(絹目線)
ええ?なんで降りるの?山沢さん!?
追いかけようにも電車は出発してしまった。
家に帰ったら電話してみなきゃ。
切符を見るとちゃんと最寄り駅まで買ってあった。
大人げ、なかったかしらと鬱々としていると乗換駅に着いた。
乗り換えて最寄り駅に向かう。
タクシーに乗って家まで帰るとお昼ご飯の匂いがする。
「ただいまぁ」
「あら、おかえり。大変だったね。着替えといで。あんたも食べるだろ?」
着替えて、お昼ご飯を済ませたら気が緩んで眠くなった。
「寝るなら部屋で寝といで」
居眠りしてたみたい。
「そうするわ…」
部屋に戻って寝て、起きたらもう夜になっていた。
そういえば山沢さんは…と思って居間に出て来て時計を見ると、
人の家に電話をしても良い時間とも思われず。
どうせ明日はお稽古日、来るわよね。
おなかがすいたので軽いものを食べて、もう一度寝なおした。
翌日のお稽古、山沢さんが来ていない。
疲れたのかしら、気まずいから?
次のお稽古も、その次のお稽古も来ない。
お母さんがお家に電話をした。
…この電話は現在使われておりません。
「どうしたんだろうねえ」
さようならって、もう来ないということだったのかしら…。
心配しながらテレビを見ていると…。
「……先ほど発見された自殺者は京都市右京区の山沢久さんの遺体と判明し、
現在遺書などの捜索に当たっています」
「ええっ!山沢さん!? 嘘!」
「嘘だろ!?」
なんで…どうして…。
「飯島さーん、書留でーす」
玄関から郵便屋さんの声がする、慌てて出ると速達の手紙が一通。
差出人は…山沢久!
「お母さん!山沢さんから手紙!」
すぐに開いて読むと…。
「……これが届く頃に私はいないことでしょう。
恐らくは原因などの捜査でこちらにも問い合わせが来るかと思います。
もし、私の体面を慮ってくださるのであれば、
"違法物品の売買に関して5千万の損失を受け、それに関する金策ができなかった"
警察にはその程度のことを伝聞としてお話いただければ済むと思います。
飯島先生にはご迷惑をおかけして申し訳ありません」
などと書いてあった。
「絹、あんたあちらにいるときにそんな話とか聞いてたかい?」
「そんな…してなかったわ、そんな話…」
私が拒絶したから?そうなの…?
受け入れたら、良かったというの……?
Fin