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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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翌朝出勤して、仕事をして終えて先生のお宅へ。
生徒さんのお稽古が終り次第、さっと用意される。
「じゃ山沢さん、律が帰るまでお留守番お願いね」
「はい、お気をつけて。楽しんできてください」
水屋を片付けて居間でくつろぐ。
しばらくして電話。
取ると律君。
『あれ?山沢さん? 母は?』
「お芝居行かれたよ」
『あ、そうか、今日だった…遅くなりそうなんですけど父の食事、何か聞いてます?』
「いや律君にまかせてあるからと。なんだったらピザか何かとろうか?」
『あー…お願いします』
「孝弘さん、ピザ何枚くらい食べるかな」
『えーと、3枚、いや4枚かな』
「わかった、5枚頼んでおくよ。私も食べるしね」
『お手数かけます』
どうせだからいろんな奴頼もう。
孝弘さんの部屋に顔を出して一応どれがいいか聞いてみた。
やっぱりどれでもいいらしい。
ピザをおかずにご飯とか言い出しそうだったがそれは大丈夫なようだ。
5枚注文して暫く待つ。
を、きたきた。
食卓に広げると匂いに釣られたか、孝弘さんも来た。
全種類から1カットずつ抜いて好きなようにどうぞ、と食べさせる。
しかし沢山食べるなぁ。
綺麗に食べ切ったようなので手拭きを出した。
ちゃんと手を拭いてから部屋に戻っていったところを見るに先生の躾の成果か。
箱を片付け、食卓を拭いて台所へ。
布巾を洗った。
さて。この静かな家で先生を待つのか。
多分9時半くらいに帰りの電車だろうし。
その頃には律君帰ってくるのかな。
先日途中にした繕い物をすることにして時間を潰す。
時計の音だけが聞こえる。
丁度の時に鳴る音に時折手を止めて。
まだこんな時間かと。
カラカラと玄関の音がする。
「ただいま」
律君か。
「おかえりなさい」
「すみません、遅くなっちゃって」
繕い物があと少しだからそれが終ったら帰ることにしよう。
ちくちくと縫う。
「ただいまぁ~あぁこれ、絹!」
あ、帰ってきた。っておい。
ふらふら~っと俺の前に来たと思ったら抱きついてキスしてきた。
「お母さん!?」
ああ、律君に見られたよどうしよう。
つーか痛い、針刺さった。
唇を離して肩に顔を埋めた、と思えば寝息。
「律君、ごめん、鞄とってくれる?」
鞄の中から10徳ナイフを出す。
ペンチにセットした。
「悪いけどこれで抜いてくれるかな、針」
手の甲貫通しちゃってるよ…。
律君がプルプルしながら抜いてくれた。
はい、と八重子先生が絆創膏を貼ってくれる。
「それで、これどういう状況ですか、酒臭いんですが」
「お芝居の帰りに食事に行ってそこでお茶頼んだらねぇ。
 店の人が間違って絹のグラスがウーロンハイだったみたいでねえ。知らずにぐーっと」
あー、泥酔ね泥酔。
「相変わらず酔っ払うとキスしてきますね」
「だからあんまり飲まないようにしてるのにねえ」
「こないだ開さんにしようとしてましたよ。面白かった」
「…お母さんキスする癖あったんだ?」
「結構キス魔だよ。寝ぼけてるときとか」
「山沢さん、あんた抱きつく癖あるだろ」
「あー、年末でしたっけ、八重子先生を布団に連れ込もうとしたらしいですね」
「絹に聞いたの?」
「いつだったか聞きました、凄く笑われましたよ」
「…僕に山沢さんを起こしに行かせないの、それでだったの?」
「前に環さんも引き寄せたことが…」
「ほんとあんたら二人は…律はそういう癖はないとは思うけど」
「うーん、そこまで飲んだことないから」
そんな話をしつつ先生の帯を解いて紐をほどき肌襦袢の紐まで全部抜く。
パジャマに着替えた八重子先生が絹先生の寝巻きを取ってきてくれた。
一気にまとめて全部脱がせ、寝巻きを着せる。
前をあわせるには…どうしよう。
背中にマジックベルトをあてがい、仰向けに寝かせて前をあわせてとめた。
これなら苦しくもないだろうしほどけないしいいかな?
「それでなんであんたここにいるんだい?」
「僕がさっき帰ってきたから。僕が帰るまでってお母さんが言ったんだって」
「で、これ縫い終えたら帰ろうと思ってたんですよね」
「もう泊まって行ったらいいよ」
八重子先生が絹先生の着物を片付けながらそう仰る。
甘えることにした。
片手で裁縫箱をしまい、繕い物を片付けた。
「律、あんた戸締り見てきてくれるかい、私ゃ火の始末見るから」
こっちを向いて、俺にはもう部屋に行って二人で寝とけと。
はいはい、と先生を担いで寝間に入る。
布団を敷いて寝かせた。
ったく気持ち良さそうに寝息を立てて。
吃驚したよ、本当に。
さて律君はあれで納得してくれたかなぁ。
トイレと歯磨きを済まし、寝巻きに着替えて布団にもぐりこむ。
先生がぬくくて気持ちいい。
もぞもぞと先生が動いた。
…俺の胸を触るの好きなのかな。寝てるとき割と触るよな。
ま、いいか。
おやすみなさい。
朝、起きてまだ先生は寝ている。
多分あれだけ酔ってたら起きてくるのは昼前かな?
