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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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お昼を食べて暫くしても山沢さんが来ない。
「来ないわねぇ」
「ん?」
「山沢さん。いつもならそろそろ来るのに…」
「あんたお盆の間は来ないって言ってたじゃないの」
「そういえばそう言ってたかしら? でも今日は木曜よ」
「お稽古がなきゃ来ないだろ」
来ると思ってたから昨日見送りにも立たなかったのに…。
しょげてたら姉さんが来た。
「ただいま。久しぶり。おもて暑いわねえ」
「おかえりなさい。ほんと暑くてお買物とかつらいわよね」
「これお仏壇のお供え。律ちゃんは?」
「学校行ってるのよ」
「お休みじゃないの?」
「なんかあるんですって、しなきゃいけないこと」
「いつも片付いてるわねぇこの家」
「山沢さんが昨日気合入れて掃除してたからかしらね」
姉さんに冷えた麦茶を出しておしゃべり。
「あらあんた掃除もさせてるの?」
「そのかわり私が山沢さんの家掃除したりご飯作ってあげたりしてるわよ」
「今日は来てないの?」
「そうなのよ…」
「お盆だから遠慮するんだってさ」
「おうちに帰られるのかしらね」
「ううん、ずっと出勤ってぼやいてたわ」
「あらー、大変ねえ」
久々に姉さんと沢山おしゃべりして楽しく過ごし、お夕飯を作る。
玄関から物音。
覚兄さんかしら。
玄関に出てみたら山沢さん。
「あら」
「先生…」
がばっと抱きつかれれちゃった。
「ちょ、ちょっと、こら。重いわよ」
危なく押し倒されるところで姉さんが出てきた。
「あんたら何してるのよ」
「うぅ? あーこんにちは、斐さん」
「もうっ暑いから離しなさいよ」
「やだ」
「やだじゃないのっ、ほらっ」
唸りながら離れてくれた。
「この家やっぱ涼しい…」
「今日来ないんじゃなかったの?」
連れて居間に入る。
「昨日帰る前に晩飯のリクエストしたじゃないですか」
「…あらそうね」
お母さんが笑ってる。
「いつもより遅いから…」
「ああ、久々に15時間仕事したもんで。つっかれた…」
「家で寝てたらよかったのに」
「先生のご飯食べたいんですもん」
可愛いこと言うわよね。
「あ、でも来ないつもりだったからリクエストに沿えてないわよ」
「まじっすか」
「まぁ良いわ、なんか作ってあげる」
山沢さんを置いて台所へ。
「姉さん、冷蔵庫に牛肉あるの出してくれる?」
「はいはい、これでいい?」
なにしようかしら。
他のおかずの余ってるもの…大根があるわね。
ピリ辛でいためましょ。
銀杏に薄切りして一緒に炒めれば良いわ。
あとはピーマン1個あるからそれも。
「ねぇ絹?」
「ん?」
「山沢さん、いつもあんなことするの?」
「んー、普段はしないわねぇ。疲れてるとくっつきに来るわよ」
「子供みたいねえ」
「そういうと怒るのよ~」
「ますます子供みたいねぇ」
「私いないとお母さんにくっついてるわよ」
「そうなの? あらー」
「寝ててもしがみつかれるからお母さんは一緒に寝るの嫌なんですって」
「あんた大丈夫なの?」
「私? たまに暑い重いって蹴っ飛ばしてるらしいのよね」
山沢さんが畳の上で寝てたこともあるわね。
多分あれは私が追い出しちゃったんだと思う。
一応布団は譲ってくれてるらしくて。
「山沢さんは別に律でも良いって言うけど」
「さすがにそれは駄目でしょ」
「って律も言ってるわよ」
ご飯が出来たので姉さんに配膳を頼んでお父さんを呼びに行こうとしたら律が帰ってきた。
ついでにお父さんを呼んでもらう。
暫くして律が台所に顔を出した。
「お父さん部屋で食べるって。あ、今晩は」
「はいはい」
「久しぶりねぇ。どう?勉強頑張ってる?」
「えーと、はい」
「はい、これ持って行って」
「うん」
食卓も整ったみたいだしお櫃を持って私たちも。
律が戻ってきて食事。
山沢さんにだけお肉のお皿を。
「あれ、今日精進じゃないの?」
「山沢さんは別なの」
「ほら、まだうちに嫁に入ったわけじゃないからね」
「精進も悪くはないんですが…」
「来年はそうしましょ」
山沢さんがお肉のお皿を平らげたので積極的に野菜を食べさせる。
ご飯のとき幸せそうな顔をするから何か嬉しくなっちゃう。
「こういうの食べたらお盆って感じするわ~」
「そうだねぇ」
「今日はあんた家のほうは良いの?」
「うん、旦那は出張だし晶は合コンらしいから」
「良い人見つかると良いのにねぇ」
「そうねぇ」
「またお見合いの口が来たら言うよ」
「そうしてやって」
「おかわり? はいはい」
「よく食べるわねぇ、うちは晶だけだからこういうの見るの久しぶりだわ」
「みんな小さい頃は食卓は大変だったものねえ」
「あー男の子3人ですか、それは大変そうですね」
「大変だったわよ」
「でもちゃんと絹の分は取らないのよね、皆」
「甘やかされてますね」
「末っ子はそうなるわよね。女の子だし」
「よく環がおこってたよ」
あはは、と笑いあってる間におかずもご飯もなくなった。
ごちそうさまをして洗い物に立つ。
姉さんと二人で片付けて居間に戻る。
山沢さんがいないわね。
「眠そうだから寝るように言ったよ」
「あら」
「ご飯だけ食べにきたのかしら」
「そうなんじゃない?」
姉さんは結局うちに泊まることになった。
山沢さん、どうしよう。
しないでいてくれるかしら。
心配になりつつもお風呂に入って戸締りし、寝間に入って。
気持ち良さそうに寝てるわね。
そっと横にもぐりこむとふわっと腕がかぶってくる。
起きた? 違うみたい。寝息が聞こえてる。
心地よさげな寝息に引き込まれて良く寝て朝になると山沢さんはいなかった。
夜中の間にお仕事に行ったみたいだわ。
何もしなかったのねぇ。
お化粧をするのに鏡の前に行って気づいた。
キスマーク…。
着物を着たら見えないところに。
恥ずかしいわね。
見られないようにしないと。
身づくろいをして台所へ。
朝ご飯を作ってみんなと食べる。
「あれ、山沢さんは?」
「お仕事行ったみたいよ」
「あ、仕事なんだ?」
「そう」
姉さんたちとおしゃべりしてたら晶ちゃんが司ちゃんと来た。
「途中で晶ちゃん拾ってきたよー」
「あら覚は?」
「代理ー」
「まったくあの子は」
「兄さんはいつもそうよね」
お墓参りもしてお昼を作っていると山沢さんが来た。
「あら? 来たの?」
「うん、あっちいるから」
「わかったけど…お昼は?」
「いらない。寝てるから暇になったら来て」
「はいはい」
山沢さんを送り出して、お昼を食べる。

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