月曜は仕事をしたくない。
そんな思いで仕事を何とかこなしたが天気もよくなく何か滅入る。
風が強い。
今日は寝る日にしてしまおうか。
先生と会えないだけでテンションが下がる。
とメールもできないわけで。
あきらめてどさりとベッドに倒れこみ、寝た。
夕方。
メールの音で目が覚める。
先生から夕飯の写真。
おいしそうだ。腹が減った。
何か食べに行くか。
のっそりと起きたところに来客。
「あれ、ハル? どうした?」
「彼氏と別れた。泊めて」
「ついにか。家帰らんの?」
「家まで来そうだから、アイツ」
「はいはい。良いけど俺今からメシ食いに行くよ」
「一緒に行く。おごって」
「テメ、財布は?」
「見ての通りなんも持ってない」
「しょうがねえ奴だな。ちっと待ってろ」
着替えて飯を食いに出る。
蕎麦が食いたいというから蕎麦屋だ。
ざるを頼み酒とざるでやる。
ハルは天そば食っている。人の金で容赦のない奴だな。
食い終わって帰って俺はすぐ寝る用意。
和室に客布団を敷いた。
携帯がなる。先生からだ。
『あ、よかった、まだ起きてたのね。こんばんは。
あのね、明日羊羹を二棹買ってきて欲しいの。それで…』
「ねー久ービールないのー?」
「ないからコンビニで買って来い! そこに金あるだろ」
「えー若い女一人で行けって言うのー」
「イヤならとっとと寝ろ」
ぶつくさとハルは言いながら出て行ったようだ。
『……山沢さん』
「はい?」
『女の子、家に呼んでるなんて良い度胸ねえ』
あ、やべえ、浮気と間違われてる。
「違いますから」
『あら、若い子が良いなら良いのよ。こんなおばさんより若い子の方が良いわよね』
「若い若くない関係ありませんよ。あなただけです」
『知らない』
あ、電話切れた。
何度かリダイヤルしても駄目。
仕方ないからメール。
ハルが家にいる理由を簡単に書き、羊羹はどうして欲しいのか問う。
一時間ほど返事がなくて、今ではハルがビール片手にテレビを見ている。
返事がないなら明日お稽古早めに行かなきゃなぁ。
「おい、先に寝るから。明日適当な時間になったら帰れよ。俺は昼から用事あるから」
「えー暫く泊めてよ~ねー」
「却下。留守宅に人がいるとか無理」
「ちぇーじゃ鍵どうしたら良いのー?」
「掛けて玄関のオーナメントの中に隠しとけ」
「わかったー」
ベッドに潜り込んで更に30分ほどしたとき、やっと返事が来た。
明日ちゃんと聞くから、と。
羊羹は贈り物用として熨斗つけて一本ずつ、表書きはなくて良いということだ。
了解してほっとして寝た。
翌日仕事を早々に終え、帰宅。
鍵はちゃんとオーナメントの中に隠しこんであった。
急いで身支度して先生のお宅へ。
だが話はあとで夕飯が終ってから、と打ち切られてしまった。
怖いな。
とりあえず羊羹を冷蔵庫に、と言うと今持って行くからと取り上げられた。
うん、やっぱり怒ってる。
水屋の支度に入るにも時間が有るので八重子先生とお話。
友人を泊めた際に丁度先生から電話があって、と。
八重子先生はそれで色々納得の様子。
先生の態度とか。
うまく納得させれたら良いね、と言うことで水屋の支度を。
暫くして先生が帰ってきて、生徒さんが来た。
お稽古開始だ。
お稽古中は怒ってることそぶりにも出されず、凄い。
俺へのお稽古も通常通りの厳しさで、忘れてるのかな、とも思ったが…。
夕飯を終えた後、八重子先生に断ってあちらの部屋に連れて行かれてしまった。
入って鍵をかける。
「さ、そこに座りなさい」
説教モードか?
「いてっ」
少しどうしようかと迷っていたらぎゅっと乳をつかまれた。
「抱いたの? 抱かれたの?」
なんちゅうこと聞くんだ。
「ちゃんと別の布団ですってば」
「そんなこと聞いてないわ。ちゃんと答えて」
「どっちもありませんて。誰彼なしにやる奴だと思ってるんですか?」
「そうじゃないけど…仲良さそうだったから…」
「腐れ縁ってやつです。あなたにもいるでしょ古馴染みの困った奴の一人や二人」
「いるけど…」
「だったら信じて。たかが一日会えない間に浮気なんてしませんよ」
おとがいに手を掛けてキスをする。
「信じさせて頂戴…」
「ベッド、いきましょうか」
脱がせて軽めに抱いた。
「愛してるよ、絹」
「私もよ…」
少し落ち着いた頃着替えて先生の家に戻る。
「あらおかえり。話、ついたの?」
「うん。あ、ドラマ始まっちゃってるわね」
何か見たかった番組があったようだ。
先生方はドラマに集中しててCMの間に少しおしゃべりをして。
番組が終る頃には眠くなったようだ。
「あふ…」
「そろそろ寝ようかね」
「はい、じゃ戸締りと火の元を確かめてきますね」
玄関やお勝手、火の元を確認して戻る。
八重子先生はもう部屋に寝に行ったようだ。
先生は大あくび。
「あらやだ、見ちゃった?」
ふふっと笑って部屋に移動。
「あ、お母さん。明日近藤と遊びに行くから」
「何時から?」
「朝の七時」
「朝御飯どうするの」
「いらない。近藤と食べるから」
「はいはい」
「たまには連れていらっしゃいよ」
「うん。じゃおやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
部屋に入って着替え、布団を敷いて寝る用意。
布団に入れば先生が俺の浴衣を乱して胸を触ってる。
結構触るの好きだよなぁ。
というか胸を触るのがすきなのかも?