台所に行って朝ごはんを作る。
八重子先生も起きてきて新聞を読んでいる。
お味噌汁が出来た頃律君も起きだしてきて孝弘さんを起こしに行った。
配膳をして、いただきます。
「お母さんは?」
「まだ寝てたよ。多分昼ごろには起きてくると思うけど」
「滅多に飲まないからねぇ」
「おかわり」
はいはい。
お櫃も空になってお片付け。
八重子先生も手伝ってくれて、手早く昼の下拵えもしておく。
居間に戻ってお茶をいただいた。
「頭いたーい…」
先生が起き出して来た。
「むかつきは?」
「それは大丈夫だけど…」
うー、と唸って私の横に座ってもたれてくる。
「あら?なんで山沢さん居るの? 泊まらないって言ってなかったかしら」
「昨日あの後律君のご帰宅が遅くなって、律君が帰ってきて30分くらいか、
 そのあたりで先生方が帰ってこられたんですよ。で、遅いからと」
「あー、そうだったのねー…」
「あんた山沢さんにキスしてそのまま寝ちゃったから大変だったんだよ。律の前で」
「ええっ?」
頭を押さえてうめきつつ。自分の声で頭が痛いとと言う奴だな。
「酔うとキスをするタイプと言うことにしておきましたけどね、焦りました」
「勢い良く抱きついたから山沢さんの手に針は刺さるし」
「ま、それはもうふさがりましたけどね」
「あらー…あいたたた、お母さん、痛み止め頂戴」
「はいはい、ちょっと待ってなさい」
暫くして戻ってきたが何も持ってない。
「切らしちゃってたよ」
「あ、じゃちょっと待っててください」
と先生の横から抜け出して部屋へ行き、鞄をあさって鎮痛剤を出す。
居間に戻ってハイ、と渡し飲ませた。
お白湯で薬を飲んだ後、お茶を飲んでいる。
意味ないよな、お白湯で飲む意味が。
「あんたなんでも持ってるんだねぇ…ペンチとか」
「胃腸薬・風邪薬・鎮痛剤・安定剤・ニトロ・気管支拡張剤くらいは持ち歩いてますよ」
「ニトロ?なんで?」
「むかし目の前で発作起こされて大変だったんでつい持ち歩くように…」
安定性の問題から定期的に更新してるけど。
まだなんか眠そうだな、先生。
いや薬が効いてきたのか?
「おなかすいた…」
八重子先生は呆れた顔をしてる。
お昼にはまだまだ時間が有るなぁ、かといってお櫃にご飯は残ってない。
「喫茶店、行きますか? それとも何か買ってきましょうか」
「着替えるの面倒よ…買ってきて」
「はいはい。何がいいですか?」
「ホットケーキ」
「…作ればいいんですね、わかりました」
冷蔵庫を見て卵と牛乳はあるか見る。
卵はあるけど牛乳がないな。
バターあったかな。
あるね。
じゃ買うものはホットケーキミックスと牛乳とシロップと。
外、寒いなあ。
と買物に行って、戻ってすぐに台所に入り、混ぜて混ぜて焼く。
「あ、いい匂いー。あれ、山沢さんが焼いてるの? おばさんは?」
「司さん。こんにちは。居間にいらっしゃいますよ」
「あ、そうなんだ。じゃぁ」
ん、焼けた。お皿に乗せて。バターとシロップ持って。
居間へ行こう。
「あれ、おばさん。珍しいですね、寝巻きのままって」
「あぁ司ちゃん…こんにちは」
先生の前にホットケーキを置いてシロップとバター、ナイフとフォークを置く。
「おいしそう」
先生が嬉しそうに食べている。
「おいしいわよー」
「山沢さん、まだあります?」
「ミックス? まだあるよ。卵もあったと思うけど」
「あんた作ってやってくれるかい?」
と八重子先生が言うので腰を上げて再度台所へ。
司ちゃんが着いてきた。
さっきと同じようにしてもう一度焼く。
出来たのを渡して洗い物。
台所から戻ると3枚焼いたのに先生は全部食べたようだ。
と思ったらお父さんに1枚食べられたという。
いつの間に。
「絹、あんたもうちょっと寝といで」
「うん、そうするわ」
「歯、磨いてからじゃないと虫歯なりますよ」
「あらそうね…昨日も磨いてないものね」
洗面所へ行って、それから寝間に行くのが見える。
「おばさん、具合でも悪いの?」
「二日酔いだよ」
「えぇー、珍しい。そんなになるまで飲むなんて」
「お茶だと思ったらお酒だったんでしたっけ?」
「あー、飲み会でウイスキーの水割りがウイスキーの焼酎割にされてたりするけど。
 そんな感じ?」
なにその濃いの。
「いやウーロン茶を頼んだらウーロンハイになってただけだよ。
 今の学生はそんなことしてるのかい? 危ないねえ」
うんうん、危険すぎる。
「あ、司ちゃん来てたんだ?」
「うん、これ晶ちゃんから律に渡しといてって頼まれてたんだけど」
「なんだろ」
ちら、と目をやる。
「……律君。それ円照寺向け案件だと思うな」
「…そうですね」
「司さんって本当、強いな」
「なんだい? それ。ただの箱だろ?」
「八重子先生、ご住職を呼んでいただけます?」
「持って歩かないほうがいいのかな」
「うん、司ちゃんか八重子先生なら大丈夫だと思うけど」
八重子先生が電話してくれて暫く。
住職が来た。
「うーむ、これは。また強烈な」
律君となにやら相談している。
今の内に先生の様子見てくるか。
寝間に入り、先生の寝顔を覗きこむ。
気持ち良さそうだな。
暫く見てたら目が覚めた。
「なぁにー?」
「んー、可愛いなって」
「ばかね。いま何時? お昼済んだ?」
「まだですよ、まだそんな時間経ってません」
「そう? ちょっとすっきりしたわ」
「あ、居間に行かれるんなら着替えて。円照寺さん来て貰ってるんで」
「あらどうして?」
「司ちゃん持込の物品がありまして、どうも律君に不向きみたいですよ」
ふーん、といって着替えだす。
「ちょっとここ押さえてて」
「はい」
帯を締めて鏡を見てちょいちょいっと整えて。
うん、綺麗だ。
