風呂に入って、さっと洗い、一緒に湯に浸かる。
「すみません、無茶、しました。嫌だって言ってたのに」
二人とも体は気持ちよくなれても心が傷つくんじゃ意味がない。
返事がいただけない。思わず顔を湯面につけてしまった。
1分ほどして髪を掴んで引き上げられた。
「窒息するわよ?」
少し荒い息をしていると頭を撫でられた。
「それ、私も嫌だけど山沢さんも嫌なのよね? だったら使わなくていいじゃないの…」
「うぅ…、あなたがあれが好いと言うなら、我慢するつもりでした。
その、なんというか私が一緒に好くなってるのがいいと言うか、と思ったので」
結局二人とも嫌だったわけだが。
「するなら…普通にしてもらうほうがいいわよ」
「そうさせてください」
「でも…山沢さんの気持ち良さそうな顔、初めて見たわ~」
「やめてくださいよ、もう」
げんなりして再度顔を湯につける。
死にたくなるくらい嫌なのにな。
ぷくぷくと空気の泡を立てていたらやっぱり引き上げられた。
「拗ねないの」
キスをされて。
うーん主導権とられっぱなしじゃないか。
「そろそろ上がらないとのぼせるわよ」
風呂から上がって、部屋に連れ込む。
懐に抱いて…ヤる気が起きない、駄目だ。
しばらくして先生が手水に行ってる間に八重子先生が帰ってきた。
着替えて居間に行く。
「お帰りなさい。ということで帰ります。すいません」
「どうしたんだい?」
「頭冷やしたいんで帰ります。お邪魔しました」
「またなにかあったのかい?」
「すみません、聞かんで下さい。失礼します」
逃げるように先生のお宅を出て電車に飛び乗った。
携帯の電源を切ろう…。
ああいう様を見られたこと、からかわれたことに耐え切れず、
吐き気を催し帰ってきてしまった。
寝室でこの状況に嫌気が差すやら腹立たしいやら。
鬱屈。