腹はあまり触らないし。
先生の手も水が温かくなってきて手荒れがマシになってるようだ。
そうやって俺に甘えてるのは可愛くていとしくなる。
そのうち、寝息に変わってきた。
俺も寝よう。
翌朝食事の支度をしてると律君が行ってくる、と台所に顔を出した。
「行ってらっしゃい」
「お早うお帰り」
「気をつけるんだよ」
三者三様に送り出して配膳。
孝弘さんも出てきた。
朝ご飯を食べて、今日は平日だからお洗濯やお掃除のお手伝い。
「山沢さんちょっと、お買物行ってきて」
メモを持たされて買物へ。
重い洗剤類とトイレットペーパね。
買い揃えて帰る。
「トイレの洗剤頂戴」
渡すとすぐトイレの掃除に取り掛かられた。
「俺、ふろ洗ってますから」
「うん」
風呂を洗い終え、ひょいと出たら律君と近藤君がいた。
「うわぁっ」
ありゃ。
律君が慌てて近藤君を後ろ向かせて連れてった。
「どうしたの?」
ぱたぱたと先生が駆けてきた
「や、気づかなくて」
長襦袢を着て長着を手に。
先生に叱られた。
なんでだ。
長着も着て居間に戻ると八重子先生がお昼できた、と言うので台所へ取りに行く。
配膳を済ませて孝弘さんを呼びに。
先生は律君たちを。
食卓についてお昼をいただく。うまい。
近藤君がすぐ目をそらすんだよな。
仕方ないか。
「お昼の後は草むしりね」
先生にそういわれて台所を片付けた後麦わらを借りて庭に下りる。
小鳥の声、木のざわめき。
そんなものを聞きつつ。
お、でっかいみみず発見。八重子先生のガーデニングエリアに放つかな。
草むしりをしていると時間がわからない。
あっという間に日が暮れて美味しそうなにおいがする。
先生がお夕飯そろそろだからと呼びに来た。
手袋を脱いで手を洗い、ついでに顔を漱いで居間へ。
すでに配膳が済んでいた。
座るとご飯を渡されていただきます。
筑前煮メインに俺にはしょうが焼きがついてきた。
草むしりを手伝ったご褒美、と言ったところか?
野菜もそれなりに食べさせられた。
満腹満腹。
先生が台所に片付けに立った。
八重子先生がお茶を入れてくださり団欒。
先生が洗い物を終えて戻ってきたとき、何かに蹴躓いて俺の上に転んだ。
「きゃっ」
「うぅ、いてて」
後頭部打った。
暫く呻いて先生も起き上がれずじたばたしてる。
「ただいまー。え?」
あ、司ちゃん…。
「えーと、その。おばさん?」
「あら? 司ちゃん? あらあらあら」
「痛い、先生、そこっ」
手を突いたところが悪い。痛い。
「ご、ごめんなさい」
先生も慌ててる。
「ただいま。って何してんの?」
「あー、律君良いところに。悪いけどお母さん引っ張りあげて」
よいしょっと律君が先生を引き上げてくれてやっと起き上がれた。
変な風に乗っかかられて力が入らなかったんだよね。
「ああ吃驚した。あんたらご飯食べてきたの?」
「いやまだ。何かある?」
「んー、そうねえ。筑前煮まだ残ってるしお漬物とお野菜の煮たのとあるわよ」
「それでいいよ。おなかすいた」
「はいはい」
後頭部を擦り擦り、先生が出すものを食卓に並べる。
「さっきなんであんなことなってたの?」
司ちゃんも聞きたそうだ。
「それ、そこの。先生が躓いてね」
畳縁から出ている小さい何かを指差す。
「あ、ほんとだ」
「見えない…なにかあるの?」
「うん、なんだろう」
律君たちが食べてるのを見つつ、先生にそろそろ、と挨拶をする。
「明日もお仕事だものねえ。お稽古は来れないんでしょ?」
「はい、残念ながら。土曜日にはきますから」
「わかったわ、気をつけて帰ってね」
「ええ、有難うございます」
玄関まで送られて、人目のないのを確認して唇を合わせてくださる。
少し頬を染めてて可愛い。
「連れ帰りたくなるな」
「駄目よ…また、ね」
「わかってます。じゃあ」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
別れて帰宅し、風呂に入ってすぐに寝る。
明日は営業をしなければならない。
さて起床して出勤だ。
なんだか面白くないが仕事だから仕方ない。
ざっとこなせば昼前だ。
飯を食って営業周り。
道順を組む。
あれ?あ、いいこと考えた。
ここを最後にしたら先生の顔見るくらいできるかもしれない。
よし、と気合一発入れて営業する。
最後のホテルを出るとき、テイクアウトコーナーで売っているデザートを
持ち帰らせてもらうことにした。
たまにはケーキも良いじゃないか。
その足で先生のお宅へ。
「こんばんは。お邪魔します」
「あらぁ?いらっしゃい、どうしたの?」
「これ、ケーキ。近くまで来ましたので持ってきました。
「あらあらあら。おいしそう。冷蔵庫入れておいてくれる?」
台所に行って八重子先生に挨拶して冷蔵庫に入れる。
「あんた時間あるならお稽古して行ったら?」
「いいんですか?」
着替えといでと言われ、着替えて茶室へはいる。
「あら。お客様に入ってくれる?」
「はい」
こんにちは、と言われて挨拶を返しそのまま次客へ。
そのままお稽古は進み、生徒さんは帰られて俺の番だ。
台子は出てないので通常の風炉を。
流石に怒られはしない。
手直しされるだけだ。
お稽古が終わり水屋を片付けて、お夕飯はいただかずに帰った。
帰宅後先生からケーキ美味しいとのメール。可愛い。
土曜日に来るのを待ってるとか書いてある。
何か嬉しい。
明日の仕事も頑張ろう、そういう気になれた。
飯を食って寝る。
適度な疲れ。
よく寝れて朝。起きた。よし、頑張ろう。
ちょっとひんやりしてるなあ。
仕事をしているうちに段々温かくなって、上着を脱いで、脱いでしている。
たまに忘れて帰ってしまうのが難儀だ。
そういうと先生が仕事着にすべて名前を書いてくれた。
だから最近は忘れてもちゃんと次の日に回収できるようになって助かっている。
帰り道、行く気になってジムへよった。
寒いと行く気がしなかったのは汗が引いた後風邪を引く気がしてたからだ。
温かくなったからには風呂がてら行かないのは勿体無い。
ジムで汗をかいて風呂で洗い流し帰宅する。
程よい疲労感。
温かい日差しと眠気。
おやすみなさい。
ふと目が覚めれば暗くなっていて、腹も減る。
メシ。
何食べよう。
面倒くさいな。
とりあえず着替える。買いに行くにも食べに出るにも着替えねば始まらない。
財布と携帯を持ってぶらりと家を出る。
あ。
パスタにしよう。
どこだったかソラマメのパスタをしていたはずた。どこだった?
