様子を見ておかわりをお願いした。
更に先生が冷蔵庫からおひたし持って来た。
「食べなさい、お肉ばっかりじゃ駄目よ」
はい。
しっかり食べて満腹満腹。
その後、片付けをして居間へ行く。
先生が手招いた。
なんだろ。
横に座ったら引き倒されて先生の膝枕。
あ、気持ち良い。
けどどうしたんだろう。
…耳かきね。
はいはい。
「…あら?」
「どうしたんだい?」
「山沢さんの耳、綺麗なのよ。面白くないわー」
「なんですか、それ」
「だってするんだったら沢山あるほうがやりがいがあるじゃない」
「あー確かにそうかも」
耳かきを置いて俺の髪をくしゃくしゃとかき混ぜて。
「律君にしたら良いじゃないですか」
「恥ずかしがってさせてくれないのよ」
「じゃ八重子先生の」
「お母さんもあまり溜まらないのよねぇ」
そのまま手が俺の首筋、胸へと動く。
揉みたくなったらしい。
「あ、そうそう」
ころん、と横に転がされて先生が立ち上がった。
「あなたこんなの食べる?」
あ、これうまいやつだ。
「結構好きです」
「もてあましてたのよ、食べて頂戴」
「孝弘さんは食べないんですか」
「苦手みたいなの」
へー、意外だな。
八重子先生がわざわざ紅茶作ってくれた。
うん、濃い。うまい。
ぺろりと三つほど食べたのを見て先生が溜息一つ。
「よくこんなの食べれるわねえ」
「ほんとにねぇ」
「あと10年もしたら受け付けなくなるかもしれませんけどね」
紅茶を飲み終わり、台所に持って行く。
先生はお風呂入ってくる、とのこと。
居間に戻ってくつろいでると先生と入れ替わりに律君がお風呂に行った。
ちら、と先生の乳が見えて凝視しそうになる。
八重子先生のいる前は駄目だ。
ぐっと我慢して、火の元や戸締りを確かめに行く。
律君がお風呂から上がったのをキリに部屋へ連れ込んだ。
入ってすぐに抱き寄せて暫くキス。
唇を離す。
気持ち良さそうな顔つきで色っぽくなった。
寝る用意をさせて布団を敷き、俺も脱いで布団の中へ入るよう促す。
恥ずかしげに入ってくるのはやっぱり可愛くて年上とも感じさせない。
もう一度キス。
それから首筋や鎖骨に手を這わせ、掠めるように乳首に触れる。
「ん…」
きゅっと俺を掴む。
優しく乳首を弄ったり、舐めても見たり。
吐息が熱い。
お腹や腰、太腿をなでる。
「ねぇ…久さん、キスして…」
求めてくるのは珍しい。
というかキス好きだよなー。
納得するまでキスしつつ、胸も愛撫する。
太腿をすりあわすようにしている感触。
そろそろ触るか。
そっと突起へ指を伸ばす。
触れると舌に歯を当てられた。
危険だ。
唇を離して腕を噛ませる。
その後はいつものように声を上げない程度に。
もっと手荒くしたいけど仕方ない。
伏せさせる。
「ひっ…だめ、そこっ」
小声でいやいやを言うが、尾骨をなでつつ尻穴を舐めた。
先生は俺の手拭を噛んで声をこらえている。
じたばたして足が当たる。
いてて。
あきらめてひっくり返して抱きこんだ。
キスしようかと思ったら手で顔を押された。
「ん?」
「口、すすいできてちょうだいよ」
あー、ケツ舐めた口でキスするなと。
はいはい。
笑って起きて、先生にちゃんと布団をかぶせ洗面所へ。
可愛いねー。うん。
濯いで戻ると先生はうとうとしてた。
もぐりこんで背中を撫でる。
気持ち良い肌だなぁ。
