忍者ブログ
百鬼夜行抄 二次創作

let

伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

156

戻ると先生が部屋から出ていて、すぐに抱きつかれた。
ちょ、裸、ドア開けるなりは見えるから、外に。
慌てて鍵をかける。
「どうしたんですか、いったい」
「だって起きたらいなくて…どこ行ってたの」
「コンビニ。あなたが良く寝てたから…腹減っちゃいまして」
「いなくならないで」
「といわれましても冷蔵庫何も入ってないんで」
「そうじゃなくて…行くなら起こして一声かけて。お願いだから」
「え、あ、はぁ…わかりました。腹減ってます?」
「……もうっ!」
あれ、なんで怒ってるの?
わけがわからん。
ま、いいや。抱き上げて食卓の前に座らせる。
机に袋を置いた。
「食べます?」
きゅっとつねられた。
「もう、なんなんですか。そんな顔して。なに拗ねてるんです?」
「わかってるくせにっ」
「わからないな、言ってくださいよ」
「言わないっ」
「言わなきゃわかりませんよ」
「なんでわかってくれないの?」
「夫婦は他人の始まり、といいますよね。俺達、夫婦ですらありませんよね。
 ちゃんと言って下さらなきゃわからない事だってあるんです。どうしたんですか?」
「他人だなんて…」
「ああもう、そんなところにひっかからんでください。ほら、泣かないで」
なんで泣くんだよ…。
そう泣かれたら俺も悲しくなるじゃないか。
参ったな。
暫く懐で泣かせて、背中を撫でる。
ああ、ぐしょぐしょだな、胸。
洗濯に出さなきゃいかんなぁこれは。
暫くして落ち着いたようだ。
「ごめんなさい…」
くぅきゅるる~。
腹が返事してしまった。
少し先生が笑って、和む。
「あのね、起きてあなたがいなくて。置いて出て行ったんじゃないかしら、
 わがままをたくさん言ったから嫌いになっちゃったんじゃない?
 他の女の人のところに行ったんじゃないかしら、なんて思ったの」
「ちょっと俺、信用なさ過ぎですね。それは」
「なのに帰ってきたあなた、ご飯のことしか言わないんだもの。腹が立っちゃったのよ」
「腹減って一時間ほどたってましたからねえ」
「本当にお腹すいてたのね。もうこの時間じゃどこもあいてないかしら?」
「まだ9時前ですよ。着替えて9時過ぎでしょう。余裕ですよ」
「じゃ、行きましょう。着替えてくるわ」
俺も着替えないとな、この格好では。幸いネルシャツだったからいいけど。
脱いで洗濯籠に投げ込んで着物を着る。
先生が着替えている間に電話をした。
よし、空いてる。時間もラストオーダーに1時間半もある。
先生がささっと化粧をして戻ってきた。
「綺麗だ…」
「あら…嬉しいわ、行きましょ」
タクシーを止めて先生とともにホテルへ行く。
席に着いてメニューを見る。コースはまだ頼めるかと聞くといけそうだ。
どうしますか、と聞くとそれでいいという。
一番いいコースを頼んで、シャンパンを頼む。
「こんな時間からしっかり食べるのもどうかとは思いますが…」
「だってお腹すいてるんでしょ?」
「ええ、まあ。先生はどうなんです?」
「すいてるわよ」
「ならいいか。結構に夜景見えますね」
「そうねえ。ロマンチックね」
前菜が来て、スープと続きコースがすすんで行く。
先生は魚、私に肉をメインにしてもらった。
うまいなぁ。
デザートまで美味しく頂き、エスプレッソを飲む。
「この後どうします?バーにでも行きますか?」
「ううん、久さんの家がいいわ」
「あ…はい、そうしましょう」
支払いを済ませタクシーで戻る。ずっと手を握られていた。
うちへ入って鍵をかけて。
先生が寝巻きに着替えた。

拍手[1回]

PR