暫く考え込んで思い出し、店へ行って頼んだ。
少し女性には多いそれを食べて、更に一品を頼む。
先生となら、先生が食べれない分を食べてしまえば良いんだが。
食事を終えてコンビニで甘いものを買って帰る。
うちに帰ってからプリンを食べて、寝た。
翌朝、出勤。
さすがは土曜日忙しく。
途中先生からメールが来た。
"カツオ食べたいわ"
ああ、カツオね、はいはい。
1尾キープしてもらってお仕事お仕事。
終った。疲れた。
魚を持って帰宅する。
先に車に積み込んで、シャワー入って着替えたらお稽古場に移動だ。
ついて渡すと八重子先生がちょっと悩んでいる。
「どうしました?」
「冷蔵庫に入らないからどうしようかねぇ」
「あー。氷いれてきてるんで土間にでも」
そう? といって土間に置いてもらい、手を洗って水屋を用意する。
先生も茶室に戻ってきた。
「あのね、今からの生徒さん、お休みになっちゃったのよ。
だからあんたの先にみてあげるわ」
「ありゃ。そうですか。じゃ用意します」
手早く用意してお稽古をつけていただく。
終ったころ、次の生徒さんがいらっしゃった。
ナイスタイミングである。
さくさくとお稽古は進んで生徒さんが帰られた。
「さてじゃ仕舞いますか」
「そうね」
「絹ー、あんた片付けて山沢さん台所来て頂戴よ」
八重子先生が茶室に顔を出した。
「どうして?」
「カツオ。私がするより山沢さんのほうが良いだろ」
「あらそうねえ。じゃこっちはしとくわ」
とりあえず汚れて良い服に着替えてからカツオを下ろした。
四分一は炭を貰って叩きに。
後は八重子先生が好きにすれば良いということであらとかを片付けた。
なまり節を作るらしい。
あとヅケとおろし和えにするらしい。
へー。
いろいろにして食うもんだなぁ。
手を洗って服を着替え、食卓を片付けてお箸や取り皿を出す。
しばらくして先生も戻ってきて配膳を始めた。
あ、炒め物の匂い。
と言うことは俺の分かな。
律君が帰ってきて、孝弘さんを呼びに行って。
しばらくしてタタキとかヅケとかお刺身とかになって出てきた。
俺の分には肉野菜炒め。
ごはんをよそってもらっていただきます。
炒め物は生姜の風味がする。
おいしいなぁとにんまり。
「カツオ、美味しいわね」
「うん。山沢さんが持ってきたの?」
「そ、お母さんが食べたいって仰ったからね、良いのを持ってきたんだ」
「1尾丸ごと持ってきてくれたのよ」
「高いんじゃないの?」
「仲卸だからね、そうでもないんだよ」
「後でお支払いするから教えて頂戴ね」
「いいですよ、そんなもん」
「だめよ、私が食べたくて頼んだんだから」
「いやいやいや」
「貰っときなさいよ。いいから」
「そうですか?」
「私から持ってきてっていったのは払わせて頂戴」
「そうおっしゃるなら」
ご飯を食べて後片付けしてまったり。
お風呂、と先生方が入って。
なんだかんだ眠くなってきた。
そろそろ、と先生と布団に入る。
何もしてないうちから腕を噛まれた。
「ん? どうしたんですか?」
「なんとなく…噛みたくなっちゃったのよ」
「じゃなんとなく、ここ噛んじゃおうかなあ」
さわっと股間を撫でる。
びくっとしてか細くダメ、というのが可愛い。
「眠そうだね」
「うん…寝て良い?」
「そういうときもあるよね、いいよ。おやすみ」
「ありがと」
キスだけして寝かせた。
ちょっと物足りないけどしょうがない。
おやすみなさい。
翌朝、すっきりとした顔で先生が先に起きている。
俺が起きたの見計らって布団から出て身づくろいしてて、綺麗で良い。
見とれてるとあんたも早く支度しなさいって言われた。
もうちょっとーと甘えてみたら布団引っぺがされた。
