「ふぅん」
八重子先生が浴衣を出してきた。
「山沢さん、これ、開に持ってってやっとくれ。私ゃもう寝るよ」
「もう寝るの?」
「なんだか眠くてね」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「じゃちょっと持って行ってきます」
「お願いね」
ひたひたと廊下を歩いて風呂場へ。
「開さん、これ浴衣です。八重子先生がお渡しするようにと」
カラリと開けて言うと飛びのかれた。
ここ置いときますね、と風呂場から出てすぐの籠の上に置き、戸を閉めて戻った。
「兄さんが出てきたら私たちも寝ましょうか」
「あ、じゃあ戸締り確認してきます」
勝手口、よし。玄関、よし。
庭側の戸締まりを調べて戻る。
開さんが浴衣を着ていて、寸が足りてない。
「へぇ、怜さんより少し大きいんですね、開さん」
「そうみたいね。山沢さん、男の人が入ってるお風呂の戸を開けちゃだめよ」
「吃驚したよ」
「ああ、失礼しました、つい。まぁ、おあいこと言うことで」
「……ああ、前そういえば見たっけ」
「さて、先生。寝ましょうか」
あ、そこで顔を赤くするなって。
「そ、そうね。おやすみなさい」
あーあ、自室帰っちゃった。
「邪魔してしまったかな」
苦笑。
「飲みますか?酒」
「あー、いや、いいよ。僕も寝るから。絹のところ行ってやって」
「すみません。ではお先に。おやすみなさい」
「おやすみ」
先生の部屋へすすみ、何も言わず襖を開けた。
ぎょっとする先生の腕を取り引き寄せる。
「俺の部屋、行きましょ」
「兄さん知ってるのに…恥ずかしいわ」
「知られてるのだから乱れればいい。聞かなかったことにしてくれますよ」
「いやよ…」
「それともこの部屋でしますか?俺はそれでも構いませんよ」
「いや…」
「部屋においで。聞こえない程度にしてあげるから」
首を振る。
ええい、面倒だ。抱き上げて俺の寝間まで連れて行く。
なじられつつも布団に下ろした。