あ、帰ってはいないようだ。
「おかえりなさい…ごめんね」
抱きついてくる。
しかし両手に物を持ってるからどうすることも出来ないでいると気づいてくれた。
慌てて荷物を一つ受け取って台所へ。
冷蔵庫にすべて食材を仕舞い終えてから先生にキスした。
「ごめん。いらいらしてた」
「ん…」
「お昼、作る? それとも」
先生が自分から脱ぎ始めた。
いや俺が作ろうか、と続けるつもりだったんだが。
まぁでも思い切りが出来ないと脱げないだろうからここで止めるのは恥をかかせるかな。
でも台所では先生とて本意ではなかろう。
せめてベッドに連れて行くことにして。
先生は肌襦袢に手を掛けて少し止まった。
いまかな。
その手を掴んでベッドへいざなう。
恥ずかしげにしていて可愛い。
思わず抱え上げてしまった。
ベッドに下ろしてキス。
追い詰めないように優しく、優しく抱いた。
少し落ち着いてお昼を作る気になった。
先生をそのままに台所をする。
買ってきた玉葱とマッシュルームをいため、挽肉は焼き、チーズを載せた。
ポテトはオーブンの中だ。
バンズも焼いてそろそろ先生を呼ぼう。
と思ってたら出てきた。
「良い匂い。おなかすいてたみたいだわ」
「もう出来ますよ。一つでいいのかな。二つ?」
「一つで良いわ」
ポテトもそろそろ良さそうだ。
塩を振って温かいハンバーガーとともに出す。
「どうぞ」
「おいしそうね」
俺のは更に朝の残りのベーコンも足した。
「こんなの久しぶりに食べるわねえ」
「でしょうね」
二人でぱくぱくと食べる。
「うっ…塩噛んだ」
ポテトの振った塩がだまになってた。くそう、しょっぱい。
先生がくすくす笑ってる。
食べ終わって一服。
先生を懐に抱いてお座部枕。
「ねぇ久さん。さっきのえっち…」
「んー?」
「優しくて驚いちゃったわ。酷いことされるんじゃないかしらって思ってたから」
「あぁ。だからされたくなさそうだったのかな」
「そうなの。怖くて」
苦笑する。
「そうしたかったけどね。怖がってるような感じだったから。無理だろうと」
緩くなでる。
あふ、と先生があくびをした。
「ご飯食べたら眠くなっちゃったわ」
「一緒に寝ましょうか。4時くらいに起きたら良いんだから」
「そうね」
そのまま寝ようとしたら叱られた。
ベッドに入るのね、了解。
トイレに行ってから潜り込む。
だけどなぁ、ベッドだとしたくなっちゃうんだよね、色々と。
ま、眠いようだし我慢して俺も一旦寝るとしよう。
寝ていると先生に蹴られて目が覚めた。
暑かったようで布団と一緒に俺を蹴飛ばしたのかな。
クーラーをつけて時計を見る。
そろそろ起きてご飯の支度をしようか。
下拵えをして少しテレビを見た。
かすかに音うるさいと聞こえた気がして音量を下げた。
先生の寝息が聞こえる。
さてこのまま寝かせるか飯の時には起こすべきか。
寝息がやんだ。
キシッと音がして起きたようだ。
そのまま俺にもたれかかる。
「何で一緒に寝てくれないの…」
「いやそろそろ飯の支度をと」
「もうそんな時間…?」
テレビが丁度良いタイミングでニュースに切り替わった。
5時半のニュース。
「もうちょっと、だめ?」
「布団だとそのまま朝まで寝ちゃうんじゃないかな」
「ここでいいわよ」
「最近本当に甘えただなぁ。どうした?」
「甘えたいんだもの…」
なんか理由になってない気がするがなでていたら寝てしまった。
しょうがないなぁ。
懐に抱いたままテレビを眺める。
ニュース、エンタメ、スポーツとニュース番組が終わり、チャンネルを変えた。
1時間半。
夕飯どうしよう。
腹減ってきたなぁ…。
と思ったら先生もやっと目が覚めたようだ。
「ん、よく寝たわぁ…あらぁ? どうしてここで寝てるの?」
「あー覚えてませんか。いいですけどね。腹減った…」
「あら」
くーぅ、と先生のおなかも鳴った。
「下拵えはしたんですけどね、後は味付けだけ」
「はいはい、じゃそれはするから食卓片付けて頂戴」
よっこらしょと起きて先生は台所を。
10分ほどで配膳となった。
「おいしいわねぇ」
「うまいです」
食事を取って、暫くして先生が着替え始めた。
帰る準備だ。
「帰したくないなぁ。このままうちにいて欲しい気分です」
「私だって…そういうわけにいかないでしょ、明日お稽古だもの」
「そうなんですよねえ」
なんだかんだてきぱきと着替えて。
さっさと帰っていかれた。
さびしいなあ。
明日お稽古ちゃんと行こう…。
こういう日は寝が足りてようと寝るべきだ。
おやすみなさい。
朝が来て起床。
出勤。
仕事を適当に終わらせお稽古へ。
到着して居間に顔を出す。
「いらっしゃい」
「こんにちは」
「ちょっとこっち座って」
「はい?」
どうやら八重子先生に夏の間のお泊りについて話してたらしい。
「昨日ほら、虫の話したでしょ。そういえば前にもそういう話してたわよね」
「あ、やっぱり俺してましたよね」
「何か聞いたような気はしてたのよ。それでね」
暫く対策を話して、7月からあちらの家に泊まるかこっちにクーラーか考えることに。
先生はクーラー設置に乗り気だ。
まぁ確かにわざわざと言うのは気術ないのはわかる。
だけどそろそろお稽古の支度をしないといけない。
話の途中だが後の話しは夜と言うことで水屋へ。
用意中に生徒さんの声、先生もあわてて出てきた。
