「山沢さんだっけ?」
「開さん? どうなさいました?」
「君、絹とそういう関係なんだよね?」
「……先生と生徒の関係」
「じゃないよね」
「お友達」
「でもないよね」
「…わかってていってるでしょう、それ」
「まぁね。絹からとは思えないけどどうしてかな?」
「言いません。呪われそう」
「呪われそうなことをしたのか…」
あ、失言。
「…君、男には興味ないの? 見られるの気にしてなかったけど」
「興味はありませんね。出来ないとかではないですよ。見られ慣れはまた別の話です」
「ふぅん、出来ないわけじゃないんだ?」
ずいっと開さんが近寄って肩をつかんできた。
「僕と、してみる?」
そういってキスされてしまった。
「別に構いませんが。今はいやですね」
「どうして?」
「明日から出張でしてね、疲れたくない」
「斬新な断り方だな、それ」
「そうですか?よくありそうな断りでしょう」
くくっと笑っていると、絹先生が来た。
「あら兄さん、来てたの」
「ちょっと蔵にね」
「おいしいお菓子いただいたの、食べない?」
「ああ、もうちょっとしたら行きます、開さんと話したいことがありまして」
「あらそう?じゃ先に食べるわよ?」
「ええ」
さて絹先生は戻った、開さんと二人だ。
「開さんが気づいてるのは知ってましたよ。
ただそれ、絹先生には言わないほうがいいかと思います」
「気づいてたんだ?」
「まあ一応見えますんで、それ」
「見えるの!?」
「孝弘さんのことも知ってますのでここまで大胆にやってるわけですが…。
さすがに律君にはご内密に願います」
「あ、ああ、律には、言っちゃ駄目だな、うん」
「ということでよろしく願います。では」
部屋を出て居間へ行く。
「あぁ山沢さん、呼んだのに悪いけど粒餡だったよ、お干菓子いるかい?」
「頂きます頂きます、落雁ですか?」
「鶴宿だとさ」
「へぇ。どなたか京都に行かれたんですかね。あそこの薯蕷うまいそうですよ」
「いやお店が日本橋に有るらしくてね」
「ということは京観世ですか、粒餡。
日本橋にあるんだったら今度行ってみます、柚餅好きなんですよね」
「求肥好きよねぇ山沢さん」
「昔羽二重餅が食べたくて自作しましたよ。ただ粉200gというレシピだったので」
「すごく沢山出来たんじゃない?」
「ええ、もうバット1個分…でも飽きませんでしたよ」