すぐに寝息に代わって俺も寝る。
そして朝、やっぱり先生が少し遅れて起きる。
寝起きのキスをして台所へ。
朝ご飯をして食べて、律君を送り出す。
「展覧会、あんたら行かないかい?」
「いいですねぇ」
「良いわね、行きましょ」
着替えて出ようとしたものの、そういえば長靴で来たんだった。
「先生、何か草履か雪駄かないですか」
「お母さーん、お父さんの草履、どこかに仕舞ってなかったかしら」
「はいはい、ちょっと待ってて頂戴。ええと」
暫く探してくれたけど、礼装用しかないようだ。
「あ、下駄あるわよ、ほら」
おっとこりゃ丁度良い。
途中でどこかによってあれば草履、なければ雪駄を買おう、と言う話になった。
懐に足袋を忍ばせて雨ゴートに身を包み、展覧会へ。
雪駄はその辺の靴屋にもあるのでまだ助かる。
竹皮表の雪駄を購入し移動する。
会場に着いて履き替えた。タイヤ底なので滑らない。
ここの会は売らない会で沢山良いものを見て目を養ってもらったり、
考える暇を与えてずっと着てもらうと言うコンセプトだ。
そのときの勢いで買って死蔵されるのは嫌ということらしい。
色々見て先生は欲しいものが決まったようだ。
とりおきはしてもらえるのでお願いする。
俺は浴衣を一枚とお茶席用の帯を先生に見繕って貰った。
さてそろそろ帰りましょう。
入り口で下駄に履き替えて先生と歩く。
「雨強いわねぇ」
「そうですね、シルックにして正解だったな」
人通りも少なく雨の音が凄い。
「ねぇ、久さん。昨日みたいなことやめて頂戴」
「昨日?」
「あの、…舐めるの」
「どこをかな」
「わかってるくせに言わせるの? 酷いわね」
「恥ずかしがってるの、可愛くて好きですよ」
「ばか、もうっ」
少しむくれて、それがまた可愛くて笑ってしまう。
手の甲をつねられた。
「あ、ちょっとこっち向いて」
頬にまつげか眉毛か知らんがついている。
そっと取って捨てた。
「お夕飯何にしようかしら」
「二人でどこか行きませんか」
「あら駄目よ」
「駄目ですか?」
「うちにいるのに食べになんて」
「でも俺、この辺の美味しいところ知らないからあなたと食べに行きたいな」
「ん、また今度ね」
「わかりました。じゃ、今日は何にしますか」
「しょうが焼きとかどう? あなた好き?」
「んん、すり下ろしならば」
「じゃそうしましょ」
携帯で家に電話して八重子先生と献立の話をして、そのままお買物へ。
あれやこれやと買い帰宅した。
雨ゴートを片付けて台所へ下拵えに立つ。
先生は八重子先生に報告してるようだ。
ご飯も炊いて、あとは焼くだけ、煮るだけにして戻った。
「あ、山沢さん、あんた昨日の服。隣の部屋にかかってるから。
 畳むなり着て帰るなりしなさい」
「あれ? 洗ってくださったんですか、すいません。有難うございます」
「けど畳みにくい服だねぇあれ」
「そうなのよね。いつも畳んでないわよ」
「そうなの?」
「3D縫製は着心地は良いんですが畳めないですよね」
なんだかんだと暫くおしゃべりを楽しんでから先生がそろそろ作りましょと言った。
台所へ行ってお手伝い。
作って配膳して皆を呼んで食べる。
団欒だなぁ。幸せ。
でも帰らなくちゃいけない不幸せ。
車に雪駄を履いて服と長靴を積んで帰る。
ちょっとさびしく思いつつ帰宅。
着替えて布団にもぐりこんで、お休みのメールをする。