高速で用意する。
うまく先生が場を繋いでくれて間に合った。
後はいつものように生徒さんのお稽古の間に次の生徒さんの用意をする。
何人かのお稽古が終って一息。
「さてと。あんたのお稽古ね…んー、お台子しましょうか。最近してなかったわよね」
「はい。じゃ用意します」
時間に余裕もあるのでセッティングしてお稽古開始。
あれ? 今日はそんなに厳しくない。
こりゃ俺の機嫌を見てるかな。
それなりに手を抜いてもらってお稽古終了。お片付け。
ご飯をいただく。
食事もそこそこに先生が広告を持ってきた。
エアコン、どれが良いかしら、と。
「日曜に電気屋行きましょうよ。現物見たくないですか?」
「ん、そうねえ」
「エアコンつけるの?」
「山沢さん、虫が嫌いなんですってよ」
「蚊帳吊らないの?」
「吊っても虫の気配あるじゃないか。いやなんだよね…」
「へぇ、意外だな」
「あっちの家にっていったら先生がわざわざ行くの嫌だって言うんでね」
「一人で寝るのもいやで虫もいやなんてワガママよねえ」
ほほほ、と笑ってる。
「と言うことで折衷案でね。クーラーつけさせてもらうことにしたんだ」
「障子あけたら十分涼しいのに、夜」
「こればっかりは仕方ないわねぇ」
話を纏めて日曜に家電量販店へ下見することに決めた。
帰宅、部屋が暑い。
クーラーを入れてよく冷えるまで置いて止めた。
おやすみなさい。
翌朝。
先生からメールが来ていた。
今日は先生はお出かけするらしい。
うちに来ても八重子先生しかいない、と書いて寄越した。
誰と?とメールを返して出勤。
仕事は少し荷物が動いてやや忙しくメールが返ってきてるのにに気づくのが遅れた。
お茶仲間の女性とのこと。
んん、ならいいか。
楽しんできて、とメールを返して仕事仕事。
仕事を終え帰宅途次。
先生から相手の方と撮った写メが来た。
良い人が出来たのか、と責めたからかな…。
その後は特段メールも来ず夕方までジムへ行ったり夕飯の買出しに出たり。
家で野菜炒めを作って食い始めると電話がかかってきた。
ご飯食べた?と聞かれていま食ってるというと残念そうな声だ。
「お友達と食べに行かないんですか」
『だってあちらも家庭あるもの』
「いまどこです?」
『代々木よ』
「んー…和食?」
『どちらでも良いわよ』
「電話返します、一旦切らせてください」
『はーい』
電話を切っていくつか心当たりにかける。
予約が取れた。和食。
先生に掛けなおしてどこかそのあたりの喫茶店で待っててもらうことにした。
二口食べた炒め物は冷蔵庫へ戻して、着替えて身なりを整えた。
急いで向かう。
到着すると先生はついでに買物をしたと言う。
「待たせちゃいましたね、すいません」
「いいわよ、急に呼んだんだもの」
「こっちです」
先導して連れて行く。
「予約した山沢です」
「いらっしゃいませ。どうぞこちらです」
ご予約のお二人様、と通されて食事にありつく。
ああ腹減った。
食前に梅酒をいただいた。
「あら、おいしい」
にこっと先生が笑ってつい見とれる。
次々と運ばれる料理に先生は嬉しそうだ。
飯食いに連れて行くの、これだから好きなんだよな。
おいしくいただいて、先生にちょっとだけお酒も飲ませて。
店を出た。
駅まで歩く。
「ねぇ…帰りたくないわ」
「お稽古がなかったらね、明日。帰さないって言うんだけど。八重子先生に叱られる」
「すぐそう言うのね。私よりお母さんに叱られる方が嫌なの?」
きゅ、とつねられた。
「わかってる癖に。あなたが叱られるのがいやなんですよ、俺はね」
「そんなのでお母さんは叱らないわよ…」
「ほんっと甘やかされてますよね。まぁでもね、明日も会えますから我慢してください」
「しょうがないわねぇ」
先生がやっと諦めてくれて別れた。
電車に揺られて帰宅する。
可愛いよなぁ、帰りたくないなんて。
帰宅後暫くして先生から帰着メールを貰った。
おやすみ、と返事をして寝る。
うーんよく寝た。
頑張って仕事しよう。
今日はいつものお客さんが大量に買って忙しい。
やることが沢山。
仕事を終えて急いでシャワーを浴び着替えた。
明日は電気屋に行くつもりなので車で。
渋滞が少しありナビに任せて進む。
いつもと違う道。
ちょっと不安になったが無事到着。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
「今日のお昼はなんですか?」
「冬瓜よ。食べる?」
「遠慮しておきます」
「あら、今日は夏至だわよ。今日食べないでいつ食べるのよ」
「うーん、じゃお夕飯のときにちょっとだけ」
「嫌いなの?」
「ははは…」
水屋の支度に入り、生徒さんと先生を待つ。
暫くしてお稽古開始。
炭があるからどうしても暑い。
だが窓からは良い風が入る。
さわやかだ。
何人目かの生徒さんをお稽古して今日の生徒さんは終了。
「さてと。私は何をしましょうか」
「そうねえ。円草しましょ」
「はい。用意します」
用意を整えてお稽古をお願いし、始める。
3回続けてお稽古をつけていただいてタイムアップだ。
水屋を片付けてお夕飯を食卓に出す。
孝弘さんと律君と私には冬瓜のお皿がついている。
私のは一切。
ちゃんと嫌いだからと考慮してくれたらしい。
しかし律君、大学生が土曜の夜に家で晩飯を食うのってなんか違う気がするよ?