そんなとこでオカン発揮しないで欲しい…。
しょうがなく起きてご飯の用意をして食べて。
お洗濯のお手伝いをしてパタパタしてるとあっという間に昼の支度をせねばならない。
お昼の支度をして食べる。
さて午後からはどうしようかな。
あ、そうだ。
「先生、来週、日曜から旅行しません?」
「旅行?」
「水曜までダメですか、先生お借りしちゃ」
八重子先生に振ると、別に良いよと仰る。
「どうですか?」
「お母さんが良いなら良いけど、律にはどういうの?」
「普通に旅行行くで良いじゃないですか」
「そう?」
「堂々といえば問題ないでしょ」
「そうかしら」
「まだ宿とってないから、取れたら本決まりで良いですか?」
「あなた会社は?」
「4半期に3日休んで良いことになってまして既に休むの言ってあります」
「あら」
タブレットを引き寄せて目当ての宿に連絡する。
その後喋っていると一時間ほどでメールが帰ってきた。
一階が取れるようだ。
茶室付の離れとどっちでも取れるとのこと。
先生に提示したところ、茶室はなくて良いということになり、
普通の1階の部屋を取った。
食事についての連絡をしっかり目にしておく。
来週は先生と旅行か、楽しみだ。
「ああ来週しないなら今からしようかね」
「へっ?」
「お稽古。昨日一回しかしてないだろ」
「あ、はい。いいんですか」
「じゃ電熱器の方でする?」
「炭、熾すの面倒だからねぇ」
そんなこんなで水屋の用意をしてお稽古5回。
夕方になってしまった。
先生と夕飯のお買物に出て沢山買い込む。
「あなた明日来るの?」
「これそうなら」
「できるだけ来なさいね」
「はい」
お夕飯の支度をして食べる。
和気藹々とした食卓はにぎやかで良い。
お片付けをしたら帰る時間だ。
「帰りたくないなぁ」
「明日お仕事でしょ、早く帰って寝なさい」
「ここから通えたら良いのに」
「はいはい、無理なこと言わないの。ほら」
急き立てられて帰る。
疲れて帰って脱いでベッドに倒れこむ。
あっという間に寝てしまった。
翌朝出勤し仕事をする。
暇だ。昼になるに従い暑くなってきた。
ぽいぽいと脱ぎ捨てつつ仕事をして帰宅。
あ、服忘れてきた。まぁ良いか。
先生からメール。
暇ならお稽古来なさい、と。
どうしようかな…。
行くか。
よし行こう。
身支度して電車に乗り先生のお宅へ。
「こんにちはー」
「いらっしゃい、用意して入ってらっしゃい」
「はい」
鞄を置いてお稽古に混ぜてもらう。
上級の方々とのお稽古は緊迫感がある。
そして叱られるのは私だけだ。
内弟子には厳しい。と言うことにしてある。
お稽古がすんで、お夕飯のお手伝いをして食べた。
先生と二人台所で片付け。
帰りたくないなぁ。
「なぁに? また言ってるの? 明日お仕事でしょ」
「ですけど帰るのが面倒くさくなっちゃいました」
「お仕事ちゃんと行かなきゃだめよ」
少し考えて。
あちらの家に行かないか、と言ってみた。
「今、してあなたが寝る頃にこの家を出れば。仕事間に合うからどうかな」
「ダメよ。帰んなさい。寝不足で仕事なんてダメ」
くい、と引き寄せてキスする。
先生はぎゅっと俺の手を握って…唇が離れると頬を染めている。
「可愛いな。あちらへ行かないならここで続き、しちゃうよ?」
「だめ、ね、良い子だから今日は帰って寝て頂戴」
首筋に手を這わせてくすぐる。
びくっとしてて本当に可愛くて。
「だめ?」
「そう、だめよ…お願い」
「しょうがないな…そのかわり」
先生の身八つから手を入れて乳首にリングをつけた。
「明日、朝までつけてて」
真っ赤になって、崩れた部分を整えてる。連れ帰りたい。可愛い。やばい。
「去年、外したままそれっきりだったでしょ?
