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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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5

「ん、んん~」
お母さんが朝ご飯を作る匂いにおなかが鳴って目が覚める。
起きなきゃ。
ぼんやりした頭で洗面をして着替え、台所へ向かう。
「おはよう」
はっと目が覚めた。
お母さんじゃ、ない。
そうだった、もうとっくにお母さんはいない。
ここにいるのは夫でもない。
咲田さんだ。
「おはよう、ございます」
「よく寝ていたから起こさなかった」
「すみません、ご飯の支度…」
「もうちょっとで出来る。あんたも喰うだろ?」
頷いて台布巾を取り、食卓を拭いた。
意外にも咲田さんは料理が出来るらしい。
配膳をして朝ご飯をいただく。
「おいしい…」
「一応毎日作ってるからな」
そういえば一人暮らし、と言っていたことを思い出す。
お味噌汁も同じお味噌なのにどことなく味が違っている。
食事の後いつものように家事をしていると、縄の痕が残っているのに気づかされる。
手首の痕はしっかりついていて何をしていても目に入った。
これ、明日には消えるのかしら。
お昼ご飯の後、不安に思って聞いてみた。
お風呂で暖めてマッサージすると消えやすい、と言う。
後でお風呂に入ったら試してみるしかないわね。

夜が明けて腕に抱いている女は気持ちよさそうに寝息を立てている。
寝る前は警戒していたが寝ちまえばこんなものだ。
腹が減ったな。
朝立ちで小便を苦労して出し、いつものように洗面をする。
寝間を覗くが未だよく寝ている女を起こすより、自分で作る方が早い。
そう考えて台所に向かう。
ここしばらく眺めていたからなんとかなるだろう。
だが味噌汁の出汁、何でとっているのかまでは知らないことに気づく。
昆布か煮干し、鰹節でもないか、と思えば昆布を見つけた。
椎茸も見つけたのでそれで出汁を取る。
その間に飯を炊き、冷蔵庫の中を見ておかずを作る。
そろそろ飯も炊けそうだ。出汁も出ている。味噌汁に取りかかった。
足音に目をやれば女が起きてきたところだった。
「おはよう」
声をかけてやると少し間が空いて応えが返ってくる。
食うか、と聞けば頷く。
布巾を持っていった。
暫くして味噌汁も出来、飯が炊けた。
女が飯を仏飯入に入れたあとひっくり返す。
味噌汁やおかずを少しずつとって供えに行った。
それから生きてるものの食事だ。
俺が作る飯をおいしいという。
毎日作っていたらそれなりになるものだ。
女の手首には昨日の縄の痕がうっすら残っている。
殊勝にも暴れなかったから薄い。
飯の後、家事をしている女を見ていると時折気にするそぶりをする。
昼飯を女が作り、食い終えると女が不安そうに消えるか聞く。
「風呂でマッサージしろよ。割と消えるぜ」
消えなきゃ消えないで隠すな、といった。
もうただの「センセイ様」じゃない。俺の女だからな。
それから女の稽古風景を楽しみ、夕飯を食って帰る。
女もこの生活に慣れてきたようだ。

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