すぐに返信があった。
気持ちが温かくなりすぐ眠りに落ちた。
翌朝も雨、梅雨は嫌いだ。
出勤しても客もやる気がない。
俺もやる気がない。
社長も今日はあまりやる気がないようだ。
しかしながら昼になるにつれ雨がやんできた。
まだ空は曇っているが予報はこれから晴れ間もありらしい。
お稽古に行こう。
お宅に着いてお稽古の準備を整えた。
先生も何か気だるげなのは気のせいだろうか。
それでも水屋を片付けるまでは何とか気力が持った様だ。
台所ではなく先生の部屋に呼ばれた。
暫く俺の懐に。
八重子先生が呼びに来てやっと離れて食事へ。
夕飯を食べた後も物憂げだ。
どうしたのだろうか。
「…おばあちゃん」
「なに?」
「明日お稽古お願いしていいかしら」
「いいけど?」
「山沢さん、家行っても良いわよね?」
「ええ、かまいませんが」
「じゃ用意してくるから待ってて。あ、律。ちゃんとお勉強するのよ」
「はいはい」
「はいは一回」
「はーい」
そういうことで支度をした先生を連れて帰宅した。
「…掃除してないでしょ」
「明日する」
「しておいてあげるわよ」
「いいですよ」
「暇なんだもの、あなた帰ってくるまで」
「すいません」
先生はぽいぽいと着物を脱いで寝巻きになった。
「早いけど一緒に寝て頂戴」
「はい」
俺も着替えてベッドにはいる。
「今日はしないでね。寝たいだけだから」
「いいけど。どうしたの?」
「なんでもないわ」
「そう?」
言いたくないなら仕方ない。
緩く抱きこんでゆっくりと背をなでた。
少しずつ穏やかな息になり、寝息に変わる。
肩に入っていた力が抜ける瞬間。
それを見届けて俺も寝た。
先生にとっては夜半、俺にとっては朝がやってきた。
寝ている先生にキスを落として出勤する。
過ごしやすい気温、と思っていたら一気に快晴になったらしく。
段々と暑くなって上着を脱いだ。
お客さんも今日は買う気になったようだ。
それなりに売れてやれやれと仕事を終える。
あ、上着持って帰らないといけない。
先日から置き去りの数枚も一緒に持って帰った。
あれ、暗い。開錠してドアを開ける。
先生の草履は…ある。
風呂?
でもない。
寝室かな。
そろりとドアを開ける。うん、寝てた。
そのままにして洗面所で脱いで手を洗う。
寝巻を羽織って先生の横に忍び込んだ。
床に割烹着と帯が脱ぎ捨ててある。珍しい。
抱っこして10分くらい経っただろうか、先生が起きた。
「あぁ帰ってたの? おかえりなさい」
「ただいま。まだ寝てて良いよ」
「うん…こうしててくれる?」
そのまますぐに寝息。
さていったいどうしたのだろう。
朝御飯は作って食べたようだけど、掃除はすると言ってたがしてない。
食後の眠気に負けたのかな。
結局2時ごろ、起きた。
「ごめんね、おなかすいたでしょ」
「ま、たまにはいいでしょう。喫茶店でも行きましょうか」
「着物なにか貸してくれない? くしゃくしゃになっちゃったわ」
はいはい。
先日衣更えして把握してるだろうからと勝手にあさってもらうことにした。
脱いで衣桁にかけて、そして着物を着て出てきた先生を連れて近所の喫茶店へ。
俺はホットサンドとサラダのセット、それとカツサンドを。
先生はパンケーキ。なんか色々かかってて甘そう。
途中で俺のカツサンドを一切れ食べた。甘いから休憩?
