翌日、絹先生から携帯にお電話をいただく。
食事の件だ。
京懐石があれば、という。
あのあたりだと、なだ万とかあったような気が…。
「ちょっと遠くてよろしければ辻留、柿傅、三友居などありますがどうします?」
なに、そこまでは肩がこる?了解。
いくつか要望を聞いて本日在宅か聞き、電話を切る。
会社の人にお勧めの京懐石を聞くと、そのあたりで一つ二つ出てきた。
詳細をプリントアウトする。
あの家パソコンないからなあ。律君が壊しちゃうんだろうな。
俺の使ってないノート置いとこうかな。リモートツールいれて。
仕事もそろそろ良い時間だ、帰ろう。
帰宅し、着替えてから資料を持って先生のお宅へ。
「お邪魔します」
「はいはい」
あれ?律君だ。
「ごめんなさい、母、ちょっと今出ちゃいまして」
「ありゃ。じゃあ八重子先生はおられるかな」
「あ、いますいます、どうぞ」
迎え入れてもらう。八重子先生は庭に居られた。
横まで行ってみると茶花の手入れをされている様子だ。
「ああ、山沢さん。どうしたんだい?」
芝居の後の食事の件についてとりあえず資料持ってきたのだが、
絹先生が不在なのでどうしようかと。
すぐ戻ってくるとのことで待たせてもらうことにした。
昼は暖かくて良い日和だなあ。
パタパタと足音がして、
「ごめんなさい、山沢さん、待ったでしょ?」
と絹先生が走りこんできた。そんなに焦らなくて良いのに。
そういうとこ、可愛いよな。
「時間を決めて来た訳ではないですし、気にしないでください」
もうちょっと待てる?というので待っていることにした。
八重子先生がお茶を入れてくださり、向いに座られた。
お茶が熱い…。
「町内の方で揉め事があってねえ、ちょっとばたばたしてるんだよ」
へえ、町内ねえ。
「昔うちに来てたお弟子さんと、うちの町内の方が不倫してたらしくてねぇ、
駆け落ちだってさ」
へぇぇ!駆け落ち?
「で、なんで絹先生が?」
「昔絹に粉かけてたんだよ、その人」
あー…そういうことか。
「良かったですねえ、そんなのに引っかからなくて」
本当だよ、とかなんとか話していると戻ってこられた。
ハイお茶、と絹先生にもお茶が出る。
私のもそろそろぬるいはずだ。一口いただく。
「疲れちゃったわあ」
「肩、揉みましょうか?」
頼める?というので揉んでいると八重子先生がぎょっとしている。
「お母さん?」
あ、見た感じ男が娘の肩をもんでいるという変な光景か。
絹先生は気にせず愚痴っておられる。
「お母さんちょっと えっ」
律君が驚いている。うん、変な光景だね(笑)
胸にあるツボ押してるもんね、今ね。
「あら、どうしたの?」
うん、素だね、絹先生。どういう風に見えてるのかわかってない(笑)
肩をぽんぽん叩き、終了。
律君もただの肩揉みと気づいたようだ。用件は今日遅くなるというだけだった。
さてさて、愚痴も終わったようだし、本件に入ろうじゃないか。
メシはどこに行こうかねー。
仮の案として二件ほど見せる。ほん近くにある京懐石のお店と、ちょっと遠い店。
ほん近くの方が良いかな?と決まった。
時間は7時スタートで。早く幕が降りても喫茶店よれば30分潰せるかな。
その場で予約を取る。OK、すぐ取れた。
ということで本案件終わり。
明日のお稽古ですることなどの話をして、3時過ぎに帰った。