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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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141 -律-

「ありがとうございました」
教室の生徒さん達が帰っていく。
それと入れ違いに来る生徒さんもいる。
「こんにちは、律君」
山沢さんだ。
「こんにちは、今日も暑いですね」
「いやぁほんとに」
「あら山沢さん、いらっしゃい」
「こんにちは、お邪魔します」
「水屋、お願いできる?」
「はい」
母に水屋を任されているようで、すぐに茶室に入られる。
以前は母と祖母が交代で食事や休憩を取りつつ教室をしていたけど、
最近は山沢さんがお昼の早いうちに来て後始末と、次の用意などをしているらしい。
その間に祖母と母がお昼を食べて休憩をする。
教室が終ると以前は4人で食事していたのが5人になり、
夕飯の支度や後片付けを手伝って泊まって行かれる。
「山沢さんってなんでいつも泊まってくの?」
と母に聞いたことがある。
「あぁ、山沢さんねえ、うちから遠いのよ。だから」
「どれくらい?」
「スムーズに乗り換えて1時間半かしらね」
「えっなんでそんなとこからうちに?」
「紹介されたらしいわよ」
「へー、そうなんだ?普通近所に行くよね。教室がないくらい田舎とか?」
「そんなことないでしょ、あの人築地に住んでるのよ」
「あっちなら沢山あるのになんでなんだろう」
「希望の時間帯とか、曜日とか、どこまで教えるかとかそういうので決まるのよね」
「ふーん」
というわけではるばるうちまで来て習っている。
泊まるようになったのは祖母から着物の仕立を習うためだったらしい。
それからずるずると休み前に泊まるようになったようだ。
先月は山沢さんは母と京都に旅行に行った。
女性だと僕は知っていたけど、あの格好で母と旅行では噂も立つよな、と思った。
お茶の勉強会だといってたけど。
その後も展覧会だ、なんだと母と山沢さんが出かけて行く。
秋の初め頃には母が山沢さんの家に泊まりに行ったりして、随分山沢さんと親密らしい。
青嵐は気にならないようだ。
祖母は母が旅行だお泊まりだというと教室が大変なようで僕を使う。
生徒さんたちは噂好きで母と山沢さんが不倫の仲じゃないかとか、
どうでもいい事を耳に入れてくれる。
山沢さん、すっかり男の人と思われてるよね。
うちでくつろいでる時は胸が見えたりしてやっぱり女の人だとは思うけど。
というか隠して欲しい。
僕だって一応男なんだから、お風呂上りに浴衣をざっくり着るのは勘弁して欲しい。
まだ司ちゃんのほうが隠してくれて助かる。
冬になりつつある頃気づいたんだけど山沢さんは母と同じ布団で寝て居るらしい。
山沢さんに聞くと、一人で寝るのが嫌いなんだそうだ。
一人暮らししてるのに?と思った。
そしたら一人住まいの一人寝はわかってることだけど、
人が居る家なのに一人は寂しくて嫌いなんだって言ってた。
祖母と一緒に寝たこともあるらしい。
山沢さんは結構寝相が悪い、と祖母が言う。
寝ぼけて抱きつくんだそうだ。
だから僕は山沢さんを起こしに行っちゃ行けないらしい。

