忍者ブログ
百鬼夜行抄 二次創作

let

伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

3

夫と死に別れ、借金を清算し終えてほっとしたのもつかの間。
金融業者の取立てに遭い、初めて夫が別のところに借りていたことを知った。
1200万円という大金に驚き、うろたえ。
即日と言いたいところだが、と一週間の猶予を与えられたけれど…。
無理なら家を売り払い、私をソープで働かせると…。
あわてて金策に走ったものの、そんな大金作れなくて困っていると業者がやってきた。
この家と私を買うと…。
愛人のようなこと、いやだと思ったけれど。
ソープに行くかと迫られればまだ、と諦めて。
いろいろと聞かれるがまま話すと脱げと言われまたうろたえる。
三人もの男の人の前で脱ぐだなんて…。
隣の部屋に追い立てられて、私を買うという人だけになった。
早く脱げ、と言われても手が止まる。
震えて紐が解けない。
「目をつぶって深呼吸しろ」
手の震えがおさまった。
けれど長襦袢を脱いだところで手が止まる。
「ここには誰も居ない、そう思って脱げ」
そういわれてもなかなか脱げるものじゃないわ、と言い返したくなる。
「ソープに行ったら私一人じゃないぞ」
脅されてしぶしぶ脱ぐと手をどけろ、後ろを向けなどと命令された。
品定めのように無遠慮で、それで居て逆らえない。
ソープはいや。
ただそれだけのために我慢をする。
着ても良い、と言われて部屋に置き去りにされた。
ほっとして着物を着る。
隣室の会話を伺いつつも着付けていると業者たちは帰ったよう。
私を買うと言った人を残して。
少し悩んで、お茶を入れることにした。
お茶菓子をお盆に載せて一緒に出す。
これからどうしたらいいのかしら。
教室はたたんむしかない? それから?
ぽつりと口をついて出た。
すると先程は聞かれなかった、日々のタイムスケジュールを聞かれた。
水曜と日曜をお稽古の休みにしていること、でも水曜は自分のお稽古があること。
それからお茶会の手伝いで日曜もたまに家を空けること。
聞かれるがままに話していると火曜の夕方に来る、と。
泊まると言われてドキッとした。
早速、なのかしら。
その後、いろいろと話をした後外食に誘われたけれど丁重にお断りをした。
受け入れてもらえてほっとする。
手許金を、とお金を頂いた。
ここ数日の清算に使い果たし、お米屋さんや魚屋さんに付けでお願いした分が払える。
喜んでしまったら苦い顔をされた。
いくらあるんだ、と言われ家計簿を見せるとさらにいくばくか渡された。
意外とあっさりとその日は帰られて胸をなでおろす。
そういえばお稽古はいいのかしら、続けて。
特に何も言われなかったのでお教室をいつもどおりにして、三七日。
それから火曜日が来た。
お稽古に来るお弟子さんを送り出して茶室を片付け、夕飯の買い物に出る。
違和感。
車庫に車がある。
あの人が来たんだわ…。
少し迷いはしたものの、好き嫌いを聞く。
献立を考えて決めた。
家へ、と招くが買い物から帰ってからという。
お客様を放って置くのは、と思うものの早く行くように言われて。
気がかりながら買い物を早めに済ませ、家へ戻った。
招じ入れ、お茶を出してから夕飯の支度。
私の分はお精進。
あの人の分は若いのだからきっとお肉が必要。
作り分けてご飯が炊けた。
お仏壇にお供えをする。少し恨み言を言いたくなった。
溜息をひとつついて台所から食卓へ配膳する。
次からは同じものでよいといわれた。
だけど私と同じものを食べさせるわけにも行かない。
あんたも早く食べなさい、といわれて手をつける。
うまいの声に少しほっとした。
そういえば夫から最近そんな言葉を聞かなかったことも思い出された。
一人だけの食事。
砂を噛んでいるような心地がしたものだけど。
こんな人でも誰かが一緒に食事をするということは少し気がまぎれる。
食事の後暫くお話しをして、お風呂を沸かした。
先に入ってもらい、晩酌の支度を整える。
貰い物の、お酒とおつまみ。
着替えは持ってきているから、というので用意はしなかった。
すぐにお風呂から出てきたので驚く。
カラスの行水なのかしら。
続いて入る。
きっとこの後抱かれるのだろうからと念入りに洗った。
嫌でも応でもなのだったらせめて。
お風呂から上がり、浴衣を着て鏡の前に立つ。
体の線が浮いていて気になる。
上っ張りを着て戻った。少し暑い。
お酒の相手を、と求められ少しお相手をする。
暫くしてふと時計を見るとそろそろ寝る時間…。
布団を客間に敷きに立ち、戻るとちょうどご不浄から戻られるところだった。
お連れして、それからどうしたらいいのだろう。
思わず布団の横に座り込んでしまう。
部屋に戻ってよい、と声をかけられた。
今日は許してもらえるようだ。
ほっとして客間を出て、へたり込む。
だけど長居をして気が変わっても困る。
あわてて自室に戻った。

拍手[1回]

PR