先生は、と。
とっくに着替えて燗をつけて居るらしい。
台所へ行くと先生にごめんね、と言われた。
気にしなくて良いですよ、と言ってかすめるようにキス。
少し飲みたくなって常温の天神囃子を取り燗徳利とともに先生と戻る。
律君にもついであげる。顔が赤い。
先生が燗酒を私についでくれて飲んで。返杯、返杯。
八重子先生にも。お正月番組を見て、団欒。
いいね、あったかいね。
晶ちゃんと律君は部屋に引き上げ、そちらで飲んでいるようだ。
孝弘さんも離れに寝ている。
先生があくびをした。
「少し寝たらどうです?」
「でも…」
「女手なら私がいますからね。大丈夫ですよ」
御節作りや大掃除で疲れているんだろう。
はいよ、と八重子先生からハーフケットと座布団。
先生が横になってうとうとし始めた。
可愛いなぁ。
先生の寝姿を見ながら八重子先生と酌み交わす。
少し不埒なことを考えてしまった時、八重子先生に頭を撫でられた。
「あ…えぇと、風呂。洗ってきます」
慌てて席を立った。
いかん、いかんよ俺。
八重子先生の居る前で先生をそういう目で見るなんて駄目だ。
雑念を吹っ切るべく丁寧に風呂を洗う。
洗い終えて出ると律君とばったり。
律君が慌てて後ろを向いた。
「やっだ、律、あんた山沢さん見て赤くなってるんでしょ~」
「ああ、晶さん」
うん?ってああ、そうか、風呂洗うのに下着以外脱いでるからか。
青年には刺激が強いんだな?
声を聞きつけて八重子先生が来る。
「さっさと着なさい」と叱られて着なおす。
「もー山沢さん気にしなさすぎ!」
「見慣れんものですかね…?」
「晶、お風呂どうする? 入るならお湯張るけど」
「んー、入ろっかな。山沢さん先じゃなくていいの?」
「私は後で頂きますからどうぞ」
お湯が沸くまでの間、居間でゆったり。
「おばさん寝てるの珍しいね」
「お疲れなんですよ。あ、ちょっと雑煮作ってきますがいります?」
二人ともに要らないといわれてしまった。
酒飲んで御節食べて雑煮、幸せ~。
御節も随分と夜に近い時間には減ってきた。
明日はどうするのかと聞くと詰めなおす部分と新規のものを入れるのと、とか。
皆がお風呂に入り、先生を起こしてお風呂に。
眠くてふらついてる。
「今日どうしても入らなきゃいけないというのでもないと思うのですが?」
「そうね、明日の朝にするわ…」
いっそ、と抱えあげてお部屋にお連れする。
部屋で降ろして寝巻きに着替えるように言い、布団を敷く。
衣擦れの音が心を乱す。
先生はすぐに布団に入り、寝息を立て始めた。
脱ぎ捨てられた着物を片付け、部屋を後にする。
居間に戻って飲んで騒いで、後片付けをして自室へ戻る。
他の部屋や居間から遠いこともあり部屋が冷えていて、冷気が寂しさを煽る。
同じ家にいて寂しさを感じるとは、こうなるまでは知らなかったことだ。
後二日、二日を我慢したらいいんだ。
部屋を温め、布団にもぐりこむ。
さすがに酔いも手伝いすぐに寝た。