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140

「ええ、好きですよー」
こういうときはさらっと返すべし!
「やっぱりー」
うん、酔ってるなー。
「晶さんだって絹先生のこと好きでしょう?」
「あー、うん、おばさんって憧れだよねー。女としての」
「家事万全、旦那さんを愛して家を守る、理想ですね」
「あらあら、晶ちゃんとも仲良くなったの?」
っと先生が風呂から上がってきた。色っぽいなぁ。どきどきする。
むくり、といじめたい心が動いて、いけない、と治める。
「おばさーん、山沢さんがおばさんのこと好きだってー」
酔っ払いは困るな。
「あーおばーちゃん、この歌手私好きなのー」
テンション高い(笑)
「山沢さん、半襟。つけてあげるわ。いらっしゃい」
ああ、なにか言いたそう。
長襦袢と半襟を持って先生のお部屋へ。
入るなり言われた。
「晶ちゃんに手を出しちゃ駄目よ…」
あ、嫉妬か。可愛いな。
思わず引き寄せてキスしてしまった。
「可愛いこといいますよね、先生」
まだ乾ききらない髪を撫でる。
「あら?山沢さん、もう冷えてるのね」
…嫉妬はどこへ行った?
「私は風呂を出たら5分でさめますからねえ」
というと火鉢に近い所に私を座らせてくれた。
裁縫道具を出してくる。
2枚あるから、と私にも針と糸を貸していただいて半襟を付ける。
さすがに先生は手早い。
私の分をつけて、自分の分をつけて、律君の分もつけてしまわれた。
「晶さんには着せないんですか?」
「あら、そうねえ。ちょっと待ってて」
暫くして、長襦袢と半襟を持って戻ってきた。
ちくちくと縫い付けて、ハンガーにつるから後のをもってくるよう言われる。
吊り下げて並べ、二人で居間に戻った。
「ああ、戻ってきた、そろそろおそば、作らないかい?」
「あらそうね、もう作らなきゃいけないわね。山沢さん、来て」
はい、と後を付いて台所。
おそばを茹でて、天麩羅を…。
「お母さん、数が足りないわ」
「えぇ?」
ひいふうみい…。
「あ。晶さんの分が数に入ってないんじゃないですか」
「あらららら。どうしましょ」
「誰かニシン食いません?あれ2尾入なんです」
「じゃ私がいただくわ」
決まった決まった。汁を少し鍋に取り分けてニシンを温めて、乗せる。
「律ー、晶ちゃーん、取りにきてくれる?」
と先生が呼び、そばを食卓へ。
「あれ、天麩羅じゃないのがある」
「それはお母さんと山沢さんだよ。あんた七味は使う?」
「僕はいらないけど」
「晶は?」
「私もいらないー」
私の前に七味の小袋が3つ。
全部入れて、頂きますをしてすする。
「あら、意外と美味しい」
先生が小声で言った。意外ってなんだ意外って(笑)

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139

「ご飯もう食べてきたの?まだならここ座って、ほら」
「やー、荷物とかあるから先においてきますー」
「律の部屋の隣に布団敷いてあるからそこ使ってね」
「はーい」
…朝、軽くでもしといてよかった。
うっかりやりたい気分で見つめたりして、晶ちゃんからばれるとか有りそうだ。
正月から家族争議は困るだろう。
とにかく気をつけねばならんな、酒は控えめにしよう。
先生方にもあまり飲ませないようにしよう。
こうして見ているといいお母さんで、奥さんで。私の腕の中に居るときとは随分違う。
美味しいご飯を作り、家を守り、優しく息子を育て。
厳しくの部分は八重子先生だな(笑)
食べ終わって洗い桶に漬けに行ったついでに晩酌の用意をする。
あれ?徳利あるじゃないか。
聞くと居間で二人で飲むなら都合がいいが、
居間から離れた私の部屋なんかでは燗鍋が都合よかったとのこと。
「居間で飲んでいたら…こうはならなかったかもしれませんね」
「そうねえ」
「後悔、してますか」
「してるって言われたいの? ばかね」
オホホと笑って燗のついた徳利を持っていった。
苦笑して、麒麟山は純辛の一升瓶と棒鱈を持って後を付いて行く。
食中酒にするにはうまいんだよね、これ。
棒だらをつまみに酒を飲み、大晦日番組を見る。
孝弘さんや律君が風呂に入り、若い子の歌はどうでもいいと八重子先生が続いた。
5分ほどして後を追う。
風呂に入ってから来ている時は八重子先生が体を洗う間に浸かるようになった。
ぬくぬくしていると背中の傷が少なくなったね、と言われた。
今朝つけられたのもあるけれど。
八重子先生が洗い終わったので、湯から出る。
股間を掴まれた。
「……っ、なんですか」
「あれから自分でしたかい?」
「いや、してませんが」
「してあげようか?」
「自分でするからいいです」
っていってるのに中をまさぐられてる。
「風呂は駄目です、声。が、やばいですから」
「おや、それもそうだね」
手は止まって開放されたが中途半端に煽られてしまった。
参ったなぁ。
風呂に入る前なら散策して来ればいいが、風呂のあとでは風邪を引く。
ああ、部屋で抜くか。
さっき火鉢に火を入れたから風邪引かん程度には暖かかろう。
一応の為に結界を張って、一発抜く。
自分でする分には声も出なけりゃ息も荒くはならない。
さっさとすませて洗顔シートで手と股間を拭い、それから手を洗いに立つ。
途中律君に会い、ちょっと気恥ずかしい。
手を洗って長襦袢と半襟を持って居間に戻る。
晶ちゃんもお風呂から出ており、先生が入っているらしい。
「ね、山沢さんっておばさんの事好きでしょー?」

