明日は初釜か。
先生たちの行かれる家元初釜は17日あたりだろうか。
煙草が吸いたくなって、煙草を置いてきたことを思い出す。
とりあえず夕飯の用意をするか。
…何食おう。
コンビニ行くか。
近くのコンビニでから揚げ弁当を買ってついでにバージニアの小さい箱を買う。
1本か2本しかどうせ吸わないからこれがいい。
水色の箱。
帰宅して、吸いつつ食う。
あー、たしかに女が好きそう。この煙草。
明日会社においてこよう。誰か吸ってくれるに違いない。うん。好かん。
眠くなったので寝てしまえ。
翌朝、出勤。
社員もお客もまったく仕事をする気と言うものもなく。
ただ初釜に噛んでいる料理屋のみ忙しそうにしている。
普段どおりに仕事を終えて、シャワーを浴びる。
着替えて先生のお宅へ。
到着。
荷物を置き直接水屋に入る。
先生の指示に従い動き、席入りの用意を手伝った。
朝の水屋の方々は凄く大変だろうといつも思う。
ベテランの方が多く、教えていただくことが沢山ある。
水屋見舞いに、と持ってきた鉄火巻を置いておく。
これはいつの間にか毎年消えてしまう。
誰が食べてるかは知らない。
しばらくして濃茶の点て出しをするが、私は茶碗に抹茶を仕込む係り。
4人分ずつ、掬い入れ隣の方がお湯を入れ、各人練る。
その間に後炭の用意を整え、先生、平田さんと確認する。
飲み終わられたお茶碗を回収し、後炭。
水屋ではお干菓子や薄茶の用意に取り掛かる。
今年のお干菓子も可愛らしくほほえましい。
干菓子が回される間に茶碗に薄茶の分量を点々と仕込む。
濃茶と違ってこれは人数分茶碗があるが、うち数碗はお点前される方が点てられる。
お薄を立てて、順次出して、返ってくる茶碗を洗って拭いて洗って拭いて。
あ、誰だ油性の口紅。
後回しね、これ。
拝見がそろそろ終りそうだ。
先生のご挨拶があり、生徒さんが帰って行かれた。
水屋に先生方が戻ってこられて。
「お疲れ様でしたね、みなさんこちらへ」
と水屋のものを茶室に。
先生から濃茶を一服点てていただいた。
美味しいなぁ。
その後、先生からのお礼とお干菓子を頂き散会。
私は居残って後始末を手伝う。
「山沢さん。お薄点ててくれないー?」
「いいですよ、八重子先生はどうです?」
「ああ、私も貰おうかね」
水屋で炉から下ろして来た釜からお湯を取って点てる。
自分の分もで3つ。
「あぁおいしいわねぇ」
お釜のお湯を抜いて、炉にかけて乾かし、その間に茶碗を濯ぐ。
先生にこの口紅べったりはどうするかと聞けばリムーバーで落としているとのこと。
いつもこうだからこの方のはそういう扱いをするお茶碗らしい。
ふき取って普通にスポンジで中性洗剤で洗ってよい茶碗だそうだ。
なるほど、ちゃんと読んでるんだ。
茶室も片付けて茶碗も仕舞い、居間で落ち着く。
先生もすっかりお疲れだ。
余った花びら餅をいただいているうち、肩に重みが。
昨日は寝られなかったのかな。
八重子先生もうとうとしている。
「お二人とも、着替えて寝てこられたらどうです?晩飯は適当に俺やりますよ?」
はたと起きられて、そうする、と着物を脱いで。
「着物、衣桁にかけときますからもうそのままでどうぞ」
といえば二人ともに寝巻きに着替えて部屋へ戻られた。
着物や帯を掛けて紐類を片付けていると、来客。
玄関に行くと環さん。
「あら、山沢さん?お母さんは?」
「疲れて寝ておいでですよ」
「じゃあ絹」
「同じく寝ておいでです」
「お客さんほっといて…?」
「ははは、どうぞ」
居間にお通ししてお茶を出す。
まだちょっと残っているので片付けていると、胡乱な視線。
玄関のほうからただいまーと律君の声。
「あれ?おばさんきてたの?」
「今来たのよ。なんであの二人はお客さんほっといて寝てるの?」
「ああ、山沢さん?」
「こんばんは、律君。お疲れでね」
「二人とも昨日あまり寝れなかったって朝言ってたからそれでじゃないの?」
「だからってお客様ほっといて」
「山沢さんはいつもこんなカンジだよ、ご飯作ってくれたり」
「まぁまぁ、好きでやってるので気になさらず」
「で、おばあちゃんに何か用だったの?」
「そうだけど…二人とも今寝たところなの?」
「ええ、つい先ほど。お言付があるなら承りますが」
「…税金のことだから他人様に言付けするのもね。かといって律じゃわからないでしょ」
「あ~…それはたしかに」
「いいわ、日を改めるから」
「食事どうされます?今から作ろうと思ってますが」
「開の分作らなきゃいけないから帰るわよ」
「そうですか、お気をつけて」
送り出して、台所へ行く前に聞かねば。
「律君は食べるね? お父さんはどうか聞いてきてくれないかな」
