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百鬼夜行抄 二次創作

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伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

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166

40分ほどして先生が戻ってきた。
コーヒーを差し上げる。
「ごめんなさいね、メール、見てくれたかしら」
「どのメールでしょう」
「…身内の」
「先生はご存じないようだから申しあげますが…
 こういう関係にあるものに身内とはあまりにもつれない。
 まだ情人、手掛けのほうがましにすら思えます。私には」
「情人だなんて…思ってないわ。身内くらいに大切、そう思ったの」
「あなたは…身内とセックスするんですか?しないでしょう」
「あ…」
腕を取って引き寄せてキスというか喰らいつく。
そのまま押し倒して胸をまさぐる。
「きゃっ」
「こんなことするヤツのどこが身内ですか」
「あぁっ、やめて、ねぇ」
「それとも、身内のように性的なことは一切ない関係をお望みですか」
「やめてったら!」
っつ、またビンタかよ。
ギリッと奥歯が鳴る。腕を押さえてねめつけると怯えている。
「どうなんですか」
返事がない。
「帰りなさい」
手を離して後ろを向き、そう言った。
ぎゅっと背にしがみつかれて、か細い声で違うの、と言う。
「何が違うと?いやなんでしょうが」
「ごめんなさい、そうじゃないの。驚いたから…叩いちゃってごめんなさい」
すっと息を吸って大きく吐く。
たしかに驚かせたというか、心を乱したのは事実。
「私…山沢さんのことちゃんと恋人としてみてるわ。
 愛人とか、情人とか…そんなこと思っていないわよ」
「だったら…なぜ先日言いよどみました?」
「何か恋人以外に丁度いい言葉がないかしら、と思ったのよ」
ちょっとそれ俺一人が間抜けじゃないか…。
一人で拗ねてただけかいっ。
なんというか、参ったな。
息をつくと先生が前に回って来られ、
そっとキスされて懐に入られた。
「だから…拗ねないで。怖い顔しないで頂戴」
もう一度キス。
欲情してついあちこちを撫でてしまう。
「ねぇ、して」
先生も欲情したのか。って。求められた。
「先生、顔赤い…」
「だって…あなたが見せてって言うから」
可愛い、たまらん。
耳を舐めて胸を揉む。
「でも、ここじゃいやよ」
抱え上げてすぐさまベッドへ。
「脱がせて頂戴」
いそいそと脱がせ、裸にする。
手をあちこちに手や舌を這わす。
つんと起ち上がった乳首や、へそ、乳輪や脇。
もちろん翳りの中をも蹂躙して。
先生の声に煽り煽られ沢山愛した。

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165

翌朝、軽い二日酔い。
自分の息が酒臭い。
うー…。シャワー浴びよう。
風呂から出て、何かどうせだから見て帰るか、と思い調べる。
京都駅か資料館。昨日から展示をやっていると知り、資料館へ足を運んだ。
釜はみてもよくわからん。
酒器ならわかるだろう。
…一人で来ても楽しくないな。
何してんだろうなぁ俺。
ハラハラと雨が落ちてきて。
ふと見れば初釜に向かわれる方々。
知った顔がありご挨拶。
やはり家元の初釜に行かれる方々は緊張の色が見える。
たしか来週は関東で、だったな。
欠席者があるからと同席するか聞かれたが断る。
この面々に混ざってよいわけない。
その上洋服だし、スラックスとカッターは着てるが上着はコートだからなぁ。
せめてスーツでもっと後の日ならね。
欠席者の身代わりでもぐりこめたかもしれない。
さすがに格好を見て諦められた。
そのままぶらりと北野へ移動。
ぼんやりと境内に居ると沢山の着物の女性。
…月釜今日じゃなかったよな。
どこかの初釜の後かねえ。平日なのに。
この時期はどうしても着物の人が多いな。
得意先の人が散歩をしていて、久々にお話しする。
京都も年末は時化で御節の用意が大変だったそうだ。
やっと仕事も落ち着いて、この時期忙しいのは千家がらみのみとか。
そういえばそうだった、京都は一月半ばまで初釜でややこしかったな。
お茶の世界に身をおいているくせに忘れていた。
冷えてきたので別れて、一旦帰宅する。
ストーブぬくい。
さて。そろそろ東京へ行くか。
逃げてばかりもいられまい、もしか部屋に先生がいればいたでいいじゃないか。
思い定めて戸締りをし、出立。
東京へ。
お昼ごはんに駅弁。帰宅。
部屋は暗く、やはり帰ったようだ。
少しほっとして、鍵を開けて中に入る。
ああ、でも期待してたんだな、先生がいて欲しいと。
苦笑して着替える。ストーブがまだ効いてないにもかかわらずほの温かい。
と言うことはうちに泊まったようだ。
こちらに戻ってる旨メールするとすぐにメールが帰ってきた。
30分ほど前に乗車したらしい。
すれ違いか。
もう一通、家にいて、とメールが来た。
話し合いをいましろと言うのか、八重子先生の仲裁なしで…。
土曜日では駄目なのか書き送れば、早いほうがいいという。
仕方ない、待とう。