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138

お母さんが山沢さんを起こしに行って暫くして戻ってきた。
「山沢さん、あんたと間違えたみたいで布団の中に引き込まれちゃったよ」
「ええっ。で、どうしたの?」
「どうしたのもなにも、すぐ違うってわかったみたいで謝ってたよ」
「うーん、晶ちゃんや律に起こしに行ってもらったら危険ねえ」
「そうだねえ」
お昼の用意が出来たけれど山沢さんが起きてこない。
食卓を拭いて、おかずやお櫃を出しているとお母さんがもう一度呼びに行ってくれた。
ふらふらと揺れて、浴衣を着た山沢さんが食卓について、お昼を食べて。
凄く眠そうで、お母さんが部屋に戻した。
「山沢さんっていつの間に来てたの?」
「朝からよ。気づかなかったの?」
「うん。凄く眠そうだったね」
洗い物をして、御節の準備の続きをして気づけばもうお夕飯の支度をする時間。
山沢さんが持ってきてくれたお刺身と、あとはどうしようかしら。
メインがあるんだからお野菜を煮たものがいいかしらねえ。
豚肉がちょっとあるから大根と煮て、ほうれん草のおひたしも作ろうかしら。
あ、山沢さんのメインは先日いただいたお肉を焼いちゃいましょ。
そういえば冷蔵庫にニシンは入ってなかったわね、持って来たのかしら。
土間の棚をみると冷蔵庫に入らなかったと思われる食材がいくつか収められていた。
ニシンの真空パックや、お餅、白味噌等々。
……なんでお鍋が置いてあるのかしら。二つも。
お大根を煮ていると山沢さんが起きてきた。