コーヒーと紅茶で落ち着いて、帰宅。
先生はまた寝巻に着替えて、俺にべったりとくっついてる。
「泊まる?」
「そうしたいけど…明日もお稽古だから。夜になったら帰るわ」
お腹がすくまでこうしてたいと言うのでベッドに移動した。
たまには先生もこういう日があるんだろう。
そのまま一緒にうとうととした。
ふと目が覚めた。
なんだ。と思ったら先生が乳摘んでた。
「ん?」
「なんとなく…触りたくなっちゃっただけよ」
ま、良いか。今日は甘やかす日ということで。
「つっ!」
「痛い?」
「乳首噛んだらそりゃ痛いですよ」
って言ってるのにまだ噛むんだからSなところあるよな。
「うー…」
楽しそうにくすくす笑ってる。
機嫌回復したのは良いことだが。
「お腹すいちゃったわ、何か食べましょ」
引き起こされた。
時間は6時か。
「何食べたい?」
「んー、ピザかしら」
「デリバリーか食べに行くかどっちがいい?」
「持ってきてもらいましょ」
メニューを取ってきて見せる。
野菜の多いピザをチョイス、更にサラダ。
届くまで先生を膝に載せて抱く。
くぅくぅと先生のお腹がなってる。
「早く来ると良いですね」
「そうね」
暫くして届いて食卓に広げる。
「おいしそう、いただきます」
「うまそうですね」
先生はLサイズの3分の1とサラダを半分食べてもうお腹一杯らしい
手を洗って俺の膝に座った。
ちょっと食べにくい。
綺麗さっぱり食べつくして俺も手を洗いに立つ。
暫くまったりといちゃいちゃして先生がそろそろ帰る、と言う。
「送らなくて良いわ。明日お稽古ちゃんといらっしゃい」
「勿論、行きますから待っててくださいね。でも駅まで送りますよ」
着物を着替えて先生は帰ってしまった。
俺は後は寝るばかり。
おやすみなさい。
熟睡中に先生の帰宅報告メールを貰った。
起きて出勤、それなりの荷動き。
やっぱり天気が怪しかろうと土曜は土曜だ。
忙しくてお稽古に少し遅れそう。
メールを先にしておいた。
仕事が終わり、慌てて帰宅しシャワー、着替えて駅へ。
電車に乗っているとメールが返って来た。
落ち着いて事故の無い様に来なさい、と書いてある。
うん、落ち着こう。
電車の中で焦っても仕方ない。
深呼吸をして電車を乗り継いで先生のお宅へ。
「すみません、遅くなりました」
「いらっしゃい。水屋はして置いたから着替えてらっしゃい」
「はい、有難うございます」
着替えて茶室へ。生徒さんは後5分もすれば来るはずだ。
先生にちょっと着方を直された。
「急ぎすぎよ。ちゃんと着ないと駄目よ」
「すいません」
笑い声に気づいて見やると生徒さんがくすくす笑っていた。
「おじゃまします」
「あら。いらっしゃい」
「こんにちは」
「仲がおよろしくて良いですわねぇ」
ほほほ、と先生も笑ってお稽古開始だ。
たまにお客様の稽古に混ぜてもらったりしてのんびりなごやかなお稽古。
先生も今日は普通に落ち着いて生徒さんの相手をなさってる。
いったいなんだったのか。
夕方、生徒さん達が帰られて俺へのお稽古もいつもどおりに厳しい。
完全にいつもどおりだ。
ご飯を頂いて、団欒。
八重子先生があちらの家に行って来て良いと仰る。
先生は今日は行く気はないようだ。
別に今日どうしてもしたいほどでもないのでそのまま団欒を続け、風呂に入った。
先生と寝間へ行く。
布団に寝転がって先生が着替え、髪をほどくのを眺める。
色っぽいなぁ。
それから布団の中に先生が入ってきて、キスをした。
唇が離れたら先生は背中向けて、おやすみなさいって言って寝てしまった。
ありゃ。
する気にはなれなかったか。
いいけどさ。
眠くなるまで先生の乳を玩ぶ。
やわらかくてすべすべで気持ち良いんだよなぁ。
堪能しているうちに眠ってしまった。
朝は先生が先に起きたようだ。
どうも先生の乳をつかんだまま寝てたらしい。
手の甲を撫でられる。
起きるにはまだ早い時間だ。
そろりとその手をお腹、そのまま下の毛をまさぐると逃げられた。
「朝から駄目よ」
「昨日もしてないのに」
「でも駄目。朝なんだから」
そういって身づくろいをはじめてしまった。