「あ、はい」
さてと何作るべきか。
とりあえず鍋に昆布入れておこう。
棚の上で使われず袋に入ったままになっていた昆布だ。
先日使ったけどどうも10年は放置されてたらしい。
冷蔵庫と冷凍庫を確認。あ、味噌漬けが底の方にたまってた。
メインこいつだな、決定。
大根がある。風呂吹きにしてしまうか。
あ、エリンギがあるじゃないか。
ピーマンもある。
炒めてしまえ。
味噌汁味噌汁何の具材にしよう。
生麩は不評だったな。
あ、こないだのサトイモ残ってた。
こいつで作ろう。
「山沢さん、父も食べるといってます」
「ああ、律君。ありがとう。エリンギとかピーマンとかサトイモは嫌いかな?」
「いや嫌いじゃないです」
「はい、じゃ出来たら呼ぶから。そのときに先生方起きてるか見てきてくれるかな」
「あ、はい」
まずは冷蔵庫に赤味噌は…なし、ゆずもなし。ゴマはある。
ただのみそ餡とごまみそにするか。
米をかさねば。
とぎ汁で大根を炊くから。
7合をといで、炊飯器にセットする。
そして大根を輪切りにして皮をむいて面取り。
とぎ汁で強火にしてふつふつとしてきた頃、弱火にして放置。
その間にゴマ味噌を作る。
サトイモも湯がいて皮をとっておいた。
炒め物の準備をしておくだけして、味噌漬けを焼く。
弱火の遠火さえ守ればいいんだ。
大根がほぼ煮えたようなので火を止めて大根をさっと濯ぎ、
昆布を入れてた鍋に並べる。隙間にサトイモ。
弱火で30分くらいでいいだろう。
あ、白味噌がまだ有ったな。あれでも味噌餡作っておこう。
やはりてきぱきとは言い難く、試行錯誤しつつ晩御飯をこしらえた。
鍋から大根だけ取り出し、残るサトイモのところに味噌をとくと味噌汁になる。
火を止めていったん放置してご飯が炊けるのを待つ。
炊けたら炒め物して味噌汁を温めようか。
「山沢さん…?」
「あ、先生。起きたんですか?」
「うん。ご飯作ってるの?」
「丁度良かった、味噌汁、味見ていただけます?」
おてしょうに取って渡すともう少しお味噌を落とすようにと言われた。
少し足してOKが出る。
炒め物をお皿に盛り付けている間に律君を先生が呼び、
そのまま先生は八重子先生、律君は孝弘さんを呼びに行った。
配膳をしていると律君、孝弘さんが食卓についたが先生はひとりで戻ってきた。
「おばあちゃんもうちょっと寝てたいって言うのよ」
「あー、はい」
八重子先生の分を別皿にして冷蔵庫に仕舞うことにした。
ごはんをよそっていただいて、いただきます。
うん、ま、俺がつくるにしては薄味だ。
恐る恐る先生の様子を伺えば、まずくはないような様子。
律君は首を捻っている。
味噌汁を飲んだときに変な顔をした。
おかしかったかな、と一口飲む。普通だよな。
「味噌汁が甘い…」
「あ。そうかっ」
「白味噌入れたでしょ、山沢さん」
「入れました、つい癖で」
「お味噌汁も白味噌なの!?」
「いや、ほんのちょっと入れると美味しいからうちでは大抵入れてるんだよね」
「おかわり」
「はい」
孝弘さんは気にすることなく食べている。
「もしかしてこの大根のタレも白味噌とか?」
「そう、こっちが赤味噌、これがゴマ味噌、その白いのは白味噌」
「あ、結構美味しい」
「あらほんと」
律君が食べ終わって、自分でお茶を入れて飲んでいると八重子先生が起き出して来た。
冷蔵庫に入れてた分を温めなおし、味噌汁も温めて出す。
「あれ?お味噌汁が甘いねえ」
「山沢さんが白味噌入れたんですって」
「へえ、結構美味しいもんだね」
大根を食べて、うちの味じゃないなど聞いて。
結局なんだかんだすべてはけて洗いに立つ。
フライパンから鍋から何もかも纏めて洗って片付けて居間に戻る。
先生にお茶を入れて貰って、落ち着く。
ぬるめのお茶。
猫舌だから。
「山沢さんにはもうちょっと料理は教えなきゃだめだねぇ」
「ははは、お願いします」
「結構美味しかったじゃないの」
「うちの味じゃないからね」
「そりゃそうよ、まだ半年も一緒に作ってないのに」
「何かずっと前からいた気がしてたよ、まだ半年もたたないんだねえ」
遠慮がないからかなぁ…。
「さて、先に横にならせて貰うよ」
「もう寝るの?さっき起きたところじゃない」
「年々疲れるね、初釜は」
「そう?おやみなさい」
「おやすみなさい、八重子先生」
「おやすみ。あんたらも早く寝なさいよ」
八重子先生が居間から出て行って、絹先生と二人。
「…戸締りしてきます」
「あ…」
「なんです?」
「ん。私、火の始末見てくるからお願いね」
「はい」
玄関の戸締りや庭側の雨戸のしまりを確かめ、勝手口へ。
先生が炭火が消えているか確かめている。