後ろから抱きしめようとしたら叱られた。
折角きれいに着れたのにって。
じゃあ、とキスだけして一緒に居間へ行く。
「を、これはお邪魔しとります」
「律がお呼びしたようで…」
「いやいやこれはわしが持ち帰らねば律君にはちょっと」
「じゃお願いします」
「うむ。ではわしはこれで」
住職を見送って、さてお昼の支度をしようか。
下拵えはしてあるのでちょっと手を掛けてお昼ご飯になった。
孝弘さんを呼んできて皆で食べる。
流石に先生と司ちゃんは半分ほどだったけれど、その分は孝弘さんの胃袋におさまった。
いいよね、いつも何も残らないの。
洗い物を片付けて先生方とお茶をいただく。
なんてことのない日常。
日曜日の昼下がり。
「ああ、そうだ。明日のお稽古、山下さん以外お休みだから」
「えぇ?珍しいわねぇ」
「インフルエンザだってさ。だからあんた今から山沢さんと遊びに行ったらいいよ」
「あらそう? じゃどこ行こうかしら」
「うーん、根津は今は刀ですしねえ…畠山がまだ利休やってたような」
「三越は?」
タブレットを取ってきて検索。
「うーん…白金のほうでいいわ」
「ああ、じゃどこか山沢さんに食事つれてってもらって、山沢さんちに泊まっといで」
「それでいい?」
「あ、はい。んー食事、あの辺…懐石でいいですか?」
「うん、いいわよ。心当たりあるの?」
「一応ありますが現地行ってどれくらいかかるかで開始時間とか変わりますし…」
「断られたらどこでもいいわよ」
そんじゃまあ、着替えますか。
八重子先生が着物を選んでくれてそれを着た。
先生が着替えて出てくる。
あ、いいなぁ、美人さんだ。
どうせ司ちゃんを送るからと律君が駅まで車を出してくれた。
優しい息子さんだ。
そういうと先生はうふふ、と笑っている。
新宿まで出てタクシーに乗った。
電車だと乗換えが多くて面倒くさい。
20分ほどで着いた。
中に入ってざっと規模を確認し、受付に行って外で電話予約をする。
よし、予約確保。
中に入ると先生は掛け物を見てにこやかにしている。
綺麗だなぁ…。
先生のショールを預かり、バッグも邪魔そうなので預かる。
凄く嬉しそうに見ているのをみるともっと連れてこないとなぁと思う。
あ、お雛様。
時期は済んでるが会期の間出てるのか。
「ね、あなた飾った?」
「いや、うちはないんで…飾ってません」
「あらーじゃ来年はうちに来なさい」
「覚えてたらお邪魔します」
「お茶入れどこかしら」
「黒棗に濃茶じゃないですか? 棗が出てますし」
「あらほんとねぇ」
ゆっくりと展示を楽しんで、それから茶室を外から見て。
自分では気づかないようなところに先生は気づかれる。
茶人ならではの目の行き届き方だ。
その後、食事へ。
近くの懐石の店だ。
メニューはたった一つ。お酒は選べる。
すべて美味しくいただいた。
先生が嬉しそうで俺も嬉しい。
お店を出て、帰りましょ、といわれたが…。
ちょっと飲みに行きたいと誘ってみた。
タクシーを拾い恵比寿へ。
あのあたりならいくつか知ってる。
一応運ちゃんにお勧めを聞けばガーデンプレイスの店もいいとか。
前につけてもらって入った。
なるほどいいね。
ゆったりとお酒を頂き、楽しむ。
先生のは少し軽めのものを飲んでいる。
「ちょっと酔っちゃったわ。そろそろ帰りましょ」
俺が4杯目をあけた頃、そう仰った。
カードで会計を済ませてタクシーに乗り、帰宅する。
先生はタクシーの中で俺にずっともたれていてそういうところが可愛い、なんて。
家の中に入ると俺にしなだれかかってきた。
「脱がせて…」
はいはい。
綺麗さっぱり丸裸に剥いて、ベッドに放り込む。
布団をかけておいて着物を片付けた。
俺も寝巻きに着替えて。さてと、寝るかね。
先生の隣にもぐりこむ。
あったかい。
キスされた。
「ね、しないの?」
「今日はいいですよ、寝ましょ」
「だってもう一週間してないわ。大丈夫なの?」
「今日は別にそこまで飢えてないんですよね」
「…誰かとしたの?」
「今何想像しました?」
「ひどいことを他の人にしてきたのかしら」
「そんなことしてたらキスすらあなたとしてませんよ」
「じゃどうして?」
「というかしたいんですか?」
「…ばか、そんなこと言えると思ってるの?」
「いや、んー。したいんでしたらしますよ。したくないなら寝ますが」
手をつかまれて股間に持ってかれた。
「言えないの?」
こくり、とうなづく。可愛い。
「軽くがいい? 激しくがいい?」
「どっちでもいいわ…酷いのはいやだけど」
もう濡れ始めてる。いいねぇ。
「酷いの、ね」
ちょっとだけ突起を強く掴んだ。
「きゃっ」
そのまま扱く。
あっあっ、と制御できない声が出ている。
ひゅっと一瞬声が途切れ痙攣しだした。
まずは一回。
息がおさまるのを待つ。
「酷いの、だめって言ったのに…」
「おや、軽くしただけなんですけどね」
俺の頭に手。
押されて先生の乳首の辺りに唇が触れる。
「舐めてほしいの?」
これもうなづくだけ。
少し噛んでやった。
軽く悲鳴が心地よい。
「もっと優しくして、お願い…」
「わがままな人だな」
きゅっと股間の突起を軽く捻る。
「いやいやいや…」
ククッと笑ってゆっくりと優しく胸を愛撫する。
幸せそうな吐息に変わってきた。
どちらもいいね。
そのままゆっくりおへそを舐めたり、下の毛を触ったり。
それから、濡れそぼつそこを舐める。
気持ち良さそうで、いい。
俺の頭を掴みながら、喘いで。
中を指でかき回して楽しむ。
先生を楽しませて力尽きるところまでやりこんで、時計を見ればそろそろ俺は起床時間。
久々の完徹決定。
うつらうつらしてる先生を置いて洗面、着替え。
出勤だ。眠い!
