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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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501

朝、俺より先に先生が起きていて着替えようとしている。
「おはよう。良い夢見れた?」
「…覚えてない」
「あら~。初夢見なかったの?」
「そのようですね。ってまだ早いじゃないか。もうちょっと寝ない?」
「しょうがないわねぇ、ちょっとだけよ」
布団にもぐりこんでくれた。
胸を触りつつ先生の初夢を聞き出す。
「小さかった頃の夢を見たの。お母さんに甘えてる夢」
「今も甘えてるところありますよね」
「そうねえ。ん、それ以上はダメよ。したくなっちゃうから」
「されちゃったら?」
「ダメよ。おなかすいたわ」
「残念」
「明後日ね」
軽くキスされて布団から出て着替え台所へ。
お雑煮と御節を詰めなおす。
甘口のお酒も持って出た。
二日目にもなると飽きてくるのでは有るが先生のお料理はうまくて俺は飽きない。
食べ終わったら身づくろいしてお年始回りだ。
去年行ったから大体わかる。
足元が悪いので先生の手を引いたり。
あちこち回って帰ると昼を過ぎている。
「おかえりー」
「ただいまぁ、外、寒いわよー」
「やぁ結構に冷えましたね」
「早く着替えてコタツ入りなさいな」
「そうするわ」
脱いで干して。
先生は裾に跳ねが上がってないか点検している。
「あぁ、だめだわ。出さなきゃ」
「どれ、あ、これはいけませんね」
襦袢姿で二人で覗き込んでたら後ろから声を掛けられた。
「あんたたち何してるのよ」
「あ、あぁ。環さん。あけましておめでとうございます」
「姉さん。あけましておめでとう。どうしたの?」
「おめでとう。あんたたちそんな格好でいるから何かと思ったのよ」
「外、雪だったでしょう。跳ねが上がってないか見てたの」
「なんだ、早く着替えなさいよ」
着替えた後お昼ごはんとして御節を環さんたちと頂いてそれから先生と書初め。
今年は「誠」と書き、先生は「精進」と書かれた。
八重子先生はやはり何か草書で書かれている。
「姉さんも書いたら?」
「え、私?」
「はい、筆」
「うーん…なに書こうかしら」
さらさらっと新春と書かれたが字のレベルは微妙。
先生方と比べちゃうとだけど。
片付けて手を洗い、御節をつまみつつゆったりと更けてゆく。
「姉さん今日は泊まるのよね?」
「開が帰ってくるかもしれないから帰るわよ」
「外、危ないわよ」
「でも」
「泊まりなさいよ、あんた怪我でもしたらどうするんだい」
結局泊まられることになり先生が部屋の用意をしている。
その間に風呂に湯を張りに立った。
りゅうひと棒だらを出してきて晩飯。
食後、八重子先生が風呂に入り、環さんが続き、先生が入る。
ふとトイレに立つとあれが来てた。
八重子先生にあちらの家にいると理由を話して鞄を取りコートを着込んで移動した。
何かと八つ当たりしそうで一緒にいないほうが良い。
それは八重子先生も納得した。
しかし部屋が暖まらない。
布団に毛布を入れて潜り込んだが寒い。
とは言え今更戻るのはなんだかな、と震えていると携帯がなった。
先生から。八つ当たりしても良いから戻って来いと。
正月から喧嘩したくないからどうしてもと断った。
やっと暖まってきた部屋で一人静かに寝る。
こんな日になるなんてしょうもないなぁと思いつつ眠気に絡め取られた。
ふと目が覚めると夜明けの気配。
先生からのメール。
朝食が出来たころに呼ぶから寝てるようにと優しい思いやり。
ひと寝入りして電話で起きる。
着替えて先生のお宅へ戻り、朝ご飯を頂く。
俺の分はちゃんと白味噌で濃さも俺の作ったとおり。
覚えてくれたらしい。
環さんの隣は少々気に入らないが。
食後すぐに布団に追いやられてしまった。過保護だ。
お昼になったら起こすからって言われたけど一人寝は寂しいんだよね。
ぶつくさ言いながらも潜り込んで寝ているとたまに先生が来て頭を撫でていく。
病気の子供じゃないんだから、と苦笑しつつしたいようにさせた。
この人は何と言うか性愛より何より母性愛が強いんだろうな。
うまそうな匂いがしてきた。
八重子先生が呼びに来る。
肉。肉の匂い。
焼肉だ。毎年なのか。
先生が俺に肉をどっさりくれる。
食べた後また布団に連れ戻された。
太る…。
というかヤりたい。食欲睡眠欲の後は性欲だな。
とはいうものの環さんも司ちゃんもいる家でそれは無理だ。
今晩帰って家片付けて明日先生が来るからその時にしないとな。
ふと気づくと夕飯の気配。
寝てたようだ。
腹減ってる。
起きて台所に顔を出すと先生がもうちょっと寝てたら、と言う。
腹が減ってるから眠れない。
そういって食卓を片付けてご飯を待つ。
スパゲティが出た。
先生としてもちょっと和食に飽きた?
おかずとして舞茸チーズ、ほうれん草のソテー。
と言うことは買物いったのか。
ほうれん草にしたのは俺のためかそれともほうれん草くらいしかなかったか。
ブロッコリー食いたい気分だったんだが、ま、明日にしよう。
おいしく頂いた後、辞去を告げた。
「掃除くらいしてあげるわよ」
「甘やかしすぎです。大丈夫ですから。明日待ってますね」
「気をつけて帰るのよ? ほら、そんな格好じゃダメよ」
羽織の上からコートにマフフー、ショールを巻かれてしまった。
厳重な扱いに、バスも電車も乗るんだが、と思う。
環さんは明日朝帰られるそうだ。
別れて久しぶりの自宅へ。
……汚い。
先生の家の清潔さと比べると、年末掃除に来てもらった割には汚い。
移動で疲れた気になってたけどこれはいけないと慌てて掃除を始めた。
うっかり途中でやる気がなくなっても良いようにトイレと風呂から。
なんとか居間の掃除と、寝室のベッドメイキングを終えてやる気が終了した。
もう明日の朝で良いかな。
トイレに行って、寝た。