「あ、今日って夏至?」
「そうよ~。あ、そうそう。夏越の人形来てるから後でちゃんとしといてね」
「うん」
「山沢さんはおうちでしてるの?」
「いつも地元に帰ったときにしてますね」
「今年はどうするの?」
「帰る用も今のところありませんし…余ってるのならこちらでしたいですね」
「いくつか予備入れてくださってるからできるわよ」
「じゃ後で。あ、そうだ。明日電気屋行きます。
八重子先生、律君何か買ってきて欲しいものありましたら」
「ああ、なんだっけねぇあったんだけど」
「明日行くまでに思い出していただければ結構ですよ」
「あ、僕USBメモリとデジカメ欲しいな」
「何GB? カメラは好みもあるからなぁ」
「カメラはあんたお小遣いあげるから自分で買いなさいよ」
一緒に来る?と続けようとしたが先生は一緒につれて行く気はないようだ。
「じゃUSBもその時にしようかな」
「そうしたら?」
ご馳走様をして片付ける。
それから風呂。先生が入ってる間に布団を敷いた。
暫く団欒を楽しみ、鍵や火の元の確認をしておやすみなさい、と部屋に。
勿論先生を連れてだ。
そっと俺の転がる横へ入ってきた。
自分からキスしてきて、今日は受け入れる気があるらしい。
そっと優しく緩やかに抱く。
はにかむような顔。
可愛い。
ほてった肌も愛しくて、胸の下にかいてる汗を舐める。
そのまま乳首を舐めて吸う。
髪をなでられた。
「ちょ…なにしてんですか」
「あ、ごめんなさい、つい。ぁ…」
きゅっと乳首をつねった。
「お仕置きだね」
ひゅっと先生が息を吸い、身体をこわばらせた。
きょろっと鴨居を見る。有ったあった、洗濯ばさみ。
起きてそれを取り強さを確認。
古いから随分弱くなってるようだ。
「何をするかわかります?」
にこっと笑って聞いてみた。
「…わからないわ」
「こうするんですよ」
先生の乳首を挟む。
「ひっ痛っ、はずして」
緩めたりはさんでみたりと弄る。
「うぅ…」
「ほら。声を出しちゃ駄目ですよ」
もう片方の手は股間を探る。
「ん…」
乳首を玩びつつ下の突起を弄る。
「気持ち良いでしょう? 直に痛いのも気持ちよくなれますよ。ふふふ」
「お願い、ねぇ」
くく、と笑って外してあげた。
洗濯挾の後がついた乳首を舐めるといつもより感じるようだ。
声を上げないようにしているのが可愛くて楽しい。
暫く責めて涙目になりそうになっているので終了した。
「酷いわ…つい撫でちゃっただけなのに」
「そういうのはこの部屋に入るまでにしなさい」
少し腫れて赤くなっている乳首を弄りつつ、先生を寝かしつける。
「寝られないわ、ねぇ」
「寝かさないで置こうか」
先生の拍動が感じられる。
「どうする? もっとされたい?」
「だ、だめよ…」
「ふふ、また明日の昼にしましょうか」
「そうして、お願いします」
「お願いされちゃ仕方ないな。良いでしょう」
手を放して懐へ抱きこんだ。
「これなら寝られる?」
「うん…おやすみなさい」
「はい、おやすみ。良い夢を」
ほんの数秒で寝息に変わった。眠かったようだ。
俺も釣り込まれて寝る。
朝、流石に先生は起きて来れないで台所は俺のもの。
八重子先生からの指示書を元に作る。
む、これは難しいな。
茄子の煮浸し。
ささっと調べてレシピどおりに。味が違うって言われるだろうけど。
格闘しつつも出来た頃、八重子先生が起きてきた。
味見をされる。
少しみりんが入った。
それくらいで済んだようだ。
先生が起き出して来て配膳と律君たちを呼びに。
食卓に着いて先生は律君に涼しいうちに勉強しなさいよ、と言っている。
孝弘さんは相変わらず沢山食べていて俺が苦手に思うものをお皿に乗っけても食べる。
食後、お昼の下拵えをした。
昼前から電気屋めぐりをするから遅くなったら食べてて、と言うことで。
実際は確かに電気屋も行くけれどあちらの家にも行く。
そういう手はずだ。
着替えて先生を後部座席に乗せて量販店へ。
まずはお目当て、と思うが先生があちこちで引っかかる。
「欲しいもの、買ってあげますから先にクーラー見ましょうよ」
「ここで買うの?」
「いや先生の家のお出入りのところですよ。じゃないと後困りますでしょ?」
「うん、そうだけど」
「今回はどんなものが有るかの確認です、あれが良いとかこれが良いとか」
「あらそう?」
「後はあなたの欲しいものを買いましょう」
クーラーの売り場に行きあんな機能があるほうが良い、この機能は別にいらない。
そんな話を詰めて大まかにメーカーなどをチェックした。
先生は他の売り場をうろついたが欲しいものを決めかねているようだ。
「さ、そろそろ次行きましょう」
「うん」
車に載せて移動した。
次の量販店でもクーラーは特に別に変わったものはなく。
他の家電製品を見る。
先生は炊飯器を買い換えたいらしい。
「美容関係は良いんですか?」
「うーん、欲しいんだけど…でもそんなに手を掛ける暇がないのよね」
「15分かそこらでしょ?」
「朝の15分は貴重なのよ」
「まぁそうですが。ん、俺が来てる時に使えばどうです?」
「ん…朝御飯、ずっとあんただけど良いの?」
「いいですよ」
「じゃあ…どれがいいかしら」
店員さんと話して結果ナノケアの最新作に決めた。
それからドライヤーの買い替え、炊飯器の新しいの。
後は電池や電球、エスプレッソマシンを買った。
車に積み込んであちらの家へ。
近くの駐車場に入れて先生を連れ込んだ。
「あれ?」
「なぁに?」
「カーテン、グリーンにしたんですね。シーツも」
「だってピンクじゃ暑いでしょ?」
そういいつつ先生は脱ぎ始めた。
「クーラーつけて頂戴よ」
「はいはい」