入荷少な目、客普通。
仕事は早く終った。
さっさと帰宅して玄関を開ける。
あれ、静かだ。
トイレに行って手を洗い、寝巻きに着替えて寝室に入れば、やはりまだ寝てた。
そろり、と横に進入して抱っこして寝る。
幸せ。
先生の温かい滑らかな肌に触れて、深く眠りにつく。
つんつん、と頬をつつかれて目が覚めると美味しそうな匂い。
「お昼ご飯、食べる?」
ぽー…と先生に見とれてたら頭を撫でられた。
その手を取って引き寄せようとしたら鼻の頭にデコピンされて目が完全に覚めた。
「うー、ご飯ね、ご飯。食べます」
イテテテ。
ベッドから降りてトイレに行って食卓につく。
ご飯にお味噌汁、目玉焼きとベーコン。ほうれん草のおひたし。お漬物。
おいしそう。
「軽いものしか作れなかったけど」
「十分ですよ」
炊き立てご飯に作りたての味噌汁は幸せだ。
恋人が作ってくれたのは更に美味しい。
「何時ごろ起きたんです?」
「1時くらいかしら。あなたいつ帰ってきたの?」
「俺は10時かな。今日は早く終ったから」
「じゃ、まだ眠いんでしょ? ご飯食べたら寝る?」
「もうちょっといちゃいちゃさせてくださいよ。寝るのは夜寝ますから」
「あら」
少し頬染めて、こういうところ可愛いな。
「…あれ?白味噌落としました?」
「うん、あなた前そうしてたから。ちょっと入れてみたの」
「おいしいです。嬉しいな、覚えててくれたんだ」
「甘くて辛くて濃いの、好きよね。でも成人病になっちゃうわよ」
「ん、そうですね、事務職になったら考えないといけませんね」
「あなたも若くはないのよ? そろそろ控えないとダメよ」
「はい」
ご馳走様をして片付ける。
お茶を先生が煎れて、俺の分も煎れておいてくれる。
洗い物を終えて座ると、先生が膝の上に乗ってもたれてきた。
可愛いじゃないか。
「いい匂いする…」
「あぁ、お風呂いただいたから」
「気づかなかったなぁ」
「良く寝てたもの。昨日は寝てないんでしょ?ごめんね」
「徹夜くらい。あなたが気持ちよくなってるの沢山楽しめたしね」
「…私から誘うなんて。恥ずかしかったわ」
「嬉しいですけどね、求められるのも」
暫く会話しつつ、べったりとくっついたまま。
4時半ごろ、先生がそろそろ帰らないと、と言い出した。
「晩飯、食ってからにしたらどうです?」
「帰りたくなくなっちゃうから」
「うれしいこと言ってくれるじゃないですか」
そういいつつもまだ俺にもたれたままだ。
「帰したくないなぁ。けど明日お稽古朝からですもんねえ」
「そうなのよね…」
ふー、と耳元で溜息一つ。身を起こす。
なんとなく、急にしたくなってキスをした。
先生はふふっと笑って俺の頭を撫でる。
「また明日、うちに泊まって頂戴」
「はい、お邪魔しますね」
「着替えてくるわ」
「はい」
すっと立って和室へ。
俺はトイレへ。
先生の帰り支度を整え、俺も着替えた。
家まで送る、と言うと寝不足の人に運転させられない、駅までで良いという。
ほんと優しいなぁ。
羽織とショールで防備して二人でゆっくりと駅まで歩く。
「じゃあまた明日」
「待ってるわね」
「気をつけて帰ってくださいね」
「ええ、じゃ、また」
先生が改札をくぐって電車に吸い込まれる。
発車するのを見届けて帰途、寒いなぁ。うどんでも食うか。
近くの店に入り親子丼を頼んで食って帰宅。
トイレへ行って着替えておやすみなさい。
何度か目が覚めてトイレに行き、朝になった。
出勤し、物がない、寒いなど暇な火曜日。
早く仕事が終らないものか。
はぁっと息をついてふぐを何本かさばいてもらった。
先生のところに持っていこう。
メールを作成。今日はふぐ、と打ち込む。
返事は夕飯に鍋、だ。
寒いから丁度いい。水菜をちょっと買って持っていこう。
追加でメールが来た。
あなたは豚、とだけ。
…あぁ、豚肉で何かしてくれるんだろう。うん。
双方仕事中だと電報以下になってしまうなぁ。
客も早く引けた。
仕事を早めに終らせて、ふぐと水菜を積んで先生のお宅へ。
「こんにちはー」
「はい、こんにちは」
「いらっしゃい、ごめんね、さっき。充電がなくなっちゃって」
「ああ、そうだったんですか。何かと思いましたよ」
「なに送ったんだい?」
「あなたは豚、が本文のメールです」
「山沢さんそんなに太ってるように見えないけどねえ」
「先生より10キロほど重いですよ」
「へぇ意外だねえ」
「じゃなくて豚の炒め物かしゃぶしゃぶか何か、と書きたかったのよ」
「わかってますよ」
ふふっと笑って水屋へ入る。
朝の後始末とお稽古の準備をして、待機。
いつもの生徒さん、いつものお稽古。
今日は寒いといいつつ皆さんいらっしゃって生徒さん達が引けてから俺のお稽古。