今度は18金にしてみました。デザインはお風呂のときにでも見てください」
こくり、と頷いて。
このままでは居間に戻れないからくだらない話をする。
先生が普通に話せるまで。
本当ならそのまま居間に連れて行って恥ずかしがってるのを楽しみたいけどね。
「さて。諦めて帰りますね。また明日」
「ん…明日、ね」
居間で八重子先生に挨拶して玄関へ。
「おやすみなさい」
「おやすみ、気をつけて帰ってね」
「はい。じゃ…」
暫く見送ってくれた。
電車に揺られて帰宅し着替えてすぐに眠りに落ちた。
翌日暇な仕事はとっとと終らせ先生のお宅へ。
先生は逢うなり俺を見て頬を染めて手を握ってきたがどうしたのだろう。
「あの…」
「どうしました?」
なにかもじもじしている。
クゥと先生のお腹がなった。
「ほら、早く食べてきてくださいよ。水屋支度してきますから」
「あ、うん…」
頬を染めたまま、戻っていった。
いいけどさ、八重子先生だけだろうし。
用意をして生徒さんが来られてしばらくして先生が定刻で茶室に。
うん、いつもの先生の雰囲気に戻ってる。
切り替えが早くて凄いよな。
そのままお稽古は進み俺のお稽古へ。
いつものように厳しくて、でも目が合うと一瞬そらしてるような。気のせいか。
お稽古が終って水屋を片付けていると先生がご飯終ったらあちらの家に、と言う。
なんだろう。
とりあえずご飯を食べて、ちゃんと律君たちがいるときは先生は平常で。
よくわからないまま先生とあちらの部屋に入った。
鍵をかけたらすぐ先生がぺたりと俺にくっつく。
「どうしたの?」
「あなた、昨日あんなのつけるから…」
あ。忘れてた。
「外したんでしょ?」
「外したけど…その…」
「欲情しちゃった?」
「…ばか、恥ずかしいわ」
「我慢できなくなっちゃったの? 可愛いな。抱いてあげる」
凄く顔が赤くて凄く恥ずかしがってて大変に可愛らしい。
たまらんなぁ。
着物を脱ぐのも焦っちゃって、と言う様子。
「そのまま抱いてあげようか? とりあえず一回したらゆっくり脱げば良いんだから」
「汗が困るわよ…」
じゃ、と手伝って脱がせた。
珍しくも脱ぎ散らかしたまま先生は床で抱かれた。
しばらくして息が荒いのが収まって、気分も落ち着いたようだ。
「恥ずかしい…」
「ん? 俺は恥ずかしがってるあなたが好きだから。良いけど」
「ひどいわ」
くすくす笑って柔肌を撫でる。
気持ち良い。
「で、どうします? 一旦戻りますか? それとも10時くらいまでここにいますか」
「そう、ね。あなた我慢できる?」
「できますよ。もう一度くらい、家でもさせてくれるんならね」
「だったら帰るわ。お風呂も入らなきゃいけないし」
「あぁ。じゃその前に」
先生の汚れたそこを舐める。
「あっ、もうっんんっだめよ、舐めないで…」
そういいつつも押し付けてくるのが可愛い。
でもつんつんとお尻の穴を舌先でつつくと身体が逃げる。
黒ずんでなくて綺麗でやっぱり体質って重要だ。
ずっと我慢していたからか、軽く舐めてるだけで逝ってしまった様だ。
ちょっと怒ってる。
にこにこと見てたらなんなの?と聞かれた。
「ん? いや怒ってるあなたも綺麗だと思って」
「もうっ」
先生は息をついて着物を着る。
俺はその間に手と口を漱ぐ。
そして帰宅。
先生はそのままお風呂へ。
俺は八重子先生とおしゃべり。
先生がお風呂から上がってきたので火の始末や戸締りを確かめた。
八重子先生に挨拶して先生と寝室へ。
布団を敷いて先生が髪を乾かすのを待つ。
ふぅ、とドライヤーを置いて落ちた髪を拾い上げてる。
眉根に皺。
「どうしたんです?」
「ん、白髪。やんなっちゃうわ」
「先生は少ないような気がしますが」
「そう?」
「俺はほら、ここにたくさん」
「あらほんと、見えなかったのに結構あるのねえ」
するん、と先生の股間に手を這わす。
「ここは、もうないでしょ?」
「あ…」
見つけ次第抜いてるしね。
「ね、片付けるまで待って…先、布団に入っててくれる?」
「うん」
手を離して布団に入る。
横になって先生が細々としてるのを見てるのも楽しい。
そろりと布団に入ってきた。
いつになっても照れくさそうに入ってくるのが可愛らしく。
たまにそのまま寝ちゃうけれど。
キスをして、ゆっくりと丁寧に抱く。
さっきは先生が急いてたからざっくりとしか出来なかった。
滑らかな肌も心地よく、背中に腰にと手を這わす。
白い肌が徐々にピンクに染まる。
幸せそうな顔を見ていると嬉しくもあり、いじめたくもあり。
まあでもここで声を立てられるとそれはそれで困るから。
幸せな顔だけ見ているとしましょう。
ゆったりと抱いて眠る。
寝息も心地良い。
翌朝、目が覚める。先生は気持ちよさげな寝息で。
布団から出たくないなー。
とは思うものの、律君も学校だから朝飯作らないとね。
布団に先生を残して台所に向かう。
ちょっとひんやりした朝だ。
ご飯を炊いてお味噌汁と焼き魚。酢の物と納豆。
ととのった頃先生が起きてきて食卓を片付けている。
八重子先生も起きてきた。
今日は皆お寝坊さんか。
「律ー、いい加減にしないと遅れるわよー」
そんな声が聞こえてる。
朝が涼しいと布団から出たくなくなるよね。
お母さんをしている先生も好きだな、微笑ましい。
皆で食卓についていただきます。
ご飯を食べて律君を送り出したらお洗濯。
掃除、掃除。
先生に指示を貰ったり。
平穏な日常も先生となら楽しい。
お買物へ行ってお昼と晩のおかずを考えるのも先生と共に。
幸せを満喫。
「明日どうするの? くるの?」
「うーんどこのホテルにしようかと」
先生に近隣のホテル情報を教えてもらう。
生徒さんからの口コミらしい。