横にかがみこみ、唇を奪った。
「だめ…」
押し戻される。
むっとしていると、ここじゃだめと言われた。
「律が来たら困るから…ね、お願い。手を離して頂戴」
ふぅ、と息をつき手を離して戸締りを確かめ、
火の始末をした先生を寝間に連れて行く。
布団を敷いてもらう間に寝巻きに着替えた。
腕を取りぐいっと引き寄せる。
「えっ? ど、どうしたの?」
むさぼるようにキスをする。
荒々しく乳をつかみ、揉んだ。
押し返される。
構わず弄ると頬に濡れた感触。
泣いたのか。
唇を外すとどうして、と聞かれる。
「嫌がったから」
と答えて黙っていると呆れ顔になった。
「本っ当に子供ね」
そう言われてぶすくれていると先生が寝巻きを脱ぎ捨てた。
「こっち来なさい」
布団の中にいざなわれる。
「落ち着いて。優しくできるでしょ? 焦らなくてもここにいるんだから」
髪をなでられて先生に抱かれるように先生を抱く。
気持ち良さそうな、幸せそうな顔を見て癒され、自分も気持ちよくなる。
まだ少し機嫌が良くないのをわかって居るのか先生から私を触れるのは控えめだ。
優しくしているのにも焦れて、荒くしそうになると封じるかのように噛まれる。
じっと見つめれば震えて怖がる。
組み敷くのをやめて、先生が上になるように体を入れ替えた。
今日はもう抱きたくない、そういう気になったからだ。
「もう寝たらいい。俺も寝ます」
先生は恐々としつつ、もっとしたいんじゃないの?と聞いてくる。
泣きたいですか、と問えば首を振る。
「じゃ寝なさい」
俺が一緒だと落ち着かないようなので布団に残し、部屋を出る。
中庭に下りて裏木戸をくぐり雑木林の中へ。
ここは絶対この家の人は来ないから。
暫くぼんやりしてると体が冷えてきた。
もうちょっとこうしていたいが仕方ない。
縁側に上がり雨戸を閉める。
うー、さぶい。
寝間に入ると先生に引き寄せられた。
「こんなに冷えて…」
「先に寝てたら良かったのに」
「お風呂、入りましょ」
「は?」
「さっきお湯張ったから一緒に、ね?」
手を引かれて風呂場へ。
「え、いや、なんで突然?」
「だって庭に出た気配がしたから。御風呂入らなきゃ風邪引いちゃうわよ?」
そこでそういう発想になるのが先生らしいというかなんと言うか。
脱衣所で寝巻きを脱いで風呂場に入る。温かい。
掛り湯をすると体が冷えていたことが実感できる。
先生が浴槽をまたいだときに白いものが見えた。
むっ、まだあったのか、白髪。今度切ってやろう…。
そう思いつつ、一緒に浴槽に入る。
ううーっ。気持ちいい。
思わずうなり声が漏れた。
先生がくすくす笑って、俺の頬をなでる。
されるがままに触れられていると私の肩に頭を乗せてきた。
胸を撫でられる。
渋い顔をしたのに気づいたようで、胸から私の腕へと撫でる場所を変えた。
暫くしてその手が止まり、首に生暖かい感触。
なんだ!と思えば寝ていた。
撫でる側が先に寝るとか、しかも風呂で。
体もそれなりに温まったので先生を起こして浴槽から出る。
先生の体を拭いて自分を拭いて、寝巻きを着せて自分も着る。
抱き上げて寝間に連れて行き布団に降ろした。
布団をかぶせれば5秒ももたずに寝息が聞こえる。
さて。
眺めていると落ち込んできた。
二階、確か布団あったな。
そっと部屋を出て二階に上がる。階下の温気でほのかに温かい。
布団を敷いて寝た。
朝の冷気で目が覚める。
時計を見ればそろそろ起きる時間だ。
寝間に戻る。まだ先生は寝ていた。
起こさぬよう着替えて台所へ。
とりあえず米だ。炊こう。
炊き始めた頃八重子先生が起きてきた。
シャケを焼いて味噌汁と納豆を出すことに決まって焼く。
すべて整い、皆を起こす。配膳して朝食をいただいた。
先生はまだおきてこられない。
少し迷ったが、用事が有ると言い、帰ることにした。
帰宅してすぐに布団に入る。
明日お稽古がなくて幸いだ。
来週までにはなんとか持ち直せるだろうけれど。
突撃が怖い…いや、まさか家元初釜の時期に突撃はないだろう、うん。
携帯が鳴る。取りたくない。暫く鳴って留守電に変わる。
やはり先生からだ。気がついたら電話して頂戴、と。
気がつかなかった。気がつかなかったよ。気がつくのはきっと日曜さ。
布団を引き被って寝る。
メール。先生から。
同じ文言。気がつかない。知らない。知らない。知らない。
携帯を寝室から投げ捨てて寝た。
むくり、と夜に起きる。
トイレへ行って気づいた。
なんだ、いらいらしたり落ち込む理由わかったぞ。
時計を見れば9時か、まだ電話していい時間だ。
携帯を拾い上げる。
あの後電話やメールはなかったようだ。
掛けると2コールで先生が出た。