「随分よくなってきたわねぇ。もうちょっとね」
「有難うございます、精進します」
お稽古を終えて水屋を片付ける。
夕飯に豚と水菜を炊いてくれるそうだ。
冷しゃぶでも良いんだけど。
「明日の朝御飯、一緒だけどいいわよね?」
なるほどそれは名案。
と言うことで水屋を八重子先生と交代されてお台所へ。
「そうそう。昨日の展覧会どうだった?」
「お雛様がありましたよ。節句が終ってから飾ってあるとは思いませんでした」
「へぇまだ飾ってるんだねえ」
「先生からお聞きじゃなかったんですか」
「バーに連れてってもらったのが印象的だったみたいでね」
「そりゃあんまり行くところじゃないでしょうけど。
 展覧会の後はそのまま帰るほうがいいのかな…」
「だけどそうそうあんたと出かけさせるのもねぇ、律に言いにくいし」
「そうなんですよねぇ。ほら、青梅の梅祭り、あんなのも行きたいんですけど」
「あんたあれ来年はないよ、行くなら早くいかないと」
「え、なんでですか?」
「梅の病気で全部切っちゃうらしいよ」
「ええー、あれをですか、勿体無い」
「感染る病気だからしかたないんだってさ」
「ありゃー…そんじゃ絶対今年行かないと見納めですねえ」
「来週の春分の日にでも行ったらどうだい?」
「あ、いいですねえ、次の日仕事ですけどまぁ一日だけですし」
「その日なら律も旅行に行くって言ってたからね」
「じゃ孝弘さんとお留守番ですか」
「そういうことになるね」
「いいんですか? みんなで一緒にでもいいですが」
「あたしらが一緒だと気を使うだろ」
「ああいうところで羽目を外したら後で噂になりますよ」
「だったら一緒に行ったほうがいいのかねえ」
「お暇でしたらお願いします」
水屋の片付けも終わり、台所に向かえば孝弘さんをそろそろ呼ぶようにと言われた。
離れへ行ってごはんできたそうですよ、と呼び一緒に食卓に着く。
「今日はふぐ鍋よ~」
お鍋から白菜や豆腐やしいたけを貰いつつ、豚水菜を食べる。
うまいなぁ。
「塩分取りすぎになるわよ」
汁まで全部飲んだら叱られた。
「鍋のあとのポン酢飲むのも好きです」
「も~だめよ~」
律君も笑ってる。
お鍋以外を片付けて、雑炊。
俺は雑炊は一杯だけいただいて後は孝弘さんがペロリだ。
お台所の片付けを済まし、先生方はお風呂。
俺は今日は遠慮して一緒に布団に入る。
先生は今日は疲れていたのかすぐに懐の中で寝息を立て始めた。
夜半、ふと違和感に目を覚ます。
「どうしたんです?」
「ん、起きちゃった?」
「今日は下はダメですよ」
「どうして?」
「生理中ですもん」
「そう…」
そのまま俺の身体のあちこちを気のすむまで触って、ふぅ、と息。
「おやすみなさい」
「うん」
ぺたり、と俺の胸に耳をつけてしばらくして寝息。
ま、そんな時もあるよな、と俺も寝なおした。
翌朝、豚水菜で朝食を済ませ掃除にとりかかる。
先生は洗濯物を干したり座敷を掃除したり。
お昼をいただいたあと縁側で日向ぼっこ。
「暖かくなりましたね」
「そうねえ、お洗濯が良く乾きそう」
手に触れてしばらくゆったり。
「あんたら年寄りみたいだよ」
後ろを振り向けば八重子先生だ。
庭掃除を指示されて庭に下り、先生は風呂掃除へ。
八重子先生は茶道具の手入れだ。
こればかりは俺ではなんともしようがない。
掃除を終えて手を洗って居間へ行くと先生がお茶を入れてくれた。
「おせんべいたべる?」
孝弘さんはその辺でごろ寝しておせんべいを食べている。
あー、折角さっき先生が掃除したのに。
と思ったらちゃんと広告を下に敷いてる。
先生の躾か!
おせんべいを貰って先に袋の中で砕いてから食べる。
「あら。ぼろぼろこぼして子供みたいって言おうと思ったのに」
「さすがにそこまでこぼしませんよ」
ぬるくなったお茶を頂きつつおせんべいを食べて。
「そろそろお夕飯のお買物行かなきゃねえ」
「今日は何されるんですか? 魚?」
「あなた食べて帰るならお肉にするわよ」
「いや今日は暖かいうちに帰ろうかと。明日もありますし」
「そう? お買物は付き合ってくれる?」
「重いものあるんでしょ、行きますよ」
よっこらしょと腰を上げて上着を羽織る。
「じゃ、ちょっと買物に出てきますから」
先生は孝弘さんに言い置いた。
「お母さーん? お買い物行くけど何か買うもの有ったかしら」
茶室にも声を掛ける。特にはないようだ。二人で買物へ。
大きいかぶと白菜など重量系を買って帰宅。
野菜を洗って下拵えまでお手伝い。
「さ、そろそろ帰ります」
「うん、じゃまた明日ねぇ」
久々に暖かいうちに帰宅だ。こんな日が続けばいいなぁ。
帰りがけにお惣菜を買って帰宅。
メシだ!
