台子を仕舞って釜なども片付けて着替えてお台所へ。
「ああ、終った? じゃお刺身してくれる?」
「はいはい」
「酢味噌もよろしく」
「はい」
はまちをさばいてお造りにして、わさびを練る。
八重子先生が微妙な顔で見ているのはロマネスコだな。湯がいたらしい。
酢味噌を作って味見をしてもらう。
「あら? あまりツンとしないのね」
「酢が違いますからね。もう少し甘いほうがお好きですか?」
「んー、こんなものだと思うわよ」
「じゃそろそろ孝弘さんたちお呼びしましょうか」
「そうしてくれる?」
はい、と答えて律君を呼びに行き、孝弘さんを離れから拾ってくる。
「うわ、なにこれ」
どん引きの律君に先生が苦笑する。
「山沢さんのお土産よ」
「なんでフラクタル? うーん…」
「…おいしいのかしらねえ」
「ま、食ってみて下さい」
八重子先生が好奇心に負け手を伸ばした。
結構新しいもの好きだよね。
俺は普通にマヨネーズでぱくつく。見た目が駄目なだけで美味しいから。
「なんだカリフラワーじゃないの」
「でしょう?」
律君が動揺のあまり蛍烏賊にマヨネーズつけた。
美味しいような気もしなくもない。
アタリメにマヨネーズつけるし。
一度食べたら別に変なものではないとわかったようで律君も食べだした。
孝弘さんは最初から何も気にしてない。
ハマチは今日は天然が安かったので、と言うと先生は嬉しそうだ。
俺の為にちゃんと肉のたたきを買ってきてくれてあって美味しくいただく。
満腹。ご馳走様。
ロマネスコも全部売り切れた。
よしよし。
洗い物を片付けて戻ると八重子先生はお風呂に。
律君は勉強かな。レポートだそうだ。
「ね、先生。あっちの家行きませんか」
「えっ…」
「だって多分今晩は律君夜更かしですよ」
「あ、そう、そ。そうよね。でもお母さんに言うの恥ずかしいわ…」
「風呂入ったら先行ってますか? 俺から言います」
「そうしてくれる?」
頬染めてて可愛い。
はい、とチロリアンを渡して二人で食べる。
「あら、おいしいわね」
「千鳥酢を見た瞬間にチロリアンが浮かんだものですから買ってきちゃいました」
「どうして?」
「チロリアンは千鳥屋」
「あら、やだ。ほんとね」
などとなごんでいると八重子先生が風呂から出てきた。
代わりに先生が風呂に立つ。
八重子先生にも差し上げてお願いした。
「あー…いいけどね。ちゃんと明日のうちに帰してやっとくれよ」
「いや築地のじゃなくてですね、近くの部屋のほうです」
「それならいいよ。じゃあんたも一緒に入ってきたらどうだい」
「来る前に入ってますからいいですよ」
「そうかい?」
お茶いれて、ゆったりとした時間。
暫く喋ってたら先生が風呂から上がってきたので支度してつれて出る。
冬に比べれば暖かいから湯冷めの心配がそんなにない。
先生はちょっと恥ずかしそうだ。