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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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39

「ど、どうしたんですか急に」
「なんかあんた、落ち込んでるように見えてね」
あー…まあね。
煮物は下手だしお花も苦手だし色々とね、へこんではいますがね。
朝は朝で失言してわけわからんことになったしね。
「まあ、あんたはあんたで他に色々とできることあるだろ」
「お茶には生かせないことばかりですよ…」
撫でられてると絹先生が戻ってきた。
「あらあら、どうしたの?」
くすくす笑ってる。
お茶にしましょということで居間に戻ってテレビをつける。
台風のニュース。
週末にかけてくるらしい。先日も大変だった。
山崩れとかなったら怖いなあ。
「お稽古お休みにしたほうがいいのかしら」
「そうだねえ。危ないからね。そうしたほうがいいね」
「でも仕事は休みにならないんですよねえ。客来ないのに」
「台風前日はうちに来るんじゃないよ。遠いんだから」
いやむしろ泊まってたい、仕事行きたくねー。
「休前日ならこっち来ていたいですけどねえ…。
 いっそ仕事も暇だし京都にでも避難してもいいですが」
「何か展覧会があるのかい?」
「あっちならいつでもなにかあるでしょう」
ん、絹先生がなにか言いたそうだ。
「どうしたんです?」
「……芸者さん呼ぶのかしら」
「呼びましょうか?」
売り言葉に買い言葉、八重子先生がため息吐いてる。
「絹も一緒に行ったらいいだろ」
「いやいやそんな頻繁に一緒に旅行はちょっと」
他のお弟子さんとか、律君とかに怪しまれそうだよ。
「いいから行っといで」
参ったな…。
「…お夕飯の支度してくるわ」
絹先生は言い捨てて台所に行ってしまった。
私はため息を一つ。
「なんで芸者にこだわるんでしょうねえ…」
「ほんと朴念仁だね、あんたも」
「娼妓の居る時代じゃあるまいし。
 私の場合呼ぶのは年寄り芸妓だしで色っぽい話なんて皆無なんですけどねえ」
「そりゃお座敷遊びしたことない人にはわからないよ」
そんなもんかなあ。
「うーん。じゃ今度、絹先生連れてお座敷かけましょうか」
なんて話をしているうちにそろそろ帰らねばならない時間だ。
八重子先生に挨拶し、台所に立ち寄る。
「そろそろ帰りますね」
「どうぞご勝手に」
苦笑して調理中の絹先生の腕を引き、こちらに向かせてキスをする。
「また明後日きます」
「…こなくても構わないわ」
「そう仰らずに…先生、意外に嫉妬しますね」
後ろ向いちゃった。
「嬉しいですよ。だからこっち向いてください。それとも…」
ちょうどそこにまな板と包丁があることだし。
「こうしましょうか?」
と、包丁を私の小指にあてがう。
すっと皮一枚切ったところで止められた。
詰られる。
卑怯者といわれてもこういう手立てが一番誠意が判るかなーと思ってしまう。
ただ抜本的解決になってないから一度ちゃんと話をしないといけないな。
「じゃまた明後日きてちょうだいね」
明々後日は休みだから泊り込んでしっかり説得するか。

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