「昨日はお疲れ様、あのね、明後日なんだけど…」
どうやら家元初釜はこちらの近くなのでうちで着替えてもいいかと言うことだ。
なるほど、うちから30分と言うところだが。
「八重子先生とお二人ですよね。もしかしたら俺、家にいないかもしれませんが。
鍵、お持ちでしたよね?」
「持ってるわ」
「じゃ俺がいなければそれで開けて和室使ってください」
「ありがとう。そうそう、今日環姉さんが来てね、怒られちゃったわよ」
「何をですか?」
「お客様居るのに二人とも寝てるとかご飯作らせるとかどうなってるのって」
「環さんから見たらそうもなりますよね」
「山沢さんのことつい身内のように扱ってしまうのよねぇ」
「まぁ一緒に居る時間結構長いですしね」
「昨日はご飯作ってくれてありがとう、って言ってなかったわね。ごめんね」
「いつも作っていただいてるんだから構いませんよ」
「ねえ…土曜日泊まっていいかしら」
「抱かれたいんですか」
「すぐにそういうこと言わないの」
「俺はあなたを沢山抱きたいと思ってますよ」
「…ばか」
「じゃ、明後日。会えるといいな、あなたの綺麗な姿を見たい」
くすくすと笑い声がする。
「お部屋、お借りするわね。よろしく」
「はい、では」
「ええ、またね」
電話が終って、空腹に気づく。
あ、昼食ってない。
コンビニへ行って弁当を買って戻る。
食って、テレビを見て、暫くして寝直した。
翌日、翌々日とぐったりしつつ仕事をし、家に戻ればすでに先生方が着替えていた。
「あら、お帰りなさい。お邪魔してます」
「こんにちは、山沢さん、お邪魔してるよ」
「ああ、もう来られてたんですか、こんにちは」
手を洗って着替えて和室を覗くとほぼ着付けを終られている。
うん、綺麗だ。
「どう?」
「綺麗です」
「さて、そろそろ行こうかねえ」
「タクシー呼びましょうか?」
「あ、呼んでくれるかい?」
電話を掛けて呼ぶ、到着予定時間を告げ、必ず間に合わせるようにと。
5分と経たずに来た。
「じゃ、行ってきます」
「お気をつけて」
さて。ちょっと寝よう。
外出する気は失せ、2時間ほど寝てお昼を食べた。
ゆっくりしていると電話。
お茶しない?と言うことで外出することに。
ええと、先生の格好に合いそうな着物…これか。
いそいそと出て待ち合わせ場所に行く。
少し待つと先生方。
「この子、うちの弟子で山沢というのよ、よろしくしてやって」
「あ、山沢です、よろしくお願いします」
「こちら準教授の畠中さんと山下さん」
「よろしくねー」
「あなたはお初釜行かないの?」
「はい。まだ早いかと思いまして」
「あら早くないわよー、引次いただいてるっていうじゃないの」
「来年は応募しなさいよー」
「先日欠席者の身代わりにされそうになりましたけどお断りしました」
「あら勿体無い」
「流石に京都の二日目の朝のお席に加わるのは怖かったものですから」
「…それは確かに怖いわね、直門かベテランの先生方ばかりよね」
「あとは大企業の社長や奥様ですし」
「行きたくないわね、それ」
「むしろ何も心得がないほうがいけそうです」
「そうよね」
なんて話をしつつお茶をしてケーキを食べて散会、先生方と帰宅した。
着物を脱ぐとシャワー借りていいかしら?と言うので貸した。
先日置いて行かれた湯文字を出す。
八重子先生は普段着に着替えて絹先生の着物も片付けている。
「あー、気持ちよかった」
と湯文字だけつけて和室に先生が戻ってきた。
「これ、絹、あんたそんな格好で」
「いいじゃない、女ばかりなんだし」
と手渡した浴衣を羽織る。
「疲れちゃったわー」
「緊張するからねえ仕方ないけど」
「山沢さん、お水ー」
「はいはい。八重子先生は要りますか?」
「私はいいよ」
先生にお水を渡すと一気に飲んだ。
いい飲みっぷり。って酒じゃないな。
少し落ち着いた後、ササッと普段の着物に着替えられた。
「お母さん、そろそろ帰りましょうか」
「そうね、お邪魔したわね」
「じゃ、またね」
「はい、お気をつけてお帰りくださいね」
先生方を見送って、ふうっと一息。
さてさて、結構に俺も疲れたぞ。
女の人たちと喋るのって疲れるな、しかも弟子の立場では。
何か腹に入れて寝よう。
…やはりコンビニへ買いに行って食って寝た。
普段の金曜日が終って、土曜日。
仕事を終えて帰ると、先生がいた。
いや来るとは言ってたけど朝からかっ。
お昼ご飯を作ってくれていた。
洗濯物、昨日のうちにしておいてよかった。
着替えて席に着くとお茶碗にご飯をよそってくれる。
ご飯をいただいてお茶を飲んで落ち着いてしまってつい床に転がった。
先生が笑ってる。
手招くと横に添ってくれた。
