それから数回の訪問があったけれど泊まられるのに何もなく、
不審に思ったまま満中陰を迎えた。
今日で忌みが明ける。
夫の両親、義兄、友人が集まり法事を行った。
あちらのお父様は申し訳ない、と言って下さったけれど…。
義兄はこれで縁は切れた、もう身内じゃない、そう言って帰られた。
そう言われると少し文句のひとつも言いたくなる。
翌日、友人につい愚痴をこぼしてしまった。
ついでに今のところは何もないことを不思議に思うことを相談する。
「不能か喪が明けるの待ってるんじゃない?」
だとすると明日?
さっと血の気が引く。
「嫌な事言ってごめんね、でもあんたまぁこういう事になるのはわかってたでしょ」
「でも…」
「今のところは優しいんでしょ、だったら良いじゃない。する事はみんな同じよ」
そうは言うものの、ここ数年してないのもあり怖くてならない。
「出来るだけ怒らさないようにね。すべて受け入れるようにしたらいいのよ」
「そんなのできるかしら…」
「女はね、そういう時は受身でいたらいいのよ。何とかなるわよ」
何とかなるものなのかしら。本当に。
少し心配なまま、あの人が来る日を迎えた。
何事もない振りをしていつものようにもてなす。
夕飯を済ませお風呂を沸かしに立とうとした、そのとき。
「待ちなさい」
はっと見る。
あの人がぱたり、と縄を置いた。
「なにを…」
まさか…。縛られるの…?
さっと衣擦れの音がして、後ろから両肩を掴まれた。
怖くて動けない。
あの人の手が腕を伝わってきて手首を掴んだ。
後ろ手になるよう誘導され、しゅるりと音がして縄を掛けられた。
胸に縄が掛かる。
着物の上からではあるが縄と同時にこの人の手が触れて行く。
つんと胸の奥に響き、苦しい気がする。
喉に指が這う。
ぞくりと怪しい気持ちが湧き上がる。
膝を崩された。
足袋の上に指が這い、縄が掛かり、ふくらはぎ、太ももと掛けられる。
楽しそうな顔で私を見る。
この人の手があちこち触れるたびに心を乱される。
縛っては解くその手は無骨なのに器用で。
縄の擦れる音、衣擦れ。二人の吐息。
翻弄されるのが辛くなって涙がこぼれた。
ゆっくりとすべての縄が解かれ、腕を撫でられる。
そのままいくつか聞かれたがわけがわからぬまま答える。
大きくうなづき私を置いて部屋から出て行った。
ほっとして腕をさすり、足をさする。
もうこんな時間。
あの人が戻ってきた。
「脱げるかな」
そういって私の帯に手を掛ける。
つい抵抗してしまった。
だけど力が入らない。あっという間に肌襦袢に裾除け姿にされた。
布団に下ろされたので掛け布団を楯にしていたらまた部屋から出て行った。
少し気抜けする。
気配に耳を澄ませば戸締りをしているよう。
戻ってきたら、されてしまう。
身をすくめていたのに同じ布団に入ったこの人はお休みと声をかけて寝てしまった。
いったいどういうつもりなのかしら。