翌朝。
朝食をいただいていると律君が帰ってきた。
昨日お友達がべろべろに酔って介抱してたら終電を逃したらしい。
合コンで男友達にお持ち帰りされてどうする。
一緒に朝飯を食って、そのまま寝てくる、と部屋に戻ってしまった。
絹先生も眠そうだ。寝てきたら?という勧めに従って部屋に戻られる。
八重子先生と二人きりだ。
「……あんた、する方なんだって?」
へっ?何を?
「されるのは苦手なのかい?」
「えーと?何をでしょう」
「あぁ。絹とするときの話だよ」
「絹先生から聞かれたんですか?参ったな」
そんなことを親に話さなくてもいいのに…。
「んー…絹先生にはされたくないというかどう言ったらいいんでしょうか。
他の人やそれこそ男となら受けるほうは可能ですが」
「複雑なもんだねえ。というか男とできるんだね、あんた」
「可能か可能じゃないかという意味ではですよ」
やりたくはない。
「たとえば私があんたにする、とかだったら出来るのかい?」
「できるんじゃないでしょうかねえ」
「でも絹からはされたくないと」
そういうことですな。
八重子先生はよくわからないというような顔をしている。
さて、そろそろ掃除をしよう。
風が結構ある中、庭を掃除する。枯葉多いな。
庭掃除を終えて戻る。
お昼ご飯の用意をそろそろしないと。
絹先生は寝てるから八重子先生と作る。
主婦って大変だよなあ、毎食違うもの作るんだから。
俺なんか…。
と思ってたら八重子先生も自分だけならあるもの食べて済ますそうだ。
孝弘さんの分があるから作るらしい。
そんなもんか。
しかし毎回炊くご飯の量がすごい。エンゲル係数すごいんだろうな。
お昼の支度も出来たので絹先生を呼びに行く。
ぼんやりしているのでキスしてみた。
…駄目だ、ヤりたくなる。慌てて離れた。
孝弘さんと律君も呼んで昼飯。
団欒。いいね。
お昼を食べ終わり片付けていると八重子先生にお客様だ。
絹先生はお茶を出して戻ってこない。
私は部屋に戻って縫い物の残りを少しやることにした。
しばらくして絹先生が来た。
ほっといてごめんなさいね、と言うが客じゃなし、別にいい。
と言うと拗ねてると思ったのか身を寄せてくれた。
針などを除けて、先生を引き寄せる。
可愛くて。したくなって困る。
中学生かっ。
キスをしたいが、したら止まりそうにない。
そう思っているのに先生からキスをしてきた。
たまにイタズラしたくなるようだ。
「いけません、今日はしませんよ」
律君もお客様も居るのに。
でも離れるのは嫌だな。
人が来ない間は抱きしめておきたい。
ぬくもりが手放し難い。
1時間くらいそうしていただろうか、八重子先生の呼ぶ声で我に帰った。
絹先生が慌てて離れる。
部屋を出て呼び声に答えると、律君と八重子先生は出かけるとのこと。
帰りは夜なので待たなくて良いとのことだ。
お見送りをして絹先生と居間に戻る。
普段ならなんという好機!だがそうもいかない。
というかむしろしてはいけない理由が一つだけというのは却ってきついかもしれない。
参ったな。
「今日は早く帰ろうかと思うのですが…」
「…アレでできないから帰るの?」
ああ、むっとしてる。
どうしよう。
いい事思いついた。
「そうだ、お稽古つけてもらえませんか?」
これなら時間潰せて更に一緒に居れてしたいしたい思わなくて済む!
ため息一つ落とされて、お稽古つけてあげると仰っていただいた。
水屋の用意をして、お稽古をお願いし行之行を3度ほどやると良い時間になった。
そして水屋を片付け晩御飯の支度を手伝い、名残を惜しみつつ辞去した。