ゆっくりと頬を撫でたり、首をくすぐったり。
唇をなぞると軽くキスされた。
そのまま帯締めを解き、帯揚げと枕を外して帯を解く。
「するなら、脱ぐから待って…」
というので一旦手を離して先生を起こした。
「脱がしたいな…」
そういって身八つ口から中をまさぐる。
「んっ。だめ、自分で脱ぐから」
そういって胸を揉まれつつ、紐を外していく。
「これもエロくていいな…ほら、鏡、見て。見えるでしょう?」
「や、だ、見ない、意地悪言わないで」
「おとといは風呂上りに湯文字一枚が平気だったくせに」
「あれとこれとは…」
「違う?」
と耳を齧る。
びくんっとして、手が止まる。
「ほら、自分で脱がないなら脱がせちゃいますよ」
そういって剥ぎ取る。
湯文字一枚の白い肌に俺の無骨な指が這い回る。
くにくにと乳首をつまみ、捏ねるとかすかに喘ぎ声。
「もっと声上げていいんですよ? 誰にもはばかることはない」
もじ、と太腿をすり合わせている。
「それとも刺激が足りない?」
そう言って尻を弄る。
きゅっと尻が締まって、いい弾力だ。
「あの、ベッド、連れて行って」
「まだ大丈夫でしょ? まだ肝心なところは触ってないし」
「…意地悪」
「酷くて意地悪なのは知ってるでしょう?」
「知ってるわ」
「今日は優しくなんてしてあげないよ? いつもなら怖ければ帰れというけれど。
…今日は帰さない」
身が縮まる。
「優しくしなさい、なんて言わないように」
「言ったら、…どうなるの?」
「お仕置きかな。されたいなら言ってもいいですよ」
「お願いするのは、いいの?」
「構いませんよ、でも優しくするかどうかは別ですけどね」
湯文字の上から太腿をなぞって、太腿とのあわいのラインをくすぐる。
ビクビクと触れるたびに体が反応する。
「お願い、ベッドに」
確かに段々と体重が俺に乗ってきて、足に力が入らなさそうだ。
「あなたが逝ったらね」
湯文字を割って、太腿に触れる。
しっとりと汗ばんでいて熱い。
「湯文字、脱いで」
ここまで来ても最後の一枚、脱ぐのは恥ずかしそうだ。
取り去れば私の手が太腿の間に挟まれているのが目視できる。
「足を開きなさい」
じりじりと少しずつ開いていく。
「よく出来ました。ご褒美に気持ちよくしてあげます」
濡らした指で突起を擦り、まずはかるく逝かせる。
大きい声を出させて、足の震えが治まってからゆっくりと中を刺激する。
一度大きい声を出したから、喘ぎ声がしっかり出ている。
鏡が見えて、中に指が入って、出るのがよく見えて。
すっげーエロい。
先生は泣きそうな顔をして鏡越しに俺を見てる。
本気で足に力が入らなくなってきたらしく、足が震えている。
もうだめ、と呟いて崩れそうになるが俺の指で支える形になって、
奥を強く突いた形になった。
流石にその状態ではいられないので抱えあげてベッドに降ろすと涙目。
「痛かった?」
首を横に振る。
「あの格好が恥ずかしかったのかな?」
縦に振る。
「なのに、気持ちよかったんでしょ」
「言わないで」
「だめ、これからが本番だ。恥ずかしいからいや、なんていえない位してあげますよ」
「そんな…」
「気持ちよくなりたくて、来たんでしょ?」
「そんなこと…」
「性欲が有るのって悪いことなのかな。あって当然でしょう?」
突起を扱く。
「もっと気持ちいいなら気持ちいいと言ったらいい」
「いや…」
「あんまり素直にならないとどうなるかわかってますか?」
「え?」
「このままの格好で外歩かせたり、お尻の穴にバイブ突っ込んで四つんばいで歩け」
「それだけは勘弁してっ」
「なんていいますよ」
真っ青になってる。というか乾いてきた。
露出もいやか。そりゃそうか。
「もっと俺に身を任せてくれる気はないのかな? 痛いことはしてないでしょう?」
「だって恥ずかしくて…」
「恥ずかしいからってそう嫌がってばかりいないで下さいよ。それとも。
俺を受け入れる気はないんですか?」
「そういうわけじゃないの。そうじゃなくて、その、あの……怖いの」
「怖い?」
「気持ちいいって言うのが怖いの…。
夫もいるのにとか、そういう色々と越えちゃいけない線を越えるような」
「…何を今更なことを。そんな線とっくに越えてるじゃないですか」
「とっくにって…」
「あなた暫く家族だけでいたからそういう気分になったんでしょう。
また動けなくなるまでしてあげましょう。
そんな線、疾うに越えてるくらい思い出すんじゃないですか」
「そうなのかしら…?」
「新潟まで追いかけてきたり、抱いてってうちに来たこと忘れてませんよね?」
「あら…? そうね、そうだったわね」
まさか本当に忘れてたのか?