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500

朝、着替える前に雑煮の支度をする。
支度が整い着替えてから茶室で新年の挨拶を交わす。師弟として。
それからお雑煮と御節を出した。
去年も見てるから律君はスルーしているが先生はほんのちょっとだけお相伴と飲んでいる。
俺は御餅三つ、先生方と司ちゃんは一つ、律君は二つ。
孝弘さんはおかわりしている。いくつかわからない。
お酒も順調に減っている。
先生も少し酔ってきているようだ。
もたれかかってきた。
年末はお疲れだったんだろう。
そういえば今年は何も言ってないのに膾が多めに入っていてそういう気遣いが嬉しい。
おいしく頂いて、司ちゃんと律君にはお年賀を渡す。
先生方には朝のご挨拶の時に渡した。
先生が寝てしまわないうちにと初詣に行くことに。
コートにショールをたっぷり着せて風邪を引かさないように気をつける。
外はすがすがしい正月の空気だ。
「寒~い」
「ですねぇ」
雑踏は手を掴み人波に揉まれ、律君達とははぐれ。
神前ではこの人とずっとこうしていられるようにお願いをした。
欲を言えば二人暮らしだけどそれは高望みと言うもの。
お守りを授与していただいて待ち合わせ場所で合流して甘味処へ流れる。
先生方はおぜんざい。
俺はみたらしを頂いて温まってから帰宅した。
やっぱり律君はすぐに脱いでしまったが司ちゃんは振袖のままだ。
去年は晶ちゃんとした坊主めくりを今年は司ちゃんとする。
三回戦して先生の負け。
長襦袢姿で終了。俺は帯だけで済んだ。
それから普段着に着替えて台所で燗をつけお酒を頂く。
「表、吹雪いてきたわ」
「おーすげー。雪見酒だ」
「温泉、行きたいわねぇ」
「あ、いいですねー。雪がたっぷり積もる中、露天風呂とか」
「良いわよねぇ。連れてって」
「仕事の休みと相談ですし、お稽古の日とかもありますからね?」
「わかってるわよ」
司ちゃんが笑ってる。
お酒を飲んでる間に先生が眠そうになって来た。
「寝てきますか?」
「ん、悪いけど後よろしく」
「私もちょっと寝てくるわ」
お、八重子先生もか。
二人とも部屋に寝に行った。
司ちゃんと律君と三人で御節をつつきつつお酒を飲む。
「山沢さんってお酒強いよね」
「そんなこともないかな。先生のほうが飲んでたよ」
「そうかなぁ」
「お母さんたちは御節作ったり今朝も朝からばたばたしてるからね、疲れてるんだよ」
「山沢さんも疲れてるんじゃ」
「私は昨日寝かせてもらったから大丈夫なのさ」
うーん、うまい。
お重の中身が減ってきたので台所に行って補充する。
去年の晩飯の時間には補充してたからそのように。
律君がお風呂を洗って司ちゃんを先に入れた。
孝弘さんと律君が入り先生はどうかと思ったがやっぱり入られず。
俺が入って風呂を洗って出た。
明日も沸かすしね。
今日は早めに戸締り、火の始末をして先生の横に潜り込む。
律君たちはまだ飲んでるようだ。
あくびひとつ。
俺もまだ眠いようだ。先生を抱っこして眠りに落ちた。

