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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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ハモが売れ残りそうなので数本持っていくことにした。
早めの帰宅、それから移動。
車で先生のお宅に着いて台所へ置いた。
居間でくつろぐ先生方に挨拶。
「それで土間に発泡の箱があるんですが絶対触らないでくださいね。噛まれますから」
「何持ってきたのよ。噛まれるって」
「ハモですよハモ」
納得された。
「で、体調どうです?」
「まだだるいのよね。お母さんも」
「生徒さんもそうみたいでキャンセル3人だよ」
「やっぱり台風の影響でしょうかね、気圧が一気に上下しましたし」
「そうなのかしら」
「やりくりしたから今日は3時くらいにあんたのお稽古して、仕舞うからね」
「あ、はい。そんじゃそのあと飯の支度、俺やりますよ」
「ご・は・ん。よろしくね」
「あー。…はい」
八重子先生が微笑んでる。
とりあえず支度をして先生を待つ。
若い方は流石に元気だが若くない方は夏の疲れもあるのかな。
茶杓を取り落とされたりふらつかれたり。
お稽古は軽め軽めに流して行くことに。
俺へのお稽古も復習程度だ。
さっさと水屋も片付けて着替え、食事の支度に台所へ入る。
先生方は遅い昼寝。
指定のメニューの下拵えをしてそれから土間の箱を外で始末する。
噛まれないよう〆て神経抜きで一本ずつおとなしくさせた。
シンクでかねたわしを使いぬめりを取り、板の上で一本ずつ開いて腹をあけ背骨を外す。
うん、まだ綺麗な色をして身も蠢いている。
すべて処理してナイロン袋に生ごみを密封した。
板を一度よく洗い、それから骨切りをする。
串を打ち、七輪へ乗せた。
細いハモは湯引き用に切ってある。
焼ダレを持ってきた箱に入れ、刷毛をセットした。
待つ間に今日の料理をして行く。
なぜか豚汁。
暑いときは熱いものを、なのかな。
他にいくつか作ったころ下焼きが出来た。
たれを塗っては焼くこと3度。
ん、良い感じだ。
9割方仕上がってご飯も炊けた。
食卓を片付け先生を起こして配膳する。
あとは湯引き。
律君と孝弘さんも出てきたようだ。
お櫃と湯引きの皿を持って出る。
先生は…ぼんやりしてる。
八重子先生はまだ寝てるか、しょうがない。
かわりにお櫃からご飯をよそって渡す。
「あ、ありがと…」
半分寝ぼけつつご飯を食べてる先生と言うのも結構可愛くて好きだが多分消化に悪い。
暫く食べているうちに先生が煮豆を取り落とした。
お箸を持った手を机に置いて止まっている。
「…寝てきます?」
「あ、ごめんなさい、食べるわ」
「お母さん寝たら?」
「変な時間にお腹すいちゃうじゃない」
「食べさせてあげましょうか」
ビクッとして慌ててる。
「良いわよ、自分で食べるから」
ちょっと目が覚めたようだ。
それでも食べている口が止まったり、お箸が止まったり。
「もうご馳走様にしたらどうです?
 どうせ八重子先生もお腹すくと思いますから一緒に食べたら良いじゃないですか」
「んー…そうするわ」
お箸を置いた。
「律君、ちょっと布団敷いて来るから」
「あ、はい」
急いで布団を敷いて先生を呼びに戻ると床に崩れてる。
「ありゃ」
「お母さん、布団で寝てよ」
「ぅーん…」
ひょいと抱え上げて寝間へ連れて行って布団に押し込める。
「ん、キスして」
「はいはい」
軽くキスをして寝かしつけて食卓に戻った。
あぁ…いない間に俺のお茶碗のご飯まで食われてるし。
「ごめん山沢さんっ。止めたんだけど」
「いいよ、いいよ。どうせもう一度炊くから」
「ハモって結構おいしいんだね」
「これついさっきまで生きてたからね」
「え、そうなの?」
「うん、八重子先生には触らないようお願いしてあったんだ」
「おばあちゃんじゃ料理できない?」
「じゃなくて噛むんだよ。コレ。もれなく化膿する」
「ええっ」
マジマジと見てる。
「結構魚って毒があったり噛んだり刺したり。だから手がね、傷だらけになるんだよね」
「道理で…」
ご馳走様をして台所を片付ける。
先生方の分は取り置いてあるから問題なし。
ご飯を3合炊く。明朝の孝弘さんのオヤツに消える予定。
さて、居間に戻ったところで俺一人か。
とりあえずコーヒーを入れた。
ぼんやりとしていると眠い。
身を起こして戸締りを確かめ火の始末をする。
いつ寝てもいいように。
律君達が風呂に入り、呼びに来た。
入っておくか。
軽く汗を流して出てくると八重子先生がおきていた。
「お腹、すいちゃってね」
「ちゃんと取置いてありますよ」
ご飯をよそっておかずとお盆に載せ持ち出した。
並べる。
「うなぎ?」
「ハモです」
割としっかり目に食べられて、それからお風呂へ入られた。
一応出てこられるのを待って寝間へ引き上げた。
先生の寝息。
気持ち良さそうだ。
横にもぐりこむと先生が寝返りを打ち、俺の胸を枕にした。
髪が触れて少しくすぐったいが眠気に負けた。
おやすみなさい。

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