朝になって色々と支度をして。
結構大変だ。流石に一人で全部することは滅多になかったから。
炭も今一だが仕方ない。
朝食時、律君が驚いていたので夜中に戻ってきたことを話す。
ちょっと不審そうだ。
しょうがないじゃないか、俺は連絡ついて休めたけど先生はかわりがいないんだから。
朝イチの生徒さんが来る前に様子を見に行って、それからお稽古に入る。
先生は疲労がたまってお休み、と言うことにした。
お昼前、生徒さん達が帰られてもう一度様子を見に行く。
障子を空けたら先生が這っていた。
「…どうしました」
「あ。いたの…お手洗い、お願い」
「なるほど」
ひょいっと担ぎ上げてトイレへ連れて行く。
さっき目が覚めて尿意を覚えたものの、立てなくて這っていこうとしていたらしい。
おまるでも用意しようかな。今度から。
流石にそれは怒られてしまった。
お腹はすいてない、と言うので空いた時に食べられるようパンを枕元に用意して。
俺は朝の味噌汁で汁掛け飯でかっ込み、昼からのお稽古へ。
途中一度見に行ってトイレに連れて行き、お稽古が終った夕方。
やっと先生が居間へ出てきた。
「大丈夫ですか?」
「ちょっとまだ力はいらないけど…あなたねえ…」
「すいません」
「まぁ、いいわ。それでお夕飯どうするの?」
「いまから買物行くつもりです」
「じゃあ…」
春キャベツにアスパラ、新玉葱等々時期の野菜を頼まれた。豚肉と。
炒め物かな。
買物して帰ってくると先生がなにを買ってきたか確認、やはり炒め物だ。
副菜を指示して先生は居間へ、俺は台所。
献立を考える能力はやはり先生に劣る。
先生は主婦している年月が違うというが…。
作り終えて食卓へ持って出た。
「律、まだかしら」
先生のお腹がなっている。
「先食べて良いですよ」
「もうちょっと待つわ…」
「食べなさい。昨日の晩も今朝も食ってないだろ」
「お昼食べたわよ」
「パンだけだろ? 食え。冷めたらまずくなる」
ご飯とお味噌汁を渡して食べさせる。
「なんだか変な気分だわ」
「ん?」
「先に食べることって普段ないじゃない?」
あぁそうか、確かにいつもなら八重子先生か孝弘さんか律君か、揃って食うよな。
ちょっと頭をなでてみた。
「食べにくいわよ…」
照れてる照れてる、可愛いな。
そっと頬に手をやってこっちに向けた。
先生が目を瞑る。
キスしようと顔を近づけた。
「ただいまー」
うぉっと!
慌てて先生が離れて、湯飲みをひっくり返した。
「あっ」
「うわっ」
慌てて手ぬぐいで拭いてそれから先生が台布巾で拭いて。
「どうしたの?」
「お、おかえり、ちょっとね」
「袖で湯のみひっくり返しちゃってね」
「珍しいねー」
「そうだね、手を洗ってらっしゃい。ご飯食べよう」
「はい」
「ほら、先生。布巾下さい。洗ってくるから」
はい、と渡されて台所へ。
ぬるくて助かったな。
俺と律君の味噌汁を温めて出す。
先生は食卓の上を整理してごはんをよそってくれている。
「さてと、いただこうか」
「いただきます」
少なめに作ったはずだけどやっぱり残ってしまった。
「お弁当にするわね」
「はい。あ、風呂洗ってない。洗ってきます」
「シャワーで良いわよ、暖かいし」
「律君はそれで良い?」
「あっはい」
先に勧めて俺は洗い物。先生は茶室へ行った。
一応のため確認しに行ったのだろう。
洗い物がすんでも戻ってこないので様子を見に行くとぼんやりと座って外を見ている。
「どうしたの?」
「ん、ちょっと…」
「春宵一刻値千金。いい夜だね」
「そうね…」
「飲む?」
「いただこうかしら」
台所から徳利と猪口を持ってきた。
一口、二口。
「ねぇ、あなた朝からすべて用意したの初めてだったわよね。どうだったかしら」
「大変でした」
「でしょ? わかったら次からあんなのダメよ」
「はい、すいません」
だけどなぁしたいときがあるんだよな。
「それと…お母さん退院したらお部屋掃除してあげるわね」
「あー。見ちゃったんですね」
「見ちゃったのよ」
くすくす笑っている。
「じゃあお願いします」
「お願いされました」
先生が俺にもたれて外を見ている。
暫くゆったりとしていると律君がお風呂出たよ、と声を掛けてきた。
危ねえ。胸を触ってなくて正解。
「あなた先入りなさい。明日お仕事でしょ」
「はい、じゃすみませんがお先に」
徳利は私が片付けるから、と追い払われた。
シャワーを浴びてすっきりして出ると先生はまだお猪口片手に茶室にいた。
「出ましたよ?」
「あら、もう出たの? ちゃんと洗った?」
俺の頭を掴んで匂いをかいでいる。
「匂がなくても」
「におがないってなぁに?」
「へ? におぐがわからない? 嗅ぐことですけど」
「初めて聞くわね」
「えっ、言わないんですか? マジで?」
「言わないし聞かないわよ」
「え~」
「方…なんでもないわ、お風呂入ってくるわね」
「はい、いってらっしゃい」
多分方言って言おうとしたんだな。そんで俺が気を悪くすると考えたんだろう。
そそくさと風呂へ逃げていった。
やれやれ、と徳利に残った酒を飲み干して台所へ。
洗って片付けて。
居間でテレビを見て先生が出るのを待つ。
暫くすると先生が戻ってきて俺の頭を一発叩いた。
「ちょ、なんですか」
赤面して顔を背けている。
「あと……」
微かな声でそう言った。
なるほどね、昨日強くしてたから噛んだ痕か吸った痕か掴んだ痕があったと。
思い出して恥ずかしくなっちゃってるのかね、これは。
「昨日は楽しかったなぁ。またしたいな」
更に一発どつかれてしまった。
「叩かんでくださいよ」
「だって…」
気配を探って律君が近くにいないことを確認する。
先生の頤に手を掛けてキスをし、にっと笑うと先生は下向いてしまった。
「かわいいね」
「もう…。帰りなさいよ。ばか…」
そっと胸に指を這わす。
「だめよ…、こら、こんなところで」
「静かに。聞こえますよ?」
「だったら止めてちょうだい、ね、お願い、よして」
湿った肌を堪能し、乳首を軽くしごいて立たせた。
「じゃ、そろそろ俺は帰りますね」
「えっ」
「また明日」
「そんな」
「続き、して欲しいのかな?」
「あっ、その、ううん、しないで、下さい」
胸元をぎゅっと押さえ堪えてる風情が凄く色っぽくて。
「あさって、またしましょうね」
先生は頬を染めたまま、こくりと頷いた。
玄関まで見送ってくれて別れて今日は電車で帰宅した。
明日は電車でこっちへ来なくては。