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499

そうこうしているうちに今年も後二日となった。
今日が終れば明日朝に鯛を焼くだけだ。
随分気が楽になって仕事が進む。
半衿は先生にお願いしたことだし、着物も何とか昨日寝る前に支度した。
多分忘れ物は、ない。要る物は全部車に積んだはずだ。
あ、お年賀。そうだ出金しなきゃ。
帰りに餅を取りに行き飾りつけ、門松も立てた。
今日飾らねば一夜飾りになってしまう。
ばたばたとあれやこれやとやることをやって寝る。
翌日、鯛を焼き、皆で軽く乾杯をして味噌漬けなどを車に積んだ。
やっと今年が終る。
一旦帰宅し風呂を浴び、先生のお宅に車を走らせた。
車に乗る予定だったからちゃんと乾杯はコーヒー。うまいけどね。
そっと勝手口から侵入して冷蔵庫や土間に荷物を置き、そっと先生の部屋に忍んだ。
寝てる寝てる。
さっと寝巻きに着替えて寝込みを襲った。
久々の触り心地、いいねぇこの肌。
一人楽しんでいたら目が覚めたようだ。
「ん、おはよう…。お疲れ様」
「ただいま」
キスをし先生を楽しませて、でも声は出させないように。
…先生の上で力尽きた。
「重~い」
「あ、悪い」
横に転がると先生が布団を掛けてくれる。
「もうっ、寝てなさい。朝ご飯してくるから」
そんなにはむさぼれなかったから先生は元気だ。
ぺしん、と額を叩かれて寝かしつけられてしまった。
ふと目が覚めるとうまそうな匂いがしている。
寝巻きのまま台所に顔を出すとどうやら御節の仕込だったようだ。
「あら、起きたの。おなかすいた?」
「うん」
「冷蔵庫にピザあるから食べて良いわよ」
どうやらスーパーで買って有ったらしい。
「足りそう?」
「全部食べて良いのかな」
「良いわよ」
「じゃ大丈夫」
「でも今おやつ時だから晩御飯食べられないようなことしないでね」
「あー…はい」
二つだけ貰ってチンして食べた。
「ああ、あんた起きたの。いやまだ眠そうだね。寝といで」
「はい」
八重子先生が戻ってきて台所から追い払われて布団に潜る。
腹がくちたからまた良く寝れた。
先生に夕飯と起こされてつい布団に引き込んだ。
「こら、だめ。ご飯よ。もう時間遅いんだから起きて頂戴」
起きると本当に遅い。
「先生方はもう?」
「まだなの。早くして」
「はーい」
もそもそと起きると寝巻の上に引っ張りを羽織らされて食卓へつく。
夕飯は軽いものだった。
年越しそばも有るからだろう。
「こんばんは」
「あ、律君。こんばんは」
「ずっと寝てらしたんですか?」
「うん、朝からね」
「よっぽど疲れてたんですね」
「去年もそうだったわよね、はい、ごはん」
「ありがとうございます」
「そうそう、半衿つけてあるから。バッグ勝手にあけたわよ」
「わ、ありがとうございます、助かります」
「半衿?」
「そうよ、お着物着るでしょ。この子はつけてる時間ないから」
「律君は今年着るの?」
「着せるわよー、さっきね、丁度仕立てあがってきたのよ」
「へぇ、おろしたて? いいねぇ」
「司にも振袖着せるよ」
「おお、やっぱお正月は良いですよねー振袖」
軽めの夕飯を食べた後先生と台所へ。
年越しそばの支度。
「えぇと。あなた天麩羅じゃないのよね」
「はい、ここにニシンあります」
「おばあちゃんと私とお父さんと律とあなたと…司ちゃんは起きてからの方が良いかしら」
「伸びますしね、そうしましょう」
5玉とだし、天麩羅などを準備しておく。
まだ食べるのは早いから。
年末の歌番を楽しんで各々風呂にはいる。
それからそばを出した。
除夜の鐘の聞こえる中すする。
んー、うまい。
「京都ってあまりお蕎麦のイメージないけど結構好きよね、山沢さん」
「うーん、そうですね、当初はだしの色と味がね。自分で作れば良いかとなりまして」
「あ、だから山沢さんの、だしが違うんだ?」
「味見したけどおいしかったわー」
「へぇ」
「まだ残ってるわよ」
「じゃ後でちょっと味見させてもらおうかな」
汁を全部飲み干す。
うーん、うまかった。ごちそうさま。
そろそろ年が明けるようだ。
皆も食べ終わったので洗い物に立った。
「久さーん、司ちゃんの作ってくれるー?」
「あ、はーい」
洗い物の手を止めて湯を沸かし、だしも温める
ササッとゆでて温めただしに入れ、天麩羅を盛って居間へ戻る。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
「コーヒー欲しいわ」
「はいはい」
台所に戻って先生の分を淹れて戻る。
「ん。あんたいらないの?」
「洗い物終ってからいただきます」
「あら? いつもと味が違うわねぇ」
「寝る前ですからカフェインレスにしました」
ちょっとつまんなさそうな顔をしている。
台所に戻って洗い物を片付け、鍋も洗い終えると先生が丼を引いてきた。
「これも」
「はい」
そっと背中に手が置かれた。
「ん? 熱ありません?」
おでこをくっつけてみる。
「あ、大丈夫ですね、よかった」
顔を赤くしている。可愛いな。
洗い終えて手を拭いて、居間に戻ると司ちゃんも部屋に引いていた。
「寝ますか。部屋行っててください。戸締りしてきます」
「あ、うん…」
玄関と勝手口、あとは火の始末を確認して部屋へ戻る。
まだそんなに温まってなくて先生は少し羽織を脱ぐのに躊躇している。
そっと紐をほどき、伊達締めを解いた。
キスを求めてきてそれに応える。
冬なのに、しっとりとなめらかな肌が心地良く。
ぐりっと乳首をつねられた。
「…痛い。なんですか」
「なんとなく」
「されたくなかった? なら寝ましょう」
「あ、違うの、ごめんなさい。なんとなくなだけだから」
「そう?」
「うん」
「でもまぁ、いいや。三が日あけてからで」
「いいの?」
「どうしてもしたくなったらあっちの部屋つれていきますがそれはいいでしょう?」
ぱっと耳を染めて頷いてる。
布団に入って先生を抱き締めると温かく、先生も擦り寄ってくる。
シーツが冷たいんだよね。冬は。
そろそろ毛布入れようかなあ。
そういってると先生が明日は入れるという。
寒くなるらしい。
少し喋ってるうちに寝てしまった。

