「天神囃子もいいですか?」
「いいわよ」
日本酒ケースに積まれて居る中から捜索。
鶴齢と天神囃子の二本と、うちからもってきたぐい飲みを持って居間に戻る。
八重子先生が台所からおつまみになるものを持ってきてくれた。
絹先生が燗鍋を出してきて鶴齢の御燗をつける。
つくまでの間ぐい飲みに直接注ぎ乾杯。
少しほろ酔いになった頃、晩御飯はお鮨を取るという話に。
俺は玉子のみで頼んだ。
「魚いらないのかい?」
「実は魚好きじゃないんです…」
「あらそうだったの?魚屋さんなのに変ねえ」
笑われつつもお鮨が取られて、律君と孝弘さんを呼んで晩御飯。
「はい、山沢さん」
と玉子を取ってくれる絹先生に律君。
「お母さん、山沢さんにも魚とってあげたら?」
苦笑。
「山沢さんは玉子がいいのよ。ねえ山沢さん」
「ええ。玉子がいいんです」
「遠慮してるんじゃ…」
「してるの?」
「してませんよ」
「ですってよ」
孝弘さんが勢いよく食べてる。
やっぱりこの家は食費が凄いだろうな。
食べてしまうと孝弘さんはすぐに部屋に戻ってしまう。
律君にも飲ませてしまえ。
「いや明日学校あるんで…」
とそんなに飲まないうちに退散されてしまった。
先生方に飲ませて、飲ませて、飲ませる。
絹先生はべったりと俺にくっついてキスしてきた。
八重子先生はにこやかに見ている。
いいんだろうかこの状況。
酔っ払いだから仕方ないのか。
あ、寝息。寝ちゃったか。とりあえず横に転がしておこう。
「先生の部屋に布団していきますね」
「はいはい」
布団を敷いて、先生を回収して寝かせる。
戻って八重子先生と更に酌み交わす。
「随分あんたには素だねえ、絹も」
「そのようで嬉しいです」
「結構あんたを困らせてるんじゃないのかい?」
「ええと、まあそういうこともありますが。我侭いわれたりとかも楽しい時期なので」
「じゃもうすぐしたら呆れる時期かねえ」
「どうでしょうね。八重子先生にはご心労おかけして申し訳ないと思ってます」
「いや別に良いんだけどね」
「やっぱり末っ子なんだなあと思うことはありますよ」
「まあねえ、しかも実家暮らしだからねえ」
「ま、その私も末っ子なわけですが」
「だと思ったよ」
「わかりますか?」
「わかるよ、結構甘えたいほうだろ、山沢さんも」
あ、頭撫でられた。
「絹には甘えにくいなら…」