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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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次の日、仕事が終わってから先生のお宅へ。
挨拶をすると少し照れくさい、と言った表情だ。
いつものように家事をして合間合間にお稽古の様子を伺う。
やはり稽古中は落ち着いて指導されているようだ。
買物へ行って夕飯の支度をする。
もうそろそろご飯が炊けるという頃生徒さん方が帰られた。
茶室へ入って片付けを手伝う。
「今日はなに作ってくれたの?」
「サワラの柚庵と菜の花のおひたしと、あとレンコンの金平。モズク好きですか?」
「もずく? 嫌いじゃないわ」
「それじゃそれもつけましょう。風呂は掃除しておきました」
「ありがと。お茶、飲みたい?」
「飲みたいです」
「薄?濃?」
「どちらでも」
黒楽を先生が取って点ててくれた。たっぷりと濃茶を練って。
「おいしいなぁ…」
俺がもうちょっと欲しい、と思ったのを先生が察してもう一服点ててくれた。
「眠れなくなっても知らないわよ?」
「あぁ、帰るときに安全運転できますね」
「……そうね」
「どうしました?」
「帰っちゃうんだったわね…」
「今日、平日なの忘れてましたか」
あ、顔が赤くなった。
うっかり屋さんめ。
「泊まるのは明日ですよ、明日。寂しい?」
「寂しいわよ。お父さんもいないもの」
「律君はいるでしょ」
「いるわ、でもねぇ…」
「ずっと4人だったから?」
「わかってるなら…ううん、だめね。お仕事だものね」
「俺も一緒に居たいんだけど」
「わがまま過ぎるわよね、ごめんなさい」
「いや、可愛いからいい。それよりGW、俺も3連休なんだけど」
「あ、お稽古は3日から10日までお休みよ」
「了解、じゃ週前半になるね、遊べるの」
「そうね」
暫くGWの予定など話して片づけを終わり、台所へ。
丁度炊けたところだ。
「ただいまー」
ナイスタイミングで律君も帰ってきた。
「手を洗ってらっしゃい、ご飯できてるわよ」
「はーい」
律君がいると一気にお母さんの顔になるな。
食卓に並べてご飯をよそいお味噌汁をつける。
「おいしそうだね、いただきます」
「いただきます」
「はい、どうぞ」
食べてる途中先生が俺のお茶を急いで飲んだ。
「どうしました?」
「鷹の爪噛んじゃったのよ」
「それは災難、熱いお茶じゃ辛いですよね」
空になった湯飲みに注いでまた冷めるのを待つ。
律君はそれを見て鷹の爪をよけて食べている。
「ねぇ、お父さんからいつ帰ってくるとか聞いてないの?」
「うーん。聞いてないけど大丈夫だと思うよ」
「そう…」
しょげているので可哀想になる。
どうしても空気が重くなってしまうなあ。
「きっと孝弘さんの事だからひょっこり何事もなかったかのように戻ってきますよ」
「うん、多分」
「喧嘩したわけじゃないんでしょう?」
「…んー、そうなんだけど。ちょっと怒っちゃったのよね、その前に」
「なにに?」
「ご飯前にお櫃の中身食べられちゃったのよ。時間がないのにって」
「あー…なるほど。でもそれが理由なら二日くらいで戻ってきてるんじゃないですかね」
「大丈夫だって、お母さんは心配しすぎだよ」
「そう?」
「疲れてるんですよ、ほら、さっさと飯食ってゆっくり寝ちゃいましょう」
「そうしたら?」
「なんだったらマッサージもしますよ?」
「今日はいいわよ」
あまり食欲のない先生もなんとか食べ終えて、風呂へ。
「洗ってあげますよ」
「山沢さんって本当にお母さんに甘いよね」
「そりゃあね」
にっと笑って先生を風呂に入れる。
肩が凝っているようだ。
洗うついでにゆっくりとほぐしすと先生はうっとりとしている。
「疲れが取れるわねえ」
「また温泉行きたいですね」
「そうね、お母さんが帰ってきてからね」
「沢山なかせてあげる」
「ば、ばか…」
「可愛いな、好きだよ」
「もぅ」
恥ずかしがっているが本当に可愛いんだから仕方ない。
のぼせないうちに風呂から出て律君が入った。
「アイス食べたいわ~」
「はいはい、バニラがいい?」
「買ってきてくれるの?」
「俺も食いたいから」
「じゃ律の分もお願いね」
近所のコンビニへちょいと行って、いくつか買って帰った。
「はい、どっちがいいですか?」
ソフトとカップアイスを出す。
先生はソフトを取った。律君はチョコ。
俺は抹茶。うまい。
「辻利?」
「いぇーす」
「明日買ってきて」
「なんだ、食います?」
「食べかけはいらないわよ」
「俺ちょっと先生のそれ食べたいなあ」
ひょいと一匙、俺の口へ入れてくれた。
「うん、あっさりしててうまい。あー、俺は明日はシャーベットにしよう」
くすくす笑っている。
「明日寒かったらどうするの」
「そりゃあ温かいココアでも作りますよ」
食べ終わって先生があくびをしている。
「もう寝ますか?」
「あなた帰るんだったわね。見送るわ」
「律君、先生の布団敷いといて」
「あ、はい。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
羽織を着て鞄を持って玄関へ。
「じゃあまた明日」
「待ってるわね」
「おやすみなさい」
「おやすみ。気をつけて」
別れて帰宅した。

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