私は絹先生を引き寄せ、頬にそっと手を添える。
「別れたいですか?」
「ど、どうして?」
「いや、その、ばれて居心地悪くなって別れるとかたまに聞くもので…」
むっとした顔をしてる。あれ?
「山沢さんが、そうなの?」
ありゃ、怒ってる?
「私は、あなたが別れてくれというまで離れる気はありませんよ」
「別れてっていったら離れるの?」
「八重子先生にそういわれたので…」
ストーカー化するのはどうかとも思うし。
と思ってたら、手を振り払われて居間から出て行ってしまった。
ええっと、なんでだ?
困惑していると、八重子先生が戻ってきた。
「どうしたんだい?」
かくかくしかじかと伝える。
「ばかだねえ、あんた。何があっても離れたくないとか言っとくもんだろ、そこは」
そういうものなのか。
女心がわかってないとか言われてしまった。
「帰るまでになんとかしときな」
そういって出かけられた。
ええっと絹先生はどこに居るんだろう。お部屋かな。
…いない。うーん。二階?
いたいた。
「先生…」
そっと肩に触れる。その手を叩かれた。
ん……。
無理にこちらに引き寄せる。
抵抗された。
イラつく。
「痛っ」
と。力を入れすぎた。落ち着け、俺。
「ねえ、先生。別れて欲しいのにしつこく付きまとわれるの、嫌じゃないんですか?
そういうの、嫌だろうから離れるって言ったんですよ。
別れてっていった後に私に監禁されたいですか」
駄目だ怖がらせてどうする。
手を離すと距離をとられてしまった。
「…別れたいんですか」
あ、駄目だなんか無理だ。私は二階を後にし、帰宅することにした。
帰りのバスで頭を抱えたくなってしまった。何でこうなるんだ。