着物をハンガーに吊ってベッドイン。
暫く昼のHを楽しむ。
少しいつもより先生は大胆だ。
それでも大股開きにさせたら嫌がった。
「いい加減慣れましょうよ。俺しか見てないんだから」
まぁでも恥ずかしげもなくバッと開いて舐めろといわれたら引くかもしれない。
舐めたり弄ったりすると気持ち良さそうで俺も楽しい。
じっくりいじめるのも良いが、たまにはこういうのも良い。
先生は普段からこういうのの方が良いとか言ってるが。
「そういうとこ行っても良いんならね」
「そんなこといわないで頂戴よ…」
ベッドに座ってる先生の足を取り、指を舐めた。
「ん…やだ」
「こういうので我慢してあげるから」
ふふ、気持ち良さそうだ。
こんなところで、と言う困惑もしているようで複雑な様子。
そういうのが楽しくてついしてしまうわけだが。
「今度律君の前でしてあげましょうか」
「だ、だめよそんなの」
「マッサージ、律君の前でしてさ。その続きに」
「いやよ」
そっと股間を指でなでた。
「あ…ん、はぁ…」
「こんなにしてるくせに」
音をわざと立てて弄ると恥ずかしそうで凄く良い。
何度か逝かせてくたびれた。
先生をお風呂に入れて暫く寝かせることにした。
着替える気力もないらしく、裸のままシーツに寝転んで寝ている。
可愛いなー。
2時間ほどして起こした。
そろそろ帰らないと夕飯の支度に間に合わなくなる。
裸で寝てたことに気づいた先生が恥ずかしげでこれもまた良い。
キスをして着替えさせ、ついでに夕飯の材料を買ってから連れ帰る。
八重子先生は何も聞かない。
律君にはエスプレッソマシンの使い方を教え込んだ。
お夕飯の支度をして、いただく。
うーん、やっぱり先生の作る飯はうまい。
幸せ。
それも束の間、帰らねばならない。
「それじゃ明後日、また来ますから」
「うん。まってるわね」
玄関先で軽くキスして別れ、帰宅した。
おやすみなさい。
さて休み明けでお客は少なく荷物も普通だ。
早仕舞いにして帰宅する前にそのままジムへ行くか。
そう決めて、その足でジムで身体を動かした。
昼を過ぎ風呂に入って帰り、お昼寝。
夕方に起きて飯を食い、更に寝る。
あ、先生からメール。
うまそうなメシだなぁ。
新しい炊飯器で炊いたとの事、うまかったそうだ。
明日の夕飯はそれで炊いたご飯を食べさせてくれるらしい。
ちょっと楽しみだ。
おやすみの挨拶をして寝直した。
翌朝、出勤するがまぁいつもの通り暇だ。
お客さんも定休日だったりするから仕方ないね。
仕事を終えてシャワーを浴び、ゆったりと先生のお宅へ向かう。
涼しいような、暑いような。
電車などはクーラーがかかっていて少し冷える。
先生のお宅へ着く。
室内は良い感じの涼しさで気持ち良い。
「あら、いらっしゃい。早かったわね」
「こんにちは」
「いま生徒さん帰られたとこだから。ご飯これからなのよ」
「それは早すぎましたね。じゃ片付けて用意してから戻りますね」
茶室を軽く掃除して、水屋の片付けと次の生徒さん方の為の用意を整えた。
それから居間へ。早くも食べ終わったようで八重子先生がお茶を入れてくれた。
「お天気怪しいわねえ」
「あー降るって予報ですよね」
「生徒さん、キャンセルないと良いんだけど」
ま、そういう連絡は降り出してから入るものだ。
一服をして、お稽古にかかる。
生徒さんがいらして今日は5人そろってのスタートか。
暫くすると空気が重くなってきた。
そろそろ降るのか。
生徒さんの切れ目に空をうかがう。
あ、落ちてきた。
「降り出しましたね」
「あらそう?」
次の生徒さんが来られてお稽古。
暫くすると八重子先生から先生へ耳打ち。
やっぱりキャンセルが出たようだ。
「つぎ、山沢さん、清・薄で」
「はい」
貴人のお稽古か。
白い天目と貴人台を出す。
生徒さんがお稽古を終られて続きで私のお稽古。
久々の貴人のため、先生に叱られる。
前の生徒さんが見てくすくす笑っていてちょっと恥ずかしい。
キャンセルが出た時間を使ってもらったので今日のお稽古は早仕舞い。
「酷い雨ねぇ」
「本当に凄いな」
外は土砂降りだ。
夕飯のお手伝いをしていると先生が呼ぶ。
ニュースでは雹が降っているという。
暫くして雨がゆるくなってきた。
「あらもう止みそうね」
「律君帰ってこれるのかなぁ」
「お友達のおうちに泊めてもらうかもしれないわねぇ。電車動かなかったら」
ま、いざとなれば何がどうあっても帰るだろう。
配膳してると律君から電話があってやはり帰れそうにないとのことだ。
学校のあたりは酷いらしい。
「心配だわ…」
「ま、お友達も晶も一緒みたいだから大丈夫だろうよ。はい、お櫃」
「そうねぇ」
先生の座る横にお櫃を置いて、孝弘さんを呼ぶ。
メシ♪とうれしそうだ。
孝弘さんは先生が飯を作ってくれる限りはこの家にいるんだろうな。
ほほえましい。
そして新しい炊飯器で炊いたご飯がおいしい。
食事を終え後片付け。
おとなう声がし、先生が応対をしている。
片付け終るころ帰られたようだ。
そのままパタパタと台所に先生が来られた。
「あのね…その、あなたに縁談って…」
「はっ?」
袖をつかまれて居間に連れて行かれた。
「なんだったんだい?」
「山沢さんが独身だからってお見合いの写真持ってこられたの。どうしよう」
「その場で断ってくださいよ…」
「だってその、私がお断りするのはおかしいじゃない…」
「で、どう言ったの」
「いまいないから明日電話で聞くからって言っておいたわ」
「んん、参ったな」
「どう断ったら良いかしら…」
「山沢さん。あんた開と結婚しないかい?」
「えぇっ?」
「一番断りがきくのはそれだよ、婚約してるので結婚できません、だよ」