ったく。
ぽふっと先生の胸に顔を埋める。
「あんまり俺のすること、いやって言わんで下さい。他の人としなきゃいけなくなる」
「ごめんなさい、他の人となんてしないで…」
暫く無言で先生の体を撫でて、あちらこちらと触る。
ハァ、と先生の吐息が漏れ、肌が紅潮する。
「お願い、触って?」
と私の手を掴み先生の股間へ持っていく。
「言えるじゃないか」
先ほど乾いてしまっていたそこは沢山の蜜で溢れている。
中を弄る。
声が出て私にしがみついた。
「ほら、気持ち良いならいいといって」
「……い」
「い?」
「ごめんなさい、やっぱり言えない」
まぁ、今すぐは無理か。
「言える様になって」
「…努力するけど」
「今すぐとは言わないから。気持ち良いなら嫌がらないで?」
こくり、とうなづいた。
カリ、と乳首を引っかけば中が締まる。
少し落ち着いたため、ゆっくりとできるだけ普通に抱いた。
ちゃんと俺を求めてるのに、なぜそのことを認めたがらないんだろうな。
女心とはそういうものなのだろうか。
先生を上に乗せて寝転がる。
キスしてきた。
いたた、丁度胸に肘が。体重が乗って痛い。
ずらさせると胸が張ってるのに気づかれてしまった。
「あら?」
胸を揉まれる。
「触らない」
「え?マッサージした方が痛くなくなるわよ?」
「いや、でも」
「お乳が詰まらないようにってよく自分でしてたわよ。だから任せて」
「あー…乳腺マッサージ? あれ生理の胸の張りにも有効なんですか?」
「そうよ。あなたも覚えたら良いわよー」
乳房や脇などを触られる。
「くすぐったい、ってそこ痛いっ」
「痛いけどここはしっかりやっとくほうがいいのよ」
「ちょ!」
乳首を摘むな!何をするんだ!
「乳腺マッサージって言ってるでしょ。暴れないで」
「ん、ほんとにこんな」
「あなたはお乳が詰まってないから良いけど、詰まってたらすっごく痛いのよ。
千切れるくらい強くつままれるのよ。搾り出すんですって」
「それは痛そうな…」
「痛いわよー。ほら、触ってみて、そんなに今硬くないでしょ」
と、自分の胸を触らされた。おや確かにさっきまでとは違う。
なにか柔らかい。
「で、いつまで乳首触ってるんですか」
「感じる?」
「ええ。だけどそこまでにしなさい」
「だめ?」
「だめ。乳腺マッサージと違うほうに目的が行ってる様だから駄目。
ほら、手。離して」
「つまんないわ」
「俺を触るより気持ちイイことしてあげますから」
「あ、待って。お手洗い行きたいわ」
「はいはい。行ってらっしゃい」
トイレに行ったので起きて手を洗い、居間で脱ぎ散らかした着物を片付ける。
ふと思い立ち、納戸からペニバンを取った。
ブツは一番柔らかく小さいものを。エラストマーでぷにぷにだ。
一応コンドームとローションをつけ、ベッドに戻る。
「着物、片付けてくれたのね…っそれ」
「後半戦はこういうことで♪」
「…い」
「いやと言ったらだめって言いませんでしたかねー」
うっと声を詰まらせる。
キス。ディープキス。
腰のものが有る以外は普通に愛撫して行く。
指で中をほぐすようにして…ちゃんと濡れているか確かめたら挿入。
先っぽだけを入り口で暫く小刻みに。
先生が目をつぶり耐えているような顔をしている。
「こっち。見て」
目をあけた瞬間にすべてを入れる。
ああっと声がして先生は目を見開く。
暫く動かさず、キスをして、キスをして、キスをする。
ゆっくりと少し動かす。
中に意識が集中してしまうようで紛らわすように私にキスをしてくる。
「痛くないですか?」
「大丈夫…」
少しずつ少しずつ動かす量や早さを増して行くと喘ぎ声が少しでてきた。
足が俺の足に絡まる。
ちゃんと気持ちよくなってきて居るようだ。
腰の動きを早めたり、練るように動かせば声が大きくなったり、荒い息になったり。
「もうだめ、だめっ」
そう言ってどうやら逝った様だ。
け、結構疲れるな、これ。
息が切れたのでゆっくり動かしながら先生の首に頭を埋める。
「動かしたらまたよくなっちゃうわ…」
「痛くならないんだったらそれも良いんじゃないの?」
俺の腰が大丈夫な限りは何回でもできるぞ。
今度は乳首を弄りながら抽送する。
「慣れたらもうちょっと大きいのにしましょうね…物足りないでしょう?」
いまのは女の指2本程度だからなあ。
もう少し大きくしても俺の指3本よりは細い。
って聞こえてないな。
肩に先生の片足を担ぎ抽送していると、
「いや、こんな格好…」
と身をよじろうとする。
「両足担いだほうが良い?」
首を横に振る。目が潤んで可愛い。
「足下ろさせて、お願い」
ふっと笑って下ろして唇にキスを落とす。
「孝弘さんとはいつもこの体位だけだったんですか?」
こくり、とうなづく。
…ノーマルすぎるやろ、おい。
「じゃ、もっと色々教えてあげますよ」
頬を染めている。
「可愛いな。なんでそんなに可愛いんですか、あなた」
思わず勢いつけて腰を動かしてしまって、先生が喘ぐ。
それに煽られて激しくなってしまった。
先生は相変わらず感度良好ですぐに逝ってしまう。