不機嫌に布団で大の字になる。
暫くして部屋に先生が戻ってきたと思ったら顔踏まれた。
「早く支度しなさい、朝御飯作るわよ」
「まだ早い…」
「涼しいうちにしないと駄目よ」
もそもそと布団から出て畳む。
「ほら、早く顔洗って着替えなさいよ」
追い立てられて着替えて台所に行く。
米を炊飯器にセットして、朝御飯の支度にかかる。
「あら、お味噌切れてる」
「あー…赤出汁と白味噌混ぜます?」
「そうね」
適当な割合で混ぜて、味見。
「ちょっと甘いかしら…まぁいいわ」
「おはよう」
「お早う、お母さん」
「おはようございます」
手伝いに回って食卓を片付けたり、洗い物をしたり。
「どうしたの? 何か機嫌悪い?」
八重子先生に聞かれた。
なぜばれるのだろう。
言いづらいのでなんでもないことにして朝ご飯をいただく。
食べた後の片付けもして居間に戻る。
「暑いわねぇ」
「本当に暑いねぇ」
そういいつつおいでおいでをして俺を膝枕させた。
先生の膝は気持ち良い。
暑いけどそれなりに風が有って心地よく、
「お昼どうするー?」
「そうねぇ…」
「なます食べたいです」
「紅白?」
「はい」
「ほかは?」
「小松菜と厚揚げの煮びたしとかどうでしょう」
「いいわねえ。じゃお買物行きましょ」
着替えてくる、と言って先生は俺を膝から下ろす。
途中律君の部屋によって夕飯は何食べたいか聞いてるようだ。
暫くして戻ってきた。
「さ、行くわよ」
「はい」
起き上がり先生の後をついていく。
ふと思い出した。
「そういえば父の日でしたけど何かされたんですか? 孝弘さんに」
「ああ、お父さん? さっき着てた服がそれよ」
「よかった。忘れてたらどうしようかと思いましたよ」
「流石に忘れないわよ…」
お昼ごはんの買出しついでにお夕飯の分も買い、更に和菓子を一箱。
「あ、うまそう」
「これはお父さんのよ。なぁに?食べたいの? 駄目よ」
「なんで? いいじゃないですか」
「太るわよ」
「運動したら」
「屁理屈言わないの、帰るわよ」
手を引かれて渋々帰る。
台所に立ち早速にお昼の支度。
なますと煮浸し、後いくつかの保存食系小鉢。
おいしい。
食べ終わると八重子先生が洗い物に立ち、律君はレポートを書きに行った。
孝弘さんは寝てくる、と部屋へ。
先生は俺の膝に手を突いて膝を崩してテレビ。
段々と胸に肩をもたせかけてきた。
うーん。
「先生、俺、今日は帰ります」
「あらそう? 気をつけてね~」
なんとなく気乗りしないまま帰宅する。
昼を食ったのだからもう寝れば良いだろう。
しかし引き止める気もなかったようだ。
もうどうでも良い相手になっちまったんだろうか。
少し悲しい気分のまま寝た。
起床、トイレへ行って気がつく。
いらいらと悲しい気分の原因は判明した。
だけど昨日は夕飯メールもなく、本当にどうなんだろう、と思う。
気が向いたらメールで聞こうか。
向く可能性は低いけれど。
出勤し少しいらいらとしつつも仕事をこなし帰宅する。
寝よう。
着替えてトイレに行ってすぐに寝た。
2時間ほど寝て、掃除にかかる。
無駄にやる気が出るんだよな。
きっちりとあちこち掃除し、台所も綺麗になった。
風呂もトイレも。
ああ疲れたと床に転がり、ふと思いついて先生の家に電話をかける。
八重子先生が出た。
「こんにちは、山沢です」
『あんた昨日はどうしたの』
「今日からアレでして、それで明日多分辛いと思うので休ませて頂いて宜しいですか」
『あぁ、なんだそれでかい。不機嫌だったからまたなんかあったんじゃと思ったよ』
そういうことにしておいて貰おう。
「じゃ先生にもそのようにお伝えください」
『はいはい、あったかくして寝てなさいよ』
「はい、ありがとうございます」
電話を切って布団に潜る。
暑い時期に暖かくしてろとは中々に難しいが。
少し暑さで寝苦しい。
そろそろ晩飯の時間か。面倒くさいな。
うーん…親子丼食いたい。
でも着替えて外に出るのが邪魔くさい。
うぅ。
何か冷蔵庫とかにあるかなぁ、あ。カレーはあるな。
もうそれでいいや。
ご飯を温めカレーを温めて食べた。