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498

寝て起きて。仕事をして帰って寝る。
朝、天皇誕生日と言うことで旗を出してから寝なおした。
ふと目を覚ますと横に先生がいる、という夢を見た。
起きて空しく思う。
メールは相変わらず続けており、先生が大体の一日の様子を送ってくれる。
たまには写真がついてくる。
仕事が終わって寝るだけの日々が続き、後もう数日となった。
くたびれて帰ると家が綺麗になっていてご飯が作って置いてある。
まだほのかに温かく、さっきまでいてくれたのかと心が温まる思いだ。
外は寒く、体は冷え切っているのに。
おいしい飯も嬉しくて全部食べた。
洗い物をしなくて良いようにと器は捨てて良いもので、本当に気のつく人だ。
風呂に入ったあとベッドでお礼のメールを打っていると気がついた。
香袋が新しくなっている。
シーツも変えてくれていた。
きもちいいなー。
メールを送ってそのまま沈没。
良く寝れて危なく遅刻するところだった。
慌てて出勤し、仕事をする。
午前中はやはりなんとなく暇で合間に先生とメールをする。
昨日俺が寝た後お歳暮が届いたようだ。
今年は去年にプラスして酒も一緒に。
司ちゃん来ると飲むから多め。ついでにコーヒーのカプセルも届いたようだ。
先生は切らしたからって早々買いにいける距離ではなかったから。
特定のカプセルが切れたままになってたんだよね。
先生の好みの味は多めに仕入れた。
午前の仕事が終わり、一度片付けて昼飯を食い午後の仕事をこなす。
昨日より調子は良いのは晩飯を食ったからかもしれない。
これをキープして大晦日を迎えたいので帰宅してすぐに寝た。
翌朝も多少は調子が良い。
本当に近所なら毎日ご馳走になっていたいくらいに食事って大事なんだなと思う。
今日はラストスパート前の混雑。
これが終れば。
仕事中に花の手配もしたし餅の手配もした。
後は、後は?
あ、半襟…先生に頼むほうが早いか?
昼飯を流し込んで仕事に掛かる。
帰宅すると何も考えられず着替えて寝た。
朝になって思い出す。
そうだ、焼鯛だ。焼かなきゃ。
味噌漬けとか餅とか白味噌とかニシンとか手配しなければ。
慌てて仕事中暇を縫って手配をかけた。