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164

すぐに先生自宅から電話、これは八重子先生だな。
電話を取る。
「あんた今どこにいるんだい?絹が行ったけどいないって掛けてきたよ」
「京都です、京都の自宅」
「いったい何があったんだい?
 何もされてないって言うけど、またなんか失言したんだろ、絹が」
「うー…恋人っていったら恋人じゃないって言外におっしゃったんで…拗ねました」
電話の向こうに聞こえる溜息。
「土曜は来る?そのときにちゃんと話ししなさい。律はどこか他所に泊めるから」
「はい、おねがいします」
「あ、それと体重計、きたよ」
「ああ、あれ、骨量も量れますから良いですよ」
「それから絹に帯買ってやったんだって?喜んでたよ」
「あー、はい」
「その意味、あの子わかってなかったようだね。高かっただろ」
「まぁ、そういう話には疎いでしょうから気にはしてません。
 それに高くはないです、お茶用の帯でしたし。
 礼装のほうは流石に龍村、いいお値段してましたが」
いいなぁと思ったら30万とかね。普通にしてたな。
「その上ブラとショーツもだろ」
「ははは…」
「サイズ丁度だったみたいだよ」
「そりゃ良かったです」
「ま、とにかく。土曜日来なさい。初釜の話もあるから」
「はい」
電話を終って、空腹に気づいて飯を食いに出る。
居酒屋に入り飲んでいると先生からメール。
電話は出ないとわかったのだろう、こちらのほうが伝えられると踏んでか。
恋人というよりは身内のような気がして、と言うことのようだ。
余計になんだかなぁと言う気がして、困る。
「おい、山沢じゃねえ?久しぶりー、どうしとるん?」
「あ?なんだお前か。ずっと東京で仕事だよ。今日は家に風通しに来ただけだ」
「そうか、お前恋人とか出来たかぁ?」
「んー恋人と思ってるヤツから恋人じゃなく身内のような、と言われたところだ、今」
「なんだそれ、ひっでぇ」
「だろ。参るよ」
「つーかお前めっちゃ標準語になってんぞ」
「しょうがねぇだろ」
「わかった、東京に恋人が居るんやろー」
「ま、そういうこと。一昨日、龍村の帯買ってやった程度の仲のな」
「マジか。それで身内って言われたんか。なぁ笑って良いか?」
「もー笑え笑え、バカだろ俺。安い手だけどよー」
酒をついでやって。
「でもなあ、相手の親はなあ、帯買ってやった意味とかわかってくれてんだよな」
「えっお前相手の親公認なのか?」
「多分旦那も知ってると思う。息子は知らないとは思うけど。怪しんでるとは思うが」
「相手、息子おるんか…相手いくつよ」
「多分43じゃねえかな」
「お前それ年上すぎね?」
「一回りも離れてねえよ」
「どんな人よ?お前のことだから和の女だろ」
「まぁな、茶の先生だ。普段から着物でな。お花も着付けも教えてる」
「パーフェクトだな、お前の理想のドストライクか」
「だなぁ」
「どうやって落としたんだ?」
夏からの件を大雑把に話す。
「やるなぁ、お前。つーかこっち来てたんなら言えよ」
「なんで楽しい恋人との旅行にお前呼ぶんだよ」
ゲラゲラと笑って酒を飲む。
「俺これから雄琴行くけどお前も一緒に行かんかー?」
「ばばあ抱いてもしょうがねえだろ、おりゃ帰って寝る」
「恋人に操立てか~?はっちゃけちまえよ」
「うるせー」
そして別れて帰宅、そのまま熟睡。

