夜半先生が起きた。
「どうしました?」
「どうしよう…お腹すいちゃった」
「まだご飯あるよ。食べる?」
「こんな時間に? 太るわ」
「でもおなかすいたままでは寝らんないでしょう」
うーん、と悩んだ挙句やはり食べることに決めたようだ。
先生が先ほど手をつけそびれたおかずを並べる。
「あら、ハモ? おいしそうね」
うふ、とか笑って食べてる。
「そういえば。お母さんは食べたのかしら」
「あ、俺が寝る前に」
ギシギシと廊下が鳴る。
「電気ついてると思ったらこんな時間に食べてんの?」
「だってお腹すいちゃったんだもの。あんたもなんか食べる?」
「いらない…水飲みに来ただけだし」
そういって台所に行って部屋に帰っていった。
「ごちそうさま」
「お粗末さまでした」
暫くゆっくりしてから寝間へ引き上げることにした。
先生が歯を磨いてきて俺の懐に潜り込みキス。
かすかに歯磨き粉の味。
何かしようか、と思った途端のあくび。
「ごめんね、まだ眠いの」
諦めて再度寝かしつけた。
朝になって先生はゆったりと俺の懐で眠っている。
見ていると幸せな気分だ。
安心しきって俺にすべてを預けているようで中々に気分が良い。
もう少しこのままでいよう。
暫くしてもぞもぞと先生が動く。
あ、目を開けた。
「何時?」
かすかに唇が動く。
「6時ですよ」
「あら、もう起きなくちゃ」
先生が身づくろいしている間に先に台所へ。
さてと朝ご飯を作ろう。
うざく、じゃなくてハモと胡瓜の酢の物。コレは俺のだけ茗荷なしで。
…あじの南蛮出すつもりだったの忘れてた。
魚の酢の物2種? うーん。
先生が出てきたのでどうするか聞く。
あじは昼にまわすことにした。
先生が冷蔵庫を見てあれこれ指示を出すのに従って朝食を作った。
「律ーごはんよー」
八重子先生が律君を呼んで、律君がお父さんを起こしに。
おいしくいただいたら今日は平日、家事をせねば。
風呂も洗い、茶室の掃除に庭掃除。
途中にお昼ご飯をはさんで掃除をする。
明日からは人出入りが多いだろうから居間と客間も丁寧に。
まだまだ手を掛けたかったが先生がそろそろご飯にすると仰る。
配膳を手伝い男共を呼ぶ。
「そういえばさ、律君は海行かないの? 夏だけど」
「いやぁ海ってなんか怖いじゃないですか。色々とね」
「あぁ…色々ね、うん」
孝弘さんも席に着いた。先生がお櫃を持って出てお夕飯。
「お待遠様~」
お、肉だ肉。
俺にだけ。
嬉しいなぁ♪
がっついてると先生がにこやかだ。
しっかりと平らげて明日への体力の保持。
早めに帰宅した。