「結構酷い雨ですねえ」
お稽古の後、少し話していたら降りが強くなってきたようだ。
「そうねえ、音がすごくなってきたわねぇ」
携帯がなった。マナーモードにしているのになんだろう。
見てみると特別警戒とある。先生にお見せした。
そんなに酷いのか、表に出てみると土砂降りになっていた。
先生がテレビのチャンネルを変えて情報を集めている。
割と近い川が橋の上に川の水をかぶっている映像が出ている。
危険だ。
「山沢さん、泊まっていって?外は危ないと思うから」
まぁうちの家の辺りは川もないし低地でもない、頑張って帰らねばならないほどではない。
「そうさせていただきます、ちょっとこの雨では傘も役に立ちそうにないですし」
「悪いんだけど雨戸を立てるのを手伝ってもらえるかしら」
「当然です」
結構広いからな、この家。
あちこちの雨戸を閉め、戸締りを手伝う。
雨戸仙人は出てこなかったようだ(笑)
落ち着いたところでお茶を入れてくださった。
ぬるめでおいしい。
「山沢さん、猫舌でしょ?」
バレていたようだ。
「ねぇ、今日、何かあったの?私と目が合ったら視線を外したりしてたようだけど」
「うっ…その、実は昨日変な小説を読んでしまいまして。ちょっと思い出してしまったもので後ろ暗くなりまして…」
「どんな小説なの?」
あれは説明しにくい。見てもらうほうが早いか。
鞄からタブレットを取り出し、検索して昨日読んだ小説を表示する。
「これです。」
「今はこんなので読めるのねえ。ページはどうやってめくるの?」
山沢は先生の横に行き、手を添えてページを繰った。
読んでいくうち先生の耳が赤く染まりだした。
「なに、これ…こんな…」
恥ずかしくなってしまったらしい。
次のページを表示するのに手を添えたら、ビクッとされた。
「あの…まさか山沢さん、こういうの、趣味なの…?」
「ちょっとこの小説みたいなのは趣味じゃですねえ、冒涜してますよ。背徳は楽しいですが
冒涜はしたくないですね。
私としては…こっちの方が好みかな」
と、山沢は先生の首筋にキスをした。