台所から戻ればまだ先生はあくびをしてる。
「お母さん、布団で寝なよ」
「本格的に寝ちゃうもの、いいわよ」
「おこたじゃ風邪引きますよ」
「あなた眠くないの?」
「私こそ今寝たら夜中に起きてそのまま出勤ですよ…」
「いいじゃない、そうしなさいよ」
ちょっと迷ったがそういうのも一度くらいはいいか。
「じゃ布団敷きますから。律君、夕方起こしてくれるかな」
「あ、はい」
「晶ちゃん、悪いけどおばさんちょっと寝ちゃうから」
「おやすみなさい」
微妙な顔してるなぁ…。
だけどこうでもしなきゃ布団で寝てくれそうにない。
布団を敷いて着替えて、昼の暖かい日差しの中先生を懐に昼寝。
うん、これも中々にいいな。
気持ち良さそうな寝息。
先生の甘い匂い。カレー臭…は邪魔だけれど。
あ、ダメだ、俺も寝ちゃうなこれは。
ふっと意識が落ちて次に気づけば夜で。先生は懐にいない。
居間に出て行けば先生方がお茶を飲んでた。
「あぁ起きたの? お腹すいてないかい?」
「すいません、夕飯作るつもりだったんですけど」
「いいわよ、お昼作ってもらったもの」
「よく寝てたねぇ。律が呼んでも起きなかったって言ってたよ」
「晶さんは」
「お夕飯食べて帰ったわよ。はい、こんなものしかないけど」
「あ、いただきます」
軽く食事をいただいて食器を洗いに立ち、片付けて戻る。
「ねぇ、もう帰るの? 夜中?」
「どちらでも」
「明日きてくれる?」
ふっと笑ってしまった。なんか可愛い。
「これそうなら」
「来てね」
ふふっと先生も笑って。
「しごいてあげる」
うっ…。
「…来れないかも」
くすくすと先生が笑う。
遊ばれてるなぁ。
八重子先生は微笑んでこちらを見守っている。
先生に頭を撫でられた。
「月曜、来るならあなたのお稽古の時間だけでもいいわ。水屋しなくていいから」
「わかりました」
キスしたいな。無理だけど。
だから、帰ることにした。
「じゃそろそろ帰ります」
「どうして?」
八重子先生がいるのに言える訳がない。
苦笑しつつ玄関まで送っていただく。
八重子先生はついてこない。
「このままいたらあなたを抱きたくなるから」
耳元に囁いて掠めるようなキスをした。
ぽっと頬染めて可愛らしい。
「じゃ、また来ます」
「待ってるわ…」
別れて車を運転して帰宅。
結構しっかり寝たから食後でもそう眠気は来ない。
急ぐこともなし、ゆっくりと注意して運転して帰宅する。
さてと。
束の間だけれど寝るとしよう。
おやすみなさい。