「でも先生が本人に聞かないとっていったんでしょう?」
「二人の仲がどれほど進展してるのか、なんてわからなくて、とか言えば良いんだから」
「うーん、婚約ですか」
「あぁ実際結婚しなくても良いけどね、そういうことにして置いたら?」
「先生はどうですか」
「それなら…良いと思うけど」
「わかりました、方便と言うことでそうしてください」
「じゃ明日私がそういうよ」
「お願いします」
「お母さん、お願いね」
ふぅ、と息をついて。
「コーヒー、いりますか?」
一昨日買ったマシンで入れてくることにしよう。
エスプレッソか通常かを聞きくと通常のものが良いとのことで三種類入れた。
味見をして先生はモカっぽい味のもの。
八重子先生は香りの良いコーヒーを取った。俺は苦目のもの。
「結構おいしいねえ」
「でしょう?」
「エスプレッソマシンなので本当はこんなカップ使って入れます」
カップを見せる。
「小さいねえ…」
「これに半分くらいですよ」
へー…、と覗き込んでるので実際どうなるか入れてくることにした。
抽出して手渡す。
「これだけ?」
「ま、どうぞ飲んで」
「うっ濃いわね」
「…濃いねぇ」
コーヒーで口直ししてる。
俺はダブルで入れてきたのだが二人とも飲めなさそうなのでそれもいただいた。
…甘い。
そういえばお二方のはお砂糖入れたんだった。
ぐいっと残った自分のエスプレッソを飲み干し、さっぱり。
先生はお風呂入ってくる、と言って部屋から出て行った。
八重子先生がカップを回収して台所へ。
「あ、洗いますよ」
一緒に台所に立つと機械の使い方を聞かれた。
水入れてカプセル入れてボタンを押せば出てくるので簡単。
味は色々ありますよ、と見せた。
居間へ戻り、色々おしゃべりをしてると先生が上がってきた。
八重子先生が交代ではいる。
「ねぇ」
「ん?」
キスされた。
「どうしたんです?」
「…凄くコーヒーの味するわね。漱いでらっしゃいよ」
思わず笑ってしまった。
はいはい、と洗面所へ立つ。
歯を磨いて戻れば先生はあくび。
「寝ますか?」
「お母さんが上がったら」
んじゃ戸締りと火の元を確かめよう。
玄関と勝手口、茶室の炭、ガス。確認して戻る。
「あぁ良いお湯だった」
八重子先生が上がってきた。またあくび。
「布団敷きますから、もう寝てください」
「んー」
畳に寝転がってる。
可愛いけどさ。
「こんなところで寝てないで。山沢さん、連れてってくれるかい」
「はい、じゃ私も先に休ませていただきます。戸締りはして有ります」
「はいはい、おやすみ」
「おやすみなさい」
先生を抱き上げて部屋に行く。
布団に寝転がらせて俺も着替える。
早くも寝息が聞こえてきて残念な気分だ。
ま、仕方ないか。
先生の横にもぐりこみ、ゆっくりなでているうち、いつしか眠りに落ちた。
朝になって先生が先に起きたらしい。
身支度をしている。
「あら起きたの? おはよう」
「おはよ。美容の奴、使ってみた?」
「ん、今から使うのよ」
「おっけー、朝飯用意してきます」
ささっと身づくろいして台所へ。
八重子先生と合作で朝ご飯を作る。
律君いないから少しゆったりと。
出来たころ、先生が出てきて食卓を片付けて孝弘さんを呼びに行った。
ご飯を食べてから八重子先生が開さんに連絡を取る。
勿論結婚の件だ。
幸い現在彼女とかいないから構わないそうだ。
先生と手分けして家事をし、俺は二階の拭き掃除。
おとなう声、あれは昨日の人だな。
八重子先生が応対に出て断ってくれている。
耳を済ませて様子を伺う…。
暫くして帰られたようだ。
先生が階段を上がってきた。
うまく断れた、と言うことでほっとしたらしくもたれかかってきた。
可愛くて思わずキスして胸を揉んだら流石に額を叩かれた。
「だめよ、もうっ」
お母さんいるんだから、と怒って階下へいってしまった。
仕方ないので掃除の続きをして、終らせてから下りた。
「そろそろ買物行くけどあんたどうする?」
「一緒に行きます」
着物を着なおして外に出る。
「暑っ」
「暑いわねえ」
「なんなら家にいますか。買うものかいてくだされば買ってきますよ」
「良いわよ、一緒に行きましょ」
日傘をさしてる先生と二人で歩く。
流石に暑くて腕を組んだりはしてこないのが残念だ。
お昼とついでに夜の分も買って帰宅した。
食事を取って一服したら家事の続き。
いつもの水曜日。
疲れたらお茶を入れてもらって。
少し先生といちゃいちゃしてたら夕飯を作る時間だ。
てきぱきと動き、先生から出る指示をこなしてたらおいしいご飯が出来る。
「ただいまー」
「おかえり」
律君が帰ってきたようだ。
「もうすぐご飯できるから手を洗ってらっしゃい」
「はーい」
食卓について律君が八重子先生にこぼしてる。
昨日は大変だったようだ。
「結局どこに泊まったの?」
「近藤の家。晶ちゃんは司ちゃんち」
「律君も司ちゃんちに泊まったらよかったのに」
にやにやして言ったら先生に後頭部をコツンと叩かれた。
「バカ言ってないで運んで頂戴」
笑いながら配膳し、お夕飯を頂いて帰宅した。
真っ暗の部屋はさびしいなあ。
とっとと寝よう、おやすみなさい。
翌朝、出勤して仕事をしていると残業が確定した。
先生のお宅に電話を入れる。
八重子先生だ。
理由を話すと快く許していただいて仕事を続ける。
昼頃先生から電話が入った。
珍しいな、来て欲しいなんて。
それもあちらの家に直接なんて。
どうしたんだろう。
そう思って先生がお夕飯を終えるであろう時間にあちらの家へ行った。
まだ電気はついていない。
鍵を開けて電気をつけ鞄を置いて台所に立つ。
っと。こっちにコーヒーはなかったんだっけ?
