忍者ブログ
百鬼夜行抄 二次創作

let

伶(蝸牛):絹の父・八重子の夫 覚:絹の兄・長男 斐:絹の姉・長女 洸:絹の兄・次男 環:絹の姉・次女 開:絹の兄・三男 律:絹の子 司:覚の子 晶:斐の子

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

146

明けて元旦。
まだ暗いうちに目が覚めた。懐の中の先生はまだ寝息を立てている。
時計を見れば4時半。
そろそろ起きるか。
いやもう少し、もう少しだけ。
もぞ、と先生の寝返り。
私の胸に頬を寄せて寝ている。くっそ可愛いなあ。
先生は私に比べると華奢で、大事に扱わないと、と思わせる。
腕が痺れた。
ごろりと先生を上に乗せ、仰向く。
血行が戻ってきた。この瞬間だけが辛い。
うわっ、乳首舐められた。
くすぐったかったがこういうのも寝相なのかな。
と言うかなぜに俺の寝巻、こんなに乱れてるんだ。
先生の寝息が乳首を刺激して、困る。
「ん…」
起きたかな。いや、また寝息だ。
5時半までこのままでもいいかな。
あ、先生、涎。
俺の乳房の上に。
今一寝心地が良くないらしい。
さっきと逆の腕を枕にさせて寝かせる。
正月から叱られるのはどうかと思うのでちょっかい出したいけれどぐっと我慢。
寝息を聞いていると少しうとうとしてしまってそろそろ起きる時間だ。
「先生…5時半ですよ、起きて」
「ん……もうちょっと」
「お雑煮作るんでしょう?」
「…あらぁ?なんで山沢さんと寝てるの?」
「えーと、どこまで記憶あります?」
しばし無言。
「居間で皆でお酒いただいてたところまでかしら」
やっぱりそこまでか。
「あー…。その後各々の部屋に布団敷いて寝かせたんですけどね、
 夜中台所に出てきたんですよね。あなた。
 それでそのまま私の部屋についてきたんですよ?」
「あららら。癖って怖いわねえ」
「いいですけどね、私は」
先生が上半身を起こしたのにあわせて起き、先生に羽織をかける。
軽くキス。
「おはようございます」
「おはよう」
さて、身づくろいして台所へ行くか。
台所へ行くと八重子先生も出てきたところのようだ。
割烹着を着てお雑煮の準備にかかられる。
私の分は10分もあればいいので先生方の分をお手伝い。
御節もお雑煮も用意ができたので、一旦部屋に戻って紋服に着替える。
羽織袴に、と思ったが先生が色留袖の方を着るようにという。
久々に女装。袋帯を締めるのに悪戦苦闘していたら手伝ってもらえた。
先生に口紅を差していただく。
どうやら私が下手そうだから、ということだ。
扇子を持って、まだ時間もあるので茶室へ。
師弟としての新年のご挨拶をまずは交わすことにした。
お年賀をお渡ししてそれから居間へ。
絹先生が律君を、八重子先生が晶ちゃんを着せてみなで新年のご挨拶をした。
「明けましておめでとう、今年もよろしく」
などと挨拶が交わされ、山沢さんも今年もよろしくね、といわれた。

拍手[1回]

PR

145

なにか心さびしい。
ふと思いついて、台所へ。
私用の茶を出し湯を沸かして茶室から楽茶碗を持ち出し茶を練る。
飛び切り濃い茶をたっぷりと。
コトと音がした。調理台に茶碗を置いて振り返ると先生が起きてきていた。
「寝なくていいんですか?」
「なに飲んでるの?」
「お濃茶。飲みたくなって」
ん…ディープキスされた。寝ぼけ半分か?
「苦い…」
「当たり前でしょう…私のは安物のなんですから」
「おいしいの点ててあげるわ。それ、捨てなさいよ」
シンクで濯いで拭いた茶碗に先生の特級の茶が勢いよく入る。
勿体無い、なんて貧乏性だが思ってしまった。
特に飲むのが俺だから。
抹茶も勿体無いが、先生に点ていただくのも勿体無いことだ。
ありがたく、といただく。
甘い。気が休まる。
先生も一口、と言うのでお渡しする。
あまり飲むと寝られなくなるぞ。
先生の唇に抹茶が残っているのを舐めた。
茶碗に少しお湯を足して薄茶にしてもう一度いただいて。
後始末をしていると八重子先生がお水を、と出てきた。
苦笑して湯を少しの水で埋めてお渡しした。冬の水では体が冷える。
「あんたらこんな時間に濃茶なんか飲んだら寝られなくなるよ」
「なぜ濃茶と」
「口」
絹先生がこちらを見る。
「あらほんと、まだ口についてるわね」
指で拭うと確かに残っていた。
「取れました?」
「もうちょっと残ってるわ」
と先生の指が私の唇に。
その指を舐めたい!
と思いつつも流石に八重子先生の見ている前では出来なくて。
各々部屋に立ち返る。
そのまま先生が私の部屋についてきた。
今日はしちゃいけないのに。どうしてだ。
布団に入れ、懐に抱いて、我慢して。
暫くすると心地よさげな寝息。
…先生もさびしかったのだろうか。
まさかただの酔っ払い。
それだと明日になったらなんでここにいるのーって言われそうだな。
まぁなんでもいいか、先生がこうして俺の懐にいて、暖かくて。
幸せなのは事実なんだから。
風呂上りでも体臭はあるもので、先生の匂いは俺にとって甘く感じる。
先生の布団で寝るのも先生にくっついてる気分がして、それもまた良い。
しかし。しかしだ。
こう、ずっと我慢してきているのに触れて抱きしめて。
それ以上は禁止と言うのは中々に苦しいぞ。
思わないでもないんだ。
このまま攫っていって隠棲して、ずっと抱いて暮らす。
だけどこの人は絶対家を選ぶだろう。
娘であり、妻であり、母だから。
それにきっと。
私の性癖に我慢できなくなって、別れたいといわれるだろう。
うちに泊めてるときのようなのが毎日では体も心も辛かろうと思う。
だから。定年後かな。同居できるのなら。
私の欲も少しは枯れて、この人も少しは慣れて。
でもその頃には激しくしたら先生の息が切れちゃうな。
激しくなく、体力がなくても楽しめるような何かを二人で探せたら良い。
甘い匂いに耐え切れず、首筋を舐める。
「ん……」
起きたか? いや、寝息。
顔を先生の首筋に押し付けて、寝る。
いい匂いだ。
三が日すぎたら、と約束している。我慢しよう。

