翌朝、起きると先生がいなくて外が明るい。
寝過ごしたようだ。
布団の中でぼんやりしてると先生が起こしに来た。
「あら起きてたの? ご飯食べるでしょ?」
早く着替えてきなさい、といわれて布団から這い出る。
身づくろいをして食卓につけばポトフ。
寝ぼけ半分に食べてもうまい。
…トマト。温かいトマトはいやだ。
手が止まっていると孝弘さんが食べてくれた。
「あっお父さんダメよ、人のおかず食べちゃ」
「いいんじゃないの? 山沢さん苦手っぽいし」
律君が笑って言ってくれて新たな温かいトマトを回避できた。
野菜を沢山食べて腹いっぱいになる。
「さてと、ちょっと手伝ってくれるかい」
八重子先生に呼ばれて茶道具の整理を助ける。
重い釜の移動に体力を使ってくたびれてしまった。
「お昼ご飯できたわよ」
その声に中断されご飯をいただく。
昼からはどうするのかな。
お昼ごはんは孝弘さんが居ないそうでスパゲティ。
くっ、辛っ!
にっこりと先生が笑う。
「しし唐、当たったの?」
涙目でうなづく。
「普段の行いかな」
と呟いたら八重子先生が笑っている。
「そうかもしれないわねー」
先生までもがのんびりとそんなことを言う。
俺の分は2人分だったらしく、八重子先生とは明らかに量が違う。
まぁその分当たりを引きやすい。
「暖かいわねぇ。あとでお昼寝したいわね」
「ですねぇ」
「年寄りみたいなこと言ってないで片付け手伝っとくれ」
「サー・イエッサー」
ぷっ、と先生が噴出した。
「映画、見た口ですか?」
「アメリカの映画でしょ?」
おしゃべりしながらお茶碗や水指などの入れ替え。
冬向きのものは奥へ、春夏のものを手前へ。
「ことしもお花見の茶会しようかねえ」
「そうねえ」
「去年は参加できなかったんですよね。今年されるなら参加したいです」
先生がにこっと笑って私をなでる。
「なんで撫でるんですか」
「ん、なにか可愛かったからよ」
ハイハイ。
「あらこれ…懐かしいわ」
「あ、綺麗ですね。夏向きですか?」
「どれどれ? そりゃ夏だね。盛夏に使ったらいいよ」
切子の水指はさぞや涼しげだろう。
「それとそろいのお茶碗もあるよ」
「棗はどういうのと合わします? 木地ですか? 黒棗?」
「それもいいけどちゃんと揃いであるんだよ、その水指。ただどこに仕舞ったかねえ」
「…来年夏までに見つけましょう」
「あんたが手伝ってくれたら見つかるかもしれないね」
出来るだけ道具が一具になるようにリストも作って行くことにした。
中身の写真を撮って箱につけていくのもいいな。
そんな相談もしつつおやつタイム。
今日はカステラだ。
「八重子先生ってよく太りませんね」
「あら。おばあちゃんお医者さんに甘いものは控えめにって言われてるわよ」
「え、でも結構」
「前はもっと食べてたからねぇ」
これで控えめだったのか。