諦めてコップに水を汲み、ぐいっと飲む。
ふぅっ。クーラーをつけた。
暑い。
暫くすると先生がやってきた。
あけて後ろ手で鍵を閉め、俺にしがみつく。
「どっ、どうしたんですか」
何も言わずキスしてくる。
もぞもぞしてる、と思ったら帯〆を解き始めてた。
あ、え? 抱かれたいのかな。
ちょっと手伝って帯を解き、着物と襦袢を脱がせ、抱えあげてベッドへ。
女の匂いがして煽られる。
少し焦らすと早く、とねだられた。
「抱いてっていって」
少し躊躇してるが…。
「お願い、抱いて頂戴」
恥ずかしげでとても可愛らしい。
俺の脚に擦り付けるようにしてきた。
いつもよりは激しく抱く。
幸い先生の家ではない、声はいくら上げても構わない。
なのにもっと、といわれる。
どうしたんだろう。
まだ大丈夫らしいので何度も責める。
暫く頑張って攻めているとやっともう駄目、と言い出した。
腕が攣りそうだ。
息の荒い先生を抱き締めてどうしたのか聞いた。
絶え絶えに昨日眠れなかったこと、昼に来ないといったので困ったことなどを語られた。
自慰しそうになったという時点でおかしい。なんか変なもん食ったか?
暫くなでていると落ち着いてきたようだ。
「恥ずかしいわ…ごめんね、呼びつけたりして」
「たまにはそういうのも良いですよ」
いつもは突撃されるからな。
暫く喋ってて気がついた。
「ね、先生あなたそろそろ生理じゃないですか?」
「え? あら? そういえばそうかも」
「それででしょう。そういう時期なんですよきっと」
「そうなのかしら」
「ま、それならそれで暫く出来ませんからね、丁度よかった」
汗だくになったから抱き上げて風呂へ行く。
先生の身体を泡でなでて洗ってるとなにやらまたしたくなったようだ。
可愛いなー。
もう一回だけ、と抱いてから濯ぐ。
「さ、そろそろ帰らなきゃね。明日もお稽古でしょう?」
「うん…帰りたくないわね」
「俺もですよ。でも俺もあなたも仕事なんだから仕方ない」
「ね、明日…また来てくれない?」
「いいですよ。呼んでください」
着物を着せてお見送り。
さて俺もかえって寝なきゃなぁ。
帰宅して布団に潜り込む。
先生も今頃は布団の中かな。疲れてるからきっとすぐに眠れるだろう。
おやすみなさい。
そして翌朝出勤すると忙しくて。
久々に疲れて帰宅して横になっていると先生からメールだ。
やっぱり今朝から生理で、それで別にこなくても良いという連絡だった。
ま、やっぱり会うとしたくなるしね。
来て欲しくなったらいつでも連絡するよう返事をして昼寝、夕飯を食べて本格的に寝た。
金曜はそんな感じで終ってしまったが今日は土曜だ。
仕事が終わったらすぐシャワーを浴びて先生のお宅へ急ぐ。
居間に寄ると先生は顔色が少しよくない。
「いらっしゃい。今日ね、もしかしたら途中からお母さんと交代するかも。お願いね」
「はい、大丈夫ですか?」
「大丈夫とは思うんだけど…」
「今日は簡単なものをしたらどうかねえ」
「小習復習ですか?」
「そうしたら?」
「それでいいですか、先生」
「そうね」
と言うことで支度を整えてお稽古だ。
流石に稽古ではあまりわからないようにしてはいるものの、
生徒さんが途切れるとやはり辛そうだ。
「八重子先生と交代したらどうです?」
「そうさせてもらうわ…」
と言うことでチェンジ。
久々に八重子先生と二人で生徒さんのお相手をする。
ちょっとやりにくそうだ。
先生が用意したほうがやりやすいのは事実。
と言うことで今日の俺へのお稽古は水屋のやり方。
色々と段取りを教えていただく。
でも今日は早めに切り上げて夕飯をしなければということでおしまいにして。
買物行ってきて、と言われてメモをもらって買いに走った。
途中先生からメール。
チョコも買って帰った。
寝ている先生に渡してお夕飯作成。
今日は手早く出来るおかずのみ。
でもそれでもちゃんと手のかかっているように見える。
実際おいしい。
先生は食欲もあまりないようだ。
ご飯をよそうのも今日は八重子先生。
食事を終えて先生は部屋へ引っ込んだ。
片付けをしてコーヒーを入れて戻る。
「八重子先生もコーヒーいかがです?」
「ありがと、いただくよ」
しばらくまったりとして八重子先生が今日は疲れた、もう寝ると仰る。
戸締りと火の元を確かめて俺も部屋に引くことにした。
布団を敷いて寝る支度。
…一人寝か。
やだなぁ。
そう思って転がっているとすっと襖が開いた。
「あ、先生」
何も言わずに布団に入ってきた、と思ったら俺の上に乗っかってキスしてきた。
そのまま俺の胸をまさぐっている。
怒っても仕方がない。
諦めて身を任せる。
手が徐々に股間に下りてきた。