拍手[1回]

144

除夜の鐘が聞こえてきた。
煩悩は払えるものだろうか、いいや払えない。
テレビの行く年来る年が荘厳な寺内の様子を放送している。
年送りは寺、年迎えは神社。日本は神仏習合の国だなあ。どこが無宗教だ。
食べ終わって、器を洗いに立つ。
年の終わりに好きな人と同じものを食べて、同じ家に居る。
幸せだな。初詣はこの幸せがいつまでも続くようお願いしよう。
器を仕舞って戻ると八重子先生と絹先生が撃沈してる。
とりあえずは八重子先生を布団に入れてくるか。
ひょいと抱き上げて晶ちゃんについてきてもらう。
布団を敷いてもらって寝かせて。
戻る途中に絹先生の部屋に立ち寄り布団を敷く。
火鉢の火は、うん、落ちてるね。
戻って絹先生を回収。晶ちゃんは今回はいいと断って。
そっと布団に横たえ頬をなでて布団をかぶせる。
可愛いなあ。
さてと。居間に戻ってみれば律君も晶ちゃんも仲良く沈没。
はてさて。晶ちゃんをとりあえず布団に入れるか。
先生に嫉妬されるかなぁ。
でも風邪引かせてもいかんな。と、抱えあげて部屋の布団に入れた。
律君はとりあえず起きるか試してみるか。
男は重くて運びにくい。
…駄目か、起きない。
肩に担ぎ上げて律君の部屋に連れて行って布団に押し込む。
敷いてあってよかった。
食卓や床に散乱したお酒やつまみを片付けて、正月を迎えるようにする。
うん、こんなものだろう。
さてと、俺も寝るか。
火の始末の確認と、戸締り。
昼に寝かせてもらったおかげで後始末が出来る。
寝間へ行って布団にもぐる。
シーツが一瞬冷たい。すぐに温まるのはいい綿だからだな。
本日はこの家での久々の一人寝だ。

拍手[1回]