「うちの近くは一緒に行くけど…この辺は行ってませんね、たまには行きたいなぁ」
「中々ねえ。家族いるとね」
「作っといてよそ食べに行くのも面倒になりますよね」
「そうなのよね、もう良いかってなっちゃう」
「八重子先生に作ってもらって俺らは出るというのも何かちょっと」
「そうよねえ。まぁ機会が有れば、にしましょ」
「はい」
帰宅してお昼を作って食べて、また掃除。
草むしりに庭に下りる。
八重子先生に抜いてはいけない雑草に見えて雑草じゃない奴を教えてもらって。
黙々とむしってると先生が下りてきて麦わらを頭に載せてくれた。
「涼しいけど…日に焼けるわよ」
「ありがとう。で、悪いんですが背中かいてくれません?」
「ここ?」
「あー、気持ち良い。この手ではちょっとかけなくて」
くすくす笑って軽めに掻いてくれて。
ぽんぽんと頭をなでて掃除に戻って行かれた。
さて再開。
夕飯の匂いがするまで頑張って手袋を脱いで手を洗い顔を漱ぐ。
「お疲れ様、ご飯できたわよ」
おいしくて沢山頂いて満腹。
「じゃあ。また明日、来れたら来ます」
と別れて帰宅した。
すぐに風呂に入って寝る。
起きて出勤。
暇だ。
今日は雨の予報と言うこともあり、いつもよりも更に暇だ。
あくびも出る。
今日はどこを回ろうかなあ。
いくつかプランを考えて事務方に見積を作ってもらった。
仕事が終って着替えてホテル回りをする。
いくつか回って交渉し、最後に先生に教えてもらったホテル。
なるほど良い雰囲気でお勧めされる理由がわかる。
遅めのランチなのか早めの夕食なのかお客さんもおいしそうに食べている。
交渉の反応は悪くない。
営業を終えてケーキを買う。
先生に差し入れしよう♪
そのまま車を走らせ先生のお宅へ。
「あぁ来た来た、入って」
「はい、あ。着替え」
「なくてもいいわ、お客様して頂戴」
はいはい。
正客に入り、お茶をいただいたり問答をしたり。
生徒さんのお点前が終わって俺のお稽古。
お夕飯も頂いて先生たちとケーキを食べる。
おいしい。
先生も幸せそうな顔をしている。
甘いものは別腹らしい。
暫く団欒を楽しんで帰宅する。
トイレに入って気がつく。そうか今日からか。
夜更かしせずさっさと寝よう。
おやすみなさい。
翌朝、もっと寝てたくてグダグダしつつも出勤する。
暇なりに荷物は動き昼前に仕事が終った。
眠い。
早く帰って寝よう。
帰宅すると先生が来て飯を作ってくれてた。
食い気より眠気なんだが…。
作ってくれたんだからと食うことにした。
うまい。幸せ。
「あら眠そうねぇ、寝てくる?」
「うん。あなたもおいで。洗い物後でいいから」
くすっと先生が笑って台所に食器をつけ置きしている。
暫くして着物を脱ぎ寝巻を着て布団に入ってきた。
懐に抱きこんで寝る。
良い匂いだ。
3時間ほどだろうか、ぐっすりと寝てふと目がさめる。
先生はまだ寝ているが先生も俺も汗をかいていた。
流石に昼日中、布団をかぶって抱き締めて寝てたら暑いよな。
そろりと布団から出てまずはトイレに。
それから先生が蹴っ飛ばしかけてる布団をはいで肌掛け布団に変更。
潜り込んだ。
丁度良い温かさだ。
もう眠気はないけれど先生を抱いてごろごろしてるのは幸せで良い。
少しして先生も起きた。
軽くキスする。
俺の腹がなった。
「あらもうおなかすいたの?」
「そのようで…」
くすくす笑ってる。
「冷蔵庫、何も入ってなかったわよ。何か買ってくる?」
「ん、コンビニ行きます。なんかいりますか?」
「あらどうせならお夕飯の買物もしましょ」
布団から出て先生は着替えだした。
「泊まっては…」
「いかないわよ。朝忙しくなるじゃない」
「ですよね。ってかどうしたの、今日は。来る予定なかったんじゃ」
「朝ね、お友達と会ってたのよ。大森に住んでる人でね。
ランチ一緒にとって夕方まで遊ぶつもりだったんだけど…急に用事が入ったみたい」
「ああ、ついでですか」
「だって大森まで出たんだもの。そのまま帰るよりお昼作ってあげたくなったの」
一瞬むっとしたのを察知されたようだ。
「おいしかったよ。嬉しかった」
後ろから抱き締めてうなじにキス。
「だめよ、着替えてるのに。おなかすいてるんでしょ」
邪魔しないで、と手を外されて着替えるのを眺める。
時折先生は強い。
着替え終わってお買物へ出る。
先に喫茶店に寄って先生はレモンスカッシュ、俺はパンケーキとコーヒー。
腹の虫が泣き止んで、それからぶらぶらとお買物だ。
先生に任せてたらおいしいものが食べれる。
言われるがままに買い揃え帰宅するとすぐ割烹着を着て台所へ。
美味しいご飯を作ってもらって食べる。
食べてすぐ。
「じゃ帰るわ」
「え、ちょっと」
「明日も会えるんだから良いでしょ」
「飯つくりに来ただけですか、マジで」
「そうよ」
「昼にしとけばよかった…」
うふふ、と笑って頭をなでられた。
「明日待ってるわね」
「はーい、しょうがないなぁ。駅まで送ります」
「ありがと」
先生を送って、帰宅。
寂しさは寝ることでごまかすしかないなぁ。
おやすみなさい。
朝、気だるいが出勤して仕事。
少し忙しかった。
旅行の用意をした鞄を持って先生のお宅へ到着。
食卓を囲む先生に挨拶した。
「先生、旅行の用意出来てます?」
「えっあっ! 明日からだったわね、忘れてた…お母さん、お稽古ちょっとお願い」
先生が八重子先生を拝んで、今日は八重子先生とお稽古ということに。
とりあえずはお稽古の用意をして生徒さんを迎え入れる。
二人目のお稽古が終ったころ先生が戻ってきた。
八重子先生と交代だ。
生徒の皆さんが帰られた後、俺のお稽古。
今日もかなり怒られて少しへこんだ。