俺が眉間に皺を寄せているのを見て嬉しそうにしている。
こういうとこSだよな。
弄られて二度逝かしたら気が済んだようでトイレに行ってから俺の腕を枕に寝始めた。
やれやれ。
げんなりしつつもまぁ先生が懐にいるわけだから、と寝ることにした。
夜半また触られてる気配がして目が覚めた。
眠気のほうが強くそのまま寝たが。
朝、先生はよく寝ている。
それは良いんだが指を入れたままで。
引き抜くとふやけてて苦笑いだ。
手を拭いてやって布団に戻してもう少しまどろむ。
一時間ほどして先生が目覚めた。
起きるなりキスしてくる。
まだしようとするからさすがにそれはダメ、とひっくり返した。
「朝ご飯作らないとね。ダメでしょう?」
むっとしてる。
「お昼、あちらの家でさせてあげますから」
「だったらいいわ」
しょうがない、しかたないと諦めつつ朝ご飯を作る。
げんなりした顔を見て八重子先生は察したようで苦笑している。
作り終えた頃匂いにつられて男共が起きてきた。
あれ? 司ちゃんが来てた。
仕方ない、先生用に作った分を司ちゃんに出した。
先生の分は起きてきたら作ろう。
「あんたいつ来たの?」
「9時半くらいかな。おばあちゃんたち寝てたみたいだから律に入れてもらったの」
「昨日は疲れてたからねぇ」
孝弘さんがこっち見てにやっとした。
これはわかってるな。
先生にはそういう態度は取らないで欲しいものだ。
食べ終わった頃先生が起きてきた。
「あら司ちゃんきてたの? おはよう」
「あ、おばさん。お邪魔してます」
「先生遅いからもうないですよーなに作って欲しいです?」
「何残ってるの?」
「ご飯と味噌汁が既にないのでパンかパスタか」
んー、と考え出した。
「卵有ったかしら」
「有ります」
「じゃハムかベーコン」
「有ります。ハムエッグ?」
「カルボナーラがいいわ」
「生クリームが無いですよ」
「牛乳で良いわよ、あるでしょ」
「了解」
台所に向かってパスタを湯がく。
牛乳を使ってカルボナーラのソースを作った。
後は絡めるだけだ。
絡めてお皿に盛り付け、フォークとお皿をもって先生の前へ。
いただきます、とちゃんと手を合わせてから食べる先生は何か良いね。
食べてる間に洗い物をして食べ終わった頃を見計らってコーヒーを出す。
代わりにお皿を回収。
俺の分もコーヒーを入れて先生の横に座った。
先生の機嫌は良さそうだ。
司ちゃんとおしゃべりを楽しんでいてほのぼのとする。
コーヒーを飲み終わって落ち着いていると先生に手を引かれた。
ん?
「そろそろ行くわよ」
「あー…やっぱり行くんですか」
「朝そう言ったでしょ」
気が変わってて欲しいなーと思ったのだけどダメだったか。
はいはい、と連れられてあちらの家へ。
すぐにどうこう、と言うのは雰囲気がないと思ったのか膝の上に座ってきた。
「先生、この体勢だと俺があなたを抱きたくなる」
「だめよ、そんなこというんならすぐに脱いで頂戴」
渋々脱ぐとキスされて、そのまま床の上で押し倒された。
自分は床の上は嫌なくせに。
昼過ぎ、先生の携帯がなった。
お昼ごはんはどうするのか、そろそろ俺を開放してやれという電話だったらしい。
なんだかなぁ。
されてること知られてるのもちょっと微妙だ。
でも先生は後1時間くらいで帰る、お昼はいらないとか言っている。
左様ですか、まだするのか。
そろそろ乳首を噛むのはやめてくれないと腫れるよなあ。
まぁ今日を我慢すればあと一ヶ月はないだろうから諦めるしかない。
先生が飽きるまで仕方なく身を任せた。
まぁ結局先生がおなかすいた、と言うところで切り上げて着替えて喫茶店へ。
先生はパンケーキとパフェ、俺はカレーを食べる。
甘いものが食べたい時期なのはわかるが…太るんじゃないかなぁ。
ま、太ったら俺の懐でカロリー消費すれば良いだけだよな。
幸せそうなのを邪魔するのもなんなので黙って食べて。
それから先生のお宅へ戻った。
並んで座れば俺にもたれてくる。
司ちゃんいるけど良いのかな。
「あんたら結局何食べたの?」
「私? ホットケーキとパフェ」
「生クリームたっぷりでしたよね、あのパンケーキ」
「わ、おばさんそれカロリーものすごいんじゃ…」
「いいのよ~」
「で、私はカレーです」
「大盛よね、あれって」
「太らないの?」
「普段それなりに動くからね」
暫く団欒を楽しんで律君が司ちゃんを送って行った。
ニュースでは都心は酷い雨らしい。
落雷で一部停電だとか。
「あら…あなた大丈夫? 帰れるかしら?」
「どうせ明日は月曜ですからねえ…いざとなったら休めるでしょう」
「簡単に休むなんてダメよ、ちゃんと行かないと」
それをあなたが言うか?