食ってしばらくしてから寝た。
縫い物しなきゃなぁ…。
朝、出勤、本日は雨の予報。
今日は先生のところへは車で行くべきかなぁ。
沢山降るなら。
大して客も来ないまま仕事が終る。
ま、明日も平日だし…雨だし仕方ないか。
気温も上がってきて予報を見れば戻る頃だけかな、酷いのも。
まぁ適当な駅からタクシーに乗るなり何なりすればいいだろう。
支度をして電車に乗る。
少し雨が落ちてきた。
あまり降るようなら生徒さんは少ないだろう。
晩御飯はどうするかメールが来た。
どうしよう…。
メニューは?と聞くと肉じゃが&白菜とかぶの炊いたもの。
うまそう。これは食いたい。
食べさせてください、とメールを返す。
晩飯という楽しみもあり、いそいそとお稽古にお邪魔する。
普段なりに生徒さんも来てお稽古が進む。
「今度花月してもいいわねぇ」
「ああ、最近してませんよね、私も足がわからなくなりそうです」
「足はこうよ」
と、歩いて見せてくださる。
「行きなのか帰りなのか、ちゃんと考えれば歩けるでしょ」
「うーん、そうなんですよね、考えればいいんですけど…つい」
「あなたは且座の正客をしないんだからそれくらい覚えて頂戴よ」
「はい」
お花が苦手すぎるのでいつも外してもらってるんだよね。
「土曜日に特訓しようかしら。夜は暇でしょ。日曜のお昼からと」
「う…わかりました」
「ほんと苦手なのねえ」
「や、その」
「なぁに?」
「いや、いいです」
「なんなのー?」
あ、八重子先生。
「ご飯もうすぐできるから早く片付けなさい」
「はい」
「はーい」
水屋を片付けてお台所へ。
「ほら、これ持って行って」
配膳をしてご飯の用意。
孝弘さんも出てきた。
「あら律は?」
「遅くなるんだってよ」
「じゃいただきましょうか」
「いただきます」
うーん、おいしい。幸せ。
ご飯が美味しいっていいなぁ、帰ると美味しいご飯が待ってるとか幸せだよなあ。
その上可愛い嫁が待ってるとかもっと最高だよな。
若い頃の孝弘さんって幸せ者だよな。
そのまま普通に先生と夫婦をしてたら俺なんて入り込む隙、針の穴程もなかっただろう。
うまそうに食ってる俺と孝弘さんを先生はニコニコと見ている。
食後、雑談しているときに最近の血液検査で中性脂肪が下がったなんて話をする。
TGは体脂肪率関係なく上がるらしく。
何かしてる?と医師に聞かれて最近の食生活を話すと続けるように言われたと。
「先生方の作ってくださる食事のおかげですねー」
「普段からお野菜食べないからよ~」
「あんたできるだけうちで食べなさいよ」
「はい、ありがとうございます」
「あ、そうそう。これ。ホワイトデーだから」
「嬉しいな。俺も後でお渡ししようかと。クッキーじゃないけど」
「あら。嬉しいわ」
一旦部屋に戻ってとってきた。
はい、とお渡しする。
風呂敷三段重。
「あら、なにかしら」
マールブランシュの茶の菓とマカロン&ムラング、生茶の菓だ。
うち二つが京都限定となっている。
取り寄せたった。
先生もよろこんでくれている。
でもこんなものより、先生がくれたクッキーのほうが価値がある。先生の自作だ。
にこにこしたまま今日も帰途につく。
帰ったら食べよう。
会社の奴らに自慢してやる。
雨降りの中帰宅、部屋で美味しくいただいた。
幸せなままおやすみなさい。
翌朝出勤し、貰った自慢をする。
バレンタインにも貰ったというと大変うらやましがられた。
仕事を終えて一服していると先生からメール。
八重子先生と広げて全種類ちょっとづつ食べたらしい。
太りますよ~、とメールすると太っちゃったら運動に付き合ってね、と帰ってきた。
可愛いなあ。
さって今日は身頃を縫おう。
先生は今頃お食事でその後はお花のお稽古だろう。
以前花を持って帰ってくるのを見かけたけど綺麗だったなぁ。
美人は花を持てばますます綺麗っていうね。
ちくちくと縫ってたまに針を指に刺したり折れたり。
なんで折れるんだろう。
握力?縫い方?
背縫いを終えてふと気づけば暗い。
え、もう夕方か?
なんだ、曇ってるだけだった。
でもそろそろ夕飯何か買ってこないとなあ。
先生は今日は何を食べるのだろう。
本当に主婦って大変だよなあ。
俺なら食いたいなと思うもの買ってきて食えばいいし、どこか食いに行けばいいが。
皆の分作って、これが嫌いとか今日は食べたくないとか。
先生のお宅で手伝うのは出来ても毎日のメニュー考えろって言われるとね。
……親子丼で良いか。
もうちょっとしたら食べに行こう。
畳んで片付けて。
そろそろしっかりと掃除しないとなぁ。
納戸に掃除機を取りに入ると、先生はここに入るのを嫌がってたのを思い出す。
掃除機をかけて、まぁこんなもんでいいか。
片付けて手を洗って着替えてメシ!
