翌々日。
お稽古に伺った。
今日から男の点前もするのだが、紫の袱紗と大きい懐紙もいるかと聞いたら
着物を着てるときは必要だけど今はいらないとのこと。
いつもの袱紗で男の点前でお稽古していただく。
お稽古の後、八重子先生からお呼び出し。
バレたような感じはない。なんじゃらほい。
小間に行くとこないだの人だ。絹先生と男がホテルに行ったと注進しに来た人。
どうやら旅行帰りのときも見たらしい。
そういやぁ手を握ってしまってた気もしなくもない。
「悪いけどシャツ脱いでくれないかい?」
はいはい、信じてくれないってやつですね。
ひょいひょいとワイシャツを脱ぎ、インナーのシャツを脱ぎ、さらしをはずす。
「と、いうわけで、なんなら下も脱ぎましょうか?」
納得してもらえたらしい、下は脱がなくて良さそうだ。
何でそんなややこしいとかぶつくさ聞こえる。
「私は女性の服装が苦手なので男性の格好をしているのです。
まあ、結婚式なんかだと色無地も着ますよ。男着物は一種の洒落ですね」
帯結びも楽だし。
多分この人スピーカーだろうなあ。
「有名ホテルのランチってあまりハズレがないんで結構利用するんですよね。
それに気分が悪くなっても部屋取れたりできるんで具合が悪いままに
無理して帰宅しなくて良いので使い勝手が良くて。」
よしこれでどうだ。
「そういうこと、あるのかい?」
「昔はよく疝気やら貧血で気分悪くなってたんでそういう使い方してましたよ。
今もたまに疝気はありますけどね」
これで"ご休憩"くらいの申し訳が立つかな。
新しいネタ獲ったどー!みたいな顔してるぜ、スピーカー。
ところでいい加減服着て良いだろうか。
「お母さん、ちょっと…あら。」
だあぁ、絹先生に乳見られたじゃないかっ。
八重子先生に来客とのことだ。
じゃあこのへんで、とかなんとかいってスピーカー帰ってっちゃったよ。
その間にササッとさらし巻いてシャツを着た。
「意外と大きいのね」
しっかり見られていた。
「ははは…私もそろそろ帰りますね…」
先生は、ふふって笑っている。