洗い物も明日で良いや。
寝よう。
おやすみなさい。
翌朝、少し辛いまま仕事をして疲れて帰る。
明日は休みだからなんとかなるだろう。
すぐに布団に入った。身体が冷えている。
そういえば昨日もメールはなかったな。
明日、問い詰めようか。他に良い人でも出来たのかもしれない。
ぼんやりと考えているうちに眠気が下りてきた。
そのまま寝る。
寝汗が酷く、自分の声で目が覚めた。
「大丈夫?」
「うぅ…う? …なんで、お稽古は?」
「もう7時半よ?」
「いやそれより何で来たんですか」
「お母さんがお夕飯差し入れたらって言うから」
「あー…」
「食べるでしょ?」
とりあえず起きてトイレに立ち、食卓についてご飯を食べる。
「掃除したのね」
「ええ、昨日」
黙々と食べ終わって、食器を台所へ返す。
「洗い物はしてあげるから布団入ってなさい」
ベッドに入らされた。
暫くして先生が着替えて布団に入ってきたからキスをする。
「ダメよ」
「どうして。他に良い人でも出来たのか」
先生を下にして押さえ込む。
「え、ちょっと、何でそういうこと言うのよ」
「この間からずっとさせてくれないじゃないか。したくないわけが有るんだろ」
「えっ…、痛っ、ちょっと、ね、離して…怖い…」
睨め付ける。
「言えよ、理由あるんなら」
目を伏せて黙る。
「早く。言わないならケツにぶち込む」
「待って、それだけは…。お願い…」
「じゃあ言え」
「…暑くて」
「クーラーつける」
起きてクーラーつけた。24度に設定した。
「で?これだけか?」
「先週の頭は疲れてただけなのよ…。
 ここ数日は暑いから…したくなくなっちゃっただけで」
他意はなかったらしい。なんなんだよ。
「それならそれで暑いから嫌だとはっきり言やぁいいのに」
「だってあっちの家でってことになるでしょ、恥ずかしくて」
「今更。うちに来るのもあちらも変わらんでしょう」
「あなたの家ならご飯食べたりお出かけしたりもするじゃない。
 あっちはその…えっちのためだけだから…」
息をついた。
「あなたの家の俺の部屋、クーラーつけますよ? いいですね?」
「は、はい」
ひんやりした空気に包まれだして先生が身を添わせてきた。
「あの…する?」
「したくないなら今日はもう良い、寝なさい」
「ごめんなさい」
トイレへ行って布団に潜り込む。
クーラーの温度設定が28度に戻っていた。
「あなた、寒いと思って」
「抱いてればあったかいから平気。それよりキスくらいはいいでしょう?」
「したくなっちゃうからだめ…」
「なったらクーラー強めて抱かれたらいい」
そっと唇をなでる。
それだけで体温が上がったようだ。
どきどきしてるようだが、困った顔もしているのでそのまま懐に抱きこんだ。
「寝ましょう」
「いいの?」
「今日のところは。明日、クーラー効かせてしましょうね」
先生から軽くキスしてきた。
「あの、あまり酷くしないでね…」
「さぁね。寝るよ」
電気を消した。
いらいらしたままではあるものの、先生の体臭が心を穏やかにする。
腕を掴む先生の手が緩んできた。
暫くして寝息。
暗いとすぐ寝れるのはうらやましい。
おやすみなさい。
翌朝起きてトイレへ行き、また布団に戻る。
まだ気持ち良さそうに寝ている。
朝は涼しくて心地よい。
起こすのは忍びない、と眺めていたのに起きてしまった。
あふ、とあくび。
「何時?」
枕もとの時計を見る。
「7時半ですね」
「あらいけない、朝御飯作らなくっちゃ」
「腹減ってないならもっと後で良いよ」
「それからじゃご飯炊けないわよ」
ぽんぽん、と腕を叩かれてあきらめて開放した。
もうちょっと抱いてたかったなぁ。
先生がトイレへ行って身づくろいしている間にご飯を炊く。
暫くして台所に来たので交代して洗面所を使う。
あれ? 朝飯になるようなもん冷蔵庫にないんだけどな。
ベーコン焼く匂いがする。
台所に戻るとほうれん草をいためているところだった。
「あ。昨日買物してからうちに来た?」
「そうよ、朝御飯作るつもりだったもの」
人参もいためてたようだ。
「トマト切って頂戴」
「はい」
…これは桃太郎ゴールド?