水屋は先生に任せ、荷物を預かり俺の荷物と共に宅配に出す。
戻ると既に食卓にご飯が並んで先生と律君が喋っている。
「そうそう明日から山沢さんと旅行行くから。あんたお父さんのことよろしくね」
「ええっ? 聞いてないよ」
「忘れてたのよね」
「おばあちゃんは?」
「行かないよ」
「そうなんだ? じゃなくて聞いてたの?」
「聞いてたよ。お稽古の都合もあるからねぇ」
「ただいま。やぁ律君、こんばんは。お母さんいないとさびしい?」
「そういうわけじゃないけど」
「水曜になったらちゃんとお帰しするから安心して待ってたら良いよ」
「それでどこ行くの?」
「伊豆だよ。八重子先生、これ宿の電話番号です」
「はいはい」
「あ、そうだわ、ドライヤー…」
「私のでよければ入れてますよ」
「部屋にあるんじゃないの?」
「ブラシついてない奴はあるんだけどねー」
ご飯を終えて片付ける。
「ね、明日これどうかしら」
「うん、いいんじゃないかねえ」
明日着ていく着物の相談をしてるらしい。
「ねえ山沢さんはどれが良いと思う?」
「どれでもいいですよ」
むっとしてしまったようだ。
「だってどれも先生が着たら似合いそうですから」
あ、ほころんだ。可愛い。
「そろそろお暇しますね。明日お待ちしてます」
「はぁい、気をつけてね」
そして別れて帰宅だ。
手荷物だけ用意して後は明日の昼は先生が来るまでに三友居さんの弁当でも買うか。
明日が楽しみだなぁ。
翌朝、ゆっくり目に起きて一応手荷物品の確認もすませた。
携帯には荷物の到着を知らせるメールが来ている。
先生から家を出たとの連絡をもらったのは11時ごろ。
さてそれでは、と松屋銀座へ。
中の人と話していると予約キャンセルが出てそれをお勧めされた。
勿論そっちを選んで持ち帰る。
暫くして先生が来た。
「いらっしゃい。お昼どうします? 今食べるか電車で遅い目のお昼にするか」
「泊まるところのお夕飯何時かしら」
「6時半にお願いしてます。新幹線は1時半です」
「じゃ…電車で頂きましょ」
上から下まで眺めて。
「なあに?」
「綺麗だな、と思って」
ぽっと頬を染めて可愛らしい。
少しお茶を飲んだり先生が手荷物を確認したり。
「じゃ行きましょうか」
「そうね」
忘れ物なし、テレビも電気も切り忘れはなし、と。
東京駅までタクシーで行き、新幹線に乗る。
お弁当を広げると先生が凄くうれしそうな顔をした。
ふふん。
おいしい、おいしいと先生が食べていて、俺も幸せだ。
ごちそうさまをして暫くしたら乗換え。
残念ながら普通車しかあいてなかったけれど海側の座席。
旅情を誘う風景だ。
俺は何度か来ているけれど。
駅について先生はきょろきょろしてる。
こっちこっちと手を引いて階段を下り外に出たらちょうど宿の送迎バスが停車していた。
先生を乗せて俺も乗る。
他の客を待って10分ほどして出発。
ほんの5分ほどで宿に到着し、フロントでお茶を頂きチェックインした。
手荷物を仲居さんが持って部屋に案内される。
送った荷物は部屋に入れてくれてある。
先生を上座に据えて落ち着くと化粧品を選ばせてくれる。
選んで細々とした説明を先生が受け、仲居さんが部屋を出た。
「すごいわねぇ」
と先生があちこちうろうろしてる。
これが見たくてつれてきたようなものだ。
「お風呂、入りますか?」
「そうね」
「その風呂か、大浴場かどっちが良いです?」
「ん、先にお部屋の入ろうかしらね」
じゃあ、とハンガーを出して先生を脱がせる。
「自分で脱ぐわよ…」
照れてるのも可愛いなぁ。
シャワー室でさっとかかり湯をして先生が風呂に入った。
俺は持ってきた浴衣に着替えて縁側から風呂へ。
「湯加減どうです?」
「気持ち良いわぁ」
「それはよかった」
湯がきらきらと反射し、先生の肌に。
綺麗だなぁ。
「ねぇ先生、付き合いだした頃熱海に行きましたね」
「あぁそうねぇ随分前に思えるわ」
「俺に抱かれるのもまだ怖がってましたっけね」
「あの頃はねえ」
「今は怖くない?」
キスする。
「たまに怖いわ」
肩を舐める。
しょっぱっ!
「どうしたの?」
「お湯、海水だったの忘れてた」
「あらあら」
くすくす笑って、そろそろ出るから、と言う。
俺も中に入ろうかな。
ぱしゃりと湯船から出てシャワー室に入ってすすいでる。
暫くすると宿の浴衣を羽織って先生が縁側に出てきた。
「良いお天気ねぇ」
「ですねぇ、湯冷めもしなさそうな」
風に先生は身体を冷まされるのを待っているようだ。
色っぽいなぁ、湯上り。
そろそろ引き寄せたくなって動いたら先生が立ち上がった。
「あなたお茶いる?」
「あー…はい、いただきます。が、冷蔵庫に冷えた水ありますよ」
「…冷蔵庫どこにあるの?」
こっち、と玄関の方へ連れて行く。
シンク下は冷蔵庫だ。
中に入ってるものを見て先生が楽しそうな顔になる。
青汁豆乳を持ってお座布団の上へ行き飲み始めた。
それ飲まれたらキスしにくいなぁ。
「それお腹膨れません?」
「うん、ちょっと」
「散歩しましょうか。館内案内しますよ」
「そうしてもらおうかしらね」
先生も持ってきた浴衣に着替え、一緒にぶらぶらと。
ここの館内履きは草履で普段から履きなれてる二人には気楽だ。
先生の手を引いて大浴場や売店、ジムやボーリング場などを見せる。
「広いのねぇ」
「あっちの方には居酒屋と日帰り温泉がありますよ。あさって昼に行きましょうね」
「明日は?」
「プールとエステ。エステは予約入れてありますからね」
「あら嬉しいわ。でもプール?」
「泳ぐんじゃなくてジャグジーみたいなやつですよ」
「水着持ってきてないわよ?」
「持ってきてありますよ、俺の見立てですけど。後で着てみてもらえます?
