仕事を終え、食事を取る。
少し飲酒。
夕方、携帯にメール。
先生からか。
昨日あの別れ方をしたのに来いというのか。
少し悩んで、どうせ行かなきゃ突撃されるだけかと思い、行く旨返事する。
着替えて移動。
玄関を開けて声を掛けると律君。
ありゃ?
「あら早かったねえ」
うわっ後ろから八重子先生に肩を叩かれた。
先着してしまったようだ。
「あ、ええと、こんばんは」
上がって着替えを手伝う。
「で、絹先生。お呼びいただいた御用はなんでしょう」
「特に用はないわよ」
「は? 用はない? じゃ帰らせていただきます」
「用がなきゃうちに来てくれないの?」
「あんたら何やってんだい。山沢さんも意地を張らない!」
う…。
「ですが。用もないのに来るなんておかしいでしょう。
律君だって違和感を感じてますよ。他のお弟子さんにだってどう思われるか」
「それはそうだけど…」
「初釜がどういうものか教えるために呼んだってことでどうだい?」
「…律君へはそういうことで結構です」
「絹。あんたまた何か山沢さんにしたのかい?」
「されてません。特に御用もないようなのでこれで失礼します」
「だからっ」
振り切って先生のお宅を出た。
携帯がなるのを無視しているとメールが入る。
それも無視して。
ふと京都に戻りたくなった。
その足で新幹線に乗り。京都へ。
久々に我が家の鍵を開けて風を通しストーブのスイッチを入れた。
移動に疲れ、うつらうつらとする。
先生より更にメール。
どこにいるの、と。やはり家に突撃されたか。
あなたの知らないところ とだけ返した。
時計を見る。まだ終電はあるだろう。
なければないでうちの鍵を持っているのだから勝手に泊まればいいさ。