143

ご飯のとき山沢さんは"お父さん"のおかずに何かを足したりしているのを見る。
嫌いなおかずを母に見えないようこっそりと移動させてるらしい。
山沢さん自身が持ってくるのに、絶対に赤い魚を食べないのが面白い。
"お父さん"は嬉しそうにそれを食べる。
確かに母が買ってくる魚より美味しい。
でも山沢さんは母が作る肉料理を食べるほうが好きみたいだ。
沢山のお刺身や魚料理が出るときに山沢さんだけ母の作った肉じゃがが有ったりする。
そういう時、魚を料理したのは山沢さんだ。
見ているとどこか山沢さんは母が好きなんじゃないか、と思ってしまう。
母はああいう人だから受け入れてるのかな。
祖母が何も言わないところを見ると問題はないんだろう。
泊まるようになって3ヶ月くらいになるけれど、母を先生と呼ぶのも変わらず、
敬語も崩さないのに、どこか狎れた雰囲気があるときがあって。
そういう時、祖母が指摘する。
親しき仲にも礼儀あり。
結構難しいよね。
母もつい山沢さんに甘えているようだ。
トイレットペーパーや洗剤を買いに行かせたりする。
すると後で母が祖母に叱られている。
山沢さんは、母が頼むと何でも聞いてしまうところがあるらしい。
母と一緒に買物へ行って重い荷物を持たされて帰ってきたり。
"お父さん"はほっとけ、というけど、いいのかな。
うちの鳥どもは山沢さんを気に入っている。
和菓子をくれるし、司ちゃん用のお酒が探さなくても沢山あるのもいいみたいで、
すっかり手なづけられてるようだ。
どうも山沢さんはうちの有象無象が見えてるらしい。
一人で寝られないのはそれが原因なのかも。
青嵐のことは知っているのだろうか。
12月になりお教室も年内のお稽古が終了して、山沢さんが来なくなった。
何かいつもいる人がいないのは変な気がする。
母も少しさびしそうだ。
話のついでに山沢さんの年を聞いた。
てっきり母と同じくらいか少し上だと思っていたから驚いた。
僕を子供扱いするし、見られても平然としているからてっきりそうだと。
開さんが来たから、いくつに見えるか聞いてみた。
20代って開さんは思ってたらしい。
祖母が開さんのお嫁さんに、なんて言い出したけど開さんが断った。
ホモに見えるから。って想像したら面白くて、凄く笑った。
見えるよね、絶対そう見える。
開さんと抱き合ってる姿とかキスしてる姿とか想像しちゃって、ツボに入った。
母が呆れたような顔で見ている。
翌日、祖母から大学に電話があって早く帰るようにと言う。
急いで帰ってみると今日はすき焼きだからって言うんだ。
松坂牛を山沢さんが送ってくれたらしくて、凄くやわらかくて美味しくて幸せだった。
母はいつもこんなのを山沢さんと食べてるらしい。
日曜に大掃除を手伝ってお昼ご飯を食べているとテレビで築地が映った。
人多いねー。
ぼんやり見ていたら母が山沢さん、と言った。
映ってる?
母がテレビの一角を指差す。本当だ、山沢さんだ。
よくわかるなあ、こんなに人が一杯なのに。
テレビに映る山沢さんは近くの人と何かを投げ合っていて元気そうだ。
母の顔がほっとしたものになっている。
大掃除の続きをしていると雪。寒いなあ。道理でバケツの水が冷たいはずだよ。
いつもこんな冷たい水で料理してるんだからあの手なんだよな。
あれ、でも今年は痛いって言わない気がする。
山沢さんが手伝ってるからかな。
でも山沢さんの手はあまり荒れてそうじゃないなあ。
翌日、今日は休講だからと言うと買物に借り出された。
毎年のことだけどいろんなものを母は買ってすべてを料理する。
今年はいつも買わないようなものを買っていて、珍しいなと思うと山沢さんの分と言う。
お正月、来るのか。
何か母が浮かない顔をしている。
買物を終え、車に積み込んで運転する。
母は何か上の空で話しかけても返事がない。
どうしたんだろう。
荷物を降ろしてバイトに行く用意をする。
年末は時給が高くて良いね。

拍手[1回]

142 -律-

山沢さんは僕より力があるらしい。
そして着物姿が決まっていて格好良く、知らなければ男性だ。
ちょっと背が低いけれど。
でも母よりは少し背が高いのかな、並ぶとわかる程度に。
母に呼ばれてはすぐに指示を受けて何かをしている。
食事の仕度だったり、掃除だったり。
祖母にお客様なのにいいの?と聞くと良いんだという。
いつも母や祖母が立ち働いているとき、山沢さんも手伝っている。
食事も普段の僕たちと同じご飯を食べていて、
まるで家族のような扱いを受けていて、不思議だ。
司ちゃんはうちに来てもお客様扱いなのに。
いつの間にか開さんや、晶ちゃんとも仲良く話していて不思議だ。
先日祖母が月謝袋を開いてる時に居合わせたけれど、
山沢さんだけ多くて、なんで?と聞くと居候料と月謝だという。
そんなの貰ってたんだ、と言うといらないといったんだけど、と母が言う。
でもたかが稽古事なのにそんなに払えるなんて凄いなぁ。
僕のバイト代全部より多かった。
そういうと、母がクスクス笑った。
「あら、山沢さんとお食事に行くと2、3回でこれくらいよ」
「ええっ?そうなの?」
「前に旅行行ったでしょ?あれも一泊で二人でそれくらいらしいわよ」
「…それって山沢さんのおごり?」
「そうよ」
「うちの経費の分は別に領収書切ってもらったみたいだけどね」
「そうそう、ツインの一番安い部屋じゃなかったかしら」
「なんでそんなこと?」
「宿泊費があまり高いと税務署から調査が入るんですってよ」
「へー。山沢さんってそんなの詳しいんだ?」
「役員さんだから知ってるんじゃないの」
よくわからないや。
「それに山沢さんはもう人を教える資格持ってるのよ」
「あ、そうなんだ? あの人優しいから教えるのはいいかもね」
「優しい…怒らせると怖いわよ?」
「怒らせたことあるんだ?」
「本当に怖くてねぇあの人…」
母が怖がるくらいだから、よっぽどなのだろう。
意外と僕の母は強くてこんな仕事をしているからか揉め事には強い。
「でもこの間お母さん、山沢さんを踏んでなかった?」
「あらやだ、あんた見てたの?」
「絹?」
「山沢さんが肩凝ったから踏んで欲しいって言うから踏んであげたのよ」
「肩こりで胸も踏むの?」
「よく判らないけど気持ちいいんですって」
僕はそんなに肩が凝ったことがないから乗って欲しいと思ったことはない。

拍手[1回]