サイズあってるか知りたいから」
「えっ」
赤くなってる可愛い。
ちょっとキスして頬を撫でる。
「あ、だめ、こんなところで」
「知らない人しかいませんよ、大丈夫」
「人前なんてはしたないわよ」
「可愛いなー」
「もうっ」
ゆっくり先生と歩いて売店へ。
BBクリームや口紅などを先生が見ている間に俺はサプリをいくつか。
「それ試してみますか? 色はピンク系でしょうかね」
店員さんが先生を見てこちらのお色のほうが、と勧めてくる。
手の甲に伸ばすと結構気に入ったようだ。
「じゃこれと口紅は?」
「あ、この色が良いかしら」
「うん、じゃこれとこれと…」
会計をして部屋に戻る。
先生が慌ててトイレに入った。
「我慢してたんですか? 売店にトイレあったんですよ」
「え、そうなの?」
トイレの中から返事が返ってきた。
出てきたので洗面所でさっきのBBクリームをオイルで取り、手を洗ってもらった。
大きい鏡を見ていると…先生の胸を揉みたくなってしまう。
いやもうすぐご飯だ、今はだめだ。
お座布団に座ってテレビを見つつ暫くおしゃべりして、ご飯の時間になった。
先生を連れてラウンジへ行く。
係りの人に案内されて今日は1階だ。
食前に梅酒を頼み先生と乾杯していただく。
「おいしいわねぇ」
「ですねぇ」
暫くして食事が運ばれてくる。
懐石のように一品ずつ。
「あら、あなたのメニューと私のメニュー違うのね」
「俺は魚苦手ですからね、その分あなたのお皿は良いものばかりお願いしてありますよ」
うふふ、と先生がうれしそうにしている。
次々と食べては出てくる料理。
「お腹膨れてきちゃったわ~でもおいしい」
「でしょ? どうしても多いなら助けますよ」
「そう?」
先生がちょっとずつ、残す分を平らげつつデザート。
「甘いものは」
「別腹ですよね」
うっふっふ、と先生がにこやかで見ていて本当に楽しくなる。
食後のコーヒーを頂いて部屋へ戻る。
「ああ、お腹一杯~」
「布団に寝転がっても良いですよ~」
「あらだめよーお化粧落としてないもの」
「じゃ、落としちゃいましょう」
「そうね」
「どうせだから脱いで…風呂で洗ったら良いでしょう」
「んー」
畳の上で俺の膝を枕に転がっちゃった。
そのままテレビを見ている。
番組が終って先生が脱ぎ始めた。
「あなたも一緒にはいる?」
「そうしましょう」
脱ぎ捨て先生と一緒にシャワー室へ。
先生が洗顔の間に背中を流し前も、と思ったがそれは自分ですると言われてしまった。
残念がりつつ自分の身体を洗って漱いで外の湯船へ。
う、あつい。
「早く入りなさいよ」
「ケツ押さんで下さいよ」
「お尻」
「ケツ」
ごつん、と拳骨が落ちてきた。
中ほどまで行って浸かる。
先生も俺の横に。
「あぁ良い星空ねえ」
「あ、ほんとですねえ」
ぱちゃぱちゃと湯を楽しんで先生に触れたり。
暑くなってはふちに腰掛けて涼んで、また冷えたら入って。
気持ち良いねえ。
先生が俺に覆いかぶさってキスして来た。
「そろそろ上がりましょ」
「はい」
シャワーで湯を流して宿の浴衣を羽織る。
先生は洗面台の前で化粧水をたっぷり目に使っている。
先ほど飯の間に化粧品が置かれていた。
俺も化粧水だけつけて布団に転がる。
「はー暑いー」
暫くごろごろして、むくっと起きて荷物の整理。
明日の水着を出して、後はいろんなものを仕舞ったり出したり。
ドライヤーはとりあえず先生の希望だし。
先生が戻ってきたので水着を渡した。
「着てください」
「いま?」
「そう、今」
「……え、こんなの無理よ」
「まぁそういわず」
渋々つけるものの凄く恥ずかしがる。
「綺麗だな」
「ビキニなんて恥ずかしいわ」
「ま、そうおっしゃると思って…持ってきてますよ、フィットネス水着」
着せてみると丁度良いサイズ。
「んー、でも俺はさっきのほうが良いなぁ」
「いやよ、こっちでいいわよ」
そういいつつ脱いで畳んでいる。
笑ってビキニは鞄に仕舞って先生を引き寄せる。
「なぁに?」
「そろそろ抱いて良い?」
「いいわよ」
掛け布団をのけて、先生を転がす。
キス。
「昨日してないから…」
「ん、わかってるわ」
まぁでも移動とかで疲れてるだろうからと軽めに抱いて。
案の定2回逝かせたら寝てしまった。
気持ちの良さそうな寝息がなんか良くて幸せな気分だ。
浴衣を着せてもう一つの布団に仕舞ってあちこち片付けて電気を消す。
布団は片方しか使ってないとしたのがバレバレで先生が困る。
ぐしゃぐしゃになったほうの布団に潜り込む。
大丈夫、先生の残り香がある。
おやすみなさい。