痙攣が治まったところでぬるりと抜いてみればたっぷりと白いものがついている。
ハーハー、と先生の荒い息が聞こえる中、それを外し、ベッドの横に置いた。
先生に引き寄せられて抱きしめる。
背中や頭を撫でて、頑張ったことを褒めると嬉しそうだ。
先生が身じろぎするとブッという音がして凄く恥ずかしそうにしている。
「いまの、屁?」
「違うわよ!もう!」
「じゃ、こっちから?」
と指を膣に入れるとブウッと音がして、先生が泣きそうな顔になった。
「恥ずかしがらないで良いよ、これ、俺の所為だから」
「えっ?」
「あなたの中より細すぎるもので激しくしたから空気が入っただけ」
「そうなの?」
「ジャストサイズでもやりようによっては苦しくなるくらい入るそうですよ」
「あらぁ…」
「口を膨らませてブーっと鳴らすようなもので。だから気にしないで」
クーキュルル、と今度は腹が鳴る。
先生と笑って、晩御飯に何を食べよう?と言う話になった。
「食べた後またするなら軽いものの方がいいわ」
「どっちでもいいですよ。しっかり食べて、明日の朝からでもいいし」
「そうねえ…んっだめっ」
始末をしてないのを思い出して、舐めてみた。
ちゅ、とすすって舐め取る。
ペニバンのディルド部をふき取り、ペニバンから外す。
洗わないとな。
「何が食べたいか考えといてください」
そういって洗面所へディルドを洗いに立った。
拭いて洗濯機にくっつけておく。ちゃんと乾かさないといけない。
戻ると先生は肌襦袢を着て居間に出てきていた。
「スーパー行きましょ。何か作るわ」
ササッと服を着て、先生と一緒にスーパーへ。
「お鍋にしましょう。寒いし食べたくなった」
「んー、そうねえ。何のお鍋がいい?」
「豚で豆乳かな。豆腐入れると木綿が絹みたいになりますよね」
「あら、それもいいわね。じゃそうしましょ」
決まり決まり、お買物して帰宅。
白菜を洗ってざくざくと切って出汁と豆乳と入れて豚・椎茸・豆腐。
適当で温かくて美味しいから鍋は良い。
ご飯の後、お鍋はそのままにと言う。明日雑炊にするのだと。美味そうだ。
洗い物をして、その間に先生は洗濯物を畳んでくれている。
そういや洗濯機に突っ込んだままだった。乾燥はして有るが。
「ねぇ山沢さん?」
「はい?」
「あなたねえ…あれ、洗濯機につけるのやめてくれない?」
「あれ? …あぁ! あれ、ね」
笑っているとにらまれた。
「で、どうしたんです? まだついたまま?」
「触るの嫌だもの。あれってなんで吸盤がついてるの? 乾かすのにいいの?」
「違いますよ。ああやって固定して、自分で入れるんですよ」
「えっ…自分でって」
「床とか、腰の高さの壁とか。固定して自分で」
あ、一気に真っ赤になった。
「後でやって見ますか?」
「ばか、もう。できるわけないでしょ」
「騎乗位。今日はしろって言いませんがいつかして欲しいと思ってますからね。
自分から入れるのも慣れてほしいかな」
「騎乗位って?」
「うっ。そこからだったか…ちょっと待って」
先生の横に寝転がる。
「俺をまたいで。そう。そのまま和式便所にするようにお尻を下ろして。
座っていいから。この状態でさっきのアレが先生の中に入ってると思って」
頬を赤らめていて可愛い。
「そのままスクワットをするように自分で動くんです」
「これ、無理よ…」
「だから今すぐとはいってないでしょ?」
よっと。
上体を起こす。
「ほら、この格好は以前キスしたいからってした格好。これもアレを入れてたら…」
「そんなこと考えたことなかったわ」
「でしょうね」
そのまま引き寄せてキスしてみた。
「したくなったの?」
「食べてすぐは嫌かな? だったら後にしますが」
「うん、いまだと食べたもの出ちゃいそうよ? 沢山いただいたもの」
「じゃあもう少し後にしましょう」
「うん。あ、もうこんな時間、見たい番組有るのよ」
はいはい、とテレビの電源を入れてリモコンを渡すと、ぱぱっとチャンネルが変わる。
「あ、この番組ですか、俺もこれ好きですよ」
「面白いわよね」
番組が終って、CM。
先生は洗濯物を片付けてトイレに。
その間に洗濯機につけたものを回収して納戸からほんの少し太いものを出す。
食卓にくっつけておいた。
先生が出てきたので交代でトイレに立つ。
キャッと言う声が食卓のほうから聞こえてきた。
ニヤつきながらトイレへ出て戻ると食卓に背を向けて三角座りしている。
後ろから抱きしめる。
「何してるんですか?」
「もう、なんでこんなところにこんなのつけるのよ」
ひょいと取り外して先生の手に持たせる。
「…あら?さっきのと色、違うわよね」
「ええ。どうです? 抵抗あります? さっきのと比べて」
「んーピンクは生々しくて嫌ね」
「ちなみに他の色は肉色と黒です。持ってきましょう」
納戸からサイズは違うものの各色持ち出す。
眉をひそめて引いてるのがわかる。
「これ、これが嫌なんでしょ。あなたは」
大きくてヒダヒダが凄くついている使い込まれた肉色のディルドを指差す。
「すっっごく気持ち悪いわ、それ」
「でしょうねー。まぁこんなのは入れるつもりまったくないんでご安心を」
