「じゃあそろそろ山沢さん、煮物、しましょうか」
「う………。はい」
アルバムを片付けて台所へ。
「まずお出汁だけど」
「朝に用意してあります。これ」
昆布を水につけておいたものだ。
「まずは山沢さんの思うように作ってみて頂戴」
「はい」
里芋をまずは洗い、軽く茹でて皮をむき、切る。
出汁を2杯、酒・みりんを1:1、塩を一つまみ入れた。
しばし炊けるのを待ち、風味付けに醤油を落とす。
出来たので味を見ていただく。
「あら?意外と美味しいわね。やればできるじゃないの」
「私、味見してなかったでしょう…それ、私が食べると味が薄くて」
「ええ?そうなの?」
「一つ食べてもいいかい?」
「あら、お母さん」
「どうぞ」
「あぁ美味しいねえこれも」
「私、普段煮物といえば酒・砂糖・みりん・醤油1:1:1:1で炊きますから」
「それは濃そうだねえ…」
「うちだと煮っ転がしとか佃煮かしら?」
「保存食向きだね」
「大体京都って保存食文化ですよ基本的に」
「京料理は?」
「今は新鮮な魚が随分入りますからいいですが、昔は魚は塩干物ですよ」
「そうなの?」
「材料がそういうものだからこそ、より美味しくより美しく発展したんでしょうね。
今みたいに良い材料が使えれば野菜も刺身も美味しい塩でうまいじゃないですか」
「あら?そうかも」
「山沢さん、かつお出汁のとり方は知ってるのかい?」
「いや、とったことがないです」
「絹がとってるのは見てるだろ?」
「あー、なんとなく。でもちゃんとは」
「じゃ、やるから覚えなさい」
大体1リットル程度の湯に、これくらい、と鰹節を示される。
30gくらいあるかな?
沸騰したところに入れて弱火にして2分待ち、漉す。
それだけだそうだ。
もっと面倒くさいものだと思っていたのだが。
「で、この出汁で…」
同じように里芋を炊いてゆく。
ちょっとずつ分量が違うのでメモをしつつ。
出来たものをいただいて味に納得する。
「明日この分量で作ってごらん」
「はい、そうします」
「そろそろお昼の支度しなくちゃ。この里芋と後は何にしましょうね」
「あ、俺、大根葉食べたいです」
「そんなのでいいの?」
「卵とじにしたらどうかねぇ」
「それいいわね、そうしましょ」
おじゃこと炒めて卵で閉じられた。
配膳して、いただく。
んーうまい。
幸せ。