生徒さんのお稽古がすみ、何か質問は?との声に生徒さん。
「先生は山沢さんには厳しくされてますがどうしてですか?」
あ、答えを探しているな、先生。助け舟出すか
「よろしいでしょうか」
「え、えぇ」
「来年にはじめに私、上級の許しをいただく予定でありまして。
それで上級に上がるからには、と厳しくしていただいてるのですよ」
「ああ、そうなんですか!」
「そうなのよ、ホホホ」
生徒さんが帰られて、助かったわ~と仰る。
「ああいう理由にしときましょう。一番有り得るかと」
「そうねぇ」
水屋を片付けていると八重子先生ご帰宅。
「ただいま。あぁ山沢さん、お帰り。お土産ありがとうね」
「お帰りなさい、先程戻りましてお稽古もつけていただきました」
「あんた今日夕飯食べていくだろ?」
「そうさせていただければ助かります、帰りに買物しないと何もないので」
「あら、そういえば山沢さん洗濯物は?」
「それは明日家に宅配で来ますんで明日やります」
片付け終えて居間へ移動。絹先生はお台所。
八重子先生がお茶を入れてくださった。
「あっちは寒かっただろ?」
「やー流石に海は寒かったです。けど後はほぼ屋内でしたから」
塩沢くらいか、寒かったの。
「…まさかずっとしてたのかい?」
「え、いや、ええと酒飲んだりとか…も、してましたよ」
「若いねえ…」
「ははは…」
「まぁあの子が良いと言うならいいけどね」
「ありがとうございます」
「……あんた、男の人としたことはあるのかい?」
八重子先生が声を潜めて言う。
「あ、一応。後学の為に」
「するのはどうだった?嫌だった?」
「胸の内と体とは別、と言うのが体感できましたね。感覚的には面白い体験でした」
「へぇそんなもんかねぇ」
「しかし八重子先生、聞きにくいこと結構聞かれますね」
「そりゃまぁ絹の相手だからね」
あーじゃ土曜日に渡すか、検査書類。
「お母さん、ご飯できたわよ」
「はいはい」
配膳を手伝う。あれ?孝弘さんと律君は?
「律は合コンだって。お父さんはお出かけ、ご飯炊いたのに~、もうっ」
3人でご飯か。ちょっとさびしいな。
「あれ?律いないの?」
「あら兄さん。どうしたの?」
「いやちょっと借りたいものがあったんだよね。いないのか」
「どうせだからご飯食べていく?」
「助かるな。姉ちゃん今日帰ってこないからどこかで買うかと思ってたんだよね」
「あら環姉さんまた帰ってないの?」
「仕事が忙しいみたいだぜ」
「あの子も早く結婚したら良いのにねえ」
「山沢さんは出張からいつ帰ってきたの?」
「ああ、今日ですよ、昼過ぎに直接こちらへ」
「へぇー、そんなに絹がすきなんだ?」
「兄さん!?」
あ、お茶碗取り落としそうになってる。
「開…なんであんたそういうこと言うかねえ」
「ええ、そうですね」
「山沢さん!」
「あんた知ってたのかい?」
「うん、山沢さんは僕が知ってることも知ってたようだけどね」
「絹先生には言わないってことにしませんでしたっけ?なんで言うんですか」
「面白いから?」
こういう人だった、忘れてた。