次に目が覚めたとき、また美味しそうな匂いがしていて、もう夕刻か、と思った。
ちゃんと腹が減っている。
ひょいと台所をのぞくと先生方がお夕飯の支度をしている。
「あら、起きたの?」
「ええ美味しそうな匂いがして目が覚めました」
先生はクスクス笑ってる。
「そういえば玄関も勝手口も締まってたけどどうやって入ったんだい?」
「玄関の鍵は一つお預かりしてますよ?」
「そうね、山沢さんに前に一つ渡してたわねえ。忘れてたわ」
「二週間ほど前にこちらで飲んだときもその鍵で鍵かけて帰りましたから」
「ああ、あれって私が締めたと思ってたよ」
「先生方お二人とも先寝てしまわれたんで私が掛けました」
「あらあら、そうだったの?」
布巾を渡される。食卓を拭いて用意だな。
お座布団も出して、台所からおかずを出して行く。
朝持ってきたお造りとか、風呂吹き大根かな。そういった普通のおかず。
お櫃も持ってきて、孝弘さんと律君を呼ぶ。
「うわっどうしたのこれ」
イセエビの見た目か?むしろメインは鯛だ。トロもあるが。
折角俺が居るんだからお造りくらいはね。
「あ、そうだ。こちらだと初詣は二年参りですか?それとも元日のみですか?」
「二年参り?なぁに?それ」
「大晦日も元日もってやつです。ということは元旦だけですか」
「そうねえ、いつも元旦の朝に行ってるわねえ」
「あんたも一緒に行くんだからちゃんと寝なさいよ」
「あー、はい。着物で行かれます?一応紋付持ってきたんですが」
「今年は律も着せようと思ってるの」
「ええっ僕も?」
「たまには着なさいよ」
「ええー」
ほほえましい光景だ。
「先生。あとで針と糸とお借りできませんか」
「どうしたの?」
「半襟つけそびれちゃって」
「あららら~。つけてあげるわ、後で持ってきなさいよ」
「いや、そんな勿体無い、自分でつけますから」
「つけてもらいなさいな」
「いいんですか?なんか悪いですね…」
玄関の開く音。
「こんばんわー」
「晶ちゃん、いらっしゃい」
「お邪魔しまーす」
「ご飯もう食べてきたの?まだならここ座って、ほら」
「こんばんわ、晶さん」
「あ、山沢さん、こんばんわー」

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137

弄られて目が覚めて。
寝ている間に山沢さんが来ていたみたい。
何度か昇りつめて、息を荒くしていると背を撫でてくれるの。
今日はシャツを着ていて素肌じゃないけれど。
いつもは肌同士密着して、それも好き。
あら、石鹸の香り、お風呂入ってきたのね。
落ち着いて山沢さんにお帰りなさい、と言った。
さすがに十日は長かったみたい、私を抱きたかったのね。
凄い隈が出来ていて、眠そう。
寝るより私を抱きにくるなんて可愛いわよね。
頭を撫でるとまだ湿っている。
寝かしつけて、布団から出ると脱ぎ捨てた服が散乱している。
ワイシャツを畳んで、ジャケットとスラックスは釣って置いた。
身づくろいをして朝食の支度へ。
「おはよう」
「ん、おはよう。山沢さんいつ来たのか土間の棚に魚が置いてあったよ」
「うん、さっき来たみたいよ、今私の部屋で寝てるわ」
「あぁ直行したのかい、可愛い子だねえ」
恥ずかしいわね、ちょっと。
朝御飯を作って夫と息子を呼んで食べさせて。
一服したら御節の準備にとりかかる。
足の早い物は今晩作ることにして、元旦の夕方につまむようなものを。
「絹ー、ちょっとー」
あら何かしら。
「晶がねえ、今晩からこっちに来たいって。
 三が日って言うけど御節、量的に大丈夫かねえ?」
「少し多い目に用意してるから大丈夫だと思うわ」
「そう?」
「後でお買物に行くときに何か買い足したほうがいいものあったかしら?」
「今晩の分くらいでいいんじゃないかね」
「お部屋、用意しなくっちゃね。律の隣の部屋でいいかしらねえ」
「その方が無難かね、あんたと山沢さんの部屋からは離れてるほうがいいだろうしねえ」
「お母さん、もうっ」
そんなことを言いながら御節の支度を進めて、足りないものをメモしてお買物へ。
戻ると母がお昼の支度をしていたから後は私がするわ、と引き受ける。

昼前、八重子先生が覗きに来た
その時、寝ぼけて布団の中に引きずり込んでしまったらしく、
お昼ご飯にと八重子先生が呼びに来たときは距離を保って起こされてしまった。
脱ぎ捨てたはずのシャツなどがきちんと畳まれてある。
着ようと思うと浴衣を渡された。それを着る。
ご飯をいただいて、まだ眠そうだからと布団に押し込められた。
確かにまだ足りないようですぐに眠りに落ちた。

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