外寒いー。
ぶるり、として近所の定食屋へ。
親子丼一つ。
山椒たっぷりかけていただく。
あったかくてうまい。
腹に物が入るとやっぱり温まってよい。
帰宅して風呂に入って頭を乾かして。
さあ寝ようかな。
ベッドにもぐりこむとメール。
今晩のおかず、と先生から写メが来た。
やり方がやっとわかったとのことだ。
くっそめちゃくちゃうまそうなメシじゃないか。
ご飯はもう食べたけどもう一度食べたくなったとメールを返す。
暫くメールを交わしてからおやすみなさい、と打ち込み寝た。
翌日の仕事はまぁ土曜日だし、それなりに忙しい。
はっと気づけば昼前で慌てて帰宅し風呂に入ってお稽古に駆けつける。
電車の中で走っても意味はないのでちゃんと整ってるか確かめて。
駅からタクシーを使って駆けつける。
セーフ。
「こんにちはー」
「はい、いらっしゃい」
水屋の支度は…おや整ってる。
「朝の方が少なかったのよ~、だからしちゃったわ」
「あ、そうでしたか」
「あんたもお茶のみなさいよ。丁度ぬるいわよ」
「ありがとうございます」
一息つかせてもらってそれからお稽古。
とんとん、と間も良くお稽古は進み自分のお稽古も。
「この調子で続けたらなんとか夏前に出来そうねえ」
「そーなるといいですねー」
「そうなるようにするのよ。でなきゃもっと厳しくするわよ」
「うっ…頑張ります」
今日は先生も自分の稽古をしたいからとお付き合い。
八重子先生に指導してもらうのを横で見学。
台子だから碗建箸なのだが自分がすると悩むんだよね。
これは先生でも一瞬手が戸惑うらしい。
教える側に回るとちゃんと違うってわかるとか。
二度続けて。
さすが先生一度言われたことは次には全部直ってる。
「さてと。水屋は山沢さんに任せてご飯の支度、終らせないとねぇ」
「あら、まだできてなかったの?」
「そうだよ、あんたお稽古したいって言うから」
くすくす笑ってみてたらペシッとはたかれた。
「じゃれてないで」
八重子先生が呆れてる。
先生方が台所へ行って俺は水屋を片付ける。
もう少しで、と言うところで先生がご飯よー、と呼びに来た。
いま行きます、と答えて手早く片す。
手を拭きつつ食卓へ向かう、いい匂いだ。
「ろーるきゃべつ?」
「春キャベツの春巻きよ。中はパプリカとカニカマと菜の花と長芋なの」
「ヘルシーですね」
「ちゃんとお肉も有るわよ。はい」
野菜の肉巻きだ。
「今日はキャベツがいいのが安くてねぇ。だからキャベツ尽くしだよ」
と八重子先生から渡されたのはコールスロー。
「梅と大葉が入ってるの、おいしいわよ」
「明日の朝はホイコーローとかどうかねぇ」
「朝から多いんじゃない?」
「山沢さんなら食べれるでしょうけど私は朝からはちょっといやねぇ」
濃すぎるのか。
「スープ煮とかされたらどうです?ポトフとか」
「あ、それはいいねえ」
「サラダだったら汐昆布とごま油で和えるとかいいんじゃないですか」
「でもそんなんじゃあんた足んないだろ?」
「あら、ベーコン足したらいいわよね?」
「あー、はい、十分です」
八重子先生も何かとメシに気を使ってくださる。助かる。
おいしくいただいてると先生はこちらを見てうれしそうだ。
しっかり食って満腹。
孝弘さんが食べ終わって台所を片付ける。
先生が明日の朝御飯の仕込みをするというので手伝いつつ。
いろいろ剥いて鍋へ。
ベーコンとウインナーも投入して煮込む。
おでんと一緒で一度炊いて次の日が美味しいらしい。
いい匂いがするなぁ。
先生が作るのを眺めつつ、少し色気を感じる。
「居間にいたら? 立ってたら疲れるでしょ?」
「いや、ご飯拵えしてる姿って結構好きなんですよね」
「そう?」
「ええ、手をだしたくなる」
きゅっと口を捻られた。
「そういうこと言わないの」
じゃれてるうちにそろそろ火が通っただろう、と言うことで火を落として居間へ。
先生はそのままお風呂。
八重子先生はもうとっくに、と言うことで俺も先生と。
と思ったのだが断られた。
今更だが何か気恥ずかしいらしい。
お茶をいただいてゆっくりしていると先生が上がってきた。
「ごめんなさい、うっかりお湯落としちゃった」
ありゃ。
まぁいいけどね、風呂は一応入ってきてるし。
そんじゃ戸締りを確かめますか。
八重子先生が火の始末を確かめて居る。
お勝手も確認して、おやすみなさいと八重子先生と別れて先生と寝間へ。
さて、と。
布団を敷いて寝巻きに着替えた。
先生が髪を纏めているのを後ろから抱きしめる。
「もうちょっと待ってて」
「待たない」
もぞもぞと先生の胸やお腹をまさぐる。
「待って頂戴、ね、あの、お手水行ってから。ね?」
苦笑。
「はいはい、行ってらっしゃい」
パタパタとトイレへ走っていった。
戸締りしてる間に行っとけばいいのに。こうなるのわかってんだから。
少し待つ。戻ってきた。
「寒~い」
ぱっと俺に抱きついてくる。
…障子閉めようや。
布団に押し込んで障子を閉め、それからもぐりこむ。
「見られたかったんですか?」
「ち、違うわよ、寒かっただけよ」
「いいですよ、今日良い月ですから庭でも」
「違うって言ってるでしょ…ん、ぁ…」
いい感触だなぁ、胸。
身体を撫で回して堪能する。
沢山撫でた後、股間に手をやれば結構に濡れている。
中に入れず外側を玩びつつキスしてたら唇を噛まれた。
むっとしてたらそれがわかったのか身を縮こまらせて謝ってきた。
一瞬もうやめちまおうか、とも思ったが。
恐々と入れて欲しい、と言うのを見れば可哀想になってそのまま中を探って逝かせて。
二度、中で逝かせると眠たげだ。
そのまま始末もしてないのに寝息に変わった。
息をつき、股間を拭いて寝巻きを着せなおして手洗いに立つ。
そのまま庭へ出て暫く月を眺めた。
カタン、と音がして振り返れば八重子先生だ。
「寒いのに何してるんだい?」
「月が綺麗だと思いまして」
手が伸びて額に触れる。
「眉間にしわ寄せて綺麗もないだろ」
苦笑する。
暫く八重子先生に見つめられて。
ぽんぽんと頭を撫でられた。
「風邪引かないうちに寝なさいよ」
「はい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
また月を見ながら自分の中を治める努力をして折り合いをつけて部屋に戻った。
先生は気持ち良さそうに寝ていて。可愛い。
そう思えるようになっていてほっとして布団にもぐりこんで寝た。
翌朝、起きると先生がいなくて外が明るい。
寝過ごしたようだ。
布団の中でぼんやりしてると先生が起こしに来た。
「あら起きてたの? ご飯食べるでしょ?」
早く着替えてきなさい、といわれて布団から這い出る。
身づくろいをして食卓につけばポトフ。
寝ぼけ半分に食べてもうまい。
…トマト。温かいトマトはいやだ。
手が止まっていると孝弘さんが食べてくれた。
「あっお父さんダメよ、人のおかず食べちゃ」
「いいんじゃないの? 山沢さん苦手っぽいし」
律君が笑って言ってくれて新たな温かいトマトを回避できた。
野菜を沢山食べて腹いっぱいになる。
「さてと、ちょっと手伝ってくれるかい」
八重子先生に呼ばれて茶道具の整理を助ける。
重い釜の移動に体力を使ってくたびれてしまった。
「お昼ご飯できたわよ」
その声に中断されご飯をいただく。
昼からはどうするのかな。
お昼ごはんは孝弘さんが居ないそうでスパゲティ。
くっ、辛っ!
