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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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先生もお疲れだが俺もそれなりに疲れている。
夏までに退院して欲しいものだ。
数日後、大型店に連れ出していろいろ買物していると先生が何かに目をとめた。
「どうしました」
「あっ、なんでもないわ」
見てたのは……首輪?
「いま犬は飼えませんよ? 手が掛かりすぎる」
「そ、そうよね、ええ、飼えないわよ」
あれ、ちょっと頬が赤い。
先生はすぐにその場を離れて他の消耗品を籠に入れはじめた。
車に戻ってから聞き出す。
「先生。あなたまた私の雑誌読んだでしょう」
「う、わかっちゃった?」
「今回はなんですか、首輪されたいんですか? 暇になったらつけてあげますよ」
「そうじゃないのそうじゃないの。つけないで頂戴っ」
きゃあきゃあと騒いでいる。
「いやぁつけてるところも見たいね。後で首のサイズ測ろうか」
「やだ、もうっ。忘れて頂戴よ」
たまにはこういう会話も楽しい。
帰宅して、夜。
布団の上で座ったまま抱き寄せる。
「本当はねぇ。夜桜にあなたを縛り付けて。ほろほろと散り行く花を楽しみたい」
想像したらしくほんのりと顔を赤らめている。
「だめ、そんなの…」
久しぶりに抱きたくなって少し言葉で弄る。
ゆっくりと先生のおっぱいを揉みつつ。
久々の肌を楽しむ。
「ねぇ、じらさないで…」
珍しくねだってきたので横たえて裾を割った。
「随分濡れてますね」
「やだわ、恥ずかしい…久しぶりだもの…」
「可愛いな」
久しぶりに肩を噛まれ、背に爪痕を残されるほどで。
先生もそれなりに俺を欲していたのかもしれない。
ただ疲れと眠気が勝っていただけで。
翌朝、先生は朝ご飯に間に合わなかった。
溜息をつきつつ遅めの朝ご飯を食べられてからお見舞いに行く。
リハビリは順調なようでそろそろ退院したいけど、と仰る。
が、お医者様がもうちょっとと言うからと八重子先生も我慢されてるようだ。
「まだ床からの立ち上がりが不安定でして。
 それが確実に出来るようになれば帰って構いませんよ」
どうやら早期退院させて、転倒骨折で再入院がいやなんだそうだ。
俺達にしても早く帰ってきては欲しいものの、転倒事故は困る。
先生は八重子先生の愚痴を聞いては宥めている。
そのストレスは車の中で俺に発散だ。
別に良いけどね。
たまには半日くらい家を空けても良いんじゃない? 俺の為に。
そうは思うが要求されるのもストレスになるだろうし諦めた。
帰宅して食事の支度をしていると雨が降ってきて。
桜が散ってしまう。惜しいな。
「明日、庭掃除が大変ねえ」
「確かに」
情緒と言うのは余裕あってのものだな。
ご飯を食べて後片付けをして帰り支度をする。
「わ、結構降ってますね」
「車で来てるのよね、気をつけて帰って頂戴よ」
「帰るの面倒になっちゃったな」
「お仕事でしょ?」
「休みたいなあ」
「私だって…休んだら? って言いたいわよ。でも駄目」
本当に気をつけてね、と送り出されて渋々帰宅する。
雨の夜の運転は好きじゃない。
それも会いに行くんじゃなく帰るんだから億劫だ。
翌日も降り続き、折角の桜のシーズンなのに花見も出来やしない。
そんなわけで仕事も暇だ。
止んで欲しいなぁ、花見したい。
先生に余裕がないから無理かもしれないけど。
いっそ八重子先生を巻き込めば出来るかな。
当日でも外出許可はもらえるだろう。
仕事が終わり、先生のお宅へ。
お稽古しておられる間に家事を済ます。
最後の生徒さんが帰られたので水屋へ入った。
「久さん、ちょっとこっちへいらっしゃいな」
「はい?」
「お稽古つけてあげるわ。最近出来てなかったでしょう?」
「いいんですか?」
「台子は出してないから荘物か何か…そうね、茶筌飾りはどう?」
「支度してきます」
手早く用意をして、お稽古のお願いをして見ていただく。
少し手直しをされはしたものの全体的には可の評価。
「お稽古してなかった割には良かったわ」
「ありがとうございます」
「でもこのままじゃ駄目ねぇ…。お稽古の日程考え直さないと」
「そうですねぇ。律君がお嫁さん貰ったら別ですが」
「まだ早いわよ」
「そうか律君が稼ぐか…無理か、文系じゃ」
「今って大卒でも就職できないのよねぇ」
ほぅ、と溜息をついている。
先生も心配なようだ。
「ところで。散らないうちに花見しませんか」
「あら、いいわね」
「八重子先生をお誘いしてどこか行きましょうよ」
「お母さんも?」
「そのほうが先生は気が楽でしょう?」
「そうねぇ」
自分だけ楽しんで、なんて思ったりするだろうし。
片付け終えたらおかずを温め、ご飯だ。
4人で夕飯を食べる。
先生がもはや眠そうだ。
「もう寝たら?」
「そうするわ、悪いけど後お願いね」
ご飯を半分ほど残して部屋に去って行かれた。
やっぱり一昨日の疲れが尾を引いているようだ。
暫くは無理だな、これは。
先生の残ったご飯は孝弘さんが食べて始末がついた。
「さてと。洗い物をしたら私も帰るから。戸締りと火の始末はよろしく頼むよ」
「あ、はい。じゃお風呂入ってきます」
「うん」
台所を片付けて、一応茶室の炭を確かめる。
よし、問題はないね。
帰る前にちょっと先生の寝顔見てくるか。
そろりとお部屋に入って眺める。
額に縦皺つけてなにかいやな夢でも見ているのだろうか。
頭をなでているうちに穏やかな顔になってきた。
可愛いなぁ。
仕事がなければずっとこうしていたいがそうも行かない。
ある程度で諦めて部屋を後にした。
帰宅して、暗くて片付いてない自室。寂しいなぁ。
ベッドに潜り込み、溜息つきつつ寝た。

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