「やっぱりこの色ならまだましかしらね…」
と見ているのは透明と白。
「黒はどうです?」
「何か硬くて痛そう」
「触ったら一緒ですよ、ほら」
と渡して触らせる。うん、凄く見ていてエロい。
「あら、ほんとね。って触らせないで頂戴」
ふふっと笑って別のものを見せる。
「これは硬い目。中に芯が入ってて角度を固定できます」
「こんなに色々有るのねえ」
「そりゃあね、硬いのが好きな人もいれば痛くて嫌だとか、
そのままの角度じゃいいところに当たらないとか。色々有るようです」
「山沢さんはどれが好き?」
「へ?俺?いや使わないんで知りませんよ」
「使わないのに持ってるの?」
「一時期集めたくなったんですよ…だからこんなに色々と」
「ああ吃驚した、これとか使ったのかと思っちゃったわよ…」
と気持ち悪いといってた奴を指差す。
「いや、サイズとして入らない気がします、これ」
「さっきのなら入るかしら」
「入れようなんて気は起こさないように。そんなことしたらこれねじ込みますよ」
「や、やぁね、しないわよ。でも人にしろっていうんだからやって見せて欲しいわ」
「長年入れてないんでまあ無理ですね、痛いだけです」
「あら、私だってそうだったんだからなんとかなるんじゃない?」
「却下」
「いやなの?」
「いやです」
「私がいやって言うと怒るのに…」
「俺はする人、あなたはされる人。これは守ってくれなきゃ」
「ねぇ?どうしていやなの?」
「んー…。簡単に簡単に…ああ。そうだ。男の人が女にケツを掘られる的な」
「…何かわかった気がするわ」
「納得できたならあきらめてくださいね」
「してもよくなったら言って頂戴ね」
「ないとは思いますよ。まあとりあえず片付けましょうか」
納戸に返して戻る。
「これは片付けないの?」
先ほどのピンクの物の透明バージョン。
「片付けませんよ、これはあなたのここに納めます」
と先生の股間を触る。
真っ赤になってうつむいた。
「もうそろそろいいでしょう? 脱いでくれますか」
こくり、とうなづいて、脱ぎ始める。
横で座ってみていると綺麗で、これから抱かれるんだと言うので頬を染めている。
やはり、肌襦袢のあたりで一度手が止まる。
いいよね、羞恥心。
風呂も一緒に入ってるのに。
するりと脱いで私の前に膝を突く。
「久さんも脱いで…」
そういってシャツのボタンを外された。
頬を引き寄せてキスをし、懐に抱く。
「あれ、入れるのと入れないのとどっちが良い?」
「…久さんがしたいほうでいいわ」
「嫌だったんじゃないの?」
「その…恥ずかしいんだけど使うほうがあなたにしっかりと抱きついていられたから。
だからその、それならそんなに嫌じゃないかなって。
でも前みたいに道具だけ使われるのは嫌よ?」
ああ、なるほど、いつもだとどうしても半身がずれるから。
「つまり体が離れるような体位なら嫌なままだった?」
うなづく。
最初が肝心、普通の体位にしてよかった。
「まぁ、今回は入れないでいきましょうかね。まだ何か抵抗感じてるでしょ?」
「わかる?」
「わかりますよ。今そういった瞬間に力抜けたし余計にね」
「だってやっぱりああいう形のもの、と思うと」
「ちょっとづつでいいですよ、今はね。それより案外見るのは平気なんですね」
「あれだけあると現実味がないっていうか」
「お道具鑑賞のノリですか?」
「そう、そういう感じよ。買えない値段のお茶碗並べられた感じというのかしら」
くっくっくっと笑ってると、何よ、もう。と胸を叩かれてしまった。
「一本だけじっくりみて触ってっていったらどう?」
「無理よ、恥ずかしくて嫌よ」
「拝見に出た道具と思って」
「ばか、そういうこと言わないで」
「お稽古のときに思い出しちゃうかな?」
「それは困るわよ」
「むしろ舐めてる所見たいな」
「えっ」
「私に装着して、あなたがあれを舐める」
「や、だ…そんなの」
「あなたに入れる前にしっかり濡らさないと痛いですからね?」
「でもさっきは」
「ローションつかってましたから、あれ。後口美味しくないんですよね~」
「まずいの?」
「化粧水舐めちゃったときのような」
「…まずそうね。でもそんなのなめて大丈夫なの?」
「そのまま飲むとかじゃなければ。飲む可能性が有るなら別のローション使いますが」
「別の?」
「味付とかまずくないやつ」
「知らなかったけど色々有るのねえ」
「まさかコンドームの味つきも知りませんか?」
「そんなの有るの?」
「コンビニにも売ってたような気がするんですが…イボつきは?」
「知らない…」
「ちょっと待って、お兄さんたち居たんですからなんか見てるでしょ?
あなた純情な乙女のままじゃないですか。子供いるのに。なんでだー?」
「だってお友達ともこんな話しないし、兄さんだってそんなもの見せなかったもの。
夫しか知らないし…。そんなに笑わないでよ」
「いや、もうマジ可愛い。そういう純情な乙女、いいね、好きだよ」
抱きしめてキスすると首に先生の手が回る。
「愛してる、絹」
「もう…やぁね…」
ディープキスしつつ乳首をまさぐる。
ぎゅっと肩をつかまれて、唇を離された。