にっこりと先生が笑う。
「しし唐、当たったの?」
涙目でうなづく。
「普段の行いかな」
と呟いたら八重子先生が笑っている。
「そうかもしれないわねー」
先生までもがのんびりとそんなことを言う。
俺の分は2人分だったらしく、八重子先生とは明らかに量が違う。
まぁその分当たりを引きやすい。
「暖かいわねぇ。あとでお昼寝したいわね」
「ですねぇ」
「年寄りみたいなこと言ってないで片付け手伝っとくれ」
「サー・イエッサー」
ぷっ、と先生が噴出した。
「映画、見た口ですか?」
「アメリカの映画でしょ?」
おしゃべりしながらお茶碗や水指などの入れ替え。
冬向きのものは奥へ、春夏のものを手前へ。
「ことしもお花見の茶会しようかねえ」
「そうねえ」
「去年は参加できなかったんですよね。今年されるなら参加したいです」
先生がにこっと笑って私をなでる。
「なんで撫でるんですか」
「ん、なにか可愛かったからよ」
ハイハイ。
「あらこれ…懐かしいわ」
「あ、綺麗ですね。夏向きですか?」
「どれどれ? そりゃ夏だね。盛夏に使ったらいいよ」
切子の水指はさぞや涼しげだろう。
「それとそろいのお茶碗もあるよ」
「棗はどういうのと合わします? 木地ですか? 黒棗?」
「それもいいけどちゃんと揃いであるんだよ、その水指。ただどこに仕舞ったかねえ」
「…来年夏までに見つけましょう」
「あんたが手伝ってくれたら見つかるかもしれないね」
出来るだけ道具が一具になるようにリストも作って行くことにした。
中身の写真を撮って箱につけていくのもいいな。
そんな相談もしつつおやつタイム。
今日はカステラだ。
「八重子先生ってよく太りませんね」
「あら。おばあちゃんお医者さんに甘いものは控えめにって言われてるわよ」
「え、でも結構」
「前はもっと食べてたからねぇ」
これで控えめだったのか。
カラカラと玄関の音。
「八重ちゃんいるかしら」
おっとご友人か。
お茶を出すと八重子先生から先生とあちらの家に居るようにと言われた。
内密のはなしかな。
ということで移動して鍵を開けて中に入る。
少し違和感。なんだろう。
ああ。シーツの色が変わってる。
カチャカチャと先生が鍵を閉め、後ろから抱き着いてきた。
ふっと笑っているとうなじをなめられた。
「何をしてんですか…」
そのまま右手が俺の懐へ…残念ながら晒越しである。
「したいのかな?」
「ううん、なんとなく」
「俺は…あなたを抱きたくなった」
「えっ、まだ明るいわよ」
「あなたが俺に触れるからですよ。さ、脱いで」
ちょっと引いてるようだ。
「もたもたしてるとそのままでやりますよ。俺はそれでもまったく…」
言ってるうちに脱ぎ始めた。
そのままは嫌なようだ。
着物を脱いで長襦袢を脱いでちゃんと衣桁にかけて帯も畳んで。
待ってるのがなんともね。手持ち無沙汰でいけない。
脱いでそのまま、と行きたいけれど。
肌襦袢姿の先生を膝の上に乗せて胸を弄る。
上がる声に煽られてもっと、と思う。
もっともっとなかせたい。
腰巻を脱がせて膝立ちにさせ股間に顔を埋める。
「こんな格好いや…」
「いやと言う割には…随分と。期待してるんでしょう? ほら」
突起を摘んで苛めながら中を抉るとお尻の穴までひくひくとしてて可愛い。
ちろり、とそこを舐めると悲鳴を上げて膝立ちが崩れてしまった。
はずみでぐりっと中を抉ってしまったようでちょっと痛かったようだ。
中を痛めつけるのは好みではない。
今日のところはこれまで、だな。
まだ逝けてないようなので突起を弄って逝かせて、仰向けにさせる。
涙目になってるのが可愛くて、まぶたにキスをしてみた。
するり、と先生の手が俺の背に回る。
唇を合わせていると先生の手が下りてきた。
そっと俺の股間を触る。
「……やっぱりやりたいの?」
「あ、違うの、ごめんなさい。なんとなく触っただけよ」
なんとなくねぇ。
先生を上にして転がると重みが心地よい。
「ねえ先生、今度21日、梅を見に行きましょう。八重子先生と孝弘さんも一緒に」
「いいわねえ。あ、お墓参りどうしよう…」
「お彼岸か。忘れてた。先生のお父さんがしてる最中に出てきちゃ困るな」
がつんっと殴られた。
いてててて。
「先生最近暴力的…」
「そういうことをあなたが言うからでしょ」
「ね、俺のこと好き?」
「何よ突然。好きよ。あなたは?」
「俺も好きですよ。愛してます」
「ふふっ」
さっき殴ったところを撫でられてキスされた。
たまに行動がつかめない。
先生の携帯がなる。
八重子先生からでそろそろ戻ってOKとのことだ。
さっとシャワーを浴びてもらって着物を着なおして戻る。
中でお茶をいただいて、さ、俺はそろそろ帰りましょうかね。
「じゃまた火曜ね」
「はい、ではまた」
別れて帰宅する。
メシを適当にとって布団にもぐる。
なんだかんだ疲れるわけで。
おやすみなさい。

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