珍しいものを買ってきたんだなぁ。
「スライスにします?」
「何でも良いわよ」
赤いトマトも有った。
同じサイズ。
スライスして交互に盛り付けようか。
そうしよう。
夏用の皿に盛り付けて涼しげにしてみた。
小細工をしてるうちに出来た様で、洗い物もお願いーと菜箸などを渡された。
早炊きモードだがまだ少しかかりそうだ。
先生がお味噌汁を作る。
具は麩。
「あ、そうだ。これからずっと俺が泊まるときあっちの家で寝てくれません?」
「どうして?」
「前も言いましたが虫が苦手で。あちらは入ってこないから」
「でも…」
「一人で寝るのは嫌です。律君にも私から言いますから。
 なんだったら八重子先生と一緒に寝てもいいです」
「そんなに苦手なの?」
「虫が身近じゃなかったからでしょうかね」
「酷く暑い時はお母さんと寝て欲しいわ」
「うん?」
「お母さんも年だから…寝不足って言ってるときあったのよね、去年」
「ああ、そういうことですか。布団一組増やしましょう」
上は肌掛とタオルケットで良いだろう。
押入れはまだ余裕あったし入る入る。
あ、飯が炊けた。
「お味噌汁注いで頂戴」
先生がご飯をひっくり返して蒸らしにかかろうとする。
「先生、それ蒸らしもできてるやつですから」
「あ、そうだったわね、つい」
ワンプレートにオムレツ、ベーコン、人参とほうれん草を盛り付けて食卓へ。
パンとスープではなく、ご飯とお味噌汁。
「いただきます」
一人でだったらこんな朝御飯は絶対に作らん。
等量に盛り付けたのだが、先生がベーコン一枚こっちにくれた。
食べ終わって洗い物を終えると洗面所から先生が呼ぶ。
「脱いで頂戴」
「へ?」
「洗うから」
「あぁ…何かと思った」
脱がされてついでだから風呂入れといわれてシャワーを浴びる。
風呂から上がってすぐにトイレへ。
始末をして床に寝転んだ。
「浴衣着なさいって言ってるでしょ」
「暑い…」
「冷えたら痛くなるわよ」
「抱いたらあったまる」
「バカなこと言ってないで早く着なさいよ」
そう言われつつも暫く転がってると先生が干し終わった。
「ん、冷えてきた。おいで」
苦笑してる。やっぱり朝だから嫌っぽい。
「それよりお昼のお買物行かない? 今のうちなら暑くないし」
紫外線か。
諦めてむくりと起き、着替えた。
ほっとした顔をしている。
「何食べたいんです?」
「なにしようかしらねぇ」
「晩飯、あなたが煮物作ってくれるなら昼はハンバーガーでも良いんだけどな」
「そんなのでいいの?」
「うん。どこ行きます?」
「作るわよ。外でなんて食べられないでしょ、こぼしちゃうわよ」
「買ってきてうちで食べれば良いじゃないですか」
「冷めちゃうじゃない」
「強情だな」
「そんなこと…」
「買物、行ってくる」
いらっとしてしまった。ちょっと冷まさなきゃいけない。
先生を置いて雨の中スーパーへ行く。
バンズ用パンと玉葱、トマト、牛ひき肉。チーズ。マッシュルーム。レタスにポテト。
それから夕飯の材料。
先生も腹を立てていたら帰っちまってるかもしれないから日持ちするものを。
買い終えて帰宅する。。

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