八重子先生と顔を見合わせて笑う。
きゅっと腕をつねられたので尻をなでといた。
うん、キスしたい。出来ないけど。
先生は身を起こして洗濯物にアイロンを当て始めた。
律君の衿のあるシャツなんかも綺麗に掛けていくのを見ると感心してしまう。
完璧な主婦能力はやはり八重子先生が仕込んだんだろう。
それから暫く家事を手伝いお夕飯を頂いて帰宅した。疲れた。
おやすみなさい。
翌朝仕事をこなし、少し叱られる事もあったりでげんなりとして帰宅した。
ベッドに転がる。
だるい。
寝るか。
そのままうとうとと寝て暑さに目が覚めた。
午後2時。
メシ、食わなきゃな。
面倒くさい。
焼きそばにしよう。カップ焼きそば。
先生に叱られるなぁ、きっと。
内緒にしよう。
湯切りしてソースをかけ混ぜる。
ん、良い匂いだ。
食べていると携帯にメールが来ているのに気づく。
開いて読んだらやっぱり先生からで、今日の体調は宜しいとかそういう話だ。
そりゃ終わりかけならずいぶん楽だろう。
その分俺がだるいぞ。
食後再度ベッドにもぐりこんだ。
とりあえず体力回復しなければね。
夕方メールに起こされた。
先生からの夕飯写真。
うまそうだなぁ…でも眠いから夕飯も食べずにそのまま寝た。
翌火曜日。
今日は暇と決まっている。
お朔日なんだけどなぁ。
鯛を一枚持って帰ることにした。
八重子先生に造ってもらおう。
あくびをかみ殺しつつ帰宅して風呂に入り、先生のお宅へ車を飛ばす。
「こんにちはー」
「はい、いらっしゃい」
「先生、これ鯛、台所置いときますね」
「あらーありがと」
先生の微笑に心癒されて鞄を置いて用意する。
「あ、そうそう、今日は葉蓋するから」
「そうか、そういう時期ですね」
「足りなかったらお庭から摘んで頂戴、桐とか赤目柏とかあるでしょ」
「はーい」
きちっと用意して待つ。
今日の稽古は楽だ、全員同じ。
これをはじめてする人にはやり方を教えたり、前もやった人は洗茶巾をしてみたり。
涼しげで良いよね。
そんなこんなでお稽古が終る。
葉っぱは使い切って普通に水屋を片付けた。
晩飯何かなぁ。
食卓に配膳する。
鯛のお造り、昆布〆、霜皮。
ほうれん草の白和え。
後は煮物2種。
鯛の一部はカルパッチョ風になっていた。
水菜と玉葱が敷いてある。
涼しげで良いなあ。
「あ、お肉炒めるの忘れた」
「いいですよ、鯛食べますし」
「足りる? すぐ出来るわよ?」
「足らなきゃ自分でやりますから食べましょう、腹減りました」
「はいはい、じゃ呼んで来てくれる?」
「イエッサー」
二人を呼んで食卓に着く。
いただきます、と食べはじめた。
うん、おいしい。
先生が白和えのお皿からざっくり取り、俺に渡してきた。
野菜もっと食えということだ。
「あれ? おばあちゃん、今日は山沢さんに肉ないの?」
「忘れちゃってねえ、鯛をいろいろしてたら」
立ち上がろうとされる。
「鯛は食べれるから別に良いんですよ、たまになら」
「そうかい?」
煮物がうまい。
「あ、そうそう」
先生がお箸をおいて台所へ。
パタパタと言って戻ってきたと思えば俺に小鉢を。
「はい、これも食べなさい」
胡瓜の酢の物か。
わかめは嫌いと言ったし茗荷も嫌いと言ったし、生姜も嫌と言ってるのに全部入ってる。
少し悲しくなって目を見つめた。
「食べなさい」
先生の迫力に押され諦めた。
早く食べて何か次に食ってリセットしよう。
我慢して食べる。
器を辛にして次は取りあえずとカルパッチョへ。
んー、うまいなー。
すべて食べ終えてご馳走様。
「今日なんで鯛だったの?」
「おついたちですからね、やっぱり鯛かな、と思いまして」
「…山沢さんのところは一日に鯛食べるってそういえば言ってたわね」
「本当は赤飯も。でも面倒くさくて」
「ええっ」
「何日には何を食べる、とか決まりはありますよね」
「そうなの?」
「本当なら今日にしんと昆布の煮付け、なますにしたりします」
「何か意味があるの?」
「赤飯、小豆ご飯は家中・豆で暮らせるように、にしんは渋いので渋ぅこぶぅ暮らせ」
「こぶぅ?」
「形容詞、こぶいです。物惜しみとか始末、けちとか」
「一日から随分と厳しいこと言うのね」
「そうしたら鯛とか赤飯が食べられるわけですね。月末なんかおからですよ」
「それはどういう意味があって?」
「包丁使わないでしょう、切らず。炒って食べるから縁やお金が切れず入るって」
「へぇー」
「一旦覚えると献立考える手間半分くらいですから楽ですよ」
「それっていいわね」
「普段ケチっても折り目折り目節気でちゃんとしようと言う現実的な考え方です」
「あなたそういうところないわよね」
「そういう家じゃなかったものですから」
そろそろ、と律君が風呂に湯をはった。
「律が出たら一緒に入らない?」
「ん? いいですよ」
「肩凝っちゃって。辛いのよ」
「あぁ、温めながらのほうが効率良いですからね」
暫くみんなで喋って律君が入り、出てきた。
「お母さん先どうぞ。長湯するつもりだから」
「はいはい」
どっこらしょと八重子先生が立ち上がってお風呂へ行った。
居間に二人になる。
ついキスしてしまってぺちんと叩かれた。
その手を引き寄せて舐めると慌てて手を引っ込めた。
可愛いね。
じゃれているうちに八重子先生が上がってきた。
「お湯冷めないうちに入りなさいよ」
「はーい」
一緒に入り、先生の身体を洗ったり髪を洗ったり。
それからゆっくり浸かって背中を揉み解す。
気持ち良さそうだ。
「先生、随分背中が冷えてる」
「そうなのよね」
湯あたりしない程度に先生を揉み、風呂から上がる。
表情も和らいでいて綺麗だ。
「あぁ良いお湯だったわ」
俺はその足で台所へ行きアイスコーヒーを作る。
先生はお白湯。
すっきりしたところで寝間へ入った。
布団を敷いて先生を待つ。
暫くして入ってきた。
懐に抱くと先生はほうっと息をついた。
「ん?」
「あったかくて」
「梅雨寒、といいますからね」
「うん」
「温かいのと暑くなるのとどっちが良い?」
「…嫌じゃないなら温かいのが良いわ」
くすっと笑っておなかを撫でる。
「暑い方が良いって言わせたくなるな」
顔を赤らめていやいやをするのが可愛らしくて良い。
こういうとこ年上とは思えない。
「良いよ、寝て」
したいけど。ま、良いか。
おなかをなでたり腕をなでているうちに寝息に変わった。
俺も寝よう、おやすみなさい。