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497

一夜明けて今日からは昼から焼鯛や御節の仕込みに加わる。
だが年々正月が近い感覚が薄れているなぁ。
以前なら12月に入った途端あれやこれやと仕込むことが多かったのだが。
最近はまだ何を仕込むとかの情報も得意先から来ない。
ま、それでも鯛を箱詰めして冷凍かける作業があるから早くは帰れない。
夕方に帰宅する日々が続き最後の日曜が来た。
先生とのメールのやり取りは続いていて先生もそれなりに忙しそうだ。
今日は茶会に行ったようで何枚か写真が来ている。
疲れて寝ていると鍵の開く音?
「ただいまぁ。疲れたー。あら寝てた? ごめんね」
「あー。らっしゃい」
「もうちょっと寝てたらいいわ」
「うん…」
ぱたぱたと和室で着替えてる気配があり暫くしたら水を使う音がする。
すっかり眠くて寝てしまったようで揺り起こされた。
「ご飯できたわよ」
「んぁ? めし?」
「そうよご飯出来たの。食べないとダメよ」
半分寝ているところを居間まで引きずり出される。
ちゃんとした和食の夕飯。
「うまそう」
「でしょ、温かいうちに食べてね」
寝ぼけつつも食べる。うまい。
うまくて掻っ込んでると先生が変な笑い方をしている。
「どうしました?」
「こぼしてるわよ。そんなに焦って食べなくてもまだあるから…落ち着いて食べなさい」
「あぁ。うまいもんだから、つい」
「ちゃんと食べてるの? 普段」
「夕飯…最近食ってないかな、眠くて」
「だめじゃないの」
「年末大体何キロか落ちますねぇ」
「毎日作りに来たくなるわ」
「それはダメだ」
慌てて却下する。
近所ならまだしも遠いのにそんなことしてたら先生が倒れる。
「あと十日程度だから何とかなるから」
「心配だわ」
「去年と一緒、問題ない」
ごちそうさまをして洗い物に立とうとすると先生に止められた。
だけど座っていると眠くなる。
泊まって良いかと言われ、却下した。
「どうしてダメなの?」
「明日最後でしょうが。最後にサボりは認めませんからね」
「そういうとこ、堅いんだから…」
「いじけてもダメなもんはダメ。送れないから早くお帰んなさい」
「追い出すの?」
「ええ」
むうっとしつつも諦めたようだ。
仕方なさそうに着替え、俺にキスをして抱きついて。暫くして離れる。
「帰るわ」
「はい、気をつけて。酔客に捕まらないように」
「あんたも。体に気をつけなきゃダメよ」
「家が近けりゃ…帰さないで済むのに」
「今更そんなこと言わないでよ…。帰りたくないのわかってる癖に」
暫く玄関先で絡まって先生が諦めをつけて出て行った。
帰したくなかった。
明日、先生がお稽古じゃなければ絶対帰してなんかいなかった。
だけど流石に年内の最終をサボらせるのはね。
いけないだろう。
暫く玄関で見送って見えなくなってから閉めた。
体が冷えてしまった。布団に潜り込む。
枕元に先生が香袋を置いて行ってくれていた。
先生のいつも使っている香だ。
体臭はもっと甘くて濃く感じるが、会えないだけに有難い気がする。
とりあえず後一週間と半分。頑張ろう。

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