忍者ブログ
百鬼夜行抄 二次創作

let

伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

69

もう起きる時間だ。
よく寝ている先生を置いて仕事に行くのがつらい。
ましてや今日はお帰しせねばならん日だ。
布団から渋々出ると先生も起きてしまった。
「もうそんな時間?」
「あなたはまだ寝ていて構いません、と言うか寝ててください」
まだ普通の人が起きる時間じゃないし寝不足怖い。
部屋に残して洗面・着替えなどをして書置きを作る。
9時半までに家を出たほうがいいとか、お昼は時間ないだろうから作らなくてもいいとか。
鍵と電車賃も忘れずに。
さて、出勤だ。
ジャンパーを羽織り、靴を履く。
「ねえ、お見送り、させて?」
先生が起きてきてくれた。
「駄目ですよ、行きたくなくなるじゃないですか。離れたくないのに」
寝巻きの先生の唇にキスをして。
「うー……」
後ろを向く。行かねば。
背中に温かみを感じる。
「気をつけて行ってきてね…うちで待ってるから」
「行ってきます」
時間がない。行こう。
玄関を出て、見送ってもらって嫌々出勤する。
出勤すると流石に週末でそれなりに忙しく、ふと気づけば8時48分。
先生は支度しているだろうか。一抹の不安。
電話をしてみる。出ない。もう帰ったのならいいが。
しばらくして先生が電話に出た。
「あぁ山沢さん?どうしたの?」
「よかった、起きてましたか。いや心配で」
「お風呂入ってたのよ、ごめんね、電話に中々でなくて」
「いや、それならいいんです。気をつけて帰ってくださいね」
電話を切る。風呂か。見たかったな。
その後も仕事をしばらくして時間になったので帰る。
食卓に軽い昼飯が。疲れていただろうに作ってくれたのか。
嬉しいなぁ。
手早く食べてシャワーを浴び着替える。
寝室に入ると…あれ、枕元においたはずの昨日の道具がない。
まぁいいか、時間がない。
お稽古の用意をして急いで家を出た。
電車を乗り継ぎ先生宅へ。

「八重子先生、こんちは、お邪魔します」
「ああ、いらっしゃい」
居間へ行くと絹先生が食事中だ。
八重子先生がお茶を入れてくださった。
「長らく絹先生をお借りしまして。ありがとうございました」
「楽しかったかい?」
「ええ、かなり」
絹先生が恥ずかしそうだ。
「今日はどなたでしたっけ。水屋の用意してきますが」
「ああ、安藤さんとあんただけだよ」
そんだけ?
「世間様は三連休だからね。みんな旅行だとさ。今日から律も旅行に出てるよ」
あーそうだった。妙に仕事が忙しいと思ったらそうか、そうだった。
「じゃええと安藤さんは…あ、炉?何します?」
「あんたらが居ない間に炉開きしちゃったからね、久しぶりだから平点前しとこうか」
「ああ、じゃ薄・濃い両方ですか? 炭は熾きてます?」
「下火はあるから炭手前からやってもらったらいいよ」
はいはい、じゃ用意を整えてきましょう。

安藤さんのお稽古も終わり、さてと水屋を片付けるか。
「あんたも稽古したらいい」
「え、まだ一ヶ月たってませんよ?」
「構わないよ。炉になったんだから気分を改めないとね」
ありがたくお稽古をつけてもらう。
私もまずは平点前。
流石にさっき見てたんだから迷いはしないがちょっとぎこちない。
「いつになっても炉・風炉が変わるときは難しいわよねえ」
それじゃいかんのもわかってるんだけどなあ。
まあ、間違いはないままお稽古は終わり、水屋を片付けてお開き。
「さて。お夕飯作るの手伝っとくれ」
お台所に行きまして、と。
お手伝いをしていくつかおかずを用意する。
孝弘さんを呼びに行って食卓について。
美味しくご飯をいただく。
うまいなあ、メシが美味いのって幸せだよなあ。
ごちそうさまをして、お茶をいただく。
孝弘さんは部屋に戻って行かれた。

拍手[1回]

PR