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163

仕事を終え、食事を取る。
少し飲酒。
夕方、携帯にメール。
先生からか。
昨日あの別れ方をしたのに来いというのか。
少し悩んで、どうせ行かなきゃ突撃されるだけかと思い、行く旨返事する。
着替えて移動。
玄関を開けて声を掛けると律君。
ありゃ?
「あら早かったねえ」
うわっ後ろから八重子先生に肩を叩かれた。
先着してしまったようだ。
「あ、ええと、こんばんは」
上がって着替えを手伝う。
「で、絹先生。お呼びいただいた御用はなんでしょう」
「特に用はないわよ」
「は? 用はない? じゃ帰らせていただきます」
「用がなきゃうちに来てくれないの?」
「あんたら何やってんだい。山沢さんも意地を張らない!」
う…。
「ですが。用もないのに来るなんておかしいでしょう。
 律君だって違和感を感じてますよ。他のお弟子さんにだってどう思われるか」
「それはそうだけど…」
「初釜がどういうものか教えるために呼んだってことでどうだい?」
「…律君へはそういうことで結構です」
「絹。あんたまた何か山沢さんにしたのかい?」
「されてません。特に御用もないようなのでこれで失礼します」
「だからっ」
振り切って先生のお宅を出た。
携帯がなるのを無視しているとメールが入る。
それも無視して。
ふと京都に戻りたくなった。
その足で新幹線に乗り。京都へ。
久々に我が家の鍵を開けて風を通しストーブのスイッチを入れた。
移動に疲れ、うつらうつらとする。
先生より更にメール。
どこにいるの、と。やはり家に突撃されたか。
あなたの知らないところ とだけ返した。
時計を見る。まだ終電はあるだろう。
なければないでうちの鍵を持っているのだから勝手に泊まればいいさ。

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162

なんで、こう、うまく噛み合わないんだ。
とりあえず着替えよう。時計を見る。電車、ラッシュタイムか。
車で行くか。となれば洋服がいい。
服を着て待つ。
あ、出てきた。なんだ、髪も洗ったのか。
ドライヤーしなきゃいかんわけで少し出るのが遅くなるな。
手持ち無沙汰で、ベランダに出て煙草を吸った。
帰さなくて良ければ…いいのに。
少し落ち込んでいると先生が着替え終わったようだ。
吸殻を濡らして始末し、手を洗って口をすすぐ。
さてと、気を入れ替えて運転するか。
先生に車に乗るよう言うと、どうして?と聞かれた。
「この時間帯ラッシュでしょう、電車。痴漢されたらどうします」
「こんなおばさんされないわよ」
「されます。おばさんでもない。いいから早く乗りなさい」
助手席に乗り込もうとする。
「そっちじゃない、後ろ。運転席の後ろに乗って。シートベルトもして」
「後ろだったらいいんじゃないの?」
「以前事故のときあなたしてないからあんな怪我したんですよ」
乗せて走り出す。
1時間半ほどだろう。安全運転を心がけて。
「ねえ…明日の晩、来てくれる?」
「お稽古はしないんでしょう? 行かないほうがいいんじゃないかな」
「どうして?」
「一応、私が泊まるのはお稽古があるからとなってますよね。外聞に悪い」
「駄目なの?」
「やめときなさい」
「でも…」
「土曜は寄せていただきますよ。初釜の用意のお手伝いと言う名目でね」
車内の空気はよろしくないまま車はすいすいと流れて先生のお宅へ。
「上がっていって…ねえ」
「いやこのまま帰ります。明日。夜にメールください」
「…わかったわ。じゃあ…気をつけてね」
「ええ、また。会いに来ますよ」
別れて車を飛ばす。
少し前の車を煽ったり、追越をしたりして1時間で帰宅。
疲れた。
すぐさま寝巻きに着替えて寝た。
朝、起きて自己嫌悪。
せめて週末までには立て直して、電話なりメールなりで関係修復したいものだ。
そう思いつつ仕事をこなす。
とりあえず俺がやるべきことはちゃんと仕事することだ。

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